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anko1790 ~都会のゆっくりとその顛末~ 「親子れいむ」

~都会のゆっくりとその顛末~「親子れいむ」

羽付きあき

・観察物
・理不尽物ですご注意を
・幾つかの独自設定を織り込んでいます

皆さんは街にいるゆっくりにどのようなイメージを持つだろうか?
おうち宣言と言う行為でガラスをぶち破り侵入する、「おうた」と称して騒音をまき散らす、ゴミ箱を荒らす・・・と言った他に人間の手伝いをする、人間に与する等が一般的なイメージであろうか?
・・・これらは「街ゆっくり」と呼ばれるゆっくりである
街ゆっくりはは山野に住む「ゆっくり」とはまた違った亜種に近いと言われているからだ。
みなさんが想像するゆっくりとは少なくともまん丸で触感はモチモチとした小奇麗なイメージがあるが、街ゆっくりはどうであろうか?
丸い形とはかけ離れた台形とも似つかない極端な下膨れに、水飴の汗が街のゴミなどの油分に混じってヌラヌラにこびり付いた上に生傷だらけの小麦粉の皮と言ったところだろう。
街ゆっくりと言うのは基本的には不規則な食事サイクルをとるため極端に餡子の変換率が高い。
そして積極的に跳ねる事はあまりなく(大まかにしか動けない跳ねるという行為は街ではかなり危険なため、またかなり乏しい食糧事情のため跳ねると言う餡子を消費する行為は控える為でもあると言われている)、基本的には「ずーりずーり」で移動する。
そのため余分な餡子がたまりやすいのだ。跳ねると言う行為をしないため底部付近の小麦粉の皮がたれ気味になるため極端な下膨れになると推測が建てられている。
私は、その「ゆっくり」を探すために街に出ている。
街の中で生きる「ゆっくり」とは一体どのような行動をし、そしてどうなっていくのか。それにとても興味がわいたからだ。

X月X日 AM 9:00

私は人の喧騒が激しい街の中心地に足を延ばしていた。
休日とあってかなり込んでいる様で、普段なら足早に横断する街ゆっくりの姿すらも見えなくなっていた。
だが私は買い物をするつもりはない。街ゆっくりが居るとされる裏路地へと歩を進めていこう。
AM9:06、現在私は街の裏通りを歩いている。
大衆飲食店の裏側、ここは街ゆっくりが集まる絶好のスポットである。
臭いにつられて街ゆっくりがやってきて、そこにあるダンボール箱やビールケースなどのガラクタにタオルや新聞紙を敷くなどの簡単な加工をして「おうち」と呼ばれる巣を形成する。
横に倒した箱の中にすっぽりと挟まっているゆっくりと言うのはよく目にする光景の一つである。
さて雑多な箱等が積まれている場所を見ると早速見つける事が出来た。

バスケットボール大の大きさのゆっくりが一体、ソフトボールほどの「子ゆっくり」が一体の系二体の様だ。
ボロボロではあるが大きな赤いリボンの飾りと黒い砂糖細工の髪、そして左右のピコピコから察するに「ゆっくりれいむ」の様である。
ビールケースが積まれて板を載せてあるその下の隙間にチラシを引いただけの簡素な造りの「おうち」の様だ。
そこに小麦粉の皮をぴったりとくっつけあって目を閉じている。

「ゆぴー・・・ゆぴー・・・」

・・・眠っているようだ。この時間帯に眠っているゆっくりは珍しい。
私がそう思っていると子れいむの方が目を覚ました様だ。
寒天の目をゆっくりと開けながらこちらを見てこう言った。
「ゆ・・・?ゆぅ・・・?にんげんしゃん・・・ゆっくりしちぇいっちぇね」
「あ、ああ・・・"ゆっくりしていってね"」

急なあいさつに戸惑いながらも返すと子れいむの顔がパァっと明るくなった。

「ゆゆ!おにいしゃんゆっくちできりゅひちょ!?ゆっくち!ゆっくち!」
「・・・ゆっくりできる?」
「ゆゆー!あいしゃつをかえしちぇきゅれりゅにんげんしゃんはゆっくちできりゅっちぇおきゃあしゃんがいっちぇちゃよ!ゆっくち!ゆっくちしちぇいっちぇね!」
上機嫌に左右のピコピコを振りながら何度も何度も「ゆっくり」と言う言葉を繰り返す子れいむ。
私が発した一言が何か琴線に触れたのだろうか・・・?

子れいむのはしゃぎ回る声にれいむの方が目覚めたようだ。
このれいむもまた「ゆっくりしていってね」と返すのだろうか?
そう思っているとそのれいむが取った行動は子れいむのそれとは大きく違うものだった。
「ゆ!ゆゆ!?ぷくぅぅーーーーーーーっ!」

何も喋らず子れいむをかばうように私の目の前に来ると、大きく体を膨らませ左右のピコピコを激しくふるわせながらこちらを見ているのだ。
「威嚇」という行動だろう。なぜかれいむ種に極端に多くみられる行動だ。
口をつむって空気をためているため何も発しないが、その寒天の両目からは怯えの色が見て取れた。
・・・通常街ゆっくりは滅多に威嚇をしないと言われている。やった所でどうにもならないし、先に逃げる方が得策だからだと言われているからだ。
つまりこのれいむはかなり追い詰められた状況と錯覚しているようだ。こちらを見上げながらピコピコだけが左右に激しく揺れている。
その光景に子れいむの方も何か思う所でもあったのだろうか、不安そうな顔でれいむの後部を見詰めている。

「ま、待って。私は君達に危害を加えるつもりはないよ」
「ぷく・・・ぷっく・・・ぷひゅるるる・・・こ、ここはれいむとおちびちゃんのおうちだよ!ゆ、ゆっくりできないにんげんさんはゆっくりしないでど、どっかいってね!れれ、れいむおこってるんだよ!?」
「いや、だから・・・」
「ぷっくうううううううううううーーーーーーー!!」

しどろもどろに私が説明してもれいむは限界にまで空気を入れて、またそれに耐えきれなくなって空気を吐き出すと再び大きく膨れると言う行動を何度も繰り返し始めた。
・・・平行線である。だが長く続くと思われていたその時間も子れいむによって終止符を打った。

「おきゃあしゃん!きょにょにんげんしゃんはゆっくちできりゅひちょぢゃよ!ゆっきゅりぷきゅーをやめちぇあげちぇね!」
「・・・!!ぷっくうううううーーーー!」
「やめちぇね!なんぢぇゆっきゅりできりゅにんげんしゃんにそういうこちょしゅるにょ!?れいみゅおきょりゅよ!」
「ぷ・・・ぷひゅ・・・るるる・・・ゆ・・おちびちゃん・・・ほんとうにゆっくりできるひとなの?」
「そうぢゃよ!れいみゅがゆっくりしちぇいっちぇねっちぇいっちゃらかえしちぇくれちゃよ!おきゃあしゃんがいっちぇちゃゆっきゅりできりゅにんげんしゃんぢゃよ!」
「ゆ・・・ゆぅ・・・おにいさんゆっくりできるひとなの・・・?」

警戒しながらも私を見上げてれいむが切り出した。
私はなんとなく返答にこまったが何とか糸口を見つけ出そうと懸命に身ぶり手ぶりを交えて話をする。
「そ、そうだよ。私はただゆっくりの生態に興味があって・・・」
「"せいちゃい"おいしいにょ!?」
「え?」
「ゆゆ!ちょっちぇもゆっきゅちできりゅあまあましゃんにゃにょ?」
「いや、生態っていうのはね・・・」
「あまあま!あまあまほちいよ!ゆっきゅりできゅりゅよ!」
「いや、だから・・・」

説明の腰を折り、子れいむは言う事を聞かないまま辺りを小刻みに動き回っている。
どうやら私の言葉を甘い食料と勘違いした様だ。
埒が明かないのでれいむに話を通す事にした。

・・・・・・
・・・

「ゆゆ・・・つまりれいむたちがふだんなにをしているかをみたいんだね」
「そういう事なんだ。」
「・・・ゆぅ~・・・だったらあまあまさんをもってきてね!」
「"あまあま"?どんなのが・・・」
「あまあまさんはあまあまさんだよ!たくさんでいいよ!」
「たくさん?どれぐらいなんだい?」
「たくさんはたくさんだよ!」
「今は持ってないんだ。後で持っては来れるけど・・・」
「ゆぅ~しかたないね!そのかわりあまあまさんはもっとたくさんもってきてね!」

どうやら私が危害を加えるつもりはなく、何か交渉事をしている問う事がわかると「あまあま」を吹っかけようとしているらしかった。
だが不思議と憎らしいと言った感情は思い浮かばなかった。私には、話をしてくれる人間に対して精一杯我儘でも何でもいいのでかまってもらおうとしている様に思える。
強かと言うべきか?傲慢と言うべきか?言葉を選ぶのに躊躇はするがとりあえずはこのれいむの「強かさ」を見る事にしよう。
れいむは子れいむに一言二言何かを告げると巣の奥から小さなボロボロのプラスチックのケースを取り出し、どこかへと跳ねて行ってしまった。


AM 10:15

「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~っくり~していって~ね~♪」
「ゆっきゅりのひ~♪まっちゃりのひ~♪」

・・・私は今、ベンチに腰かけ頬杖をついて遠目にれいむ親子を見ていた。
れいむ親子がやってきたのは近くの公園。
私の前方15m程先で小麦粉の皮をくーねくーね、のーびのーびとさせてリズムらしきものをとりながら何かを歌っているれいむ親子は、道行く人を見かける度に何か声をかけていた。
よく目にする「おうた」と言うものだろう。
ゆっくりと言うのは父役、母役の番いになって子ゆっくりを生みだし、そして行動する。
街も山野も同じであるが、唯一の違いはこのように片親になってしまう事だろう。
番いと子ゆっくりという組み合わせはかなり少ない。大方が父役のまりさ種が様々な原因で物言わぬ饅頭となるケースがほとんどである。

・・・基本的に「れいむ種」と言うのは狩りが不得手な種類なのだ。
山野でもれいむ種のする事はあくまで子ゆっくりを育てる事であり、「狩り」に出る事は殆どない。
多くの場合はゆっくりは危機の殆どない所に居付くため、番いの片方がいなくなると言った事はない。
だがここは街だ。環境が変われば事情も変わる。
街のまりさ種の多くは危機を掻い潜りながら餌集めをするため危険度はかなりあるのだ。
当然生存率は極端に悪く、ある統計では番いのまりさ種の70%以上が物言わぬ饅頭となってしまうと言う。
さて、残されたれいむ種はどういった行動をするのだろうか?と言われれば・・・
一つはこの「おうた」を歌うと言う行為。そしてもう一つが無軌道な餌場荒らしの二つ程度である。
通常片方しか行わない事がほとんどである。
統計的には「街れいむ」が餌場荒らしをする事が多く、「捨てれいむ」の方が「おうた」を歌う事が多いとも言われている。

「おうた」はよく目にする。
しかしそれであまあまさんと言うのをもらったゆっくりは少なくとも見た事がない。
あのれいむ親子も当然のごとく道行く人々(それも人が少ない公園なので2~3人ほどだが)に歌を歌うがそこに何もいないかのようにスルーされている。

「ゆ~んゆゆ~♪そこのおにーさん!れいむのおうたをきいていってね!ゆ~♪ゆ~♪」
「ゆっきゅち~♪ゆっきゅち~♪」

懸命に汚い小麦粉の体をくーねくーねさせながらお歌を歌うれいむ親子。
その行為に至るまでにどういった経緯があったのかは定かではないが、一つ言える事はよく今まで無事でいられたという事だ。
私はそう思いながられいむ親子を見る。
既に初夏ともいえるほどの暑さと太陽の中で懸命に歌うれいむ親子は、どこかさびしげに見える物があった。

AM 12:45

「ゆぅぅ・・・おきゃあしゃん・・・きょうもごはんしゃんくれなかっちゃね・・・」
「しかたないよ・・・きょうはあつくてみんなゆっくりできてないからおうたをきいてくれなかったんだよ」

トボトボと帰路に就くれいむ親子の横を私はともに歩いていた。
・・・あれから二時間半も歌い続けたがれいむ親子に何かしらの食料を渡す人は現れなかった。

「ゆぅ・・・おきゃあしゃんおなきゃすいちゃよー・・・」
「おちびちゃん・・・ごめんね・・・きょうはごはんさんがないかもしれないよ・・・」
「ゆゆ・・・れいみゅおなきゃすいちぇもううごけにゃいよ・・・」
「ゆ!ごめんね・・・きょうはいっぱいおうたさんをうたったかられいむのおくちのなかはちょっとむりだよ・・・あたまにのってね」
「ゆっきゅりわかっちゃよ」

あれだけ声を出し続けたのだ。れいむの口腔はボロボロだろう。
元気がない子れいむを頭に載せてずーりずーりと地面を這って進んでいる。
「あ、ちょっと待っててくれないかい」
「「ゆゆ?」」
私は鞄の中に入っているコンビニのオニギリを一つ取り出すと封を切ってれいむ親子にさし出す。
れいむ親子はきょとんとした表情でそれを眺めていた。

「"あまあま”じゃないかもしれないけど、よかったら食べてよ」
「ゆぅーっ!おにいさんゆっくりありがとう!」
「おいしそうぢゃよ!にんげんしゃん!ゆっきゅちありがちょうね!」

固くなっているおにぎり一個でここまで喜ぶ事はかなり意外であった。
ゴミとなる袋はこちらで処分するし、多少は問題ないだろう。この様子なら食べかすすら残らず平らげてくれそうだ。
おにぎりと子れいむを器用に頭の上に載せて、れいむ親子は嬉しそうにずーりずーりと移動する。
そう、ゆっくりだって懸命に生きているのだ。これぐらいの事しかできないが、せめてもの私からのプレゼントである。
嬉しそうな笑みをこぼすれいむ親子を見て、私は少なくともその時までは自分がとてもいい事をしたかのように思えていた。

AM 13:00

「ゆゆ!おいししょうなおにぎりしゃんぢゃね!」
「じゃあ、わけるね!」

元の「おうち」にすっぽりと入りこんでいるれいむ親子。
どうやら食事の様だ。
れいむが舌を使っておにぎりを二つに割った。
中からはマヨネーズで和えたシーチキンがこぼれ出ている。
れいむはおにぎりの三分の一ほどを自分の所に寄せると、後の大部分を子れいむの前に置いた。

「ゆ?はんぶんこしにゃいにょ?」
「れいむはおなかすいてないからこれだけでいいよ!おちびちゃんはきにしないでゆっくりたべてね!いそいでたべすぎるとつまらせちゃうからきをつけてね!」
「ゆ!ゆっくりいちゃぢゃきましゅ!」
「「む~しゃむ~しゃ!しあわせー!」」

・・・私はれいむ親子を遠目から眺めていた。
少なくとも一日のサイクルは大体わかったし、それにあのれいむ親子の幸せそうな笑顔が見れただけでも良しとしよう。
私が帰ろうとしたその時、裏通りのドアがガチャリと開いて中から人が出てきた。
・・・手には何か棒の様な物を持っている

PM 13:08

「またゆっくりがいついたのか」
ドアから出てきた男がふうと溜息をついた。
表の店の店主であろうか?店員であろうか?定かではない。
ただあの手に持っている棒を見て私は驚いた。
「ゆ叩き棒」と言う物だ。
ゆっくり駆除用の道具の一種で多機能な棒状の道具と思ってもらえればわかりやすい。
街ゆっくりは汚い。素手で触れば何を持っているかも定かではないのだ。
トングや蠅たたきでは赤ゆっくりは潰せても子ゆっくりや成体ゆっくりは潰せない。
そこで開発されたのが「ゆ叩き棒」である。
一つにアマギり、叩き、足焼きの機能を持たせた棒で、それなりに普及を始めている。

男はビールケースの隙間を覗き込んだ。
そこには小麦粉の皮をぴったりとくっつけあって目をつぶっている。
寝ているのかどうかは定かではないが少なくとも男には全く気付いていないようだ。

「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」
「おちびちゃん・・・ゆっくりしていってね・・・ゆぴぃ・・・ゆぴぃ・・・」

男が手を伸ばした。
男の手はれいむの砂糖細工の髪を鷲掴みにするとそのまま一気に引きずり出して、勢いよく降りあげて地面に叩きつける。

「ゆ”!?ゆびぃっ!!」
れいむが顔面から地面に叩きつけられる。
そのまま男はれいむの小麦粉の体の背面部をゆ叩き棒で殴りつけた。

「・・・ゅぶっ!!」
「おぎゃあじゃああああああん!?」

事態を飲み込めない子れいむが大きく口をあけて声をあげている。
「オラッ!汚ねぇんだよ!」
「ゆぎゃぁっ!いだいいいいいいい!!」
男が足の甲でれいむの小麦粉の体を蹴っ飛ばす。
顔面が下に向いたまま底部の部分から蹴られたため壁に頭頂部が激突して、れいむの体が一瞬ひしゃげた。
そのまま地面にボトリと落ちてれいむの顔があらわになる。
最初の一撃で砂糖細工の歯が粉々に砕けて欠片が口腔や小麦粉の皮に突き刺さっている。
中で餡子が不規則に移動したからかどうかは定かではないが小麦粉の皮が腫れあがっていた。

「にんげんざんっ!どぼじでごんなごどずるっぎぐ!?」

れいむが声を上げた途端に斜め上からゆ叩き棒がれいむの小麦粉の顔面に叩きこまれた。
そのまま男はれいむを何度も滅多撃ちにしていく。
ドコ、ドコと鈍い音が響きわたり、打ちすえられるたびに返り餡子がビチャビチャと飛び散った。
「ゆっぐりやべっぶ!ゆぎっ!いだ!いだいいいいっぶぁ!やべでえええっぼ!ゆぐっ!にんげんざびっ!」

すでにれいむの小麦粉の皮はボコボコに膨れ上がり、どこが顔かどうかさえ分からないほどに中の餡子が大きく変化して膨れ上がっていた。
男が大きく手を振り上げてゆ叩き棒を打ち降ろす。

「ドコ」と音がした後に今まで聞いた事のない様なれいむの声が響き渡った。
「っゆぎぃぃぃぃぁぁぁああああああああああああああ!!!でいぶのおべべがあああああああああ!!」

打ち降ろされたゆ叩き棒はれいむの小麦粉の皮の上部に当たり、そのままのめり込むと勢いで寒天の左目がブチュンと飛び出したのだ。

「ゆぎぃっ!でいぶのおべべっ!おべべええええええええ!!いだいっ!いだいっ!!いだいいいいいいいいい!!いだいよおおおおおおおおお!!」

ブラブラとぶら下がって揺れるれいむの寒天の左目はれいむが動くたびにブルンブルンと右に左に動いていた。

「ん?」

男がふと振り返る。
そこには「おうち」の片隅でチラシをくしゃくしゃに固めて身をくるんで隠れている子れいむの姿があった。
頭隠して尻隠さず・・・とはまさにこの事であろうか。
底部だけがぷりんぷりんと揺れている。

「そういえば子ゆっくりもいたなぁ・・・」

男が手を伸ばすと、その袖にれいむが口で引っ張って制した。
男が面倒臭そうにグイグイと袖を左右に振っても、ズリズリと引きずられるようにれいむは食らいついている。

「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・お、おでがいでずっ・・・おぢびぢゃんだげは・・・おぢびぢゃんだげはだずげでぐだざい・・・ゆっぐりおでがいじばず・・・」

れいむが残った寒天の右目からポロポロと砂糖水の涙を流して懇願する。
既にどこがどうなっているのかさえ分からないほどボコボコに膨れ上がった小麦粉の皮の切れ目から砂糖水の涙がこぼれおちる。
男はすっと、袖を引いた。そして

「うるせえんだよ!!」
「ゆ”びっ!!」

れいむの小麦粉の皮上部に渾身の力を込めてゆ叩き棒を振り下ろした。
凹の形の様にひしゃげてトランポリンの様に元に戻ったれいむの体が力なく前のめりに潰れてそのまま地面に突っ伏してビクンビクンと痙攣を始める。

「ゆ”っ!ゆ”っ!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゅ”っ・・・!ゅ”っ・・・」

どうやらさっきの一撃でれいむの中枢餡がグシャグシャになってしまったようだ。
地面に突っ伏しって痙攣したまま徐々に動きが小さくなっていく。
男は再び底部を恐怖でプルプルと震わせている子れいむをひっつかむとグイグイと引っ張り始めた。
顔だけ隠れたチラシごとズルズルと引っ張りだされて行き、チラシがポロっと剥がれた。

「ゆんやああああああ!はなちちぇええええええ!はなちちぇええええええ!!」

しーしーも砂糖水の涙も涎も全く気にせずまき散らしながらグネグネと小麦粉の体をくねらせて必死に抵抗する子れいむを逆さに立てて、ゆ叩き棒の根元にあるボタンを押した。
「もちょにもどしちぇええええええ!うごけにゃいよおおおおお!ゆんやああああああ!」
男が子れいむの底部にゆ叩き棒を押しつける。すると

「・・・ぴぎぃっ!!あぢゅいいいいいいい!あぢゅいよおおおおおお!ゆっぐぢやべぢぇえええええええ!」

ジジジ・・・と子れいむの底部から煙が立って丸で火がついたかのように子れいむが泣き叫び始めた。
ゆ叩き棒の中に内蔵されている電熱線が高音を発し、子れいむの底部を焼いているのだ。
あっという間に子れいむの小汚い底部は焦げてしまい、完全に運動能力をなくしてしまった。

「ゆ”!ゆ”!どぼじぢぇぇぇ・・・れいみゅのあんよじゃんがぁぁあびょ!」
悲しみにくれる子れいむは真横にふるわれたゆ叩き棒に小麦粉の体をひしゃげてそのまま地面にこすれるように飛んでいき、壁にぶち当たる。
ズルズルと餡子の跡が壁にこびり付いて地面に落ちると、必死に底部を動かしてどこかへモソモソと這い始めた。

「きょわいよぉぉ・・・!いぢゃいにょはいやぢゃよぉぉ・・・!」

だが底部が完全に焦げている上に子れいむほどの大きさではまさにナメクジが這うがごとくのスピードしか出ていない。
男が子れいむを鷲掴みにして持ち上げた。底部をぷりんぷりんとさせて先ほどより激しく動いている。
「やべぢぇえええええ!もういぢゃいのいやぢゃああああああああ!きょわいよおおおおお!おぎゃあじゃあああああああん!!だぢゅげぢぇええええええええ!!」

男がゆ叩き棒の根元を子れいむの目の前にさし向ける。すると二本の小さな鋭い突起が飛び出した。
そのままブスリと子れいむの寒天の目の下に差し込むとグイッと手首を返して引き揚げた。
「プリッ」っと子れいむの寒天の両目が飛び出る。そして次の瞬間
「ゆびぃぃぃいいいいいっ!!おべべがっ!おべべがいぢゃいよおおおおおおお!!いぢゃいいいいいいい!!れいみゅのおべべえええええええええ!!」
寒天の両目が二個とも小麦粉の皮の眼窩から垂れさがる。少量の餡子の混じった黒い砂糖水が子れいむの双眸から零れ落ちる。

そのまま男は地面に子れいむを捨てた。
ポトンと地面に落ちると子れいむはあたりを右往左往しながら体を縦にのーびのーびさせたりぐーねぐーねさせながら目一杯口をあけて何かを叫んでいる。
「あ”あ”あ”あ”あ”!おめめっ!れいみゅのおめめぇぇぇぇっ!いぢゃいよぉぉ!!くりゃいよぉぉ!きょわいよぉぉぉぉ!きゅりゅりいよぉぉ!!おぎゃあじゃあああん!どぎょにいりゅにょおおおお!?れいみゅをおいちぇがにゃいぢぇえええええ!ゆ”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”!ゆ” え”え”え”え”ん!!」

既に前方三十センチ手前で動かなくなっているれいむに気付かずにひたすら親であるれいむの名前を叫び続ける子れいむ。
底部は既に動かず、寒天の両目がブラブラと揺れている。
男がゆ叩き棒を振り上げた。そのまま右往左往する子れいむに向かって振り下ろす。

「ゆ”え”え”え”ん”!ゆ”ぴっ!」
グシャッと言う音がした。
子れいむはドラ焼きの様に平らに広がったうえで、小麦粉の皮の上部がバックリと割れて地面に突っ伏したままピクピクと死にかけの芋虫のように動いている。
男がドアの向こうから箒とビニール袋を取り出すと、そのまま袋に詰めて、ゴミ箱に放り込む。
「ったく・・・何でこうゆっくりがいつくのかねぇ・・・」
そのまま不機嫌そうにドアをバタンと閉めると、辺りには静寂が訪れた。
私は目の前の出来事に、ただ眼を見開いて見ている事しかできなかった。


PM 17:45

私は一種の後悔を抱いていた。
食料は与えたのにあのれいむ親子を助け「なかった」と言う事に。
結局は私は偽善者だ。街ゆっくりを飼うという覚悟もなしに食料を与えたり、少しゆっくりに優しくした程度で通じ合ったと安易な自己満足に浸っていた自分に後味の悪さと怒りを混ぜたような感情を抱いている。
街ゆっくりの末路は大抵ああいった物だ。
下手に食料を与えてしまうと近隣の街ゆっくりが集まり収拾がつかなくなる。
できる限り苦しめて潰すと、ゆっくりが嫌う独特の「臭い」が出て暫くは街ゆっくりが近づかなくなるのだ。
だからあのように潰して処分する。私のした行為はかなり周りの迷惑を考えない行為であったのだ。
反省の念と自己嫌悪に苛まれながら椅子に腰かけ、溜息をつく。


「野良ゆっくりを飼う気もないのに手を出すな」
それが私の得た教訓であった。
最終更新:2010年10月09日 20:19
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