(39)909 タイトルなし(自分の道を行くミティ様)

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



もう駄目かと、少女が目を閉じた瞬間だった。体の横を誰かがすり抜ける感覚とほぼ同時に、聞こえる苦悶の声。
それがつい先程まで少女に執拗に迫ってきた男のものだと理解した時には、もう全てが終わっていた。

「早く消えな、ここはガキの来るような場所じゃない」

目を開いた少女が捉えたのは、黒いドレスに身を包んだ女性だった。
端正な顔立ちだが、鋭い眼光が一匹の獣を少女に想起させた。
その場から動こうとしない少女に舌打ちを一つ打ち、女性は胸の高さ程まで手を掲げる。

刹那、リィ、という音と共に女性の手の上に白い“氷”が生み出された。

「ここから先はあたしみたいなのばかりが住む街だ。
一体何を求めてやってきたのか知らないけど、“能力”一つ使えない奴は生きて帰れない。
さ、とっとと消えた消えた」

「…帰るわけにはいかないんです、ここに…私のお姉ちゃんがいるかもしれないから」

「で?それが一体どうしたの?
ここがどういう場所か知ってるなら、あんたのお姉ちゃんとやらがどうなったかも想像つくでしょ」

突き放すような声に耳を傾けることなく、少女は“街”の方へと再び歩みを進めていく。
たった1人の姉のために、自らの危険を顧みることなく。
少女が女性の脇をすり抜けていこうとした瞬間だった。

「…危なくなったらこれを使いな。
そうしたらすぐに飛んで行ってやるよ」

女性が少女に握らせたのは、銀色に輝くネックレスだった。淡い水色の光を放つそれは、おそらく“能力”が籠められている。
少女がそれを懐に仕舞ったことを確認して、女性は少女とは逆の方向へと歩き出した。
その背中に向かって少女は声をかける。振り返った女性はニヤリと笑ってこう応えた。

「…あたし?あたしはただの野良犬だよ」