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穏健派の逆襲」を以下のとおり復元します。
蒼星石「うーん…やっぱり…。みんな、ちょっとこっちに来てくれるかい?」 
何かの資料を見ながら、蒼星石は真紅、薔薇水晶、そして雪華綺晶の全員を集めた。 
真紅「何?何かあったの?」 
蒼星石「いや…最近、妙に事件が多いじゃない。射撃部の件といい、この前の防火訓練の事件といい…。だからさ、気になって調べてみたんだ。」 
薔薇水晶「…何か分かったの!?」 
蒼星石「うん…。実は、あの事件の後、校長の実印が盗まれていることが分かったんだ。でも、防火訓練の後には何故かそれが戻っていた…。しかも、明後日には生徒会選挙がある…。何かおかしいと思わない?」 
真紅「…もしかして、誰かが騒ぎに乗じて…。」 
その答えに、蒼星石は首を縦に振った。 


蒼星石「多分ね…。おそらく、その間に複製品を作ったんだと思う。で、ここでまた問題ね。この学校で、今一番権力を欲してて、なおかつ大勢の人を動かせるだけの人物といえば…」 
その問いに、全員の頭にある1人の名前が浮かぶ。 
真紅「…まさか。」 
蒼星石「…多分、そのまさかだと思うよ。あの人なら、やりかねないし…」 
薔薇水晶「私、ちょっと行ってくる…!!」 
雪華綺晶「私も…!!」 
そう言って、急いで職員室を立ち去ろうとする2人を、慌てて蒼星石が呼び止めた。 
蒼星石「待って…!!そんなやり方じゃ、あの人は絶対懲りないと思うんだ…。だから、みんな耳を貸してくれる?」 
そう言うと、蒼星石は全員に『ある作戦』を伝えた。 
真紅「名案ね。それなら、組織を一網打尽に出来るわ。 
蒼星石「よかった…。じゃあ、後は他になくなったものが無いか、そして証拠集めを手伝ってくれるかな?それと…この事は、他のみんなには絶対言わないでね…。本人の耳に入ったら、元も子もないからさ…。」 
それを了承すると、全員は自分のやるべきことを全うした。 
そして、2日後…運命の日は訪れた。 


その日、水銀燈は必死に笑い出しそうになるのを堪えていた。 
そう、今日は生徒会選挙の日…。立候補者は全て自分の息のかかったものだし、男子の大多数が、私を支持している…。 
それは、一部の隙も無い、完全な出来レースだった。 
壇上では、『支援者』たち全員がスピーチを終え、席へと戻っていく。 
長ったらしい芝居も、これで終わり…まずは邪魔な真紅を路頭に迷わせて…などと考えていた時、1人の人物が壇上へと姿を表した。 
蒼星石「ではここで、投票の説明を…といいたいところですが、1つ残念なお知らせがあります。」 
全員「…?」 
蒼星石「もし、この選挙…そして、この前の防火訓練の時の事故等が、1人の人物によって仕組まれた、巧妙な罠だとしたら皆さんはどうしますか?」 
その時、水銀燈の額から、どっと汗が噴出した。 


蒼星石の発言に対し、生徒たちはどよめいた。 
蒼星石はそれを制止させると、次々と証拠の品を取り出し、説明し始めた。 
蒼星石「まず、この前…あるグループと射撃部が、小競り合いを起こしたのを覚えているかな?その時、妙に2つのグループがラウンジに集まっていたと思わない?まるで、僕達の目を引き付けるように…」 
その瞬間、水銀燈が築き上げてきたもの全てが、音を立てて崩壊した。 
蒼星石の言葉1つ1つに反応して、生徒から敵意の目が自分に向けられているのが分かる。 
一方の『水銀党』の面々はというと、女子からの非難を避けるように縮こまっていた。 
どうやら、女子全員を敵にまわすのが、よほど怖かったようだ。 
壇上の『支援者』達は、全員雪華綺晶に取り押さえられてしまったらしい…。 
蒼星石が全てを語り終えた時、非難の声は一斉に水銀燈に向けられた。 
元々、女子には余り人気がなかったせいもあって、その内容も実に容赦が無いものだった。 
その時、1発の銃声が体育館に響いた。 


水銀燈「うるさいわね…。そうよ、その通りよ!でも、肝心なことを忘れていたようね…!」 
そう言うと、水銀燈は生徒たちに銃口を向けた。 
水銀燈「でも…もうお仕舞いだわ…!私の人生も、何もかも…!!あなたたちが邪魔さえしなければ、こんな事にならなかったのに!!」 
真紅「逆恨みもいいとこだわ…。取り返しのつくうちに止めなさい…!」 
水銀燈「うるさい!取り返しなんて今更…!そうだ…だったら、あなたから…!!」 
そう言って、銃口を真紅に向けなおす水銀燈。 
その瞬間、何かに銃を弾かれた。どうやら、上の観覧席の部分に射撃部のスナイパーがいたらしい。 
水銀燈「…ああ。…あなたたちが、これほどまでに出来るとは思わなかったわ…。」 
そう言うと、水銀燈はその場に崩れ落ちた。まるで、役目を終えた人形のように…。 


その後、水銀燈はすんなりと取り押さえられた。 
失策の代償…それはあまりに多すぎた。 
まず、前回の校舎の改築費用を負担しなければならないだろうし、学校にもいられないだろう…。裁判も起こされるに決まってる…。そして、待つのは刑務所…。 
もはや、水銀燈には笑うことしか出来なかった。 
そんな水銀燈に、校長であるローゼンが裁きを下す。 
ローゼン「水銀燈先生…今回の一件は非常に残念だよ…。でも、君を救う手立てが無いわけでは無いんだ。僕の提案を聞いてくれるかい?」 
水銀燈「…なぁに?あなたの奴隷にでもなれって言うの?」 
ローゼン「…ま、それでもいいけどね。もしくは、1ヶ月薔薇水晶先生と一緒に暮らして、言うことをしっかり聞く。それが守れれば、今回の一件は無かったことにしてあげるよ。」 
水銀燈「…そんなことでいいの…?」 
ローゼン「だって、それ以上は君も続かないだろう?…いいよね、ラプラス君。」 
ラプラス「校長のお好きなように…。決定権はあなたにあるのですから…。」 
こうして水銀燈は1ヶ月間、薔薇水晶のお世話になり、道徳について1から学ぶことになった。 
そして最終日、薔薇水晶の「もう、悪いことしないよね?」という問いに対し、水銀燈はただ疲れた様子で首を縦に振った。 
時折、「もういや…」とブツブツ呟きながら。 
しかし、その時の濁った瞳が、一体何を意味しているのか…その時点では誰もそれを理解できるものは居なかった。 


完 

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