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女たちの戦い」を以下のとおり復元します。
巴「あ…おはよう。学校には慣れた?」 
ある日の朝…巴は学校へ向かう1人の少女に声をかけた。 
綺麗な金色の髪を翻すと、その少女はにっこりと笑い、こう答えた。 
オディール「ええ…。でも、最近雨が多くて…。」 
巴「梅雨だから仕方ないよ…。そういえば、今日の数学の…」 
いつもの朝の、何気ない会話… 
しかし、その2人の隣に黒い車がぬっと現れたかと思うと、その車の運転手はいきなりオディールと巴を車の中に押し込んだ。 
その時間…わずか数十秒足らず…。 
平和なはずの一日は、こんな全く別の形でスタートした。 


オディール「一体何の真似です!?この私が、夕所正しきフォッセー家の人間と知っての所業ですか!?」 
相手に少しでも弱い所を見せないようにと、気丈に振舞う少女。 
しかし、その不安は隠しきれなかったようで、その声は若干震えている。 
その様子にくすっと笑みをこぼすと、彼女たちを車に押し込んだ者はこう答えた。 
?「心配しなくても大丈夫よぉ…♪今日は久しぶりに天気がいいでしょう?だから、ちょっと遊び相手が欲しかったの♪」 
その車の運転手…それは紛れもなく彼女たちがよく知る人物だった。 
そのあっけらかんとした態度に、巴は少しホッとしたようにこう質問した。 
巴「びっくりさせないで下さい…。それに、いつもの車はどうしたんですか?水銀燈先生…。」 
水銀燈「んー?車検に出してるのよねぇ…。じゃなかったら、こんな『プレジデント』なんて乗るわけ無いでしょう…?ホント、おじさまたちってこういう車が好きなのよねぇ…」 
その言葉に、「ああ…また貢いでもらったんだ…」と巴は確信する。 
一方のオディールはというと、先ほど水銀燈が言った言葉に興味を示した。 
オディール「…あの、先生…。このような車で、一体どこに向かおうとしていたのですか?」 
それは、『お嬢様』の悪い癖が出た瞬間だった。 


水銀燈「んー…そうねぇ…。ちょっと蒸し暑いしぃ…海にでも行ってみる?」 
オディール「海…ですか?でも、日本の海はあまり綺麗では無いとうかがっているのですが…。それに、水着も用意しなくては…。」 
もうどこかに行く気満々のオディールに対し、巴のほうはあまり乗り気ではなかった。 
無断欠席なんて出来るわけがない…。そんなことをしたら、みんなに迷惑がかかるはず…。 
それに、今日は数学のテストがあるはず…。 
そんな2人に対し、水銀燈は不敵な笑みを浮かべながらこう言った。 
水銀燈「何言ってるのぉ?この車に海と来たら、船に乗るに決まってるでしょう?私の船って訳じゃないんだけど、いい船があるのよ…♪真っ黒で、とても綺麗な…」 
オディール「是非乗ってみたいわ…!巴さんも、一緒に行きましょう?ねっ!?」 
その言葉に、巴は「うん…。」としか言えなかった。 


水銀燈「…でね、その船はあの『ステルス戦闘機』をイメージして作られたんですって。で、仲間内ではその船は別名『ブラッディーメアリー』って呼ばれてて…」 
延々と、その船がさも自分の船かのように自慢する彼女。 
その時、巴の携帯電話が突然鳴り出した。 
何だろう…と思い、巴が「もしもし…」と電話に出ると、受話口から車内に響き渡るほどの大きな声が聞こえてきた。 
?「トーモーエー!!一体、どこにいるの!?早く学校に来なきゃ、めっめーなのよ!?」 
一瞬にして、車内に緊張が走る。 
その声は紛れもなく、同じ有栖学園の教師…雛苺先生…。 
「何で、電源を切っておかなかったのです!?」と巴を責め立てると、オディールは巴の耳元でこう言うように指示した。 
オディール「電車に乗っていたら急にお腹が痛くなって、今日は学校に行けそうもありません…言って…!」 
巴「あ…あの、電車に乗っていたら急にお腹が痛くなって…」 
雛苺「嘘よ!さっき、オディールの声も聞こえたわ!!2人して、学校をずる休みしようとしてたのね!?もう、ヒナには全部お見通しなのよ!?」 
その言葉に、困惑する2人。一方の水銀燈はというと、厄介なことになったとため息をつきながら、車を路肩に駐車した。 
オディールの代わりに、自分が指示を出すために…。 


巴「あ…いえ…。…そ、そう言うわけじゃないんです…!はい…。ええ…。」 
水銀燈「…全く、何話してるのよ…。ぜんぜん聞こえないじゃない…。」 
これでは車をとめた意味が無いではないかと、水銀燈はイライラした様子でそう呟いた。 
水銀燈が車を止めた直後…雛苺の元気な声は急に聞こえなくなり、代わりに先ほどから巴が青ざめた様子で電話に対応している。 
やがてそれが、オディールに渡されると、彼女もまた何か怯えた様子で電話に対応していた。 
「何を雛苺相手に、そんなに怯えているのか…。」と呆れた様子で、水銀燈はあくびをしながら2人を見る。 
やはり、生徒にとって『教師』とはそんなに権威のあるものなのだろうか…。ならば、ここは大人である私の出番…。 
そう考えるやいなや、水銀燈はその電話を無理やりひったくると、相手に向かって声色を変えながらこう言った。 
水銀燈「もしもしぃ?お電話代わりましたぁ。私、柏葉の親戚のものですが…」 
?「何を馬鹿な事を言ってるの…!銀ちゃん…早く学校に…」 
その声を聞いた瞬間、彼女は思わず電話を切った。 
なるほど…2人が怯える訳だ…。 
電話の主は、紛れもなく薔薇水晶…ということは、この電話から私達の居場所も特定されているはず… 
とすれば、数分以内に雪華綺晶が私たちを連れ戻しにやってくる…!! 
水銀燈「…ッ!!」 
そう舌打ちすると、彼女はアクセルを思いっきり踏み、このまま逃げる道を選択した。 
今日の車は、いつもと違う車…。もしかしたら、見落としてくれるかも…そんな淡い希望を抱きながら…。 


水銀燈「…もう、電源の入ってるケータイは無いでしょうね!?電源が入ってると、逆探知されちゃうのよ!?みんな大丈夫!?」 
巴「はい…。でも、もうこうなったら潔く謝ったほうが…」 
オディール「そ、そうです…!その方が恩赦も…」 
水銀燈「何言ってるの!?絶対に嫌よ!!」 
こわばった顔で、そう言う彼女。何が彼女をそうさせるのか…と2人が考えていた時、車内に携帯電話の呼び出し音が響いた。 
発信源は、水銀燈のもう1つの携帯電話…。どうやら、『馬鹿な男』が電話をかけてきたらしい。 
水銀燈「チッ!この忙しい時に…!!もしもし、今取り込み中!話なら後で…」 
?「ダメよ。今聞いて欲しいの。」 
水銀燈「め、めぐ!?何であなたがこの電話の番号知ってるのよ!?」 
めぐ「この前行ったとき、勝手に見ちゃった♪だって、先生…すぐどこかに行っちゃうんだもん…。あ、でも大丈夫。薔薇水晶先生には言ってないから…♪」 
その言葉に、水銀燈は胸をなでおろした。しかし、安心するのにはまだ早かったようだ。 
めぐ「でも…今日は先生の授業があると思って楽しみにしてたのに、先生がいないんじゃつまんないなぁ…。もう帰ろうかなぁ…。」 
水銀燈「だ、ダメよ!!ちゃんと授業は受けなきゃ…」 
めぐ「イヤ。先生は私に『いい子』になって欲しいんでしょう?だったら、ちゃんと授業やって。でないと私、本当に帰っちゃうかも…」 
その言葉に彼女は「あー!もう!!」といきり立つと、車をUターンさせ、元来た道を戻り始めた。 
戻れば『地獄』と分かっている道を、猛スピードで…。 
彼女にとって、それほど『めぐ』は大切な存在だった。 


完 

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