唯「ぎいたにくびったけ!」(その2)
バチーン!
唯「んひいいぃぃ!("q")」
バチーン!
唯「んひいいぃぃ!("q")」
家中に憂の振るう鞭の音と、唯のすさまじい絶叫がこだまする。
憂は家に帰るやいなや気絶している唯の服を脱がせると、スタンガンで起こしてお仕置きを開始した。
憂「あんなところで恥を振りまいて!」
バチーン!
唯「ぎょごおおお!("q")」
憂「私の友達の前でもあんな醜態晒して!」
バチーン!
唯「ぎょごおおお!("q")」
憂「なんて情けないの、お姉ちゃん!」
バチーン!
唯「あぎょおお!("q")」
この日憂は、初めて躾のためではなく悲しみから鞭を振るった。
その勢いはかつてないほど凄まじく、唯の皮膚はあちこち破れて出血している。
唯は何度も気を失ったがその度に憂はスタンガンを使って起こし、お仕置きを再開するのだった。
憂「はあ、はあ。…お姉ちゃん、ちゃんと反省した?」
唯「んひぃ、んひぃ、いやでつ…ぎいた、ぎいた。ゆいのぎいた("q")」
憂「まだわからないの!」
バチーン!バチーン!
唯「うぎゃあああああ("q")」
バチーン!バチーン!
唯「ぎいぃいたぁぁ("q")」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
唯「おんぎょおおごごごおおごおおお("q")」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
唯の身体はもうズタボロだったが、憂は構わず叩き続けた。
醜い絶叫は徐々に小さくなってゆき、やがて虫が鳴くような声で唯は許しを請うた。
唯「ぁ…ぅ…ぅーぃ、ごめんなたい("q")」
物分かりの悪い池沼ではあったが、さすがに生命の危機を感じたのだろう。
憂「はあっ、はあっ…もう、ぎいたが欲しいなんて言わないわね?」
唯「ぁーぅ('q')」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
唯「ぎょごぉ…もう、いわない。ゆい、いいこ("q")」
憂「…わかればいいのよ」
憂の表情が柔らかくなり、痛みで動けなくなった唯に「おしめ☆」と書かれた洗い立てのTシャツを着せてやった。
憂「じゃあご飯作ってあげるから待っててね」
唯「むひぃ、むひぃ("q")」
そうして普段通りの憂に戻る。だがその胸は後悔と喪失感で満たされていた。
友人とその先輩の前で見せてしまった失態。
憂「また、だめだった」
それは生まれてから何度も味わってきた絶望。
憂「やっぱり私には、お姉ちゃんしかいないんだね」
憂は足下で倒れている唯を見下ろして呟いた。
ぴんぽーん♪
憂が夕食を作るためにキッチンへ向かおうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。
憂「はーい、今いきます」
憂は玄関へ行き、扉を開ける。
ガチャ
憂「梓ちゃん?」
梓「こんばんは」
扉の向こうには、昼間に醜態を見せてしまった梓と、軽音部の先輩たちがいた。
澪「やあ」
憂「みなさんも…昼間は、みっともないところをお見せして申し訳ありませんでした…」
憂は皆の顔を直視できず、顔をうつむけたまま話す。
律「気にすんなって」
憂「あの、それで今日はどういう…?」
紬「ほら、梓ちゃん」
梓「あ、はい」
憂「?」
梓「唯先輩、いるかな?」
憂「お姉ちゃんは…寝てるかな」
唯は憂の激しいお仕置きを受けてリビングでへばっていた。
梓「あぁ…そうなんだ。いろいろあったから疲れたのかな?」
憂「梓ちゃんがお姉ちゃんに用なの?」
梓「うん、実はね」
梓が言いかけたときだった。
唯「あーう。うーい。ゆい、ぽんぽすいたでつ('q')」
空腹に耐えかねたのか、さっきまではお仕置きによって動くことすらままならなかったはずの唯が憂を探して玄関まで出てきた。
梓「あ、唯先輩」
唯「あーう。あずなん('q')」
憂「お姉ちゃんは出てこないで!」
憂は唯が再び彼女たちの前で醜態を晒してしまうことを恐れていた。
梓「憂」
憂「でも…」
梓はクスリと笑うと、背負っていたギターケースを下ろす。
憂は、いつも梓が背負っているものと大きさや形状が違うことに気がついた。
憂「?」
怪訝そうな憂の前で梓はケースを開き、中身を取り出した。
憂「え…?」
唯「あーう!(゚q゚)」
憂が目を見開き、唯は奇声を上げた。
梓が抱えているギターは昼間、唯の心を奪ったあのぎいただった。
憂「梓…ちゃん?」
唯「ぎいた!ぎいた!(゚q゚)」
唯が身体の痛みも忘れて駆け寄り、梓の腕からぎいたをひったくる。
憂「こら!おねえちゃん!」
バチーン
梓「憂!いいんだよ!」
唯「ぎいた、ぎいた!むふぅむふぅ(^q^)」
憂「梓ちゃん、このギター…」
梓「プレゼント、かな。私たちからの」
憂「そんな!」
梓「お店に飾ってあった、あのレスポールじゃないんだけどね」
確かによく見ると形や色はそっくりだが、ヘッドにはGibsonではなくlaytechと書かれ、どことなくネックも細いように感じる。
しかし池沼の唯がそんなところにまで気がつくはずがなかった。
チェリーサンバーストのギターを抱え、はしゃぎまくる。
憂「こんな高いもの、もらえないよ!」
律「あー、心配ない、心配ない」
澪「あそこ、ムギの家がやっているって言っただろ?」
紬「値切ったら半額にしてくれたわ。ふふふ」
憂「でも」
梓「私、なんだか嬉しかったの」
憂「?」
梓「私が初めてギターを買ったとき。手が小さいとかいろいろあったんだけど、楽器屋さんに展示してあったむったんを見た時、しばらく心を奪われていたんだ…唯先輩のように」
律「誰だって多かれ少なかれそんな経験はあるもんさ」
梓「まあ、このギターは本物じゃなくてコピーモデルだけど」
紬「でも、喜んでくれてよかったわ」
唯「あーう!ぎいた!ぎいた!(^q^)」キャキャキャ
澪「それに…大きなお世話かもしれないけど、唯がもし、本当に打ち込めるものが出来たなら…何かが変わるんじゃないかって」
憂「みなさん…」
憂は皆の優しさに涙した。昼間のような失態を見せても、池沼の唯を気遣ってくれる。
彼女たちの優しさが本当に嬉しかった。
憂「ありがとうございます…ほら、お姉ちゃん!ちゃんとみなさんにお礼をいいなさい!」
唯「あーう!みんないいこ!いいこ!(^q^)」
憂「お姉ちゃん!」
律「はは、いいよいいよ。唯、それを持ったからにはちゃんと練習するんだぞ!」
唯「あーう!ゆい、いいこいいこ!れんちゅう、する!(^q^)」
律「約束だ」
唯「あーう!(^q^)」
梓「あんまり憂を困らせちゃだめですよ」
唯「ゆい、いいこ!(^q^)」
紬「じゃあ、いきましょうか」
澪「そうだな」
梓「じゃあ、憂、また明日学校で」
憂「うん!本当にありがとうございました!」
憂は深々と頭を下げ、皆を見送った。
唯「ぎいた、ぎいたでつ(^q^)」
憂「よかったねえ、お姉ちゃん」
そう言って憂は、はしゃいでいる唯を強く抱きしめた。
新しい服に着替えてもなお身体に染みついた池沼臭がひどかったが、今そんなことは気にならなかった。
唯「うーい?なく、だめ(゚q゚)」
憂「うん、ごめんね。さ、ごはんにしましょう」
唯「あーう!(^q^)」
憂はギターを抱えた唯の手を引き、家の中へと戻る。
そしてかけがえのない友人、かけがえのない出会いに感謝しながら、玄関の扉を閉めるのだった。
唯「ふんぐおおぉおおーー。ずぴー。ずずずぴー。(~q~)」
毎夜のように平沢家とその周辺に、唯の汚らしい不気味ないびきが響き渡る。
カチャ
唯の部屋の扉がかすかに開き、憂が顔を覗かせる。
唯「むふぅぅ。ぎいた、ぎいた(~q~)」
憂「うふふ、お姉ちゃん、ギターと添い寝してる」
唯は自分のウンチやおしっこ、体臭で臭う布団にギターを持ち込み、抱きしめて寝ていた。
真新しいギターに唯の涎や鼻水がべとべとに付着している。
憂「ほんとうにありがとう」
カチャ
憂は今まで味わったことのない幸福感に満たされ唯の寝顔をみつめるのだった。
朝食を作り、憂は唯を起こすために扉を開ける。
手にはもちろん唯の起床用のスタンガンを携えて。
ガチャ
憂「お姉ちゃん、朝だよ」
唯「あーう!(^q^)」
憂「お姉ちゃん!?」
なんと唯は、憂に起こされる前に自分で起きていた。
こんなことは憂が唯の介護を始めてから初めてのことである。
埃のかぶった鏡の前でギターを肩から提げて悦に浸っている。
憂は目の前の光景が信じられなかった。
唯「うーい!(^q^)」
憂「お、おはよう、お姉ちゃん」
憂の頭に、昨日澪が言った言葉が浮かんだ。
澪『唯がもし、本当に打ち込めるものが出来たなら…何かが変わるんじゃないかって』
都合の良い幻想かもしれない。希望が絶望に変わり、打ちのめされるかもしれない。
だけど憂は信じてみようと思った。
唯「うーい!ゆい、うんたんじょーず!(^q^)」
そう言って唯は肩から提げたギターを得意げに見せびらかす。
憂「お姉ちゃん、うんたん♪じゃなくてギターでしょ?」
唯「ゆい、うんたんじょーず(^q^)」
そう言うと、唯はギターのボディーを勢いよく叩きながらうんたん♪を始めた。
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
憂「…」
出鱈目なリズムをとりながら身体を大きく左右に振り、ギターを叩きまくる。
憂「ですよねぇ~…」
憂が溜息混じりに呟いた時、爆音が鳴り響いた。
ブブブー!
興奮状態の唯の肛門から朝一のウンチが放出されたのだ。
しかし唯はそれすら気にかけず、一心不乱にギターを叩いてうんたん♪を繰り返している。
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
無理にうんたん♪を遮ったりギターを取り上げたりすると、池沼泣きをして面倒なことになるのは目に見えている。
仕方なく憂は唯の太い首に後ろから腕を回し、思いきり締め上げた。
唯「うんたん!うんt…グゲッ…ゴゴ…ゴゴゴゴゴ("q")」
唯「むひぃ(×q×)」グッタリ
そして気絶した唯のオムツを手早く替えると、豚のような巨体を引きずり、リビングまで運ぶのだった。
その日学校へ行くと、梓が昔使っていたというギター教本を持ってきてくれた。
放課後家へ帰ると速憂はその教本を見ながら、唯にギターの弾き方を教えようとする。
しかし池沼で努力することを知らない唯は、すぐに音を上げてピックを放り投げ、ギターのボディをバシバシ叩きながらうんたん♪を始めてしまうのだった。
池沼に物を教えるというのは並大抵の苦労ではなかった。
もしかしたらサヴァン症候群のように、ギター、あるいは音楽に対して類い希なる才能を発揮してくれるのではないかとほんの少しだけ淡い期待を抱いていたが、唯は只の池沼だった。いや、池沼の中の池沼だった。
それでも憂は信じ続けた。唯が幼いころから夢見続けてきたギター。それはきっと何かを変えてくれる。たった一つの最後に残った道しるべ。
憂は毎晩唯が寝静まってから、唯に教えるために自身でもギターの練習をしていた。
教本では唯の池沼の頭で理解出来るはずもなく、実際に音を鳴らしながら指の形やピッキングなどを教える必要があった。毎晩睡眠時間を削り、練習を続けた。
そして毎日学校が終わるとすぐに家に帰り、唯に弾き方を教える。
唯が投げ出しそうになると鞭を振るい、再びギターに向かわせた。
憂「ほらお姉ちゃん。これがCのコード。何回も教えたでしょう。押さえて弾いてごらん」
唯「あーう('q')」
何度教えても、何度手本を見せても、唯はCのコードすら押さえられなかった。
憂「お姉ちゃん!いつになったらできるようになるの!」
唯「あーう!ゆい、うんたんじょーず!(^q^)うんたん!うんたん!うn
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
唯「んひいいいいいぃぃぃぃぃぃ!("q")」
憂は何度も鞭を振るう。
自分の希望のためだけではない。唯にギターをプレゼントしてくれた軽音部の皆を裏切らないために、憂は繰り返し繰り返し唯に教え込む。
そんな日々が3ヶ月も続いただろうか。
この日の放課後、憂は梓に誘われて軽音部の部室でお茶とケーキをごちそうになっていた。
律「どうだい?唯の様子は」
憂「せっかくいただいたギター、毎日練習してるんですけど…全然弾けるようにならなくて」
澪「まあ、初めて楽器を持ったのなら、仕方ないよ」
憂「澪さんもそうだったんですか?」
澪「うん。最初の何ヶ月かは指の力が足りなくて弦がびびったり、皮が剥けたりしてたよ」
紬「私もピアノを始めた時、うまく弾けずに何度も諦めかけたわ」
憂「でもお姉ちゃんは池沼だから…」
池沼なだけではない。池沼なうえに怠惰だった。
梓「たぶん、まだきっかけがないんだよ」
憂「きっかけ?」
梓「ギターに、音楽にどう向き合えばいいのかを知るきっかけ」
律「私もさ、こうして家で雑誌とかを叩いていて」
そう言って律は、澪の読んでいる音楽雑誌を取り上げた。
澪「おい、律!」
かまわず律は雑誌を膝に乗せ、スティックで規則正しいビートを刻む。
トトツタトトツタ
律「何度も何度も、気が遠くなるくらい叩いて」
律「あるとき突然、自分の理想の音に出会う。雑誌でもね。
力の入り具合とか、タイミングとかいろいろな要素があるんだろうけど。
最高の一発。それに出会った時、歯車は回り始める」
トーン!
律の放った音が、部室にこだました。
憂「きっかけ…」
紬「何か一つ出来るようになれば、そこから世界が広がっていくわ」
憂は思い返してみた。唯にギターを教えるため、自身もギターを猛練習していた。
初めは指が思うように動かずピッキングもミスだらけだったが、初心者が躓くと言われるFのコードを完璧に弾けるようになった時、確かに世界は広がった気がした。
「何かが出来る」ことを知る。そしてその先を創る。
池沼でも、いや池沼だからこそ、それを感じることが出来れば。
きっと変わる。
ジャーン♪
梓がギターをアンプに繋ぎ、音を出した。憂は梓に目をやる。
ジャンジャカジャンジャカ♪
身体でリズムを取りながらジャジーなリフを鼻歌まじりに刻む。
憂「梓ちゃんのギターもかわいいよね」
憂は梓が弾いているフェンダーのムスタングを見て言った。
梓「へへ…まあ他のギターと比べたら少し小さいしね。だけどネックが短いせいでチューニングが狂いやすいんだ」
憂「本当だ。3弦が半音の半分の半分くらいずれてる」
梓「え…?」
梓は演奏を止め、半信半疑でギターのチューニングを確認する。
他の部員も訝しげにそれを見ていた。確かに憂の言う通りだった。
梓「…どうしてわかったの?チューナーもなしに」
憂「お姉ちゃんに教えるために私も結構練習したんだよ」
梓「いや、だからってそれは」
憂「?」
憂は不思議そうに小首をかしげる。
澪「絶対音感…」
幼少から訓練を受けている紬のような人間なら、ある程度の絶対音感は持ち得ている。
梓や澪も練習の末に、基準の音さえあればそらでチューニングを合わせることができるほどの相対音感は習得していた。
だが、憂の場合はそれとは全く性質が異なる。
幼少の頃から池沼の世話に明け暮れ、ほとんど音楽に接することのなかった憂が持っているそれは、まさしく天武の才だった。
憂「ど、どうしたの?みんな」
梓「ううん、なんでも」
梓は憂の持つ才能に言及しかけたがやめた。
憂がそれを自覚することにより、憂と唯の関係が微妙になってしまうのではないかと躊躇われたのだ。
憂「アンプを通すと、全然音が変わるんだね。CDとかで聞く音だ」
梓「うん、そうだね。ちょっと弾いてみる?」
憂「いいの!?」
憂が目を輝かせた。梓は気がついた。憂は唯の指導のためなのではなく、純粋にギターが好きなのだ。
本人は唯への盲目的な愛のために全く自覚してはいないが。
憂「本当だ、ネックが少し短くて細いんだね。…でも、嫌いじゃない」
ムスタングを肩から提げた憂はネックの感触を確かめる。
ジャーン!
憂「わあっ!すごい!」
開放弦を鳴らした憂は歓喜の声を上げた。梓はそれを目を細めて見守る。
が、
ジャカジャーン!ピロリロピロリロギュイーン!
高速で動く右手とそれに完全に追従する左手。寸分の狂いのないテンポキープ。憂が放つ音に部室にいる誰もが圧倒され、魅入っていた。
ジャーン!
憂が弾き終えサスティーンが消えても、皆は身じろぎすらできずにいた。
憂「あ、ごめんなさい!調子に乗っちゃって。お聞き苦しかったですよね…」
律「…いや…そうじゃなくて」
やっとのことで律が口を開いたが、それ以上の言葉は出せなかった。
憂「はい、梓ちゃん。ありがとう」
憂は梓にギターを返す。
梓「ああ、うん」
憂「そろそろ帰らなきゃ。練習の邪魔しちゃったし」
澪「そんなことないよ」
憂「お姉ちゃんも待ってるし。じゃあ、紬さんお茶とケーキごちそうさまでした」
紬「いえいえ。また来てね」
憂「それじゃあみなさん、失礼します」
憂が部室を出て行った後、しばらくは誰も口を開けなかった。
憂が家へ帰ると、玄関で唯が座り込んで帰りを待っていた。勿論オムツは膨らみ、あたりには悪臭がたちこめている。
憂「ただいま、お姉ちゃん。遅くなってごめんね」
唯「あーう('q')」
憂は鞄から鍵を取り出して玄関の扉を開ける。
憂「いいかげん、1人で鍵くらい開けられるようになろうね」
唯「あーう('q')」
毎日同じやりとりが繰り返される。
唯は間の抜けた返事をするが、憂の言っている意味すらわからないだろう。
そしていつものように唯のウンチまみれのオムツを替えてやる。
唯「あーう!ゆいのおむつきれいきれい!(^q^)」キャキャキャ
大量のウンチで汚れたお尻を拭きオムツを替えたことで、唯もすっきりしたようだ。
憂「さあ、お姉ちゃん。今日も練習しましょう」
唯「あう?れんちゅー?(゚q゚)」
憂「ぎいたの練習だよ」
唯「ゆい、れんちゅーいや!(>q<)」
唯はここにきて駄々をこね始めた。
無理もない。憂の指導は怠惰な唯にとって苦痛以外の何物でもなかった。
毎日怒鳴られ鞭で叩かれる。
唯はただ、大好きなぎいたを抱えてうんたん♪をしていればそれで幸せなのだ。
憂「お姉ちゃん!」
唯「びーーーー!ゆい、れんちゅーや!しない!うーいわるいこ!(>q<)」
唯は池沼泣きを始め、フローリングの床をごろごろ転がる。
べちゃ!
転がる唯の顔が外したばかりのオムツの上に乗り、まだ暖かい新鮮なウンチがべっとりとついてしまった。
唯「びえええええええ!くちゃいいいいいい!!!("q")」
とびきり臭い唯のウンチが、自らの目や鼻、口に容赦なく入る。
憂「お姉ちゃん…」
バチーン
唯「んひいいいいいぃぃい!!("q")」
憂の鞭が唯の身体を打つ。いつもなら服を脱がせてからお仕置きをするのだが、姉のあまりの情けない姿に服の上から叩いてしまう。
唯の「ハネムーン☆」と書かれた間抜けなTシャツが破れ、血に染まる。
憂「なんて情けないの、お姉ちゃんは!」
バチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーン
唯「うぎょおおおぉぉぉぉ!!("q")」
バチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーン
唯「んひいいいいいい("q")」
バチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーンバチーン
気の遠くなるくらいの時間、憂は唯の身体を鞭で叩き続けた。
唯「んひぃ、んひぃ…("q")」
憂「お姉ちゃん、このぎいたを貰ったときに律さんと約束したでしょう」
どれくらい叩いたのだろうか、憂が手を止めて唯を諭す。
唯の頭でそんなことを覚えているわけがなかったが、憂は構わず話し続けた。
憂「ちゃんと練習するって。忘れたの?」
もちろん忘れている。しかしいくら池沼の唯といっても、これ以上憂を怒らせたら命にかかわることくらいは理解できた。
唯「ぅーぃ…ごめんなたい("q")」
唯は素直に謝った。
憂「わかればいいのよ、お姉ちゃん。ちゃんと練習するわね?」
唯「ゆい、いいこ。れんちゅーする("q")」
憂「いい子ね。じゃあ、お部屋からぎいたを取っていらっしゃい」
唯「あーう("q")」
服も身体もボロボロになり顔にウンチをべっとりとつけながら、唯は自分の部屋にギターを取りにいった。
1人取り残された部屋に立ち尽くし、憂は呆然と自分の手を見る。
憂「殺してしまうところだった…」
行き過ぎた指導だということはわかっていた。
しかし憂は叩かざるを得なかった。
たった一つの希望。それにすがりつくしかなかった。
この先にあるのは絶望かもしれない。
おそらくそれに直面した時、自分は唯を殺すのだろう。
それでも。
憂「きっかけ、かあ」
信じるしかない。音楽の力を。
唯「うーい('q')」
唯がギターを持って2階から降りてきた。
憂は濡れたタオルで唯の顔にべっとりとついたウンチを拭いてやる。
憂「じゃあ、始めようか」
こうしていつものように練習が始まった。
唯は相変わらずだった。
そもそも唯の手は「掴む」「握る」「叩く」こと以外はできない。
箸はもちろん持てないし、字も書けない。絵を描くときはクレヨンを握って描く。
食事は調子のいいときはスプーンとフォークで、しかしほとんどは手づかみだ。
虫を捕まえようとするときなどは「摘む」という動作が出来ないため、すぐに握り潰してしまう。
憂に連れて行ったペットショップで売り物のカブトムシを全て潰してしまったこともあった。
そんな唯であるから、ギターのような繊細な動作を必要とする楽器などはできるはずもなかった。
しかし憂は根気強く唯の間違った指の形をなおしてやり、右手のピッキングも丁寧に教える。
鞭は極力使わないことにした。
音楽の楽しさに気づくきっかけを阻害してしまうと考えたからだ。
そうして2時間ほどたった時だった。
憂「さあお姉ちゃん、弾いてごらん。Cだよ」
何度目になるだろうか。憂は唯の左手の形を矯正してやり、ピッキングを促す。
唯の大きな右手が弦の上に振り下ろされた。
ヂャーン
憂「え…?」
憂「お姉ちゃん、もう一回!」
唯「あーう('q')」
ヂャーン
憂「あ…」
太い不器用な左手の指が隣り合った弦にあたって音を濁らせ、外れた音も聞こえていたが、唯はたしかにCっぽい音を奏でていた。
憂「もう一回!」
ヂャーン
偶然ではなかった。何度やらせても唯はきちんとCっぽい音を出していた。
憂「やった!やったよぉ、お姉ちゃん!」
唯「あーう('q')」
憂が唯を抱きしめる。強烈なウンチの残り香がしたが、些細なことだった。
唯は一歩、確実に前に踏み出したのだ。
憂「お姉ちゃん、これがCだよ!」
唯「あう?しー?('q')」
憂「そうだよ!お姉ちゃんが弾いたんだよ!えらいよ!」
唯「ゆい、えらい?おりこーさん?(゚q゚)」
憂「おりこうさんだよ!」
唯「あーう!ゆい、おりこーさん!(^q^)」ふんす
お仕置きにおびえて嫌々練習していた唯に笑顔が戻った。
憂が身体を離すと、唯は得意そうに何度も何度もCっぽいコードを弾き続けた。
憂「じゃあお姉ちゃん、ご飯の準備するからね。今日はごちそうにしましょう」
唯「あーう!(^q^)」
いつもならちょっとでも褒められると
唯『ゆい、おりこーさん!あいすよこすでつ!(^q^)』
とアイスを無心するのだが、唯自身Cっぽいコードを弾けたことがとても嬉しいのだろう。アイスのことも忘れ、一心不乱にCっぽいコードを弾いていた。
憂「その前にお弁当箱洗っちゃうね」
憂は唯の汚い鞄を開ける。
中から以前唯がなくしてしまったものの2倍の容量を持つ、不細工な豚のお弁当箱を取り出した。
以前使っていたお弁当箱は唯が小学生のころからの大切なお友達だったが、どこかになくしてしまったらしい。
唯は池沼なので、もちろんどこで紛失したかなどということは覚えていなかった。
最近になって唯は、この新しいお弁当箱ともようやく仲良くなれたらしい。
毎日憂が鞄に入れてやるたびに
唯『ぶたさん!ぶたさん!ゆいもぶたさんでつよ!ぶーぶー(^oo^)』
と豚のまねをして四つん這いになり、興奮して部屋中を豚のように走り回るのだ。
しかし唯は、お友達の豚のお弁当箱を前にしてもギターをかき鳴らし続けている。
「何かをできるようになった」ことがよほど嬉しいのだろう。
そう、昔「じこしょうかい」を覚えた時のように。
憂は微笑んでその光景を見ながら鞄の中からなかよし学校の連絡帳を取り出し、開いた。
憂「あれ、何だろう」
連絡帳にはくちゃくちゃになった一枚の紙が挟まっていた。
黒い鉛筆でぐちゃぐちゃの汚い模様が描かれている。
憂「お姉ちゃん、これは何?」
ゴミだったらすぐに捨てるのだが、わざわざ連絡帳に挟まっていたというのは何か意味があるものなのだろう。
唯「あう?(゚q゚)」
Cっぽいコードをかき鳴らしていた唯がようやく手を止め、憂の手にある紙を見た。
唯「あーう…('q')あう!おてがみでつ!(^q^)」
唯は暫く考えた後、これが手紙であることを告げた。
憂「手紙?」
どう見ても落書き以下の汚い模様にしか見えないが、唯が言うのならそうなのだろう。
唯「あーう!うーいにおてがみ!ゆい、かいた!(^q^)」
憂「私に?なんて書いてあるのかなあ」
読めなかった。
唯「うーい!ありがとう!(^q^)」
憂「…え?」
憂が絶句した。
唯は池沼なので、誰かに何かをしてもらうことを当たり前だと思っており、他人に感謝をするということがなかった。
その唯が。
唯「うーい、ありがとう!うーい!ありがとう!(^q^)」キャキャキャ
憂「お姉ちゃん…」
唯は何度も「ありがとう」を繰り返す。
憂の目から涙が溢れた。
これほどまでに唯を愛おしく思ったことはなかった。
信じ続けること。
それは大きな力となって。
唯「うーい、なく、だめ(゚q゚)」
憂「そうだね、ごめんね。じゃあご飯の用意するから」
憂はやっとのことで涙を隠して立ち上がり、キッチンへ向かう。
キッチンへ向かう間、何度も唯の手紙らしきものを見ては涙ぐんだり微笑んだりした。
憂「額に入れて大事にしなきゃ」
実はこの手紙は、唯がなかよし学校に入学してすぐに行われた授業の一環だった。
「いつもお世話になっている人にお礼のお手紙を書きましょう」という課題だ。
同級生の池沼たちは一生懸命普段世話をしてくれる家族に手紙を書いたが、
唯は池沼の中の池沼なので字を書くことができずにぐしゃぐしゃの落書きを紙に書いた。
しかしなかよし学校でも、字を書くことができない池沼のための特別なカリキュラムが組まれていた。
自分が書いたその手紙のようなものを見るたび「ありがとう」と言えるようにすり込むのだ。
謂わば条件反射である。字が書けない程の池沼でも皆すぐに出来るようになったが、池沼の中の池沼である唯がそれを覚えるのには数ヶ月を要した。
そして今日やっと刷り込みが完了したので、なかよし学校の先生は唯の連絡帳に手紙らしきものを挟んで持たせてやったのだった。
そして唯はきちんと条件反射することが出来た。なかよし学校の取り組みは実を結んだと言えるだろう。
いきさつはともあれ憂はかつてないほど優しい気持ちになった。
憂「ご褒美にアイスをあげなくちゃ」
いつもならご飯の前に唯がアイスをねだると激しいお仕置きを加える憂だったが、今日だけは唯の希望を叶えてやろうと思った。
憂「お姉ちゃーん!ご飯の前に、1個だけならアイスを食べてもいいわよ!」
…返事がない。
いつもなら「あいす」という単語を聞いただけで涎を垂らしながら駆けてくるのに。
憂「まだぎいたに夢中なのかしら…お姉ちゃん?」
リビングに唯の姿はなかった。ぎいたも見当たらない。
そして玄関からは、唯のお気に入りの豚の柄の靴がなくなっているのだった。
秋口になると陽が落ちるのも早くなる。
平沢家からしばらく歩いたところにある公園では僅かに色づき始めた木々が薄闇に染りつつあった。
少し前までは犬の散歩やジョギングをする人たちが見られたが、今はもう人影がない。
と、公園の奥にある林の中から2人の少年が姿を現した。
小学生A「ちぇ、みつからねえな」
小学生B「もうあきらめようぜ」
小学生A「買ったばかりのニューボールだぜ!」
小学生B「これだけ草が生えてたらみつからねえよ」
小学生A「はあ、しょうがない。帰るか」
この2人、先ほどまで公園の隅のほうで野球の練習をしていたのだが、飛びすぎた打球が林の中へ入ってしまい、ボールをなくしてしまったらしい。
林の奥にはほとんど人が立ち入らないために雑草などが生い茂っており、なくしたボールを探し出すことなど不可能に近かった。
少年達はぼやきながらバットを肩に乗せて自転車のある方へ向かう。
その時だった。
唯「あーう!(^q^)」
小学生AB「!?」
後方から醜い奇声が聞こえた。
2人が何事かと振り返ると、公園の反対側の入り口から豚のような生物が二足歩行でこちらに向かって突進してくる。
小学生AB「げっ!!」
よく見るとそれはなぜかギターを肩からぶら下げた、肥え太った池沼だった。
ただでさえ気持ちが悪いのに「ハネムーン☆」というびりびりに破れたTシャツが醜悪さに磨きをかけている。
唯「むひぃ~、むひぃ~("q")」ゲロゲロゲロビッチャー
ただでさえ怠惰で運動神経が皆無な唯だったが、さらに重いギターを持っていたために、
全力疾走することにより体力が限界に達してその場に嘔吐してしまう。
唯「げーげー、あ゛ーあ゛ー("q")」
小学生B「おい、この池沼…」
小学生A「っんだよ、またテメエかよ!!!」
そう、この2人は数ヶ月前に通学途中の唯に絡まれ、唯のお友達の豚さんのお弁当箱と、大切な大切な宝物だったあるうんたん♪を破壊した少年達だった。
が、もちろん唯の頭が一度会っただけの人間の顔を記憶しているはずがない。
では唯はなぜこの少年達をめがけて突進してきたのだろうか。
唯「むひぃ~、むひぃ~("q")」
小学生B「汚ねえなあ。放っておいて帰ろうぜ」
小学生A「ああ」
2人は野球の練習とボールの捜索で疲れていたので、おっくうで唯の相手などしていられなかった。
だるそうにその場を立ち去ろうとする。
唯「あーう!(`q´)」
自分を無視して行ってしまいそうになる2人を見て、唯が奇声をあげた。
力を振り絞り立ち上がる。
実は、唯は先ほど頑張って覚えたCっぽいコードを誰かにほめて貰いたくて、わざわざ公園まで来たのだった。
あんなに頑張ったのだ。披露すれば皆、感動して褒めてくれるに違いない。
うまくすればご褒美にアイスが貰えるかもしれない。
だから唯はギターのネックをしっかりと握りしめる。
小学生A「てめえ、またボコられてえのかよ!」
小学生Aがすごんだが、唯は怯まなかった。
目やにだらけの汚い目でしっかりと2人を見据え、高らかに宣言する。
唯「なかよしがっこうすみれぐみ、ひらさわゆいでつ!(^q^)」ふんす
唯が「じこしょうかい」を始めた。
小学生B「てめえはそれしかできねえのか!!」
小学生Bも怒鳴ったが、唯は構わず先を続ける。
唯「とくいなのは…」
昨日までの唯なら、この後に「とくいなのは、うんたんでつ!(^q^)」と叫んだ後、奇声を上げて身体をゆすり、うんたん♪をしただろう。
しかし、今ここにいる唯はそんな情けない唯ではなかった。
何度も憂に叩かれながらも、繰り返し繰り返し練習をしてギターの弾き方を覚えた。
まだ小さな一歩だったが、この先には見渡す限り希望に溢れた未来が広がっている。
だから唯は相棒のぎいたをしっかりと抱き寄せ、自分が出せる限りの声を振り絞って叫ぶ。
唯「とくいなのは、うんたん♪でつ!(^q^)」
人気のない公園に唯の絶叫が響く。
そして唯はギターのボディを狂ったように叩きながらうんたん♪を始めた。
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
小学生AB「…え?????」
唯の三段腹がそれに合わせて不規則なリズムでブヨンブヨンと揺れる。
小学生は激しく身体を揺すりながらギターをバシバシ叩いている唯を信じられないという目で見ていたが、すぐにそれは笑いに変わった。
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
小学生B「…ぷっ!いやいやいやいやwwwww」
小学生A「それはおかしいだろwwwww」
小学生たちは爆笑するが、唯は自分に陶酔しながらますます激しく身体を振っている。
ピキーン
一番細い1弦が切れた。
唯はボディーだろうとブリッジだろうと関係なく叩きまくっているのだから無理はない。
続けて2弦と3弦も切れる。
小学生A「はらいてえwwwww」
小学生B「呼吸がwwww」
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
小学生A「はらいてえwwwww」
小学生B「呼吸がwwww」
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
小学生たちが爆笑しているのを見た唯は彼らが自分のうんたん♪に感動しているものと思い込み、ますます激しくギターを叩く。
唯「うんたん!うんたん!\(^q^\))三((/^p^)/」バシバシバシバシ
バッチーン
ついに一番太い6弦まで切れてしまった。
小学生AB「ギターwwwwwww」
唯「うんたん…うんたん…むひぃ、むひぃ("q")」
カスタネットよりはるかに重いギターでうんたん♪をしているのだ。
デブな唯の体力は限界に近づいていたが、力を振り絞ってうんたん♪を続ける。
大好きなぎいたが一緒なのだ。もう何も恐くない。
小学生B「おい、………な?wwww」
小学生A「やっちまうかwwww」
小学生たちは数ヶ月前、唯の大切なうんたん♪を壊したときの発狂を思い出し、また悪巧みを思いついたようだ。
小学生B「池沼ちゃ~ん」
唯「うんたん!うn…あう?(゚q゚)」
小学生Bに呼びかけられ唯のうんたん♪が止まった。
悦に入っていた唯だったが、彼らからご褒美のアイスを貰えるとでも思ったのだろう。
小学生A「ギターの弦、切れちゃったよ。僕たちが交換してあげるから貸してごらん」
唯「むふぅ~!ゆいのぎいたでつ!さわる、だめー!(`q´)」
当然だった。唯にとってぎいたは大切な大切な大切な宝物だからだ。
あんなに好きだったうんたん♪を失ったことを忘れるくらいの。
小学生B「でも、それじゃあギターがかわいそうだよ」
確かにこんな池沼におもちゃにされたギターは、いくら安物とはいえ哀れである。
ネックからは切れた弦がぶら下がったままだ。
唯「むふぅ~!ぎいた、いいこ!ゆいのともだちでつ!(`q´)」
小学生B「あー、めんどくせえ」
小学生A「いいから貸せよ!」ドガッ
唯「あう(>q<)」ゴチン
小学生Aの蹴りをまともに受け、唯は吹っ飛んだ。池沼なので受け身を取ることもできず、後頭部をまともに地面に強打する。
その拍子に、しっかり握っていたぎいたを離してしまった。
小学生B「オラァ!」ドスッ
唯「ぎゃ(>q<)」
小学生Bが全力で、倒れている唯の顔を踏みつける。
その隙に、小学生Aが唯のぎいたをストラップごと剥ぎ取った。
小学生A「もーらった!」
唯「あーう!ゆいのぎいたかえす!("q")」
大切なぎいたを奪われた唯は痛む身体を気遣うこともせず、立ち上がって奪い返そうとする。
だが、唯は鈍い池沼である。小学生Aはひらりと躱し、公園の奥の茂みに逃げ込んだ。
唯「あーーーう!ゆいのぎいた!かえす!かえすでつ!!!!("Q")」ドスドスドス
唯が三段腹を揺らしながら追いかけてくる。
本人は全力で走っているつもりなのだが、そのスピードは健常者の歩く速度よりも遅い。
小学生B「こっちだよ~池沼ちゃんww」
小学生A「大切なギターが逃げちゃうよ~ww」
小学生たちは唯が見失わないようにわざと緩急をつけて林の奥へ誘い込む。
唯「あーーう!まつでつ!ゆいのぎいた!!("Q")」ドスドスドス
体力のない鈍い唯だったが、必死で2人の後を追いかける。
やがて林の奥の少し開けた場所についた。
この場所は彼らのようなやんちゃな子供達以外は、昼間でも滅多に人が立ち入らない場所だ。
ましてや夕方になるとなおさらである。
小学生B「ここらでいいんじゃね?」
小学生A「そうだなw」
そう言って彼らはその場に立ち止まった。
後ろからは唯が、顔中から涙と涎、鼻水といった池沼汁を噴き出しながら追いかけてくる。
唯「あーーーーう!!!!("q")」
2人が立ち止まったのを見て唯がラストスパートをかける。
あと少しでぎいたに手が届く、その時だった。
小学生A「ほーむらん!wwwwwwwwww」
グシャ
唯「あんぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
小学生B「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
小学生Aがバットのようにフルスイングしたぎいたは唯の顔面を直撃した。
折れた前歯が宙に舞う。
唯の身体も打球のように綺麗に吹き飛び、地面を転がった。
唯「あーう…かえす…ゆいのぎいた…ぎいた…ぎいた」
それでも唯は大切なぎいたを取り戻すために、けなげに立ち上がろうとする。
だが脳震盪を起こしているためにうまく立てない。
立ち上がろうとしては転がり、立ち上がろうとしては転がり、その繰り返し。
もちろん生まれたての仔牛などという言葉はこのような池沼には似つかわしくない。
この世にこんなにも醜い生物が他にいるだろうか。
唯「ぎいた、ぎいた…」ゴロンゴロン
小学生AB「ぶははははははwwwwwwww」
小学生たちは爆笑しながらその光景を眺めていた。
やがて症状が治まってきたのか、唯が四つん這いのまま彼らのほうへ豚のように這ってきた。
唯「ゆいのぎいた、かえす…かえす…ぎいた…」
そんな唯を見て、2人は頷きあう。
小学生A「ごめんごめん、返すよ。ちょっとふざけただけだって」
唯「あーう」
小学生A「どっかーん!!wwwww」
バキッ!
唯「(゚q゚)」
小学生がぎいたを思いっきり地面に叩きつけると、ネックが真っ二つに折れてしまった。
唯「あ、ああ、あ、あああああああああ!!!!!ぎいいいーーーーいたあぁぁ!!!!!!」
小学生AB「wwwwwwwww」
唯が絶叫する。
唯「ぎいたああああ!!!あああぅぅぅああああ!!だめええええええ!!」
小学生A「どっかーん!!wwww」グシャッ
四つん這いのままものすごい勢いでぎいたに駆け寄ろうとする唯の豚のような醜い鼻を、小学生Aがカウンターのように蹴りつける。
鼻骨が骨折して潰れ鼻血が滝のように流れ落ちるが唯はかまわず起き上がろうとする。
しかし
ガスッガスッ
唯が起き上がろうとするたびに小学生Aが蹴りを入れて地面に転がす。
小学生Bはそれを見て笑いながらぎいたを思い切り踏みつけた。
バキッ!
ぎいたのボディーが割れた。
唯「だめええええ!!!!ぎいたあああ!!ぎいたあああ!!あああああ!!」
ガスッガスッ
唯はぎいたをなんとか助けようとするが、小学生Aに阻まれてたどり着くことができない。
その間に小学生Bは持っていたバットで何度もぎいたを殴り、蹴りつけ、粉々といってもいいくらいに破壊していった。
もはやそれは原型を留めない木片であった。
小学生B「どっかーん!どっかーん!www」バキッバキッ
唯「むふううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
小学生A「おっ」
唯は持てる力をすべて振り絞ってぎいたの元へ突進した。
唯のあまりの勢いに、蹴りを入れようとした小学生Aばバランスを崩してしまう。
その隙に唯は豚のように四本足で走り、油断していた小学生Bの、半ズボンで露出している脚に噛みついた。
ガブ
小学生B「いてえええええ!!!!」
小学生Bが悲鳴を上げる。
先程ぎいたで殴られた拍子に唯の前歯は半分以上折れてしまったが、それでも他に攻撃の手段を持たない池沼の噛みつきは強烈であった。
小学生B「ってえ!!おらっ!離せ、離せこの池沼!!!」
唯「んふうううぅぅぅぅぅ、んふぅうぅううぅうぅ!!!!」
小学生Bは唯を振りほどこうとするが、唯は怯まない。
虫歯だらけの前歯がさらに2本ほど折れたが、唯はそれでも力を緩めなかった。
だが、小学生Bの手にはバットがあった。
小学生B「離せって言ってんだろうがああああああ!!!」
ドゴオ!
唯「ぎょごおおおお!!」
脳天に強烈な一撃を食らい、唯の顎の力が緩んだ。
その隙に小学生Bが唯を振りほどく。
唯「あーう…」
小学生B「こんの池沼があああ!!なめんなあああ!!」
ドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッ
小学生B「ああああああああああああ!!!!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
ドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッ
唯「ぎょ…ご…やめ…」
小学生A「wwwwwwwwwwwwwwwww」
小学生Bは怒りに身をまかせ、倒れている唯の頭をバットで何度も殴りつける。
バットが凹んでも、曲がってもその猛攻は止むことがなかった。
グシャッグシャッグシャッグシャッグシャッグシャッグシャッグシャッ
やがて小学生Bがバットを振り下ろすたびに血が飛び散るようになった。
それでも小学生Bは殴るのをやめない。
やがて血に混じり、透明な液体が流れ出した。唯の脳漿である。
唯の頭は無残に潰れ、もはや原型を留めていない。
それを見てやっと小学生Bが殴る手を止めた。
小学生B「はあ、はあ…」
小学生A「おいおいwwwwやりすぎじゃねえの??wwwwww」
小学生B「ふー…死んだかな?」
小学生A「どうかな…おーい」
ガス
小学生Aが確認のために唯の脇腹を小突く。
唯「ん…ひ…ぃ…」ピクッピクッ
小学生AB「生きてるwwwwwwwwww」
驚くべきことに脳のほとんどを破壊されてもなお、唯は生きていた。
小学生B「ったく、なめやがって」
小学生A「そろそろ帰ろうぜ。真っ暗になる。それにお前、ちゃんと消毒しないと変な病気を感染されるぞ」
小学生B「しょうがないな。行くか」
まだ殴り足りなかったが、池沼がどんな病気をもっているかわかったものではない。
小学生Bは素直にそれに従う。
小学生A「じゃあな、池沼ちゃん。ちゃんと成仏しろよwww」
小学生B「wwwwww」
2人は笑いながら林の向こうへ消えていった。
唯「う…んた…うん…」ピクピク
夜の闇に覆われた木々に唯のうんたん♪が飲み込まれてゆく。
唯「うんた…う…ん…」ピクピク
静寂を支配する虫たちの鳴き声よりもかすかなうんたん♪だが、それは唯の命の叫びだった。
唯「う……た……んう」ピクピク
唯は残された命の炎をすべて燃やし、うんたん♪を続けた。
しかしそれもやがて静寂に呑まれてゆき
唯「う…tブブブーーーーーーー!!!!!!
唯の最後のうんたん♪は、自らが漏らしたウンチの爆音でかき消された。
それを最後に、唯はただの汚くて醜い肉塊に変わる。
ブブブーーモリッモリッビチビチビチブバチュウ!!!
死してもなお、弛緩した肛門からは大量のウンチが放出される。
その勢いは留まることを知らなかった。
夜の闇とウンチの悪臭に包まれながら、唯の身体は冷たくなってゆくのだった。
憂「お姉ちゃんたら、どこへ行ったのよ…」
暗くなっても戻らない唯を心配し、憂も家を出た。
おそらく他人にぎいたを見せびらかして褒めてもらうためにどこかへ行ったのだろうが、それにしても帰りが遅すぎる。
唯は池沼なので外出先で様々なトラブルを起こす。コンビニでアイスを万引きしたり、小さい子供からおもちゃを取り上げたりして袋だたきに遭うことも珍しくはなかった。
夜になると気温も下がり、どこかで行き倒れていたりすると命に関わる。
憂「お姉ちゃーん!」
池沼である唯の行動範囲はそれほど広くはない。
おそらく家からなかよし学校程度の距離であろう。
そう推理し憂はそちらの方向へと歩みを進めた。
少し歩くと右手に大きな公園の見えてくる。
と、公園の入り口から2人の少年が自転車で出てきた。
唯が公園へ行った可能性もある。彼らに話を聞こうと近づいたときだった。
小学生A「おいB。お前大丈夫か。池沼って絶対やばい病気とか持ってるぞ」
小学生B「ち、あの豚、トドメさしておくべきだったな。ちょっとAの家で救急箱貸してくれよ。さっさと消毒したいわ」
憂は彼らの話す「池沼」という言葉を聞き逃さなかった。
憂(やっぱりお姉ちゃんは公園にいる!)
憂は駆けだした。
憂「お姉ちゃーん!どこー!?」
必死に叫び、唯を探す。しかし唯の姿はどこにも見当たらない。
と、公園の奥の林の前に来たときだった。
憂「臭い!」
林の向こうから、すさまじい悪臭が漂ってきている。
憂(これは…お姉ちゃんのウンチの臭いだ!)
人生のほとんどを唯の介護に当てている憂である。
オムツも数え切れないほど交換しており、唯のウンチの臭いを嗅ぎ間違うことなどありえなかった。
憂「お姉ちゃーん!」
憂は唯を探して林の中へ入って行く。
暗闇で何度も足を取られながらウンチの臭いをたどって懸命に走る。
憂「きゃっ」
やがて大きく張り出した木の根に躓き、派手に転んでしまった。
憂「痛ーい…」
顔を上げると木々がとぎれて視界が開けた場所に出ていることに気づく。
ウンチの臭いは間違いなくこの辺りから漂ってきていた。
が、唯の姿は見当たらない。
憂「どこにいるのー!でてこないとお仕置きするよー!」
そのとき空を覆っていた雲が切れて月が姿を現し、辺りを明るく照らす。
憂「…え」
憂の視線の先に大きく汚い、悪臭を放つ肉塊が落ちていた。
憂「お姉ちゃん!!!」
仰向けに倒れている肉塊は頭が潰れ、纏っているTシャツはビリビリに破けているが、かろうじて「ハネムーン」という文字が読み取れる。
憂はその肉塊に駆け寄り、服が汚れるのも構わずに抱き上げる。
肉塊はピクリとも動かなかった。
憂「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
憂は半狂乱になりながら肉塊に呼びかけ、何度も揺さぶった。
肉塊の頭は無残に潰れて原型を留めていない。
辺りの地面には粉々になったギターの破片に混じり、頭蓋骨や脳の一部が散乱している。
憂「うああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
月明かりに照らされ木々に憂の絶叫が響くのだった。
それからのことはよく覚えていない。
気がつくと憂は最寄りの警察署で取り調べを受けていた。
虚ろな目をして汚い肉塊を引きずっているところを通報され、保護されたのだった。
取り調べが始まった直後はパニックになり泣き叫んで手に負えなかったが、今は落ち着いてきて、
唯が家を出た経緯や公園の入り口で見た少年達のことも全て話した。
憂「おまわりさん、お姉ちゃんを殺した犯人はあいつらなんです…絶対に死刑にしてください…」
状況や憂が聞いた会話の内容からして、あの2人が唯を殺したのは間違いなかった。それに憂は彼らの名前も人相も覚えており、身元を割るのもそう難しくないと考えた。
この付近の子供達は皆、憂の母校の小学校に通っているのだ。
が、目の前に座っている警察官は信じられないことを口にする。
警察官A「犯人とはどういうことですかな?」
憂「は?」
警察官B「お姉さんの死因は事故死です。犯人などいませんよ?」
憂「な…何を言ってるんですか!?」
警察官A「池沼には判断力がありませんからなあ。ああいう悲惨な事故死はよくあることなんです」
憂「そんな…!?」
警察がそういう結論を出すのも無理はなかった。
何しろ死んだのはただの池沼なのだ。
おまけに唯は何度も問題を起こし、警察のやっかいになっている。
唯の死はむしろ健常者の彼らにとって願ったり叶ったりなのである。
憂「馬鹿なこと言わないでください!事故であんな死に方するわけないじゃないですか!」
警察官B「そう言われましても」
憂「私は犯人を見ているんですよ!」
警察官A「妹さんの聞き違いでしょう」
憂「あなたがたはこんなときにまでお姉ちゃんを差別するんですか!」
当然だった。池沼の存在など、家族の他には人権団体のようなプロ市民くらいにしか価値がない。
だから池沼の家族は追い詰められ、総じてキチガイになるのだ。
取調室という狭い空間でありったけの声を張り上げて池沼の人権を叫ぶ憂は、間違いなくキチガイの顔だった。
憂「池沼だって一生懸命生きているんです!天使なんです!」
警察官たちは顔を見合わせて溜息をついた。
警察官B「唯さんの身体には、致命傷となった頭の傷の他にも、たくさんの暴行の跡がありました」
憂「ほら見なさい!あいつらはどれだけお姉ちゃんを苦しめたっていうの!」
警察官A「いえ、その傷はあの場所でつけられたものではありません。それに、あまりに異質でして」
憂「どういうことですか」
警察官A「鞭の跡ですよ」
憂「!」
警察官A「一番新しいものは死ぬ直前につけられたようですが、唯さんの身体にはそれ以外にもたくさん鞭で叩かれた跡がありました」
警察官B「どうやら唯さんは、日常的に暴行を受けていたようですね」
憂「…」
暴行ではない。躾である。が、そんな話が第三者に通用するはずもない。
警察官B「もしかしたら、その暴行がエスカレートして殺してしまったのかもしれませんなあ」
憂「な…!」
警察官A「日常的に暴行を加えることのできる人間は限られているでしょう」
警察官B「まあもしも仮にこれが殺人だとしたら…いえ、池沼を人と言うのもどうかと思いますが…スピード解決でしょうな」
憂は唇を噛み、立ち上がる。
警察官Aが扉を開けて出口まで付きそう。
警察官A「では、お姉さんの遺体は後ほどお返ししますので」
憂は無言で警察署を後にした。
その後憂は警察病院に立ち寄って唯を引き取って家に戻った。
翌朝に霊柩車で家まで届けると言われたが憂は断り、唯をおぶって歩いて帰った。
もう誰にも頼らない。そう誓った。
憂「お姉ちゃん、お帰り。疲れたね」
憂はリビングのソファに唯を寝かせる。
膨らんだオムツを外してウンチまみれのブヨブヨしたお尻を綺麗に拭いて、新品のオムツに交換してやる。
破れたTシャツも脱がせ、一番のお気に入りである「ロマンス」と書かれたものを着せてやった。
憂「ご飯作ったのに冷めちゃったよ。お腹すいたでしょう。今暖めるからね」
そう言い、憂はキッチンへ向かう。
憂「あ、そうそう。今日はお姉ちゃん頑張ったから、ご褒美にアイス食べていいよ」
そう言って憂はキッチンの冷凍庫からガリガリ君のソーダ味を取り出してきて唯の前に置き、また戻って行く。
15分程経つと、リビングのテーブルに2人分の夕食が並んだ。
憂はソファに寝ている唯に、豚の顔が描かれた涎掛けをつけてやる。
憂「じゃあ、いただきます!」
憂は夕食を頬張りながら唯に話しかける。
憂「お姉ちゃん、お手紙ありがとう」
憂「でももっとひらがなの練習しなきゃね」
憂「今日はぎいたを上手く弾けたね」
憂「今度はGを練習しよう」
憂「明日のお弁当はお姉ちゃんが大好きなハンバーグにするよ」
何度も話しかけるが唯は無言だった。
やがて憂は箸を置き、顔を俯ける。
憂「う…う、う、うわああああん!!」
2人だけの空間に、憂の泣き声が響く。
憂「お姉ちゃん、ごめんね、ごめんね。守ってあげられなくて」
何も出来ない池沼。憂がいなければ生きることが出来ない池沼。
ずっと守ってゆくと誓ったのに。
Cっぽいコードを弾けた瞬間、新しい未来が広がったのに。
憂は唯の潰れた頭を抱きしめた。
やがて憂はソファに唯を戻し、顔を上げる。
憂「お姉ちゃん。私たち、まだ幸せになれるかな。…ううん、お姉ちゃんは私が絶対に幸せにする」
憂はお気に入りのヘアゴムを外して髪を解くと、醜く潰れた唯の頭に手を伸ばし、脂ぎったフケだらけの髪からヘアピンを外した。
その夜、憂の住む街で猟奇殺人が2件起こった。
被害者は一家皆殺しにあっており、特に小学生の子供の殺され方はひどく、体中をめった刺しにされた上に頭部を無残に潰されていた。
犯行の数時間前に被害者宅の子供が通う小学校から名簿が盗まれており、事件の関連性が囁かれたが犯人は見つからなかった。
翌朝のマスコミはこぞってこの事件を報道したため、池沼が事故死したというニュースなど新聞の片隅にも載らなかった。
翌朝の学校は事件の話で持ちきりだった。
憂は朝のHRの時間になっても登校していない。
純「憂が遅刻するなんてめずらしいね」
梓「うん。何かあったのかなあ」
憂が、いつも遅刻ぎみの純よりも遅く登校することなどこれまでなかったので、純と梓は少し心配になる。
その時教室の扉が開いて担任が入って来た。心持ち顔色が悪い。
皆が席に着き、日直が号令をかける。
日直「きりーつ」「れいー」
みなさん「ハヨーザイヤス」
日直「ちゃくせーき」
皆が着席するのを待ち、担任が話を始めた。
担任「もしかしたら、この中にも知っている人もいるかもしれませんが…」
若干言いよどんでいる。昨夜の事件になにか関係があるのだろうか。
やがて担任は意を決したように話を再開する。
担任「昨夜、平沢憂さんが亡くなりました」
梓「な…!」
純「ええっ!?」
教室がざわめく。
純「ば、馬鹿なこと言わないでください!」
純が立ち上がり叫んだ。
梓は呆然としてどうしていいかわからないようだ。
担任「鈴木さん…あなたたちが平沢さんと仲が良かったことも知っているけど…でも、本当なの」
純「そんな…」
梓「…いったいどうして」
梓がやっとのことで口を開く。
担任「事故に巻き込まれたって聞いたわ。…今日、お通夜があるから行ける人はいってあげてね」
バターン!
担任が話し終わるのを待たずに梓が立ち上がり、走って教室を出て行った。
純「あ、梓!待って、私も!」
純もその後を追う。
担任「あ、ちょっと、あなたたち!」
担任は呼びかけたが、元より止めようという気はなかったらしい。そのまま2人を見送った。
15分後、梓と純の2人が質素に喪に服している平沢家に着いた。
純は中学の頃からの友人なので憂に身よりがないことを知っていた。
唯一の身内である姉は重度の池沼だ。
葬儀の準備などは誰が仕切っているのだろうか。
ピンポーン
梓が玄関のチャイムを鳴らす。
ガチャ
暫くした後、玄関の扉が開いた。
梓「え?」
唯「あ、あずにゃんと純ちゃん。来てくれたんだね。学校はどうしたの?」
純「う、憂?」
姿を現したのは髪を下ろしてヘアピンで留めているが、間違いなく憂だった。だが目の前の憂は不思議そうに首をかしげる。
唯「憂は死んじゃったんだよ?私は唯だよ。確かに私たちは似ているけど、間違えないでよぉ」
梓「何を言って…」
唯「とりあえず上がってよ。憂の顔を見てあげて」
天使のような憂とあの肥え太った醜い池沼の唯とでは見間違えるはずがない。
どういうことかわからず2人はパニック気味だったが、憂の言われるままに家に上がった。
和室に簡素な祭壇が作られ、棺が置かれている。
憂は棺のふたを開き、2人を促した。
純「ひっ…ひどい…」
梓「…唯先輩」
唯「きれいな顔してるでしょ。死んでるんだよ、それ」
棺の中にいたのは肥え太った醜い唯だった。
頭はぐちゃぐちゃに潰れ、醜悪さに磨きをかけている。
そして、その頭から伸びている髪の毛は憂がしていたヘアゴムで強引に括られていた。
純「どういうことよ…これ…」
唯「なんか事故に巻き込まれたらしくて。憂は結構おっちょこちょいだから」
純「ふざけないで!」
純が憂の話を遮る。
唯「純ちゃん、憂が起きちゃうよぉ」
梓「憂…茶番はやめてよ…」
純「どうしちゃったっていうのよ…」
やがて憂はわざとらしい溜息をついた。
憂「ふー、やっぱり2人にはわかっちゃったか」
純「馬鹿にしないでよ…」
梓「どういうことなの?ちゃんと説明して」
憂「どういうこともなにも、見ての通りだよ。平沢憂は死んだの」
梓「憂!」
憂「わかったよ。ふざけてる訳じゃない。頭がおかしくなったわけでも。
これはね、お姉ちゃんを守ることができなかった私の贖罪。
それは同時に私自身の希望でもある。
お姉ちゃんに幸せな人生を歩ませてあげること。それが私の希望」
憂は棺の中の唯の潰れた頭を愛しそうになでた。
純「…そうやって一生唯先輩に縛られて生きていくの?」
憂「どうだろう…まだわからないや。でもきっと、お姉ちゃんがもう一度『ありがとう』と言ってくれるまで」
純と梓はそれ以上何も言えなかった。
学校が終わると軽音部の皆も駆けつけた。事前に梓から話を聞いていた彼女達はもう一度憂の思いを確認すると、
全てを受け入れて話を合わせてくれるようになった。
火葬された唯の頭部が大きすぎて骨箱に入らなかったということをのぞき、
通夜と葬儀は滞りなく執りおこなわれた。
今回はお経を読むお坊さんの頭をたたく池沼はいなかった。
四十九日が過ぎ冬になると、純や梓と憂はなんとなく疎遠になっていた。
「平沢唯」として生きる憂とどうやって付き合ってゆけばいいのかわからなかったからだ。
始業式の日、帰り際に梓はクラスメイトが3年に転校してきたという人物の噂をしているのを聞いた。
クラスメイト1「なんかすごく頭がよくて美人らしいよ」
クラスメイト2「でもさ、なんか転校してくる前はあそこのなかよし学校にいたって話なんだけど」
クラスメイト1「え、池沼ってこと!?池沼がどうやって転校してこれるのよ」
クラスメイト2「いや、噂だけど。まあ、まさかね」
梓「まさか…」
梓は純を誘って3年の教室へ行ってみるが、彼女はすでに帰った後だった。律たちの姿もない。
そこでその足で部室に行ってみる。
扉を開けると、そこに彼女はいた。
憂「あ、あずにゃ~ん!ひさしぶりだねぇ」ダキッ
梓「う…唯先輩。どうして」
澪「今日から唯も軽音部に入ったんだよ」
紬「ギターが2本になったから、曲作りの幅が広がるわ~」
律「部費も増えるしな!」
憂「ぶひぶひ~」
律たちは目の前にいる唯という存在を現実として受け止める選択肢をとった。
梓は純と顔を見合わせる。
純「ま、いいんじゃない。じゃあ私、ジャズ研行くね。唯先輩、また」
憂「純ちゃんまたね~」
まあいいだろう。
どんな形であれ憂の幸せがそこにあるなら。私たちはその寸劇に最後まで付き合おう。
そう考える梓だった。
憂「みんながくれたギー太、大切に使ってるよ」
そう言って憂がケースからギターを取り出す。
それを見て梓は息を飲んだ。
本物のギブソンの、レスポールスタンダード。
以前池沼の唯に与えた偽物ではなく。
律「ギターが2人に増えたことだし、それじゃあ早速」
梓「練習ですね!」
梓は顔を輝かせる。以前に憂の演奏を聴いたとき、悔しくてそれまでに増して練習するようになった。
そして、いつか憂と合わせてみたいと思っていたのだ。
紬「お茶にしましょう~」
梓「ですよねぇ~…」
それからは夢のような時間が過ぎていった。
毎日のティータイム、そして練習。
修学旅行。
近所で行われた夏祭りには、憂と梓は2人でユニットを組んで出場した。
合宿でいった夏フェス。その夜皆で見上げた星空。
あっという間に半年が過ぎた。
そして今日。軽音部が「
放課後ティータイム」として活動する、最後の学祭のステージ。憂達は顧問のさわ子が徹夜で作ってくれたTシャツを着て、幕が上がるのを待つ。
和『それでは桜高祭の目玉イベント、放課後ティータイムの演奏です!』
律「ハードル上げるな…」
幕が上がる。
律「…って…あれ?」
憂「な何コレー!?」
澪「みんな私達と同じTシャツ着てる…」
客席にいる人たち、ステージの真下に陣取っているクラスメイト達は皆、メンバーと同じTシャツを着ていた。
ステージの袖にいるさわ子がVサインを出す。
憂「さわちゃん…ありがとう…」
憂はあふれ出る涙を押さえ、マイクに向かう。
憂「それじゃあ私たち放課後ティータイムの曲…聞いてくださいっ!!」
ワァァァァァ
メンバー達は想いの全てを演奏にぶつけた。
それまでにない最高の演奏だった。
観客は皆、彼女達の世界へ引き込まれて行く。
あっという間に時間が過ぎ、最後の曲になった。
憂「それでは最後の曲、聴いてください!」
澪がスランプに陥った時、憂が初めて作詞した曲。
憂はギー太をしっかりと抱きしめ、叫ぶ。
憂「U&I!」
ウワアアアアア
律のフィルが響き、梓のギターが被さる。
そして憂がありったけの想いを歌に乗せる。
『キミがいないと何もできないよ
キミのごはんが食べたいよ
もしキミが帰ってきたら
とびっきりの笑顔で抱きつくよ』
『キミがそばにいるだけでいつも勇気もらってた
いつまででも一緒にいたい
この気持ちを伝えたいよ』
『ありったけの「ありがとう」
歌に乗せて届けたい
この気持ちはずっとずっと忘れないよ』
『思いよ 届け』
腫れた秋空に憂の歌が響くのだった。
それからのことはよく覚えていない。
気がつくとメンバーは部室の壁に背をもたれかけ、放心していた。
澪「何かあっという間に終わっちゃったな」
紬「ちゃんと演奏できてたかしら。もう全然覚えてないわ」
律「ていうかTシャツのサプライズでもう全部ふっとんだ!!」
梓「私もですー。もう何が何だか…」
憂「…でもすっごく楽しかったよね!」
澪「うん。ギー太も喜んでるんじゃないか!?」
憂「うん!」
憂はギー太を抱きしめる。
梓はそれを微笑ましそうに見ていたが、やがて意を決したように口を開いた。
梓「…ねえ、憂」
これまでずっと唯として振る舞ってきた憂の名を、あえて梓は呼んだ。
皆の笑い声が不意に聞こえなくなる。
梓は憂の目をまっすぐに見た。
梓「聞こえた?唯先輩の『ありがとう』が」
憂は目を見開く。
梓「私は聞こえたよ。だってあの歌は唯先輩の想い。そうでしょ?」
唯『うーい!ありがとう!(^q^)』
憂は目を細め、唯と最後に交わした言葉を思い返していた。
梓「楽しかったよね。ずっと。軽音部に入って、いっぱい練習して、合宿行って。
そして今日のライブは最高だった。憂は、十分唯先輩を幸せにしたんだよ」
言いながら、梓は自らのツインテールを縛っているヘアゴムを外す。
梓「もう、いいよね。これからは憂自身の幸せを探していこうよ」
憂の前髪をとめているヘアピンを外した。
梓「唯先輩。憂を解放してあげて」
そう優しく言い、ヘアゴムで憂の髪を縛った。
憂「う、うわああああん!!」
憂は梓の胸に顔を埋め、子供のように泣きじゃくった。
梓は憂をしかりと抱きしめる。
梓「おかえり、憂」
傾きかけた夕日が部室を赤く染める。
校舎は文化祭が終わった後の余韻に包まれていた。
ドーン
窓の外から狼煙の音が聞こえた。
それまで黙って成り行きを見つめていた律が口を開いた。
律「お、後夜祭の時間だな」
紬「行きましょう、梓ちゃん、憂ちゃん」
憂「はい!」
憂は涙を拭き、立ち上がる。
梓「いこっ、憂!純も誘って!」
憂「うん!」
憂は梓に手を引かれ、走り出すのだった。
平沢憂としての自分を取り戻した憂だったが、社会的にはもう死んだという事実を覆すことはできず、平沢唯として生きていくことを余儀なくされた。
が、憂自身も、梓や純もそれでかまわないと思っていた。
冬、軽音部の3年生はそろって同じ女子大に合格することができた。
憂たちが卒業した後は梓1人だけになってしまった軽音部だったが、純が入部し、新入生も確保することができた。
大学へ行ってしまった憂たちはみな寮に入ったので、今までのように毎日放課後に練習するということができなくなってしまったが、それでも月に2度ほどは会い、放課後ティータイムとしての活動は続けていた。
1年が経ち、梓も憂たちの待つ女子大に入学した。
そして今日、放課後ティータイムはあこがれの舞台に立つ。
若手のバンドフェスに駄目もとで応募したのが、最終審査まで残ることが出来たのだ。
メンバーは最終審査が行われる武道館のステージ袖で、前のバンドの演奏を聴いていた。
律「さすがにみんなうまいなー」
憂「でも、私たちのほうが、もっともっとすごいよ」
澪「そうだな!」
梓「最高のライブにしましょう!」
紬「紅茶とケーキ持ってきたから、終わったらお茶にしましょうね」
いつものHTTだ。
そんな会話を繰り広げている間に前のバンドの演奏が終わり、ステージから降りてくる。
律「おつかれさんっした~」
澪「よし!」
律「行くか!」
紬「お~」
メンバーはステージに向かう階段を登る。
途中で憂が足を止める。
梓が振り返った。
梓「憂…」
梓は憂を促そうとしてやめた。
憂は髪をほどく。そしてポケットから取り出したヘアピンで前髪を留めた。
鏡がないので、梓が階段を下りてヘアピンの位置を直してやる。
憂「ありがとう、あずにゃん」
梓がクスリと笑い、再び階段を登る。
憂「…行こうか、お姉ちゃん」
そう呟くと憂は唯が愛したギー太をしっかりと抱きしめ、まばゆいばかりの照明と歓声の中へ歩き出すのだった。
('q')おわり('q')
(2011.08.28)
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最終更新:2016年06月25日 22:32