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一日目



 気付けば、ただっ広い屋敷の前に居た。
 その直後に現れた怪しげな黒服の男の話に寄れば、この屋敷は俺の所有物になったらしい。
 「なった」という言い方が何か引っ掛かるが、兎に角この豪勢なお屋敷を手に入れる事が出来たのは喜ばしい事なのだろう。
 だが、何よりも気になるのは今居るのは何処なのか。
 昨日の晩は普通に自分の家のベッドで寝たというのに、気が付けばこの屋敷の前で立っていたというのだ。
 軽く馬鹿らしい話であり、夢オチを期待したいが、そんな事は無い。
「さっきから惚けてるが、お前、まさか自分の仕事まで忘れてるんじゃないだろうな?」
 男が聞いて来た。当然、俺は首を横に振る。
「おいおい、まさか記憶喪失ってやつか?……商品に使う筈だったヤバイ薬でも間違って飲んだのか?精力増強剤か何かと間違って…」
 どうも話がおかしい。商品に薬?こんな屋敷に住んで、農作業か牧畜でもするのか?…精力増強剤というのも、妙な響きだ。
 とりあえず俺が知るそれは「ナイスショット、ナイスインだ!カミさんもご機嫌でねぇ」で知られる金蛇精ぐらいなのだが。
「なーんか、すっきりしない顔してるなぁ。本当にそうなのか?……はぁ、そんじゃあ、お前のこれまでの略歴でも話してやるよ。そうすりゃ何か思い出すだろ?」

 男が語った内容は、とても信じられないものだった。
「お前は、主にこの幻想郷の女性の客層を狙った性奴隷を調教する調教師。まだ若いのに筋が良いって、その世界じゃ結構名の知れ渡ってる凄腕だ。それでお前は、奴隷を売って稼いだ金でこの屋敷を買った。それで、今までの主に妖精を狙った調教から、力の強い妖精、行く行くは妖怪までもターゲットに調教をしようって話だろ?…お前はどうやら忘れちまったらしいが」
 …とりあえず、俺が昨日までしていたのは普通の学習塾の教師である。
 まあ、普通と言う言葉は似合わないかもしれない。とても教育関連者とは思えない言動で知れ渡っていたし…と言うか、それは先輩の所為でもあるのだが。
 ―兎に角、そんな俺がどうやらこの夢の様な世界では、調教師だなんて馬鹿みたいな職業らしい。
 エロゲでも今更そんなシチュエーションねぇよ。馬鹿じゃねぇのか。
 しかし、どうやらそれが現実らしい。夢みたいな世界で、現実に夢みたいな職業。
 なんだこれ
「どうせ、俺の名前も忘れてるんだろ?…俺もお前と同じ調教師だ。まあ、言ってしまえばライバルだな。お前には今現在、実績で負けてるが記憶がぶっ飛んじまったんじゃあ、俺が俄然有利だな。悪いが、この屋敷は俺が乗っ取る事になるかもな」
 どうも勝手に話が進んでいる。とりあえず俺は適当に相槌。
「丁度奴隷は全部手放して来たんだよな。じゃあ、また新しい奴隷を仕入れて来る必要があるな。丁度俺もそうだし、業者んトコまで行くか」
 とりあえず言いなり。超展開過ぎて付いていけない。



 その「業者」とやらの所で手渡されたのは、まだ年若い少女の顔写真と、その少女のものと思われるプロフィールの書かれたカタログ的な紙だ。
「さて、どうする?俺は自分で言うのもアレだが、人間相手でも通用する技術を持ってるから、この人間を選ぶが、お前はもっと楽なのを選んだらどうだ?無理に手強いやつを選んで金が稼げなかったら破産だぞ」
 どうやら男は、「十六夜咲夜」という少女を選んだらしい。紅魔館という館でメイドをしているらしく、中々に気丈な人柄との事。
「…本当に人間を売買してるんだな」
 思わず口にしていた。やはり、こんなのは異常だ。異常過ぎる。
「お前、本当全部忘れたんだな。前は全然気にしてなかったってのに……でも、俺達は完全にこっちの人間だ。自分一人、記憶を無くしてても周りは全部知ってるんだぜ?真っ当な職には今更、就けない。就かせてもらえる筈が無い」
 突然こっちに来てしまった俺にしてみれば、随分と勝手な話だが、これは夢で無く、現実であるらしいから、ちゃんと俺は自分のすべき仕事をこなさないと、餓死なり何なりしてしまうだろう。
「はぁ…じゃあ、この妖怪にしたらどうだ?妖怪相手なら大して罪悪感も無いだろ?…特にお前は、な」
 進出単語:妖怪
「妖怪…?」
「おいおい、そういう事まで忘れたのかよ…重症って言うか、末期じゃねぇか。妖怪ってのは、妖怪だよ。人間ではない、謂わば怪物。お前は確か、妖怪に恨みを持ってたんだろ?」
 全くご存知無いが、そういう事なのだろう。
「思い出せないが…まあ、それで良い」
 この際、何でも良いというか、どうでも良いというか。
 でもまあ、人間でないモンスターが相手なら、まだ気も楽だろう。
 …いや、モンスターを調教…?
 非常によろしくない気がする。
 あ、でも相手は少女の外見をしている筈だ。えーと、この男が指差したのはこの、103番の…
「幼女!?」
「何だよ、うるせぇ」
 どう見ても、このカタログに載っている写真、これはまだ年齢が一桁であろう幼女のものだ。
 寄りにもよって幼女を調教だと!?どう考えても犯罪…って、拉致監禁して猥褻行為をするのはその時点で犯罪だろうが、その頭に幼女が付くと、罪悪感が凄まじい。
「子供の方が素直でやり易いんだって、記憶失くしたお前にはそれぐらいが良いだろ」
 結局、俺の屋敷にはその幼女、ルーミアが届けられる事になってしまった。



 その日の夜は、何事も無く、平然と過ごした。
 どうやらその少女…否、幼女の確保に時間が掛かるらしい。
 妖怪少女…否、妖怪幼女を拉致監禁、猥褻行為…もし元の世界に帰れたら、真っ先にビルの屋上から飛び降りてしまいそうだ。



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最終更新:2008年12月28日 02:45