時は流れ、僕とリリーはシェリアの住む、ノースコットの別荘の一つ……今では唯一の屋敷となったそれを訪れた。
金曜の昼に着いたのだが、シェリアも家に居て、僕等を迎えてくれた。
体がとても弱く、所謂虚弱体質なシェリアは、満足に外で勉強する事も出来ない。
どうしても住み慣れた家で、一人きりで勉強する必要が出て来るのだ。
そして、彼女がそうまでして勉強する理由、というのは一つで、ひたすらに彼女の知的好奇心は強く、また学習すればするだけ知識が身に付く、そんなある種の天才だからだ。
「本当に久し振り、シェリア。ずっと帰って来れなかった僕を迎えてくれて、ありがとう」
本気で申し訳なく思った僕は、深く頭を下げた。
しかし、それに対するシェリアの声は明るい。
「そんなの気にしないでよ。あたしはあの時、兄貴を引き留めなかったんだから。何時でも帰って来てくれれば良かったんだよ。棺桶に入って以外、ならね」
「そうか……」
相変わらずなシェリアに、僕は安心も覚えたが……やはり、どうしても心苦しい。
「はいはーい。こっからは暗い話禁止。それより、そっちの金髪の美人さんをあたしに紹介してよ。もう、綺麗な人引っかけて、憎いねぇ、大統領」
快活に言って、花の様に笑う。
幼い時から、シェリアのこの性格は全く変わっていない。
激動の中にあったのに、尚こんなに笑えるなんて。
僕は、妹の強さに圧倒されてしまった。
「あっ、ああ。彼女はリリー、僕の大事な友人であり、仕事上での最高の相棒だ」
僕が紹介すると、リリーは頭を下げて綺麗にお辞儀をする。
平民暮らしが長いとは言え、やはり良家の出身であるリリーはこういう身振りの一つ一つが、様になっている。
「初めまして。僕はリリア・フラバスだ。お兄さんとは、かれこれ二年ほど親しくさせてもらっているよ」
「どうもどうも。シュルーティアって言います。シェリアとでも、ティアとでも、好きに呼んで下さいね」
がっちりと握手を交わす。
抱き合わないのは、略式の挨拶だからだ。それに、この場には僕以外にも男性が居る。目のやり場に困るだろうから、という配慮だろう。
「で、こっちのいかにも不誠実そうなのが、ヨシナカ。あたしの下僕やってるの」
「そりゃないですよ!お嬢!」
ヨシナカ、と呼ばれた男性が言い返す。
すっかり、シェリアは彼の事を玩具にしてしまっている様だ。
「ヨシナカさんは、やはり日本の方で?」
黒い髪に、茶色の瞳。服こそ洋服を着ているが、身体的特徴はどう見てもアジア系だ。
名前も、確か義仲というのは、日本の武将か何かの名前だったと記憶している。
「それが、わからないんだよねぇ。記憶喪失でね。ただ、生活に関する記憶はあるし、刀も扱えるみたいだから、執事兼ボディガードをしてもらってる。結構、付き合いは長いかな」
シェリアが言うと、ヨシナカさんも頷く。
しかし、シェリアが気に入る執事なんて、僕が屋敷に居た頃は絶対に居なかったのに、意外な事もあるものだ。
シェリアと波長が人間なんてのは、非常に少ない。
それこそ、身内の僕ぐらいしか居ないと思っていたのに。
「ではでは、早速だけどお茶にしよっか。ヨシナカ、お茶とお菓子の準備は出来てるよね?」
「勿論ですお嬢。お嬢お気に入りのファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ、フランス王室も御用達の『ナポレオン・ゴールド』に、街のケーキ屋渾身の逸品であるフォンダン・オ・ショコラを用意させてもらいました。尚、代金はお兄様持ちという事になっていましたので、領収書をどうぞ」
ぴらり、領収書を渡される。
「は、はあ……」
恨みを込めた目をシェリアに向けるが、華麗にスルー。
「な、七十ユーロ…………」
参考:一ユーロ=八十円ぐらい。
ケーキと紅茶だけでこの値段……どんな高級品なんだ。
基本、傭兵を始めて以来、貧乏暮らしをして来た僕だ。
お茶で十ユーロを超過するなんて、信じられないと言うか、ただの馬鹿の所業だろ、と言うか、もう笑うしかないというか……。
「ちなみにシェリア、いつもはお茶にどれぐらいお金を……?」
「お茶なんて、ここ数年した事無いなー」
「何時ぞや、ケーキのセールをしていた時はしましたけどねぇ。あれ、一個一ユーロの投げ売り品で、賞味期限ヤバかったみたいですし」
……ホロリ。
理不尽を呪おうと思ったら、逆に泣かされてしまった。
お、お茶も出来ない極貧生活を……すまなかった、シェリア、それからヨシナカさん。七十ユーロなんて、幾らでも払わせてもらいます。
「嗚呼、シェリア。僕が来たからには、君にはこの極貧生活からの脱却を約束したい……」
「……お嬢、お兄様、信じ込んでますよ?」
「良いの良いの。兄貴は単純馬鹿だから、利用しとけば」
「まあ、それがヴァンの良い所であり、ボロい所だからな……」
女二人が何か言った気がするが、聴こえない。
僕は、僕はシェリアの為に、一緒に居る間ぐらいは尽くしてあげよう……。
「で、どういう訳か時は流れて夜十時になる訳だ」
「シェリア、あんまりメタ発言はして欲しくない……かな」
「でも兄貴!お茶、夕食と押さえるべきポイントを総スカンして十時って、色々と穏やかじゃあないよ!?」
まあ、つまりはこの時間まで特筆する事が無かった、という事になる。
シェリアとリリーは普通に仲が良くなったし、言う程ここでの暮らしは、貧しいものでもないらしい。
腐っても名門貴族、という所だろうか。自分の家だと言うのに、未だ気高く在り続けるこの家を素直に尊敬してしまった。
そう、本当にシェリアは強い。
「で、兄貴。これからどうするの?あー……いや、それは推して測るべし、か。もう二人ともお風呂に入った訳だし……ねぇ?」
「待て、大いに待て、シェリア。僕は一応、ここへも仕事の内で来ているんだ。銃を帯びている辺りから、わかるだろう?」
肩から提げているのは、紛れも無い僕の愛用の散弾銃、サイガ12。
通常の銃剣を装着すれば槍の様に扱え、特注の両刃を付ける事で剣としての運用も出来る。
対人戦闘に於いて、この機能は超接近戦でしか意味を為さないが、対魔物に於いては、接近武器の方が有効な場合も多い。
相手に遠距離攻撃手段が無い為、待っていれば確実に間合いに入って来てくれる。
そこを断つのには、あまり苦労をしない。
「いやいや、でも。いや、だからこそ。熱く燃えるってもんじゃないですかねぇ?」
「シェリア、微妙に台詞が親父臭いよ……」
注意:シェリアは十七歳である。
「ま、んな戯言は良いけどさ。例の件、調べておいてくれたの?」
「ああ。『かまいたちの妖刀』日本の刀で、後にそれが妖刀化、この国まで流れ着いた……んだと思う。正しい名は『
構え太刀』、恐らく、日本から伝わる際、少し訛ったんだろう」
ぎぃ、扉が音を立てて開かれる。
部屋に入って来たのはリリーだ。
「例の妖刀の話か。しかし、シェリア、何故君の家にそんな物が?」
僕とリリーはこの屋敷に来る前から、屋敷の倉庫にあったという『かまいたち』について調べ回っていた。
どういう謂れか知らないが、日本から遠く離れたこの国にも伝わる程の妖怪刀。それがこの屋敷には実存しているという。
「それが分かれば、良いんだけどねぇ。あたしは誰からも、何も聞いてない。少なくとも、破産直前までの使用人は何も知らなかったみたい。流石にお父様かお母様は知ってたと思うけど」
どちらも、帰らぬ人になっている。
子供を残して逝くなんて、酷い親だと思わなくもない。
ただ、自分の家が破産して行く様……それを救える事もなく、ただ見守るしかなかった……その苦悩は、察するに余りある。
「まあ、まずは現物を見るべき、かな。今も倉庫に?」
「うん。ヨシナカが記憶を失う前、ちょっとその筋に詳しかったみたいで、簡単な東洋流の封印を施してる。まあ、本人曰く断片的な記憶しかないから、効果があるかわからないらしいけど」
「そうか。で、そのヨシナカさんは?」
「先に倉庫に行ってる。中は真っ暗だからね、電気も通ってないし、蝋燭を点けに」
倉庫は屋敷の隣に併設されている。
倉庫なんて言うと、汚らしくてみすぼらしい所を想像するかもしれないが、このノースコット家の屋敷の倉庫はそうじゃなかった。
内装は少しモダンなテイストの利いた、洒落たものだ。
壁に設けられた棚には、大小様々な箱――ダンボールも、木箱も、鉄製のものまでも――が乗せられている。
床にもあまり埃が積もる事はなく、清潔感がある。
流石のノースコット家クオリティ、と言えるだろう。
「ヨシナカ、例のは?」
「はい、こちらに」
ヨシナカさんが手で示す先、洋風な趣向の中では、一際目を引く東洋的な雰囲気を醸し出す“それ”があった。
刀が鞘に収められたまま、床に安置され、周囲には紙で編んだ縄の様なものが張り巡らされている。
西洋のそれとは大きく違うが、その刀が神聖な何かによって、封印されているのは明確だった。
「これが……」
思わず、息を呑む。
僕はあまり、日本の刀剣類というものには詳しくない。
それでも、得体の知れない大きな何かを感じ取る事は出来た。
これが真実、妖刀なのだろう。
刀の姿をした、魔物。
魔物としての生を持つ、刀。
「対処法は、わかってるの?」
シェリアが、不安げな視線を向けて来る。
それはそうだろう。僕だって不安だ。正直、予想以上のものなのだから。
「一応はね。妖刀は、悪魔であって、同時に武器でもある。だから、一番の対処法はその刀を使いこなす事だ。つまり、自分の武器としてしまう」
古い文献を漁って得た知識を想い起す。
しかし、字面だけでは簡単なものだったが、それが実際どれだけ大変か……この刀を見て、よくわかった。
「兄貴、刀なんて扱えるの?」
「正直、無理臭い。だから、自分が扱う訳ではなく、ただ屈服させる。一度そうして沈静化させてしまったら、最適な使い手が現れる時まで安置出来る」
提げていた銃を手に取り、側面に刃を装備する。
銃剣を使っても良いかもしれないが、下手に長物を使うと、接近戦で不利だ。
槍の様に運用出来るといっても、肝心の本体は銃であり、刀の一撃を受け止めれば簡単に壊れてしまうだろう。
だから、刃を刃で受け止める。鍔迫り合いというやつだ。
「えーと……?」
「妖刀は、それ自身が高い戦闘能力を持つっていう。だから、それを倒す。そうすれば、屈服させられるだろ?」
妖刀は今から千年以上前に出来た刀が多い。
日本の歴史はあまり知らないが、その頃は単純に力で全てが支配されていた時代だろう。
無論、それは西洋的に神から授かったという権力ではない。純粋な武力。
強い者は弱い者を支配し、全てを奪い、王となる。
そうして日本には沢山の国が出来て、世は大いに乱れた。
だから『戦国時代』そう呼ばれるのだという。
そんな時代の刀を従えさせるには、それ以上の武力でぶつかるしかない。簡単で良い。理屈が無い点では。
「ヨシナカさん、封印を解けますか?それと、その刀を倉庫の外に出す事も」
「……流石、お嬢のお兄様。豪傑ですね。俺なんて、剣術の心得があるのに、手を出せませんでしたよ」
ヨシナカさんは皮肉っぽく笑い、簡単に紙の縄を断ち切ってしまった。
僕が視認出来ない程の速度で、腰に佩いていた刀で以て。
「僕には、ヨシナカさんの方が余程凄い人に見えるんですが……」
人間技じゃないでしょう、それ。
全く、ジャパニーズは何でもありだっぜ。
「俺はこればっかりですからね。普通の打ち合いだったら、お嬢にも敵わない。……いや、お嬢だからこそ、敵わない」
言いながら、刀を手に持つ。
とりあえず、鞘に収まっていれば大丈夫らしい。
流石に柄を握るとまずそうだが……。
「まあ、シェリアは昔から相当のじゃじゃ馬だったしね……メイド衆は令嬢として――淑女として――って煩かったけど、僕はあれで正解だと思ってた。と言うか、今日会ってみて安心したよ。シェリアがすっごいお淑やかになってたりしたら、泡を吐いてて倒れてたかもしれない」
笑うと、隣から世界を狙えるトーキックが脇腹に飛んで来た。
シェリア、それ、これから戦おうって人間にする事かな……。
「あたしだって、一応は学園でぐらい静かにしてるのよ?黙ってれば、それっぽく見えるってのは自覚してるし……」
「自覚があるんだ……それはそれで自意識過剰……」
続いて、神なるトーキックが僕の腰を直撃した!
全身に電撃が走る、冗談抜きで。
「うぐっ……シェリア……色々とごめん」
「わかればよろしい」
リリーから向けられる視線が痛い。
これ、妹の尻に敷かれてるってやつなのかな……。
屋敷から少し離れた場所。
所謂外庭とも言える場所に、僕とヨシナカさんは移動した。
危険性を考慮して、シェリアはその様子を遠巻きに見て、リリーは双銃を手に持った状態で待機している。
銀色に輝くワルサーPPと、古き情緒を感じる中折れ式のエンフィールド。
どちらも幾多の戦場を渡り歩いて来た、彼女の長年の相棒だ。
あの銃口が狙いを絶対に外さないという事は、彼女との共闘期間の長さが教えてくれている。
もしもの事があっても、とりあえず死にはしなさそうだ。
まあ、その場合僕の株価はストップ安となりそうだが……。
「じゃあ、これを僕が抜く。そして、妖刀と戦って、勝つ……それで良い筈です」
ヨシナカさんにも下がってもらい、刀を抜き払う。
鞘から抜く際、普通には有り得ない手応えがあった。
これが妖力と呼ばれるものだろうか。
程なくして、あらゆる制約から解き放たれた妖刀は、僕の手を離れて目の前の虚空に浮かんだ。
そして、妖刀の『本体』とでも呼べるのだろうか。
何も無かった空間に、徐々に人型が作られて行った。
脚、腕、胴体、頭……体つきから察するに、女性。
唯一実際の人間と変わらない所があるとすれば、半透明でその姿が透けて見えるところだろうか。
色が無いので分かりにくいが、裸という訳でもなく、日本の着物の様な物を纏っている。
すらっと伸びた長身で、年の頃は丁度リリーと同じ。成人か、その少し手前といった所だろう。
何処となく高貴さすら感じる。刀が化けた、幽霊の様なものだと言うのに。
体が完全に出来上がると、女性は宙に浮かんだままの刀を音も無く持ち、正眼に構えた。
言葉を交わす必要はない、する事は一つ、といったところだろうか。
それとも、会話をするという能力が無いのかもしれない。
或いは、イタリア語を解せないのか。
『通り名は構え太刀、銘は風姫。参る』
僕が身を低くすると、風の音の様に声が聴こえた。
聞き慣れない言語、恐らくは日本語。それが意味する事はわからないが、フウキ、それが彼女の名前であり、この言葉が戦いの合図である事は明確にわかった。
次の瞬間には、目の前に刀の切っ先が迫っていたからだ!
持ち上げた銃で第一波を受け止め、真横に受け流す。
相手の返す刀を身を引いて避け、突き出される刃を叩き落とす。
風の様な、と形容するのがぴったりな流れる様な剣技だ。
だが、いささか型にはまり過ぎている。
その全てを見切るのは容易であり、速度のある太刀筋も刀が動く度に一緒に吹く、烈風が軌道を示してくれた。
どうやらこの風が「かまいたち」、成る程、触れば切れそうな鋭利さを持っているが、今はそれが仇となっている。
相手の刀を押さえ付ける腕に力を込め、相手の体制を崩す。
てこの原理の様なものだ。地面が支店、僕の銃が力点、刀の持ち主が作用点。
作用点は当然、急激な重力の移動によって、持ち上がる力を受ける。
そこを、僕の銃に備わった刃が薙いだ。
そのものが風で出来た女性の体が一瞬ぶれ、その場に崩れ落ちた。
終わったと考えて良いのだろうか。
酷く呆気なくも感じたが、緊張感のある戦いであったのも確かだ。
実戦経験の多さが、物を言った勝負だろう。魔物だけでなく、対人戦もそれなりの数をこなして来た。
とりあえず、同業者とも言える刃物を扱う相手との戦い方は心得ているつもりだ。
『見事。それでこそ、我が主となり得る素質のある武士というもの。なれば、これをも凌駕してもらいたいものだ』
刹那、突風が吹いた。
構えを解いていなくて良かった。下手をすれば、バランスを崩すどころか、吹き飛ばされかねない風だ。
「第二ラウンド、ってところか」
再び女性、風姫の体は形作られていて、手には刀も握られている。
唯一さっきと違う箇所があるとすれば、その刀の形状だろうか。
まるで鉄扇の様に、刃が三枚に分かれている。
しかも、その一つ一つがどういう訳か、さっきの刀と同じ厚みを持っている。
さっきの突風は、あの三枚の刃で扇ぐ事で起こされたのだろう。
これはさっきまでの様には行かない。
銃を構え直し、腰を落とす。
刃が三枚に増えたという事は、衝撃も三倍に増えている筈だ。
相応に構えておかないと、一瞬で跳ね飛ばされかねない。
「さて、ちょっと頑張らないと、かな」
びゅっという風の音と共に、風姫が躍り出る。
今度の相手の構えは上段。僕の中段とも下段とも言えない構えは、正しかったのだろう。
振り下ろす刀と同時に、銃を振り上げる。
キンッ、キンッ、キンッ!
三連続で銃と腕に衝撃が伝わり、握力が削ぎ落されるのがわかる。
かなり丈夫に作られている筈の刃も、もしかすると刃毀れしたかもしれない。
しかし、ここで銃を取り落としていては勝てない。
後ろに飛び退き、銃を右手に寄せる。
確か剣道では、八双という構えと呼ばれる構え。
そこから踏み込み、大きく弧を描く様に銃を振るい、切り上げる。
僕と相手に、ほとんど身長差は無い。
ならば体重をかける事が出来る切り下ろしの方が有利というものだが、単純に力勝負をした場合、三枚の刃が自由に動く『構え太刀』を相手には勝てない。
読まれない動きで、翻弄して行くしかない。
当然、僕の切り上げは見切られ、空を切る。
左に飛び退いた風姫は、脇腹目掛けて突きを繰り出す。
烈風を伴った強烈な一撃だ、当たれば即ノットアウトするだけの威力がある。
これを僕は、大きくしゃがむ事で回避した。
風が髪の毛を震わせ、その何本かを奪って行く。
ここから、再び右足に重心をかけながら切り上げ、慌てて風姫は刀を戻し、これを防ぐ。
続いて、相手の刀と平行に、空中を滑らせる様に横切り。
刀が突き上がり、銃が上方向にぶれる。
無防備になった僕の胴体に向け、刀が振り下ろされた。
風を切りながら、滑空する様に刀は宙を滑って行く。
僕の似非の剣とは違う、余程自然な動きだ。
風に乗る様に刀が舞う姿は、剣舞と言うのに相応しい。そして、それだけ実用性には劣っている。
刀が体に届く直前、空を泳いだ僕の銃を一気に引き戻す。
最終更新:2010年05月11日 07:05