『マリンウォール』の玄関付近に立つ異様な集団、“ヒーロー戦隊”『ゲコ太マンと愉快なカエル達』。
学園都市内のラヴリーミトン製マスコットであるゲコ太。その派生カエル達である(一部例外)。
ちなみに、この着ぐるみは1体を除いて全てゲコ太マスクの自作である。ゲコ太好きが高じて着ぐるみまで作ってしまうとは、ゲコラー恐るべし。
その中で、1体だけ例外が居る。ラヴリーミトン製マスコットでは無い、カエルのマスコット。
“ヒーロー”の人数が多過ぎたために、ゲコ太が己のゲコ太グッズを保管している倉庫の中から引っ張り出して来た、試作型着ぐるみ。名は“カワズ”と言う。

「あれ~?このカエルさん、ラヴリーミトンシリーズじゃ無いね?」
「そうだね。何て名前なの?」

玄関前に集まっている幼稚園児や小学生達(全員ゲコラー)が、今まで見たことの無いカエルに?マークを浮かべる。

「俺?俺は“カワズ”だよ?」
「“カワズ”?何それ?見たことも聞いたことも無いよ?ねー?」
「うん」
「何々?“カワズ”って何?」

次第に子供達が“カワズ”に集まって来た。

「“カワズ”は“カワズ”さ。それ以上でもそれ以下でも無いよ?」
「ふ~ん。ところで、その名札の漢字って何て読むの?“ヒーロー”はわかるんだけど」
「“ヒーロー”か。きっと、すっごくカッコイイんだろうな」
「そうよね。あそこに居るカエルさん達も、“ケロヨン1号”以外は全員“ヒーロー”なんだって!!」
「何で“ケロヨン1号”だけが“ヒーロー”じゃ無いんだろう?」
「“ゲコ太マン”が言うには、『希少な一般人ポジョションだ』って言ってたわ」

何時の間にか、話題が“カワズ”から“ケロヨン1号”に変わっている子供達。子供の興味というのは、コロコロ変わるのである。

「これ?これは“詐欺師ヒーロー”って言うんだよ?」
「“ぺてんしヒーロー”?何それ?」
「えっとね、色んな人に嘘を付いて、騙して、利用して、結果として子供達を守っている無気力ぐーたら怠け癖の3拍子が揃った新時代の“ヒー・・・」
「こんな子供達に!!!」
「何教えてんだ!!!」
「グハッ!!!」

“カワズ”の後頭部に、焔火と閨秀の蹴りが叩き込まれる。吹っ飛ぶ“詐欺師ヒーロー”。

「“カワズ”がふっとんだー!!」
「カエルみたいに!!」
「あー、風紀委員さん達だー!!」

子供達は、冗談か本気かよくわからない言葉を叫ぶ。同時に、蹴りを叩き込んだのが風紀委員ということも理解したようだ。
一方、焔火と閨秀は“カワズ”に向かって行く。“詐欺師ヒーロー”という名札を見た瞬間から、ピンと来たのだ。

「界刺さん!!こんな所で一体何をしているんですか!?」
「オレ、カイジチガウ!オレハ“カワズ”ダヨ?」
「何カタコトになってんですかー!!」
「“詐欺師ヒーロー”って名札が付いてたから、一目瞭然だったぜ!!」
「コレ、オレガヨウイシタモノジャナイ。オレ、シカタナク・・・」

焔火と閨秀の追求に、カタコトで弁明する“カワズ”。着ぐるみのくせにコロコロ変わる表情が、焔火達のイラツキを助長させる。
そこに、一厘・鉄枷・破輩までもが割り込んで来た。

「おい、“変人”!!何で、テメェがここに居るんだ!?様子でも見に来たってか!?」
「ホワイ?オレ、ナニモシラナイ。オレ、“詐欺師ヒーロー”。“変人”チガウ」
「あなた・・・!!昨日の件に、あなたが関与していることが濃厚なのはわかっているんですからねー!!」
「ハァ?キノウノケン?オレ、ココニクルノハキョウガハジメテダヨ?」
「・・・そもそも、お前はここに何をしに来たんだ?」
「オレ、ジュウニニンイインカイノメンバートシテ、ダマサレテココニツレテコラレタ。オレ、カワイソウナ“カワズ”」
「「「十二人委員会・・・!!?」」」

“カワズ”が放ったキーワードに、焔火・一厘・破輩はある直感を抱く。抱いて、首を振り向ける。

「ハーハッハッハ!!!」
「師匠!!!」
「暗黒闘気が!!!」
「「「・・・・・・」」」

そこに居たのは、“ゲコ太マン”・“ゲコ太マスク”・“ゲコ太”の3名。彼等が発する声に聞き覚えが十二分にある焔火達は、“カワズ”の真意を理解する。

「・・・あなたでも、彼等には勝てないんですか」
「・・・あいつ等には、一応借りがあってね。それを返すために承諾したのはいいんだけど、肝心なことを何も喋らないんだモンな。後出しジャンケンってヤツ?」
「ぶっちゃけ、人のことは言えないんじゃねぇの?」
「・・・因果応報か。それは、君達にも言えることだね?」
「どういうことだ?」
「破輩・・・。お前も、ちゃんと部下の指導はしとけよ?安易に情報を口に出して・・・それを利用されるって考えないの?」
「「あっ・・・」」
「・・・ギロッ!!」
「「す、すみません!」」

“カワズ”の指摘を受け、破輩は思わず手で口を塞いだ鉄枷と一厘を睨み付ける。

「その情報が真実かどうかはさておき、捜査に携わる者ならもっと注意しないと。特に、俺のような人間相手にはさ。
俺は、君達の味方ってわけじゃ無いんだし。顔見知りだからって、油断しちゃいけないよ?まっ、我慢できなかったんだろうけど」
「・・・さっきのカタコト。まさか・・・」
「それは、買い被りだね。あれは、“カワズ”のキャラ付けのために考えていた口調の1つさ。“詐欺師ヒーロー”にカタコト会話。胡散臭さ満載だろ?」
「・・・それって“ヒーロー”って呼んでいいのか?」
「「「「う~ん・・・」」」」

閨秀のごもっともな指摘に、唸る他4名。そんな時に、蚊帳の外に居た子供達が“カワズ”に近付いて来た。

「・・・“カワズ”って、嘘付きなんだよね?」
「うん?そうだけど?」
「人を騙すの?」
「うん。騙す」
「人を利用する“ヒーロー”なんですよね?それが、“詐欺師ヒーロー“なんですよね?」
「うん。それが?」

“カワズ”の返答に、子供達は俯く。その様子に“カワズ”が訝しげな視線を送っていると・・・






「皆!!“カワズ”をやっつけるんだ!!!!!」






「「「「「おおおおおおぉぉぉっっ!!!!!」」」」」
「へっ?」

子供達が、いきなり宣戦布告を“カワズ”に発した。この状況に目を白黒させている(着ぐるみなのに)“カワズ”を余所に、純真無垢な子供達の攻撃が始まる。


「どりゃあああぁぁぁっっ!!!」
「火の玉!!?」
「はああああぁぁぁっっ!!!」
「電撃!?」
「でいやああああぁぁぁっっ!!!」
「水流!?」

ここは、学園都市。幼稚園児だろうが小学生だろうが、その才能如何によって超能力は使用可能だ。
彼等彼女等は、今一致団結している。“詐欺師ヒーロー”である“カワズ”を、自分達の手でやっつけるために。

「“ヒーロー”が、嘘なんか付くかああああぁぁぁっっ!!!」
「ガハッ!!」
「“ヒーロー”が、人を騙すもんかあああああぁぁぁっっ!!!」
「グヘッ!!」
「“ヒーロー”が、人を利用する筈ないもん!!!」
「ドハッ!!」

幼子達は、一度は“ヒーロー”に夢見る。それは、架空の世界であったとしても、それに憧れる。『困ってる人間を助けられるヒーローになりたい』。そんな淡い願いを胸に抱く。
だが、この“詐欺師ヒーロー”は幼子達にとって“ヒーロー”と認めるわけにはいかない存在だった。
この“ヒーロー”は偽者だ。この“詐欺師ヒーロー”は“ヒーロー”なんかじゃ無い。そう、彼等彼女等は判断した。

「“ヒーロー”なんて、名乗るんじゃ無ぇよ!!!」
「“ヒーロー”失格!!」
「偽者の“ヒーロー”!!」

幼子達の苛烈極まる攻撃の嵐に、“カワズ”は巻き込まれる。幼さ故に、手加減というのを全く知らないのだ。

「自業自得にしても・・・」
「半端無ぇな・・・最近のちっさい子供は」
「ぶっちゃけ、いい気味だぜ!」
「ご愁傷様・・・」
「そうか・・・。有無を言わせずに叩き潰す。一々奴の言葉を気にせずに、速攻でカタを着ける・・・か。よ~し・・・」

焔火・閨秀・鉄枷・一厘・破輩は、誰も“カワズ”の身の安全に気を留めない。
こんなことでくたばる人間じゃ無いこともわかっているが、それ以上にムカっ腹が立っているのである。それを証明するかの如く・・・



ブオオオォォッッ!!!!



「破輩先輩!?ぶっちゃけ、何してるんすか!?」

鉄枷が驚くのも無理も無い。突如として、破輩が『疾風旋風』によって自身の頭上に強烈な風を巻き起こし始めたからである。

「そこに居る子供達。後は、私達風紀委員に任せろ!!その“詐欺師ヒーロー”には、私達が天罰を下してやろう!!」
「な、何ぃー!!?」

既にボロボロになっている“カワズ”に下された、死刑宣告にも似た響き。だが、疾風の支配者は事も無げにこう言い放つ。

「“ヒーロー”を名乗る偽者等、風紀委員である私達が見過ごせるわけが無いだろう!?」
「ちょっ、ちょっと待て!!お前等、捜査はどうしたんだ!!?」
「そんなモノ、お前が持っている情報を根こそぎ引き出せばどうとでもできる・・・かもしれん!!」
「『かも』って何だ!?『かも』って!?つーか、俺だって好き好んで“ヒーロー”を名乗ってるわけじゃあ・・・」
「だったら、尚のこと!!“詐欺師”のお前と、問答をするつもりは無い。『問答無用で叩き潰して、言いなりにさせる』!!お前への対抗策としては上々だろう!?」
「何、真刺みたいなこと言ってんだ!?」

その不動の言葉から見出した“詐欺師”への対抗策であることを、“カワズ”は知らない。
一方、今の破輩はごく自然に色んな思考を行っている。“詐欺師”の言葉に対して必要以上に考え込んだりはしない。

「それ、いいな。破輩先輩、あたしも乗ったぜ」
「・・・私の技を試す良い機会かも・・・」
「何かよくわかんねぇ流れだけど、ここらであの“変人”に対する苦手意識を克服しとくか!!」
「・・・この前ボコボコにされた借りを返すのも、悪くないな」
「お前等・・・!!取引はどうしたんだよ!?」
「今のお前は十二人委員会のメンバーなんだろう!?だったら、関係無い!!あれは、『シンボル』のお前と結んだ契約だ!!」
「(破輩の奴・・・全然動じねぇな!!・・・・・・)お、俺は“詐欺師ヒーロー”の“カワズ”だ!!それ以上でもそれ以下でも無ぇよ!!!」

そして、破輩の対抗策に乗る他4名。各々、目の前にいる“詐欺師”には色んな意味で虚仮にされているために。だが・・・

「待って、風紀委員のお姉ちゃん達!!」
「ここは、僕達に任せて!!」
「私達の手で、あの偽者の“ヒーロー”を倒したいの!!」

破輩達を止める幼子達。その瞳には、強い意志が見て取れた。

「君達・・・」
「俺達は、お姉ちゃん達みたいに学園都市の皆を守れるような強い人間になりたいんだ!!」
「“ヒーロー”みたいに、困っている人達の力になりたい!!性懲りも無く“ヒーロー”を名乗るこんな奴に、僕達は負けない!!」
「だから、ここは私達に任せて!!私達だって力を合わせれば悪人を倒せるんだってことを、この偽者に倒して証明してやるんだから!!ねぇ、皆!!?」
「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉっっ!!!!!」」」」」

幼子達の心に芽生えるのは、正義感。子供達の言葉に滲むのは、悪を倒すという使命感。
何時か自分も“ヒーロー”みたいに・・・そう、幼いながらも確かに心に宿す思いに、破輩達は心を打たれる。そして・・・攻撃は再開される。

「ギャアアアアアアアァァァァッッ!!!!!」

その直後、偽者の“ヒーロー”である“カワズ”の断末魔の叫びが、『マリンウォール』に響き渡った。
(ちなみに、界刺はゲコ太から『子供達がふざけても手を出さないように』ときつく言われているために、全く手が出せない。
しかも、“ヒーロー戦隊”を組むと(勝手に)決めた啄の質問に適当に答えた“詐欺師ヒーロー”を採用され、それを演じ切ることを啄自身から厳命されていた)






「勝ったぞおおおおぉぉぉっっ!!!!!」
「やったあああああぁぁぁっっ!!!!!」
「私達が“ヒーロー”よおおおぉぉっ!!!!!」
「「「「「おおおおおおぉぉぉっっ!!!!!」
「・・・・・・」

5分後、“カワズ”の丸焦げ一丁上がりが出来上がった。様々な攻撃を受けた“カワズ”の目からは涙が零れていた(着ぐるみなのに)。
その一部始終を見ていた各風紀委員の反応はと言うと・・・

「うん。やはり、問答無用で叩き潰すのが一番効果的みたいだな。他の連中にも教えておこう」と呟くのは破輩。
「それが、いいっすね!!」と呟くのは鉄枷。
「・・・苧環達にも教えとこっと」と呟くのは一厘。
「あんなエリートの欠片も感じられない男に気圧されたのか、神谷?情けない」と呟くのは斑。
「・・・うるせぇ」と呟くのは神谷。
「鬼畜逝けメンに続き、“変人”にも天罰は下されたようね。フフフ」と呟くのは鏡星。
「両手に花以上のことをするから、罰が当たったんだね」と呟くのは一色。
「あの人って、本当によくわかんない人間よね。強いの?弱いの?」と呟くのは加賀美。
「“ヒーロー”を演じる・・・“ヒーローごっこ”?あれが・・・私がなるかもしれない姿?」と呟くのは焔火。
「・・・・・・何か不自然」と呟くのは姫空。
「あれが・・・固地と同じくらいに厄介な男?これまた、全然タイプが違う人間だな」と呟くのは浮草。
「固地先輩のような人間は、2人も要りませんって」と呟くのは真面。
「か、かわいそうですー!!よ~し、私がなでなでしてあげます!!」と呟いて突っ走って行くのは抵部。
「あれが噂の“変人”か、閨秀?」と呟くのは冠。
「はい。でも、見てくれに騙されちゃいけねぇっすよ?あんなんでも、厄介なのには変わりないんで。つっても、カエルですけど」と呟くのは閨秀。

「かい・・・あっ、違った・・・。“カワズ”さん。大丈夫です・・・」
「だああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
「キャッ!!?」

慰めようと駆け寄った抵部を無視し、“カワズ”は一瞬で立ち上がる。

「くそっ!!もう我慢できるか!!!こうなったら、こんなのさっさと脱ぎ去ってやる!!そして、現実の厳しさというのを思い知らせてやる!!!」
「何だと!?お前、子供達の夢に泥を塗る気か!?」

完全ブチ切れ状態の“カワズ”の愚行に、破輩が警鐘を鳴らす。ここに居る幼子達は、未だにゲコ太達の存在を信じている年頃だ。
何処かに本物のゲコ太達が居ると、本気で信じているのだ。そんな子供達の夢を、“カワズ”は打ち破ろうとしている。
例えパチモンであったとしても、着ぐるみの中の正体を現すというのは幼子達にとっては衝撃的なのだ。

「夢なんてのは、何時かは覚めるモンさ!!“詐欺師ヒーロー”の本領発揮だ!!現実の厳しさってのを、この年頃から知るってのも悪く無ぇ!!いくぜ!!!」
「テメェ!!」

鉄枷の怒声も、今の“カワズ”には届かない。早速着ぐるみを脱ごうとする・・・が・・・

「うんっ?むっ!?ぬ、脱げない・・・!!?」

どうしてか、着ぐるみを外せないでいる“カワズ”。顔に被っている物さえ、首から引っこ抜けないでいる。
しばらく悪戦苦闘してみたものの一向に脱げないでいる“カワズ”。そんな彼に話し掛けて来るのは、同じ『ゲコ太マンと愉快なカエル達』の1人である“ゲコ太マスク”。

「うむ。やはり、脱ぐことが叶わぬか・・・」
「はぁっ!?お、おい!!どういうこった!?」

“ゲコ太マスク”の放った冷静で、しかし聞き逃せない台詞に問いを放つ“カワズ”。

「その試作型着ぐるみNo.11“カワズ”は、装着者の体に完全にフィットしてしまう学園都市の技術の粋が注ぎ込まれた着ぐるみでござる(ボソッ)」
「何で、こんな着ぐるみに無駄にすげぇ技術を注ぎ込まれているんだ?(ボソッ)」
「実は・・・あの『根焼』の店長の品でござるよ(ボソッ)」
「・・・あの店長、何でこんなモンを作ったんだ?(ボソッ)」
「拙者が、『根焼』にて食事をしていた折に愚痴を零したのでござる。『等身大のゲコ太を・・・』という言葉を。それを偶々聞いていた店長がノリノリで・・・(ボソッ)」
「・・・てことは、この“カワズ”ってゲキダサネーミングも店長が?(ボソッ)」
「その通り(ボソッ)」
「あの“変人店長”め・・・(ボソッ)」

“カワズ”は、苦虫を噛み潰す。店長(アンタ)は一体何をやってんだよ!?と突っ込みたい気持ちを抑えながら、“ゲコ太マスク”に質問を重ねる。

「じゃあ、お前等が着てるのも店長作なのかよ?(ボソッ)」
「いや、違うでござる。拙者等のは、店長のを参考に拙者自らが作った普通の着ぐるみでござる。
何分数が不足していたが故の苦肉の策でござる。拙者も、以前にそれを装着して脱ぐことができなかったでござるなぁ(ボソッ)」
「苦肉の策って何だよ!?俺って、そんな策に嵌められたのかよ!?つーか、これって何時になったら脱げるんだよ!!?」
「正確な日数はわからぬが・・・」
「日数!?何で“日”単位なの!?」

次々に明らかになる“カワズ”の秘密。

「およそ、数日は脱ぐことが叶わぬ。だが、安心するでござる!!
そのスーツは、耐火・耐熱・耐水・防弾・絶縁性等が付いた特別製スーツでござる!!故に、先程の攻撃の嵐でも怪我は負わなかったでござろう?」
「何、その無駄に豪華な性能は!?というか、俺ってそれまでずっとカエル状態なの!?・・・ちなみにトイレとか風呂とかはどうすんの?」
「その点も心配ござらぬ!生理現象が発生した場合は、それを察知したスーツの該当する“部分”だけが開くようになってるでござる!!風呂は・・・諦めるでござるよ」
「それって、要するに立ちション・半ケツってことじゃねーかよおおおおぉぉっっ!!!この暑っ苦しい中、何日も風呂に入れないってふざけんじゃ無ぇよおおおぉぉっ!!!」
「後は、水分補給に気を付けるでござる。この暑さでござる。熱が内部に篭りやすいでござるから」
「お前等・・・最初からわかってたんだろう?俺がスタコラサッサしねぇように、わざと黙ってこれを俺に貸し出したんだろう!?」
「拙者等に他意はござらん!!本当でござるぞ!!」
「嘘付け!!ウソツキには罰が当たるぜ!!おらっ、本当のことを話せ!!」
「や、やめるでござる!!」
「“カワズ”さん!?さっきも何言ってるか全然聞こえなかったし、一体なんで怒ってるのー!?」

怒りを露にする(気ぐるみなのに)“カワズ”が、“ゲコ太マスク”の頬を抓り上げる。近くに居る抵部も、何が何だかサッパリ状態でオロオロしている。

「全然人のこと言えないよね?」
「えぇ。あの身勝手さ・・・やっぱりあの人は独り善がりっぽいですよね」

加賀美と焔火は、見事なまでの開き直りを見せる“カワズ”に呆れてしまう。全くもって読めない人間であることを、再認識する2人。その直後・・・






ブン!!






「・・・『拙者』?」

『閃光真剣』が“カワズ”と“ゲコ太マスク”の間に突き出される。『拙者』という言葉に心当たりがある176支部のエース、神谷稜が取った行動で物語は少しずつ動き始める。

continue!!

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最終更新:2012年09月01日 00:10