場に剣呑とした空気が漂う。漂わせるのは、『閃光真剣』を手に不機嫌そうな表情を浮かべている神谷その人。

「テメェ・・・あん時のゲコ太野郎か?」
「(し、しまったでござる!!まさか、この場に“剣神”が居ろうとは!!)」

ゲコ太は、着ぐるみの中で冷や汗をかく。実は、以前にゲコ太は救済委員活動の際に176支部の神谷に見付かり、『閃光真剣』片手に追い回された経験があった。
もちろん、救済委員であることはバレてはいないが、それ以降ゲコ太は一部の風紀委員から要注意人物としてマークされているのである。

「・・・どうした?何か言ってみろよ?」
「(こ、これ以上言葉を漏らせば、確実に拙者のことがバレてしまうでござる!!しかし、このままでは・・・)」

ゲコ太の言葉遣いは独特で、すぐに矯正できるような器用な真似はできない。何一つ言葉を発しない“ゲコ太マスク”に、神谷がいよいよ確信を深める・・・そんな時!!






「お~い!!“ピョン子”!!さっさと、このどチンピラを何とかしろよ!!ヒーローショーの邪魔になってんぜ!!」






すぐ傍に居た“カワズ”が、カエルの頭に赤色の髪留めがプリントされたような姿をしている“サークルヒーロー”である“ピョン子”を呼び付ける。
一方、呼ばれた張本人である“ピョン子”は、“ケロヨン2号”の背に隠れるようにこちらを覗っていた。すぐ横には“ケロヨン1号”も居る。

「(な、何で私に振ってんの!?こんな状況で神谷先輩の前に行けるわけ・・・)」
「葉原先輩・・・どうしたんですか?」
「葉原先輩~、呼んでますよ~」
「葉原・・・先輩?」

今の葉原は、事情があって“ピョン子”となっていた。しかも、風紀委員会を欠席してまで。故に、今ここで自らの正体を明かすことはできなかった。
だが、葉原の事情なんかサッパリ知らない免力と盛富士の口から、彼女の名前が零れてしまう。
ちなみに、免力が盛富士の背に隠れているのは、彼が映倫生にあるコンプレックスを抱いているために、その姿を見た途端に隠れてしまうという妙な癖があるからである。

「まさか・・・葉原か?」
「えっ・・・?ゆ、ゆかりっち!?」
「ど、どうしてこんな所に!?風紀委員会を欠席してまで・・・!?」

神谷・焔火・加賀美に感付かれた。覗う顔を思わず引っ込めてしまったために、3人の見当が正しいことを証明してしまった。
足をこちらに向ける3人。心臓バックバクの葉原。その間に割り込んだのは・・・

「ハーハッハッハ!!!そんなもの、葉原嬢が俺達十二人委員会のメンバーであるからに決まっているだろうが!!!」

十二人委員会のリーダー啄鴉。今の名は、“ヒーロー戦隊”『ゲコ太マンと愉快なカエル達』のリーダー“ゲコ太マン”。

「・・・ゆかりっち」
「あなたまで・・・」

その意味をすぐに悟った焔火と加賀美は、葉原に怒りどころか同情の念を抱く。あの“変人”でさえ逃れられないのが啄鴉なのだ。
そんな存在に、普通の人間である葉原がどうやって対抗せよと言うのか。きっと、自分達でも無理くさい。

「あぁ?十二人委員会?何だ、そりゃ?」
「元は俺が作った組織だ。組織の概要や成り立ちを話せば長くなるが・・・そうだな、まず」
「いや、いい。興味無ぇ。つーか、俺等の仲間を妙な集団に加入させてんじゃ無ぇよ」

対して、啄とは今日が初対面の神谷はどんどん突っ込んで行く。

「妙とは失礼な!!俺にとってはかけがえの無い物だぞ!?」
「んなモン知るか。そうか・・・こんなおふざけに巻き込まれてたのか。テメェ、葉原が風紀委員ってことは知ってんのか?」
「もちろん!!」
「そうかそうか・・・。テメェ、風紀委員(おれたち)をナメてんのか・・・!!?こんなお遊びに時間を取られていい程、こちとら暇じゃ無ぇんだよ・・・!!」

神谷の眼光が鋭さを増す。葉原は、176支部における優秀なオペレーターである。
後方支援もこなす優秀な支部員を、こんなおふざけに巻き込ませた啄に対して神谷は怒っているのだ。

「ハーハッハッハ!!!おふざけ!?おふざけか!!?・・・ナメているのはお前の方だ、風紀委員!!」
「・・・どういう意味だ?」

だが、啄は全く動じない。それは、彼の信念である『弱い人間を救う』という根幹が揺ぎ無いからこそできる芸当だ。

「俺達は、何もふざけて等いない!!こうして“ヒーロー戦隊”を組んでいるのにも、ちゃんとした理由がある!!」
「・・・言ってみろ」
「俺達は、これから数日間ボランティアに赴く予定だ!!そして、この“ヒーロー戦隊”は赴く施設に居る子供達のために用意した物なのだ!!」
「ボランティア・・・?施設・・・?」
「そうだ!!これは、“ゲコ太マスク”や“1号”・“2号”達たっての頼みなのだ!!そこに居る子供達も、俺達の来訪を心待ちにしている!!
風紀委員!!俺達は、幼い子供達を笑顔にしてやりたくてこの行動を起こした!!その行動を、決意を、お前達はおふざけと断じるのか!!?」
「グッ・・・!!」

啄の熱き信念が篭った言葉に、神谷はたじろぐ。施設へのボランティアということは、何かしら不幸な境遇に居る子供達のために起こした行動だ。
『弱い』とは一口に言っても色々あるが、今回の場合は一般人に比べて『弱い』環境・・・つまり不幸な環境に身を置く子供達のことを指す。
だから、神谷は上手い反論ができない。ぶっきらぼうな彼は、この手の勝負は余り得意では無かった。

「“ゲコ太マン”の言う通りだ!!!」
「風紀委員って“ゲコ太マン”や“ゲコ太マスク”を苛めるのかー!!?」
「風紀委員ってこわーい!!!」
「うおっ!!?」

そこに、純真無垢な幼子達の容赦無い糾弾が加わる。先程の“カワズ”の件でもわかる通り、こういう時の幼子達はとても厄介である。

「神谷先輩!!こんな将来有望な少女達の言葉を、俺達が無視していい道理は無いですよ!!?」
「神谷!!こんな前途有望な少年達の思いを、アンタは踏み躙るって言うの!!?」
「何でお前等も!!?」

更に、同じ176支部の一色と鏡星がダメ押し的な抗議を行う。

「・・・・・・空気の読めない男」
「グアッ!!」

そして、最後のトドメは最年少の後輩である姫空が刺す。

「ふ~、よかった、よかった。皆、“ゲコ太マン”や“ゲコ太マスク”を助けてくれてありが・・・ブヘッ!!?」
「お前のためにやったんじゃねぇよ!!!」
「まだいたのか!!?」
「早く、私達の前から消えて!!!」
「「「「「かーえーれ!!かーえーれ!!かーえーれ!!!」」」」」

何とか神谷の魔の手からゲコ太を守れた“カワズ”が子供達にお礼を言おうとするが、逆に子供達からは「かーえーれ」コールを浴びせ掛けられる。

「・・・・・・(トボトボトボ)」
「「“カワズ”様!?(スタスタ)」」

さすがに居た堪れなくなった“カワズ”は、ションボリとして(着ぐるみなのに)どっかに去って行く。その後姿を“ゲコっち”と“ゲコゲコ”が追い掛けて行く。

「よし!!これで、“カワズ”退治完了だ!!」
「そうだ!ゲコラーの皆にもこの情報を知らせておいた方がいいよね?」
「うん!!え~と・・・『“カワズ”っていう偽者の“ヒーロー”がウロ付いているから気を付けて。見付けたら、すぐに風紀委員か警備員の人達へ通報!!』・・・と」
「・・・最近のちっさい子供って、ホントに恐ーな」
「・・・しかも、これから数日間はあのカエル姿なんだろう?災難と言うべきか、自業自得と言うべきか・・・」
「なぁ、真面?もし子供達から『街中を“カワズ”という偽者の“ヒーロー”がウロ付いてます』なんてことを通報されたら、俺達はどうしたらいいんだろうな?」
「・・・・・・不審者として職務質問するしかないんじゃないですか?したくないですけど」

幼子達は、手加減というものを知らない。徹底的に“カワズ”を叩き潰すつもりなのだ。
その姿に閨秀は少し恐怖し、冠は冷静に分析し、浮草は疑問を抱き、真面は呆れ顔で返答する。皆が思うのは、『子供って恐いね』ということである。






「・・・わ、わかったよ。だが、葉原をこのまま連れて行かれるってのはこっちも困る」
「ふむ・・・。ならば、尋常に雌雄を決しようではないか」

しばらく経ってようやく立ち直った神谷の言葉に、啄がある勝負を提案する。

「これは・・・?」
「安心しろ。唯の模造剣だ。これによる一騎打ちで、葉原嬢の占有権を争うのだ!!」
「せ、占有権って何ですか!?何で、私があなたのモノになってるんですかー!!?」
「・・・面白ぇ。いいぜ?その勝負、乗った」
「神谷先輩!?む、無視しないで下さい!!」

葉原のツッコミを無視し、2人の男は1人の少女を巡って勝負することを決めた。緊張した空気が流れ始め、周囲に居る子供達や風紀委員達も沈黙する。

「幼子達よ!!この“ゲコ太マン”の勇姿を、その瞳に焼き付けるがいい!!ハーハッハッハ!!!」
「・・・・・・」

“ゲコ太マン”の大声と神谷の無言が交錯する。そして、勝負の火蓋は切って落とされた。



ブン!!!



「なっ!?」
「へぇ・・・。結構いい反応してんじゃねぇか?」

神速。居合いの構えから抜き放たれた剣を、反射神経だけでかわした“ゲコ太マン”。神谷稜が“剣神”と謳われるのは、偏にその戦闘技術の高さにある。

「クッ!?」
「どうした!?デカい口を叩いた割には、そんな程度かよ!?」

ある人間のおかげ(せい)で、神谷は図抜けた戦闘技術を手に入れた。それに比する身体能力も同様に。
“ゲコ太マン”もそれなりに鍛えられているようだが、神谷が相手では分が悪過ぎる。それだけ、神谷の実力が高いことを示しているのだが。

「ハァ!!」
「ぐうぅ!!」

“ゲコ太マン”も何とか神谷の剣を防いでいるが、それも一時的なもの。防戦一方では、掴める勝機は存在しない。そして、吹き飛ばされる剣。

「フン!!」
「グハッ!!」

神谷が放った蹴りが“ゲコ太マン”の腹部に突き刺さる。その威力によって、地面に蹲る“ゲコ太マン”。

「もう、いいだろ?今の戦闘でわかったよな?俺とお前とじゃあ、実力差ははっきりしているってことが。これでも、大分手加減してるんだぜ?」
「ぐうぅ・・・!!」
「やっぱ、神谷先輩ってすごく強い・・・!!」

176支部最強のエース、“剣神”神谷稜。単純な戦闘能力では“ゲコ太マン”を大きく上回る彼の降伏勧告が、周囲に響き渡る。
久方振りに見る先輩の戦闘に焔火が瞠目している中、勧告を受けた“ゲコ太マン”は・・・

「誰が諦めるものか・・・!!」

立ち上がる。唯それだけのことに、何故か心に響くモノが存在した。

「俺は負けるわけにはいかない・・・!!この子供達の笑顔を守るためにも!!俺は・・・絶対に倒れるわけにはいかないんだあああああぁぁぁっっ!!!!!」
「師匠!!!頑張って下され!!!」
「“ゲコ太マン”!!!負けるなああああぁぁぁっっ!!!」

“ゲコ太マン”の不屈の姿に、“ゲコ太マスク”と“ゲコ太”から熱い声援が送られる。

「が、頑張れえええええぇぇぇっっ!!!!!」
「風紀委員なんかに負けるなああああぁぁぁっっ!!!!!」
「私達の“ヒーロー”を!!!“ゲコ太マン”を皆で応援しましょう!!!」
「「「「「いっけええええええぇぇぇっっ!!!!!」」」」」
「(えっ?何で俺が悪者みたいになってんだ?)」

そこに、純真無垢な幼子達の熱い応援が加わる。さっきは『風紀委員のような“ヒーロー”になりたい』みたいなことを言っていた癖に、この変わり様である。

「いっけぇー、“ゲコ太マン”!!あんな恐い風紀委員なんかに負けるなあああぁぁっっ!!ちなみに俺は恐くないから安心してね、麗しき少女達!!」
「残念なイケメンにも天罰を!!!前途有望な君達には天の祝福を!!!」
「(またお前等かい!?)」

更に、同じ176支部の一色と鏡星が“ゲコ太マン”側に付く。

「お前達の熱き思い、確かに受け取った。行くぞ、風紀委員!!暗黒闘気の全てをこの一撃に込める!!」
「(マ、マズイ!!もし、俺があいつに勝ったら風紀委員に対するイメージが・・・!!)」

“ゲコ太マン”が、右拳を強く握り込む。その間に、思考をフル回転させる神谷。現状では、“ゲコ太マン”=“ヒーロー”、風紀委員(神谷)=悪者の図式である。
もしかしたら、この中に将来風紀委員になる子供達が居るかもしれない。“ヒーロー”に憧れる子供達が、その正義感をもって風紀委員として現場に立つ。
だが、もしここで風紀委員に対するイメージを悪化させてしまえばどうなるか?
なる筈だった風紀委員は存在せず、風紀委員に幻滅した子供達がこれを切欠に未来では不良とかになる可能性だって否定できない。

「(それはマズイ!!幾ら俺が周囲を気にしないって言っても、さすがにそれくらいは気にする!!『神谷のせいで~』なんて、この先ずっと言われてたまるか!!)」

神谷は、基本的にぶっきらぼう・興味の無いことはスルーする人間である。そのせいか、周囲の評価等も然程気にしない性格なのだが、それにも限度はある。
こんな純真無垢な子供達が、今後『神谷のせいで~』・『神谷さんのせいで~』・『神谷先輩のせいで~』なんてことになったら、それこそいい笑い者である。
斑や鏡星辺りには、生涯に渡る汚点扱いにされかねない。そんな事態は、真っ平御免被る。そう、神谷は決意する。

「貫け!!『暗黒時空』」
「!!!」

決意した瞬間、“ゲコ太マン”が突進して来た。『暗黒時空』なるものが、唯の右ストレートなのはすぐに見破った。
見破った上で・・・神谷はその一撃を頬に掠らせる程度にかわした後に、大声で宣言した。






「や~ら~れ~た~!!!」






神谷が取った行動・・・すなわち『わざと負ける』。こんな男に負けるというのは神谷のプライド的には絶対に許し難かったが、幼子達の心を踏み躙るわけにもいかない。
風紀委員に対するイメージを保つためにも、自分のプライドへの影響も最小限に留めるためにも、この辺りが落とし所であった。

「「「「「・・・・・・」」」」」

周囲に居る風紀委員達は、神谷の取った行動に目を丸くさせていた。多くは神谷の真意を悟ったが、それにしたってもう少しマシなやり方がなかったのかと考えざるを得ない。
それ程までに、神谷の取った行動はみっともなかった。あんだけカッコイイ台詞を並べて置きながら、最後の台詞で全部台無しである。
慣れないことをしたが故に大根役者っぷりに拍車が掛かっているのが、尚タチが悪い。

「“ゲコ太マン”が勝ったあああああぁぁぁっっ!!!!!」
「やっぱり、“ゲコ太マン”は僕達の“ヒーロー”だああああぁぁぁっっ!!!!!」
「“ヒーロー”が負けるわけ無いもんね!!!!!」
「(ふぅ・・・。何とか風紀委員(おれたち)のイメージは保たれた)」

一方、神谷の真意に気付いていない幼子達は、“ゲコ太マン”の勝利に色めき立つ。神谷も子供達のはしゃぎ様に胸を撫で下ろす。だが!!

「お前・・・わざと負けたな!?」
「!!?」

1人だけ、この結果に納得していない者が居た。それは、神谷と雌雄を争った“ゲコ太マン”。

「えええええぇぇぇっっ!!?ど、どういうこと!?」
「“ゲコ太マン”!!何で、この風紀委員はわざと負けたの!!?」
「(ば、馬鹿!!折角切り抜けられたと思ったのに、何で蒸し返すようなことを言ってんだ!!?)」

子供達は、“ゲコ太マン”に神谷がわざと負けた理由を問う。その神谷は、“ゲコ太マン”の言葉に激しく動揺する。

「そうか・・・わかったぞ!!この男が何故自分から負けたのか、その理由がな!!」
「お、教えてええええぇぇっっ!!!」
「(まさか・・・!!俺が風紀委員の体裁を保つためにわざと負けたってことをバラすつもりなんじゃあ・・・!?)」

神谷は、いよいよ血の気が引く。ここで、もしそれを暴露されたら自分の努力が全て水の泡である。風紀委員に対するイメージも悪化するだろう。
だが、“ゲコ太マン”の口は止まらない。子供達の懇願を受け、“ゲコ太マン”は己が導き出した解答を言い放つ。






「この男は・・・俺に敵わないことを勝負の中で自覚したのだ!!だから、自分から勝負を放棄した!!!これ以上恥をかきたく無いがために!!!
まさか、お前がそんな男だとは思わなかった!!この軟弱者め!!さっさと俺の前から失せるがいい!!!」
「ちょっと待てえええええぇぇぇっっ!!!!!」

己のプライドを傷付けてまで頑張った神谷にとって、それは余りに酷い解答であった。一体どう考えればその結論に辿り着くのか、神谷には理解できなかった。

「どう考えたら、そんな結論になるんだよ!!?テメェ、頭のどっかがイカれてんじゃねぇのか!!?」
「イカれているのはお前の方だ。もう、お前の姿など見るに耐えん。さっさと失せろ」
「テ、テメェ・・・!!」
「そうだそうだ!!早く消えろ!!!」
「うおっ!?」

一触即発状態の神谷及び“ゲコ太マン”。だが、そこに介入するのはまたしても“ヒーロー”に夢を見る子供達。
彼等彼女等は、神谷に対して侮蔑の視線を向けていた。

「“ゲコ太マン”に敵わないからって、わざと負けて同情を誘おうとするなんて卑怯だ!!!」
「やっぱり、風紀委員なんかより“ゲコ太マン”だね!!!」
「うん!!!さぁ、早く消えて!!!“ゲコ太マン”も言ったでしょ!!?」
「「「「「かーえーれ!!かーえーれ!!かーえーれ!!!」」」」」
「(な、何で俺がこんな目に合わなきゃなんないんだ!!?俺って、何か間違ったことでもしたか!!?)」

“カワズ”に浴びせ掛けられた「かーえーれ」コールが、神谷にも降り注ぐ。屈辱にも程があるコールの雨を浴び、茫然自失状態の神谷に・・・

「・・・・・・ピエロ」
「ゴフッ!!」

最後のトドメを姫空が刺し、神谷はバタリと倒れる。後に神谷はこう零した。『子供って恐ぇよ』・・・と。






「恐ぇ・・・。子供って恐ぇよ・・・ブツブツ」
「ホラ!!しっかりしなさいよ、神谷!!」
「だらしないぞ、神谷?エリートである私なら、もう少しマシな対応をしているぞ?」

ブツブツ独り言を言っている神谷の肩を、鏡星と斑が担ぐ。

「何か、最近はスッキリすることが多いなぁ。固地先輩といい神谷先輩といい・・・」
「・・・気持ちはわかるが、余り口に出さない方がいいぞ?」
「・・・浮草先輩だって、少しは清々してるんじゃないんですか?」
「・・・・・・まぁな」

神谷の醜態に邪な感情を抱く真面と、そんな部下を注意する浮草。しかし、ツッコミ返しを喰らいつい本音を漏らしてしまう。

「あのぅ、啄さん?ゆかりっちの件なんですけど・・・」
「さて、どうしたものか。あのような軟弱者との勝負では、俺としてもスッキリせんし・・・」
「(神谷先輩・・・相手が悪かったですね)」

葉原の件で啄と交渉しようとする焔火。自身の先輩に対しては、どうしても同情心が湧いてしまう。

「葉原先輩・・・もう行っちゃうんですか?」
「免力君が寂しがるね~」
「わ、わかんない・・・。(で、でも・・・今帰ったら“あの人”と・・・)」

免力と盛富士の問いに、上手く返答できない葉原。着ぐるみで隠されたその表情には、緊張と戸惑いの色が浮き彫りになっていた。

「う~ん。正直あの“変人集団”のトップと関わりたく無いんだけどなぁ。
でも、ゆかりだって何時までもあの“変人集団”と一緒に居たくは無いだろうし。仕方無い。ここは私が・・・」

焔火や葉原の様子を観察していた加賀美が、意を決して啄と交渉することを決断する
全くもって気が進まないが、このまま葉原を連れて行かれるのはリーダーとして見過ごすわけにはいかないのである。
そう考え、焔火達に声を掛けるために加賀美が歩を進めようとした・・・その瞬間、すぐ近くに居た“ゲロゲロ”から加賀美に向けて言葉が放たれる。
言葉に含まれるのは・・・失望と憎悪の意。かつての妹の上司に向けた、それは辛辣極まる糾弾。


「加賀美(アンタ)はリーダー失格だ。部下の気持ちを量れず、部下の身も案じず、部下の悪行にも気付かない、最低最悪な人間だ」

continue!!

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最終更新:2012年09月01日 21:20