ピピピピピ!!



「う、うわっ!?」
「んっ!?おい、抵部!携帯か!?」
「ち、違います!!わたしのケータイの着信音じゃありません!これは・・・」

ここは第7学区の上空。花盛支部の閨秀と抵部は、爆発事件に巻き込まれた人達が居ないか上空から観察していた。
また、リーダーである冠は地上で警備員と協力しながら事の収拾に当たっていた。

「・・・かいじさんがくれたお守りからです」
「何!?」

そんな最中に鳴った着信音。その発信源は、以前『マルンウォール』で抵部が碧髪の男から貰ったお守りであった。
そこから流れる着信音に不審がる閨秀を余所に、不思議がる抵部がお守りのあちこちを触っていたある瞬間、内蔵されていたあるボタンを押す。

「抵部準エース殿!!」
「かいじさん!!?ど、どど、どうしたんで・・・」
「すぐ近くに美魁は居るか!?居たら代わってくれ!!」

聞こえて来たのは“変人”の声。声色からして、彼が真剣であることが容易に察することができる。

「あたしはここに居るぜ、界刺!!やっぱり、そのお守りは発信機のようなヤツか!!」
「美魁か!!言っとくけど、これは発信機や盗聴器とかの種類じゃ無いから。赤外線を用いた通信機だからな。つまりは、携帯電話みてーなモンだ」
「赤外線・・・?そういや、赤外線はそういう風にも使えるんだっけか」

閨秀は、聞こえて来た“変人”の説明に合点が行った。やはり、これは六花の言う通り花盛支部とのパイプの役割を持っていたのだろう。

「んなことはどうでもいい!!簡潔に言うぜ!!すぐに成瀬台に戻れ!!今、『ブラックウィザード』の襲撃にあってる!!」
「何!!?」

しかし、そんな推測が吹き飛ぶくらいの衝撃的事実を閨秀は知らされる。

「真刺が言う分には、成瀬台を『六枚羽』と旧型の駆動鎧が襲ってるって話だ!!“手駒達”も近くに居る!!」
「『六枚羽』!!?何でそんなバカ高い兵器を『ブラックウィザード』が・・・!!?」
「それも後回し!!どうやら、成瀬台を中心にジャミング網が敷かれているみたいだ!!だから、携帯電話とかの電波形式の連絡網が無効化されている!!
真刺が俺に連絡して来れたのは、赤外線を用いた通信方法だったからだ!!」
「ッッ!!!」
「そんな状況下で“手駒達”が動けるとしたら、それは“手駒達”の中に電波を操作できる電気系能力者が居ると見て間違い無い!!
それと、何処かに“手駒達”を操ってる機材を積んだ車両の類もある筈だ!!もしかしたら、そこにさっき言った電気系能力者が居る可能性もある!!」
「そらひめ先輩!!成瀬台に電話が通じません!!月理ちゃんやかおりんのケータイにも・・・!!」
「ヤベェ・・・そいつはヤベェ!!!」

通信機から発せられる説明と抵部の切羽詰った声に、閨秀は大きな危機感を抱く。

「美魁!!とりあえず、真刺達が現場に向かってる!!あいつ等なら駆動鎧や“手駒達”に十分対抗できる力を持ってるけど、『六枚羽』だけはこっちに不利だ!!
あれの機動性に対抗するなら、こっちも飛行可能な能力者じゃ無いと!!例えば・・・『皆無重量』みたいな念動力系能力者とかな!!」
「あぁ!!わかってる!!」
「椎倉先輩達がどうなったのかはわからねぇ!!こればかりは生きてることを祈るしか無ぇ!!」
「わかってる!!!」
「そらひめ先輩・・・」
「・・・わかってるって。あたしが何とかするよ。絶対に!!」

激昂しながらも心の何処かで冷静な思考を保てるのが閨秀の優秀な所であった。彼女は、今にも泣き出しそうな後輩を元気付けるかのように大きな声を発する。

「とりあえず、すぐに冠先輩のトコに行く!!そして、最大スピードで成瀬台へ向かう!!いいな、抵部!!?」
「もちろんです!!!」
「よし。・・・そういうことだからそっちもすぐに戻れよ、破輩!?」
「あぁ!!!」
「破輩先輩・・・?」
「閨秀!!私は、界刺から掛かって来た一厘の携帯電話で今までの話を聞いている!!距離的には第7学区に居るお前達より私達の方が近いが、何分車両だ!!
警備員の車を使ってはいるが、道路を無視することはできない!!障害物を無視できるお前の『皆無重量』の方が早く着くだろう!!」

それは、“詐欺師”の携帯電話―スピーカーフォン設定にしている―から聞こえて来た159支部リーダー破輩の声。
彼女は、現場の外で警備員の手伝いをしていた最中に部下の一厘の携帯電話を鳴らした壁髪の男から成瀬台襲撃の話を聞いた。
聞いた直後、破輩は一厘・鉄枷・湖后腹を集め、対処に当たっていた警備員に事情を説明し超特急で成瀬台へ向かっていた。

「一厘達には他の支部に連絡を取らせているが、すぐには戻れないだろう!!
それと、警備員から聞いた話だと成瀬台から多少離れた複数の場所でも爆発事件が発生している。そして、それ等の応援に成瀬台に駐在していた警備員の主力部隊が向かった」
「てことは・・・まさか!!!」
「あぁ。それが陽動だったんだ!!成瀬台の警備網を手薄にさせ、私達が現場に釘付けになることを狙っての計画的犯行だ!!
橙山先生達は現場に突入しているせいで、直ちに戻れないと部下の警備員から連絡があった!!」
「くそっ・・・!!」
「破輩!!美魁!!口は動かしてもいいけど、手も動かせ!!特に美魁!!さっさと動け!!」
「わ、わかった!!」

“詐欺師”の叱りを受け、閨秀は急いでリーダーである冠に接触。事情説明も程々に、『皆無重量』にてフルスロットルで成瀬台へ向かう。

「界刺!!」
「何?」
「何故、お前が私達風紀委員にここまで助力するんだ!!?お前は・・・私達に助力するつもりは無いと言ってたじゃないか!?」
「何だよ。知らせない方がよかったか?真刺達を止めた方がよかったか?あぁん!?」
「そ、それは・・・」

発信機から聞こえて来るやり取りに、閨秀は耳を傾ける。確かに、碧髪の男は風紀委員に協力するつもりは無いと言った。
だが、現にこの男は自分達に利があることを行っている。その逆もしてはいるが。今回の件も、『シンボル』の助力が無ければ・・・・・・そこから先は考えたくも無かった。

「・・・んふっ。俺は真刺の指示に従っただけだし。つーか、俺的には助力じゃ無くて協力だし。これは・・・“3条件”の2番目さ」

“3条件”の2番目・・・『時には「シンボル」の要請に協力する』。

「今回の助力が・・・“3条件”に?」
「そうさ。何たって、『シンボル』のリーダーである俺が通っている学び舎が破壊されてるって話じゃないか。お前等、俺に2学期から青空教室で勉強をしろとでも言うつもりかい?
いい加減、“カワズ”のせいで汗だくだく状態なのによぉ。勘弁してくれ。これ以上汗まみれになる機会を増やさないように、利用できるモノは何でも利用しないとな」
「ッッ!!!・・・お前という奴は・・・本当に・・・本当に・・・!!!」

あっけらかんと屁理屈を付ける“カワズ”に、破輩は呆れているのか、笑っているのか、それとも泣いているのかすらわからない、非常に曖昧な声色で言葉を発した。

「界刺!!!」
「うおっ!?何さ、美魁?」
「ありがとよ!!!」
「・・・それは仲間を救ってからにしたら?」
「あぁ!!言われなくてもそうするさ!!!」
「かいじさん!!わたしからもお礼を言わせてください!!本当に、ありがとうございました!!!」
「界刺・・・ありがとう!!!」
「破輩まで・・・・・・やれやれ。まっ、健闘は祈っといてやるよ。それと、これだけは覚えとけ。俺からの最後通牒みてぇなモンだ」
「・・・何だ?」
「俺はお前等の完全な味方じゃ無い。仲間でも無い。俺が『本気』で“判断”した時は、お前等でも容赦しねぇ。下手したら・・・殺すぜ?
“3条件”もあるしな。テメェ等・・・“判断”を見誤るな。『本気』の界刺得世の邪魔だけはするな。・・・いいな?絶対に忘れるなよ!?俺の手で死にたく無かったらな・・・!!!」
「・・・!!!わ、わかった。肝に銘じておこう」
「かいじさん・・・恐いです・・・!!」
「抵部・・・。わかったぜ、界刺。あたしも気を付けるよ。お前を敵に回す余裕は、今のあたし達には無さそうだしな」

閨秀と抵部、そして破輩から礼を言われた“詐欺師ヒーロー”は冷酷極まりない声を表に出しながら『本気』の忠告をした―内心では『怒り狂っていた』―後に通話を切った。
これ以降は本当に当事者次第。今回の件で風紀委員がどうなろうとも究極的には知ったことでは無い。非情と断じられても、それがこの男の本音の1つである。






それは、不動が界刺宅で改装をしていた女性陣の様子を覗きに行った時だった。リフォーム作戦もあらかた完了しており、後は細部の調整という段階だった。
聞けば、女性陣はまだ晩御飯を食べていないということだったので、不動がピザの注文をしようと携帯電話を取り出したのだ。しかし・・・

「むっ?通じない?」

電波状況が悪いのか、はたまた自身が持ってる携帯電話の調子が悪いのか、何度掛けても繋がらないのだ。
その状況を見た女性陣も各々の携帯電話を取り出しコールしてみるが、彼女達の携帯電話も繋がらない。窓から乗り出して掛けてみても同様の結果になる。

「皆の携帯電話で同じ症状が出ているということは、電波の方に問題があると見ていいね」
「でも、どうしてこんな状態に?30分前には問題無く使えたのに。メーカーの方で何か問題があったのか・・・でも、皆の携帯電話って全部が同じメーカーじゃ無いし。
ということは、基地局の方で問題が発生したのか、それとも近くに電気系能力者が居るのかな?」
「携帯が使えない・・・電波・・・無線・・・妨害・・・・・・不動先輩。これって・・・」
「・・・・・・成瀬台には、現在風紀委員会が設置されている。・・・まさか!!」



ボコーン!!!ドガーン!!!バァーン!!!



「「「「!!!??」」」」

水楯の言葉から、ある可能性を思い浮かべた不動。そんな彼等の耳に強烈な爆発音が複数突き刺さった。
それは、成瀬台高校がある方角から聞こえて来た。その瞬間、不動は己が抱いた可能性に確信を持つ。

「水楯!!戦闘に用いる水を用意しろ!!そうだな・・・水道の水を使え!!」
「わかりました」
「春咲!!風紀委員時代に使っていた対外傷キットは持ってるか!!?」
「は、はい!!改装中に誤って怪我をしたらいけないと思って、数人分なら!!」
「形製!!戦場では“参謀”として全体の把握・指揮に努めて貰う!!いいな!!?」
「了解!!」
「よし!!私は『赤外子機』を使って得世と連絡をして来る!!その間に、できる限りの準備をしておけ!!事は一刻を争うぞ!!」
「「「はい!!」」」

ここに居るメンバーは、今成瀬台で起こっている事態についてすぐに理解した。『ブラックウィザード』が、成瀬台に居る風紀委員会に強襲を仕掛けたのだと。

「では、行って来る!!」

『シンボル』のまとめ役である不動は窓から外に飛び出し、“宙を蹴り”、学生寮の屋上へと降り立った。
使うのは、『赤外子機』と呼ばれるマイクロフォン。これは、<ダークナイト>の機能の1つ『赤外機』に付属しているモノで、マイクロフォン同士での通信も可能であった。
もちろん、それは『赤外機』の機能を持つ<ダークナイト>にも通信を繋げることができる(戦闘との兼ね合いから、界刺自身も『赤外子機』を所持している)。

「電磁ノイズを受けない『赤外子機』ならば・・・!!」

確実な通信を行うために、不動はマイクロフォンから出ている赤外線を最大出力まで引き上げる。内蔵バッテリーとして使用しているのは銅ナノワイヤ技術によって高伝導効率を実現した次世代型である。
従来のバッテリーよりも遥かに効率の良いモノや他の最新技術を用いることで、『赤外子機』の長時間使用や蓄電時間の大幅短縮に繋げているのだ。

「あれは・・・『六枚羽』!!?あんなモノまで・・・!!」

同時に、だて眼鏡を“暗視&遠視モード”に切り替え成瀬台の現状を覗う。そこには、学園都市が誇る最新鋭兵器の1つである『六枚羽』の姿があった。

「どうした、真刺?携帯電話じゃ無くて『赤外子機』を使ってるってことは・・・何かあったのか?」
「得世か!!」

不動は、ようやく連絡が取れたリーダーに事の詳細を説明する。一刻を争う非常事態の発生を。

「おそらくだが、『ブラックウィザード』が成瀬台に強襲を仕掛けた。周囲一帯に強力な電波妨害網も敷かれている!!しかも・・・連中はあの『六枚羽』まで持ち出してるぞ!!」
「『六枚羽』!!?・・・・・・現状は?」
「遠視で見ているから、風紀委員達がどうなったのかまではわからない!!だが、応戦している警備員が『六枚羽』に蹴散らされている!!
『六枚羽』の攻撃を受けたためか、校舎にも火の手が広がっている!!・・・・・・あれは・・・!!」
「どうした!?」
「成瀬台の校門前に着いた車両から、駆動鎧が20機以上出て来た!!型的には旧型だが、その後方に“手駒達”とおぼしき人間が数十人!!手に凶器の類を所持している!!」
「一気にカタを着けるつもりだな。・・・・・・チィッ。真刺!!『シンボル』としての行動を決める決定権、今回はお前に譲るよ」
「得世・・・」

それは、リーダーからメンバーに委譲された組織の決定権。『シンボル』は、必ずしもリーダーに組織運営に関わる決定権が固定されているグループでは無い。

「俺は現場には居ない・・・つまり当事者じゃ無い。なら、当事者に決定権を譲った方がいいだろ?俺はお前の決定に従うぜ?
リーダーつっても、俺だって『自発者<サポーター>』の1人であることには違い無ぇし。まぁ、理由次第じゃ反論するけど。さぁ、どうする!?」
「・・・・・・いいだろう。では、『シンボル』としての行動を決定する。私、水楯、形製、春咲の4名はこれより成瀬台を強襲した『ブラックウィザード』の鎮圧に赴く!!
得世。お前は一厘の携帯電話番号を知っているな?すぐに、彼女にこのことを知らせろ!!その後のことは、お前に一任する!!」
「『シンボル』が“わざわざ”前面に出て鎮圧に向かう理由は?」
「・・・私達が通う学び舎を破壊されることの意味を考えれば、自ずと理解できるだろう?」
「・・・成程。最後の質問。その助力は、今この時より前に破輩から請われていたりするのも要因の1つか?」
「ん?破輩から助けなどは請われていない。情報のやり取り自体はしたがな。例えば、お前が風路という男と共に居るとか・・・な」
「そうか・・・。わかった。了解した」
「うむ!!」

リーダーに指示を出した不動は、急いで界刺宅へと戻る。そこには、準備万端な『シンボル』のメンバーが居た。

「私は、“宙を跳んで”現地に先行している。お前達は、水楯が操る水にトランクでも何でも使って乗って来い!!ショートカットだ!!
『ブラックウィザード』が、成瀬台までの道を塞いでいる可能性があるからな。心して掛かれ!!」
「「「了解!!」」」

『シンボル』が明確に動き出す。理由は各々の胸にあるモノ。それを確と掴み、『自発者』達は行動を開始する。






その1番手は・・・・・・“猛獣”。






「ハアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!」

不動の『拳闘空力』が、近くに居た“手駒達”を吹っ飛ばす。その姿に敵意を剥き出しにする旧型の駆動鎧が、対隔壁用ショットガンを不動に向け・・・



ズサッ!!!ドカーン!!!



られなかった。何故なら、不動が放った手刀による衝撃波がショットガンを真っ二つに裂いたからだ。
込められていた弾が爆発し、駆動鎧の動きが大きく制限される。その隙に・・・



グン!!!



“猛獣”は、尋常では無い速度で駆動鎧の懐に飛び込んだ。これは、『拳闘空力』による歩法術。
地面を踏み込む角度・威力を調節した上で衝撃波を生み出し、それを移動速度の上昇に繋げる。



ダン!!!



不動の掌底が駆動鎧の腹にぶち込まれる。その刹那、発生した衝撃波によって駆動鎧は遠方に吹っ飛ばされる。
『拳闘空力』は、発生させた衝撃波を一直線にしか飛ばせないという欠点がある。だが、何も衝撃波の種類が1つとは決まっていない。
不動が放つ衝撃波には、大きく分けて2つの種類がある。1つは“破壊”。拳や手刀等で発生させた衝撃波は、対象物を貫通したり切断したりする。
もう1つは“噴射”。掌底や吹き矢使用時、歩法術等で発生させた衝撃波は“噴射”として対象物に強大な推進力を与える。



ダダダダダダン!!!



“猛獣”が地面を縦横無尽に闊歩する。地上での速度としては仮屋の『念動飛翔』に劣るものの、縦横無尽という意味では『拳闘空力』に分がある(『念動飛翔』は直線的)。
常人では有り得ない移動に、駆動鎧の演算機能が追い付かない。旧式という点(改造・補強は、あくまで対隔壁用ショットガンに耐えるためのモノ)、
そして操縦者は“手駒達”であるという点から自明であったこと。それでも、5機の駆動鎧が敵を潰すために空砲を一斉に撃ち放つ。対する“猛獣”は、横一線に放つ回し蹴りで応酬する。



ドドドドドーン!!!



駆動鎧が所持している対隔壁用ショットガンは、次世代の新型駆動鎧に装備予定の元型である。威力自体は正式採用のモノには多少劣るが。
そのショットガンから放たれた5つの衝撃弾が打ち負かされた・・・どころか“猛獣”が放った衝撃波の余波がショットガンを襲い爆発し、機体にも浅からぬ傷を付けた。
これも自明の道理。パンチとキック。どちらの方が威力は高いのか。技や身体能力によって威力が増減する『拳闘空力』なら尚更である。



ドッドッドッドッ!!!



余波を喰らってよろけた駆動鎧が目にするのは、“宙を駆ける”人間の姿。これは先程の歩法術の応用で、
空中で歩く動きをした時に脚の筋肉が伸び切る=蹴りを放つ状態と同じであることを利用して“噴射”を発生させているのだ。
地面とは違い不安定な空中で、そして身体への負担からそう長い時間は維持できないが短時間なら問題は無かった。



ドーン!!!!!



空中で回転しながら駆動鎧の頭部に踵落としを喰らわせる不動。その衝撃は、駆動鎧の頭部から下を地面に埋没させる程の威力だった。
3次元的闊歩により駆動鎧を翻弄する不動。では、近くに居た生身の“手駒達”はと言うと・・・






「ブクブク・・・」
「ガハッ、ボコッ・・・」
「・・・・・・」






『自発者』の2番手・・・“激涙の女王”に翻弄されていた。如何に“手駒達”が痛みを感じないと言っても、息ができなければ意識を保つことさえできない。
水楯は、問答無用・一気呵成にプールの水を上空から瀑布の如き勢いで“手駒達”へ叩き落とした。
“手駒達”も念動力を用いて食い止めようとしたが、水の操作という点において水楯を上回ることはできない。
水に飲み込まれた“手駒達”は、窒息寸前にまで追い込まれる。そして・・・



ザアアアアアァァァッッ!!!



命の危険一歩手前で、水楯は“手駒達”を解放する。ほぼ同時に、頭部に付いている小型アンテナ目掛けてウォーターカッターを噴出、本当の意味で“手駒達”を無力化する。
アンテナを破壊され気絶している“手駒達”に“激涙の女王”は目もくれない。この惨状を生み出した者達に対する怒りは、止まることを知らない。






「うっ・・・」
「佐野君!!気が付いた!!?」
「は・・・春咲先輩・・・?」

不動と水楯の活躍で何とか会議室から敵を遠ざけた中、『六枚羽』の攻撃で左腕を酷く裂傷した佐野が目を覚ました。

「とりあえず、一番酷い左腕に対外傷キットを使ったよ。数が足りないから、他の傷には回せないんだけど・・・」
「・・・い、いえ。それで十分ですよ。・・・それより、どうしてここに?」
「皆を助けに来たに決まってるよ!!仲間じゃない!!」
「・・・ハハッ。そう・・・でしたね。・・・グッ!!」
「佐野君!?む、無理しないで・・・」

春咲の制止を振り切って、佐野は身を起こす。何故自分が生きているのか?何故春咲が助けに来たのか?それ等を考えた場合、可能性は1つしか無かった。
それを確認するために、激痛に苛まれながらも体を起こした佐野の瞳に映ったのは・・・予想通りの光景だった。

「『シンボル』の方々に・・・また助けられましたね」

不動が『拳闘空力』で駆動鎧をぶっ潰し、水楯が『粘水操作』で“手駒達”の動きを封じている。
しかも、距離的に互いをカバーできる絶妙な間合いを保ちながら戦闘を行っていることに佐野はこんな時に感嘆すらしてしまう。

「うん・・・」
「・・・あぁ。今は春咲先輩も『シンボル』の一員でしたね。ありがとうございます」
「・・・それだけ言えるなら、佐野君は大丈夫そうだね」
「はい。・・・他の皆さんは?」

佐野は、ようやく自分以外の風紀委員の安否に気を配る。余裕そうな態度は形だけ、彼も内心では全く冷静では無かったのだ。

「詳しいことはお医者さん次第だけど、今の所風紀委員で死者は出ていないようね」
「厳原先輩!?」
「厳原さん!?動いちゃ駄目だって!!」

佐野の質問に答えたのは、2人の後方に居た厳原。彼女も、右腕と左脚に酷い火傷を負っていた。頭から血も流している少女が何時も掛けているメガネは、何処かへ吹っ飛んでいた。
そんな彼女が手に持っているのは・・・『ハックコード』と呼ばれるスマートフォン。

「傷的には、花盛支部の女の子達がかなり酷い。早く病院へ運ばないといけないレベル。
鳥羽君と葉原さんは、比較的軽症よ。
位置的に一番危なかった椎倉先輩は、初瀬君のおかげで軽症とまではいかないけど重傷は回避したわ。・・・そうなんでしょ、歌姫さん?」
「・・・そうだヨ」
「えっ!?な、何であの電脳歌姫がこんな所に!!?」
「春咲先輩・・・これには深い事情が・・・」
「・・・キョウジが自分トコのリーダーを守るために飛び込んで・・・そして・・・私を守るために・・・体を張っタ・・・!!」

あれは、『六枚羽』が会議室目掛けてミサイルを発射した時だった。佐野の『光学管制』でミサイルの軌道を会議室外へ逸らしたが、着弾ポイントに一番近い位置には椎倉が居た。
そのままでは爆風によって発生した壁だったモノの破片群をその身に受けていた椎倉を、初瀬が体ごと飛び込んで離脱させた。直後巻き起こった爆発と爆炎。
初瀬は、首からぶら下げていた『ハックコード』を守るように爆風と爆炎に対して背中を向けた。
その衝撃に体が吹っ飛んでも、服越しに『ハックコード』を掴み外部からの衝撃等から守り通した。意識を手放した時でさえ。
その一部始終を、『ハックコード』を通して電脳歌姫は見ていた。失いたくない。そう思った。
自分のために頑張ってくれる人間を、所詮人間に生み出されただけのプログラムを命を懸けて守ってくれた初瀬恭治を絶対に失いたくない。
どうやら、『シンボル』というグループのおかげで危機は脱しつつあるようだった。初瀬も、春咲という少女に手当てをして貰った。でも、まだ安全じゃ無い。
だから、彼女は遂に初瀬との約束を破って『ハックコード』から声を出した。不動・水楯と『ブラックウィザード』の戦闘音に掻き消されながらも出した声に、
同じく春咲の手当てを受けて近くで休んでいた159支部の厳原が気付いた。

「・・・私にできることがあれば何でもすル!!キョウジを安全な場所に連れて行くためなら、何だっテ!!」
「・・・でも、ジャミングによって電波通信を封じられているから連絡の取りようが・・・」
「・・・そうでも無いですよ」
「えっ?」

春咲の懸念に、佐野は力を取り戻しつつある表情でキッパリ応える。

「こういう時のために、『ハックコード』があるんです!!歌姫さん!!確か、あなたは『移動先のコンピュータの性能を使って従来の性能を発揮する』んですよね!?
ということは、『ハックコード』の機能も使用可能ではないのですか!?通話の類は無理にしても、傍受や逆探知なら!!」
「で、できるヨ!!」
「やはり!!では、歌姫さん!!今流れているジャミング電波を傍受、逆探知して発生源の位置を特定してみて下さい!!私も『光学管制』でフォローしますから!!」
「わかっタ!!!」

佐野の依頼を受け、電脳歌姫は『ハックコード』の機能を行使する。様々な電波が傍受可能な上に、高精度且つ長距離の逆探知を仕掛けられるように改造されたスマートフォン。
対『ブラックウィザード』の切り札。それを、風紀委員や警備員とは関係無い・・・もっと言えば人間では無い存在が使用する。

「・・・電波の数が多過ぎル!!通常の無線領域に、色んな種類の高出力ジャミング電波が右往左往していル!!
それに、電波自体が不可解な動きをしていて発生源が特定できなイ!!これハ・・・」
「きっと、それは電気系能力者の仕業だね!!」
「形製さん!!」
「形製?・・・あぁ、彼女が一厘さんが言っていた『シンボル』の・・・」

歌姫が逆探知に手こずっている折に姿を見せたのは、『シンボル』の“参謀”形製流麗。彼女は、『赤外子機』で不動・水楯のフォローをしながら春咲と共に手当てに勤しんでいた。
ちなみに、その際に手当てをした厳原と電脳歌姫の会話を耳にしている。

「おそらくだけど、電気系能力者がこの一帯に広がっている多種多様の電波をある空間内で反射・振幅させているんだ。だから、逆探知ができないんだよ」
「佐野君!!」
「・・・・・・確かにこの動きはおかしいです。でも、これ程の規模の電波を発生させて、しかも反射・振幅を行える電気系能力者はそうそう居るものではありませんよ?」
「そうだね。だから、これも推測だけどジャミング電波自体は機械で生み出して、その操作を能力者がしているんじゃないかと思うんだ」
「となると・・・電気系能力者やジャミング装置を積んだ車両関係は・・・」
「きっと、その空間外だよ。歌姫さん!!その不可解な動きをしている電波の範囲は調べられる!?」
「ま、待っテ!!すぐニ・・・」
「<形製!!春咲!!前を見ろ!!>」
「「!!?」」

ジャミング対策にのめり込んでいた一団に、1機の駆動鎧が近付いていた。不動と水楯のカバーは、他の駆動鎧や“手駒達”の命懸けの妨害で間に合わない。
走りながら駆動鎧が構えた対隔壁用ショットガンが形製達を捉えた・・・その瞬間。



ドカーン!!!



ショットガンが爆発した。予想外の出来事に一瞬動きが止まった駆動鎧に・・・



スガガガガガガッッッ!!!



不動の連打による衝撃群が叩き込まれ・・・



ドォーン!!!



水楯が操作する渦潮に囚われた後に、遠方に吹っ飛ばされる。

「今のは・・・!!?」
「私の『物体転移』で、あの銃に瓦礫を空間移動させたんだよ」
「『物体転移』!?でも、春咲さんの『物体転移』って対象物が静止していないと行使できなかったんじゃあ・・・」
「厳原さん・・・。確かに、“以前”の『物体転移』はそうだった。でも、“今”の『物体転移』は相手が静止していなくても行使できるんだよ」

厳原の疑問に、春咲は己が努力の結果を示す。風輪の大騒動が終結して以降、自身の力をずっと磨いて来た。自身の可能性を信じて、ひたすら努力を積み重ねて来た。
風紀活動に充てていた時間を、能力向上のために費やした。通信教材の助けも借りながら、少女はある弱点の解消に集中的に取り組んだ。
その弱点とは、“対象物(相手)の静止”。“以前”までの『物体転移』では、対象物が静止していなければ手元に引き寄せることも、また対象物に物体を空間移動させることもできなかった。
だが、“今”の『物体転移』は“対象物の静止”という縛りは解消された。空間移動を行う場合、自身は動けないという弱点はまだ解消されていないが。
これは、春咲桜の1つの成長。自身の可能性を信じて頑張った少女の輝かしき結果。

「・・・努力したのね」
「・・・うん」
「危ない危ない。ここは戦場。気を抜かないようにしないと。歌姫さん!!」
「・・・できタ!!この成瀬台を中心に半径280mに渡って不規則な反射が発生していル!!」
「成程。では、その半径280mの外に発生源は居ると見て間違いないですね」
「・・・それにしても、何故あの人達は成瀬台に入って来ないんでしょう・・・?」
「厳原先輩?『透視能力』で何か見付けたんですか?」

ジャミングの範囲が判明した最中、痛む頭を抱えている厳原が『透視能力』にて看破した不可解な事実を漏らす。
能力によるショートカットで成瀬台に向かった『シンボル』のメンバーには知り得ていなかったこと。

「え、えぇ。成瀬台の周囲に警備員の人達が待機しているの。テープを張って、近隣の住民が立ち入れないようにしてるんだけど・・・」
「警備員が?そ、そんなことをしている暇があるなら応援に・・・!!いや、確かに無関係な人達が入り込まないようにするのも大事なことですけど!!」
「・・・厳原さん。その警備員の“頭部”を透視できますか!?」
「ッッ!!!ちょ、ちょっと待って!!」

形製の依頼を受け、成瀬台の周囲の道路を塞ぐように数箇所で待機している警備員・・・の制服を着用し、いずれもがヘルメットを被っている人間の“頭部”を厳原は透視する。

「・・・アンテナ!!あ、あれは“手駒達”!!」
「やっぱり!!他の人間が立ち入れないようにしてるんだ!!」
「ッッ!!そ、それだけじゃ無い!!近くにある警備員の専用車に偽装した車両に、大量の爆弾が載せられている!!」
「・・・!!そうか!!戻って来た警備員なり風紀委員なりと接触した時に起爆させて、道連れにするつもりですね!!“手駒達”なら、それすらも容易に行えます!!」

幾重にも張り巡らされた策の数々に、『シンボル』及び風紀委員は戦慄する。こうなれば、手段を選んではいられない。

「ジャミング電波の発信源叩きは後回し!!あたしは、今からすぐにバカ界刺と連絡を取ってこのことを伝える。
あいつなら外回りしている支部とも連絡を取ってる筈だから、不動さん達と連携して成瀬台の周囲にある“手駒達”と爆弾を積んである車両を同時に無力化させる!!」
「爆弾は、電波による遠隔操作が可能と見ていいでしょう!!万が一の時は、私の『光学管制』の範囲内である半径25m内に車両を集めて下さい!!厳原先輩!!車両の数は!!?」
「全部で3台よ!!もしかしたら、劣勢をひっくり返すためにあの車両が中に突っ込んで来るかもしれないわ!!何か妙な動きがあったらすぐに知らせるわね!!春咲さん!!」
「わかってる!!気絶している椎倉先輩達を移動させないと!!警備員の方々の手当ても急がないと!!歌姫さんは厳原さんと一緒に!!」
「うン!!わかっタ!!」

1分1秒を争う切羽詰った世界に身を投じる少年少女達。彼等彼女等は、自分にできる最大限のことをこなしていく。不条理を押し付けるこの世界に自身の信念を示すかのうように。
そして・・・






「3・・・2・・・1・・・GO!!!」

形製の号令の下、成瀬台にて最後の戦いが始まる。



「ハアアアアアァァァッッ!!!!!」



遥か上空に待機していた閨秀・抵部・冠が急降下、“手駒達”に気取られた瞬間に車両ごと無重量空間に収める。
直後無重量空間を分離、車両をすぐさま成瀬台のグラウンド上空へ運んで行く。また、『皆無重量』でヘルメットが外された“手駒達”のアンテナを冠が排除して行く。



「ダアアアアアァァァッッ!!!!!」



一方、ジャミング範囲内に突入する直前に“詐欺師”から事の詳細を知らされた159支部の面々が取った行動はシンプルであった。突入のタイミングは、不動が放つ衝撃波。
猛スピードで道路を突き進む警備員車両の屋根に破輩が陣取る。彼女が振り落とされないように、鉄枷が『金属加工』にて車の屋根を変形、破輩の両足を掴む。
車の両窓からは、『DSKA―004』を車外に全て浮かばせている一厘と、超電磁砲を何時でも発射可能な態勢の湖后腹が上半身を乗り出していた。
そして、現場に到着するや否や一厘が操るスタンガンの群れと湖后腹が放った超電磁砲で“手駒達”を叩き、同時に足を掴んでいた金属が解除された破輩が跳躍、
猛スピードで走る車を利用して十分に集めた風を『疾風旋風』で纏め上げ、爆弾が詰まれた車両を成瀬台のグラウンド上空に吹き飛ばす。



「ハッ!!!」



他方、成瀬台の中に居た水楯は操作する渦潮を限界まで凝縮・圧縮し、解放した勢いそのままに校外に出る。
引き連れた水のロープで踏み止まった水楯が上空から“手駒達”を水に取り込み、また大量の水で車両を持ち上げ成瀬台のグラウンド上空へ放り投げる。



「フン!!!」



最後に、成瀬台のグラウンドの中心で待機していた―隣には、万が一に備えて佐野が居た―不動が、真上に上がった3つの車両目掛けて思いっ切り拳を振り上げる。
『拳闘空力』にて発生した衝撃波が車両の1つを貫通した。その結果・・・



ドカーン!!!!!



積まれていた爆弾が爆発を起こし、両隣にあった車両に詰まれた爆弾も誘爆した。
大爆発と言っていい規模の爆炎・爆圧を竜巻クラスの『疾風旋風』で押し返し、『粘水操作』と『皆無重量』にて残骸等を捕獲する。
これによって、校舎に攻め入った駆動鎧及び“手駒達”、周囲に居た者達含めて全て鎮圧した。
直後、ジャミング電波はストップした。おそらく逃走に移ったのだろう。但し、ストップ直前に駆動鎧が搭乗者―“手駒達”―諸共全て自爆した。
車両に詰め込まれた爆弾代わりとでも言うべきか、そもそも鹵獲された時の対策として設定されていたのか。
鎮圧+爆弾処理直後で佐野も油断しており、効果範囲内の電波を妨害することができなかった(とは言っても、防げたであろう駆動鎧の自爆は3機だけだったが)。
総合的な結果としては、風紀委員会は『シンボル』の大き過ぎる助力もあって何とか崖っぷちで踏み止まることに成功した。






「・・・う、うぅん。・・・・・・ここは・・・?」
「あっ!!加賀美先輩!!鳥羽が目を覚ましたよ!!」
「帝釈!!帝釈!!!」
「丞介・・・さん?加賀美先輩・・・?」

救急車のサイレンが鳴り響く成瀬台の一角にて、176支部の鳥羽は意識を取り戻した。

「鳥羽君!!大丈夫!!?私のことわかる!!?葉原だよ!!?」
「ゆかり・・・ちゃん・・・」
「全く・・・軽症のくせに一番最後に気が付くなんてな。少したるんでるんじゃないか?」
「あれぇ?176支部(わたしたち)の中で、誰よりも早く成瀬台に突入して行ったのは何処の誰だったかしら、神谷?しかも、すごい形相で」
「う、うるせぇよ、鏡星」
「その上、もう終わっていたという始末だったからな。エリートである私から見ても無様という他無かった」
「斑・・・テメェ、喧嘩売ってんのか?」
「神谷先輩・・・鏡星先輩・・・そうか・・・俺・・・」

担架に乗せられて運ばれる途中の鳥羽の周囲には、176支部の仲間達が居た。同じく怪我を負った葉原は、何とか立って歩くことはできるようだった。

「こら!!こんな時まで喧嘩しないの!!!帝釈・・・よかった・・・!!生きていてくれて・・・本当に・・・!!!」
「加賀美先輩・・・。俺・・・俺・・・とんでも無いことを・・・!!!」
「帝釈は悪くない!!私が悪いんだよ!!!私が・・・私が・・・!!!」
「網枷・・・!!!」

鳥羽の懺悔に加賀美は自分を責め、神谷は同期の裏切りに憤慨にも憤慨する。

「・・・ひ、緋花・・・さんは?」

だが、世界は時として無慈悲なまでに非情である。

「あっ・・・。それが、緋花に連絡しようにも繋がらないの。あの娘、携帯をマナーモードにでもしてるのかしら?もしかしたら、捜査に集中し過ぎて気付いていないのかも」
「・・・!!!!!」
「事は緊急を要するモノだった。本来なら焔火と合流したかったのだが、159支部の破輩先輩から聞かされた事態の深刻さを鑑みれば、
あいつを置いてでも成瀬台に直行しなければならないとエリートである私を含めて意見が一致した。後で説教をしなければな」
「そういえば、緋花ちゃんって何処に行ったんだろう?178支部へ出向中に作ったルートに沿って捜査してるんだよね?鳥羽君・・・緋花ちゃんから何か聞いてない?」

非情の上に無情である。

「・・・今・・・何時?」
「へっ?」
「今何時!!!??」
「鳥羽君!!?え、えっと・・・午後8時45分を回った所・・・」
「・・・危ない」
「えっ?」
「緋花さんが危ない!!!!!」


廻る周る世界が回る。冷酷無慈悲な世界が少年少女達を惑わし、弄び、拐かす。天邪鬼な世界は、今日もまた巡り巡る。

continue!!

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最終更新:2013年04月12日 00:47