【名前】カルナ
【性別】男
【所属】魔術
【能力】必殺の槍(ヴァサヴィ=シャクティ)
【能力説明】
インド神話の英雄カルナがインドラ神から授かった投擲槍を模した霊装。全長1mくらいの槍でサンサーラ家に伝わる聖具の一つ。
伝承によると、インドラ神の策略により自身の『不死』の象徴である黄金の鎧を差し出す事になったカルナだったが、肉体と一体化した鎧を血塗れになりながらも自ら引き剥がし、それでもなお英雄は微笑を湛えていた。その余りの高潔さに恥じ入った神が英雄の振舞いに報いようと一本の槍を与えたとされる。
それは一度のみ使える、神々すらも殺す事の出来る『必殺』の槍であったが、結局カルナは宿敵
アルジュナとの決戦を前にこの槍を使ってしまい、一撃必殺の武器の使い処を誤った事が、彼の死の遠因の一つとなってしまった。
『必殺の槍』はこの逸話を基に他の聖具と同時期に作成されており、現在まで幾人もの『カルナのアヴァターラ』の手を渡ったが、いくら魔力を注ごうとも、どのような解釈を織り込もうとも、誰一人として霊装に秘められた魔術を発動する事すら叶わなかった。
そのくせどういう訳か、『必殺の槍』と適合したアヴァターラは他の適合者よりも極端に短命であるという特異な性質を示し、何時しか一族の間では『呪われし聖具』と畏れられていった(掟により聖具の破壊は禁じられている)。
種を明かせば、この槍は確かに『神々すらも殺す事の出来る「必殺」の槍』の再現を試みた霊装であった。具体的な効果としては神裂火織の『唯閃』に近い現象を引き起こせると推測される。
しかしその魔術を発動する為には、たった一人の魔力では――否、今まで倒れていった幾人ものアヴァターラの全生涯を以てしても、要求される魔力量には及ばなかったというだけの、単純な話だったのである。
(必要なのは『カルナのアヴァターラ』の生命力を変換した純粋な魔力のみであり、界力や天使の力といった高密度のエネルギーを代替とする事は不可。適合者以外が魔力を注いだ場合、霊装の内燃機関が『異物』を拒絶し注がれた分の魔力を用いた自動迎撃を行う)
過去にこの槍に注がれた魔力は全て霊装内部で循環しており、仮に破壊された場合には尋常ならざる規模の魔術的爆発が辺り一帯をまとめて吹き飛ばす事になるだろう。
過剰な魔力供給の要求にその命を散らしていった聖者の数、実に四八人。四九代目の継承者であるカルナはようやくこの真実に辿り着き、一人苦悩する。実は、彼の代かあるいは次の代で必要量の魔力が満たされる事を知ってしまったのだ。
レプリカとは言え、これほどの魔力が込められた槍がもたらす破壊力とは如何ほどなのか。神々のいないこの時代に、これ程の力が本当に必要とされるのか。それが解き放たれた時、世界にどれ程の影響を及ぼすのか。『呪われし聖具』の因果を断ち切る為に、彼が最後に選ぶ手段とは……。
【概要】
インド神話の英雄カルナを名乗る魔術師の青年。本名はヴァスセナ=サンサーラ。
アルジュナことヴィジャヤ=サンサーラとは異母兄弟の関係で、年齢は兄の一つ下。
カルナの魔術的記号を宿して生まれたアヴァターラであり、幼い頃より一族の皆に慕われる反面、『呪われし聖具』の存在から常にその宿命を儚まれ、同情されるという複雑な環境に立たされ続けながらも、全てを受け入れ善しとする超然たる懐の深さを備えていた。
兄であるアルジュナもまた生まれながらに次代の族長に選ばれる事が決まっており、その座に就くのに相応しい者たるべく一心不乱に修行に打ち込む姿を見ては、「兄に比べれば、僕なんて生まれてから未だに何もしていないのと同じだ」と評する程に兄を深く尊敬し慕っていた。腹違いとは思えない程仲が良いと一族の間でも評判の兄弟であった。
しかしそんなある日、アルジュナとその親友である
クリシュナが共に一族を出奔するという出来事が起きる。実はアルジュナは出奔前夜にカルナに計画を打ち明け「共に来ないか」と誘いを掛けていたのだが、自身の体の事もあり兄の足手纏いになる事を良しとしないカルナは、複雑な心境をおくびにも出さず丁重に断った。その上で兄の不在中一族を代わりに纏める事を進言し、認められた事でアルジュナに代わり族長候補の筆頭としてその身を捧げる事を決意した。
アルジュナの出奔以来、一族では彼の処遇を巡り「追跡部隊を派遣してその真意を確かめ、説得の後に一族に連れ戻す」事を意見とする穏健派と、「族長の責任を放棄して放蕩に耽る身内の恥を探し出し、粛清する」事を声高に叫ぶ過激派という二つの陣営に分かれ、カルナは当初穏健派の中心人物として過激派の説得を試みていた。……が、いつしかその思想が過激派のものに近くなって行き、族長候補を迎えたとして二大派閥の盛衰は大きく傾き一族の基本方針として後者が採用され、着実に推し進められようとしている。
自身も追跡部隊の一員として一度外の世界に出た事があり、その時出会った『
黄金の衣を纏う少女』の中に自分が身に宿すのと同じモノを感じ取った。眩い金色の「沈まぬ太陽」が如き少女に強く惹かれたカルナだったが、黄金の輝きを失った「落陽」である自身の境涯を顧みて、深く関わる前に静かに身を退いた。
カルナの心境の変化にはやはり『呪われし聖具』が深く関わっていると噂されているが、当の本人は黙して語らず、年老いた族長や長老達の代行者として一族を率い、兄の討伐のため精鋭による追跡部隊を組織するなど人が変わったように(或いはこの姿が彼の本質だったのか)以前よりも“生き生きと”しているその姿はまるで、灯が消える寸前の蝋燭が最後に一際強く燃え上がるようだと囁かれている。
【特徴】
アルジュナと変わらない背丈だが、一見して女性かと思う程線が細く華奢な身体。掟に従い肉体鍛錬に励んでいる筈なのだが、かなり不健康な印象を受ける。
褐色の肌に母譲りの黒髪。セミロングの髪は以前は几帳面に整えられていたが、最近では所々に白髪が混じっていたり、振り乱す事も珍しくない。若干タレ目で柔和な印象を与える顔立ちだが、よく見ると目の下に隈がある。
一族内では伝統の民族衣装に身を包み、外部に出る際は黒系のリクルートスーツにターバンの組み合わせ。外では眉間の印はターバンで隠している。
『必殺の槍』は麻布で巻いて野球選手がバットケースを担ぐように紐で吊るして携帯している。
【台詞】
「兄さんは凄い人だよ。一族の皆がそう言ってるし、僕だって心からそう思ってる。時々思うんだ……、もし僕が兄さんの立場だったら、僕は兄さんと同じ様に強く生きられたのかなって。ごめん、今のはちょっと意地悪だったかな」
「兄さんが留守にしている間の事は、僕に任せて。正直、兄さんがやってきたみたいに上手く行くかは分からないけど。例えこの身に代えてでも、兄さんの帰る場所は必ず守り通してみせるから。クリシュナ、兄さんの事はくれぐれも頼んだよ。……じゃあ、兄さん。また会おうね。……約束だよ!」
「不思議だ。君の中に、僕と同じ光を感じる。こんな事は僕も初めてだけど、いや、まさかな。それにしても眩く綺麗で、温かい光だ。……鈍くくすんだ僕の目には、眩し過ぎるくらいに」
「一族の恥晒し共が、よくおめおめと我らの前に現れたものだな。ここには最早、貴様らの居場所など何処にもない! 族長様の温情により、生まれ故郷に穢れた血を還せる事の幸福を噛み締めながら、自身の無責任な振舞いの付けを悔いるが良い!! その上で殺してやる! 一族の皆を失望させた罪を、その命で贖ェェェええええええッッ!!」
「ごめん。兄さん。……ごめんなさい。ありがとう。兄さん――――――さよなら」
【SS使用条件】
こんな暗い奴でよかったらご自由に