【名前】遊留祇咲士(ゆるぎ えみし)
【性別】男
【所属】魔術
【能力】国津神『アラハバキ』と『クナトノカミ』
【能力説明】
『境界を越える客人神(アラハバキ)』
国津神の一柱にして、東北・関東で広く祀られる女神アラハバキの伝承を元にした魔術。
アラハバキは謎多き神であり、その神格が何を司っていたのかについては大和朝廷による支配から意図的に削除されており、今日に伝わるのは断片的な情報に留まる。遊留祇は遺跡の発掘や古文書の解析によってアラハバキの神格を浮き彫りにする事に成功し、さらに独自の解釈を加える事で一つの術式へと昇華させた。
荒脛巾はその名からも分かるように健脚の神として知られる。その神威を解放する事で、術者は聖人の速度域に迫るほどの高速移動が可能となる。ただし向上するのは『走る』という運動の中で発揮される脚力とそれに付随する全身の筋力だけであり、格闘で聖人並の膂力が得られる訳ではない。
またアラハバキは代表的な客人神の一柱でもあり、主祭神の客分たる神として特に関東・東北地方では相当数の祠が存在し祀られている。来客たる『まろうど』の属性を持つアラハバキは元来旅の神であり、その神格の解放は術者に空間移動を可能とする。具体的にはアラハバキが祀られている社や祠、後述する『標杖』でマーキングした座標に瞬時に移動する事が出来る。
他にアラハバキは大和朝廷に服属せず出雲から追われた蝦夷の人々の守護神ともされ、彼らの持つ優れた製鉄能力を神格化した存在であるという解釈から、鉄と鉄を含む合金(炭素鋼及び特殊鋼)の操作が可能となる。手持ちの鉄製品の他、周囲の土壌から取り出した鉄を武器などの様々な形状に変化させ獲物としたり砲弾として射出したりするのが遊留祇の主な攻撃手段となる。
『境界を隔てる塞の神(クナトノカミ)』
国津神の一柱にして、一説には女神アラハバキと夫婦とされる男神クナトノカミの伝承を元にした魔術。
クナトノカミは境の神の一柱であり、塞の神、障の神、道祖神、道陸神、手向けの神などとも言われ、村や部落の境にあって他から侵入するものを防ぐ神である。境は古来より未知の世界と接する所として最も危険な場所と意識されており、畏怖の念を抱く場所であるため、祀られる神の性格もまた恐ろしい威力を持つものとして信仰されている。
クナトノカミの術式は一種の結界魔術であり、『塞の神』と刻まれた鋼鉄製の杭を地面に突き刺す事で、指定した範囲(人一人分から最大で小さな集落を覆う程度)に堅牢な結界を展開する。結界は強度の制限内であれば、魔術・物理問わず外敵からの攻撃を自動的に反射する。結界の強度はローマ正教の司教クラスに匹敵し、個人で扱うレベルとしては申し分ない。
またこの結界を張るための霊装として用いる鋼鉄製の杭はクナトノカミの神体であり、夫婦神のアラハバキとのリンクが発生する。即ちアラハバキが客人神として渡り歩く祠の代用品という役割を持つ『標杖』として機能する。遊留祇は量産型の『標杖』を遠野派勢力圏内の各地にこっそり設置し、空間移動の目的地としてマーキングしている。有事の際は『標杖』を頼りに攻撃を受けている同志のもとへ馳せ参じ、結界を展開する。
【概要】
神道系遠野派を率いる魔術師。組織の内外を問わず、指導者を意味する『
梟師』の異名で呼ばれる。魔法名は『和を以って貴しと為す(Accordare001)』という、個人至上主義の魔術師としてはある意味異端の存在。
十年ほど前に自身の魔術結社『まつろわぬ魂を受け継ぐ者』を率いて混沌としていた遠野派に合流し、並々ならぬ手腕で以て組織全体を纏め上げ、そのまま東日本最大規模の魔術結社の長となった男。全盛期を過ぎた今でもその実力とカリスマ性は色褪せてはいない。
普段の彼は飄々とした態度でつかみどころのない人物だが、座右の銘は魔法名と同じで調和を何より重んじる。例え拳を交えなければならない相手とでも、単に力でねじ伏せるのではなく対話を通して一つになろうという姿勢は昔から変わらない。組織の長として甘いのは自覚しており、部下からも度々苦言を呈されるのだが、そこだけは譲れない彼なりの矜恃である。
活動の拠点は岩手県を中心とした東北地方だが、広大過ぎる勢力圏を持ってしまった遠野派の調和を保つために、合流した魔術結社や魔術師個人の生の声を聞きたいという理由から自身の術式で遠野派の勢力圏内を飛び回っている。旅先の同志たちと絆を深める時もあれば、止むを得ず袂を分かつ時もある。
未だ現役の魔術師だが、遠野派の行く末を見据えて自身の後継者育成にも力を入れており、次の『梟師』候補として三人の弟子を取り、秘密裏に指導している(そういう意味では、彼はエリザリーナと同じ『魔導師』と呼ばれる存在でもある)。自身とは思想もビジョンも異なる弟子たちの内、誰が遠野派を率いるのに相応しいかは未だ決めあぐねている。
【特徴】
背が高くがっしりとした体格の壮年男性。年齢は四十代半ば。
若干白髪が交じる髪を頭髪料でオールバックにしている。普段は半開きの双眸は見開かれた途端に鋭い眼光を放ち、彫りの深い顔は日に焼けて、整えられた口髭からは滲み出るダンディズム。
旅に出る時はバックパッカーのようなラフな格好。バックパックの中には『標杖』の予備や獲物として使う鉄類が入っている。遠野派の代表として他の魔術結社と接触する時などフォーマルな場では一張羅のスーツを着こなす。
実は周囲に隠しているが遮光器土偶グッズというニッチな商品の愛好家であり、拠点の私室には自身のコレクションが並んでいる。
【台詞】
一人称『僕』、二人称『君』、三人称『彼/彼女』など。呼び掛ける時は『〜〜さん』。特に親しい仲間に対しては呼び捨てや砕けた口調を使うが、基本的に敬語。
「ようこそ
神道系遠野派へ、我が新しい同胞たちよ。僕が代表の遊留祇咲士です。皆からは『梟師』と呼ばれる事が多いですがね。ともあれ、僕ら遠野派は君たちの合流を歓迎します」
『暫く旅に出ます。何かあったら呼んでください』(拠点執務室に残されていた書き置きより)
「『和を以って貴しと為す』……、自分でも分かってはいるつもりですよ。僕の思想が普通の魔術師のそれから大きく外れている事くらいは。それでも、僕は自分の意思を曲げるつもりはありません。『調和』を以て遠野派を纏め、不満があればまず話し合わないと。不都合な物事を暴力で解決するのは、対話を尽くしてからでも遅くはないはずですから」
「三人とも、自分の気配は十分に断ちましたね?宜しい。それでは本日の課題は鬼ごっこです。範囲は県内全域、第三者に迷惑を掛けなければどのように逃走しても構いません。僕を迎え撃つのでも結構。日が落ちた時に僕から逃げ切れた者は課題クリア。捕まった者の夕餉はお預けです。では皆、張り切っていきましょう」
【SS使用条件】
特になし
最終更新:2016年04月11日 02:15