古来より木や紙で作成された人形に身代わりになって貰い、災厄を負わせる習わしが存在する。ここに『自然』を挟み込み、皇の魔力が込められた木片や紙片で形作られた人形が皇真耶菜の姿に変化する憑依魔術。
自律稼動に必要な思考能力・会話機能・五感等々を備え、込められた魔力によるが魔術も使用可能。とはいえ通常使用できる魔術は本人と比べるべくもなく、人払いやちょっとした攻撃魔術、憑物の理論を応用した簡易的な通信・偽装・暗示魔術など基礎的な魔術に限られる。
だが、魔術師と言えど外見から皇の姿を持つ人形を身代わりと見抜くのはまず不可能である。纏う肉体を破壊されると当然核となっている人形も消滅するが、魔術や魔力の痕跡を一切残さない為憑依術式を宿す人形を調査する事ができなくなる。
これは身の丈を超える負荷が掛かると滅びるという人と神降ろしの関係を表す理論を逆手に取った上で先鋭化させた仕組みである。
『自然』には神道の神々に備わる分霊の理論も組み込まれている為、皇は『分霊傀儡』を集団規模で作成する事ができる。
皇は『分霊傀儡』により斥候任務を遂行しており、木片人形と紙片人形はそれぞれ双子の如く一組セット扱い。
互いに情報をリアルタイムで共有しており、片方の人形が先行するのが基本。どちらかの人形が『破壊』もしくは『
行動不能』に陥った場合その人形は消滅し、次いでもう片方の人形も自滅する。
この時に『後の方で消滅した人形』が蓄えた情報を術者の皇にフィードバックする(これは術者へ情報をフィードバックする際に術者の位置を悟られないようワンクッション置く目的がある。すなわち消滅した先行する人形と繋がっていた『後の方で消滅した人形』の位置が仮に探知されても大元の術者の位置までは辿り着けないという事である)。
術者の皇の指示次第では重要な情報を得た時点で自爆する手段も取る(簡易的な通信魔術も使えるが、それは専ら方々に散った人形とのやり取りに使用される。探知魔術によって術者の位置を知られる事を防ぐ為である。もっとも、状況によっては人形をわざと術者の傍に控えさせる場合もある)。
戦闘手段では余り役に立たないと思われがちだが、皇が直接魔力を供給する事によって各々の指の間から『水神穿鑿』を放つ事ができる。
発射源を数多く揃えた状態で放たれる数多の『水神穿鑿』は、射線上に何物をも残さないと言わんばかりの圧倒的な弾幕と化す。また、皇自身が人形に触れる事で人形達がやり取りしている情報を得たり新たな指示を与える事も可能。
【概要】
国内最大規模と噂される魔術結社『
神道系出雲派』において未成年ながらも強大な直接戦闘能力を持つ事から『怪童』と称されている魔術師。
凪平音羽と同じく神道を信望しているのでは無く、望む現象を実現する為に神道を利用している魔術師。魔法名『昇竜ここに顕在せん(Draco496)』。
魔術師としての活動に専念している『出雲派』の直接戦闘担当の一人であり、魔術の神秘性を守護する為に方々へ出張し、他の魔術結社に関する情報収集や『出雲派』に関するダミー情報を撒いたりする傍らで必要に迫られた場合戦闘を行う。
直接戦闘担当の名に相応しく壮絶な破壊力を生み出す魔術の使い手たる『怪童』として活動する皇達の働きが、『出雲派』が国内最大規模の魔術結社であるという噂の信憑性に繋がっている。
神道を信仰していない皇が『出雲派』に所属しているのは、神秘性に包まれている『出雲派』になら神道における禁じ手とされる術式に関する資料が存在すると睨んでいるからである。
それは対神格用術式、所謂『神殺しの術式』である。日本神道において対神格用の伝承はごまんと存在するが、それを確固たる高度術式として昇華している例はまず見受けられない。
禁じ手として各神道系列の魔術師達が資料の廃棄を含めて術式作成を禁じていた背景には、「日本神道そのものを覆しかねない魔術になり得る」という懸念があったのではないかと皇は考えている。
現実問題として『神殺しの術式』を人の身で行うにはどうしても無理が生じる。人の身で行えるような術式では無いのだ。それも高度な対神格用術式となると尚更である。
だからこそ、生贄として捧げられる娘を救う為に『何の変哲も無い剣<とつかのつるぎ>』で以て邪神を斬り伏せた逸話の発祥地の流れを汲む『出雲派』ならば、秘かに『神殺しの術式』を構築しその資料を何処かに保管しているのではないかと考えているのだ。
もっとも、皇は『神殺しの術式』が欲しいのでは無い。皇は特に竜神を好んでいるのだが、悲しきかな蛇と竜が同一視される風潮もあって竜(蛇)退治の逸話が散見される昨今の時勢がどうしても気に入らないのである。
皇が扱う『自然:水神穿鑿』も竜(蛇)退治の逸話を基にした術式に該当しないように『神』部分を強調した術式となっている。
伝承において竜や蛇が退治される大きな要因は、邪な力だったり毒だったりを持っているからである。邪竜(蛇)・毒竜(蛇)などに当て嵌まらない水神伝承が、邪神たる蛇の化物を切り伏せた『何の変哲も無い剣<とつかのつるぎ>』を介して生まれたのも奇縁と言えば奇縁かもしれない。
皇が『神殺しの術式』を求めるのは、『神殺しの術式』を参考に己が身で扱える新たなる術式を生み出し対竜(蛇)神用神話伝承を基にする術式を駆逐する為。
例えば対竜(蛇)神に効果を発揮する神話体系を利用した魔術に対して対神格用術式を参考に編み出した専用対抗魔術を放てば対竜(蛇)神用魔術全般を駆逐できると皇は計算している。
全より個を優先するという実に魔術師らしい動機を胸に抱く皇は、今は『出雲派』の望む方向性を実現する為の結果を出す事に専念・活発に活動している。
いずれは結社が何処かに保管している可能性がある『神殺しの術式』に手を届かせる事に『神道系出雲派』を代表する直接戦闘担当『怪童』の一角たる皇真耶菜は執心している。
【特徴】
16歳。身長167センチ。スラッとした脚線美が自慢のモデル体型。薄紫色に染めた長髪を赤色の紐で結んでポニーテールにしている。前髪パッツン。目力強し。
スカート丈がかなり短い洋風の漆黒ドレスの上からアレンジを加えている藍色の浴衣を着こなす。和洋折衷を意味しており、習合などにより伝来した神々を受け入れた神道の懐の深さを示すものでもある。
浴衣の本体部分と中振袖が分離しており、二の腕が露出している。中振袖は腕に括り付けており、袖の内側に憑依魔術に使用するアイテムを収納している。中振袖そのものも憑依魔術の
シンボルになる物品である。
漆黒の生地に金色の波形が描かれている帯は蝶を模した前結び、浴衣の各所に桐の花と二つ引きの引両紋(○←この図形の内側に二本の黒線が横に引かれている。これは竜を示す紋である)が描かれている。厚底の黒ブーツを履く。
憑依魔術を使用する影響か普段からハイテンション。ノリが良く、精神が高揚してくるとハイテンションな性格に拍車が掛かる。とはいえ精神高揚が魔術行使の精度に支障を来したりはしない。
計算高く、目的遂行の為に辛抱を重ねる我慢強さも持ち合わせる人間であるがハイテンションなノリからは中々想像できないらしく、周囲からはヤクチューのように自滅しそうなのに中々そうならない変わった人間と見做されている。
また『自然:分霊傀儡』の人形にも皇の性格がそのまま現れる為に、人形と相対する敵対魔術師からすれば「馬鹿っぽい」「雑魚」「身代わりに戦闘を任せて術者はヒソヒソ隠れている典型的な小物」という印象を受けるだろう。その先に居るのが『怪童』と謳われる、一人で以て軍勢と渡り合える強大な魔術師である事を知らずに。
【台詞】
「やばいよやばいよやばいよ!!破壊された人形の情報だと、あの辺りに敵さんが居るっぽいなあ!!逃げるが勝ちかな?ヒャハハハ!」
「ヒャハハハハハハハ!!ヒャハハハハハハハハハハ!!!ああ笑った笑った笑いこけた。やっぱり追いつかれちゃうよねぇ。わかってたわかってた。あぁ、そんな可哀想なものを眺めるような目で見んなよお。私だって一生懸命(猫を被って)やってるんだからさぁ。ね?」
「なんでよお!どうしてこんなに簡単に死んじゃうのお!?『怪童』と呼ばれる私の実力はこんなもんじゃないわよって宣言したかったのに。空気が読めない奴等だなあ。まぁもう空気すら吸えないけどねえ。ヒャハハハ!!」
「望むは一つ。『神殺しの術式』。悲願に手を届かせる為なら、信仰なんてこれっぽっちもしていない神道にだって頭を垂れてやるわよ。魔術師らしく我儘に。私の思いの溢れる儘に」
【SS使用条件】
特になし