ストレンジ、
ブラックウィザード本拠地にて…
稜と真慈は武器構え睨み合っている。
「いつでも来い…」
「そうか…じゃぁ…行くぞ!!」
真慈は両腕のアームガードで形成された刃物で鉤爪を作り稜に、襲い掛かった。
「鉤爪か!?」
「こいつは武器形成(ウェポンクリエイト)、多少の攻撃なら防げる硬さだ」
「やっかいだな…」
稜は隙の無い真慈の動きに手も足も出なかった。
「どうした?手が出せないのか?」
「調子に…乗るなぁ!!!」
稜は閃光真剣の刃先を伸ばし、鞭のように振るった。
「おせぇ…」
しかし真慈は、稜の攻撃を、軽々と避けて、間合いを詰めてきた。
「速い…ぐはっ!!」
真慈の攻撃が、稜の腹部に大ダメージを与え、稜は、数メートル飛ばされ膝をついた。
当然閃光真剣も今の一撃で演算が乱れ、針だけを握っている状態になっていた。
「所詮そんなものか…」
真慈は、そんな稜に背を向け歩き出した。
しかし、その背の後ろからは、未だに地面へ倒れる音がしていなかった。
「!?」
真慈は、不安になり、振り向いてみると、真慈は目を疑った。
「はぁ…はぁ…倒れねぇよ…俺は…」
あれだけの一撃を受けたはずなのに、稜は閃光真剣を2本構えて、その場に立っていた。
「おとなしくそのまま倒れてれば楽だろうが!」
「生憎…目の前の犯人を逃がして…ぶっ倒れるほど…甘くはねぇからな…」
「じゃぁ死ね」
真慈は、再び、稜の間合いを詰め、攻撃を始めた。
しかし…
「な!?」
真慈の鉤爪と、稜の閃光真剣がぶつかり合い、火花を散らした。
「もう見切った」
「チッ!」
稜は真慈の動きが分かるかのように、次々と真慈の攻撃をかわしていった。
「なんだよこいつ!!…な!?」
そして稜は、真慈の攻撃を完全に受け止めた。
「おせぇな」
「いい気になってんじゃねぇ!!」
真慈は、稜から距離を取り、両腕のアームガードから釘のような飛び道具を一気に撃った。
「どうだ?これなら近づけねぇだろ!!なに!?」
稜は、弾が飛んできた方向に向かって駆け込み、スライディングで真慈の死角に潜り込み、ターンスライドして真慈の背中を切りつけた。
「甘い!!」
「な!?」
真慈はすばやく身を翻し右腕のアームガードで、稜の斬撃を受け止めた。
「なら…それごとぶった切る!!」
「なに!?」
稜は真慈のアームガードを破壊した。
「終わりだ!!」
「まだだ!!」
「ぐはぁ!!!!」
しかし、真慈は左のアームガードから鍵爪で、稜の腹部を突き刺した。
「最後に笑うのは俺だ!!…!?」
稜は閃光真剣で左腕のアームガードも破壊した。
「これでお前も終わりだ…」
「まだ俺には切り札がある…」
「お前!?…」
真慈は、稜から少し距離をとって、ポケットからUSBメモリーを出した。
「こいつが無ければ俺の罪が一つ消える…」
「…」
「なに?」
稜は、一歩ずつ真慈に近づいて言った。
「来るな!」
そして真慈も、後ろへ一歩下がった。
「…(そういやぁ、あいつ言ってたっけ?あの日の夜に)」
それは日にちを遡り、稜が初めてと正美と同居することになった日の夜だった。
回想…
「ねぇ神谷さん…寝ちゃった?」
「…眠れるわけねぇだろ」
「そうだよね…ねぇ神谷さん」
「あ?」
「聞かないの?わたしのこと…」
「…じゃあ、一つだけ質問していいか?」
「うん、いいよ?」
「おまえは怖くねぇのか?今まで自分にあった記憶が全部消えて…」
「うん、怖かったよ…でも、今は違う…かな…」
「?」
「わたし、あなたなら…信じて居れるから…」
「そうか…」
「わたしからも…いい?」
「ああ」
「…もしも…もしも記憶を無くす前のわたしが…犯罪者だったら…あなたはわたしを捕まえるの?」
「さぁな…そんときは…そんときだろ…」
「捕まえないとダメだよ?あなたは風紀委員なんだから」
「被害者は守るそれが俺だ…たとえそいつが悪の組織に入っていても、そこで被害にあってたら俺は…そいつを…助け…る…」
「神谷さん?」
「…」
「寝ちゃった…ありがとう…『神谷くん』…」
回想終…
「俺は…」
「来るな!!」
真慈は、壁に突き当たり逃げ場を失った。
そして、稜はゆっくりと真慈のへと近づいて行った。
「俺は!」
「くっそ!…ぶごぁ!!」
「俺が!!風川を救う!!!」
稜は、渾身の右ストレートをUSBメモリーごと真慈の顔面に叩きつけ、真慈を気絶させた。
そしてUSBメモリーも砕けた。
「悪いな…お前の罪は、消えねぇよ…」
稜は、ポケットから小型の録音機を取り出し再生した。
『テレパス系の能力は手元にあったほうがいいからさ!だがあいつは、人を傷つけたくないと俺の命令には従わなかった!!どんなに蹴りを入れても、どんなに殴っても、あいつは一回も能力を人に向けることはなかった!!それで俺はあいつから今までの記憶をコピーし、破壊した、スパイとして使うために!』
稜は携帯を取り出し、どこかに電話をかけた。
「…もしもし、風紀委員176支部の、
神谷稜です、ブラックウィザードの主犯を拘束したのでアンチスキルの要請をお願いします…」
稜は携帯を閉じた。
「終わったぁ…」
稜は案所に着いたからか、急に力が抜けたかのようにその場で倒れこんだ。
そして毎回世話になっているカエル顔の医者が居る病院の病室に運ばれた。
「う…うぅ~ん…こ…ここは?…」
「あ、起こしちゃった?」
「風川?」
稜が目を覚まして始めに見たのは、正美の優しい笑顔だった。
「また…無茶しちゃったんだね?」
「なんでここが?」
「加賀美先輩が、教えてくれたんだ、わたしが来た方が、神谷くんが喜ぶからって」
「ったく余計なことしかいわねぇんだから…」
「でも、無事でよかったよ?」
「無事じゃねぇだろ…怪我してんだから…」
「でも…神谷くんのおかげで…わたしが無実になったって…連絡があったから」
「そっか…ってそれって、今日のことじゃ?」
「え?今日は8月7日だよ?」
「は!?ってことは俺…」
「うん!4日間ずっと眠りっぱなしだったよ?」
正美は楽しそうな顔で、稜に言った。
「なぁ…」
「ん?どうしたの?」
稜は急にまじめな顔になって、正美を見つめた。
「神谷くん?」
「…これから先も、ずっとお前を守っていても…いいか?」
「え?…それって…」
正美は、稜の言葉の意味が分かったからか、頬をピンク色に染めていた。
「あぁ~も!!…俺バカで不器用だから、正直に言うわ、俺は…風川のことが…好きだ…」
「神谷…君…」
「だから…「わたしも好き!!」
「え?」
「わたしも…あなたのことが好き!」
「風川…」
「神谷くん…ん…」
二人は病室でキスをした。
ほんの数秒だったが、二人にとっては長く感じていた。
「改めて…これかもよろしくな、正美」
「こちらこそ、よろしくね!『稜くん』!」
「さすがに『くん』はやめてくれ、呼び捨てで頼む」
「わかった、稜」
翌日…
「今日からシフト制がなくなるんだったな」
「もう先輩たち、課題を終えたの?」
「…徹夜したらしい…」
「ガリ勉!?」
「ま、とにかく行くか!」
「うん!行こう!!」
正美は、稜の腕に抱きついた。
そして稜もそれを受け入れ、176支部へ向かった。
END