2月4日、冬の寒さが増して行く午前のことだった。
176支部にて…
「はぁ~…出会いが欲しい…」
「…ですね…」
「なんであの残念イケメン二人がリア充に…」
「本人に聞けばよろしいかと」
「そうですよ」
「おはようございます…って、どうしたんですか!?この重い空気は?!」
「稜は?…」
「今日は非番では?」
「「「…」」」
「あの…皆さん?」
「「「リア充爆ぜろ…」」」
「はい!?」
かなり沈んでいる176支部だった。
一方その頃、街中にて…
「ねぇ、これどうかな?」
「そうだな…俺には寒そうに見えっけど?」
「う~ん…そうかなぁ~」
稜と正美は、制服姿で、ウィンドショッピングを楽しんでいた。
そんな時…
「…あの、ちょっと良いですか?」
「え?あ、はい?」
二人の前に、一人の女性が声を掛けてきた。
「どうされました?」
稜は、風紀委員時の対応言葉で接した。
「ちょっと道を尋ねたいんですが…」
「分りました、場所は…「あー!!!!」
正美が突然叫んだ大声に、稜は右耳を抑えた。
「うるせぇな…」
「ご、ごめん!でもこの人!!前にテレビで見た人だよ?!」
「テレビ?」
「ほら!あの新商品を紹介する番組の!」
「あぁ、あれか…」
「見てくれたんですね?」
「はい!」
「えっと、それより、どこへ案内すれば」
「ああ、そうでした、セブンスミストの方へ案内して頂けないでしょうか?」
「分りましたでは案内します」
「よろしくお願いします」
こうして、稜たちは、セブンスミストへと向かった。
セブンスミストにて…
稜たちは、セブンスミスト内の、カフェに居る。
「すみません、私の不測が、お二人の貴重な時間を割いてしまって…」
「そんなことないですよ!ね?稜」
「俺は風紀委員ですし、困ってる人がいたら助けるのが義務ですから」
「これは、私からのお礼です」
「やった!」
「良いんですか?」
女性は、稜たちをカフェでおごる形で、お礼を返すことにしたのだった。
「そう言えば、まだ自己紹介をしてなかったですね、私は桐野 律子(きりの りつこ)と申します」
と言って、二人に名刺を渡した。
「研究をなさってる方なんですか?」
「今販売している、年齢別によって買い換える、洗顔クリームとボディーソープを開発しました。」
「あ!それ私も使っています!!すごく肌に効くんですよ!!」
「そう言ってもらえると研究したかいがありますね」
「…今はどんな研究を?」
「今の商品がヒットしたら、次は医薬品の研究をしたいと考えています」
「具体的には?…」
稜が少し踏み込んだ質問をすると、律子の表情が、真顔になった。
「…現在…世界中で大流行しているHIV…私はそれを、薬で感染時間を遅くするのではなく、HIVそのものを身体から消滅させる薬品を研究します」
「そうですか」
「わたしたちの未来に関わる研究ですよね?」
「はい、そこで一度、男女と同時に話をしたかったんです」
「え、でもどうして…」
「塗り薬と飲み薬、どちらで研究を進めたら良いのかを聞きたくて…」
「う~ん…俺は飲み薬の方がいいですね」
「え?稜もそう考えてたの?」
「お前もか…」
「なぜ、そう考えるんですか?」
「塗り薬だと、適量が曖昧ですし、すぐに無くなってしまうような感じがします」
「でも、錠剤なら何錠で飲めば良いって言うのが、書いてあるしね?」
「そうですか…貴重なご意見、感謝します」
そんな時だった。
「どこ?」
「は?お、おい…正美?」
正美は、急に、席から立ち上がると、店の外へと歩き出した。
「待ってて、すぐ向かうから」
正美は、セブンスミストの外に出ると目の前の木の前で止まった。
「おーい!いきなりどうしたんだよ!…ん?」
「この子の声が聞こえたから…」
稜の目の前には、冊川中学の制服を来た少女が木の上を見上げていた。
「どうしたんだ?」
「この子を巣に戻して欲しいの」
「ヒナじゃねぇか、落っこちたんだな」
「どうするの?」
「任せろ!」
稜は、少女から、ヒナを受け取ると、巣がある木を上り始めた。
「は、速い!」
「ほら」
稜は、ヒナを、巣へと戻した。
「戻してきたぞ?」
「!!どうもありがとうなの!」
「春上さぁ~ん!!」
「あ、初春さんなの」
少女は、声のしたほうに向かって、走って行った。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「ええ、今日はありがとうございました」
「いいえ」
稜と正美も、どこかへ向かって行った。
「…あれが、176支部の
神谷稜…そして、テレパス系能力者の
風川正美…」
すると律子は、裏路地に向かって歩き出し、裏路地に入るとメガネを外し、携帯をポケットから出して、誰かに電話を掛けた。
「もしもし?私だけど…そう、早いわね?じゃあ、しっかり尾行しなさいよ?…あと捕まえるタイミングは任せるわ?…じゃあ、期待してるわよ?」
律子は、通話を終了させると、ニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。
第6学区、とある公園にて…
稜と正美は、ベンチでまったりしていた。
「やっぱ寒いな…」
「でも休憩にはちょうどいいよね?」
「そうだな…」
しかし、時期が時期であるからか、公園には、稜と正美の二人以外は、誰も居なかった。
「ハクション!!!」
「寒いか?」
「う、うん…ちょっとね…あ…」
「こうしたほうが暖かいだろ?」
稜は正美を、自分の肩のほうへ、抱き寄せた。
「あ、う、うん!」
正美は、今までに無いくらい、頬を赤くした。
「稜…」
「ん?」
正美は目をつぶり、キスを待つような雰囲気を作っていた。
「しょうがなぇな…」
後数ミリ、等距離まで、二人の顔が近づいていた、その時…
茂みから、ガサガサッ、と音がした。
「誰だ!」
稜は、正美を守るように抱きしめ、身構えた。
「お迎えに上がりました、正美様」
その言葉と共に現れたのは無造作な黒髪を、赤いバンダナで留めている、黒スーツの少年だった
「誰?あなた…」
「本当に…お忘れになられてるんですね…では名乗りましょう、僕は麻魏埜 秦(あさぎの しん)です」
「記憶を失う前の知り合いってことか…」
「そう…みたい…でも、なんで今になって?」
「あなたを連れて来るように、雇い主から命令を受け」
「その依頼主は?…」
「言えません…では行きましょう」
秦は、正美の前に手を差し出した。
「正美に触れるな!!」
稜は、閃光真剣を構え、秦に向かって、刃先を向けた。
「そう、ですか…ならばこちらは力ずくで、正美様を引き取ります」
秦も、閃光真剣を構えた。
「うそ!?」
「マジかよ…」
そう、秦は稜と同じ能力(ちから)、閃光真剣の持ち主だった。
「そちらからどうぞ?」
「じゃあ、遠慮なく…はぁ!!!」
稜は、秦との間合いを一気に詰め、切りかかった。
「ふん…」
しかし、その一撃を、秦は涼しい表情で受け止めていた。
「こいつ…せいっ!!」
「太刀筋が甘い…」
稜の攻撃は、綺麗によけられていた。
一方その頃176支部では…
「これさぁ~、前から思っていたことなんだけど…」
「はい?」
雅は、突然語りだした。
「稜って今まで、自分と違う能力者としか当たったことが無いわよね?」
「まあ、そうですね…閃光真剣の能力者も、数えられないくらい、いますし…」
「でももし、稜の能力と同じ能力者が相手になっていたら…稜は勝てるかな?…」
「…言われてみれば、稜先輩って、接近戦系能力者と戦ったことは、ほとんど無いですもんね…」
「でも、そのための剣術ですし、きっと何とか…」
「神谷君の剣術が、その相手より下だったら?」
「それは…」
「同じの能力者同士の戦いとなると100%実力勝負になる。つまり…」
「つまり?」
麗の聞き返しに、狐月は、ゆっくり口を開いた。
「神谷君より剣術に長けている者がいたら、彼は勝機を失うことになる。」
そして再び、とある公園にて…
「はぁ…はぁ…くそ…」
稜は、閃光真剣を地面に突きたて、切り傷だらけの制服姿に方膝立ちをしている状態で、息を荒げていた。
「勝負は見えているはずです、おとなしく身を引いてください」
一方秦の方は、息一つ乱しておらず、スーツも汚れひとつついていない状態でいた。
「断る!」
「なぜ?もう君の身体はダメージを相当受けているはずです!ここで止めなければ…」
「ここで俺が投降したら…正美を守れない!!!」
「僕が守ります!」
「科学者の手下にいたやつの言葉は信用できなねぇ!!!」
「そうですか…では力ずくで奪いましょう、あなたの大切な人を!」
「させねぇ…」
稜は、閃光真剣を杖代わりにしてゆっくり立ち上がると、再び閃光真剣を構えた。
「行くぞ…」
「どうぞ?」
「はぁ!!!!」
稜は、秦の懐に駆け込むと下から、閃光真剣を振り上げた。
しかし…
「今の君では、彼女は守れない…」
「なに!?…ぐはぁ…」
秦は、その攻撃受け止めるところか、さらりと避けられ、腹部に、強烈な膝蹴りを入れられた。
そして、秦の膝が稜の腹部から離れると、稜は、ドサリと音を立てて、その場に倒れた。
「うそ…稜!!」
「…」
正美がどれだけ揺すって声を掛けても、稜は気絶しているため、起きなかった。
「起きてわたしを守ってよ!!ねぇ!稜!!」
「では来ていただけますね?正美様…」
秦は、正美の肩に優しく手を差し伸べた。
「…」
しかし正美は、その手を振り払った。
「そうですか…仕方ありませんね…」
「うっ…」
秦は、正美の首に手刀をいれ、気絶させた。
「ご苦労様ね?」
「これで約束は果たしました」
「ええ、そうね?」
「アンチスキルだけ呼ばせてください」
「怪我人を搬送するため?」
「はい」
「許可する」
こうして稜は、とある病院へ搬送された。
END