「どこだ?ここ…」
とある日の日曜日、稜は日用品の買出しをするはずだったが…
日ごろの疲れが溜まっていたせいか、電車の中で居眠りをしてしまい、大型のショッピングモール前を通り越した駅で降り、
風輪学園周辺を彷徨っている状態であった。
「…(そういえば…ここら辺に風紀委員があったような…確か、159支部だっけか…)」
そんなことを考えながら歩いていると、稜は不良の男と肩がぶつかった。
しかし稜は気付かなかった。
「…おいてめぇ…人にぶつかっておいて謝罪なしかぁ?!」
「え?ああ、悪い…」
「チッ…てめぇナメてんのかぁ?!」
男は稜の制服の襟元に掴みかかった。
「…」
「なんだよ、その眼はよォ…」
稜は呆れたような目つきで、男を睨んだ。
「あぁ?そういやぁてめぇ見掛けねぇ制服だな…」
「映倫だ…」
「映倫?ちょうどいい…ちょっと裏来いや…」
「裏ってどこだよ…」
「裏つった裏だ!!」
男は怒り任せに、稜を引っ張った。
「ここだ」
「裏なのか?ここは…」
稜の目の前には、不良が好みそうな廃ビルが建っていた。
「よっし、覚悟しろよぉ?」
男は、稜に殴りかかる体制をとっている。
「あのさ…やるのはいいけど、俺『コレ』なんだけど…」
稜はポケットの中から風紀委員の腕章を取り出した。
「やば」
「おいおい何の騒ぎだョ…」
その声と共にビルの中から出てきたのは、茶髪のコーン・ローンの髪型で左眉にピアスを着けている男だ。
「き、木原さん!」
「オメー…なに風紀委員なんか連れてきてんだァ?」
「す、すす、すいませ…ぶごぉ!!」
「!?」
木原と呼ばれるピアスの男は何の躊躇もなく、稜をつれてきた男の顔面を殴り飛ばした。
「なぁ…俺に殺されるのと…あの風紀委員を殺る…どっちいがいい?」
「りょ、両方とも無理です!!」
「じゃ、死ね」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
稜をつれてきた男は、木原に思い切り蹴られ、殴られ、虫の息になった。
「…さてと…どこの風紀委員だかしらねぇけど…」
「…(なんで買い物に来ただけでなんでこんなことに巻き込まれるんだ?)」
「ここで起きたことを知った以上…無事で済むとおもうなよォ?」
「クソ…やるっきゃねぇか…」
稜は風紀委員の腕章を、右腕に通した。
「風紀委員だ!暴行罪で、あんたを務所にぶち込む!!」
「やれるもんならやってみろ?…そらぁ!!」
木原は一気に、稜のとの間合いを詰め、殴りかかった。
「ッ…」
紙一重で稜はパンチを避けたが、あまりの速さに驚いていた。
「あぶねぇ…(こいつ…
ブラックウィザードの
東雲真慈なんか比じゃねぇくらいの素早さだ…どうすっかなぁ…)」
「どうした?怖気づいたか?じゃもっと面白ぇもんみせてやるよ!!!」
「!?」
木原は身体の中から、刃物が付いた円盤型の機械を飛ばしてきた。
「よけられるか?」
「しかたねぇ…」
稜は閃光真剣を出し、飛んでくる円盤を剣で受け止めた。
「クッ!重い…」
閃光真剣の刃と、円盤の刃が、接触している部分から、耳を劈くような甲高い音と、火花が散っている。
「!?(しまった!!)…ッ!!」
稜が腕に力を入れすぎたせいか、刃先がすべり、円盤の起動が若干ずれたものの、稜の右頬を円盤が掠め、深めの切り傷を作った。
「どうだ?」
「何の能力だ?身体から武器が出るなんて…」
「俺はサイボーグだからな…」
「面倒くさいなぁ…」
「でも初めてだぜ?俺のこの攻撃をずらすことができた相手はよォ…」
「…もう見切った…」
「じゃあ…見せてもらおうか!!」
木原は再び円盤を、稜に向かって飛ばすと、稜はその円盤に向かって走り出した。
「…(チャンスは一回、あれは俺の顔面に向かって飛んでくる…だったら!!)」
「な!?」
稜は円盤の真下をスライディングで抜け、勢いそのままで木原に切りかかった。
「おっと!」
「!!」
しかし、足に仕組んでいた刃で完全に受け止められていた。
「へぇ~…オメーは嫌いだ…オメー等!!」
「は?あ!待て!!…って」
木原は逃げたが下っ端たちが、稜を囲んだ。
「冗談だろ?」
稜は、下っ端たちを次々とダウンさせていったが、木原を見失った。
「なんだったんだ?あいつ…深追いはしないほうが良いか…」
稜はボソリと呟き、駅へ向かった。
電車の中にて…
「いって~…はぁ~…」
稜は右頬の傷を親指でさすりながら、ため息をついた。
「木原…かぁ…なんかやば気な感じだったな…」
翌日、176支部にて…
「おはようございまぁす」
「稜!その頬の絆創膏、どうしたの!?」
「転んだだけっす」
「なにか嫌な事件にでも巻き込まれたんではないのか?」
「う…」
狐月は痛いところを突いた。
「正直話して下さい、神谷先輩」
「そうっすよ、ただの不良相手に怪我する先輩じゃないでしょ?」
「稜先輩」
「神谷、話しなさい!」
「…はぁ~…」
稜は、昨日の出来事を一言一句漏らさずに報告した。
「なるほど…身体にサイボーグ、そして風輪学園周辺か…」
「まったく!159支部は何をやってるのよ!!あんな危ない存在を野放しにしてるなんて」
「野放しじゃない、分らないんだ…どこに居るのか…」
「え?でも稜先輩は…」
「俺はたまたま木原の下っ端と出くわしたから見たんだ、じゃなかったらあんなやつの足跡を辿るのも無理がある」
「だよねぇ~…」
「しかし、閃光真剣でも止めきれない勢いの飛び道具とは…」
「東雲真慈以上の身体能力…いやな胸騒ぎがするわ…」
「159支部次第ですね。」
「そんなとこだな?」
「楽観的ねぇ…この残念イケメンたちは…」
「良いんじゃないっすか?それがこの二人の良いとこなのかもしれませんし」
「そうねぇ~…なんだかんだ言って、この二人がこの支部の最大戦力だからね」
こうして176支部は、また新たな事件へと進んでいく。
END