Date:2006/05/30(Tue) Author:SS1-307

307 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/30(火) 20:28:38 [ 2updk7Ho ]
「何も聞かないのかにゃー?」

 携帯の電源を切った時、目の前の友人が聞いた。
 傷の手当てをしながらこちらを窺うのを見ていると、なんだか聞いたはいけないような気分にふっとなる。
 毒されていたとはいえ、自分はまだまだあのレベルに到達していないらしい。

「聞かれなくないんだろ?」
「まっそうだけどにゃー」

 けらけら笑いながら立ち上がる。
 ふらつく足のまま、扉に手をかけるその背中に、思わず思っていた言葉を吐き出す。

「だけどな」
「ん?」
「俺は——俺達は、少なくともクラスメイトが助けてと叫べば、相手がなんであろうと、誰であろうと助けるぞ?」

 一瞬、そいつは驚いたように目を見開く。
 ああ、気恥ずかしい。いつもならこんなこと絶対に口にだしてやらないのに。
 照れ隠しにおもわず俺が笑うと、にやりと笑い返された。
 そして、扉を開くと、背を向けたまま手を振る。

「考えとくぜい」

 ばたんという音と共に消えた相手に俺は苦笑して呟く。




「そういうときはありがとうだろうが」

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最終更新:2010年01月19日 19:57