Date:2010/02/27(Sat) Author:SS 7-405

■1〜物語の序章
とある男は久しぶりに訪れた街の空気に触れ、
ふと懐かしさがこみ上げてくるのを感じていた。
「まあ少しぐらいは思い出に浸ってもいいよな。」
そう呟いて歩みを止めた。
 今日は空がとても青い。
神父の服装は、学園都市においてとても珍しいのであるが、
人々はとりたててそのツンツン頭の男に気をとめない。


上条当麻が学園都市を去ってから3年が経っていた。
上条がロシアに渡った数カ月後、戦争が起きた。
そして、その戦争でインデックスという一人の少女が命を落とした。
上条は一人の少女を守れなかったこと、
大切な人を失ったことに深い絶望を感じた。
しかし、それと同時にある使命感を持つようになった。
それは、戦争をやめさせることである。
少女が死んだ後、上条は停戦に向けて活動を始めた。
一人の少年が戦争をやめさせる=それはとても無謀な事であったし、
実際にも大変な困難が立ちはだかった。
それでも上条は決して諦めることなくボロボロになりながらも行動を続けた。
その姿勢は多くの人々を惹きつけ、幾人かの助力もあって戦争は終わった。
今、上条は、二度と戦争が起きないように、各勢力の仲介者という
役割を果たしており、3年ぶりに学園都市にきたのも
宗教側と科学側の交渉の仲介者として選ばれたからである。

■2〜再会
とある自販機の前で、懐かしいツンツン頭を発見した少女は、
背後からその男に近づいて、ケリを入れた。

「痛ってーいきなりなんなんだ!?」

上条が振り返ると、紺の制服をきた綺麗な肩まである
茶色い髪の少女が上条を見て睨んでいた。

「御坂・・」

「アンタっ!!!今までいったいどこに行ってたの!!!
連絡一つよこさないで!心配したんだから!!」

「悪いな御坂・・・ほんとにごめん」

「まぁいいわ。とりあえず、謝る前に言うことあるでしょ?」

 上条は少しだけ考えたが、自然と口から言葉が出てきた。
「ただいま御坂」

「おかえり」
 茶髪の少女は、優しさと悲しみ、そして迷いが混在する、
そんな不思議な目をしていたが、すぐにとても美しい笑顔に変わった。

■3〜やりとり
「そー言えばお前今日暇か?もし暇だったならちょっと付き合ってくれないか?」

「は?いきなり何よ。もしかして、やっと私の魅力に気付いちゃったわけ?
残念だけどちょろっと遅かったわね」
そう言いながら少女は悪戯っぽく笑った。

「そっかーそれなら仕方ないな。」
 言った瞬間電撃の槍が飛びすぐさま上条は右手で打ち消す。

「おわっ! お前、ちっとも変わってないなー
なんでいきなりビリビリすんだよ!」

「なんでアンタはそんなに簡単に引き下がるのよ!」

「はぁ?」

「まったく。あいにくだけど今日はとっーても暇だから、
アンタに付き合ってあげるわよ。そんでどこ行くの?」

上条はよくわからないといった様子だったが、昔と変わらぬ少女に安堵した。

「うーんそうだなー遊園地とかどうだ?」

「へーアンタから遊園地のお誘いねー、いいわ行きましょう」
言うや否や少女は少年の腕を引っ張って目的地に向かって歩きだした。

■4〜楽しい時間
 上条はその日とても楽しんだ。
一緒にいた少女のおかげでいっぱい笑いいっぱい叫んだ。
 ただ、楽しい時間はあっという間に過ぎる。気が付けば日が暮れていた。

「御坂ありがとう。久しぶりにこんなに笑ったよ」

「どういたしまして、っていうか私もすごく楽しかったわよ」
 そういって満面の笑顔で少女は答えた。

「ちょっと飲み物買ってくるからそこで待ってなさい。」
少女はすぐ近くのベンチにカバンを置いてその場を離れた。

「やれやれ相変わらずだな」
そう呟いた上条が、ベンチに腰を降ろして何の気なしに、カバンの方を
見ると、中身が目に入ってしまった。

「何でアイツがこれを?」

■5〜告白
 少女が買ってきた飲み物を飲んで二人は遊園地を出て移動した。
とある橋の上で、少女は足を止めた。

「どうした御坂?」

少女はしばらく沈黙した後、口を開いた。

「私、アンタのことがずっと好きだった。



だけど、関係が壊れるのが怖くてずっと言えなかった。
でも、アンタがいなくなって伝えなかったことを死ぬほど後悔したの。
だから、決めてた。
もしアンタに会えたらちゃんと想いを伝えようって。


               ・・・
私はアンタのことが死ぬほど好きだった。」



「御坂・・。

ありがとう。本当に嬉しいよ。
俺は、お前と会えなくなって、お前の存在の大きさに気付いた。
でも、」


「その先は言わないで。
あんたがここにずっといるわけじゃないことは知ってる。
でもありがとう。すごく嬉しい。
まだしばらくはいるんでしょ?また遊びに連れてってね!
それじゃあ。 」

少女は儚げでいて優しさの満ちた笑顔を残して、その場を走り去った。

■6〜考え事
ホテルに戻った後、上条は考え事をしていた。
今日の不審な出来事と、今日の少女について。
(今日一日誰からに尾行されていた?勘違いならいいんだが、
たぶん勘違いではない。それよりも、気になるのは御坂の方だ。
アイツ・・。)

上条当麻は、インデックスが亡くなった事をきっかけに、
理想を持ちそれを実現するためには、それに相応しい力と覚悟が必要
だという事を実感した。そして、それを知った時から、必要な能力
を手に入れるために努力を惜しまなかった。その結果として、
今の上条には飛びぬけた体術をはじめ、優れた状況把握能力、判断力、
洞察力、が備わっていた。

(とりあえず、むやみに知人に会わない方がいいかもな。)
そんなことを考えながら、少年は少しずつ意識を落としていった。

■7〜夢
「とーまくん    あたし           」
「  ちゃん    ぼく            」
上条は、不思議な夢を見た。小さな少年と小さな少女の夢。
とても懐かしいかんじがする夢。
でも、思い出そうとしても思いだせない。夢とはそういうものだろう。

■8〜目覚め
夢の余韻から完全に抜け出せないまま上条は、目を覚ますために
ホテルを出て歩くことにした。しかし、すぐに意識は覚醒した。
視線を感じたのだ。しかも、たまたま見ているというものではなく、
「観察」をしているといったものだ。
(ふー、またか。とりあえず、ここは様子を伺ってみるか。)
三年前の上条なら慌てていたかもしれない。
いやそれ以前に尾行に気付かなかっただろう。この変化が彼の過ごした
3年間がどれほど壮絶なものであったかを物語っている。

■9〜プロの追跡者
上条は、移動を続けた。ランダムに見えるようで規則制のある移動。
それによって尾行者の人数と位置の把握に努めた。
 しかし、尾行者もただものではないらしく、
なかなか相手の特徴を特定できない。

(ちっ。プロか。しかも相当に優秀な奴だ。人数は一人、か?)

上条はさらに移動を続け、白い廃ビルの中に入り、階段を上っていった。
このビルは入り口が一箇所しかないため、相手の出方を伺う絶好の場所である。
ただの観察にすぎないのであれば、通常はビル内には入ってこない。
また、特定の箇所以外から視線を感じることになるなら、
相手は特殊能力者—テレポーターであると判断できる。
いずれにせよ、一番厄介なパターンは、
入り口から相手方が入ってくることである。
一つしかない入り口から、プロの尾行者が侵入する、
このことは、明確な意図=多くの場合は殺意 
があることを意味するからである。
上条は、昨日、知人がいたため、相手を刺激しないように行動したが、
今回は、場合によっては、決着をつけるつもりである。
上条は感覚を研ぎ澄ませ、三回の階段付近に身を落ち着けていた。

(入ってきた・・ )

■10〜足音
コツコツと音が聞えてくる。
それはもはや尾行を隠そうとしていないことを表している。
足音から相手は一人ということを再確認し、幾分安堵しつつも身構える。
三年前の上条の戦闘は常に格上の者とであり、
機転と仲間の助力によってなんとか乗り切っていたが、
今の上条にとっては、アックア以外の者を除けば一人で対処してもお釣りがくる。
しかし、油断はしない。今来る者がアックアレベルである可能性も否定できないからだ。
足音が止まり、シルエットが見えたその時、尾行者である男が声を発した。

■11〜親友
「久しぶりだなカミやん」


「久しぶりだな土御門。
ところで、俺は男にストーキングされる趣味はないんだけどな。」
一瞬にして安堵に包まれたため、自然と軽口が出る。

「にゃー。俺はカミやんがステキな場所に
積極的にエスコートしてくれてるように感じたぜよ。」
軽口でお返しがくる。二人の関係は相変わらずのようにみえた。


「で、今回の厄介事はなんだ?」

複雑な笑みを浮かべながら尋ねる。
そもそも、こんな迂遠な方法で接触してきたということは、
それなりに理由があるのだろう。
土御門は、無駄なことはしない。
それはかつて一緒にいた親友である上条が一番よく知っている。

「ふっ、しばらく見ない間に随分と察しがよくなったな。
時間がないから、短刀直入に言わせてもらうぜよ。お前は、命を狙われている。」


■12〜シナリオ

「なるほど、学園都市内にも戦争を起こした奴がいる、
ってことでいいのか?」

事もなげに答える。上条は、今や多大な影響力を持つ人物であり、
それが故に上条の命を狙う者もいる。その者らの大半の目的は戦争である。
他方金髪グラサンの男は、命を狙われていると言われて顔色一つ変えない
上条の返答に少し驚いたが、続ける。

「そういうことだ。学園都市内で交渉者であるお前が殺さされることは、
学園都市からの開戦の表明になるからな。」

「で、どんな奴らなんだ?」

「簡単に言うと学園都市の暗部の上位組織、
つまり闇の部分を担なってる者達だ。
まあ、かくいう俺もグループという暗部に所属しているわけだが。」
言うと同時に意味深にニヤリと笑う。

■13〜信頼
「で、お前は、今回は暗部としてではなく、
土御門元春として、動いてるってわけか。」


「カミやん・・。可愛いげのない奴になっちゃったにゃー。
まあ俺としても戦争は避けたいからな。
 親友として、一緒に行動してやりたいとこなんだが、
立場上それはできない。こうやって接触できたのもカミやんが、
監視カメラのない廃ビルに誘ってくれたからだ。
俺ができるのは、この忠告だけだ。
 じゃあな。気をつけろよ。 」


       ・・・
「ありがとう。お前も気をつけろよ土御門。」
男は後ろを向いて手を振り去って行った。

上条は土御門という男をよく知っている。
たぶん今回も、上条の知らないところで、上条のために動いていてくれている
のであろう。忠告自体も上条にとって、とても有難いものだった。
漠然と命を狙われる可能性は常に考慮している上条だが、
具体的にその事実を認識できるということは、その後のきわどい場面での
対応が大きく異なる。

(土御門の奴、俺が廃ビルに入ることまで計算して尾行してやがったな。)
「まったく。かなわねぇなアイツには。」

■14〜再び
廃ビルを出た後、しばらく上条は学園都市の思い出の場所を散策していた。
本当は昨日しようと思っていたところだったのだが、
かつて、茶髪の少女と行った遊園地にまた一緒に行ってみたい
という気持ちに駆られたため、今日改めて散策をしている。
丁度見慣れたファミレスを通りがけた時、
見慣れた顔の茶髪の少女に声を掛けられた。

(今日は確か平日だよなー。なんでコイツ私服なんだ?)

「ちょっと何嫌らしい目で人の事見てんのよ。」

「いいい、いやいや、御坂の私服姿なんて、珍しいなと思ってさ。ハハ」

「ふーん。まあいいわ。アンタ今から暇ある?」

「ん?まあ暇っちゃ暇だけど、」

「そう、じゃあ今から一緒にご飯食べない?」

「俺も腹減ってるから丁度いいな。行こうぜ。」
(コイツ昨日のこと全く気にする素振りないのな。まあその方が俺としてもいいか)

■15〜違和感
二人は目の前のファミレスに入って食事をとることにした。
たわいのない話をして盛り上がったが、上条はどこか違和感を感じていた。
深い悲しさが瞳の奥に宿っているのは昨日も同じだったが、
昨日の少女には、例の告白の後も迷いの色が見えていた。
あの迷いは一生解決しない、そんな迷いだ。
しかし、今日の少女には、迷いの色はなく、代わりに強い決意の色が見える。
それも、昨日、今日決断したといったものではない。
ずっと前に決めた、決して揺るがない、そういう種類のものだ。

(なんだってんだ?いったい。思いすごしか。)

■16〜またデート!?
「で、アンタこれから何か予定あるの?」

「予定つーほどでもないけど、ちょっと一人で都市の散策しようかなと。」

「じゃあ私もついてこっかな」

「え?」

「何?嫌なわけ?こんな可愛い子と一緒に歩ける機会めったにないわよ?」

「自分で言うかよ・・」
(正直俺と一緒にいると危ないんだけど、
ここで断ったら変に怪しんで尾行しかねない奴だからなー。
いや待てよ、昨日も一緒にいたわけだし、
暗部とやらも、それは知っているだろう。
それなら、いっそのこと一緒に行動して守ってやった方がいいかもな。)

「アンタなんか変な事考えてる?」

「いやいや、とっても嬉しい限りです美琴様。ぜひ御一緒させて下さい。」

「何よ。変な奴。」

■17レス目〜デートはおしまい

その後、二人は日が暮れるまで散策した。
そして、上条が最後の目的地である、川原についた時に、ふと少女に声をかけた。


「ところでさ、



お前、誰なんだ?」


「へっ?」

■18 疑問
「振舞い、特に歩き方が一般人のそれじゃない。
俺の知ってる御坂は、ちょっと乱暴で、ビリビリすっけど、
普通の女の子だ。」

上条の言う通り、この少女は歩く時に全く音が出ない。
確かに、人が歩く時に出る音というのはそれほど大きいものでなく、
静かに歩く人もいるだろうが、この少女のそれは、全く音がないのである。
そして、上条がその異変に気付いたのは、土御門に尾行されたことと、
忠告のおかげといってもいい。
もちろん、上条自身の洞察力もその一端を担ってはいるのであるが、
短時間で異変をかぎつけられたのは、
プロである土御門に尾行されていた事実によって、
同じような者を選別する機会を与えられたことが大きい。


女の瞳が一瞬どこか寂しげなものに変わった。
上条も気付かないほんの一瞬。  

「へー。なるほどねー。御坂ミコト様の新しい一面発見て感じ?」

「そういう意味じゃなく、お前は俺の知ってる御坂とは別人なんだろ?」

「冗談よ。じゃあさ、お願いを聞いてくれたらその疑問解決してあげる。」

「お願い?」

■19〜少女のお願い

「うん。  死んで?」   
邪悪な笑顔が表出し、上条は背筋を凍らせた。

少女は右手から何かを弾き、光弾が走った。
人はそれをレールガンと呼ぶ。
しかし、上条は右手をかざしてそれを打ち消している。

「くっ」
(レールガンっ!?まさか、御坂なのか?いや、)
考えがまとまらない内に女の声が聞こえてきた。

「やっぱお願い聞いてくれないのかぁ〜。
じゃあ「殺す」しかないわね。」


上条の頭部に左拳の三連打がくる。
それを右手と左手で交互に受け流した後、
右の脇バラに迫る後ろ回し蹴りを、足を上げてカットする。
その瞬間全身に痺れがはしり、わずか一瞬だが、動きが止まる。
それを好機と見たか、続けざまに蹴った足を戻しつつ反動を利用した
前回し蹴りが右の上段にくる。
それを左肘と右手で受けるが、あまりの衝撃に少しよろめく。

少女の技は人を壊すものとして完成されていた。

(早い!しかも、この技のキレと威力、
特にあの回し蹴りは食らったらマズイ。
たぶん一撃で意識を駆られることになる。)

「以外とやるのねー。しかも幻想殺し左手でもできるんだ。
でもその程度なら、私に殺される選択肢しかないみたいね♪」


少女の打撃は電撃でコーティングされている。
その威力は、電撃だけを放つよりも弱いものであるが、
普通の者ならば、一撃で意識を失い、場合によっては死に至るレベルである。
上条は、幻想殺しを持つ性質のためか、異能による力の耐性に強いため、
一つ二つ受けても意識を飛ばすことはない。
だが、何発ももらえば、神経をやられ死に至る可能性も高い。
加えて、打撃自体の威力も非常に高い。

■20〜戦闘
「俺を殺す・・、戦争を起こす目的は何だ?」
ふいに上条が聞く。

「ふふふ。目的なんてないわ。
でも強いて言うなら戦争を起こす自体が目的。そんなとこかな。」


上条は、これ以上話を聞く事は不可能と考え、
動き出すとともに左のフックパンチ、右のストレオート、
左のストレートを連続して放つが、二つガートされ、
最後の一つにカウンターを合わされ、動きが止まる。

(前蹴りが腹に来るっ)

両手でガートし、足を掴もうとするが、足はすでに引かれ、
頭を少し下げた顔面に飛びひざ蹴りがくる。
それも両手でガートしたが、瞬間、両手を握った拳が背中に振り降ろされる。
上条が膝をついたところで、右の回し蹴りが襲ってきた。
これはしっかりガートしたが、威力に押され完全に地面にはいつくばった。
 女は手を振りあげて真下に降ろした。
その瞬間凄まじい落雷が落ちるが、上条はうつ伏せから仰向けに反転し、
右手で打ち消す。

(やろう躊躇なく殺しにきやがる)

女にとっては、体術の行使は、正面からでは異能が効かない
上条を殺すための一過程にすぎず、
上条が意識を失った瞬間、異能の力でとどめを刺すつもりであろう。


上条が体制を整える隙を与えないまま、女は走って
上条の頭をサッカボールキックに似た右の前蹴りを試みる。

(チャンスかっ)

上条は右手で肩上まで受け流し、女の足両足が一瞬浮いたところを
カウンターの拳を入れようとするが、女は体が浮いた刹那、
バスケでいうフェイダウェイシュートさながらの体制から
左足を振り上げ、女の硬い靴のつま先が上条の溝落ちにささる。

この蹴りは、カウンターをとりにいった上条の体重も乗り、
決め手の一打となった。
上条はフラフラと今にも崩れおちそうになっている。
そこにダメ押しの左のハイキックを受けて、完全に意識を失った。

■21〜トドメ                   

                    ・・・・・
「まあ、こんなもんか。それじゃあサヨナラとうまくん」

期待ハズレとでもいうような眼差しを向けて
女はポケットからパチンコ玉を取り出し、指ではじく準備をした

凄まじい音とともに閃光が走った。
ただそれは上条に向けられた者ではなく、女に向けられたものだった。

■22〜命がけ
「ソイツから離なれなさい!!!」
光の発信源に制服を着た茶髪の少女が立って叫んでいた。

「ふふ。おもしろいじゃない。」

「何がおもしろいっての?」
怒りをあらわに叫ぶ。

「100パーセントの確率で勝てないと分かりつつ、
好きな男のために戦いを挑む女。
どっかの漫画みたいな話ね。
確かアンタもレベル5だったっけ?
でもさ、こんな話前に誰かから聞かされなかった?
 視力検査と一緒、レベル5までしかないだけで、
同じレベル5でも雲泥の差があるってことを。」

    ・・・・・・・・
「ふん。フルチューニングっていう名前は大層そうだけど、
性能がいいのはその口だけみたいね。
どうでもいいことをよくしゃべるだけあって、頭は悪そうね。」
制服の少女は不敵に笑う。

しかし、勝てないことは分かっていた。同じ系統の能力者同士、
それもレベル5同士であれば、電撃による攻撃はお互い効かない。
従って、勝負を分けるのは、電磁砲の威力ということになるのだが・・・。

制服の少女は一瞬、倒れている上条を見た。

(例え私がここで死んだとしても、あなたは私が必ず守ります。)
その少女の目に強い決意が宿った。

■23〜レベル5対レベル5
「挑発してるつもり?ふふふ。おもしろい。
私の目をソッチに向けたくて必死なのね。正直自分と同じ顔の
人間を殺すのは趣味じゃないんだけど、そういうことなら、
死んでもらおうかな。」

電撃の応酬が始まった。制服の少女の電撃は
やはり相手にはまったく効かないようであった。
他方、制服の少女の誤算は、効かないと思っていた相手の電撃
を受けた腕に痺れが走っていることだ。

(これは思っていた以上に力の差がある!?)

女を上条から少し引き離したので、電撃による攻撃をやめ、
砂鉄を剣にして操作して放つ。
しかし、操作したはずの砂鉄の剣は逆に制服の少女に襲い掛かる。
(くっ!)

転がりながらそれをよける、もう一度砂鉄の剣に干渉して、ただの砂鉄に戻す。
 相手の女はその間にパチンコ球をポケットから一つとり出し、
弾じいた。閃光が走る。

制服の少女は磁気を操作し、スレスレで回避し、
お返しにコインを弾き砲弾を放つが、この閃光はあらぬ方向にそれる。

■24レス目〜実力の差
「ね、分かったでしょ?無理よね。あなたの砲弾は私に当る可能性すらない
 けど、私の砲弾は、すぐにあなたを捉えるわよ。力の差って残酷よね。」

女は、もうさっさと終わらせたいといった顔をして、
両手でポケットからとれるだけの球をすくい、とった球全てを上に投げた。

「まさか、まずっ」

そう制服の少女が言い終わる前に光を帯びた無数の砲弾が飛んできた。
逃げ場はない。周りの磁気を操作して回避しようとするが、
威力が強すぎて方向を簡単には変えられない。



■25〜強がり
「へー以外としぶといわね。」
女は笑っている。

「たいしたことないわね。」
制服の少女も笑いながら返す。
だが、わき腹から大量の血が出ており、その笑みには力がない。

(一発カスっちゃったか。)

「たいしたもんよアンタは」
女はそういって、確実にとどめをさそうと、近づく。

■26〜目覚め
上条は今朝と同じ夢を見ていた。少年と少女の夢。
そして、少年と少女が別れた後の、その後の少女のとても悲しい夢。
夢の途中、無数の砲弾の音に目が覚める。
だが、今度はその夢をはっきり覚えていた。


「やめろよ。」

「あら、お目醒めのようね。もたもたしすぎたかしら。
コッチかたづけてからいくから待ってなさい」

上条が目を覚ましたのを確認し、
ギリギリのところで意識を保っていた制服の少女の意識は途絶えた。

「やめろって言ってんだろ!!」
怒声を放つが、女は動じない。

「学園都市が、世界が憎いか?」
ピクッと女の動きが止まる。

「正直俺も今じゃあ世界がステキで希望で満ち溢れてるなんて気持ちは
持ち合わせちゃいねぇし、理不尽だと想うことも、死ぬほど辛い思いもして、
憎みたくなるときもあった。そして俺よりもお前は辛い想いをしてきたのも
分かった。お前がそんなふうになっちまうのも仕方ないのかもしれない。でもな、
こんな世界でも価値のあるものは星の数ほどあるんだ。それを理由もなく潰しち
まうってんじゃあよ、奴らとやってことはかわんねぇじゃねーか。
そんなこともわかんなくなっちまったのかよミコトー!!!」

女の表情が険しいものになる。さっきまでのふざけていた表情はもはや微塵もない。

「確かにこの世界は腐ってる部分もあるかもしれねぇ。
でもな、まんざら捨てたもんでもない。もしお前がこの世界は
破壊するためのみにしか価値を見出せない、他に少しの用途のないものだって
考えてるなら、
俺が今からその幻想、ぶち壊す!!!」

女は何も言わずに向かってきた。

■27〜覚悟の一撃
上条は冷静にこれまでの戦況を分析していた。
(攻撃に対するあの反応速度からして、俺の先制攻撃は当らない。
かといって単純にカウンターをとりにいったら、あのざまだ。
長びいても着実にダメージがたまって負ける。
アイツのフィニッシュブローはあの廻し蹴り、そして、
それに至るまでの一連の攻撃は態勢を崩し蹴りを入れるためのもの。
あえて、それをもらい、
廻し蹴りにカウンターを合わせる機会を作るしかないな。
骨の数本はくれてやる。)

上下のコンビネーションが来る。これを全てもらうと、
相手に狙いがバレる可能性がある。あくまで、自然にもらって、
体制を崩すフリをする必要がある。もっとも演技などしなくても、
受け続ければさばきれずに、体制は崩されてしまうのであるが、
自分でタイミングを作るというのがかんじんなのだ。

上条は左肘で、顔面へのショートフックを受け返し
脇へのフックを右肘で受け、さらに次々とせまる
打撃をさばいていくが、一つの打撃を選んで受け損なう、
バキッっという音ともにアバラが折れ、
折れた骨が肺に刺さり上条の動きが止まる。

(ぐっ!!)

そこに蹴りがくるが、


(これは繋ぎのケリだ。そして次に本名がくる!)

半端に受けて体制を崩す。それをみて女は体を捻る予備動作をする。
(ここだっ!) 併せて上条も体を捻る。二つの足が交差する。

バシッ!!と音がなった。

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最終更新:2010年04月07日 16:01