頭文字D vs 湾岸MIDNIGHT内検索 / 「伝えるというコト④」で検索した結果

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  • 伝えるというコト④
    「凄いクルマですね・・アレ」 ルームミラー越しにポルシェをちらりと見ながら呟く拓海。 先ほどまでの涼しい様子とは打って変わり、額にはうっすらと汗が滲み出ている。 見るもの全てを魅了する悪魔のZとは対極に見るもの全てを威圧するその姿は、正にコインの表と裏。 同じでありながら相成れない双子の存在と言えるだろう。 峠では完全に持て余す700馬力の大パワー車を当たり前のように振り回す。 拓海がこれまでに出会った事の無いタイプのドライバーと言えよう。 だがポルシェは拓海を威圧するでもなく、その走りを綺麗にトレースする。 決して首都高の走りを押し付けるわけではなく、峠に存在するそのルールを目の前の相手から学び取るかのようだ。 「啓介さん 後ろのポルシェ・・」 「俺達を煽るでもなく抜くでもなく合わせている・・中々出来る芸当じゃねーな 流石兄貴を認めただけはあるぜ」 「え?啓介さんは後ろのクルマのドライバ...
  • 伝えるというコト⑥
    客の姿がまばらな深夜のファミレス、通常の座席とは少しだけ隔離された場所にある座席に紫がかった煙が立ち込める。 座席には喫煙席のマーク、テーブルの上には走り屋系のクルマ雑誌が置いてある事から席の主達は走り屋と窺い知れる。 「なぁ・・ここんとこよく出る白いFCって知ってるか?」 「見たことないけど噂では聞いたコトあるぜ・・なんでもプロジェクトDのFCらしいぞ」 「プロジェクトDって”あの”プロジェクトDか?あいつ等峠専門なんじゃねーのかよ?」 「そこなんだよな・・でも見たってヤツの話だと群馬ナンバーでレッドサンズってステッカーが貼ってあったって言うぜ?」 「レッドサンズ?」 「プロジェクトDが出来る前に群馬最強と言われたチームらしい・・で 白いFCはそのチームのリーダーのクルマだって話だ」 「で・・・・速いの?」 「実測は大台(300キロ)行くか行かないかみたいだけど兎に角250前後がバカっ速...
  • 伝えるというコト⑦
    終電を逃した勤め人を乗せるタクシーの姿も大分減り、時折オールクリアの状態を見せるC1にFCの姿があった。 路面の継ぎはぎが車体を細かく上下に揺らす。 限界まで攻めるでもなく、かと言って中途半端に流すでも無い。 「こうしているとまだ走り始めた頃のコトを思い出すよな」 流れる景色を見ながら啓介が呟いた。 「どうした?急に」 「覚えてるか?兄貴・・俺がレッドサンズに入る前のコト」 「忘れるもんか 初めてお前をFCのナビに乗せた時ときたら・・・・地元では名の知れたワルが泣きそうになったのは笑ったぜ」 「しょーがねえだろ 俺だってあんな経験初めてだったんだから・・それからしばらくは兄貴の横に乗ってたよな」 「こうしてお前とタンデムするのは秋名以来だな・・あれからもう1年か 早い物だ」 ハンドルを握りながらこれまでの思いを馳せる涼介。 群馬最速を目指した遠征、拓海との出会い、プロジェクトD、そして首都...
  • 伝えるというコト⑤
    赤城の頂上にて島との邂逅を拓海と啓介が果たしていた頃、御殿場市内に涼介の姿があった。 電車を乗り継ぎ、駅から降りれば林のいるGSは歩いてすぐ着く距離ではあるが、まだまだ照りつける日の光は強く たちまち汗が吹き出して来る。 やがてアスファルトの照り返しによる陽炎で揺らめく林のGSを見つけた時に、涼介は彼が林に預けたFCの姿を見つけた。 元々の必要最小限の装備であった姿から大きく変わり、高速域での安定性を持たせる為のエアロパーツがまず目に付く。 「おーよく来たな ま入れよ」 涼介の姿を見つけ、林がGSの事務所から現れる。 事務所の中に通された涼介は、クーラーの冷風を浴び一息をついた。 「すみませんお仕事中に・・組み上がったと聞いたらいてもたってもいられなくなって」 「まさか本当に群馬から電車で来るなんて思ってもいなかったヨ 結構な大バカだなって(笑)あ コレは褒めてるのよ」 「FC・・大分変わ...
  • 伝えるというコト⑨
    911とFCに合流するZ、バトルの様相は三つ巴となる。 道幅は狭い羽田線ではあるが、道路の構造自体は直線を基調としており、瞬間的なオールクリアさえあれば大台も夢ではない。 但し、それは踏み切れればの話である。 高価なパーツをつけても、それを生かし、そして踏み切る腕を持っているのは全体の内2割にも満たないだろう。 一般車がばらけていく・・近づくオールクリア、200km/hを超える速度でスラロームを繰り返しつつ機会を待つ3台。 京浜運河のS字を抜ける、オールクリア─── 震える空気を身にまとったZがFCの背後から一瞬早く飛び出し911と横並びになる。 C1合流までの約1.5kmのストレート、条件は整った。 速度が乗り視覚効果的に狭さを更に感じるがそれをものともせず速度は更に乗っていく。 250・・260・・280───FCのスピードメーターの針は林の言った限界に近づく。 ───ここまでか・・あ...
  • 伝えるというコト②
    昼間の日差しの代わりに電灯が辺りを照らす御殿場市内。 夏の終わりを告げ始めた虫の音も、国道を走る家路に向かうクルマの音にかき消される。 その様子は昼間とあまり変わらない印象を受けるが、国道に面したあるGSの様子は昼間の物とは少々違っていた。 涼介が林に正式にFCのチューニングを依頼し2週間・・店を閉めた後にピットに残る林の姿がそこにはあった。 「所長―――いるぅ?」 「オキか・・調度イイから一服すっか 俺ウーロンな」 「えー自販なんか目の前にあるじゃねーかよォ」 ピットの中央に置かれたFC、そして作業台の上にはその要となる新たなREの加工が行われている所だった。 「所長 あの群馬のアイツのEgはどんなにするのさ?ただポート削るだけってワケじゃあなさそーだけど」 「組み直す前の状態が良くて250馬力前後ってところだったからナ―――それに上乗せ250馬力・・勿論このまんまじゃあ Eg本体がもた...
  • 伝えるというコト
    須藤の赤城襲来、そして涼介のいろは坂のバトルから一夜が明けた。 走り屋達の間には瞬く間にその噂は広まり、その噂は今現在FDを失っている啓介の耳にも勿論届いたのだった。 「聞いたぜ兄貴・・須藤と走(や)ったんだってな」 検査入院から退院した啓介が自宅のロビーでくつろぐ涼介の前に現れる。 所々に貼ってあるシップが少し痛々しい後を見せるが、日常生活には全く支障が無いように見える。 「もうお前の耳にその話が入っているとはな・・人の噂は伝わるのは早いものだ」 「兄貴・・FCはどうしたんだ?」 「お前が対戦する予定だった御殿場のチューナーから借りたんだ・・凄いぞ啓介 あんなFC俺は見たことがない」 涼介の口から林のFCを賛辞する演説が流れ始める。 目を輝かせ、そして流暢に語る涼介の様子とは裏腹に啓介は苛立ちをつのらせて行くのだった。 「そんなに走りたいのか・・」 「すまない よく聞こえなかった」 「兄...
  • 伝えるというコト③
    「もしもし・・啓介さんですか?藤原です」 携帯から拓海の声が響く。 啓介の交通事故から約1ヶ月、Dの遠征が中止になっていた事もあり、久々に聞く声だ。 「藤原・・久しぶりだな その・・・・今回の事故の件では色々迷惑かけたな」 「いえいいんですよ・・それより啓介さんの体はもう大丈夫なんですか?」 「ああ 俺の方はもうなんともないんだがFDがな・・」 「そうですか 実は今高崎市内にいるんですが良ければ軽く流しませんか?」 「そうだな・・俺もちょっと滅入ってた所だ 待ってる」 しばし後に、住宅街に太く濁った音が響いてくる。 音の主は拓海の駆るハチロク(AE86)Gr-A仕様の4AGが奏でる純粋なレーシングサウンドに部屋の窓がビリビリと細かく揺れる。 助手席に啓介を乗せ、ハチロクは高崎市内を北に抜け、前橋へ、そして赤城へと登っていく。 赤城に入った頃、乗り込んでからずっと黙って外を見ていた啓介が口を...
  • 伝えるというコト⑧
    先行する911との速度差は既に100km/h近い、FCの前方で右から左へワープするかのように911は汐留めSを抜けて行く。 C1で一番広い3車線、クリアな一番右側の車線をFCは加速する。 200・・220・・体験したコトの無い速度域に啓介の体は硬直する。 スピードメーターの針が230を指すか指さないかでFCはフルブレーキ、一番イン側を走る一般車を避けながら一番アウトの車線へFC が飛ぶ。 ───コーナーの鉄則はアウトインアウトだがあのままインを走っていれば間違いなく一般車とクラッシュしていた 兄貴はそんなコトもわかるのか?─── 右に左に、そして溢れるパワーを大胆に、繊細に扱いながらのスラローム。 パワー差の出にくい銀座エリアに突入する911とFC、その差は徐々に詰まりつつある。 迫る銀座S、200km/hを超える速度からの減速勝負が土橋、そして京橋への加速勝負へ繋がる。 メーター読み15...
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  • 軸⑤
    「これはDを自分が作った時から決めていたコトなんですが───」 一個呼吸置いてから涼介は語りだした。 「島先生は既にご存知のようですが自分は将来父の病院を継がなかればなりません・・現在自分はG大の3年です 4年になれば研修先も探さなければなりませんし現状でも学業との両立はギリギリなんです」 「だったら尚更だ・・君が考えているよりこの業界は甘くないヨ」 「それもわかっています・・ですが自分も先生同様に”走る”というコトに取り憑かれた一人です 出来るコトなら走り続けたい だけど現実的に考えていつか降りる日がやって来る だけど自分の打ち込んできたコトはこのまま終わらせたくないんです」 「成る程ね それでリスクを犯してでも伝えたい・・と」 「ええ Dは活動出来ても秋までです それまでに自分の志を継いでくれる二人に自分がしたコトや見たコト・・そしてわかったコトを伝えて走り続けて欲しい・・自分が遂げら...
  • サドンデスバトル②
    ヴアァ・・・・ 囀る鳥達の声、風にそよぐ木々の音とは明らかに違う異質な音が響き渡る。 やがて音の主は次第にオキと林に近づき、ついにその姿を見せた。 「白いFC・・だけどちょっと圧縮抜けた感じだナ」 「へー流石所長 音聞いただけでわかるんだ」 「あったりめーだろ 何年RE組んでると思ってんだ(笑)」 バラバラバラ・・ RE特有のアイドリング音を立てて白いFCは二人の近くに停まる。 運転席の扉が開き、そこから現れたのは高橋涼介その人であった。 瞬間―――時間にすれば正に瞬間だが、オキは涼介との間に同じ”匂い”のような物を感じた気がした。 「はじめまして・・自分はプロジェクトDのリーダー 高橋涼介と言います」 「オキだ 神奈川西部と静岡東部をメインで走ってる・・まさかリーダー直々に挨拶に来るなんて思ってもなかったヨ」 「ええ・・今回はちょっと特別な事情があって」 「特別?」 「実は・・来週のバト...
  • 拓海②
    これから先、少しの間、自分を取り巻く環境が変わるというコトに対する不安を、拓海自身が本能的に察知していたからかもしれない。 「わかったか?つまりこういう走り屋達の事なんだよ!ちょっとまってろ~!」 イツキは店内に駆け込み、一冊の雑誌を持ってきた。 車のチューニングや情報が載っているよくある雑誌である。 「たしかこの変に…あった!ほら!みろよ!」 イツキが指さしたページには見開きで大きく「首都高ランナー」の文字。 「へぇ…高速なんて走ってる人達いるんだな。」 「あいつら、金かけてキチンとセッティングだしたりしてるって言うからなぁ。それにくらべて俺らは…」 「なーにいってんすか!池谷センパイ!センパイの13もド派手にツインタービンにしましょうよ!ゆくゆくは俺のレビンも…くぅーー!」 「イツキ、お前の車じゃさすがに無理だな。」 「やべ、店長!?」 「全く、お前らしっかり仕事し…」 ガォ...
  • プロジェクトDとの間で⑦
    車体の底から火花を飛び散らせ、エボはFCを大きく突き放す。 ハイリスク、ハイリターンであるいろは坂の高低差を利用したジャンプ走法は正に公道だからこそ出来る走法と言えるだろう。 小さく、そして鋭く立ち回るエボⅢに対し豪快にリアを振り回しながら切り返しを続けるFC。 その差は麓が近づき勾配が緩くなった高速区間には前を行くエボの優勢は明らかに見えた。 ―――エボの車間距離はややあるが挽回が不可能というワケじゃあない・・残されたタイヤのマージンを使い切り針の穴のような 突破口を付く!――― 最後の左ヘアピンを抜けトンネルに入る二台。 いくら整備された観光道路と言えども、先行するクルマが堂々と真ん中を走れば左右から抜き返すラインは無い。 ―――見事だ涼介・・初めて見せる空中のラインにも動じず俺について来る その才能を公道だけにこだわるコトを惜しいと思う 感情と同時にジェラシーすら感じるぜ お前程の男...
  • サドンデスバトル④
    「お前のいつもの走(ヤ)り方でイイ・・FCにこだわる理由―――ソレを見せてくれ」 「わかりました 自分は今すぐにでも構いませんが?」 「オイオイ(笑)随分な自信じゃねーか」 「地元ではなくて相手の得意ステージで敢えて挑むのが自分達の・・いえ自分のルールです」 「わかった・・じゃ そーいうコトだイイな?オキ」 「俺はかまわねーヨ」 ピリリとした空気が展望台の片隅に走る。 群馬県と関東北部で繰り返してきた十分な下準備を行った上での場外バトルとは少し格好は違うが、本来であれば 公道バトルは挑んできた相手と噛みあいそうであれば受け、そうで無ければ譲る…そういった物だ。 「所長・・じゃあコースは?」 「ココはどっちを走っても登りと下りがあるからナ―――パワー差を考えて少しでも下りが多い方がイイと思うんだが・・ 兄さんはどうだい?」 「構いません」 「OK・・決まりだナ」 「そーそ・・後はポジションだ...
  • ブラックバード④
    「ここ・・は?」 知らない天井、知らない部屋、そしてベッドに横たわる自分。状況を掴めない啓介の思考は停止する。 「気がついたか?啓介」 声の主は兄、涼介だった。 「兄貴・・?お 俺は―――」 「まったく夜中に道路公団からお前が首都高で事故ったと聞いた時は何事かと思ったぜ」 「兄貴・・俺は」 「言うな啓介・・藤原から話は聞いた」 「・・・・すまねえ ところでFDは?」 「今は松本の工場に入ってるよ お前の方は奇跡的に打撲だけで済んだようだ」 沈黙が病室を包む。 窓から指す光が形作る影が二人の心境を物語っているようだ。 「失礼―――高橋啓介サンの身内の方ですか?」 ふいに声をかけられ二人は病室の入り口を振り向く。そこには白衣姿の島がいた。 思わず啓介は驚きの声を上げる。 「お お前は!あの時のポルシェの―――」 「今日出勤したら当直当番から群馬県の人が事故の急患で運ばれたと聞いてね・・もしやと...
  • ブラックバード⑤
    「先日横浜の懇談会で城島先生と会ったんだ・・その時に君達の話が出てネ ドライバーの運転技術とセンスは勿論のコト それよりも基本的な戦略についての評価をしていたヨ 立案と指揮はチームを率いる涼介君・・君らしいじゃないか」 啓介も涼介に視線を移す。 そう、これまでの経験を思い出せば、ドラテクをはじめセッティングは全て兄から譲り受けた物だった。 同時に遠征先でも様々な課題を出し、窮地を乗り越えて来れたのも兄のお陰である。 啓介はそんな兄を改めて誇りに思うと同時に、自分の未熟さをかみ締める。 「お褒めに預かり光栄です ですが島先生・・城島先生はまだ何か言っていませんでしたか?」 今まで黙って話を聞いていた涼介が初めて口を開いた。 「中々鋭いネ・・城島先生は君達を高く評価していたが同時に一つの欠点も指摘していたヨ それがさっき僕が言ったイメージなんだ・・ 君は”俯瞰”と”鳥瞰”という言葉を知っている...
  • サドンデスバトル
    「だからァ なーんで所長も来るんだヨ」 「ふぅ―――ヤマで吸うタバコはウマイわぁ」 「・・ったく 人の話を全然聞いてねぇ」 都会では見られない青い空、澄んだ空気。そして新緑の木々。 彼方には雪を被った霊峰富士を望む。 東海道五十三次で古くから難所として、また絶景として親しまれてきた箱根路の風景がそこにあった。 「だってヨ 遠征で群馬県からココまで来るって言うんだろ?熱くなってスピンされたらたまんねーし(笑)なぁオキ」 「だからしねーよ!林所長は嫌味ったらしいよナ―――」 「ハハッハ!」 オキ・・そう呼ばれた若い男性がぷいっとむくれる。 年の頃は20歳そこそこだろうか、赤く染めた髪の毛が一際目立つ。 一方笑い声を上げている林と呼ばれた男性・・オキに対し年齢は2倍程だろう。服装には無頓着のようで、何故かツナギ姿である。 「で―――なんだっけ?プロジェクト・・なんたらってのが来るんだろ?」 タバ...
  • 軸⑥
    夜の闇を更に黒くしたかのようなクルマが、黄色いヘッドライトでその闇を切り裂きながら疾走する。 交通量の多いC1を物ともせず、豪快に、そして繊細に走る島のドライビングに涼介は関心を抱いた。 「まるで車線変更がワープのようですね・・自分もポルシェとは峠(やま)で何回か走りましたがとてもこんな動きは」 「だろうね・・このポルシェの外装は全てドライカーボンなんだ 同時にフレームも切断しパイプ化されている」 「成る程・・軽さが武器になるのはステージが違っても一緒ですね」 「そういうコトになるかな」 ―――それにしても・・このポルシェは何なんだ?――― これまでに自分が見てきたチューンドとは明らかに速さと完成度の次元がズレている。 RRという駆動方式から生じる筈の一番のネガとなるアンダーステア、それすらネガと感じさせない。 それだけではない、このポルシェもあの日涼介が啓介と共に目にした悪魔のZに似てい...
  • 軸④
    「都心にもこんな静かな所があるんですね」 ジャズの流れる小さな喫茶店に涼介と島の姿があった。 時計の針は午後10時を回った所を指している。 「ココは僕がまだチームにいた頃の隠れ家だったんだヨ・・毎週土曜日にはよくたまったものさ」 コーヒーカップを手に持ちながら島が言う。 「君が会いたいと言っていたS30Zの乗り手・・彼は午前2時くらいに現れると言っていたヨ」 「まだ大分時間がありますね」 「首都高を回っていれば意外と早く時間は過ぎるモノさ・・それに君には聞きたいコトもあるし」 「と・・言いますと?」 「君はプロジェクトDというチームを率いている・・と言ったね?ソレはどんなチームなのかな?」 「はい 県外遠征を専門のチームです 下りと上りをそれぞれのドライバーが担当しその二人にサポートチームが着きます」 「凄いね・・まるで耐久レースを転戦するチームだ」 「ええ 各地のトップと言われる人を相手...
  • サドンデスバトル⑤
    緩やかなRの峠道をFCは疾走する。 ちらりと涼介はルームミラーで後ろを確認する、FDとの距離は目測でクルマ10台分といった具合だ。 「上手い・・ココの走り方をよく知っている」 ルームミラーの中でFDは右に左にと軽やかなステップを踏みながら下り勾配を駆け抜ける。 ―――先方の指定したコースは峠の中腹の駐車場から麓までの約8kmのセクションは下り上り下りの3つに 分けられる・・しかもココのコーナーのRは緩い物が多くブラインドは3つしかない それ以外の細かい部分の 加減速が後に響いてくるだろう・・それなら――― 涼介はアクセルの開度をほんの僅か絞る。 ―――タイヤへの負担を極力防ぎ後半の下りセクションの高速コーナーで勝負をかける FDは間違いなく上りで俺を抜く!――― 左右への切り替えし、コーナー進入時のブレーキング、立ち上がり。 今現在のFCが持っているキャパシティをフルに引き出す事ができれば...
  • プロジェクトDとの間で⑤
    「意外と早かったなァ 京一」 長髪を後ろで束ねた、がっしりとした体つきの男が須藤に話しかける。 彼の傍らにはボンネットに大きくmonsterと赤く書かれた白いエボⅣが停まっている。 須藤が率いるランエボのみで構成されているチームEmperorのサブリーダーである、岩城清二だ。 尤も、サブリーダーと言っても、その速さは愛車に拠る部分が大きく、運転技術が優れているというワケではない。 皮肉にもEmperorも須藤がレッドサンズに言ったような”一枚岩”のチームである。 「深夜に近い時間帯だからこんなモンだろう」 「で どうだったんだ?赤城は」 「話にならんな・・俺の新しくチューンされたエボの相手にもならん」 「へへっ なんたって高い金かけて駆動系を弄くったんだもんな」 「ああ デフギアの駆動配分比率を前4の後ろ6にしたのは正解だった・・流石はRGOだ」 「まさか京一が東京のショップまでエボⅢを持...
  • プロジェクトDとの間で⑥
    「カウント行くぞー!5・4・3・2―――」 一方通行の二車線道路にFCとエボが並ぶ。 REと4G63のレーシング音が入り混じり、深夜のいろは坂に響き渡る。 ゴクン・・・・両者共にギアを1速に入れる。 クラッチを切ってはいるが、ギアを入れたショックで僅かに車体は揺れる。 「1・Go!」 スタートを勤めた清二の手が振り下ろされる。 二台は矢のような勢いでストレートを駆け抜ける。 4駆のトラクションを生かし、エボのスタートダッシュが決まるかと思っていたEmperorを始め走り屋のギャラリーはエボに食らいつく加速を見せるFCに驚愕した。 それはギャラリーだけではなく、須藤も、そして涼介もである。 ―――俺のエボのスタートについて来るだとォ!?このFCはタダのFCじゃねえ!――― サイドバイサイドの状態で二台は第一コーナーに進入。 ―――まさかエボのスタートについて行けるとは・・・・林サン貴方の組ん...
  • プロジェクトDとの間で
    ―――綺麗に乗れる・・――― 先を行くZ、そしてGTRと一本の線で繋がるように涼介はポルシェを走らせる。 戦闘モードではないクルージング(巡航)、ここまで息の合う走りを出来るのは涼介の経験上、啓介以外では有り得なかった。 心地よい走りの中の僅かに残る冴えた部分を働かせれば、Zの動きにも多少の欠点はある。 前後の大きなピッチングや収まりの悪いロール・・足をいくら変えても70年代の古い基本設計は誤魔化せない。 だが・・そんなコトは全てが霞んで消えていく。 隠せない珠玉のL28改 その存在感――― 導かれる形で江戸橋JCTから9号、そして湾岸へ。 Zはあの日と同じように、闇の彼方へ走り去って行くのだった。 気がつくと時計の針は3時近くになっていた。 ゴールデンタイムと呼ばれる時間帯だが僅かに空が明るい。 「今日はここまでですね」 涼介は谷町JCTにポルシェを入れ、S大学病院に向かわせる。 「どう...

  • FDに先導される形でFCが後を追う。 だが、その様子はつい先程までの戦闘モードとは異なり、どちらかと言うとクルージング(巡航)と言えるものだった。 箱根山を下り、御殿場市へ入る。 東名の御殿場ICを越えて少し走った所にあるGS近くでFDが再度ハザードを炊き停車、FCもそれに続く。 ―――ふぅ・・――― 涼介は小さく息をつくと、FCから降りる。続いてオキと林もFDから降りてくる。 「どうしてペースダウンをしたんです?故障ですか?」 芦ノ湖スカイラインでのバトルの最中、これからという所でのFDの突然のペースダウン。 率直に感じた疑問をオキにぶつける。 「ん・・まァそんなトコ」 「そーなのヨ コイツが突然もうこれ以上無理―――!なんて言い出すから(笑)」 「言ってねえ!」 「ハハッハ」 スカイラインの展望台では涼介を試すような厳しい印象だった林が心なしか朗らかに見える。 「ま・・兄さんの腕って言...
  • 悪魔のZ
    AM3 00首都高湾岸線東行き クルマがまばらな3車線道路を白いRX-7が走っていた。 テールサイドに貼られた赤い”Redsuns”のステッカーが白いボディに映える。 ”Redsuns”正式名称は赤城レッドサンズと言う。その名が示す通り、群馬県を本拠地とするガチンコの走り屋チームである。FCのハンドルを握る人物・・・高橋涼介はその人望と技術を買われ、赤城レッドサンズを率い、現在は選りすぐりを集めた県外遠征専門チーム”プロジェクトD”を率いている。 「俺たち赤城レットサンズも有名になったよなあ。峠の走り屋じゃ知らねえヤツはいねえ」 「ああ。だがな、油断はするなよ啓介。神奈川への遠征はこれからが正念場だ」 「わかってるよ兄貴」 助手席に座る若い男が口を開く。 短く刈り上げた髪の毛を金髪に染め上げ、整髪量で逆立てているという外見から彼・・・高橋啓介の性格が窺える。 「それにしても何だって兄貴が...
  • 悪魔のZ②
    数日後の群馬県、走り屋の間ではある噂が流れていた。 それは白い彗星と呼ばれた高橋涼介が首都高で負けた、という物である。 「おい、あの高橋涼介が首都高で負けたらしいぜ」 「そんなワケねーだろ!何馬力だろうが涼介さんなら関係ねーよ!」 「そうは言うけど峠と首都高の車じゃパワー差がまったく違うっての」 一方、悪魔のZによって赤城の白い彗星から一気に負け犬の烙印を押された涼介はずっと考え込んでいた。しかしそれは周囲が騒ぎ立てる敗北という感覚とは少々異なる物だった。 「あのZ・・・まるで俺のFCなんか眼中にないかのように走り去っていった・・・何処までも突き抜けるようなあの走り・・・俺がこれまで見てきた走り屋達とは何かが違う。もし・・あのZの前を走る事が出来たら―――」 涼介は研究室の窓から外を見上げた。 彼の目に映る上毛三山は何も言わずにただ、彼を見下ろすのだった。   同時刻、秋名山。 頂上か...
  • 悪魔のZ③
    拓海から彼の父、文太が首都高を走る悪魔と呼ばれたZの事を知っていると聞いた翌日、涼介と啓介は藤原豆腐店の前に居た。 「ごめんください」 涼介は引き戸を開ける。 「おう、あんたか・・」 ぶっきらぼうな様子で店主と思しき男性が涼介を迎える。 彼の名は藤原文太。 その名が示す通り、藤原拓海の父親である。 常に眠そうな半開きの目と煙草の匂いがトレードマークの無愛想な人物ではあるが、かつて北関東を走っていた者はその名を知らない者はいない伝説の走り屋という過去を持つ。 「拓海なら今配達で留守だぜ、で・・豆腐でも買いに来たのか?」 「・・折角ですから厚揚げ下さい。実は一つ聞きたいんです」 「・・何だ?」 「・・悪魔のZをご存知ですか?」 「・・知ってるよ。あんた悪魔のZに負けたんだってな。拓海から聞いたよ」 「お願いします藤原さん!!悪魔のZについて教えて下さい!!」 「ああ。あのZはただのZじゃねえ。...
  • 悪魔のZ④
    朝の賑わいを見せる都内の住宅地。 コインパーキングにFCを停め、涼介と啓介は歩を進める。 「兄貴・・本当にこんな所に地獄のチューナーがいると思うか?」 「ケンタ経由の情報ではこの辺りにそれらしき人物がいるって話だ。それに藤原の親父サンも渋川の豆腐屋だろう?あながち有り得ない話じゃあないぜ」 そんな二人の脇を少女が駆け抜ける。 「北見のオッチャン!チャリ直ってる!?」 「!?」 少女の北見という言葉を確かに耳にした二人は少女の声がした方向に目を向けた。 そこには何処にでもいそうな風体の中年の男性が立っていた・・だが普通の男性と大きく異なるのは、彼の顔に大きな傷跡がある事だ。 「早く出して出して!遅れる」 「ハイハイ(笑)ところでオメーそんな短いスカートじゃパンツ見えるぞ」 「見えないんだナ コレが!じゃーね!」 二人の脇を駆け抜けた少女は、北見と呼ばれた男から自転車を受け取り走り去る。 男の...
  • 拓海
    ―群馬県― 「えっ?啓介さんが事故?」 昼休み、拓海の携帯に史浩から着信があった。 「ああ、昨日の夜中首都高でな。涼介から連絡があってさ。どうやら現地のルーレット族とやりあったみたいでさ…はぁ、最近は啓介も落ち着いてきてると思ってたんだけどな。」 「啓介さん、ケガはないんですか?」 「本人は幸い軽症みたいだけど、FDの方は大分酷い感じだよ。ロールケージがあってもアレだからな…啓介のやつ、よっぽどの速度だったんだろうな。とりあえず今は松本の工場にあるんだわ。素人の俺が見ても、フレーム修正はしなくちゃならないだろうなぁ。」 「そうですか…。」 「そういうわけだから少しの間、遠征は休止だ。スマン迷惑掛けるな。」 「いえ、大丈夫です。」 電話を終え、拓海の胸には啓介の身を案じながらも、遠征続きで疲れていたのか少しの間休めるだろうという安堵感があった。 「首都高…か――――。」 「おーい、藤原...
  • アキオ②
    ―秋名湖畔― ドゥ ドゥ ドゥ アキオはZのアイドル音に異常がない事を確認した後、湖畔にZを停めた。 「なーにィ、Zォ… まさかオレをココに連れてきたかったワケェ?」 Zは何も答えない。 ステアリング越しに湖を見ると、家族連れやカップルがボートを漕いでいる。 「たまにはレイナを連れてデートにでも来いってか(笑)」 アキオはふとZ31に乗っていた頃の自分を思い出す。 確かにあの頃の自分なら、レイナを連れてデートでもしていただろう。 だが、今は違う。 この悪魔と呼ばれるZを手に入れてからは… アキオはZを走らせるコトによって知り合った人々を思い浮かべる。 北見サン、高木サン、山本サン、富永サン、レイナ、そして、 ブラックバード… コイツがいなければブラックバードと走るコトもなかっただろう… アキオの物憂げな瞳に力強さが増し始める。 しばらくの沈黙の後、物思いから覚めたようにキーを捻る。 カチ ...
  • ブラックバード
    悪魔のZ、そして白いGTRに敗北してからと言うものの、涼介の様子が変わった事を啓介は感じていた。 啓介にとっての涼介は尊敬できる兄の域を超え、信仰の領域に等しい物なのだ。 その揺れる兄の姿は同時に今まで築いてきた啓介自身が崩れ去るのと同じである。 「あの日の湾岸線での出来事から兄貴は変わっちまった・・!神奈川エリアの遠征中だってのにコレじゃあ先が思いやられるぜ!」 夜も深けてきたコンビニの駐車場で苛立たしそうな様子の啓介と、対照的に落ち着いた拓海の姿があった。 「仕方ないですよ・・俺だって前に秋名で親父のインプに負けた時はショックでしかたから」 「でもな藤原 俺は首都高の連中なんか認めないぜ!あんなのクルマのパワー差だけに決まってる・・パワー だけで勝ち負けが決まる程クルマの世界は甘くない!俺はそれを証明してやる・・兄貴の為にもな」 「啓介サン・・気持ちはわかりますがあまり藪をつついてヘン...
  • プロジェクトDとの間で②
    枯れ木と岩場がむき出しになった荒涼とした山の頂にある駐車場。 赤城を根城とする走り屋の溜まり場は騒然としていた。 「おい・・なんで今更エンペラーが来るんだよ?」 「まさか群馬エリア完全制覇にまだこだわってるんじゃあ?」 「だったらどーするんだよ!涼介さんと啓介さんがいねえんじゃどうしようもねーよ!」 駐車場の一角に黒いエボⅢが入ってくる。 独特の形状のリアウィングに白地のEmperorの文字がコントラストを織り成し生える。 やがて運転席の戸が開きそこからは、頭にタオルを巻いたミリタリーファッションの男が現れた。 「やっぱり須藤京一だ」 走り屋の誰かが呟いた。 須藤京一・・レーシングテクニックを追求し、公道での速さを求める彼は以前に群馬県のあらゆる峠を荒らし回り無敵と言われた秋名のハチロクこと藤原拓海を打ち破った過去を持つ。 その速さは高橋涼介に勝るとも劣らない、一級の峠職人だ。 「高橋涼介...
  • 悪魔のZ⑤
    「あ・・取り込み中だったかナ たはは」 気まずい空気が流れているとは露知らず、北見サイクルの戸を開けた女―――秋川レイナは苦笑いを浮かべた。 「ワリーけど忙しいんだ また後でな・・オウ どーしたヨ ねーちゃん」 「・・・・くそったれ!」 悪態をつき啓介は店を出る。 「北見サン・・・・俺は諦めませんよ」 強い意志を感じさせる目でそう呟き涼介も店を後にした。 「なーに あの人達?」 「冷やかしだよ冷やかし・・で 何の用だ?」 「いやー今日オフなんだけどアキオ君が一日バイトでさァ 暇なオヤジとクルマ談義でもしよーと思ってェ」 「オイオイ(笑)」 鋭い目つきで啓介は店内の北見とレイナを睨み付ける。 「あの親父・・俺達をバカにしてやがるぜ!それになんだこの地味なGTRは・・乗ってるのはイイ女だけどさ」 「啓介・・物事を主観的に判断するのはお前の悪い癖だ このGTRのドコが地味なんだ?」 「へ・・・・...
  • サドンデスバトル③
    クパァ ―――なんだ・・・・このRE――― 林が持ち上げたFDのボンネットの中を見た涼介は目を見張った。 鈍く輝くローター、うねる様に這うパイピング。 これまで自分達が見てきたクルマとは明らかに違う…まるでクルマが生きているような錯覚を覚えるようだ。 「タービンはT78 勿論ポート削りまくりヨ」 「コレでどれくらい出てるんですか?」 「んー正確じゃないケド500馬力・・ってトコかナ」 「500・・・・超ド級の峠マシンですね」 「いやー実は元は峠仕様じゃナイのヨ・・ちょっと前に首都高に遠征したコトがあってね その時の仕様を煮詰めたワケ」 「首都・・高?林サンその話聞かせてもらえませんか?」 「なんか急に食いついてきたね・・お兄さんワケありか?」 「実は・・・・先程言った事故を起こしたチームのメンバーは首都高でとあるクルマを追っていたんです」 涼介は事の顛末を語り始めた。 チームの事、啓介の事...
  • 軸③
    「ソッチから頼むなんて意外だね・・珍しく熱いんじゃないのォ?」 「・・・・」 「OK―――こんなモンかな・・ありがとネ そーだな・・じゃあ2時くらいかな それくらいには上がってると思うヨ」 ―――珍しく熱い・・か 言われてみれば今まで他人に肩入れしたコトはあまり無かったな――― 少年のいるガレージを後にした島は、自身の中にある不思議な思いに気付くのだった。 自身が気付かないまでも、言われる事によって初めて知る事もある。 だがそれは心が響いている領域にいる者から言われなければ、ただの戯言で終わるだろう。 島は改めてZを操る少年と自分が非常に近い存在である事を感じ、またこれから自分達に立ちふさがるであろう高橋涼介にも同じ感覚…それは将来彼が医師として島と同じ舞台に立つだけではない、何かを感じるのだった。 数時間後、S大付属病院――― 「すみません・・形成の島先生をお願いします」 院内の内線受付...
  • プロジェクトDとの間で④
    レッドサンズのホームコースの終着点に黒いエボⅢが現れてから大分たった頃、赤いS14が降りてくる。 明らかに戦意を喪失した様子で、バトルやタイムアタックの走りと言うよりかは普通に流している…と言った方が相応しい。 S14は一瞬躊躇したようだが、エボⅢと少し離れる形で停車する。 「いくらレッドサンズがハイレベルを語っていても所詮は高橋兄弟の一枚岩だな・・何が走り屋だ笑わせる」 「てめぇ・・・・啓介さんと涼介さんがいないからっていい気になるなよ!プロジェクトDはお前なんか相手にしちゃいねえ」 「地元も満足に走れないヤツが遠征専門チームを騙るなんてお笑い種だな・・涼介に伝えておけ 今のお前は大事な物を見落としてるとな」 須藤はケンタに背を向けエボに向かう。 ふと思い出したように、近くにいるレッドサンズのメンバーに声をかける。 「おい お前はレッドサンズのメンバーか?」 「は・・・・はい!」 須藤の...
  • プロジェクトDとの間で③
    耳を劈く音が夜の赤城に木霊し、赤いS14がスキール音と白煙を上げてダウンヒルスタート地点から走り出す。 それから5秒遅れる形で黒いエボⅢがS14を追う形で走り出す。 ハンディキャップ方式…エンペラーが秋名といろは坂で拓海相手に用いた先行後追い形式である。 双方のクルマにパワー差がある場合に用い、先行のクルマが任意のタイミングでスタートを切り、後追いのクルマが 一定の間隔を開けてスタートする対戦方式だ。 「おい!早く涼介さんにつなげろよ!」 「だあああじれってぇ!手が震えて」 「貸せ」 「あ・・・・史浩さん」 駐車場にたむろしている走り屋から一人の男性が携帯を取り上げる。 史浩と呼ばれた男性は、落ち着いた様子で携帯を操作し涼介を呼び出す。 普段はプロジェクトDとして遠征先の現場を仕切るだけあって、ここ一番という時の度胸の据わりはあるようだ。 プルルルル・・・・プルルルル・・ 「涼介か?俺だ・...
  • 拓海④
    「ちぇー、なんでだよ。」 「俺の車だろ、アレは。どこいくかしらねーけど自分の乗ってけ。」 文太はタバコ大きく吸い込むと、一気に吐き出した。 「お前、今週は無いのか?なんとかって遠征チームは」 「もう一台が高速で事故ったから今週はなし。」 「高速…ね。そうか、お前らの話はいつも勝ちばっかりでおもしろくないんだよなぁ。」 「なんだよ、ソレ。こっちだっていっぱいいっぱいやってんだぜ。筑波の時なんか事実上負けだよ。」 「城島だっけか?あいつまだ峠はしってんのか…。」 「なんだよーオヤジ、城島サンしってんのかよー。」 「ま、昔な。あいつは元々峠屋じゃなかったんだぞ。」 「え?」 「引き際がわかんなくなったから、峠に来た――。ってしきりに言ってたな。」 「どーいう意味だよ。」 「さぁな。やだねー、欲深いやつは。ま、せいぜいがんばれよ。」―週末― 「あー楽しかった!たまにはいいよね、こういうの。」 「う...
  • ブラックバード②
    「OK―――こんなモンだろう」 砂埃と油で汚れた手を拭きながら北見は島に言った。 「希望通り後ろの車高を5mm程上げてみた・・少しは荷重が前に乗ってターンインし易くなるとは思うが」 「ありがとうございます北見サン で・・どうでしょう?試運転がてら久しぶりにC1辺り乗りませんか?」 「そうだナ・・俺も今日はそんな気分だ ガレージを閉めるから待ってろ」 キュルル…ッ!バラバラバラ――― 空冷Eg独特の音を響かせ、島と北見を乗せた黒いポルシェ911は走り出した。 同時刻、やや交通量の多いC1を黄色いFD3Sが走っていた。 赤城レッドサンズ、そしてプロジェクトDのエースと言われた高橋啓介である。 「勝手に首都高に来たって知ったら―――兄貴怒るだろうな・・」 日頃は天性のカンで火の玉のような走りをする男と言われる彼だが、プライドを砕かれた兄、涼介の影響と、そして初めて走る首都高のリズムを掴めずに精彩...
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    頭文字D vs 湾岸ミッドナイト・・・・ 2ちゃんねる車板にヒッソリ立てられているスレである。 ヤングマガジンにて連載される同一テーマの作品の優劣を競う、一種のネタスレとして機能していたスレッドがとある投稿から変わり始める。 焼けたオイルの匂い 響き渡るスキール音 ぶつかり合う投稿職人同士のプライド――― 現行スレッド 頭文字D vs 湾岸ミッドナイトpart3 http //hobby10.2ch.net/test/read.cgi/car/1197879057/l50 一番最初に投稿された職人とは違う複数の人物がそれぞれの世界観で話を進めている為に物語の展開と台詞回しには少々違和感を覚えるかもしれませんが、一種の二次創作物として楽しんでいただければ幸いです。
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  • ブラックバード③
    「あのポルシェ・・アクセル緩めてやがる 俺を待ってるのか?だったらその面拝んでやる!」 汐留トンネル内で啓介はFDをポルシェの横に並べる。 煌々と灯る明かりのお陰で、視線を横にすれば併走するドライバーの顔を見る事は容易い。それはポルシェの側も同様である。 「どーです?北見サン・・昼間の彼ですか?」 「ああ まったくどーいう了見なのかねぇ(笑)」 くくく・・・・と小さな含み笑いを北見が零す。 「だがなB・B 走る以上俺のしがらみはお前には関係ナイ・・いつだってお前自身の為に踏みぬけ」 「わかりました」 ガリョオォォォーン! 轟音を響かせポルシェが地を蹴る。 そのエキゾーストノートはFDの中にも振動として飛び込んできた。 「あのポルシェのナビシートにいたのは北見・・?ココで会ったが百年目!逃がさねえ!」 ポルシェのテールを見え隠れしながらFDは銀座エリアを抜けていく。 「ほほーあのFD・・根性...
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