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一番新しい【カジコ日記】へ戻る


はじめに

今日は私にとっていろいろびっくりする事があったので、忘れないように日記をつけようと思いました。
ちなみに私はカジコといいます。ダンジョンに住んでます。おとうさんは遺跡鍛冶師です。
日記なんてはじめてつけるからどう書けばいいのかむつかしい。
とりあえず、覚えてるところから書いていこうと思います。
でも今日は眠いので、あしたから。
あしたのことは、あしたがんばる。おやすみなさい。


1

『コロセコロセカジヤヲコロセ』
夜中窓から玄関を見てみると人間やら動物やら魔物やらがとても怒っていました。
あくまだあくまのむれだ。
『コロセコロセカジヤヲコロセ』
子供、男の人、女の人、ドラゴン、大きい鉄のかたまり、魚を持った人。
なに、この、えーとなんだろう?
まさかダンジョンに引っ越しても悪いひとたちに追いかけられるなんて思わなかった。
しんぞうがバクバクする。またおとうさんが大ケガさせられるんじゃないかと気持ち悪くなってくる。
「…おじゃましまーす!」
あくまが家に入ってきた。


2

結果から書くとおとうさんはボコボコにされませんでした。
おとうさんは話してた妖精にありえない料金をふっかけてたけどぶちぶち言いながら何もしないで帰ってくれました。
あくまのむれはとても怒っていたけど、話せばわかる相手なのかもしれないです。
それにしても一つ、腹がたつことがありました。
「おとうさん、何でいつも人を怒らせるようなことばっかり言うの?」
「人は怒った時に本性が見えるもんだ。
俺様の装備を使うんならすぐぶちギレルような奴には渡せんな」
「でもさ…いつか大変なことになっちゃったらどうするの?」
「知らんのかカジコ…天が俺ほどの天才を殺すわけがない」
もう嫌だこのバカ親。


3

おとうさんはあくまのむれと約束をしました。
ゴーレムという魔物を狩ってきたら鍛冶代を安くするそうです。
なぜか冒険者が嫌いなおとうさんはいつもこうやって無茶苦茶言います。恥ずかしいです。
私は怒り狂ったあくまのむれ達がそんな事やるわけないと思ったのですが、
びっくりする事にすごくマジメに頑張って鬼のような速さであっという間にゴーレムを倒して戻ってきました。
私は感心しました。
おとうさんは冒険者はさいあくだーやくそくもまもらねーと良く言うのですが、
なんだかおとうさんのほうが最悪なカンジです。
「それじゃあ約束通り、安くしてくれるんですね!」
妖精が興奮気味に言います。私は物カゲからおめでとうあくま、と心の中で拍手しました。
「あーいいぞ、金貨30枚のところを特別に29枚にしてやろう」
私は恥ずかしさで自分が赤くなるのを感じました。
ああ嫌だ、もう見てられない。
私はカッとなって物カゲから飛び出した。


4

そこから先の事はよく覚えていません。無茶ばかりするゴウマンなおとうさんと口喧嘩してしまいました。
むしゃくしゃしてやった。でも反省はしています。ごめんなさい。
私は家を飛び出しました。泉を越えて私は全力疾走しました。おとうさんを困らせてやろうという気持ちも少しありました。
しばらくしたら戻るつもりだったのです、私は疲れたから水でも飲もうかなと思いました。
水に反射して草むらにとかげみたいな人がいるのが見えましたとかげの人です。二足歩行です。
私を見て何やらひそひそ話すとこちらにダダっと走ってきました。
うぎゃーと心の中で思いましたが驚いて声も出ません。私はとっさに走りました。
どうしようつかまったら終りだ。
ああ、泉が遠ざかっていく。おとうさんが泉からは絶対に離れるなって言ったのに。


5

草むらを走りぬけ、切りカブを飛びこえ私は逃げました。
しんぞうがバクバク言って爆発しそうです。
もう限界だと思って立ち止まり後ろを振り返ります。どうやらとかげの人から逃げられたようです。
助かった、私はほっとして座り込みました。でも、自分が今どこにいるのかさっぱり分かりません。
その時です、声が聞こえました。
「行こうぜ皆!」
「おい、あそこに何か落ちてるぞ!」
「カジコさーーん!」
もしかして助けが?
「カジコおおおおおおおおおおおおおおおお!!
どこだああああああああああああああああ!!」
「ここに素敵なお兄さんがいるよおおおお!」
…えーと、助けがきたのかもしれません。私はホッとして声がしたほうに走ろうとしました。

アイツヲヤロウ、コロソウ、ヒトジチニトレバイイ。
クビヲハネテカジヤヘノミセシメニシヨウ。
ハヤクデテコナイトヤッチャウヨ。

サガセ、サガセ、サガセ。

しんぞうがキュっとちぢんだ気がしました。
駄目だ。戻れば殺される。


6

怖くて怖くて走って走って私は声から逃げようとしました。
でも、声はどこまでも追いかけてくるのです。
私の手がかりをおってきてるんだ。嫌だ怖い助けて。

キットアイツガワナニハメヨウトシテイルンダ。
アイツノセイダ。
カジヤノマエデコロセ。

ごめんなさいごめんなさい。逃げても逃げても声は追ってきます。
ごめんなさいごめんなさい。何をしたのか分かりません。でも許してください。
ごめんなさいごめんなさい。おとうさんも私も殺さないでください。

走りすぎて足がもつれて私は転びました。痛い。でも死にたくない。ごめんなさい。
ふと、目の前に大きな黒い影があるのに気づきました。
金ピカに光るゴーレムが、私の目の前にいました。


7

あっというまに大きい手につかまれて、ぎゅうぎゅうしめつけられました。
「痛いよー!助けてー!」
さけんでもどうしようもないのは分かってます。でも痛くて怖くてさけびました。
何で私がこんなツライ目にあわなきゃいけないんだろう。
怖い人達に追いかけられて悪モノにされるなんて、私は何かとりかえしのつかない事をしてしまったのだろうか。
ごめんなさいごめんなさい。
ぎゅうっと更にしめられます。ああもう駄目だ。
私が死んだらそれでおとうさんを許してあげてください。口は悪いけど、たぶんそんなに、悪人じゃないです。
金ピカに光るゴーレムの手でどんどんしめられていきます。
おとうさんお元気でさようなら。

きらきら、ぴかり。

ちゃりんちゃりん。

なんだか眠くなった私の目にゴーレムではない、きらきらした物が目にうつりました。

きらきら、ぴかり。

ちゃりんちゃりん。

なんだろう、なんだろう。
ちゃりんちゃりんという音と一緒に、私ははっきりとした男の人の声を聞きました。
「いざ助けに参る!犬の小判を投げるぞ!」
それはあくまのむれで見かけた。ちょんまげを生やしたあくまでした。


8

…助ける?私を?こんなに、嫌われているのに?

きらきら、ぴかり。
ちゃりんちゃりん。

「コイン投げるッス!」宙返りしてる人も。
「おれのためにあるようなものだなもちろんなげる」犬?も。
「おやじを投げるって選択肢は無いのかい?まあいいさねよし!投げるよ!」お姉さんも。
「投げるか」お兄さんも。

きらりとひかるコインにつられ。
ゴーレムは私をぽいっと放り投げるとコインを食べ始めました。
私は目をぱちくりしました。何だか夢の中の出来事のようです。
あくまがすごく高い金貨を投げたことも、私が生きている事も夢にしか思えません。
気づけば目の前におとうさんがいました。
「おとーさん!」
「…このバカ娘がっ!!!つまらん事で家出しやがって!………あいつら………」
なんだか少し、泣いているように見えました。たぶん気のせいです。


9

そこから先はおとぎばなしの世界のようでした。
光が飛び、炎が舞い、人が雷のように動き、刃物が飛び。
ゴーレムが光に吹っ飛ばされるたび、私は思いました。
ああ、この輝きはあくまじゃない。あくまなんかには出せない。
これが『冒険者』という人達なんだ。
金ぴかゴーレムだったものはすぐに光を失い土のかたまりになってしまいました。
私は恥ずかしく思いました。
冒険者さん達のことをよく知りもしないであくまだなんて思ったりして。
「ありがとう冒険者さん達!…ごめんね…迷ってこんな所まで来ちゃって…それにキラキラ光るコインまで…」
…冒険者さん達は金貨をなくしたことをあんまり気にしていないようでした。
それになんだかみんなすごい戦いをした後だとは思えないなごやかな様子でした。びっくりです。

ふとおとうさんのほうを見ると土下座していました。
妖精さんが固まっています。
ああ、やっぱり夢だ。


その後

家に帰るとおとうさんは約束通り妖精の国に行くから準備しろと言いました。
急な話ですがそんなにイヤな感じはしません。
おとうさんも何だかちょっとワクワクしてる感じでした。
あれからというもの冒険者の悪口を言うたび一言つけくわえられるようになりました。
『冒険者はさいあくだーやくそくもまもらねー…まぁでも、あいつらはかなりマシな奴らだがな』
ひねくれものです。

「準備が出来たら言ってくださいね!私がばっちりご案内しますからね!」
妖精さんがパタパタと飛びながら大きな声で言いました。
なんだかワクワクしてきました。冒険者さん達がいる所ならきっとステキなところに違いありません。
これからもきっとおとぎ話のような事が起きるんじゃないかと胸がどきどきします。
そこでハっとして私は少し考えました。そして買ってもらったけど使ってないホコリをかぶった本とペンを最後に詰めました。
この気持ちを忘れないように、書き残すのも悪くない。
キラキラ光るコインを思い出し、私は嬉しくなりました。

【私が日記をつけた理由】終

最終更新:2010年12月03日 13:15