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ウイルス性慢性肝炎(08 02 05)


必要な問診

家族歴
ワクチン接種歴(HBVなど)
海外渡航歴
性交渉
輸血歴・手術歴などの血液感染機会

必要な臨床検査

AST・ALT……肝硬変→AST優位・慢性肝炎→ALT優位
(ZTT:IgGと相関), LDH, ALP, (LAP:胆道系特異度高), γ-GT, ChE
T-Bil・D-Bil……閉塞性疾患→T-Bil優位・肝硬変, 劇症肝炎→D-Bil優位
T-chol:PBCで高値, TP, Alb
IgG:AIHで高値, IgM:CH・PBCで高値になりうる
血算:Plt(F0:20万, F1:17万以下, F2:15万以下, F3:13万以下, F4:10万以下)
PT
ヒアルロン酸, IV型コラーゲン
AFP, PIVKA-II

B型肝炎のウイルスマーカー

HBsAg……現在肝炎を起こしているかどうかの指標
HBsAb……B型肝炎への免疫をもっているかどうか(既往・ワクチン接種後の可能性あり)
IgM型HBcAb……急性B型肝炎とHBVキャリアの急性増悪の鑑別
HBeAg……seroconversion前なら(+)、後なら(-)
HBV DNA(PCR)……量の評価(進行の評価に関しても重要)
遺伝子型(genotype)

C型肝炎のウイルスマーカー

HCVAb(第3世代)……スクリーニング・既感染を示すこともある
HCVコア抗原・HCV RNA(定性, RT-PCRオリジナル, RT-PCRハイレンジ)
遺伝子型(genotype)

肝線維化評価

肝生検……新犬山分類(F0~F4), HAIスコア(6段階), 重篤合併症0.6~1.0%
 新犬山分類
  F0: 線維化なし
  F1: 門脈域の線維性拡大
  F2: 線維性架橋形成
  F3: 小葉のひずみを伴う線維性架橋形成
  F4: 肝硬変
  A0: 壊死・炎症所見なし
  A1: 軽度
  A2: 中等度
  A3: 高度
III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III NP)
IV型コラーゲン, IV型コラーゲン7S
ヒアルロン酸……Cut off 50ng/ml 感度75% 特異度80%
APRI……(AST/AST正常上限値)/PlT(万)x10: Cut off 1.5 感度41% 特異度95%
エラストグラフィ(Fibroscan(R))……エコーの一種
※血液検査による評価はB型肝炎に適用するのは難しい場合もある。

肝癌スクリーニング

B型肝炎の発癌率

無症候性キャリア: 0.1%/年
慢性肝炎: 0.5~1%/年
肝硬変: 2.5~10%/年(5%くらい) 発癌平均55歳

C型肝炎の発癌率

F0-1: 0~0.5%/年(線維化の進行は0.1~0.13unit/年)
F2: 1~2%/年
F3: 4~5%/年
F4: 6~7%/年(HCCの既往があれば15%/年以上) 発癌平均65歳

 慢性肝疾患に対する定期的なスクリーニングが生命予後を改善させるという明らかなエビデンスは得られていない。しかしスクリーニングを受けることで根治的治療機会を増やすことはできる。
 肝硬変患者には3~4ヶ月に1度の画像診断および腫瘍マーカー測定が望ましい。半年~1年に一度はdynamicCT(動脈相(早期動脈相・後期動脈相)・門脈相・平衡相)かdynamicMRIを併用する。2cm以下の病変に関しては再生結節などと鑑別が困難であるため、エコーで観察できるものに関してはフォローアップを続ける。

AFP……200ng/ml以上あるいは持続的な上昇
PIVKA-II……AFPと交互に測定する(保険点数上)
画像診断と腫瘍マーカーを併用するのが望ましい。

肝庇護療法

 C型慢性肝炎は持続する炎症と肝細胞の再生が発癌の大きな要因であり、炎症を抑制することは予後の改善につながると思われる。しかし前向き研究による明白なエビデンスはまだほとんど得られていない。
 炎症抑制の意味では、ALTをF1で正常値の1.5倍以下、F2~3では正常値以下にすることを目標にする。ただし、ウルソには炎症抑制以外の発癌抑制効果がある可能性も示唆されている。

ウルソ(UDCA)

 600mg/day 服用とする。下痢を起こすことがあるが重篤な合併症は少ない。
 retrospective study 100例で、肝癌発現率17.9%vs39.1%/5年で有効。

強力ネオミノファーゲンC(SNMC)

 40~100mlを週3~7回投与する。低K血症と高血圧が副作用として知られ、投与頻度が上がると起こしやすくなることに注意する。
 cohort study 346例で、発癌率13.3%vs26.0%/5年で有効。

インターフェロン少量長期療法

 IFNα3~6MUを週2~3回投与する。ALT正常化を目標とする。
 発癌率1.9%vs6.4%/5年, 1.9%vs26.8%/10年で有効。
 現在SNMC+少量長期Peg-IFN療法のRCTが進行中。

除鉄療法

 C-CHに対する瀉血療法は保険適応あり。200~400mlの瀉血をHb11.0g/dl以下または血清フェリチン10ng/ml以下になるまで繰り返す。鉄の制限が必要。
 C型慢性肝炎34例を6年間のフォローで発癌なしという報告あり。

 その他、小柴胡湯、ロサルタン、ビタミンEなど。

B型肝炎

 1964年に発見されたDNAウイルス。世界的には発展途上国に多く3億7千万人いる、日本には140万人いる。日本では原則的に母児感染であり、1986年よりB型肝炎ウイルス陽性の母親から産まれる新生児にワクチン投与が行われるようになり若年者の感染者は激減している。日本では成人感染例はほとんど性交渉・まれに医療関連であり、原則として慢性化しない。ただし10%ほどに遺伝子型A(Ae)の急性B型肝炎があり、この遺伝子型は慢性化する可能性がある。HDVとの重複感染で劇症化しやすい。HDVは日本では五島列島および宮古島に集積地がある。

B型肝炎の遺伝子型

 B型肝炎の遺伝子型はA~Hの8種類。日本のB型肝炎は遺伝子型Cが70%・Bが15%・Aが5~10%であり、Cの方が慢性肝炎が長期化し肝硬変や肝癌になりやすい。
 台湾の遺伝子型Bは日本のものより慢性肝炎になりやすい。アフリカのB型肝炎は遺伝子型A(Aa)が多く、これは幼小児期に水平感染しうる。ヨーロッパに多い遺伝子型A(Ae)は成人感染であっても慢性化しうる。

B型肝炎のseroconversion

 若年者のHBVはHBV野生株で、マーカーはHBsAg(+)・HBeAg(+)である。20~40歳のときに肝炎を発症し90%のキャリアは肝炎が沈静化する。このときHBV野生株は排除され、増殖力の弱いHBV変異株(pre-C領域変異)が出現する(seroconversion)。pre-C領域変異株はHBeAgを作れないため、HBeAg(-)・HBeAb(+)となる。
 pre-C領域変異株が増殖するB型肝炎が存在する。またHBsAb(+)となっても免疫抑制によってB型肝炎が再燃する症例が存在する。つまり、seroconversionによって、HBsAg(+)・HBsAb(-), HBeAg(+)・HBeAb(-)が、HBsAg(-)・HBsAb(+), HBeAg(-)・HBeAb(+)となってもウイルスは少量存在しているため、フォローアップ・医療事故・免疫抑制治療などに関してはそのことに留意する必要がある。

C型肝炎

 1989年に発見されたRNAウイルス。世界には1億3千万人、日本には200万人いる。地域差が大きく、特に感染者の多い集落がある。2002年4月から40歳以降の節目検診においてHCV抗体検査を行っているが受診者は30%未満でHCV(+)となっても医療機関を受診しない人も多い。感染はほとんど血液感染であり、性交渉による感染はまれ(夫婦の間でも0.23%/年)。感染者の70%が持続感染する。若年者では感染者は減少しており、HCV(+)の患者は高齢化している。

B型肝炎のウイルス治療

 HBV DNA 10^5~10^6copy/ml以上、ALT異常値が治療対象。
 若年期のウイルスキャリアはHBeAg(+), 高ウイルス量でもAST・ALT正常なら治療の必要はない。成人期以降ならAST・ALT↑してくる可能性が高く治療対象となる。
 HBeAg(-)でも高ウイルス量でAST・ALT高値なら治療すべき。
 治療前には肝生検を行うことが推奨される。
 HBeAg陰性化・HBV DNA持続低値(10^4~10^5以下)・ALT正常化を目標とする。DNAに組み込まれるウイルスもあるため、完全に根絶するのは難しい。

インターフェロン

 35歳以下の症例で考慮される。半年~1年の治療期間。耐性株出現はほとんどない。
 初期4週間を連日投与とし、以下週3回で6ヶ月以上続ける。
 retrospectiveなcohort313例で発癌率7.0%vs19.6%/5年, 17.0%vs30.8%/10年で有効であった。
 Peg-IFNの治験では週1回投与24週でHBV DNA 10^5未満は30%強であり、ラミブジンを併用しても治療成績は変わらなかった。

核酸アナログ製剤

 ALT200IU/ml以上、LC・pre-LCが良い適応。非代償性肝炎に対しても使用される(T-Bil 5mg/dlを越えると有効でない場合が多い)。
 現在、第一選択はエンテカビル(バラクルード)。3年間で薬剤耐性は数%程度。ラミブジン投与例で耐性出現してきた場合はアデホビル(ヘプセラ)を使用する、HBeAg(+)でラミブジン不応例ではエンテカビルにも耐性である場合が多い(HBeAg(-)ならエンテカビルでも構わない)。
 投与期間は数年以上が望ましい。耐性化に伴うブレイクスルー肝炎に対してはアデホビルの併用やステロイド・インターフェロンを考慮する。
 ラミブジンにおいて、651例の無作為比較試験で、非代償期肝硬変・肝癌・SBP・食道胃静脈瘤出血・肝疾患関連死亡をエンドポイントとして、7.8%vs17.7%/32.4ヶ月と有効であった。

 今後出てくる可能性のある薬→telbivudine(LdT), tenofovir(TDF), emteicitabine(FTC), clevudine(L-FMAU), Bay41-4109 など。

C型肝炎のウイルス治療

現在の治療ガイドライン

  • genotype 1/高ウイルス量→Peg-IFN + リバビリン 48wk(50%程度)
  • genotype 1/低ウイルス量→Peg-IFN 24~48wk or IFN 24wk
  • genotype 2/高ウイルス量→Peg-IFN + リバビリン 24wk(80%以上)
  • genotype 2/低ウイルス量→Peg-IFN 24~48wk or IFN 8~24wk
  • 再投与→無効の要因を検討し治癒目的の併用療法か進展予防の少量長期IFNか選択する

 13~24wkでRNA陰性化した症例は72wkの併用療法長期継続を行う。
 副作用中止が予測される症例では早期の減量で完遂をめざす(2wkでHb2低下→200mg減量)。
 genotype 1/高ウイルス量ではないC型肝炎による代償性肝硬変にはIFNβ(フェロン)を用いる。
 ALT30未満でもPLT15万未満なら肝線維化の可能性高いので、肝生検後に治療を行うことを検討する。またALT30以上は原則として抗ウイルス療法の適応。

ISDR(インターフェロン感受性決定領域)

 NS5Aに存在する。変異数5以上の変異型ではIFN感受性が高い。しかし変異数が多いHCVでは肝炎の活動性自体は高いこともあり、できれば治療すべき。

今後出てくる可能性のある薬

 新しいIFN(albuferon), リバビリンプロドラッグ(viramidine), プロテアーゼ阻害薬(VX-950(telaprevir), SCH503034, BILN2061), ポリメラーゼ阻害薬(NM-283, HCV-796)など。これらはPeg-IFNとの併用治験が行われている。

C型肝炎の宿主側要因

年齢(50代から急激に進むことあり。特に閉経後の女性に注意)
性別(男性の方が進みやすい)
肝線維化の程度
肝脂肪化の程度(NASHがオーバーラップすることがある IFN奏効率にも影響する)
BMI(メタボリックシンドロームは危険)
LDL
アルコール(当然・発癌率も上昇する)

肝移植

 B型肝炎に対してはHBIGおよびラミブジンにより感染のコントロールが可能。5年生存率は75~80%ほど。
 C型肝炎に対してはほとんどが移植後に再発するため、再発してからのIFN治療が推奨される。5年生存率は70~80%ほど。

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最終更新:2008年02月05日 20:23