東セクレアの農業
稲作(イネ)
一年生作物。降雨量の多い地域に向いており主に水田で栽培される。栽培に手間はかかるが単位面積あたりの収量は大きく、一粒から取れる量も非常に多い。また水田であれば地力の低下がほとんどなく連作が可能である。そのため狭い土地に労働力を集中して高い生産性をうみだす集約農業が行われる。
土地と農家の結びつきは大きく、農家は土地に執着してほとんど流浪はしない。田は基本的に農家の固有財産と考えられる。一方、水田の灌漑と排水には高度な組織力が必要であるため、農家は個々の独立性を保ちながらも、秩序の強い村を形成している。
歴史
この土地の湿地帯に自生していた植物が稲の祖先と考えられており、ここにヒトが移住したときから採取され食用とされていた。湿地帯に籾を蒔くだけのきわめて原始的な農業からはじまり、そのうち田が整備されるようになった。人為的に収量の多い品種が選択されることで、品種改良が行われた。天歴前数百年には現在につながる稲作の技術はほぼ完成していたと考えられる。
品種
大きく北方(アクタナ)種と南方(ランタナ)種にわかれる。北方種は短茎で乾田に向いている。南方種は長茎でやや収量は少ないが湿地帯でもよく成長する。東セクレアでは南方の湿地帯を除き、ほとんど北方種が栽培されている。
北方種は、早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)、に分類される。早稲は収穫時期が早く、秋の台風や冷害の影響を受けにくいが、収量は晩稲より少ない。北方種の中でも比較的短茎のものは風害に強く、長茎のものは水害に強い。また、個別の品種に耐寒性・耐乾性・耐風性・耐病性にすぐれたものがあり、栽培がしやすい(穂が落ちにくい、など)、味が良い、などで好まれる品種もある。
農家はこれらの特性をふまえ、自分の田の性格および経済的な戦略を考えて栽培する品種を決めている。リスクを分散させるために共同体内で数種類の品種を植えることが普通である。
【主な品種(北方種)】
- アクタナ……早稲、中稲、晩稲がある。もっとも一般的。
- テンザン……天山でも育つ、の意。耐寒種。収量やや少なめ。
- ラレド……ラレドでも育つ、の意。耐乾種。水害には弱い。
- ムラービ……ムラービで開発されたとの伝説あり。味薄く酒造に向く。
地域/微地形と田の形態
歴史的に最もはやく稲作がはじまったのは湿地帯においてであり、山岳地方や洪積台地の湿地になっている谷に直播きで栽培する蒔田が行われた。灌漑技術が進歩すると扇状地・ついで河岸段丘の湧水地帯に良質な乾田が作られた。河川下流に広がる低湿地での稲作は困難であるが、排水路を整備し一部に堀上田を作ることでなんとか湿田を作ることができた。
山麓や扇状地、谷地での田は地形に合わせて作られており、一枚の田も小さい。とくに山腹の田は棚田で田越灌漑になっている部分もあり、生産性は低い。山岳のささやかな湧水を生かしてごく小規模の田を作ることがあり、これらは隠居者・次男・三男・逃亡者の自活のために作られ、隠田となっている場合が多い。扇状地は谷から河が流れ出るところに取水口を設け樹枝状の灌漑路を作る。近年では谷に横行する水路を作り、すだれ状にいくつもの灌漑路を分岐させ、さらに多くの田を開いている。扇状地は谷ごとにひとつの共同体になっていることが多く、村の歴史が古く、多くの祭や風習が残っている。
河の下流では治水に大規模な工事が必要であり、強大な統治者がいないと開発ができなかった。ユラノン帝国の拡大期にパルトニアからモクレンにかけて多数の田が開拓され広大な田園地帯が生まれた。基本的には大河の自然堤防を補強して長い堤防を作り、後背湿地を湿田とした。堤防上は畑作を行うか、あるいは水害の危険が小さいため住居地とされた。ユラノン帝国初期にみられた条里制のなごりで、長方形に区画された田も散見されるが、多くは微地形に合わせて多様な形の田になっている。大きな田は波が立ちやすく、田植え直後の苗に風害を受ける危険が高く、極端に大きな田は作られない。牛馬犂がやりやすいように長細く作った田もあるが一般的ではない。
パスタス下流は湿地帯が多く、北方に比べてやや条件の厳しい土地が多い。それでも微高地を利用して少しでも良田を得ようという努力がなされている。排水のままならない湿地においても南方種の直播きは可能であり、河川敷の沃土が利用されている。
栽培農事紀
調理・加工
温暖で多湿であり、水田での稲作が行われている。扇状地は灌漑、排水ともに有利であり最も早い時期から良い田が開けている。盆地や河岸段丘は大規模な灌漑と治水によって広大な田が開かれており、水はけの良い土地なら乾田が、悪い土地ではほとんど湿田が作られている。河の下流に多い湿地帯においては、掘上田を作ってかろうじて稲作を行っている場合があるが、湿田であり生産性は低い。南方の湿地帯では熱帯種とよばれる丈が高く多湿に耐える品種を蒔田で作っていることもある。谷や山岳地帯でも田は見られるが、湧水、周囲からの絞り水を利用したり、降雨のみをあてにした天水田であったりで、棚田も多く田の質は良くない。山間部には湧水を頼りに個人で開かれた小さな田がときどきある。天水田の一部は蒔田であり、田植えを行わないぶん生産性が低い。
条件の良いところでは、南方なら二期作、北方なら二毛作が行われる。二毛作は稲の裏作として、小麦・大豆・芋・雑穀・木綿・菜種などが作られる。
畑作
盆地や平野においては自然堤防や洪積台地などの灌漑に不利な微高地で畑作を行っていることが多く、水害を避けて作られた居住地の周囲に小規模な畑が作られている。畑作は小麦・大麦が中心で、芋類、豆類が次ぎ、野菜も作られる。また木綿・麻・苧麻などの繊維植物、藍などの染料なども栽培される。また山間部では焼畑が盛んであり、租税のかからない雑穀や芋類が生産されている。焼畑は山岳民が長期自活するための食糧確保として行われることもある。
西北部、西海岸性気候区に属するところでは降水量の問題で水田を開きにくく、畑作による小麦の生産が主体である。広い平地や低い丘陵地で三圃農法が営まれる。耕地を夏耕地、冬耕地、休耕地(遊牧地)と分け、一年ごとに入れ換える方法で、ひとつの村落が耕地全体を管理している。村落は複雑な農法を維持するために強い秩序を保っているが、そのためとりわけ閉鎖的である。
果樹
びわ・あんず・みかん・なし・りんごなどの果樹の栽培が行われる。また茶は計画的に栽培される場合と焼畑の後に自然に生えたものを摘む場合がある。栗の木はほとんど自然に生えているものが利用されるが、山里にある栗の木は、たいていは所有権が設定されている。
肥料・農具
肥料は草を鋤込む刈敷、および畜糞・人糞、干鰯、油粕などが利用されている。刈敷の草取りは権利をめぐっての争いを生みやすく、また干鰯などの優秀な肥料の値段はしばしば農民を悩ませる。
農具には鉄製品が使われる。しかし鉄の使用量は抑えられ、刃先のみが鉄の鍬などが多い。収穫には鎌が使われ、脱穀には千把扱き・唐箕・石臼など機械や水車の利用も行われる。
牛馬による犂が利用されている。馬の方が力が強く効率的であるが、馬は飼料に費用がかかる。牛の方が細い山道に強いため、山間部では牛の利用が多い。広い遊牧地で牛馬を飼い、犂耕のシーズンになると牛馬を貸すために遠くから来るという遊牧の集団がいる。畑地では特に、牛馬耕に向くように耕地を長細く作る。
灌漑と用水(排水)
もっとも原始的な灌漑は天水田で、降雨あるいは周囲からの絞り水のみで灌漑するものであり、洪積台地の谷底などに作られる。扇状地でも灌漑は比較的容易であり、山間部から河がでてきたあたりに取水口を設け、樹枝状に灌漑路を作る。やや技術が進むと谷に対して横行する水路を作り、そこからすだれ状に灌漑路を伸ばす。
沖積平野ではもっと大きな農地を作れるが、治水と灌漑には大規模な工事が必要となるため、力を持った統率者が現れた時期に計画的に治水が行われてきた。自然堤防を整備・補強して上に集落を作り、河に取水口を作り排水路も作る。礫層があり排水に優れた土地では乾田が作られ、もっとも生産性の高い農業が行われるが、多くは排水に苦労する湿田であり水害に弱い。
灌漑路から水を上げるための水車が各地に見られる。また竜骨車などの用水機械がいくつか工夫されている。水車は脱穀・粉ひきなどの動力として使われる場合もある。
関連ページ
上位ページ
Advertisings
最終更新:2008年09月17日 09:32