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経済史 - (2009/09/20 (日) 03:53:32) の編集履歴(バックアップ)



【質問】 世界で最初にデリバティブを編み出したのは?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000052348
によれば大阪の堂島米会所だったという.
 ここでは欧米より約200年以上も前に世界最初の先物取引が編み出され,フューチャー、オプション、などといった凡そ現在世界で使われているデリバティブの全てが,この堂島で編み出され縦横に駆使されていたという.
 それが廃れたのは,市場の暴走を敵視する明治政府により大阪の米取引所が閉鎖されたためであり,そのせいで蓄積された高等取引の伝統のかなりの部分が失われた,と述べられている.

 詳しくは同書評を参照されたし.


【質問】 元秋田藩主・佐竹家はなぜ没落したのか?


 【回答】
 秋田藩の「忠臣」片野なる相場師が「殿の財産を倍にしてさしあげます」と持ちかけたのを鵜呑みにして、佐竹の殿様が全財産を片野に預けたため.
 しかし,片野は京浜電鉄株買占めを目論むも失敗.
 藩の財産を蕩尽した片野は責任を感じて割腹自殺したという。

 詳しくは
http://www.bk1.jp/review/0000444883
を参照されたし.

【質問】 ヘンリー・フォード Henry Ford って誰?


 【回答】
 ヘンリー・フォード(1863~1947)は,ミシガン州スプリングウェルの貧しい農家に生まれた,アメリカの実業家.
 16歳の時から機械工場の行員として働いた後,エジソン電灯会社へと移籍して,チーフ・エンジニアに.
 1896年,彼にとっての最初の自動車,「クアドシクル」を試作.
 1899年,「デトロイト・オートモービル・カンパニー」を設立.
 1903年,「デトロイト・オートモービル・カンパニー」を「フォード・モーターカンパニー」へと拡大.
 1909年,世界初の大衆車,「T型フォード」完成.
 同車は部品の標準化を進め,流れ作業など合理化をはかって,その単価を大幅に引き下げることに成功した.
 1918年,長男エドセルに社長の座を譲り,事実上引退.
 1943年,はエドセル病死に伴って社長復帰.
 1945年,孫のヘンリー・フォード2世が復員,社長に就任したことを受けて引退.
 1947年,死去.

【質問】 大原孫三郎って誰?


 【回答】
 大原孫三郎(おおはら まごさぶろう,1880~1943)は,岡山県倉敷市の富豪の生まれの実業家であり,大原美術館創設者.
 父親の会社である倉敷紡績に入社した彼は,職工達が小学校さえ出ていないのに驚き,彼らのための教育機会を与えることに尽力.
 明治39年に社長に就任すると,口入れ屋が従業員の手配,炊事の請負,日用雑貨の販売を仕切り,法外なピンはねを行っていた,当時の慣行である飯場制度を廃止し,また,果断な施策で倉敷紡績を全国規模の会社に成長させた.

【質問】 「大恐慌は第2次大戦がなければ終わらなかった」というのは本当か?


 【回答】
 大和総研のエコノミスト,原田泰
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/harada.cfm?i=20090408c3000c3&cid=bpl001
によれば,それは間違いだという.
 彼によれば,1937年の引き締めがなければ、アメリカの実質GNPは33年第1四半期を底とするトレンドで伸び、第2次世界大戦以前に大恐慌から脱却することができただろうという.
 1937年のGNPの減少の原因は,再び金融を引き締めたことであり,その証拠に、38年に再び金利を引き下げるとGNPはまた回復しているという。
「大恐慌はアメリカ連邦準備理事会(FRB)の誤った政策によって引き起こされ、長引いたのである.
 これが、大恐慌の研究から得られる最も重要な教訓である」
と,彼は結論している.

 詳しくは上記リンク先を参照されたし.


【質問】 日本企業が日本陸軍のような組織上の病理に陥らないようにするには,どうすればいいのか?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000365406
によれば,人間およびその人間の集団である組織は限定合理的であり,条件さえそろえば、組織は合理的に非効率な手段を選び,やがて破綻するという.
 そこで人間と組織の限定合理性を認め、常に批判を受け入れる「開かれた組織」を構築することが、その解決策だという.

 詳しくは上記書評を参照されたし.


【質問】 アトリー主義とは?


 【回答】
 浜矩子(同志社大学教授)によれば,第2次大戦で疲弊した英国国民が,「そろそろ国にサービスしてもらうべきだ」という考えから,福祉国家建設を唱える労働党に投票して誕生したアトリー政権の基本理念.
 端的にいえば、万事において放任主義はよくない、というものであり,「独占に代わる国有化」の有用性を主張し,経済社会のあらゆる側面に関与する大きな政府体制を作り上げていった.
 しかし結果は惨憺たるものになったという.
 政治と行政があらゆる場面に介入する。
 そのことが、次第に経済活動から奔放な活力を吸い取っていくことになった。
 何をしても、何がどうなっても、最終的な尻拭いは政府がしてくれる。
 そう誰もが思えば、緊張感のある経営は行なわれない。
 責任感あるサービス提供は期待できない。
 誰もが自分のことしか考えなくなっていった。
 効率性は追求されない。向上心は形成されない。創造性は刺激されない。

 こうして、次第に国民経済全体として集団無責任主義と知的怠惰が蔓延することとなっていく。
 こうなると、問題はたんなる経済活力の喪失や成長力の減衰だけでは済まなくなってくる。
 「おんぶにだっこ」に慣れ切った人びとは、やがて、自律的な批判精神を失っていく。
 いつの間にやら、「ああしろこうしろ」と指図されなければ動けなくなってしまう。
 こうなると、そこに専横と独裁と人権侵害が入り込むスキが生まれる。

 ここまで来れば、公正な経済は統制された経済と同じことになり、優しい政治は専制政治と区別が付かなくなり、平等社会は画一社会と化してしまう。
 その結果,
 大きな政府と大きな労組が、さしずめ「権力シェアリング」とでもいうべき相互支援関係を形成するなかで、英国経済はひたすら低迷を極めることになった
と,浜は述べている.


 上記のような教訓があるにもかかわらず,しばしば経済の国家管理を望む論調は,何度も繰り返されているのが現状である.

【質問】 「戦後の日本の奇跡的な経済成長は,日本社会が1億総中流と思えるほどの所得・資産両面での平等社会があったからこそ実現した」のですか?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000442701
によれば,それは疑わしいという.
 なぜならば,実は日本の高度経済成長は明治から始まっており,戦前日本は非常に大きな格差社会だったからだという.

 まあ,「結果の平等」を追い求めた公立校の惨状を見れば,「結果的に平等社会になったこと」=「成長の原動力」などではないことが,すぐに分かると思うのだが.

【追記】
「社会実情データ図録 所得格差の長期推移」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4660.html)より、
戦前については、戦後と比較して著しく所得格差は大きかったことが複数の研究で明らかにされている。しかも、明治、大正、昭和戦前期と所得格差は上昇傾向にあり、経済発展の前期に所得格差は拡大し、発展後期には縮小するというクズネッツの逆U字仮説の前期に当たっていると考えられている。
とのことで、戦前派大きな格差社会であることがわかる。
 また、戦前の経済成長について「経済学部 基本科目 経済史(後半)1999年度 冬学期 武田 晴人担当」(http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~takeda/gyoseki/keizaishi1.htm) の「5.国民総支出の推移 」を見ると
(1)                            単位100万円,%
            1885  1890  1900  1910   1920   1930   1940
合計           806  1.056  2.414  3.925  15.896  14,671  36,851

とのこと。


【質問】 高度経済成長はなぜ終焉したのか?


 【回答】
 増田悦佐によれば,それは効率性を無視し犠牲にして,生産性の高い働き者の日本人から巻き上げた税金を,田舎でスーダラしている自称「弱者」,しかしてその実態は働く意欲も能力もない連中に、まるで砂漠に水を撒くようにばら撒き続けたからだという.
 そして,この仕組を作り出したのは田中角栄で、これに「我々エリートが保護し育成してやらないと日本人の大部分は食えない」と勝手に勘違いした思い上がりの霞が関官僚が唱和して,せっかく日本に内在する成長へのエネルギーを奪い、殺した結果が今の体たらくなんだという.
 また,過疎化はある意味で先進国には必然的に起きる現象であり,これをむしろ促進する事が,田舎に豊かな自然を回復させる「地球に優しい政治なんだ」とも増田さんは言い切っている。

 詳しくは
http://www.bk1.jp/review/0000353805
を参照されたし.



【質問】 日本は世界の中で最も中流意識の人が多い国か?

 「社会実情データ図録 中流意識の国際比較」(http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2290.html)によれば、違うらしい。
 作成者いわく、
「図を見れば明解であるが、自らの生活程度を中(中の上、中の下を含む)と見なしている者の割合で日本は決して上位にあるわけではな  い。ベトナム、米国、チリ、インドネシアといった国が日本より中流意識の高い国と言ったら誰が賛同するであろうか。」
とのこと。
 ちなみに調査対象国29ヶ国で多い順に挙げると
ベトナム、スペイン、米国、カナダ、チリ、イスラエル、ヨルダン、アルゼンチン、トルコ、インドネシア、セルビア・モンテネグロ、日本、ペルー、ベネズエラ、イラン、エジプト、バングラデシュ、プエルトリコ、中国、スウェーデン、インド、南アフリカ、メキシコ、モロッコ、フィリピン、タンザニア、ナイジェリア、ウガンダ、ジンバブエ
である。日本は、29か国中13位である。



【質問】 グローバリズムは善か?悪か?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000429558
によれば,要はグローバリズムとは,競争のアリーナに従来の何倍もの人間が加わるということになったという話であり,そこには当然,良い面も悪い面もあるという.
グローバリズムなどと横文字をカタカナにするからわけがわからなくなるんで、要するに通信手段と移動手段の発達に、東西冷戦の終了(アメリカの完全勝利)と中国の資本主義への参加が加わって、資本主義が従来にも増して苛烈な競争に見舞われることになったというだけなんだよ。
と同ページでは説明している.
 ただ,競争が何倍も激化したのであれば,敗者に対するセーフティ・ネットも何倍も必要になりそうだが,そちらのほうは何倍も,というわけにはいっていないように思える,現状では.

【質問】 ジェフリー・サックスって誰?


 【回答】
 ジェフリー・サックス(Jeffrey David Sachs、1954年11月5日 - )は、ミシガン州デトロイト出身のアメリカ合衆国の経済学者。
 コロンビア大学地球研究所所長、かつ国連ミレニアム・プロジェクトの長。
 これまで、ラテンアメリカ、東欧、ユーゴスラビア、ロシア政府の経済顧問を歴任、特にボリビア、ポーランド、ロシアの経済危機への解決策のアドバイスやIMF、世界銀行、OECD、WHO、国連開発計画等の国際機関を通じた貧困対策、債務削減、エイズ対策等への積極的な活動で知られる。

http://www.bk1.jp/review/0000444027
によれば,悪いアメリカ人エコノミストの代表。
 自らが振りまいた「経済改革」が,ロシアや東南アジアの経済をめちゃくちゃにしているにもかかわらず、全く無反省。
 無責任の塊のような人物という.



【質問】 「バブルの生成も崩壊も,日本経済の奥の院にいる日銀のエリート軍団が仕組んだ自作自演」だったの?



 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000045747
に言わせれば,そんなのは駄ボラ扱い.
 そもそも,
「日本人なんかに奇跡の経済成長なんかできるわけない。きっとどこかに凄い秀才軍団がいて陰で設計図かいている奴がいるに違いない」
という思い込みで語る外国人は
「通産省が日本経済の参謀本部」(チャルマーズ・ジョンソン)
「大蔵省こそ日本の総司令部」(フィングルトン)
などのように以前からおり,「日銀が奥の院」というのはその最新版に過ぎないのだという.

 詳しくは上記書評を参照されたし.


【質問】 バブル経済を招いたのは誰の責任だったの?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000060757
によれば,一部のエリートや金融関係者のチョンボではなく,以下の人々が歓迎し,煽ったのだという.
  • 日本経済はどんどん発展して高度化していくのに,無学歴で全くこれについていけないが,土地は持っている元百姓の馬鹿地主,
  • 分もわきまえず官におねだりばかりする国民の面倒を,いい加減見切れなくなった行政
  • 優良企業がどんどん儲かってお金持ちになって,銀行からの借り入れを返済し始めると銀行は貸出先が無くなってパニックになるところを、不動産担保融資が急増して全て解決すると恵比須顔だった銀行生保損保の金融機関
  • ただ広がっているだけの無価値の原野に値段がつき,何も能がなくても土地さえ売れば世界有数のリッチマンになれた,貪欲な田舎者

 そしてその皺寄せを全て引き受けたのが,都会の一流企業に勤めるサラリーマンだったのだという.

 詳しくは同書評を参照されたし.


【質問】 バブル経済はどうして生まれたの?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000066003
によれば,おおよそ以下の通り.

石油ショックを必死の思いで切り抜けた日本の自動車・電気産業が米国を上回る世界最高の競争力を身につけ、大幅な経常黒字を稼ぎ出すようになる

→日米貿易摩擦が熾烈化しプラザ合意で円の価値が倍になる

→円高不況を乗り切るため日本政府は円売りドル買い介入を実施し、過剰流動性が発生する

→引き締めに転じようとした矢先に米国でブラックマンデーが起き、日本は世界の株式市場崩壊を回避する為、金利引上げマネースプライ引き締めを見送る

→膨大な通貨が土地、株に殺到する

→金利自由化、金融国際化を前にして銀行は不動産融資に急傾斜する

→銀行の全面的資金支援を受けて不動産投機が益々隆盛となる

 同ページに曰く,
 エクイティファイナンスにより銀行金利よりもはるかに安いコストで資金を調達できるようになった大企業は,銀行借り入れを返済するが、日本の金融システムは戦争遂行の目的で作られた銀行中心のシステムのままだったので,銀行には引き続き膨大な資金が集まりつづけ、運用先にこまった銀行が目をつけたのが不動産投機だった。

 そして現在も尚,銀行中心のシステムは改まっていないように感じられるのだが.

 また,さらにその深層にあるものとして,
http://www.bk1.jp/review/0000444668
では以下のように述べられている.
 当時、日米自動車摩擦の最前線で米国との折衝にあたっていた通産省審議官天谷直弘氏の言葉を私は忘れない。
「日本の一部に、ついに日本はアメリカに勝ったなどということを言う人がいるが冗談じゃない。
 日本はたまたま自動車や半導体の一部でアメリカに対し優位にたっただけ。
 国力全体で見ればアメリカの足元にも及ばない。このことを是非分かってもらいたい」
 思い上がった日本人が勝手に借金して勝手に自滅したのが,バブルの真相であると私は見ている。
 外資を加害者として責任を転嫁し続けている限り、日本には真の反省もないし教訓を学習する機会も訪れないであろう。
 残念ながら,いまだにその機会が訪れる気配はないようだ.


【質問】 本来「石橋を叩いても渡らない堅実経営安全第一」のはずだった銀行が、バブル経済を招いた投機の荒波に,なぜ自ら突っ込んでいったのですか?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000066003
によれば,「向こう傷は問わない」と、本来銀行が絶対やってはいけないハイリスクハイリターンの融資に真っ先に突っ込んでいった,住友銀行の磯田一郎のやり方にあったという.
 その磯田の姿勢を、当時のマスコミは非難するどころか,むしろ誉めそやし,彼は「バンカーオブザイヤー」に選ばれ時代の寵児となったという.
 そしてそのマスコミの磯田評価を,当時の銀行経営者の大半が鵜呑みにしたのが,銀行転落の要因になったという.

 詳しくは同書評を参照されたし.

 クロスチェック未了につき,上記情報の真贋は,現時点では編者には何とも言えない.


【質問】 日本の金融機関の収益率が低下した原因は?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000147002
によれば,米国の銀行が七転八倒の苦しみを経て自己革新を繰り広げ新商品を続々生み出して収益力を高めていく中、日本の金融機関は実質的に何もせず何も新しいものを生み出さなかったが、その理由の原因は日本の金融システムの頂点に君臨した日本興業銀行が,己の既得権を死守するため大蔵省を巻き込んであらゆる金融制度改革にことごとく反対したためだという.
 同行は美味しすぎるワリコー、リッコーの国債との分業を最後まで維持しようとし、社債発行の自由化、証券化、金融新商品の開発にことごとく反対する「抵抗勢力」に堕してしまったという.
 そのため日本の金融機関は似たり寄ったりのサービスしか提供できないままひたすら体力をすり減らすだけの壮大な消耗戦を繰り広げるしかなかったという。

 詳しくは同書評を参照されたし.

 とはいえ,自己革新したはずの米国金融機関も,2009年現在,ご覧の通りの有様であるわけだが.


【質問】 東大法学部のトップ層を集めた,日本のベストアンドブライテスト組織だったはずの大蔵省が,なぜバブル崩壊を前には手も足も出なかったのですか?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/460431
を読むに根本原因は,日本人が大好きなリーダーが,「神輿に乗るタイプ」「良きに計らえタイプ」のダラ幹だからである模様.
 なぜなら,これだと組織が全体として上手く機能しているときは拡大均衡を通じて全員が旨味を享受でき、うまくいくが,権力を分散させることで、トップがリーダーシップを発揮出来ない『弱い指導者』をよしとする日本的意思決定機構は、危機に瀕したとき、無限の無責任体制に陥り、誤りを修正できずいたずらに傷口をひろげてしまうからだという.
 先の戦争のときの軍部・政府がそうだったし、バブル崩壊のときの大蔵省も,ひたする地価の反転上昇を祈るのみで、不良債権処理が出来なかったのだという.

 詳しくは同ページを参照されたし.

【質問】 バブル崩壊後金融機関に資本投入利下げをしても,流動性が向上しないメカニズムを教えてください.


 【回答】
 金融機関サイドから見ると,金融ビッグバン以降特に銀行の評価基準になっている自己資本比率を維持・向上するため.
 つまり企業への貸し出しはリスクウェイトが100%として計算されるため,より安全な国債などの購入にシフトしているから.
 自己資本比率は資産分の自己資本として計算されるから,リスクウェイトが100%だとそのまま分母になってしまう.
 逆に国債などだとリスクウェイトが0%なので分母に算入されない.
 分母が小さいほど自己資本比率は高くなるから、結果的に企業への貸し出しが抑制される。
 いわゆる貸し渋り・貸し剥がしってやつね。
 あとは外資系投資銀行などを通じて資金が新興国のほうに流れてたっていうのもあるかもね。

 企業サイドから見ると,バブル期に相当痛んでしまったバランスシートを回復するために投資を控えているから。
 簡単に言えば、運転資金以外の新規投資は手控えたいってこと。

 こんなわけでいくらジャブジャブお金をつぎ込んでも,それが国内投資に向かわないから市中にお金が出回らない。



【質問】 ゼロ金利や量的緩和って代償はあるの?


 【回答】 代償はインフレーション.
 というか、代償でもあるが目的でもある.

 量的緩和は銀行が日銀に積む当座預金残高というお金の量で金融の緩和・引き締め度合いを決める政策.
 日本なら日銀は,これを金利の水準の高低で緩和・引き締め度合いを決める政策に変える考え。

 景気が激しく落ち込むとインフレ率も激しく落ち込む.
 これを落ち込ませきらないようにするのが目的なので,こういう時にやっても代償と言う様なものがそもそも無い。

 まあそれ以前に、ゼロ金利や量的緩和だけをやたら特別視するのはどうかと。
 普段だって景気の落ち込みを防いだり過熱を警戒したりするために,金利の上げ下げによってお金の量をコントロールしてるわけで
ある意味ではその延長線上の話でしかない。
 単に手法が珍しいというだけで。

 日米以外で難しいのはまさにインフレの問題で,英国とか欧州とか今インフレ率それなり高かったりするんだよね。
「金融緩和は景気刺激、そして代償はインフレ」
 これは無限に景気を刺激し続けれるわけじゃないって話でもある。
 あんまりにもインフレ率高くなっても困るから。
 だからこれ以上思い切った緩和に踏み切れない、という状況。

 で、さらにややこしいのはインフレと景気と失業と金融政策のそれぞれのタイムラグの問題。
 金融政策が効き出すのは半年から一年かかるって言われてる。
 もしこれから欧州や英国でも景気悪化がより深刻になるなら,今のうちにもっと金融緩和しとかないと酷い目にあうわけだ。
 けど、上のレスで言ったようにゼロ金利や量的緩和がどうこう以前に、金利下げという形での金融緩和は既に各国やってるわけで、それで実は十分なのかもしれない。
 その場合は各国民は不必要な高インフレを被るわけ。

 暗闇の中手探りで進む状況だから、もう結果を見るしかないんだね。

 公的債務残高の増加も,代償として挙げることができる.
 現在のアメリカがゼロ金利・量的緩和をしているが、過去最大の財政赤字になっているし,公的債務残高も増え続けている。
 これで景気が順調に回復しなかったら、アメリカ国民は債務の返済のために国民負担率を上げることになる。

 日本でも,政府や特別会計が短期金利で借りているお金は150兆円を超えているので、解除すればこの分だけで利払い負担が5000億円弱増える。
 それに,短期金利が上がれば、それを起点に形成される長期金利の水準は底上げされる。
 上昇が続けば、国の利払いが急増する。



【質問】 LTCMが一時,すごく儲けていたように見えたのはなぜですか?


 【回答】
http://www.bk1.jp/review/0000104729
によれば,彼らのやっていたことは実はシンプルで,たんに借金こいて自分のキャピタルの50倍、100倍の相場張っていただけだったという.
 株も相場も割高を売って割安を買うのが基本であり,そこに金融工学だのブラックショールズ式だのという仕掛けがからみ,なんとなく素晴らしいマジックが行われていたように見えたに過ぎないという.

 同書評曰く,
相場は相場に聞けとはよく言ったものです。


【質問】 郵政改革は日本経済にとってはどうだったのか? プラスだったのか? マイナスだったのか?


 【回答】
 当時,猪瀬直樹はプラスであると強く主張していた.

 財革は経済を縮小させるが行革はそうではない。むしろ経済を活性化させるのだ。行革は、儲けが出る話なのである。小泉さんは、国債発行を年額30兆円以下に抑える、と発言したが、それ自体はよいけれど、気をつけないと歳出を抑制するだけだと誤解されてしまう。〔略〕
 だがそうではない。〔略〕 行革をやるとお金が余るので、国債発行が30兆円以下でも大丈夫、という意味なのだ。メディアは、しっかりとそう見通しを伝えるべきだろう。

〔略〕

 5年前に(猪瀬が)『文藝春秋』で問題提起した際、特殊法人の生態について総合的に調査し分析した参考文献は殆ど見当たらない状態であった。
 それなのに,当時から小泉さんは郵政三事業民営化をぶちあげていて、その威勢のよさだけが印象に残ったとみえ,当時の流行語大賞になっている。

 しかし、流行語になった郵政三事業民営化のその中身については殆ど論じられなかった。〔略〕

 問題は郵便そのものでなく郵便貯金であり、簡易保険のほうなのだ。
 郵貯は255兆円(うち自主運用分58兆円)、簡保は112兆円、それに加えて年金が144兆円(うち年金資金運用基金の自主運用分27兆円)、これらが運用の貸し出し先を求めて特殊法人へ投げ込まれる。巨大な国営銀行が民業を圧迫しているのだ。
 郵政三事業は「入り口」に位置し、「出口」に特殊法人や社団・財団等の公益法人がいる。『日本国の研究』で示したのは、「出口」の日本道路公団を初めとする特殊法人等には、民間企業ならば当然のコスト意識がまったくない、という事実であった。
 さらに,彼らは言わば国営企業であるにも関わらず,傘下に社団、財団法人と株式会社などのファミリー企業群を抱え,癌細胞のように自己増殖する恐るべき性質を持つことだった。善男善女が爪に火を灯すべくして預けた郵便貯金が、また苦労して納税したお金が、なんと国家と国民を蝕む形で使われていたのである。

 小泉首相の構造改革は色々あるが,一言で言えば,日本は国営企業だらけでついに倒産した旧ソビエトの二の舞を踏んではならない、それに尽きる。
 この「革命」に失敗したら日本はもはや先進国でい続けることが困難になだろう。自分達が、よもやブラジルやメキシコになるなどと誰が予想しているか。忍び寄る危機は未然に回避しなければならない。

 もちろんこの論理には異論もあるだろうから,異論も発見し次第,クロスチェックしてみる予定.

 なお,「ソースは2ちゃん」になるが,郵政板によれば現在でも郵便事業会社にコスト意識が生まれたかと言えばそれは疑わしく,「誤配撲滅キャンペーン」「交通事故撲滅キャンペーン」のような内輪の数字競争に汲々としているという.