1.税収を過大に見積もるため期待成長率を過大に見積もる。歳出を過少に見積もるため利子率の水準を過少に見積もる。会計年度終了時に、「予期せざる赤字」は、政府の責任の範囲外として予期できないマクロ経済上の出来事によるものと説明する。
2.様々な施策の財政に与える影響を楽観的に見積もる。例えば、小さな新規の税は歳入上大きな影響を持つと推計されるので、実際に必要な調整の問題は次の予算に繰り延べられる。
3.様々な項目を予算外(オフ・バジェット)とする。例えば、国の予算に含まれない他の公的組織を活用する。
4.予算の見積りを意図的に悪用する。例えば、将来の予算を議論する時に重要な要素は「ベースライン」である。ベースラインをインフレで調整することにより、政治家は、選挙民に対して真のコストを生じさせないで、財政上保守的に振舞うことができる。このようにして、彼らは錯覚をつくることができる。彼らは、予算の規模に懸念を示すことにより、納税者の目に保守的に見えるが、実は彼らの選挙区に関連するような歳出カットには反対するのである。明らかに、このような錯覚は永遠には続かない。インフレ調整されたベースラインに関連する調整は、結局債務の増大を止められないからである。しかし、こうしたプロセスは、混乱を招き、選挙民が財政の真の状態を正しく見ることを遅らせる。
5.複数年度予算を意図的に悪用する。全ての厳しい(hard)施策は2、3年目に現れるような3ヶ年の調整計画を表明することにより、政治家は責任あると見られ、また時間を買うことができる。彼らは、次の3ヶ年計画を改訂し、厳しい選択を更に繰り延べることができる。
優良慣行及び基本要件は、一部を除きほぼ遵守しており、欧米諸国と比べてそれほど差はないといえる。他方、最優良慣行の遵守状況は、限定的である。
遵守状況が良好な項目は、次の通りである。なお、その他のIMFコードの項目の多くは部分的に遵守している。
- 1.1.1 政府の構造と機能
- 1.1.2 政府内での責任の分担
- 1.1.3 政府活動の調整と管理
- 1.1.4 政府と他の公的部門の関係(特殊法人の財務統制)
- 1.2.2 租税公課
- 1.2.3 倫理上の行動規範(公務員倫理法)
- 2.1.1 年次予算の適用範囲(政府関係機関予算の議決)
- 3.1.2 財政ルール
- 3.3.2 調達と雇用(公務員の採用)
- 3.3.4 租税当局
- 4.2.1 独立監査
優良慣行及び基本要件について、遵守していないと考えられる項目は次の通りである。
- 3.1.1 財政政策の目的と持続可能性(長期持続可能性分析)
- 3.2.1 予算データ(予算のSNA・GFS分類)
- 3.2.3 財政運営上のポジションを示す指標(一般会計の収支尻のみ)
- 3.2.4 公共部門のバランス(特殊法人等を連結した収支尻)
- 3.4.1 予算及び予算外の結果(年央報告の公表)
- 3.4.3 プログラムの成果(主要な予算プログラム目標に対する成果を国会に提出する制度的な枠組み)
- 4.2.2 マクロ経済見通しの質を評価する仕組み
- 4.2.3 国家統計局(統計機関の独立性の確保)
最優良慣行について、遵守していないと考えられる項目は、最優良慣行が存在する上記項目に加えて次の通りである。
- 2.1.5 一般政府を統合したポジション(予算文書での一般政府連結財政ポジションの公表)
- 2.2.1 財政情報の公表(幅広い財政情報の公表を規定する法律)
- 3.1.3 マクロ経済の枠組み(中期予算フレームワークの構築)
- 3.3.1 会計システム(現金主義と発生主義による会計報告)
IMFの基本要件は、財政のマネジメントの能力が脆弱な国(途上国を想定)がまず取り組むべきミニマムスタンダードであり、IMFコードの中から優先順位が高いものを抜粋し、さらにそれらを補足する慣行を付加することによって作成されている。
いくつかのOECD諸国で実践されている最優良慣行であり、IMFコード全般を満たしている国が、より財政の透明性を高めるために行うべきものである。従って、IMFコードがベースであり、それを補完するものとして、ミニマムスタンダードのIMFの基本要件、より高次レベルのIMFの最優良慣行という位置付けである。
特別会計は、国が行う特定の事業や特定の資金を運用する場合などに設けられています。
特別会計を設ける意義としては、
① 事業の内容や性格によっては、受益と負担の関係や事業毎の収支をより明確にすることができる
② それにより、適正な受益者負担、事業収入の確保や歳出削減努力を促すことができる
③ 特別会計の特例である弾力条項や特例的規定の設置等により、弾力的・効率的な運営が可能となる
といった点が挙げられます。
例えば、厚生年金保険事業は、年金給付の支出と保険料収入とは、
受益と負担の関係にあること(①)、
長期的な収支を明確化して、保険数理に基づき適切な保険料を設定する必要があること(②)、
将来の年金給付のため、積立金を積んでおく必要があること(③)
などから、特別会計で経理する必要性があるといえます。
21年度においては、特別会計の数は21となっている(船員保険特別会計が22年1月1日に廃止された後は20となる予定である。)。
1.事業特別会計(国が行う事業の収支を明らかにするための会計)・・・16会計
① 企業特別会計(1)
国有林野事業特別会計(農林水産省)
② 保険事業特別会計(8)
地震再保険特別会計(財務省)
労働保険特別会計(厚生労働省)
船員保険特別会計(厚生労働省)
年金特別会計(厚生労働省)
農業共済再保険特別会計(農林水産省)
森林保険特別会計(農林水産省)
漁船再保険及び漁業共済保険特別会計(農林水産省)
貿易再保険特別会計(経済産業省)
③ 公共事業特別会計(1)
社会資本整備事業特別会計(国土交通省)
④ 行政的事業特別会計(6)
登記特別会計(法務省)
特定国有財産整備特別会計(財務省及び国土交通省)
国立高度専門医療センター特別会計(厚生労働省)
食料安定供給特別会計(農林水産省)
特許特別会計(経済産業省)
自動車安全特別会計(国土交通省)
2.資金運用特別会計(国が行う資金運用の収支を明らかにするための会計)・・・2会計
財政投融資特別会計(財務省)
外国為替資金特別会計(財務省)
3.その他・・・3会計
① 整理区分特別会計(2)
交付税及び譲与税配付金特別会計(内閣府、総務省及び財務省)
国債整理基金特別会計(財務省)
② その他(1)
エネルギー対策特別会計(文部科学省、経済産業省及び環境省)
平成21年度予算で354.9兆円に達していますが、会計間相互の重複計上額を除いた「純計額」は169.4兆円となっています。
この中には、①国債償還費等79.5兆円、②社会保障給付費(法律に基づく給付そのものを指し、事務費等は含みません)52.6兆円、③地方交付税交付金等17.8兆円、④財政融資資金への繰入れ9.5兆円が含まれています。
歳入 内訳名 予算額(兆円) 割合(%) 公債金及び借入金 91.1 41.4 租税及び印紙収入 48.0 21.8 保険料及び再保険料収入 35.1 15.9 資金等より受入れ 29.5 13.4 利子等収入 6.4 2.9 納付金 2.0 0.9 前年度剰余金受入れ 1.5 0.7 国有財産処分収入 0.8 0.4 回収金等収入 0.3 0.1 国有財産利用収入 0.3 0.1 官業収入 0.1 0.0 諸収入 5.1 2.3 合計 220.1 100.0 注:小数点第2位を四捨五入しているため、合計値は合いません
歳出 内訳名 予算額(兆円) 割合(%) 国債費 78.9 38.2 社会保障関係費 68.5 33.2 文教及び科学振興費 5.3 2.6 地方交付税交付金 15.8 7.7 地方譲与税譲与金 1.5 0.7 地方特例交付金 0.5 0.2 公共事業関係費 8.4 4.1 防衛費 4.8 2.3 食料安定供給関係費 1.6 0.8 エネルギー対策費 1.0 0.5 経済協力費 0.6 0.3 中小企業対策費 0.2 0.1 その他の事項経費(財政投融資) 10.0 4.8 その他の事項経費(財政投融資以外) 6.0 2.9 経済緊急対応予備費 1.0 0.5 予備費 1.3 0.6 合計 206.5 100.0 注:小数点第2位を四捨五入しているため、合計値は合いません
特別会計という会計制度そのものを切り口として見直しを行うべき歳出は、純計額からこれらを除いた10.0兆円であるということができます
この10.0兆円の内訳を見ると、公共事業関係が4.2兆円を占め、続いて社会保険事業(業務取扱費等)が2.1兆円となっており、その他の各特別会計の経費はそれぞれ概ね1兆円未満にとどまっています
平成21年 歳入 特別会計 前年度予算額(当初) 平成21年度予算額 比較増▲減額 交付税及び譲与税配付金 37 36 ▲ 1 登記 1,730 1,733 3 地震再保険 691 680 ▲ 11 国債整理基金 18 13 ▲ 5 財政投融資 1,110 1,195 85 外国為替資金 3,332 3,322 ▲ 11 特定国有財産整備 674 637 ▲ 38 エネルギー対策 9,742 9,560 ▲ 183 国立高度専門医療センター 1,339 1,369 30 労働保険 10,548 10,898 350 船員保険 69 56 ▲ 13 年金 10,369 9,713 ▲ 656 食料安定供給 11,974 11,786 ▲ 188 農業共済再保険 827 870 43 森林保険 53 50 ▲ 3 国有林野事業 1,925 1,913 ▲ 11 漁船再保険及び漁業共済保険 175 165 ▲ 10 貿易再保険 1,629 1,569 ▲ 60 特許 1,227 1,203 ▲ 24 社会資本整備事業 53,672 42,058 ▲ 11,615 自動車安全 814 694 ▲ 1 20 合計 111,955 99,519 ▲ 12,436単位:億円
歳出 内訳名 予算額(兆円) 割合(%) 公共事業費 4.2 42.0 保険事業(社会保険関係) 2.1 21.0 保険事業(その他) 0.3 3.0 食料安定供給(国営土地改良事業含む) 1.2 12.0 エネルギー対策 1.0 10.0 その他 1.2 12.0 合計 10.0 100.0
<特別会計には巨額の資金が「埋蔵されているのか」>
特別会計は原則として一般会計同様財政法の規律を受け、予算編成上の扱いや国会審議における扱いについて、一般会計との間に基本的な違いはありません。
また従来から、特別会計の予算・決算や積立金の残高等はすべて公表されており、さらに、平成19年度決算からは、特別会計に関する法律に基づき、企業会計の慣行を参考にした特別会計財務書類について、国会に提出することにしました。また、各省庁のHPで、特別会計の財務に関する情報を公表するなど、一層の情報開示の充実を図っているところです。
特別会計の積立金等、剰余金等は。、公開されている決算書、財務書類等において、誰もがその存在を確認できるものであり、密かに埋め隠されているわけではないんです。
<特別会計の積立金等は安定的な財源になるのか>
特別会計のストックの積立金は、特別会計に関する法律に定められたそれぞれの目的のために積み上げられているものであり、法律の目的を超えて、自由に一般会計に繰り入れて財源としてできるものではありません。
平成20年度第2次補正予算等においては、将来の金利変動に備えて積み立てられた財投特会の積立金を一般会計の財源として活用していますが、これは、あくまで、「百年に一度」と言われる厳しい経済状況に対応するために、特別に立法措置を講じたうえで、臨時的・特例的に行ったものです。また、こうした活用も、積立金というストックを取り崩すしていくものであり、継続して行えうるものでないこと、積立金を歳出の財源に充てることにより、国の純債務(債務残高から資産額を引いたもの)が増加し、バランスシートが悪化することにも留意が必要です。
フローの剰余金についても、大部分は、将来の国債償還、年金給付等、一定の使途に充てることが予定されています。また、その年の支払状況や金利動向等にも左右されるため、毎年安定的に発生するものではありません。なお、活用可能な剰余金があれば、これまでも、特別会計に関する法律に基づき一般会計に繰り入れているところです(平成20年度の外国為替資金特別会計の剰余金の見込み3.1兆円のうち、平成21年度の一般会計に2.4兆円を繰り入れるなど、平成21年度の予算で2.5兆円の一般会計を繰り入れています)。
以上のように、ストックの積立金にせよ、フローの剰余金にせよ、新たな施策のために安定的な財源とはならないのです。
特別会計 剰余金 翌年度歳入に繰入 積立金等に積立 一般会計へ繰入 その他 交付税及び譲与税配付金 11,518 11,518 ― ― ― 登記 333 333 ― ― ― 地震再保険 640 ― 640 ― ― 国債整理基金 283,349 283,349 - - - 財政投融資 24,838 ― 24,838 ― - 産業投資 1,337 1,266 - 70 - 外国為替資金 39,267 ― 21,267 18,000 - 特定国有財産整備 1,665 1,665 ― ― ― エネルギー対策 3,618 3,583 34 - - 国立高度専門医療センター 151 146 4 - - 労働保険 13,067 3,912 9,155 - - 船員保険 46 0 46 ― ― 年金 21,321 16,135 5,186 - - 食料安定供給 749 749 ― ― ― 国営土地改良事業 930 387 - 543 - 農業共済再保険 600 368 231 - - 森林保険 66 81 ▲15 - - 国有林野事業 ▲3 - - - ▲3 漁船再保険及び漁業共済保険 6 83 ▲2 - ▲74 貿易再保険 7,974 1,475 6,499 - - 特許 1,846 1,803 - 42 - 都市開発資金融通 369 336 ― 33 - 治水 2533 2533 - - - 道路整備 7,833 7,833 ― ― ― 湾港整備 407 407 ― ― ― 自動車損害賠償保障事業 680 629 50 ― ― 自動車検査登録 144 144 - - - 合計 426,371 339,821 67,938 186,689 ▲78単位:億円
特別会計 金額(億円) 地震再保険 11,281 国債整理基金 119,329 財政投融資 621,891 うち 財政融資資金 621,891 投資 0 外国為替資金 202,927 エネルギー対策 1,053 うち 電源開発促進 1,053 労働保険 144,455 うち 労災 81,875 雇用 積立金 52,996 雇用 雇用安定資金 9,584 船員保険 1,226 年金 1,280,687 うち 基礎年金 14,651 国民年金 80,955 厚生年金 1,184,388 児童手当 744 食料安定供給 247 うち 調整 調整資金 97 調整 積立金 150 農業共済再保険 1,142 うち 農業 627 家畜 357 園芸施設 158 森林保険 148 漁船再保険及び漁業共済保険 156 漁業普通保険 101 漁業特殊保険 42 漁業乗組員給与保険 13 貿易再保険 5,252 自動車安全 2,569 うち 保障 205 自動車事故対策 2,363 合計 1,833,361
その総額は30兆円超と言われており,
北沢栄・東北公益文科大学教授は、特別会計の剰余金(フロー)には「毎年10兆円相当の“恒常的不用金”」を含む42 兆円規模の「埋蔵金」が存在し、積立金(ストック)には「「可処分積立金」として47.4 兆円」が存在するとしている。
それで「平均」って言ってるのだから,呆れた話.