海外でも、ギリシアなどEC諸国のソブリン・リスクが話題になっていますが、
わが国でも「国債は大丈夫なのだろうか」という質問がセミナーなどでよく聞かれます。
そこで少し、日本の国債の問題について考えて見たいと思います……
景気後退期に公債発行による財政規模の拡大、公共事業の促進、減税といった措置によって景気刺激を図ることは、財政の「景気調整機能」と呼ばれ、財政が果たすべき重要な役割の一つである。我が国では、バブル崩壊後の不況を含め景気後退期には、こうした裁量的財政政策を積極的に活用してきた。(中略)他方で、景気拡大期においては、我が国の一般政府の構造収支にはある程度の改善がみられるが、80年代後半から90年代初めの一時期を除き景気拡大期であっても赤字となっていることが多かった。また、構造的財政赤字と経済成長率の関係に注目すると、1970年代前半、及び、1990年代初めにおいて成長率の大幅な低下があり、それに引き続く期間、つまり1970年代央以降、及び、1990年代前半以降において景気循環にかかわりなく継続的な構造赤字が観察される。
各国の財政赤字の大きさの違いを制度的な要因で説明しようとする考え方もある。 例えば、政府のある主体から別の主体への移転が大きい場合には、予算を使う側の費用意識が小さくなり、結果として過大な支出につながりやすく、また、制度的に実際の負担の程度が見えにくいような場合にも、財政規律が保たれにくいという観点も考えられる。このような指摘は一般論であり、実証的な検証は難しいが、他方で我が国にも関連すると思われる点もある。例えばこうした観点からすると、我が国では国から地方への移転額が国際的にみても大きいことから、地方レベルでの財政規律が保たれるよう注意する必要がある。また、政府だけでなく公的企業についても財政状況の正確な把握をはかることも重要である。
内訳名 残高(億円) 割合(%) 国債 7,071,297 78.1 内 普通国債 5,810,591 64.2 内 建設国債 2,347,385 25.9 特例国債 3,208,286 35.4 減税特例国債 33,400 0.4 日本国有鉄道清算事業団承継債務借換国債 187,383 2.1 国有林野事業承継債務借換国債 23,902 0.3 交付税及び譲与税配付金承継債務借換国債 10,234 0.1 財政投融資特別会計国債 1,229,844 13.6 交付国債 5,084 0.1 出資・拠出国債 18,524 0.2 日本高速道路保有・債務返済機構債券承継国債 7,254 0.1 借入金 564,405 6.2 内 借入金 211,263 2.3 短期借入金(5年未満) 353,142 3.9 政府短期証券 1,420,438 15.7 内 外国為替資金証券(年度越の額) 1,400,000 15.5 石油証券(年度越の額) 12,133 0.1 食糧証券(年度越の額) 8,305 0.1合計 9,056,140 100.0
財務省ホームページ「国債及び借入金債務現在高(2008年9月末.2009年9月末)」をベースに推定額を表示いたしました。
(政府保証債務は除く)
(図29)国債の所有者別内訳(平成20年12月末(速報))所有者 金額(億円) 比率(%) 日本銀行 581,662 8.3% 銀行等 2,879,332 41.2% 生損保等 1,338,242 19.1% 公的年金 821,639 11.7% 一般政府(除く公的年金) 30,380 0.4% 財政融資資金 67,610 1.0% 年金基金 268,525 3.8% 海外 472,337 6.8% 家計 366,758 5.2% その他 169,993 2.4% 合計 6,996,478 100.0%(注)「銀行等」には「証券投資信託」及び「証券会社」を含む。平成19年12月末速報値から「銀行等」はゆうちょ銀行、「生損保等」はかんぽ生命を含む。
我が国の国債保有構造は、銀行等の金融機関の保有割合が高く、市場の状況が変化した場合に、市場参加者の取引が一方向に流れがちな傾向にあるとの指摘もあります。
国債は、国が発行し、利子及び元本の支払い(償還)を行う債券です。短期国債を除き、利子は半年に1 回支払われ、満期時に元本が償還されます。
現在発行されている国債は、短期国債(6ヶ月、1年)、中期国債(2年、5年)、長期国債(10年)、超長期国債(15年変動、20年、30年、40年)、個人向け国債(5年固定、10年変動)、物価連動債(10年)に大別されます。
このうち短期国債は、すべて割引国債です。割引国債とは、額面金額を下回る価格で発行され、途中での利払いは行われず、満期時に額面金額で償還される国債です。
一方、中期国債、長期国債、超長期国債(15年変動利付国債を除く)及び個人向け国債(5年固定)は、固定利付国債です。固定利付国債とは、満期までの半年毎に、発行時にあらかじめ決められた利率(表面利率、ク-ポン・レ-ト)で計算された利子が支払われ、満期時に額面金額で元本が償還される国債です。
15年変動利付債、個人向け国債(10年変動)は、それぞれ一定のルールに基づき適用される利率が変動する国債です。物価連動債は、利率は固定されていますが、物価の動向に連動して元金額(元本)が増減し、あわせて利子も増減する国債です。
短期国債 中期国債 長期国債 超長期国債
償還期間等 6ヶ月、1年 2年、5年 10年 15年変動(*1)
発行形態 割引国債 利付国債 利付国債 利付国債
最低額面単位 1,000万円 5万円 5万円 10万円
発行方式 公募入札 公募入札 公募入札 公募入札
窓口販売 窓口販売
募集取扱い) (募集取扱い)
入札方式 価 格 競 争 入 札 ・ コ ン ベ ン シ ョ ナ ル 方 式
非競争入札等 非競争入札 非競争入札
第Ⅰ非価格競争入札 第Ⅰ非価格競争入札 第Ⅰ非価格競争入札 第Ⅰ非価格競争入札
第Ⅱ非価格競争入札 第Ⅱ非価格競争入札 第Ⅱ非価格競争入札
譲渡制限 あり(*2) なし なし なし
発行頻度 割引短期国債1年:月1回 それぞれ月1回 月1回 年1回(*4)
(21年度計画:割引短期国債6ヶ月:総額
:4月変更後) 0.9兆円
償還期間等 超 長 期 国 債 個人向け国債 物価連動債
20年 30年 40年 5年固定、10年 変動10年
発行形態 利 付 国 債
最低額面単位 5万円 5万円 5万円 1万円 10万円
発行方式 公募入札 公募入札 公募入札 窓口販売 公募入札
(募集取扱い)
入札方式 価格競争入札・ 利回り競争入札・ ― 利回り競争入札・
コンベンショナル方式 ダッチ方式 ダッチ方式
非競争入札等 第Ⅰ非価格競争入札 第Ⅱ非価格競争入札 ― 第Ⅱ非価格競争入札
第Ⅱ非価格競争入札
(20・30年)
譲渡制限 なし なし なし あり(*2) あり(*2)
発行頻度 月1回 年6回(*3) 年4回(*3) それぞれ年4回 年1回(*4)
(21年度計画:
4月変更後)
1 15年変動利付債の適用利率は、10年固定利付国債の金利に連動し(10年固定利付国債の金利-α)、半年ごとに利率が変動しますが、スプレッドαは入札日に決定され、償還まで不変です。
2 短期国債は法人(一定の信託の受託者を含む。)のみ、個人向け国債は個人(一定の信託の受託者を含む。)のみ、物価連動国債は一定の条件を満たす法人等のみに、それぞれ譲渡可能です。
3 30年債の6月及び8月発行分、12月及び2月発行分はそれぞれ4月債、10月債と原則リオーン発行。40年債の7月、11月及び1月発行分は5月債と原則リオープン発行。
4 市場の状況によっては発行を取り止めることがあります。
価格(利回り)競争入札とは、財務省が提示した発行条件(発行予定額、償還期限、表面利率(クーポン・レート)など)に対して、入札参加者が、落札希望価格(又は利回り)と落札希望額を入札し、その入札状況に基づいて発行価格と発行額を決定する入札方式です。
価格(利回り)競争入札では、価格の高いもの(又は利回りの低いもの)から順に、原則として予定額に達するまでの額が落札されます。
コンベンショナル方式とは、入札方法の一形態で、複数の入札の中から条件の良いものを優先的に選択し、予定入札量に達したところまでの入札に応じる方式のこと。
入札方式の中では最も自由競争の性格が強いといわれる方式で、完全入札と呼ばれることもある。
コンベンショナル方式は、中期利付国債の入札などに用いられている。
コンベンショナル方式によると、入札者が自ら行った入札価格で債券等を購入することになるため、入札の巧拙が直接落札コストに影響することになる。
コンベンショナル方式の場合は、最低落札価格と平均落札価格が発表される。最低と平均の価格差のことをテールというが、これが短ければ短いほど良い入札ということになる。業者は平均以下で落札できればその分収益となる。投資家への販売は通常平均落札価格となるためである。
ちなみに10年国債に関しては投資家にはこの平均落札価格の63銭下で販売する。これはシ団引受において63銭の引受手数料が業者に入るため、その分まるまる上乗せして入札するようになってしまったためである。業者は引受手数料が入るがその分の売買損が発生する。
ダッチ方式というのは応札者が希望価格もしくは希望利回りで応札し、価格ならば高いところから順に入札額に達したところの価格、利回りならば低い利回りから順に入札額に達したところの利回りをそれぞれ発行価格もしくは発行利回りとするものである。そして応札したところはこの最低価格もしくは最高利回りでの同一条件で所得する。
ちょっとややっこしい説明だったかもしれない。要は高いところから順に発行予定額に達するまで下がってその一番安いところを条件にするものである。
10 年物価連動国債及び40 年債で利回り競争入札・ダッチ方式を採用している以外は、価格競争入札・コンベンショナル方式を採用しています
2年・5年・10年固定利付国債については、入札額が小さくなる傾向がある中小入札参加者に配慮し、非競争入札が行われています。
非競争入札とは、価格競争入札と同時に応募が行われ、価格競争入札における加重平均価格を発行価格とする入札です。入札者は、価格競争入札または非競争入札のいずれか一方に限り応募することができます。
発行限度額は発行予定額の10%であり、応募限度額は、各入札参加者(信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会及び農林中央金庫は除きます。)につき10 億円です。
第Ⅰ非価格競争入札は、価格競争入札と同時に応募が行われ、発行予定額のうち10%を発行限度額とし、価格競争入札における加重平均価格を発行価格とする入札です。国債市場特別参加者にのみ参加資格が認められ、直近2四半期の落札実績に応じて決められる各社ごとの応札限度額まで応札・落札できます。
これは、通称「おかわり入札」と言われており、価格競争入札で落札した金額の15%にあたる額を、追加的に財務省から購入することができるものだ。
これは、国債市場特別参加者、いわゆるPD懇メンバーのみにゆるされている特権なのである。
分かりやすく説明すると、国債市場特別参加者である証券会社Aが、国債を落札価格100円で100億円の落札したとする。
国債落札結果判明後、相場が堅調となり、その国債の価格は101円に値上がりした。証券会社Aには、投資家から「101円で買いたい」という注文が殺到したとする場合、落札額100億円の15%にあたる15億円は、平均落札価格で追加購入することができるのだ。
つまり、証券会社Aが100円で100億円落札したうえ、その入札時の平均落札価格が99円だった場合、99円で15億円の追加購入ができるのだ。
ただし、これができるのは、国債市場特別参加者のみ。
財務省が指定した国債の大口投資家で、国債の発行時期や種類などに注文をつけたり、他の買い手が参加できない入札に参加できるなどの「特典」の代わりに、一定額の入札や落札(購入)を義務づけられる。国債の安定消化に役立つとされ、欧米にも同様の指定制度がある。
国債市場特別参加者とは、国債入札のたびに、必ず一定金額の落札を行い、一定金額の応札を行った実績を持って、初めて認められる。買いたいときだけ、時々国債を落札するようではメンバーにはなれない。
その国債市場特別参加者は、一定の時期に行われている「国債市場特別参加者会合」の場で、財務省と直接、国債発行計画や国債管理政策などについて話し合うことができるのだ。
予算上平成21 年度に発行すべき国債の総額は、132.3 兆円と平成20 年度当初計画に比べて6.0 兆円の増となり、4 年ぶりの増額となりました
新規財源債は、一般会計予算の歳出の財源となるものですが、対前年度当初比7.9 兆円増の33.3 兆円となりました。
借換債は、過去に発行した国債の満期到来額等により発行額が定まるものですが、これまでの平均償還年限の長期化及び既発国債の買入消却等の国債管理政策上の取組の効果もあり、▲ 1.6 兆円減の91.0兆円となりました。
財投債は、財政融資の新規の貸付規模のほか、財政融資資金全体の資金繰りを勘案して決定されるものですが、平成21 年度においては▲ 0.4 兆円減の8.0 兆円となりました。
<発行根拠法別発行額>区分 20年度当初 21年度予定 金額(億円) 比率(%) 金額(億円) 比率(%) 新規財源債 253,480 20.1 332,940 25.2 内 建設国債 52,120 4.1 75,790 5.7 特例国債 201,360 15.9 257,150 19.4 借換債 925,420 73.3 909,914 68.8 財投債 84,000 6.7 80,000 6.0 国債発行総額 1,262,900 100.0 1,322,854 100.0(注1)各計数ごとに四捨五入したため、計において符合しない場合がある。
国債の消化方式は、市中発行、個人向け販売、公的部門の3 方式に大別されます。
このうち公的部門は平成19 年度末をもって郵便貯金や年金積立金等による財投債の経過措置引受が終了したことに伴い、現在は日銀乗換のみとなっていますが、平成20 年度当初計画に比べて1.1 兆円増の10.7 兆円となりました。
個人向け販売分は、金利動向により販売額が大きく変動する傾向がみられるところ、平成20 年度においては当初8.0兆円の発行を予定しておりましたが、低金利等を背景に販売実績が低迷しており、2次補正後の国債発行計画において▲ 3.8 兆円減の4.2 兆円としました。平成21年度国債発行計画においても、平成20 年度を含めた過去の個人向け国債の販売額等を踏まえ、対前年度当初比▲ 3.8兆円減の4.2兆円としました。
これらの結果、カレンダーベース市中発行額(あらかじめ定期的に額を定めた入札により発行する国債の、4月から翌年3月までの発行予定額の総額)は平成20年度当初計画に比べて8.2兆円増の113.3 兆円と4年ぶりの増額となりました
<消化方式別発行額>区分 20年度当初 21年度予定 金額(億円) 比率(%) 金額(億円) 比率(%) 市中発行分 1,086,677 86.0 1,173,793 88.7 内 カレンダーベース市中発行額 1,051,000 83.2 1,133,000 85.6 第Ⅱ非価格競争入札 25,140 2.0 38,700 2.9 前倒し債発行減額による調整分 10,537 0.8 2,093 0.2 個人向け販売分 80,000 6.3 42,000 3.2 内 個人向け国債 62,000 4.9 24,000 1.8 その他窓販 18,000 1.4 18,000 1.4 公的部門(日銀乗換) 96,223 7.6 107,060 8.1 合計 1,262,900 100.0 1,322,854 100.0(注1)各計数ごとに四捨五入したため、計において符合しない場合がある。
区分 平成20年度 平成21年度 発行額(兆円) 比率(%) 発行額(兆円) 比率(%) 短期債(1年以下) 21.0 19.8 23.7 20.9 中期債(2~6年) 44.5 41.9 48.0 42.3 長期債(10年) 22.8 21.4 22.8 20.1 超長期債(10年超) 13.6 12.8 14.6 12.9 10年物価連動債 1.5 1.4 0.3 0.3 15年変動利付債 0.6 0.6 0.3 0.3 流動性供給入札 2.3 2.2 3.6 3.2 合計 106.3 100.0 113.3 100.0(注1)各計数ごとに四捨五入したため、計において符合しない場合がある。
(注2)平成20年度は20年度補正(2次)後である。