\アッカヤ~ン/\ウィッ-ス/ ◆JMyWwb3Ogc
\アッカリ~ン/
「はーい!バトロワ、はっじまっるよー」
【赤座あかり@概念】
[状態]:\アッカリ~ン/
※今回の話に赤座あかり本人は一切登場いたしません。
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『ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆry』
「え、え? なんだコレ」
夜天の下、怪訝そうに顔を顰めた少年がぼそりと呟く。
タンクトップに短パンという、身軽な格好をした茶髪三白眼の男子。
前原圭一だった。
「おい、ちょ、うるせっ、音量でかいって。おーい」
エリアF-4、そこは一面の荒野である。
土と砂と雑草と、あとは夜空があるだけの、どこまでもまっ平らな空間。
その中心にてしゃがみ込み、地べたに置かれたラジカセをつんつん突く。
それが前原圭一の現在だった。
「あれくっそっ。壊れてるのかぁ?」
黒くて横長の、昔ながらのオーソドックスな形をしたラジカセ。
ここ数年で急速に姿を消していった骨董品のスピーカーから、圭一の聞き知らぬ曲が大音量で垂れ流されている。
なにやら妙ちくりんな歌であった。
圭一は正直これもなかなか悪くないな、などと思ってもいたのだが。
流石にコレを野外で聞いているのを他人に見られるのは恥ずかしい。
なので先ほどから必死に止めようと、指を叩きつける様にして停止ボタンを連打しているのである。
「止まらねえ……罠か」
しかしいっこうに成果は上がっていなかった。
硬いボタンはどれだけ押しても押し込むことができず、再生ボタンはラジカセ本体にめり込みっぱなしだ。
こんな事をしている場合ではないのに、という焦りの意識が圭一の中では膨れ上がっていく。
前原圭一は現在進行形で緊急事態の真っ最中である。
突如拉致され、どことも知れぬ場所に送られた挙句、首輪を嵌められて「殺しあえ」ときた。
そのうえ自分ひとりだけでなく、部活仲間まで巻き込まれている。
見過ごせよう筈もない。
なんだ、あのフザケタぬりかべ野郎、いろいろ好き勝手言いやがって。
こんなふざけた茶番は絶対に殴りぬいてぶち壊す。
部員唯一の男子として、荒事解決の役は俺が担うべきなのだ。
と、意気込もうとしていたにもかからず、だ。
ラジカセ一台と奮闘しているのが悲しいかな、前原圭一の実情だった。
「すまん。うっかり地面に落しちまったのは謝る。
もうしねえよ。だからそろそろ泣き止んでくれー!」
そんな懇願にも聞く耳持たず。
狂った黒い箱はただひたすらに、爆音を奏で続けていた。
しかも曲が終わったら自動B面再生でリピートをかけるという徹底振りである。
「…………おーけー、おーけー分ったぜ。なら仕方ねえ。
これだけはしたくなかったが、お前がそんなに聞き分けがねえんなら……」
そして埒の明かない状況に痺れを切らした圭一は、最後の手段に訴え出る。
ぐいっとラジカセを持ち上げ、担ぎ上げ、しかし。
「ぐ」
落とす寸前、ちょっと冷静になってしまった。
荒野の真ん中で、星空の真ん中で、アレな歌を大音量で垂れ流すラジカセを地面に叩きつける前原圭一の姿。
なんともシュールな光景を、客観的に想像してしまったのだ。
「い、いや、だが、やらなければ」
中途半端な姿勢で固まること数秒の後。
ようやっと圭一は決心する。
情けない格好だが、ラジカセもかわいそうだが、しかたない。やらねばなるまい。
これは恥ずかしいというだけではなく、もう一つ大きな事情があるのだ。
夜の荒野、遮蔽物のない空間において、大音量を撒き散らしている己の行為がどれだけ危険か、分らないわけがない。
置かれている立場を思えば選択肢など無く、ようやっと圭一は腕に力を込め。
「へい、へい、面白いことやってるじゃないッスか」
圭一の首筋を、つぅっと汗が流れ落ちていく。
信じたくはないが、
どうやら、背後から話しかけられているようだった。
「あ、やっと聞いてくれたッスね」
弾んだような、けれど嘲りの含まれたような、少年の声だった。
この見渡しのいい空間にあって、
ここまでの接近を気取れなかったのは、耳元で鳴り続ける大音量のせいか、
圭一の不注意か、はたまた夜のベール隠れていたのか。
「……」
あるいは背後の男の手際なのか。
背中に押し当てられた固い感触、これが何か、想像したくない。
「…………」
下手に動くのは得策ではない。
そう判断した圭一は振り返らず、応えず、膠着し、男の次の言葉を待つことにした。
じっと、両腕でラジカセを持ち上げたままの、妙な姿勢のままで……。
そのまま、十秒が経過した。
「……ぐ、ぐぐ、おい、なんか、言えよっ!」
「んー、いや、なんかアンタ面白いから、もうちょっと見とこうかなーって」
「ぐぎ……お前ぇ……!」
「へへへっ、冗談冗談。ウィッス!俺は立海大2年エースの切原赤也ッス!以後ヨロシク」
背筋に当てられていた感触が消え、ため息を吐きながら圭一は振り返る。
これが、二人の出会いだった。
前原圭一と、その背後にて立つ少年――切原赤也との。
【F-4/荒野/一日目・深夜】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:ラジカセ(故障中)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~2)
基本行動方針:このラジカセと何とかする。
1:やれやれ……。
【切原赤也@テニスの王子様】
[状態]:健康
[装備]:なにか尖ったもの
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~2)
基本行動方針:目の前の男を観察する。
1:……なにしてんだろう、この人。
最終更新:2011年11月06日 03:04