「さて・・・と、あなたは一体なにしてるのかしら?こんな戦場をウロウロして、死にたいのかしら?なら止めないけど」
突然僕を救ってくれた少女が僕に顔をずいっと近づけてきた。
年齢的には16くらいだろうか?髪はショートボブで水色。よく見たら目の色も水色。で服装は白基調の制服みたいなもの。ネクタイを締めている。スカートも水色。そして白のブーツ。
・・・結構すごい服装だなと突っ込みを入れたかったが命の恩人であるためそこはなしで。
「実は俺・・・記憶をなくしたみたいなんだ」
と真実を告げると、

「え!?じゃあ君があの有名な・・・」

と少女はそこまで言ってなぜか固まった。そしていきなり咳払いして、
「まあ記憶喪失なら仕方ないわね。私がかくまってあげる」
といってくれた。
「あ、ああ・・・まだ分からないことも多いけどよろしく」
取り合えず世話になっとこうということで。

少女が先頭だって、「本部」とか言われるとこまで案内してくれるとのことだ。取り合えずついて行くことにする。
すると、少女が急にしゃべり始めた。
「ところで、まだ自己紹介してなかったね。私は―この世界では本名を名乗るとまずいから―Yっていうの。よろしく」
そこで疑問に思った。
「どうして本名は名乗れないの?」
「そうね・・・この世界は文明の発展が絶頂を迎えた後みたいな感じで、その文明の『副産物』が出来てしまったの。それが人類に害を及ぼすんだけど・・・」
「けど?」
「さっきの敵とかも副産物なの。で、副産物は人の姿に変身できるの。さっきのマント野郎みたいにね。それで迂闊に本名をなのると後でデータベースを調べられたりして面倒だから、本名は名乗らないの」
そこまで言って俺の方を振り返って、
「君もその可能性があるから一応ね」
と言った。そしてまた歩き出す。
「まあ相手が確実に人間だと分かってても本名を名乗る人は少ないよ。今は誰も信用しない時代・・・そう思ってくれるといいかな」
そういって口をつぐんで、また話し出す。
「でね・・・その副産物を処理するために、ある研究チームが特別な人類を作ることに成功したの。26人いるんだけど・・・それが『Heterogeneous』通称「HTR」ね。その一人が私なの」
・・・いきなり驚愕過ぎる説明が・・・。
そんな俺の気持ちも無視して続ける。
「HTRは主に5つのタイプに分かれるの。『火』『水』『雷』『風』『土』ね。私は雷なの。でさっき使った武器はその能力を最大限に引き出すためのアイテムといっていいわ。・・・で私たちHTRのおかげで副産物問題はほぼ解決しちゃったの」
「でも・・・さっきその副産物が・・・」
「ええ、それが今一番問題になってることなの」
そういってYはこちらを振り返った。とても真剣で、悲しそうな表情だった。
「考えたら分かることだけど、副産物問題が解決したら私たちの能力って必要ないでしょ?だから研究チームは私たちの能力を剥奪して普通の人間に戻そうとしたの。それに気づいた何人かのHTRが反逆を起こして・・・副産物を利用した戦争がおきてるの」
「戦争・・・だって?」
正直一番驚愕した。冗談じゃない。
「でね、HTRは大体二つのグループに分かれてるの。一つは私たちの、もう能力なんていらないって思ってる側。もうひとつが能力はあると便利なんだから残してくれって側。それだけならまだ良いんだけど・・・最近向こう側が能力を使って悪巧みをしようとしてるの。簡単に言うと世界制服ね」
そういってYは目を伏せた。
「私はそういうことが嫌・・・世界征服なんてしたって良いことなんか何一つないのに。でも彼らはその計画を順調に進めてる。そのひとつが・・・新たな『タイプ』の形成・・・言わば5つのタイプのどれにも当てはまらないっていうやつ。それを作るには副産物が必要なの。で、副産物を大量に生み出して、その一部が外に漏れでてるの。それがさっきの奴」
「なるほど・・・」
正直なるほどと言ってる場合でもないが取り合えず続きを聞く。
「で、こちら側がそれを阻止しようといろいろ頑張ってるってわけ。新しい武器の開発とかね。それをやってるのが本部なの」
そういって少女は少し表情を明るくした。
「こんなに暗い話したってしょうがないよね・・・いっつもこんな風になる癖があるから」
そういってYは苦笑した。
「さ、取り合えず本部まで急ぎましょ、皆待ってくれてるし、おいしいご飯も待ってるから」
そういって足早に彼女は俺の前を行く。



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最終更新:2012年08月11日 13:29