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白血病 その3 - (2006/06/04 (日) 17:53:03) の最新版との変更点

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<p> さて今は2005年12月5日の朝、こちらは大雪になっています。<br> 12月3日の午後9時頃帰宅した私に、妻がいきなり「腕が痛い!」と訴えてきました。しかも病歴を持っている左腕です。本人にとってはやはり何より気になる部分です。<br> 私はどこがどのように痛いのか尋ねました。<br> 「脇の下のあたりが筋肉痛のひどい感じで痛む」とのことでした。咳をするだけで激痛が走ると顔をしかめています。<br> 時間は遅いので病院に連れて行くとすれば救急病院か、妻がかかっている市民病院に連絡をすれば対応はしてくれると思いましたが……。<br> テーブルをみると食事の跡があります。高校受験をひかえた娘は普段どおり塾にいっているようです。<br> 私はとっさの判断で病院に連れて行くより本人の不安を軽くする方が先だと感じました。<br> 「少し風邪気味だっただろう、細菌がリンパのところで繁殖して痛みがでているのだろう。ロキソニン(妻が病院からもらっている消炎鎮痛剤です)を飲んでおきなさい。」と努めてのんびりした口調でいいました。<br> すると妻の顔からみるみる緊張の色が消えていきました。<br> このへんの呼吸は何度も修羅場を経験しているものにしかできないでしょう。<br> こういう時一番まずいのは「どうする? 病院に行くか?」と、問い掛けることです。<br> 何より本人が一番不安なのです。その本人の不安を増徴するようなことはさけなければなりません。<br> その痛みが急性で時間を置けばさらに悪化する性質のものかどうかの判断です。<br> もしそう思ったら「よし病院にいこう!」と即断即決で決めなければなりません。<br> 私は食事が作ってあるとところから、少し様子をみた方がいいと判断しました。もちろん最終的には医師の診断を仰がなければならないのですが、それまではとにかく本人の不安な気持ちを軽くしてあげることが大切なのです。<br> 12月8日に市民病院で外科の診察の予定になっています。<br> 「それまでなんとかひっぱれればいいのだが……」<br> 私は内心では不安でしたが何事も無いような顔で着替えを始めました。<br> 冷たい夫だと思いますか?<br> しかしこの状況で病院に連れて行っても、本人にとっていい方向にいくことはほとんどないのです。<br> 12月6日の朝です。妻の腕の痛みはかわらないようです。少なくとも軽くなっているようには思えません。<br> あと2日のうちに痛みが引かねば、また放射線治療を受けなければならないことになるかもしれません。ウーム……。<br> さて、話を12月3日の時点に戻します。<br> 娘を塾に迎えにいくと、娘も開口一番「おかーがたいへんなことになった……。」と言いました。<br> 今年の2月頃にも妻と娘の二人は不安とストレスの連鎖反応で互いにガンが再発し、放射線治療を受けています。<br> 娘の不安も取り除かなければなりません。<br> 娘にも「感染したのだろう。ロキソニンを飲んだら落ち着くだろう」といいました。<br> 車の中で話を聞くと妻は最近アガリクスもフコイダンも飲んでなかったということです。<br> 最近ずーっと身体の調子がよかったためか、またわが家の経済的な理由のためか(たぶんこれが一番大きいでしょう。不甲斐ない夫です。)<br> 実は、私も健康食品の服用にはこだわっていませんでした。<br> 朝飲む秋ウコンは二人とも夏頃からやめていますし、娘もアガリクスは飲んだり飲まなかったりの状態だったようです。<br> 私もいくら食品とはいえサプリメントの形で毎日大量に摂取することに対して、若干の不安もありました。<br> できればサプリメントなしでも健康で元気な状態が維持できれば、それにこしたことはないのです。<br> そして翌日12月4日の朝妻に様子を聞くと、痛みは引いてないとのこと、さらに詳しく聞くと、患部にハレも熱もなさそうです。<br> そうなると感染症の疑いは弱くなり、良性にしろ悪性にしろ、おできみたいなものができて、それが擦れる時や、筋肉のつっぱりによる痛みの方が可能性が強くなりました。<br> そこで私は妻に「また時間差療法をしなさい。」といい、その日のうちに妻用のアガリクスとフコイダンを買い求めました。(妻は娘と兼用にすると残り少なくなると飲まなくなる性質を持っています。)<br> ここまでの事件で私はガンについての重要なふたつのポイントを仮定するきっかけを得ました。<br> そのひとつ目に関連しているのが痛風記です。(私の病気もたまには役にたちます。)<br> 痛風はあの激烈な痛みの発作がなくなっても、病気が治ったわけではありません。<br> 尿酸値のコントロールを続けていかなければなりません。そのためには薬を飲むことと、食事療法が大切なようです。<br> 痛みがないからと油断をしていると、またあの激烈な発作が襲ってくるようです。<br> 症状(痛み)がでていないだけで、痛風自体が治ったわけではないのです。<br> 私が仮定したのは、ガンとサプリメントの関係もこれと似たようなものではないかということです。<br> サプリメントにはガンの症状(無制限に分裂増殖すること)を押さえる効果はあるが、ガンを治す力はないということです。<br> ガン細胞はまわりの秩序に関係なく、無制限に分裂増殖する細胞です。<br> いわば細胞同士のコミュニケーションがとれなくなった細胞といえます。その原因が白血病のところで考えたように、細胞膜に突き刺さっている高分子多糖体の異常であるとすると、サプリメントによりある特定の高分子多糖体を大量に摂取すると、この異常を押さえることができるとは考えられないでしょうか?<br> つまり正常細胞は正常な高分子多糖体の働きで、細胞同士のコミュニケーションがとれ、ある限度以上には分裂しなくなります。<br> ところがガン細胞では高分子多糖体に異常があると考えられ、それがサプリメントにより抑えられるとすると、ガン細胞はとりあえずそれ以上には分裂しようとはしなくなります。<br> しかし分裂増殖はしないだけでガン細胞はガン細胞なのです。<br> サプリメントによる高分子多糖体が不足すると、またガン細胞は無秩序に分裂を開始してしまいます。<br> 症状は押さえても油断をするとまた発作がおきる痛風と一緒です。<br> そして増殖を抑えているだけなので、ガン細胞の数を減らすことはできません。<br> かなり実情に近い説明ができる気がするのですがどうでしょう?<br> </p> <p align="right">(2005年12月7日)</p> <p> サプリメント(特にキノコ系)には免疫力をあげる効果があるといわれています。<br> これをガンが増殖しなくなるということと関連づけてもう少し突っ込んで考えてみましょう。<br> 免疫力をあげるにはふたつの方法があると考えてきました。ひとつは免疫細胞である白血球の数を増やすこと、もうひとつは個々の白血球の活性を高めるということです。<br> 私はガン細胞に対する免疫という観点でいうと、もうひとつ方法があることを思いつきました。<br> それはガン細胞の方が白血球に対する感受性を強めるということです。<br> これにより、たとえ白血球の数が増えなくても、白血球自体の活性度が高まらなくても、結果として免疫力が上がったように見えるはずです。<br> そして当然のことですがガン細胞も細胞です。<br> 分裂増殖するためには材料が必要です。その中には細胞膜に突き刺さっている高分子多糖体も含まれます。<br> 動物には糖分を合成する能力はありません。すべては植物系の細胞を出発点とする食物連鎖で得る以外ありません。<br> もともと高分子多糖体は消化吸収されにくい物質です。<br> しかしそれをサプリメントのような形で(特に低分子化されている)大量に摂取すると割合的には少なくとも、かなりの量の高分子多糖体が吸収されることになると思います。<br> 小腸から吸収された栄養分は血液にのり全身にめぐります。その中には多糖体も含まれているはずです。そして個々の細胞に栄養分として吸収されていきます。<br> もちろんガン細胞にも吸収されます。そしてガン細胞は分裂増殖します。<br> 当然細胞膜には多糖体が突き刺さっています。<br> その新たに分裂してできる細胞の多糖体にサプリメントに由来する性質が残っているとすると、免疫細胞はそれをめがけて攻撃します。<br> この攻撃をする免疫細胞がT細胞で、分裂してできる新たなガン細胞に、サプリメントに由来する多糖体の性質が色濃く出るとすると……、これってまさに「患者側のガン治療」で考えた免疫細胞のガン細胞に対する攻撃の特長……、新たにできるガン細胞だけを攻撃する……、それをうまく説明できる理屈だと思うのですがどうでしょう?<br> それでは新たに分裂してできる正常細胞の方はどうでしょうか?<br> これにも白血球が攻撃するようなら、サプリメントにも抗ガン剤同様の副作用が現れるはずですが……。<br> 私はここにガンの根本原因である遺伝子の異常ということが絡んでくると考えています。<br> タンパク質に糖を付加するのは、細胞内小器官のゴルジ体という場所で行われます。<br> 私はここでおのおのの細胞の細胞膜に突き刺さっている、アンテナのようなタンパク質と多糖体ができるのではないかと想像しました。<br> 個々の細胞内で作られるのですから、同じ生物個体内でも臓器や器官により、多糖体の種類が違う説明もうまくできそうです。<br> そしてこの多糖体には細胞同士のコミュニケーションに大きく関わっていると考えられます。<br> ガン細胞とはこのコミュニケーションがうまくとれなくなった細胞です。<br> タンパク質と糖を結合させるにはエネルギーが必要です。当然酵素がからんでくると思います。その酵素はタンパク質ですので、遺伝子の情報を元に作られます。<br> この一連の流れに故障が生じた細胞はガン化しても不思議ではないような気がします。<br> 正常な細胞では栄養として吸収した多糖体をゴルジ体でその細胞に見合った形に直して、細胞膜上に提示しますから白血球の攻撃は受けません。<br> ところがこの部分に故障があると栄養として吸収した多糖体を、うまく変化させることなく、細胞膜上に提示してしまうのではないでしょうか?<br> 白血球はこの異常な多糖体を目標に攻撃をします。<br> 結果ガンは増殖することなく、症状的には落ち着いた状態になります。見た目的には免疫力が向上したように見えます。<br> これがサプリメントの効果で免疫力を上げ、ガンの増殖を抑えるという、からくりなのではないでしょうか?<br> しかしここで大事なことは症状が出ない(ガンがそれ以上大きくならない)からといって、ガンが治ったわけではないのです。<br> 痛風と同じですね。痛みがないからといって痛風が治ったわけではありません。<br> 油断をすると(ストレス過剰になったり、サプリメントを飲むのをやめたりすると)ガン細胞が活動的になる恐れもあるということになります。</p> <p> さて、私が仮定したガンについての重要なポイントのふたつ目というのは、ガンは段階的にみれば急性の病気ではないかということです。<br> 通説ではガンは20年も30年もかけてだんだんと大きくなるとあります。<br> しかしここまでの娘の経過や、今回の妻のこと(まだガンと決まったわけではないのですが)からそのように思えてきました。<br> これは科学的な根拠はもちろん論理的な裏づけもないただの私の勘です。<br> 検査で見つかる、ぎりぎりの大きさのガンは10億個くらいのかたまりだそうです。<br> 1個からとはいいませんが(仮に1個からだとしても1日1回分裂するとすると、1カ月くらいで10億個になります)そのくらいの大きさになるまで、ほぼノンストップで急成長するのではないでしょうか?<br> そしてあるレベルのところで成長は納まり安定期にはいるような……。<br> たとえば、恥ずかしながら私はたまに“マタズレ”をおこしますが、その時なども少し違和感を覚えてから、確実にイボができていると分かるまで2~3日くらいのものです。<br> もちろんその後の経過は違うでしょうが、大きくなる速さはガンもマタズレも一緒なのではないでしょうか?<br> (2005年12月10日)</p> <p> 細胞が急速に増殖するためには大量の栄養とエネルギーが必要になるでしょう。<br> 身体全体から考えてそのように急成長する細胞に栄養やエネルギーを補給できる量にも上限があるでしょう。<br> かたまりが大きくなればなるほど増殖に必要となる栄養やエネルギーが増大するので、ある一定のレベルで成長が頭打ちされることが予想されます。<br> 私のマタズレを例にとれば(どうも私の病気は痛風やらマタズレやら……、)その大きさは1㎝くらいだと思います。<br> このマタズレのイボの大きさと検査で見つかるギリギリのガンの大きさと、何か関連はないでしょうか?<br> 人間の身体は約60兆個の細胞で、できているといわれています。<br> 体重を60㎏とすると10億個の細胞のかたまりは、約1gということになります。<br> 人間の比重を1とすると、私のマタズレのイボも10億個くらいの細胞のかたまりであることになります。<br> 私の場合思い返すと、何かムズムズとした違和感があり、2~3日後にはハッキリとしたかたまりが出現していたような気がします。<br> ガンの成長の仕方も、私のマタズレと同じなのではないでしょうか?(私のマタズレと一緒にするのは、ガンに対して失礼かもしれませんが……、)<br> そうなるとガン検診で10億個より小さいガンのかたまりをみつけられないのは、検査技術のレベルの問題より、そのタイミングにあると考えられるかもしれません。<br> つまりそれ以下のガンが見つかるのは、ちょうど成長をしているときに、検診を受けた時に限られるということです。<br> そしてその成長は10億個くらいのかたまりになったときに一段落します。<br> それ以上大きくするには、栄養とエネルギーが不足するのでしょう。<br> そして私のマタズレの場合は、その後腫れて赤くなり、痛みがでて、膿がでて、そして治ります。<br> 明らかに白血球がマタズレと戦ってくれたのです。<br> ガンの場合もこのマタズレと同じような経過をたどるのではないでしょうか?(初めてガンに対して申し訳ないという気持ちが芽生えてきました。よもや私のマタズレと同等に扱われるとは……、)<br> ただガンの場合は白血球と戦っても、一方的に負けることはないようです。<br> そしてそれ以降ガンは増えもせず、減りもせずという安定期にはいるようです。<br> これをガンのしぶとさとみることもできますが、白血球の側からみると、本気で戦っていないようにも見えます。<br> 熱もでず、腫れもしないわけですから。<br> マタズレには、膿(白血球の死骸)まで出して攻撃をするのにです。(もっともマタズレがマタズレ細胞の増殖により発生するとも限りませんが……。)<br> このへんのところも高分子多糖体が関係しているのかもしれません。<br> マタズレがもし細胞なら、自分がはっきり敵だという提示をしているのでしょう。<br> それに対しガン細胞は、明らかにもともとは自分の身体の一部で、大切な役割を持った細胞なのですから、敵か見方かの提示があいまいなのかもしれません。<br> このように増殖力からも、免疫力からも、ガンは10億個くらいのかたまりでいる時間が長くなる性質があると思われます。</p> <p>さて問題はその後のガン細胞の振る舞い方です。<br> 10億個くらいのかたまりともなると、発生部位によっては症状として感じることもあるでしょう。<br> しかし、そのかたまりがそのまま大きくならなければ、何か変だなと思いつつもそれに慣れてしまい、大きな支障もなく日常生活を送ることになるのではないでしょうか?(ちなみに今は12月11日の午後8時ですが、私の妻は元気に夕食の支度をしています。腕の痛みはあるのでしょうが慣れてしまったのか、あまり痛い! というのをこのところ聞かなくなりました)<br> また、おそらく大多数は何の症状もなく、それができたことさえ気づかずに、日常生活を送っているのだと思います。<br> もちろん中には発生部位によって、急性の症状とか激しい痛みに襲われることもあるでしょう。<br> そして文字通りそれが致命傷になってしまう可能性もないとはいえませんし、安定期がなくそのままの勢いで増殖を続ける、いわゆる超悪性のガンも存在するでしょう。<br> これらは残念ながら現段階ではどうすることもできないと思います。<br> しかしながらそのようなケースはかなりの少数派で、大多数は安定期が長く無症状であることのほうが多いのではないでしょうか?<br> このへんも痛風と共通するものがあると思われます。<br> このように安定期を迎えたガンは、けっして治ったわけではありません。<br> ガン細胞の特徴である分裂増殖する能力は残っています。当然活動は続いているはずです。<br> それが安定期にあるということは、ガンの増殖能力と免疫力のバランスがとれているということです。<br> このバランスが崩れたとき、ガンは大きくなるか小さくなります。<br> 小さくなる原因としては、ガン細胞の免疫細胞に対する感受性が、強くなることが考えられます。<br> 私の勘としては、割合的にはこちらのほうが多いような気がします。<br> しかし当然のことながら、中には成長し、生命を脅かす存在になるものもあります。<br> そのような場合も、やはり段階的に急性の性質があるのではないかと考えたのです。<br> 第一段階は、少し場所を移動し、新しい場所でもまた10億個くらいのかたまりができるようになることです。いわゆる隣接転移とよばれるものでしょう。<br> しかし新しい場所でも、だいたい10億個くらいのかたまりで、成長は頭打ちになるはずです。栄養とエネルギーの供給量からも、そう考えるのが自然です。<br> こうして割合近くの場所に、ポツポツと小さなかたまりが多数できるようになってきます。<br> 次にガン細胞は、特殊能力を発揮します。それは近くの血管に働きかけ、そこから自分専用の新しい血管を作る能力です。<br> これにより栄養とエネルギーの供給量は一気に増え、ガン細胞は急成長します。すでに進行ガンの段階に入ったと考えてよいでしょう。<br> しかし大きくなればなるほど、分裂増殖するための栄養とエネルギーの量は増えるわけですから、ある段階で成長はまた頭打ちになるはずです。<br> すると今度はその新生血管を利用して、全然別の組織や器官に移動をし、その場所でも増殖を開始します。いわゆる遠隔転移です。<br> 娘はまさにこの段階まで症状が進んでしまっていたのです。<br> もちろんこの段階に至るまでにも、発生部位によっては生命の危険がおとずれることもあるでしょう。<br> しかし多数はこの段階でも、ガンによる直接の症状は出ないことが多いように思われます。<br> ただ栄養をかなりガン細胞にとられるので、やせて元気がなくなるという状態にはなるでしょう。<br> 進行ガンの後期で、ガンによる直接的な症状として正常細胞が圧迫されることによる臓器不全がおこる一歩手前といえるでしょう。<br> この段階までくると、もはや現代医学の三大療法では、ガンに対抗することはできなくなります。<br> 手術や放射線は限局的な治療で、治療を施した部位のガンを、縮小、または取り除くことができても、免疫抑制をおこすので、他の部位のガンがより大きくなってしまう恐れが強くあります。<br> ただし症状が出るほど大きくなったガンを、それだけを取り除く目的の、限局的な手術や、放射線治療は、その症状を抑えるという意味では、効果があると思います。<br> 抗ガン剤治療は全身的な治療ですが、身体にあるすべてのガン細胞を殺すほどの薬を使うと、先に身体の方がまいってしまうようです。<br> また、抗ガン剤は原則的に細胞が分裂する際に作用する薬なので、ガン細胞が完全に同調して分裂でもしない限り、すべてを取り除くことはできません。<br> そして免疫抑制を強くおこすので、その残ったガンが治療後に元の状態より大きくなってしまう恐れが、非常に強くなります。<br> さらに三大療法は、治療をすればするほど、身体全体の元気を奪い取る性質を持っています。<br> 患者側にとっては、可能性は薄いとわかっていても、わらをもすがる想いで、なんらかの治療をして欲しいと思うのは当然のことでしょう。<br> 結果、治る見込みがないのにつらい治療を続け、身体はみるみる衰弱し、一度も元気になることなく最後を迎えるというケースが多いと思われます。</p> <p> その点私の娘の場合は、先生方が完全に完治をあきらめ、QOL(生活の質)を維持することを目的とした治療にするという方針をたてられたのが、結果的に幸いしました。<br> その当時は、もはやサジを投げたのかと大変反発して、なんらかの手立てはないのかと質問しましたが、考えてみればあるわけはないのです。<br> それは病院側はガンがすべてなくなった状態(見えなくなった状態)を完治と考えているからです。<br> また大多数の人もそのように考えているので、病院側に無理な注文をして、見込みのない治療が続けられ、結果苦しみながら命を縮めてしまっているのです。<br> 私の娘も抗ガン剤治療は続行されましたが、おそらくあまり身体に負担のかからない、軽めのものを使用してくださったと思います。<br> また完全に否定された状態からのスタートだったので、なんでも試してみようという気にもなったのです。<br> これがなまじ僅かながらも可能性があるといわれると、やはり病院の治療にすべてをかけ、いたずらに娘を苦しめるだけの結果になったかと、今にして思えば恐ろしくもなります。<br> 健康食品による免疫療法を開始して、娘は少し元気になったように思われました。<br> 抗ガン剤が軽くなったせいかもしれません。<br> しかし激ヤセの状態は改善されませんでした。</p> <p> それが画期的に症状がよくなったのは、時間差療法導入の直後です。<br> これは特に血管新生を阻害することにより、ガン細胞の栄養補給路を断つことに成功したためでしょう。<br> その結果、大きくなっていたガン細胞は、成長することはおろか、その大きさを維持することも困難になり、ガンの縮小がみられたのだと思います。<br> しかし。このままガンがきれいになくなってしまうのではないかという、期待通りにはいきませんでした。<br> ある一定レベルまで縮小したあとは、ガンはなかなか小さくなってはくれないのです。<br> 新生血管による栄養補給路をたっても、ガンはもともと身体の一部なのですから、完全に栄養がいかないわけではありません。<br> ある程度の大きさを維持しているのも当然のことかもしれません。また、逆に大きくなってしまったこともあります。<br> やはりストレスや身体の不調が原因なのでしょうが、治ったはずの左腕が大きく腫れあがってしまったのです。<br> 今年の2月頃でした。このときは放射線治療を受けました。<br> 治療の結果腫れはひき、また治療後しばらくは、その後遺症と思われるリンパ浮腫とよばれる症状に苦しんでいたようですが、現在ではあまり気にならない状態に戻っているようです。<br> このようにガンは治ったわけではないので、いつ再発する恐れがないともいえないのですが、一番大切なことは、娘も妻も元気であるということです。<br> 日常生活のレベルでは、まったく不自由していないのです。<br> これがガンを押さえることを主眼においた治療の特長であり、最大の長所です。<br> 痛風における、尿酸値のコントロールと同じように、ガンの増殖を抑える努力をすれば、ほとんど症状が出ない――治ったわけではないけど、健康で元気に生きていくことができるのです。<br> これはガンを取り除くことだけを考えた三大療法だけでは不可能なことです。<br> 確かにガンがきれいになくなって欲しいと願っています。しかし、そればかりにとらわれ、身体に負担がかかるような治療をするのは、正直怖いのです。<br> ものは考えようです。ガンも痛風も現在の医学のレベルでは、治すのが非常に困難な病気です。<br> しかしたとえ病気であっても、元気に生きていくことはできる性質を持っています。<br> 直すのが困難なのならば、より長い時間元気で生きられるように考えた方がよいと思うのですがどうでしょう?</p> <p> さてしかし、本編の主題である白血病では、そうはいきません。<br> 病気の進行が即、免疫力の低下につながるので、病気であっても、元気で生きられるということが、非常に難しい性質を持っているのです。<br> 白血病を克服するためには、ガンを治すというレベルまで高めなければならないというのは、すでに書いたとおりです。<br> それには生命の本質まで理解する必要があります。<br> その第一歩として、ガンは再生という機構と、関係があるのではないかというところから、考えを進めていきたいと思います。<br> </p> <p align="right">(2005年12月17日)</p>
ガンは再生に関連しています。 再生とは、たとえばイモリの前足が再び生えてくる現象です。 これがさらに切れた前足から本体が再生するとしたら、結果としてイモリは2匹になったことになります。 ヒツジのドリー君はたったひとつの細胞から生まれたクローン生物ですが、この2匹のイモリもクローンということができます。 このような能力はプラナリアという動物にあります。プラナリアは身体をふたつに切ると、そのおのおのが新しい一匹ずつの完全なる個体となるのです。 身体を切らなくても、身体の一部の細胞が増殖して、新しい個体を作る能力のある動物もいます。サンゴやヒドラは、出芽という栄養生殖によって増えることができます。 こう考えてくるとガンとは栄養生殖の一種で、分化能力がなく分裂能力だけがある細胞ということができるかもしれません。 さらに細胞同士の相互関係がとれないことや、細胞同士の結合力が弱く移動できる性質を持っていることから、多細胞生物の中の単細胞生物化した細胞と考えられるかもしれません。 実は多細胞生物と単細胞生物の境界線は微妙です。 粘菌類は単細胞分裂で増える世代と、多細胞化してキノコみたいに胞子でふえる世代が交互に繰り返されます。 また単細胞生物のゾウリムシなどは、基本的に分裂によって増えますが、たまに接合といい、二匹のゾウリムシの遺伝子を混ぜ合わせる行為をするそうです。 単細胞生物のセックスといえると思います。 単細胞生物はひとつの細胞に、その生活のすべてをまかなう能力を有しています。 動くことはもちろん、食べて排泄して、セックスもして、そして分裂して増殖していきます。 人間の体細胞の中では、白血球が一番それに近い性質を持っています。 しかし、他の細胞は、このような細胞本来の性質を捨て、ある特定の機能だけを有するようになった細胞です。 完成された体細胞には、もはや分裂する能力もなく、自分の役割が済んだら自ら死ぬ運命になっているようです。 人間は、たったひとつの受精卵が分裂し、その数を増やしながら性質を変えていき、それぞれが協力しあい全体としてひとつの生命体になるべく成長していきます。 どのような仕組みで、もともとのひとつの細胞(受精卵)が分裂の過程でその姿をかえ、全体としてひとつの生命体を作るようになるのか? このからくりを理解しないことには、ガンの本質を探る、ひいては白血病を治すことはできないと考えています。 まず単細胞生物のことを考えてみましょう。 単細胞生物は、ひとつの細胞がひとつの生命体なのですから、増殖するためには分裂する以外なさそうです。 図①のような感じです。      A    /   \   B1    B2  / \    / \ C1  C2 C3 C4     図 ① しかし、何もせずただ分裂したのでは、当然のことながらB1の大きさはAの2分の1となり、C1の大きさはAの4分の1になってしまいます。元と同じ大きさになるためには、成長をしなければなりません。 成長をするためには、外界から栄養を吸収する必要があります。 その栄養も、自分の身体の構成成分とまったく同じものがあればよいのですが、そうでない場合は、吸収した栄養を分解し再合なして、自分の身体の構成成分に作り変える必要があります。 このように単細胞生物は、成長・分裂を繰り返し増殖していくわけですが、たとえばC1の細胞とC4の細胞が、まったく同一である可能性はないといえます。 それは成長・分裂の過程でおこる様々な反応(化学反応)はたとえば温度が1℃変わっただけでも、その反応速度が変わってしまうからです。 周りの環境に左右されるのです。 C1とC4の細胞の周りの環境が、まったく同一である保証はありません。 さらに仮にZ1とZ50000にもなると、まったくの別物になっている可能性もあるわけです。 しかしこれを人間にたとえて考えれば、私の28世代前(A~Zまで)やはり人間でしょうし、(500~600年前ですね)それほど大きく変わっているとは思えません。また、同時にまったく同一であるとも考えられません。 これを突き詰めると、生物とは周りの環境になるべく、左右されることなく、できるだけ元と同じようになるような工夫をこらした装置ということができます。 つまり似て非なるものを作り続けていく性質を持っているのです。 この、できるだけ似て非なるものを作る工夫のひとつが遺伝子であるといえ、そして長い年月たつとまったくの別物に変化していくこと(進化)も、考えてみれば当然のことであるといえます。 そして多細胞生物の体細胞ひとつひとつにも、その性質は受け継がれていると思われます。 さらに強制的に違う姿になるような能力も備わったのです。 いろいろな種類の細胞に分化するのがそれで、これにも遺伝子が大きく関わっていると考えられます。 また細胞同士のコミュニケーションをとる機能も必要になってきます。 ですから数多い体細胞の中には、全体の意にそまぬものも現れることも当然のことでしょう。また外敵による侵略も脅威です。 そのような中で、昨日も今日もほとんど変わらない姿で(しかしまったく同一ではありませんが)生きているということは、奇跡ともいえる現象なのです。 それを実現しているのが、生命のからくりであるといえます。 それではこの似て非なるものを作り続ける、また必要とあらば強制的に変化させるからくりの、主人公ともいえる遺伝子のことから考えていきましょう。 遺伝子には大きなふたつの能力があります。 細胞が成長するための、タンパク質合成能力と、細胞が分裂増殖するための、自己複製能力です。 まずタンパク質合成能力の性質を考えます。 タンパク質は生物の主要構成要素です。質量比も水に次いで第2位をしめています。 タンパク質は20種類のアミノ酸からできていて、それが100~10,000結合することにより、構成されている巨大分子です。 アミノ酸の配列の順序により、タンパク質の種類が変わるので、理論上ほぼ無限の種類のタンパク質ができることになります。 遺伝子とは、4種類の簡単な物質である塩基を使い、それを3連することにより、20種類のアミノ酸と対応させているのです。 ですから塩基の並び順によりアミノ酸の結合順序が決まり、ひいてはタンパク質の種類を決めているのです。 4種類の塩基はリン酸と糖(DNAはデオキシリホース、RNAはリボース)により次々と結合されています。 これをイメージすると図②のようになるのではないでしょうか? リン酸   P   P      / \ / \ 糖   R   R   R     |   |   | 塩基  G   G   G      \  |  /     アミノ酸 グリシン        図 ② しかしこれを分子の大きさである分子量から考えると、アミノ酸グリシンを指定するDNAの分子量は574になります。(リン酸を2個として、自分で計算したので間違っていたらすみません。)  P(50)  P  / \ / \     R(80) R   R  |  |   | G(80) G   G そのグリシンの分子量は40です。 つまり大きい物質を使い小さい物質の種類を決めているのです。 実際にアミノ酸を運ぶtRNAは70~80ものヌクレオチド(リン酸、糖、塩基1個)から形成されているので、分子量は15,000~16,000にもなります。 それを使い分子量40(大きそうなフェニルアラニンでも分子量73です)のグリシンを指定しているのです。 人間なら絶対にこういう方法はとらないと思いますが、これは分子という極微の世界のことなので、人間のイメージと全然違っていても、それほど不思議ではないかもしれません。 そもそも、なぜ3連の塩基でアミノ酸を指定するのか、まるでわかっていないのが現状のようです。 しかし、私が今までイメージしていたタンパク質合成の姿を、少し訂正しなければならないような気がします。 DNAの鎖の一部がほどけ、その部分の情報をRNAポリメラーゼを介し、前駆mRNAに写しとります。 そこにはイントロンという情報のない不必要な部分があるので、それを取り除き成熟したmRNAになります。 それが核膜孔を通って細胞質中のリボソームという小器官にいきます。 そこでtRNAが運んでくるアミノ酸を、情報の順番に結合して、タンパク質となります。 アミノ酸の平均分子量を50とすると、mRNAはその約10倍の分子量があります。 さらにスプライシングされるイントロン部分もあるので、mRNA系だけで、アミノ酸の20倍以上の分子量になることになります。 さらにtRNAは400倍もの分子量です。 ひとつのアミノ酸を指定するのに、これほどの量のRNAが必要になるとすれば、生体物質の平均分子量比(タンパク質:RNA=1:1)の説明が困難になるような気がします。 (2005年12月20日) ひとつのmRNAはひとつのタンパク質の情報を持っているといわれていますが、20~30回は繰り返し使われていると考えられます。 またtRNAは、400~500回はアミノ酸を運ぶ仕事をしていることになります。 だからどうだということはないのですが、そういうことになっていると思います。 それよりも、なぜ4種類の塩基の3連で20種類のアミノ酸を指定するかというほうに、興味がそそられます。 それぞれの運気の化学的性質をふたつ考えてみました。 ひとつ目はプリン環を持っているか、ビリジミン環を持っているかです。 プリン環を持っているのがアデニンとグアニンで、この性質を仮にX①としましょう。 同じようにビリジミン環を持っているのがシトシンとウラシルで、これをX②にします。 次に水素結合の腕が2本あらか3本あるかで分け、2本をY①、3本をY②とすると、Y①がアデニンとウラシルで、Y②がグアニンとシトシンになります。 結果4種類の塩基をこのふたつの性質を使って、分けることができるようになりました。 すなわちアデニンX①Y①、グアニンX①Y②、シトシンX②Y②、ウラシルX②Y①です。 次に遺伝暗号表をみていて気づいたとこなのですが、第2字(つまり3組の真ん中の塩基です)が変わると、必ず対応するアミノ酸が変化しているということです。 さらに第2字が違っても同じアミノ酸になるのは、セリン(終止もそう)だけになります。 これから第2字の性質が、アミノ酸の指定に一番強い影響があるといえます。 次に影響が強いのは、第1字のようです。 このふたつの組み合わせで、8種類のアミノ酸が完全に指定されます。 これも、だからどうだというわけではないのですが、なんとなく塩基とアミノ酸の対応が最初は1対1で、それからアミノ酸の種類が増えることにより、塩基の方も2連、3連になっていったような気がします。 なぜ塩基の方も数を増やしていかなかったかというと、塩基の性質は2種類の2通りの性質しかないためではないかと想像しました。 実際にアミノ酸と対応しているのがtRNAです。 tRNAは、ヌクレオチド70~80からなる分子で、頭にアミノ酸と結合する部分があり、お尻に3連の遺伝情報を持っています。 このアミノ酸の種類と3連の情報が正確に対応しているので、遺伝子の情報どおりのタンパク質が作られることになるのです。 アミノ酸の種類は20種類なので、tRNAも最低でも20種類はあるはずです。 また3連の情報を持っている場所も、一定でなければ困ると思います。 tRNAは内側で何箇所か塩基同士が結合している部分があります。 すると立体構造をとり、ねじれて外側になった部分に、3連の情報を持っているのでしょう。 このtRNAに情報をわたすのが、mRNAです。 mRNAはひとつのタンパク質を作る、情報を持っていると思われます。 開始の合図であるメチオニンのAUGを先頭に、終止の暗号であるUAA、UAG、UGAまでの一続きの情報です。 つまりすべてのタンパク質はメチオニンを先頭に作られていることになります。 ちなみにこのメチオニンは合成が終わったあと、実際の機能をもたせるため立体構造をとる際に、脱落してしまうそうです。 逆にいうと完成されたタンパク質にメチオニンは含まれていないことになります。 メチオニンは硫黄(S)を含むアミノ酸ですが、これが特別な役割を持っていることと、何か関係しているのでしょうか? ついでにいうと、もうひとつの(S)を含むシスティンが、タンパク質の立体構造を作る際、重要な働きをすると考えていますが、このへんは私のまったくの想像です。 まあこのようにアミノ酸になれば、それぞれの個性が出ることもわかりますが、3連の塩基AUGとかUAA、UAG、UGAなどに何か特別な目印でもできるのでしょうか? こうなると、まったくもってわかりません。 生命の本質に深く関わっている事柄だと思うのですが、想像の糸口さえつかませてもらえません。 謎といえば、mRNAのひとつ前の段階に、DNAの情報をそのまま写し取ったRNAがあります。 これには多くの不用な部分(イントロン)が含まれていますが、これを取り除き情報を持っている部分(エキソン)だけをつなぎあわせるスプライシングという作業があります。 それを経て完成されたmRNAになるのですが、このへんの事情がまったくわかりません。 まさに生命の本質ともいえる部分かもしれないので、わかっていることを書きながら、少し考えていきたいと思います。 まずDNAの塩基配列を図示します。簡単に書くとこんな感じになります。 DNA    TAC                        ATT ↓                          ↓ ∥――――――〇~~~~〇……………〇~~~~〇……………〇~~~~〇―・―・―・―∥ ↑     ↑     ↑    ↑     ↑    ↑      ↑ 開始調整領域 エキソン イントロン エキソン イントロン エキソン  終了調整領域 図 ③ このときのエキソンとイントロンの配分に法則性はないようです。おおむねイントロンの方が、かなり多くを占めているらしいです。 DNAは二本鎖でお互いが水素結合していますので、そこから情報を引き出すには、この結合を解かねばなりません。 そのため遺伝情報の前後に、調整領域という部分が必要になります。(これは原核細胞にもあります。) まず開始調整領域の結合がとけ、その部分にRNAポリメラーゼなどがやってきて、結合をほどきながらDNAの片側の情報を読み取り、それに相補的なRNAを合成していきます。 TAC(RNAにすればAUG、メチオニン開始の合図です。)から始まり、ATTなどの終止の暗号まで一気に読み取り、RNAを合成していきます。 こうしてできるmRNAの前駆体は図④のようになります。 RNA AUG                   UAA 〇~~~~〇……………〇~~~~〇……………〇~~~~〇 ↑    ↑     ↑    ↑     ↑ エキソン イントロン エキソン イントロン エキソン 図 ④ ここから遺伝的に意味のない部分(イントロン)を取り去り、エキソン部分だけをつなぎ合わせるスプライシングという作業を経て、成熟したmRNAになります。 しかしこれがどのような機構で行われているのか、さっぱりわかりません。 RNAを切ったり貼ったりするのですから、酵素が関連しているのは間違いないと思うのですが、どうやってエキソンとイントロンをみわけているのでしょう? イントロン部分は意味のない塩基の繰り返し構造になっていると本には書かれています。 しかしたとえばATATATATATATも、チロシン、イソロイシン、チロシン、イソロイシンの配列の可能性もあるわけです。 3連の塩基すべてに意味があるのですから……。 何か元になる未知のRNAでも存在するのでしょうか? まったくもって謎の部分なのです。 また、なぜこのようなイントロンの部分が存在するのかというのも、非常に難しい問題です。 原核細胞にはイントロンは存在していないようです。 このイントロンの存在理由と遺伝子の自己複製能力の関連については、次章「多細胞生物時代の幕開け――進化のビックバン編」で詳しく取り上げる予定です。 ここでは次にその多細胞生物の細胞の大きな謎である、細胞の分化ということを考えていきましょう。 (実は今日12月21日、娘を病院に連れて行く日でした。病院が済んだあとは妻と娘はショッピングに出掛け、私は車の中で留守番です。半分寝ぼけながらいろいろ考えているうちに、細胞の分化についての新しいアイデアが浮かびました) 多細胞生物にとって、細胞が分化するというのは、とても大事な性質です。 もちろん単細胞生物にはありません。 そしてガンにもとりわけ深い関係にあるのが、この細胞の分化という現象だと考えています。 多細胞生物は一般的にたった1個の受精卵から、その生命がスタートします。 細胞は分裂を繰り返すことによりその数を増やし、そしていろいろな姿に変わる(分化)ことによって、一個の生物体を作り上げていきます。 イメージとしてはこんな感じではないでしょうか?(図⑤)     受精卵     / \ 消化器系  神経系  / \   / \ 胃   腸 脳  運動神経     図 ⑤ 受精卵から徐々に分化をし、最終的に機能をもった細胞になり、自分の使命が済んだあとはアポトーシスをおこして消え、その後幹細胞が分裂をして補充をしていくというイメージです。 私もこのように考えていました。 しかしそうするとどうしても説明の難しいことが、少なくともふたつあるのです。 そのひとつ目はテロメアのことです。 テロメアは細胞分裂の回数券みたいなもので、ひとつの細胞はだいたい50~60回の分裂能力があるといわれています。 仮に成体が60兆個の細胞からできているとすると、受精卵から数えて45~46回分裂していることになります。 成長し成体になってからでも、新陳代謝のため細胞は分裂を繰り返します。 テロメラーゼというテロメアを再生する酵素があるらしいので、完全に矛盾するわけではないのですが、どうもすっきりした説明ができないような気がします。 もうひとつは分化に際しての分裂パターンの問題です。 たとえばAという細胞が分裂する時には、次の4通りが考えられます。(図⑥)   ①       ②       ③       ④   A       A       A       A  / \     / \     / \     / \ A   A   A   B   B   B   B   C              図 ⑥ 細胞が分裂するためには、当然栄養が必要で、それを新しくできる細胞に必要な成分に変化させなければなりません。 主に遺伝子の性質を利用した、タンパク質合成がこれにあたると思います。 ①のパターンは細胞がその数を増やすときのパターンですが、これは今までの自分と同じ物を作り、それをふたつに分ければよさそうです。 ②③④は細胞が分化する際のパターンですが、これはどう考えるべきでしょう? ②は成体になったあとの新陳代謝のための分裂パターンで、③④は実際にあるかどうかわかりませんが、あるとすれば成長期、それも発生直後にあるパターンかもしれません。 これらのパターンでは、母細胞Aは今までの自分とは違うものを作り出し、それを分裂の際に娘細胞に与えているのでしょうか? それとも分裂をした後で、娘細胞の方が今までと違う成長をするのでしょうか? いずれにしても、今までとは違う遺伝子の発現が必要で、そのキッカケとなるものは何かという問題は難しそうです。 私はこの白血病編を書くにあたり、この問題が非常に重要だという認識で、いろいろ考えてきました。 それが今までとは違う新しい考え方を思いついたのです。 それは、細胞は分化する際にテロメラーゼを発現する、またはテロメラーゼの発現が細胞分化の原因になるということと、テロメアがなくなり、分裂能力を失った時点で、細胞の形質は大きく変化し、実際の機能を担当する細胞になるという考え方です。 何のことかわからないと思うので図⑦にして考えてみましょう。                A3 ←テロメアの数       ┌─────────┴─────────┐ テロメアーゼの働きで       A2                 B3 ←テロメアは3に戻る    ┌────┴────┐         ┌────┴────┐    A1       B3         B2       C3  ┌─┴─┐    ┌─┴─┐      ┌─┴─┐    ┌─┴─┐ A0   B3   B2  C3    B1   C3   D2  C3 │   ┌┴┐  ┌┴┐  ┌┴┐  ┌┴┐  ┌┴┐  ┌┴┐  ┌┴┐ 機能する B2 C3 B1 C3 C2 D3 B0 C3 C2D3 C1 D3 D2 E1 細胞になる                ↑ 機能する細胞になる                 図 ⑦ Aを受精卵としてテロメアの数を3個にします。 分裂のパターンは図⑥の②だけに限定します。 Aは受精卵です。当然何にでもなれる能力を持っています。 図ではA0(Aとして機能する細胞)はひとつしかありませんが、実際にはテロメアは50~60あり、ある程度①の分裂パターンになれば、数は少ないということはありません。 受精卵の性質~分化全能性をもったまま機能細胞になるので、生殖細胞(生殖母細胞)になると思われます。 ついでにいうと生殖母細胞は、普通の細胞分裂の能力はなくなっていますが、成熟期になると、特別な栄養を吸収し、特別な分裂(減数分裂)をして、完成された生殖細胞になると思います。 そして受精の瞬間テロメアが回復し、分裂能力を有するようになるというのは、けっこう魅力的な考え方ではないでしょうか? 次にBの細胞はAから分化する際、テロメラーゼが発現してテロメアが回復し、分裂能力は最高レベルに戻ります。 その代わりひとつの能力を失います。 それはAになるために必要な遺伝子が発現できなくなることです。 分化全能性は失われました。 同じようにCの細胞はAとBにはなれないようになると思います。 このような分化を伴う分裂は、発生直後に集中しておきていると思います。 こうしてある程度大きな系統に分かれた細胞は、次にちょっとやり方の違う分化をすると思います。 たとえば図⑧のようにAならA、BならBの系統内での分化です。             A      ┌──────┴──────┐      A             B   ┌──┴──┐       ┌──┴──┐   A     Aa      B     C ┌─┴─┐  ┌─┴─┐  ┌─┴─┐  ┌─┴─┐ A   A  Aa  Ab  B   Ba C   D             図 ⑧ AからB、AaからAbというように分化をする回数は非常に少なく、もしかしたら1回だけかもしれません。 そしてそれ以降はテロメアがなくなるまで、通常の分裂を繰り返します。 細胞の系統によっては、たとえば図⑨のようにさらに細かく分化をすることもあると思います。      Ba     /   \   Ba    Baア  / \    / \ Ba  Ba Baア Baア      図 ⑨ こうしてできるすべての種類の細胞は、分化の際にテロメアが更新されるので(更新しなくても大丈夫かもしれません。その方が可能性強い? ヒツジのドリー君???) みなそれぞれが50~60回分裂をする能力を持っていることになります。 それらがすべて分裂してしまうと、数が増え過ぎることになります。(ちなみに2の60乗(2^60)は640,921,504,606,928,896になると思います。) ですから分裂の途中でアポトーシスにより、数を調節することになると思います。       A     /   \   A       A  / \     / \ A   A   A  アポトーシス      図 ⑩ つまり図⑩のような感じで、分裂するか、アポトーシスするかを決めるのが細胞の相互関係で、自分と同じものが多くなり、混み合ってきたと感じたら、分裂ではなくアポトーシスするものと思われます。 これに高分子多糖体が関わっていると思います。 それではこの分裂分化を遺伝子の面から、考えてみましょう。 DNAは受精卵から完全分化した体細胞まで、基本的に同じです。 これはヒツジのドリー君で証明されています。 受精卵はこれらすべての細胞になれる能力(分化全能性)を持っていますが、実際に機能するわけではありません。 ただ分裂するのに必要な情報だけを、発現していると思います。 (もっとも最初のうちは分裂ではなく分割なのですが) この仮定をもとに生物のいろいろな現象を考えていきましょう。 まず再生です。 Bという細胞を考えてみてください。 これは受精卵から最初に分化した細胞です。 A以外のすべてのものになれる能力を持っています。 このBから分化する細胞はCとBaの2種類です。 もしBに機能細胞としての能力がないとすると、Bは2回分化分裂したあとは、用のない細胞になります。 こういう場合生物は容赦なくBを切り捨てるのではないでしょうか? つまりこういうことです。             A          /     \      A            B     / \          / \   A     A      B    C  / \   / \    / \   / \ A   A A   A  B   BaC   D ↑アポトーシス      C     /  \   C     D  / \   / \ C   CaD   E ↑アポトーシス   図 ⑪ 同じようにCという細胞もアポトーシスされる運命にあるような気がします。 しかし生物学は答えがひとつの学問ではありません。 例外とか特例はいくらでもあります。 このBをいつまでも持っている生物もいます。 下等な動物や植物です。(どちらかというと人間のような高等な動物の方が特例のような気もしますが) トカゲやイモリはEとかFの細胞を残しているのかもしれません。 プラナリアには身体にいくつかのBの細胞があるのでしょう。 だから身体を縦に切っても横に切っても、元通り再生できるのです。 またヒドラやサンゴのように身体の一部にあるB細胞から新たな個体を作る生物もいます。 いわゆる栄養生殖です。 ソメイヨシノは花が咲いても実はできません。挿し木や接木によってしか増えられません。 これから、Aという細胞は生殖細胞そのものであると考えられます。 A=受精卵は1回Bに分化すると、もう二度と分化することなく   A  / \ A   A だけの分裂を繰り返します。 そしてテロメアがなくなるまで分裂すると、生殖母細胞という細胞になります。 もちろんその過程で大多数がアポトーシスによって消えていきますが、それでも一生のうちに使う生殖細胞の何万倍もの数をそろえているそうです。 実際の卵子や精子になるには、ここから特別な過程を経て、変化していくようです。 (これはかなり科学的にも解明されていて、本にも書いてあります。) つまり特例です。 こうして成熟した卵子は静かにその時を待っています。 ここにいたるまでにとんでもない確率の競争に勝ち残ってきたのです。 そして精子はさらに激しい生存競争に勝ち残った一匹だけが、未来への切符を手にできるのです。 この奇跡の2匹がとけあうことで、テロメアは回復し、分裂能力が復活して、そして新たな生命の誕生をみるのだと思います。 生物の歴史から考えると、Bの細胞の方が先で、それに共同生活をするような形でAの細胞が加わり、有性生殖をする多細胞生物が誕生したのではないかと想像されます。 (2005年12月24日) [[「その4」へ >>白血病 その4]]

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