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妲己の三分間クッキング - (2008/07/17 (木) 13:12:41) のソース
**妲己の三分間クッキング 目の下のクマ、緩いカーブを描いた背中、折りたたまれた膝。 だらしのない格好をした男、Lは赤子の如く立てた親指を口に咥えてこのゲームに関して考えていた。 このゲームのルールは簡単。 単純に自分以外の人間を殺し最後まで生き延びれば良い。 それだけならば皆でこの状況を打破する策をじっくり考えれば済むかもしれない。 しかし24時間人が死ななければ首輪に組み込まれているという爆弾が爆破してしまう。 おまけにワポルという男は優勝者には特別に〝願いを叶える〟という賞品を与えると言う。 それはただこのゲームを順調に進行させるための虚言では? そう考えられない人間たちが居たとすれば恐らく、少なくとも一人は犠牲が出てしまうだろう。 多ければきっと数えられないほど犠牲者が出る。 無論自分とて例外ではない。 ならば早めに何とかせねばならない。 沢山の犠牲が出ぬ内にこのゲームを中止させなければ。 だがどうやって? 探偵というものは起こった事件を頭脳を使って解決するだけであって、武器を使って悪者を退治するヒーローとはまた違う。 自分一人ではどうにもならないのだ。 ならば協力できる仲間を見つける。 あの部屋では夜神月の姿も見掛けた。 信用できるできないはまた別として、一先ず彼と合流しこのゲームを破る方法を共に考えよう。 ………側に居るなら彼を監視することもできるし、一石二鳥だ。 それからもう一つ引っ掛かるのは今服の下から着ているこのスーツ。 このスーツには丁寧なことに説明書が付いていた。 〝足が純一(笑) このスーシはテメー似外の人間かきても効果はあらまそん〟 石○純一はまた置いておくとして。 効果、ということはこのスーツには何らかの力が宿っていると考えられる。 もしかすると今後、役に立つかもしれない。 あれこれ思案を練って一つの結論に辿りついた後Lは重たい腰を持ち上げた。 「………?」 すると向こうに綺麗な女が立っている。 そこから流れ込む甘い香りも手伝ってかLはその女の美に見惚れた。 ◇ ◇ ◇ 「あはん、わらわったらついてるわぁん」 艶かしい顔付きが自身に支給された品を見て和らいだ。 慣れた手つきでそれを肩に掛ければ子供のようにその場で何度も飛び跳ねる。 着地するごとにふわりふわりと肩で揺れるのは女の持つ色香を一層膨らませるような羽衣。 「やっぱり妲己ちゃんにはこれよねぇん」 蘇妲己と、己の愛用する宝貝 傾世元禳。 これによって完成させた誘惑の術はかなり強力なものであり殆どの者たちを意のままに操ることができる。 他に使える武器が無い、その上自分から堂々と戦うということは滅多にない妲己にとっては必要不可欠な存在だった。 先ずは己の身を護るために誰かにこの術を掛け利用しよう。 それが最初に立てた妲己の計画だった。 「貴方もそう思うでしょおん?」 深夜と言えども真夏のような暑さに輝く汗を振り払うように髪を掻き上げ色香を発揮する。 その仕草は男への追い討ちとも言えた。 風に乗って飛んでくる甘い香りはいとも簡単に男の全てを支配した。 話を振られた男は自分の癖である親指をしゃぶることを止め妲己を真っ直ぐと見つめる。 いくら抵抗しても交わる視線を外すことができない。解れてしまった糸のように。 それは目だけではなく―――――心も何故か離れない。 ◇ ◇ ◇ 爪を剥いで。 目ン玉くり抜いて。 皮膚を一枚一枚削いで。 手足をもいで。 頭かち割って。 沖田総悟の脳内ではワポルという男を拷問するというグロテスクな映像が流れていた。 悲鳴を上げるワポルを見下ろし刀の抜き戻しを繰り返しながら最後の始末を待つ自分。 何というサディストであろうか、彼の人間性を天国の姉が知ればきっと二度目の死を迎えてしまうだろう。 勿論原因はショック死だ。 「土方と一緒に死ねば良いのになァあいつ」 妄想の中の総悟は愉しんでいる、けれど現実に立っている総悟はかなり苛立っていた。 当然のことだ。彼は他人を弄ぶのは趣味であるが弄ばれるのは趣味ではない。 一刻も早く自分を貶めたあの忌々しいカバ男をボッコボコにしたい。 それも首輪が邪魔なためそう簡単にはいくまい。 この不利な状況が益々彼の怒りを沸騰させていた。 しかし本当に皆が皆こんな馬鹿げたお遊びに参加するようなやつなのだろうか? 自分と同じ考えを持つ者も居るのでは? そう考えると一人二人、思い浮かぶ顔がある。 一つは部屋の中で見掛けた坂田銀時。 もう一つは――――――――――――――――。 …とにかくまずは旦那から。 んでもって途中で逢っちまったなら仕方ねェ。 へっぴり腰の土方鼻くそヤローも仲間にしてやるかねィ。 「ん?」 宛ても決めずにこの砂だらけの街を抜けようと前進している総悟の前に一人の影が現れた。 「うふん、こんばんわぁん」 絶世の美女とも言えよう女がそこに、纏った羽衣を靡かせて。 「わらわは蘇妲己。妲己って呼んでちょうだいん?」 男の理性を煽るように身体をくねらせて。 「貴方もお名前教えてくれないかしらん」 指の先で遊ばせた髪の毛の香を漂わす。 ◇ ◇ ◇ ふふふ、可愛い子だわん。 わらわを見た瞬間に目つきが鋭くなった、すっごく警戒されているのねぇん、わらわ…か・な・し・いぃ~~ん。 でもその警戒心もすぐに忠誠心に変わるわよん。 「ねぇん貴方、お名前教えてくれないかしらん?」 最高級の笑みを貼りつけた面を総悟に向ける。 恐らく総悟もL同様、一秒もせぬ内に舌を出して妲己に寄ってくるのだろう。 「………何か臭い」 ―――――――――――― !? 「何かものっそ臭うぜィアンタ。風呂入ったほうが良いんじゃねーかィ?」 …あらん?おかしいわねん……。この子普通の人間でしょおん? 何でわらわの術が効かないのぉん? 「貴方、面白い子ねぇん」 「アンタもなかなか面白いと思いやすぜ、頭が」 「…………そおん」 うぅ~ん勿体ない。 この子、すごく興味あるんだけど……こんな状況だから仕方がないわん。 わらわの言うことを聞かない子なんて、いらなぁい。 「じゃ、俺ァアンタの相手してる暇は無ェんで」 「そうねぇん、残念だけどサ・ヨ・ウ・ナ・ラん」 「!!」 ――――刃と刃がぶつかり合う音が空虚に響く! 「……これがテメェの本性かィ?」 「やだわぁん、そんなに怖い顔しないでん。わらわはただの女の子なんだからぁん」 「嘘つけこのメス豚が」 まるで蝶のように踊る妲己の利き手に握られたナイフを総悟は必死に回避する。 総悟も妲己の銀色の刃を真横に見送っては休む間も無く刀を振るう。 それでも妲己の表情から余裕の色が消えない。 「ほんっとうに残念だわん。貴方みたいな子を消さなくちゃいけないなんてん」 「消えるのはッ、テメェーだ!」 「………」 総悟が素早く膝を屈折させ腰を落とすと妲己の懐に潜り込み刀を走らせた。 その攻撃も妲己にとっては何てことない。 僅かな戦闘の中でも総悟はそう判断することができた。 「きゃぁんッ、殺されちゃうッ!誰か助けてぇん!」 なのに予想とは違い、妲己は驚きからなのかナイフを落とし頭を押さえる。 あまりの豹変ぶりに総悟が動揺すると、妲己が一瞬だけ歪な笑みを浮かべたのが見えた。 「―――――――――!!」 後ろだ! 「……チッ」 背後から感じ取った殺気を察知した総悟は妲己に向けていた刃先をぐるりと後ろへ回した。 刃が交わる音が再びその場に反響する。 総悟によって弾かれた新たに現れた刀身には目元にクマをつくった男が反射していた。 「セコいことしやがる」 「セコい?わらわは何もしてないのに」 「この確信犯が!」 向けられた刃を臆することなく総悟は突き進みLの身体を弾き飛ばす。 真っ向からの攻撃を腹部に受けたLは右手に並んだ酒場の壁へと背中から突進していった。 それを見届けた総悟は即座に妲己の方へと方向転換する。 「死ねェェェェエ!」 「うふん」 「――――――……」 一ミリ。 「………どうしたのん?」 あと、一ミリ。 「あはん、かわいそうに」 あと、一ミリだというのに。 「痛いでしょう?」 何故進まない。 何故届かない。 「あ゛…………がッ…!」 ―――総悟が地面に倒れこむと、妲己は血塗れになったLと目を合わせた。 腹部に添えた両手に握られた刀の刃も持ち主同様、真っ赤に染まっていた。 妲己がLに微笑みを送ると、それを受け取った本人は奇妙な笑みを返してみせて。 「いやん、Lちゃんったらん。わらわは危険だからあそこの影に隠れててって言ったはずよん?なのに身を投げてまで助けにきてくれるなんて…わらわ、感激」 わざとらしくLの額を小突き妲己は無邪気に笑う。 「……それにしても今のはこの首輪のせいかしらん?それとも直接羽衣に何らかの制限をかけられているとか…」 「何の話ですか?」 「貴方は気にしなくて良いのよぉん、Lちゃん。さて、取りあえずこの暑苦しい場所から離れましょうかぁん」 「はい」 ――――――待てやコラ。俺ァまだ戦れる!戦えるんでィ! 何勝手に立ち去ろうとしてんだよこのアマ。 何で動かねェんだ、この身体は。あんな奴らにびびってんのかィ? ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな! こんなんでどうする!姉上に合わせる顔が無ェじゃねーか! 土方クソにも笑われちまうぜィ?良いのかよ、良くねェだろうが! 「――――――――――――ぉ」 「あらやだ、何かしらん」 「………下がっていてください」 「うオオオォォォオオォォオオォォオオォォオオオオオオオォ!」 徐々に小さくなっていく妲己の背中に、深い傷を負っても尚総悟は斬りかかっていった。 強い決意を込めた瞳で無防備な背に狙いをつける。 ズ ブ リ それでも、全身全霊を込めて振るった最期の一撃も彼女には届くことはなく。 虚ろな瞳には自分の左胸を刀で貫いたLの面が映った。 「ま、Lちゃんってばひどぉい」 「彼は貴方のことを狙っていましたから」 「あはん、ありがとう。それじゃあさっさと行きましょう」 足先をエリア出口に向ける際、虫の呼吸であるというのに今だ鋭い眼差しを向けてくる総悟を妲己は一瞥してクスリと笑った。 総悟は遠ざかっていく背中を瞼が落ちるまで睨み続けた。 ――――――――――― チク、ショウ。 【C-1 砂漠の街 / 一日目 深夜】 【蘇妲己@封神演義】 【装備】: 傾世元禳@封神演義 ナイフ@家庭教師ヒットマンREBORN! 【所持品】:支給品一式 ベルフェゴールのナイフ×9@家庭教師ヒットマンREBORN、不明支給品0~1個 【状態】:健康 【思考・行動】 1:涼しいところに行きたい。 2:傾世元禳に何らかの制限が掛けられている? 3:他者を利用し身の安全を買う。 ※ 誘惑の術の制限について。 誘惑の術が使えるのは8時間に一回。 意思の強い者は抵抗することも可能です。 【L@DEATH NOTE】 【装備】: GANTZスーツ@GANTZ、和道一文字@ONE PIECE 【所持品】:支給品一式 不明支給品0~1個 【状態】:健康 洗脳 【思考・行動】 1:妲己を守る。 ※ GANTZスーツの制限について。 全体的に効果は減っていますが、どのくらい制限されているかは後の書き手に任せます。 &color(red){【沖田総悟@銀魂 死亡】} ※ 沖田総悟の武器・デイパックは放置されたままです。 ※ 沖田の支給武器は【日本刀@るろうに剣心】です。 |011:[[桜の木の下で]]|CENTER:[[投下順>本編(投下順)]]|013:[[しんせかいの かみ]]| |011:[[桜の木の下で]]|CENTER:[[時間順>本編(時間順)]]|013:[[しんせかいの かみ]]| |&color(skyblue){初登場}|蘇妲己|| |&color(skyblue){初登場}|L|| |&color(skyblue){初登場}|沖田総悟|&color(red){死亡}|