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ギグルスはメタボ矯正手術をするようです

「私の診断では君は食べ過ぎだ。脂肪が溜まりすぎてる……早死するぞ? 
 でも大丈夫、私の治療ですぐによくなる。……クフフフフフフフ」

肌が粟立つようにクスクスと笑う医者がいた。冷静な視点で患者の体型から判断し、急遽治療法を決める。診断をくだされた患者、10代の太ましい体型をした少年は、怯えた視線を医者に向ける。

「これよりオペを始めます、手順は腹部周りの脂肪すべての分離です」

そう言いながら医者が手にとったのは、手術に使われるメスではなく、巨大な肉切り包丁。

「ーーーーーー!!!?!」

少年は声なき悲鳴を上げる。
生憎と口に突っ込まれた服の切れっ端によって声を上げることができないからだ。服を剥ぎ取られ、少年は手術台に拘束されていた。あと数分もすれば、医者の刃によって腹周りの肉を剥ぎ取られる運命にある。

◆ ◆ ◆

少年ーー杜王町のスタンド使い、矢安宮重清こと重ちーはまったくの不運だった。
会場にて再度意識を取り戻した時、重ちーは見覚えのない病院にいた。
当然のように巻き起こる混乱。
重ちーの周りには、守りを固めるようにスタンド『ハーヴェスト』が、取り巻いている。その数は圧巻の500体

「お……オラはどうすればいいんだど?」

重ちーは少々守銭奴の素質がある。
それに、同じく杜王町のスタンド使いである億泰と仗助二人を圧倒したハーヴェストという強力なスタンドもある。
殺し合いに乗れば、まあそれなりに生き残れる可能性も無きにあらず。
だが、重ちーは速殺人を方針にするほど、冷酷な異常者ではない。
そこの状況に即対応できるほど、重ちーの神経は図太くない。

「と、とりあえず支給品を確認するど……」

床に置かれていたデイバック、それをハーヴェストに持ってこさせ、それを重ちーは調べてみる。
食料やコンパスとか、基本的なものはきちんと入っていた。
まあそれは当然だろう。
だけどこれは……

「……これ、でんわ?」

家庭用の電話機が入っていた。見慣れた黒電話ではない。外国製のように見える。
殺し合いに役立つものとは思えない。
しばし呆然とする重ちー、しかし気を取り直して、電話機を弄くり回す。すると、偶然にも留守電ボタンを押した。

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

『……こんばんわ。私は医者だ。今貴方の後ろに居る』

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼

「……えッ?」
「フフ」
「ッ!?」

録音が成り終わり、つかの間もなく。
重ちーの背後から、篭った笑いが聞こえた。すぐ背後から。普段とは違い、素早く振り向く重ちー。
ガラス玉のような瞳と、目があった。
医者のような白衣を着た男。

「そこで、なにしてるど!?
 いいか!おまえッ!動くんじゃねーどッ!」

発現させてあったハーヴェストを、瞬時に構えさせる。
いつでも目の前の男に攻撃を加えさせられるように。

「フフフフフフフ、ウフフフフフフ」

重ちーの言葉に、男は答えを返さない。
クスクス、笑うだけだ。
それに宿るのは狂気。

(な、なんなんだど。こいつ、いったいなんなんだどッ!?)

重ちーはそれに恐怖よりも、とてつもない"嫌悪感"を感じた。
自分が理解できない者、相容れないものに対する嫌悪。
本能で理解した。この男は他人に害を与える悪い奴だと。
そう思った瞬間、衝動的に動いた。
ハーヴェスト500体が、医者に向かって突撃する。

「?!」

医者は流石に動揺し、驚いた。

(……こいつ、ハーヴェストが見えてるどッ!スタンド使いだど!?)

重ちーは知らない。この場では、スタンドは誰でも視覚可能だということを。
だから誤解した。医者がスタンド使いだと。

(でもかんけいないどッ! オラのハーヴェストは無敵だどッ! 億泰や仗助にも本当は勝ってたんだからッ!!)

仗助たちの時とは違い、油断しなければ負けない。それはある意味正しい。
ハーヴェストは最強に当たるスタンド。
射程距離がズバ抜けて長く、群体型ゆえにスタンドへの攻撃は本体に反映されにくい。
対する医者、ーーDr.ギグルスは、スタンドが見えはしてもそれを使えぬ人間。
通常なら、重ちーの負けはあり得ないだろう。
そう、通常なら。
考えてみて欲しい。
ハーヴェストは、参加者の中ではトップクラスで応用が効く強力な能力。
下手したら殺し合いの妨げになるかもしれないほどのもの。
それに制限を付けないほど、主催は甘くはない。


能力には制限が掛かる。
それは"スタンドが使えない者にもスタンド像が視覚できる"という状況により、すでに証明された。
強力なスタンドハーヴェスト、当然他よりも制限は重い。

「……えッ……えッ…」

困惑の声が口から漏れる。
一言で言えば"消えた"。綺麗さっぱり消えた。
ギグルスに襲いかかろうとしていたハーヴェストは、ギリギリになって解除されたのだ。
時間制限。それがハーヴェストに課せられた縛り。
重ちーは、一時間に約5分間しかハーヴェストを発現させられなくなっていた。

「ウッ……うわああああッ!!」

ハーヴェストがかってに解除された事に数秒、スタンド能力がなぜか使えないことを再確認するのにさらに数秒。
重ちーは……悲鳴を上げて逃げ出した。
スタンドが使えないスタンド使いは無力。
基本的にハーヴェスト頼りの重ちーなら、それはなおさら。

「……フフ、フフフフフフフ」

それは一時の抵抗。
小柄で太り気味の重ちーは、あえなく捕まってしまう。

バチッ!!

首に押し付けられるスタンガン。
一瞬の衝撃のあと、急激に意識が闇に覆われる。


「フフ、フフフフ」


どことなく上機嫌な笑い。
完全に意識を失う刹那、それが重ちーの耳にこびりついていた。

◆ ◆ ◆

昔々の物語だ。
アメリカの片田舎・ムーアハイ。
静かなその町にはおぞましい過去があった。
30年以上前、この町にはレンデルと言う名の医師が妻と息子とで幸せに暮らしていた。
息子は父の背中を見て育ち、将来は父と同じく医者になることを夢見る、父に憧れるようなどこにでもいる少年だった。
そんなある日、妻が重い心臓病で倒れる。
レンデルは彼女を救うため、世にもおぞましき暴挙を思いつく。

ーーそれは心臓移植ーー

町の住人を次々襲い、心臓を取り出すレンデル……。
その後、そんな彼の暴挙を住民達は許すはずもなく彼は死刑に処されることに。
だが、彼の息子は行方不明に陥る。
レンデルの歪んだ精神を継承して……。
そして30年の月日が流れ、町は平和を取り戻していた。
レンデルの家も廃墟となっており、今は若者達の面白半分の肝試しスポットになっている有様。
もちろん彼らは噂話でレンデルの事件は知ってはいたが、長い月日が流れたため、誰も気にも止めなかった。
しかし、そんな平和な生活を送っていた彼らの前に彼は現れた。
薄気味悪い笑い声を発しながら静かに彼らを惨殺する。
この男こそ噂のレンデルの息子・エヴァン。又の異名を“Dr.ギグルス”。
これまでの30年、精神病院に入所していたが、関係者や医師を殺し、この度故郷のこの町へと舞い戻ってきたのだ。
父を死刑へと追いやった町民らを“治療”するために……。
そんな異常な彼は、三家本礼のお眼鏡に適った人材だった。

"治療"と"診療"に異常なほど執着するギグルスは、この狂った殺し合いの最中でもそれを求める。
対象が本当に患者かどうかは全くの二の次。
たとえ"治療"で相手が死んでも(いや寧ろほぼ死ぬ)、まったく気にしない。
今まさに、ギグルスの毒牙に少年がかかろうとしている。
"診察"の時には本当に驚いた。
沢山の虫のような何かを、少年が従えていたのだ。
だがそれもこけ脅し。
抵抗も少なく比較的簡単な診察だった。
手荒な真似は好きではないが、この少年のためでもある。
悪いところがあれば、"早期治療"が一番。
タイミングが良いことに、少年の治療に適した巨大な"メス"がバックに入っていた。
幸いなことにここは病院。私は医者だ。
すぐにでも手術を行わなくては。

まずは麻酔を注射する。手術の基本中の基本だ。
ここは病院。好きなだけ新しい薬品や器具が入手でき、困ることはなかった。
なかなかに手早く手術は行われた。

「……」
「大丈夫、手術は成功するよ。落ち着いていなさい」

泣きながら震える重ちー。それに安心させるように声をかける。
重ちーはより一層泣き出した。


◆ ◆ ◆


「脂肪の切開。皮膚の筋目を沿っての執刀が治癒に効果的……。脂肪付着による刃の滑りが見られる」

ぐちゃぐちゃぐちゃ ぶちゃ

「痙攣開始……。血液の逆流を観測」

ぐちゃぐちゃぐちゃ ぐちゃぐちゃぐちゃ

「脈圧の低下。患者の血液過剰流失が原因と考えられる」

ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ

「内蔵露出、ここからが執念場」

ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ

ピー ピー ピー ピー

「患者の心臓が停止、死亡確認。残念だ……すごく残念だよ」

ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ

「ウフ、ウフフフフフフフフフフ」

◆ ◆ ◆


数分後、ギグルスは手術室から出てきた。
手術着は真っ赤な鮮血に濡れている。
同じく刃が血まみれの肉切り包丁を壁にかける。着替えるのに邪魔だ。
いそいそと手術着を脱ぎ捨て、手を洗い、畳んである白衣を着る。
手術が行われた現場は悲惨だった。
大量の血液がぶち撒けられ、当たり一面が血の海。
手術台に拘束されていた、元矢安宮重清だったもの。
養豚場の豚のように、肉が切り分けられている。
平積みされた肉の塊。
見るに耐えない死に顔。苦痛に満ちている。
麻酔により痛みは和らいでいたかもしれない。
だが、自分の肉が生きたまま剥がされたのだ。
想像を絶する苦痛だっただろう。

「フフフ、ウフフフフフフ」

医者は満足げだ。
道具も、機材も、ここにいくらでもある。
自分は医者だ。
足りないものは一つだけ。
それは患者。

ああ、足りない。もっと治療しなくては。みんなを直してあげなくちゃ。

狂気の医者は患者を探す。
惨劇の場面を作ってもなお、そこはブレない。
ギグルスは、すでに狂っているのだから。


【矢安宮重清@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】


【2ーF/病院/一日目/朝】


【エヴァン・レンデル@Dr.ギグルス】
[状態]:健康。狂気。
[服装]:白衣。
[装備]:ハンスの肉切り包丁@サタニスター
[道具]:重ちーのデイバック 基本支給品×2 ランダム支給品×3  スタンガン@現実  
[思考]
基本: "患者"を見つけて"診察"、"治療"してやる
1:賞金も何もどうでもいい。自分のやりたいように行動する。
2: 病院を中心に活動する。
[備考]
※精神病院脱走後からの参戦
※ギグルスの伝言が入った固定電話器@Dr.ギグルスが病院の廊下に放置されています。壊れてはいないため、留守電の再生は可能です。通話に関しては不明。
※重ちーの死体が手術室の手術台に放置されています。

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最終更新:2014年01月05日 04:34