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バイオ・エクソシストはゾンビ屋と出会う

「はぁ……」

 どことなく疲れたようなため息。
 金髪に染められた髪。それをツーテールにくくり、メイクはライン、シャドウ、睫毛とアイ中心に濃い目。
 抜群のスタイルの体を包む、丈がギリギリまで上げられたスカートのセーラー服。
 まあ一言で言えばギャルな高校生。
 彼女の名は姫園れい子
 依頼により死者を蘇生、ゾンビ化させ、真実を語らせる事を生業とするゾンビ屋。
 何があったのか、ギャルーーもといれい子は、派手な外見と相反するように、疲れ切った表情を浮かべている。
 れい子は右手に特別な星を持つ。それは能力の象徴。
 姫園家の血筋に伝わる死者蘇生の力。それとは別に、地獄から己の手足として、亡者を召喚することができる能力を持つものにだけ現れるもの。
 それなりに修羅場をくぐった、プロのゾンビ屋。

 その頬には、キスマークが付いている。

「なんやねんなんやねん。レイコちゃんため息なんかついて。
 ため息ついたら幸せが逃げるってゆーやろ? 幸せが逃げちまったらそれはいけねえ!
 だからため息はやめとけっちゅーわけやねん。まさに元気ビンビンにしなきゃあきまへんで?ビンビンにっ! 
 人間生きてたらいいこともあるってわけやないかい。
 あら、それは死人には無理ってやっちゃなぁ。ですやろ?まあ、明るくやってかなくちゃ"死人"生損やで?
 こりゃあ先輩としてワイが学んだってことで。
 まあレイコちゃんも経験を積んだらわかることやねん。縁起はほんま担いどったほうがええで?ありゃ?そもそも縁起っつー時点でワイらアウトでありんす?
 ちょっとちょっと、そんな睨まないでっチューに。
 いや待てっ!やっぱ睨んでくれ。女に睨まれるってのは男の株が上がるってもんよ?っひひひひひひひひひひひっ!これは失礼しやしたあ〜〜」

 いっひひひひひひひひひひ

 気色悪い笑い声、そして関西弁。
 イカれたマッドな科学者のような癖のある髪の毛。そして血が通ってないかのような顔色の悪すぎる顔面。そしてパリっと着こなす趣味の悪い白黒模様の縦縞スーツ。
 そして頬には綺麗な手形。
 怪しさ大爆発のこの男、もといバイオ・エクソシストことベテルギウス。またの名をビートルジュース。
 早口でワケのわからないことをまくしたてたビートルジュースに、れい子は呆れたような視線をおくる。 

 殺し合いにて最初に出会った人物が、少なくとも"乗って"は居なかったことは、状況的に言えば良いことなのだろう。
 それはなぜか?決まっている。お互いの情報交換や、ある程度のグループを作ることによる集団自衛など、相手との交流がうまく行けば、メリットは多い。
 だが、れい子が出会ったビートルジュース。これがとんでもない奴だった。

◆ ◆ ◆

「ありゃ?あんた死人でっちゃろ?ん?こりゃ、名前教えてくれや」
「……人に名を尋ねるときは、まず自分から名乗ったら?」
「おっ、めんごめんご。ワイはベテルギウス様。だが人はこう呼ぶ、ビーー……」
「……ビ?」
「オッオッウッアッア!その名はビジネス以外で呼ばないでもらいたいんだ。いや、ワイ危ないやんっ!しょっぱなからバカやっちまうところやったわ」
「……とりあえずそこから動かないで。撃つわよ」

 ファーストコンタクトから、そのテンションは既におかしかった。
 デイバッグの確認を行っていたれい子。
 とりあえず知っている名前は、姉のリルカだけ。これからどうするかを決めかねていたれい子。
 その前に突如姿を表したビートルジュースに警戒するのは当然。
コルト・ガバメント。アメリカにおいて最もメジャーとされる拳銃。
 その鉄の塊を、れい子は謎の男に向ける。
 当たり前だが、決して友好的ではない様子のれいこに、気を悪くするわけでもなく、ビートルジュースはニヤニヤと笑う。

「まあ良いわ。こっちはファンがギョーさんおるワイの名前、ただで教えてるさかい。ワイにもネーチャンのネーム教えてありンス?」
「……私はれい子、姫園れい子よ」
 はっきり言えば、名をゆうべきか全力で迷った。だが、それなりの経験をもつれい子にも、目の前の男の真意が掴みきれない。
 敵意も殺意も感じられない。それどころか、親近感のある視線を送ってくる。
 ……一応は友好的なのだから、名乗ってもいいだろう。それに名簿が支給されている以上、名を隠してもいずれバレる。

「レイコ?ありゃ、いい名前じゃないの。似たもん同士仲良くしようや。さて素敵な出会いを記念してキスしようぜってかしてください!」
「は、あんた何言って……っ!?」

 するとどうだろう。何をトチ狂ったのか、ベテルギウスは神速の速さでれい子に接近しーー

 ーー頬に熱烈なキスをカマした。



「ぶべっ!?」

 吹っ飛ぶベテルギウス。胸に蝶々なく弾丸が撃ち込まれた。

「…………」

 れい子はゴミを見るような視線を向ける。撃ったことに対しては後悔はない。

「良い女じゃねえか。キスしても減らんよな?」

 撃たれたままだったのは一瞬。いつの間にかれい子の肩に手を回している。

「うん?綺麗な髪してるや……」
「気安く触んなぁぁぁっ!」

 再度蝶々なく引き金を引く。それは反射的なものだ。今度はベテルギウスの脳天に風穴が開く。

「うほっ!」

 しかし彼は倒れない。なんやかんやでまるで何事も無かったかのように、傷が消えていた。
 この時点でれい子は、目の前の男が普通の人間ではないことに気づく。

 霊界一のトラブルメーカーと、ゾンビ屋れい子のファーストコンタクトは、それなりに騒がしいものだった


◆ ◆ ◆


「……よし、とんじゃま冗談は抜きにして、ビッジネスのお話に入りましょか。今名刺出すから……あ、今持ってないんだった。うん、残念」
「……ビジネスですって?」

 ビジネス。何気なくベテルギウスは言ったが、れい子は素早く聞き返す。
 フザケた態度も一変。急に真面目な雰囲気になるベテルギウス。

 れい子はゾンビ屋という特殊な家業を行う傍ら、それなりの修羅場や死地を切り抜けてきた。
 一瞬、本当に一瞬だが、れい子は同じ"プロ"の匂いを、ベテルギウスから感じた。
 少し頭が狂ってる所以外は、意外と凄い人物なのか?

「そう、ワイは便利な死者御用達、バイオ・エクソシストやさかい。どんな状況だろうと、雇われれば頑張ってお助けするっちゅー素敵な仕事屋なんや。なんでもやるで。ぬぁんでも!」

「ワイは雇ってさえくれればお得やで!どんな奴もビビらせてやるさかい任せときな!"独り悪魔憑き"だってやってやるよ!」

 あら不思議。いつの間にかベテルギウスの服装が変わり、西部劇に出てくるようなウェスタン風に早変わり。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


 凄まじい絶叫。そのまま地面に転がり、四肢をめちゃくちゃに振り回す。
 れい子はその突然のベテルギウスの奇行に、当然驚く。いや、むしろ引く。

「"自分が自分に取り憑いた!!ワイがワイを支配されたぁぁぁぁ"ってなもんだ。今なら無料で悪魔憑きグッズ進呈中!欲しいだろ?ワイもほしいよチキショー!」

 摩訶不思議、なぜか地面ではなく、再度直立しているベテルギウス。

「それだけやないで!ワイのオフィスは託児所完備や!一日中毒蛇と絡み合えるで。綺麗なナウいネーチャンのお客さんには、サービスしまっせ!」
「さぁ、一回二回……三回目にはジャジャジャジャーン!呪文を唱えりゃ俺はあんたの忠犬!食えって言われりゃ何でも食うさ!!」


「アホ〜〜〜〜ッ!!」


「」
「…………ってな宣伝でやらしてもらってます。お見知り置きを」

 いつの間にか元のスーツ姿に戻ったベテルギウス。掴みはバッチシ……というような顔をしている。

「やり過ぎたなら言ってくれ」
「突っ込みたい所は色々あるけど、まず言わせて……あの芝居は必要だったの?」
「いんやあんまり」
「……」


 すごく腹立つ。
 れい子が内心そう思っている事も知らず、いや、知らないふりをしているのか、ベテルギウスは全くブレない。


「そもそもアレよ。あなた……ベテルギウスだっけ?一体何者なの?バイオ・エクソシストってなに?なんで撃たれたのに死なないの?」
「あらあら、レイコちゃん新人死者のハンドブック読んでないでしょ?駄目だよちゃんと読まなきゃ。時代の波に乗り遅れまっせ?」

 当初から考えていた疑問を、れい子は口にし尋ねた。
 そして快く?話し始めるベテルギウス。
 それからしばらく、ベテルギウスの話を聞き、れい子は少なからず驚いた。

 地獄ではない死者の世界、霊界の存在や、死者の文明、組織化の話など、れい子の知識にはないもの。
 死者に関しては、それなりに詳しいつもりだったのだが……

「へぇ〜〜。なんや妙やと思っとったらレイコちゃんはギリギリ生きてんのやな。首から下は別人なわけかいな?」
「ええ、そうよ」

 ベテルギウスは興味深げにれい子を見る。れい子のような特殊な経歴の"ゴースト"は珍しいんだろう。


「とにかく、あんたらとワイは、同じような境遇やから、お互いよく知り合うこった。マブダチになりましょか!!」
「ワイはハーバード・ビジネス・スクール卒や。ペスト大流行の時代を知ってまっせ?"エクソシスト"は167回も見た!見るたびに笑えるんがな、こいつがよ! ワイをタダの死人と思うな!!……なんて、こんなところでどうや?」
「何が?」
「ノリって大事にせなアカンよね(笑)」
「……」

 駄目だ。この男は駄目だ。全く意味が分からない。ていうかわかりたくもない。
 いちいち話を聞いても全く埒が明かない。なぜあたしはこんなのと会話してんの?
 元々が非現実的な人生を送っているれい子。だが彼女にとっても、ベテルギウスの扱いは難しかった。
 行っていることも二転三転変わってしまう上に、要点が全くわからない。
 言葉は通じているのに、ベテルギウスとれい子。この両者の間での意思の疎通は、全くと言っていいほどできていなかった。

「おいおい、そのしかめっ面はよしといたほうがええで。よし一発芸を見せたるわ。ワイを見いや」

 ベテルギウスの顔が豹変する。
 大小様々な触手が飛び出し、形容し難いグロテスクな何かに。

「ッ!?」
「どう?イケる?」

 さしものれい子も驚く。しかし次の瞬間には、即元の顔に戻ったベテルギウス。それを見た瞬間、れい子は考えを固めた。

ーーもう付き合っても意味がないーー

「えっ、ちょ、なに。どこ行くの?え、ウケなかった?」
「……」
「行かないでくれやっ!なぁ待ってよ。ワイらはもうマブダチじゃないですかよぉ。なぁ、相棒そうだろ?ねえ見て!ペアルックや!」

 デイバックを担ぎ、付き合ってられるかとばかりに、その場を去ろうとするれい子。それ必死に引き止めようとするベテルギウス。

 必死の叫びとともに、ベテルギウスに変化が!



 縞スーツではなく、いつの間にか身に纏っているのは"セーラー服"。


 そう、セーラー服を着ている。
 もう一度言おう。セーラー服を、良い年したおっさんが着ている。
 奇抜な外見のベテルギウス。それとセーラー服はおよそ似合わず、れい子のように目の保養には向かない。むしろ気分を悪くさせる。


「こうしちゃうぜ!」

 ドサクサに紛れ、背後かられい子に抱きつく。そして堪能する。れい子のボディを。

 もみもみもみもみ

 あちゃ〜〜。胸もんじゃってるよあの人、完全に変態顔だ。
 何処からかナレーションのツッコミが……


「……」
「我が一生に一変の悔い無し」
「死ねッ変態!」

 本日三回目の発泡音。銃弾がベテルギウスに叩き込まれる。




「見いや! ここは土星や! ワイらは土星にいる!サンドワーム見たことあるかいな?嫌いやろ?わいも嫌いや。なぁだから、つまらないいさかいは水に流して、ワイと組みまくろうや」
「……幽霊ッてみんな、あんたみたいにデタラメなの?」
「いんや。ワイが天才やからや」

 流石にもう驚かない。
 元々がすでに死んでいるゴーストには、銃弾はあまり意味がないらしい。
 即復活を果たしたベテルギウスに、れい子はゲンナリとした様子。
 この状況下、有限のある銃弾は節約したいのが本音。しかし既に三発も無駄にしてしまった。
 ベテルギウスをどうにか出来ないことに対してか、はたまた無駄玉を使ってしまったことに対してか。いや、両方に苛立ちを感じるれい子。

「ピアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 奇声、耳をふさぎざるを得ないほどの高音。首が360度回転し、そのスピードは風を超えた。

「……」

 ピタッ……残像が見えるほど回転した後、両手で頭を抑え、止める。

「エクソシストのマネ。どう?今度はウケるかいな?」

………………
…………………………
……………………………………


 振り向けばギャルの姿は無い。
 れい子は立ち去っていた。



「ありゃりゃりゃりゃ! おい! レイコハンッ!どこへ行ったんや!」



◆ ◆ ◆


 ベテルギウスがれい子の逃走に気づいた頃、当の本人は悠々と森を駆け抜けていた。
 れい子の殺し合いにおけるスタンスは、マーダー。対主催。どちらともつかなかった。
 商売柄、そして送ってきた経験。それらがあるゆえに、殺人にはあまり蝶々はない。
 だが、れい子にとって殺してもいい対象は、世間一般で言う悪党に分類される者のみ。
 今のところは、この場で殺しても後腐れが無いのは三家本礼だけだ。
 本音を言えば……あの幽霊もどきの男は嫌いだ。だが、アレは殺すほどでもないと思う。何より銃で撃っても死なないのだがら、放っておいたほうが得策だろう。
 否のない一般人を手にかけることは気が悪いし、何よりもれい子の流儀に反する。
 とりあえずの目標は『生還』、そして『姉』を探す事と定めた。
 もうリルカーー姉とは何年も会っていなかったが、賭けてもいい。リルカは間違いなく殺し合いに乗ってしまうだろう。
 妹としては微妙な心境だが、姉は間違いなく善人ではない。ドス黒い悪だ。
 放っといても気が咎める。やはりケジメをつけるべきだろう。

 走りながらもれい子は、ちょっとした望みをつぶやく。



「……次は、もう少しマトモな相手と出会いたいわね」


◆ ◆ ◆



◆ ◆ ◆


「取り引きしようってだけやでっ!冗談のセンスもないんかっ!なんで勝手に消えるんやアホっ!」

 怒りの声と共に、地団駄を踏む。
 良い"カモ"に会えたと思ったら、見事に逃げられてしまった。
 ベテルギウスは悔しがる。

 全く、新人の癖に、死者の先輩に対する敬意ってものがないのかッ!。
 このワイでも、しゃぶりつきたくなる程の美人やったが……やっぱ小娘やわ。完全に大人ナメとるやろ。
 あ~あ、こんなんじゃウザったい"縛り"がキツうて、本気出せへんわ。とっととこげなとこ出ていきたいっチュ〜〜のによおッ!!

 ベテルギウスは、何も気まぐれでれい子にアタックしていたわけではない。
 接触をする以前、ベテルギウスはこの会場から、霊界への脱出を試していた。
 『平面な場所に四角形の"ドア"を描き、ノックを三回する』
 それが霊界への門を開く、ゴースト達にとって一般的かつ、幅広く行われている方法だ。"死者"が行えば、まず失敗は起こらない。
 だが、門は機能しなかった。
 この会場は、霊界のネットワークから隔離されていた。

ーー即ち、出ることは出来ない。

 それに気づいたベテルギウス。しかし"縛り"はそれだけでは無かった。

 パワーが明らかに減っていたのだ。どう考えてもいつもの本調子ではない。
 服を変える程度なら問題ないが、大規模な霊力は扱えなくなっていた。
 基本的に"ヤリタイ放題"なベテルギウスにとって、この制限は非常に困るとともに果てしなくウザったいものだ。

ーーだからこそ、ベテルギウスは誰かとの"契約"を欲している。

 契約さえすれば、失ってしまった霊力も補充出来るはず。そうしたらもう怖いものなし!

 その考えに至ったからこそ、彼なりにれい子に対して、熱烈なアプローチを行ったのだ。だが、それが思いっきり滑ってしまっただけのこと。

「あぁぁ!もうみんな頭イカレたパーちゃうんか!  ワイはプロなんやぞっ!」

 怒り全開、仕事を貰いそこねた仕事人は恐ろしい。苛立ちを込めた蹴りは、近くの木に叩き込まれる。

 ドォンッ!

 音を立てて気が倒れる。







「タマらん気分だぜ!」





【2-A/森/一日目/朝】

【姫園れい子@ゾンビ屋れい子】
[状態]: 健康的な肉体、ちょっとした疲労。
[服装]: セーラー服
[装備]: コルト・ガバメント
[道具]: 基本支給品 ランダム支給品×1
コルト・ガバメント コルト・ガバメントの弾×20=17弾
[思考]
基本:殺し合いからの生還をめざす。
1:リルカを探して……
[備考]
※蘇生直後からの参戦。百合川サキは召喚できません。また、リルカ以外の同作品出展キャラとは接点がありません。

【ベテルギウス@ビートルジュース】
[状態]: 健康。興奮
[服装]:縦縞模様の白スーツ(霊力によって自在に変えることができます)
[装備]:
[道具]: 基本支給品 ランダム支給品×3
[思考]
基本:誰でも良いから、契約させて力を取り戻す。
1:レイコはんっ!人の熱意を流しよってからに……せめて話は最後まで聞いてや。
[備考]
※原作前からの参戦。霊力に制限あり。服装を変えたり、体の一部を変身させる事は可能ですか、まったく別の物には変われません。しかし、契約を結び、力を取り戻した場合その限りではありません

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最終更新:2014年01月28日 10:13