野呂田は元来、強者という言葉とは程遠い男だ。例えばリルカのような強い者には媚びへつらい、弱いものには威張る典型的な子分体質。
その上にとんでもない変態なのだから救いようがない。
だが以外にも、野呂田は会場に飛ばされてもみっともなく騒いだり、怯えたり、凡そ見苦しい真似はしなかった。
「……ひゃ、ひゃひゃひゃひゃ!!これさえ!!これさえあればボクはヤれる!!」
いや寧ろ少々調子に乗っていた。なぜかと問われれば、まあ中途半端に能力を有していたからだろう。だが、支給品が望む物だったのが大きい。
野呂田の手に収まっているのは、幼女が好みそうな可愛らしいぬいぐるみ。通称魔女ッ子ミルキー人形だった。
「えっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
野呂田の頭が狂った訳ではない。このぬいぐるみが無ければ、野呂田のゾンビ、ケネス・ダイナモは操作ができないのだ。
野呂田はただの人間ではない。手のひらに星を持つゾンビ召喚者。魔王サタンの名により、死してなお血を求める地獄の亡者を使役する存在だ。
野呂田の使役するゾンビの名はケネス・ダイナモ。生前は魔女狩りの時代における死刑執行人。
元執行人の肩書きの通り、ケネスは単純な攻撃力ではかなり優秀なゾンビに分類される。だが、決して使い勝手が良い訳ではない。
ゾンビの性格は千差万別、主人に忠実な者、自分の判断で行動する者、ただ暴れたいだけの者、といったタイプがいるわけだが、ケネスは一言で言うと馬鹿。
一度召喚したら、主人である野呂田の制御をまったく受け付けず、斧を振り回すだけ。
だが馬鹿だからこそ、指示の出し方ひとつで凄まじい力を発揮できる。ケネスは野呂田の指示は聞かないが、ミルキーちゃんのお願いはちゃんと聞いてくれるのだ。
暴走するゾンビの手綱を握るアイテムを手にし、野呂田は強い自身を手にいれた。
リルカは間違いなく殺し合いに乗っているとして、下手をすれば手下である自分も殺されかねない。
だが名簿を見る限り、自分と同じリルカの手下が何名か居る。
それらと合流することも視野にいれると、自分が殺し合いで役に立つと思わせられるだけの手柄を立てなくては、逆に身が危ない。
そして殺し合いの手柄と言ったら、やはり他者の殺害だろう。
できるだけ自分達と無関係な参加者を殺せば、それだけリルカや自分達の生存率が上がって都合がいい。
気色悪い笑みを浮かべて、野呂田は殺戮者になることを決めた。
元々、リルカの下についた者に殺人の蝶々などあるはずがない。彼らの最終的な目標は、リルカが女王として頂点に君臨するゾンビの帝国を作ることなのだから。
「ちょっとそこのあんた 何してんの?」
「……ヒャハハ、早速カモ発見」
野呂田はケネスを召喚した。地面が歪み、斧を持った巨漢、ケネスが現れる。まったくもって運が悪い女は、その異様な光景に驚く。
「『はぁ~~いケネス君のお友達ミルキーちゃんでちゅよ~
ケネス君、今日のあたしのパンティーの色当ててみて!
白かな~ピンクかな~~
見たい? ミルキーのパンティーが見たいのネ!でもタダじゃいやだな~
ミルキーのお願いを聞いてくれる?じゃあねえ……あのおんなをぶっ殺すのよケネス~!!』」
「ウオオオオ~~!!」
「な、なんだてめーらは!!」
アニメを真似た裏声を上げる野呂田。可愛い『ミルキー』のお願いに答え、咆哮をあげる馬鹿、ケネス。
「うっひゃひゃひゃひゃ!!ぶっ殺せケネス~!!」
「ウオオオオ~~!!」
「ちッ……やってみろ!!コラァーッ!!」
◆ ◆ ◆
「うっひゃひゃひゃひゃ!!ぶっ殺せケネス~!!」
「ウオオオオ~~!!」
「ちッ……やってみろ!!コラァーッ!!」
ナグルシファーは怒声を上げるが、状況は分が悪かった。相手は斧、武器を持ち、対する自分はほぼ丸腰。自分の腕っぷしには自信はあるが、さすがにこれは不味い。
そもそもなんだあいつら。殺し合いに乗っているのかよ。つーかあの斧野郎は地面から沸いてきたぞ!?
見たとこ改造死体か?じゃあ、あの根暗そうなチビはネロの手下だな。でも死体には見えないんだけど。ネロに人間の手下が居るってのは考えづらいし……
「うおおおおっ!!くそっ……があああああ」
これもお願いの効果か、予想以上に素早いケネスの動き。振り回される斧を持ち前の運動神経で避けるナグルシファー。
狙いが外れた斧は、彼女ではなく地面に当たり、抉れる。
「おらああああ!!」
ナグルシファーもただ回避に徹する訳ではない。ケネスの動きの隙を突き、殴る、蹴る、とにかくダメージを与えようとする。だが相手はゾンビ。下手な打撃では攻撃にすらならない。
「ヒャハハハッどうしたどうした!!避けてばかりじゃ直に死ぬのは変わらないぞ!!ま、運が無いって諦めなッ」
「うるせェッ!自分じゃなんもしてねぇ癖に!!」
勝手に言ってろと、ナグルシファーに野呂田は言い返す。事実野呂田はケネスの後方で、ミルキーちゃんを装備したまま余裕の笑みを浮かべながら待機していた。すでにナグルシファーの殺害を確信している。そもそもゾンビ相手に肉弾戦を挑む彼女に、勝ち目はないと決めつけているのだ。
「くッ……ふざけやがってえェ――」
ナグルシファー本人は微塵も諦めていない。彼女は勝ってきた。実家の塾生徒をカツアゲした暴走族にも、ネロの残党達にも、いっぱしのスケバンとして勝ってきた。だから今回も、ちょっとキツいが勝てる。いや、勝つ。
距離を取りながら、無造作にデイバックから支給品を取り出す。それ自体は一度も使ったことは無いが、知識で使用法はわかる。安全ピンを抜き、ケネスに投げる。
ピカッ
瞬間、強烈な閃光が溢れる。
「ウオオオオッ!?」
「ギャ、目が、な、なんだ!?」
「スタングレネードッてやつだよ、ボケッ!!」
ケネスは完全に視界を失った。大声で喚きながら滅茶苦茶に斧を振り回す。だが、格段に遅くなった上に単調になったその攻撃は、彼女に当たらない。
先手必勝、大きな隙ができた。この機を逃すほどナグルシファーは甘くない。全力で走る。ケネスではなく野呂田の方に。
「ひっ、ひあ、く、くるな!!」
「この……ボケッ!!」
「グヘッ!?」
問答無用で殴り付ける。スタングレネードなんてものが支給されていたのだ。もしかしたら懐に銃を持っているかもしれない。だとしたら先手をとるべきだ。
野呂田を殺す気はない。ネロの残党を血祭りにあげてきたナグルシファーだが、あれらはすでに死体だ。生身の人間を殺すつもりはないし、その覚悟もない。
だが、単純に死体をけしかけられた事はムカつくので、ケジメとしてはボコる。そもそもネロの関係者の疑いがあるのだから、どっちみちボコる。話などはそのあとにゆっくり聞けばいい。
「 Fuck you!!」
次の瞬間、爆風がナグルシファーを襲った。なにが起こったのかまるで判らなかった。背中が熱い。焼ける。炙れる。
「熱っつあああああ!!」
「ギャアアアアア!!」
吹き飛び、地面に転がる。微かに見えた。死体ゆえに視力が回復せず、喚きながら斧を振り回していた巨漢が、いまやバラバラのミンチ。燃えカスと化していた。
炎の明るさで、その向こうにいる男が見えた。コートを着たサングラスの白人だ。手に持っているのは筒か?……まさかロケットランチャー!?
野呂田はナグルシファーと違ってその男に気づかなかった。自分の髪の毛に燃え移った火を消すのに、全神経を集中させていたからだ。悲鳴をあげながら地面を転げ回っている。
ナグルシファーは、痛みに顔を歪めながら舌打ちをする。そして野呂田を置いてそのまま走り去った。
いきなりロケットを撃ってくるような相手だ。武装も強力過ぎる。打つ手がない。
◆ ◆ ◆
Fuck!!マジで最悪だぜ!!
家の糞女房に頼まれて、糞みたいなお使いをこなしてたってのに、変な鳥頭に拉致されて犬っコロみたいに首輪つけて殺し合えだ!!
俺がどんな目にあってるのか、糞女房の奴わかってんのか!!
ああ、腹減った。中華でも食いてえなぁ。
まったく糞みたいな気分だ!!ん、なんだ。だれか居るぞ。女とチビとデッカイのが一人。なんかのイベントか?
早速おっ始めてやがるのかよ。デッカイのは斧振り回してるし騒ぎやがってウゼえ!!
おぉ、ピカッと光ったと思ったら女がチビをボコってるぞ!!グレネードか!!
中々やるじゃねえかあのアマ。だが家の女房みたいに怖そうだぜ。でもアッチの方が若くてピチピチだな。
ちッ、だが何にしてもムカつくな。俺は静かに紳士的に考え事をしてるってのに、馬鹿みたいに騒ぎやがって。これじゃ考えもまとまんねえ!!
よっしゃ、一丁派手な花火でもあげて黙らせるか。とにかくイライラするときは銃ぶっぱなすのが一番だ!!見敵必殺!!
よっこらせ、あの鳥頭はなかなかにシブい趣味を持ってやがるな。はは、まさかこんな安っぽいバックにロケットランチャーなんてものが入ってるなんて驚きだよな。
文明ッてすげぇよなぁ!こいつを町で車にぶち当てると本ッ当に気持ちいいんだぜぇ。
とにかくFuck!!弾OK!!筒OK!!それじゃいくぜぶっぱなす俺のロケットを!!
「Fuck you!!」
ははははは、よっしゃ!!お見事!!大当たり~!!すっげ~威力だなぁ!!
しかもうるせぇよ糞が!!煙すっげェ!!汚ねえ花火だ糞が!!
ジャストに斧野郎に当たりやがった!!
まさに消し飛んでるぜ!!俺天才!!
まさか今日死ぬなんて思ってなかっただろうな!!おったまげ~!!
コイツがありゃあ怖いもん無しだぜ~!!お、なんか焼き鳥の臭いがする。
おぉ、あのチビ頭燃えてやがる!!おもしれェなァ!!必死に転げ回ってるぜミットもねぇ!!
ん、女が逃げやがった。まぁ良いか別に。殺す気はあんまネェしな。
……まぁ、アレだ。一発ヤったらなんか落ち着いてきたぜ!!
いきなりひとり殺ったからか貫禄もつくってもんだ!!
気分よくなってきたぜ~!!楽勝だ!!しゅぴ~~ん!!
……あぁ、今朝から頭が妙なんだ。突然糞女房の顔が思い浮かんで来やがった。殺し合いヤらさせてるってだけじゃ女房は納得しないかもしれねぇ。
今朝はクーラー壊れてたから滅茶苦茶イラついてたからな。じゃあ仕方ねェ。言い訳が立つように少しはやっておくか!!お使いをよォ!!
確か……コートに……あ、あったあった!!やっぱメモはポケットに入れておくに限るな!!
糞みたいな鳥頭もこれを募集するッて糞みたいに考えてないって訳だ!!
どれどれ……
- 牛乳を買う
- 協会で懺悔する
- 嘆願書に署名をもらう
- ナパームを購入する
- クロッチー人形を入手する
- ステーキ肉を買う
おいおい大忙しじゃネェか!!糞女房の奴俺のことを奴隷かなんかと勘違いしてやがるんじゃねぇのか?
まあ後がうるせぇからやってやるけどよ!!ち、ぶっぱなしてスッキリしたのにまたイラついちまった!!
まぁ何時までもこんな所に用はねェ。そろそろいくか。
で、まずは何からやろうかなぁ?
【4―F森/深夜】
【ポスタル・デュード@ポスタル2】
[状態]:健康??
[装備]:ロケットランチャー@ポスタル2、お使いのメモ
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
【基本方針】
1:「家の女房は怖いからなぁ 一応お使いをこなしておくか」
2:イライラしたら適当に殺す
【備考】
※ナグルシファー、野呂田の姿を確認しましたが、名前はしりません
※殺人にたいしてはまったく抵抗感はありません
※ケネス・ダイナモを破壊しました
一方ナグルシファーは、走っている内に森を抜けていた。少し息が上がっている。地面に腰を下ろした。
着ていたセーラー服は所々焦げている。それだけで済んでいるのはありがたかった。
「いきなりロケットぶちかましてくる奴が居るなんて、ちょっとハードすぎるだろ」
最初から飛ばしすぎた。少し休憩しよう。走っている内に喉が乾いた。デイバックから飲料水のペットボトルを取り出して飲む。
(やっぱしばらくは穏便にしてるか。ギーコと合流するまえに死ぬなんて事にはなりたくないからね
ったく、あの野郎、覚えてろよ……)
◆ ◆ ◆
「うう……な、なんてこった……ボクのゾンビが……」
野呂田は凄まじく焦っていた。震えながら悪態をつく。その視線の先には、燃える肉片になった己のゾンビの姿がある。
終わった。ゾンビを失ったゾンビ使いはただの人間と変わらない。ここまでバラバラになれば、ゾンビとはいえもうケネスは使えない。
いったい何が起こったんだ?なんで、なにが?
どうしてこうなる?最初はうまくいっていたのに、ただカモを殺すだけだったのに。
もうゾンビ使いとしてボクは役立たずだ。これじゃリルカ様と合流しても役に立たないって殺される……!!
「ちくしょう、ちくしょう、どうすれば良いんだよ……!!」
【ナグルシファー@血まみれスケバンチェーンソー】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品×2、スタングレネード×2
【基本方針】
1:ギーコ、ついでにキンバリーと合流したい
2:改造死体、ネロの手下はケジメで叩き潰す。
3:撃ってきた男(デュード)を警戒
【備考】
※参戦時期は単行本4巻、ガーディアンズ編直後からの参戦です
※爆谷さゆりと面識はありません
※名簿にネロの名前があることに対して疑念があります
※野呂田をネロの関係者ではないかと考えていますが、名前はしりません
※デュードを警戒していますが、名前はしりません
【野呂田@ゾンビ屋れい子】
[状態]:疲労(中)、打撲、火傷
[装備]:魔女ッ子ミルキー
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
【基本方針】
1:生き残る
2:リルカ様と合流したいが……
【備考】
※野呂田のゾンビ、ケネス・ダイナモは完全に破損したため召喚不可能です
※ナグルシファーを警戒。デュードの姿は確認していません
【全体備考】
※ケネス・ダイナモ、及びその装備の残骸が4―Fに放置されています。
※付近のエリア、及び参加者に爆発音が聞こえた可能性があります
【ロケットランチャー@ポスタル2】
デュードに支給。かなりの攻撃力を誇る。弾は有数
【魔女ッ子ミルキーちゃん@ゾンビ屋れい子】
野呂田に支給。
ケネス・ダイナモの操作に必要なぬいぐるみ。これ自体に特殊な力はない
余談だがミルキーちゃんのアニメはあの百合川サキも幼少の頃に見ており、ファンだった。百合川みどりが10年間昏睡する原因にもなっている
【スタングレネード@現実】
ナグルシファーに支給
非殺傷の手榴弾。安全ピンを抜けばきっかり3秒で強烈な閃光をだす。3本セットで残り2本
【お使いのメモ@ポスタル2】
デュードの妻が彼に頼んだお使いが記されたメモ帳
現お使いは以下のとおり
- 牛乳を買う
- 協会で懺悔する
- 嘆願書に署名をもらう
- ナパームを購入する
- クロッチー人形を入手する
- ステーキ肉を買う
最終更新:2014年04月01日 01:32