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秘術と戦争が生んだ怪物


   会場の森林エリア、生い茂る木々が時おり月の光を遮り、それ故に暗く、怪しい雰囲気を醸し出す森の中。
 その森の中に居る二人の参加者。
 一人は金髪ツインテールのゴスロリファッションに身を包む白人の少女。
   その外見の情報だけなら、殺し合いという状況に突然放り込まれた被害者の幼い少女……という解釈にとれるかもしれない。
 しかし、少女――ブラック・ロリータは犯罪都市ニューヨーク出身の銃殺魔、はっきり言えば殺人鬼なのである。
 左手にデイバック、右手にピンク一色に可愛らしく装飾されたサブマシンガンをもち、もう一人この場に居る参加者をじっと影で気配を消し、観察する。
   運が良いことに、支給されたその銃はブラックロリータの愛用品である。
  デザインとそのセンスはともかく、人を容易く殺せる銃であるのには代わらない。

「…………将軍…………この…………どう…………殺し…………駄目…………ですが…………しかし…………」

 ロリータの視線の先、暗闇であまり詳しくは判別できないが、軍服らしき服を着た参加者が、デイバックを片手にもち、ロリータに背を向けて突っ立っている。
 声からして若い男性であろう軍服男は、ロリータが発見した時にいた位置から何時までも動かずに、せわしなく独り言を続けている。ロリータには気づいていないようだ。何を話しているかは距離がありすぎてよく聞こえない。

(何ボーッと突っ立ってんのかね、大の男が。スキだらけだっつーの)

 暗がりの上に遠目に見ても十分挙動不審に見える軍服男の姿に、少しあきれ気味のロリータ。普通こういう状況ではこんな場所に突っ立っていないで、なにか行動を起こすことが普通だ。
   事実参加者の中では弱い部類に入るロリータに、簡単に背後から狙われていることから、軍服男の警戒力は甘いといわざるを得ない。

「ですが…………はい……」

   観察を続けるロリータだが、一向に独り言を止めようとしない男に、段々隠れていることがアホらしくなっていった。

「ヘイ!!そこの軍服男!!おとなしくバックをわたしな!!」

 男に銃を向け、大声でバックを要求しながら飛び出したブラック・ロリータ。威嚇ではない。怪しい素振りを見せたら蝶々なく撃つ。
   男はやっとロリータに気づいたようで、驚いている。

「早く!!モタモタしてっと大事なタマを吹っ飛ば……」

 月の光の輝く中、此方に振り向いた男の素顔をロリータは初めて見た。そして言葉を失った。
 軍服男は、左側の優しい瞳をした青年の顔では困惑を露わに、ロリータを見つめる。
 しかし、男の右の顔――――醜く乾燥し、口髭を半分だけ生やした老人の顔は、ロリータに氷のような視線を送る。

 月明かりの暗がりの中でも判断できるほどに、男の顔は左右全く違っていた。

◆ ◆ ◆

   1861年4月12日、奴隷解放をうたう北部とそれに反対する南部との間で勃発した南北戦争は、約4年間続き、北軍の勝利で幕を閉じた。

 それは北軍約36万人、南軍26万人、計62万の死者を出す凄まじいもので、第一次大戦の12万人、第二次大戦の32万人を遥かに超え、アメリカ史上最大の数の死者を出す同国人ゆえの怨念に満ちた内戦だったのである。

 この殺し合いには、その怨念が産み出した魔物が呼ばれている。

 彼はギリシア神話の冥界の闇の王、ハーデースのごとく、片方の目で優しく、しかし片方の目ではまるで食いつかんばかりのように激しくロリータを見つめていた。

◆ ◆ ◆


――およそ15分ほど前

「シャーマン将軍、一体この状況はどういう事なんです?
『あの鳥顔の男の言葉を借りれば、ある種のゲーム。催し、つまり殺し合いだな』
 ……殺し合いなんて……駄目ですよ。
『しかし、今の我々の状況では帰る手段はあの男の言葉に従うしかないぞ』
 ですが……
『我々2人は文字通り一心同体、2人が2人とも果たさねばならぬ目的がある。此処で死ぬわけにはいかん……だろう?』
  しかし
『まあ、深く考えるなデリック、我が子孫ながらお前には戦場の場にたった経験がない。考えれば考えるだけ気が滅入るというものだ』
  ……そうですね。たしかに貴方との会話で頭がおかしくなりそうですよ。将軍」

 暗い森の中、アメリカ北軍の軍服を着た一人の若い青年が、静かに会話を行っていた。
  しかし、青年の前に話している人物は存在せず、一見青年の独り言に見える。
 だが、青年は確かに会話を行っていた。――――自分の肉体を半分使っている者と。
 左側の彼、アメリカ人の青年の名はデリックという。対して右側の干からびた皮膚の顔の男は、デリックの先祖にあたる北軍の軍人、シャーマン将軍である。
 なぜデリックの肉体の半分を先祖であるシャーマン将軍が所有しているか、それには深い南部と北部の争いが関係してくる。
 デリックは元々ワシントン大学に在籍する大学生、あるとき南部出身の女性、トレイシーと出会った事から全てが始まった。
 北部出身のデリックと、南部出身のトレイシーはお互いの出身を気にするタイプの人間ではなく、お互い愛し合っていた。
 愛し合うデリックとトレイシーが結婚を考えたのは自然な事だった。
 幸せな2人、しかしデリックが南部のトレイシーの実家に挨拶に行った事で、2人の愛に障害が生まれた。
 南部と北部の関係で深い因縁のあったトレイシーの父は、当然北部出身のデリックと娘の交際を禁止し、2人を無理やり引き離したのだ。
 デリックとトレイシーはお互い深い悲しみをおい、その感情が爆発。デリックは暴力でトレイシーを奪おうとした。
 この時デリックは、既に先祖の家として廃屋になっていたシャーマン家を訪れており、既に何らかの影響を受けていたかもしれない。
 シャーマン家からシャーマン将軍の愛銃を持ち出したデリックは、ステイシーの父に交際を認めるように脅迫する。しかし当然のように失敗し、頭を狙撃された。だが、幸か不幸か、将軍の銃のオーラが奇跡的にデリックの命をつなぎ止めたのだ。
   しかしそれもそう虫の良い物ではなかった。頭の傷のため、段々と弱っていったデリックはトレイシーとの愛を叶えたい一心で、再度シャーマン家に行き、シャーマンに助けを求める。
 シャーマン将軍は瀕死のデリックに、現地のインディアンの噴墓塚に宿る魔力を利用し、憑依することでデリックを延命させた。
 その結果誕生したのが、一つの肉体に二つの魂が宿った憑依人間。
   今のデリックとシャーマン将軍だ。
 シャーマン将軍が乗り移ることで、かろうじて命が助かったデリックだが、血筋が同じだろうと全く別の人格が一つの肉体を使用する事は、かなり不安定。
   事実、デリックとシャーマンは殺し合いに対する意見の違いで先程から口論を続けている。

「ですが
『くどいぞデリック。ひとまず乗るかどうかはおいておいて、この場を探索することから始めよう。このままではラチがあかない』
……はい、わかりました」

 延々と続くかと思われた口論も、ひとまず終焉を迎えたときだった


「ヘイ!!そこの軍服男!!おとなしくバックをわたしな!!」

◆ ◆ ◆


  ロリータは
『二つの別人の顔が一つの顔に纏まっている』
  というデリックの異様な外見に本能的な嫌悪感を感じ、驚きで動きが止まってしまった。
 全く別の物が一つに纏まっている姿とは、例えようもないくらい気味が悪い。
 呆然としているロリータを見つめる二つの瞳。片方は善良そうな光を放っているが、嗄れた男の眼孔は恐ろしく冷たい。まるでロリータが過去に射殺した人間の死体のような……死人のような瞳をしていた。
 その時、右側の死人のような男の顔の唇が歪む。笑ったのだ。
 しかし、左側の青年の顔は、混乱した表情のまま。
 しかし、それもすぐに変わった。
 ロリータの背後を見つめ、驚きの表情を浮かべている。


 「将軍やめてくだ『やれ』」


   デリックは制止するが、シャーマン将軍は無情にも命令する。何事かとロリータが背後を振りかえる前に、事は起きた。


 ドシュ!!


「(あれ……なんで……あたしの…か…ら…だ」


 ロリータの視界に、何故か見覚えのある自分の胴体が映る。
 胴体の首からは、まるで噴水のように大量の血液が吹き出している。

 あぁ、首を切られたのか……

 そう理解した瞬間、ロリータの意識は途切れた。


◆ ◆ ◆


 頭部を失った血塗れのロリータの死体。その背後に立っている、この世ならぬ存在。
 この場に呼び出したシャーマン将軍と同じ、北軍の軍服を着た骸骨の兵士。その皮膚には所々皮膚がこびりつき、虚しくその存在を主張している。
 右手には、たった今一つの命を刈り取った血まみれのサーベルを装備している。
 それを驚きと怯えと恐怖。三つの感情がごちゃ混ぜになった瞳で見つめるデリックの顔。

 「将……将軍……あれは?」

  辛うじて声を絞り出し、突如地面から沸いて出てくるようにして現れた死人。その正体を問いただすデリック。
 シャーマン将軍は、子孫の情けない様子に苦笑しながら答えた。

『クククク……私の部下だ。南部の人間によって、アンダーソンヴィルの捕虜収容所で家畜のように虐殺された北部の軍人たちだ。
  今でも強い怨念で満ちあふれている。
  その為に死後も成仏できないでいてな。霊としてこの世に留まっていたのを、私が呼び出したのだ』

 シャーマンの部下という言葉に反応してか、敬礼をする北軍の軍人の霊。
 その付近に転がる、呆然としたままの表情を浮かべるロリータの生首を見やるデリック。その表情には憐れみの感情が浮かんでいる。

 「……まだ…子供なのに……何故です将軍。なぜ殺させたのです…」

 銃を向けてきたとはいえ、こんな小さい子供を殺すなんて、酷すぎる。

『……デリックよ。ここは戦場だ。子供とはいえ、銃を向けてきた相手を見逃すことはできない』

 ロリータを殺したことに対して将軍は、あまり深く考えていないようだ。

「そんな!!別に殺さなくても
『デリック!!私はお前と南部人の娘との愛を成就させるとともに、お前を助けるためにお前の体に入り込み傷を癒してやったのだ。
  私は怨みながら死んでいった部下を成仏させる義務がある。
   それまでにお前に死なれたら私が困るのだ!』」 




――自分に愛らしく微笑んでくれるトレイシー

――初めてのデートでの楽しかった思い出。

――結婚を誓い合った時のトレイシー。
ベットで愛し合った時の記憶。


    シャーマン将軍のように、自分にも……やらなければ、生きなければ……生きたい理由がある。

「(……トレイシー…僕は……絶対に君の所へ…)」

 デリックは、恋人トレイシーの元に帰る決意をする。そのデリックの決意を感じ、対称的に冷えた感情で認識する将軍。

『(デリックよ……私がお前に死なれたら困るのは本当のことだ。お前が死んだら、私は地獄に逆戻り……二度とあんな場所に戻るつもりは無い)』

 実を言うと、シャーマン将軍にとってデリックの愛が実ろうが、実るまいが、どうでも良いことだ。

『(お前はなデリック。私が永遠の命を得るために利用されるだけの駒に過ぎない。精々その貧弱な魂を利用されるだけの運命なのだ)』

 シャーマン将軍の真の目的。それは南部人への強い怨みのために成仏できない部下を助けるためだけではない。
   自身を蘇らせる事ができたインディアンの呪術的技術を解明し、その力で世界最高の不老不死の呪術師(シャーマン)に成る。
  そして忌々しき南部人達を皆殺しにし、真の意味で世界の頂点にたつアメリカ大国を創る。それこそが彼の目的。
 哀れなデリックは、弱みにつけ込まれ利用されているだけに過ぎない。
 シャーマンは右手を動かし、バックから出されていた地図を確認する。

『さて、デリック。いつまでも此処に突っ立っている訳にもいくまい。こんな時こそ早急な行動が求められるものだ』
 まってください……この子をそのままにはしておけません。せめて埋葬してやりましょう、将軍」

 いくら何でも、このまま野晒しで置き去りにするのは忍びないし、申し訳ない。

『……デリック。そんな時間は無い。
    子供とはいえ、銃を向けてきた相手を埋葬してやる義務は無い』

 少女の埋葬を却下する将軍。

「しかし……」

   なお何か言いたげなデリックを無視し、将軍はその場に居続ける軍人の霊に命令する。

「『その子供のバックと銃を持って来い』
  そんな!死人の持ち物を盗むなん
『死人には使えないし何も出来ない。だろう?
  死人の私が言うのだから間違いはないだろうさ。
 あぁ、首輪もだ。サンプルとして持って行こう』」

 死人から持ち物を物色しようとする将軍に抗議するデリックを丸め込み、ロリータの首輪とデイバック、そして拳銃を回収する。
   因みに将軍、そしてデリックも少々、ふたりは珍しく揃ってマシンガンの装飾に生暖かい視線を向けていた。

「『……ふむ……持ち主のセンスを疑うが、一応は銃だな。ありがたく貰っておこう。
   だが流石にこれだけでは装備としては心許ない。助けを借りるか

……しかし本当に個性的な装飾だな。その、あれだ。あの……』
 少女趣味?
『あぁ、それだそれ。銃は玩具ではなく兵器なのだ。まったく持ち主の顔が見てみたい』
……僕も気になります。それ」


  持ち主は死体となって自分たちの足元に転がっている事を、ふたりは知るよしもない


 さて、話を戻して、将軍の助けを借りるという発言に怪訝そうなデリックを余所に、シャーマン将軍は指を鳴らす。
   瞬間、周りの地面から死者が溢れるた。
  先程将軍に呼び出された北軍人の霊が大量に《沸いて》きたのだ。
 あっと言う間に、30体ほど呼び出された北軍の兵士たち。死人の小隊が集まる、その悪い冗談のような光景にデリックは驚愕する。

『(ふむ……呼び出せる部下が少ないな。あの鳥男め。なにやら計ったな)
 ……まあいい、では――



――部隊整列!!』



  凛とした激励が、亡霊の部隊に響き渡る。武装した霊達が整列し、将軍に敬礼する。それはそれは見事な敬礼だ。

『私に続け!!我が北軍の優秀なる兵士たちよ!!』

 言葉なき亡霊の兵士達は返事をする代わりに敬礼で答える。それが何よりも彼らの心情を答えていた。

"貴方についていきます。上官殿"

 こうして一列に並ばれると、正面にいる将軍は勿論、デリックにも兵士達のおぞましい姿がよく見える。こんな月の出ている夜では、気味の悪さもさらに磨きが掛かって見える。
 一応体を貸しているから守ってもらえるとはいえ、怖い物は怖い。

「(……やはり僕は、とんでもない存在に助けを求めてしまった……トレイシー……)」

 そう考え、頼もしさと恐怖、その為色々な感情を感じているデリックは、内心ため息をつく。

『やはり、こうでなければ締まらないな。私は……』

   亡霊と同じく現れた馬に跨がり、颯爽と将軍は進軍を開始した。
  北軍の霊達が森を行進する姿は、見ただけで心臓が止まりそうな光景だった。


だが、将軍の握るサブマシンガンがどうしようもなく似合っていなかった


【ブラックロリータ@サタニスター 死亡】

【2―D/深夜】

【シャーマン将軍(デリック)@ミキストリ】
[状態]:健康体 
[装備]:ブラックロリータのサブマシンガン@サタニスター
[道具]:基本支給品×2 ランダム支給品5 ロリータの首輪
【基本方針】
シャーマン将軍
1生存第一。降りかかる火の粉は払う。
  • デリック
1:生きてトレイシーの元に帰る。殺し合いには否定的。
2:「トレイシー……僕はどうすればいい?」
【備考】
デリックの肉体にシャーマン将軍が憑依した直後からの参戦。ミキストリを知りません。
北軍軍人の怨霊を召喚する力に制限があり、同時に呼び出せるのは30体まで。馬は一体のみです
ロリータの首切り死体が2―D森に放置されています。

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最終更新:2014年04月01日 01:21