常磐線は東北本線日暮里駅から水戸・いわき等を経て、東北本線岩沼駅に至る、全長343.1キロメートルの幹線である。ただし東北本線上野駅~日暮里に常磐線専用の複線が用意されており、列車自体は日暮里に達した全列車が上野に達する。また岩沼に達した全列車が東北本線の線路を使って東北本線仙台駅に達するため、常磐線は事実上「上野~仙台」となっている。

  常磐線の名前の由来は、かつての「常陸国」と「磐城国」(※)からである。今の駅に置き換えると、それぞれ「佐貫駅(茨城県龍ヶ崎市)~大津港駅(茨城県北茨城市)」と「勿来駅(福島県いわき市)~逢隈駅(宮城県亘理郡亘理町)」が該当する。この区間はいくつか管轄する支社が分かれており、藤代(茨城県 旧・北相馬郡藤代町宮和田)~新地(福島県相馬郡新地町)は水戸支社、藤代駅から南は東京支社、新地から北は仙台支社である。

※ 成立時の7世紀頃は「常陸国」と「磐城国」はもともと一つで、全体で「常陸国」と呼ばれていた。

  常磐線は今は「五方面路線」という表現のもとJR東日本の東京を基点とした場合の重要五方面の一つであり、昔は東海道本線に次ぐ貨物列車大国でもあった。また国鉄時代から黒字が続く数少ない路線の一つでもある。日本の在来線では最長の15両編成となった5番目の路線(他は東海道本線・横須賀線・総武本線・東北高崎線)ではあるが、混雑も相変わらずで日中でも15両が多く走る。しかし常磐方面は圧倒的な輸送量を上回る利用者数にも関わらず、交通網は非常に貧弱である。他の系統と比べると、その貧弱さは一目瞭然である。山手線最終接続駅を基準に、各方面を並べてみる。ただし複数の運転系統を「同一の線路」で使用する場合(宇都宮・高崎線の上野~大宮など)は表示しない。

  • 東海道方面
JR東海道本線:品川~横浜~大船~小田原~
(電車線:品川~横浜~根岸線経由大船)
(横須賀線:品川~東海道貨物線経由~横浜~大船~久里浜)
(湘新線:大崎~貨物線経由~横浜~)
京浜急行電鉄:品川~横浜~上大岡~三崎口など
東急東横線:渋谷~横浜~みなとみらい地区
小田急小田原線:新宿~藤沢・小田原など

  • 中央方面
JR中央本線:新宿~中野~三鷹~高尾~
(電車線:新宿~中野~三鷹)
(地下鉄東西線:高田馬場~中野~三鷹)
京王帝都電鉄:新宿~八王子・高尾山口
(新線:新宿~笹塚。事実上の都営新宿線)
西武鉄道:中央本線とは東京都小金井市付近まで1~3キロの距離を保って並走する。

  • 東北方面
JR東北本線:上野~大宮~久喜~
(電車線:上野~大宮。ただし上野~田端は山手線と並走)
(赤羽線:池袋~赤羽~東北本線通勤別線経由大宮)
(湘新線:池袋~山貨経由赤羽~貨物線経由大宮~)
東武伊勢崎線:浅草(山手線接続なし)~北千住~久喜~

  • 総武方面
JR総武本線:東京~千葉~外房線経由蘇我
(電車線:秋葉原~千葉)
(京葉線:京葉東京~市川塩浜~蘇我)
京成電鉄:上野~日暮里~船橋~千葉~
(北総線:浅草線~高砂~東松戸~)


そして・・・
  • 常磐方面
JR常磐線:上野~日暮里~北千住~取手~
(電車線:西日暮里~北千住~取手。ただし西日暮里~北千住はJRのみの切符では利用出来ない。)
つくば線:秋葉原~北千住~


 2005年8月24日につくば線が開業するまで、何と30年以上もこの形態が続いていた。また北千住以南は事実上100年間近くも全く変わっていないに等しい。しかも国鉄長期債務により「作れ作れ主義」が一変して「作るな作るな主義」となったため新規鉄道に対して逆風となり、計画線が一部存在するもほとんど実現のメドがたたない。このため100年以上の歴史を持つ「常磐線」という名前と、その「常磐線」の利権を巡って路線案内が混沌とするなど問題は深刻化している。特に常磐緩行線は利用者から「JR千代田線」と呼ばれ、運転系統・線路ともに地下鉄千代田線と一体化しているにも関わらず、正式路線名である「常磐線」の名前を欲する人もいる。結果、常磐緩行線は「常磐線」を名乗り続け、本線各駅に止まる列車が「常磐線快速」を名乗るという、中距離利用者視点では最悪の結果となっている。常磐線普通列車は上野~取手に限って案内は「快速」となり、もしやライバル関係になるかも知れない「つくばエクスプレス」の「快速」と比べると天地の差がある。

 一応説明すると、常磐方面の運転系統としては本線である「常磐線」と、本線と同一の線路を使用する「常磐快速成田線」、隣の電車線を並走する「常磐緩行線」で成り立っている。車両はそれぞれ独立しており、停車駅も異なる。特に常磐緩行線は地下鉄千代田線と線路・車両・信号など全て一体的な運用となっているので、本来は3系統あるいは常磐線を除く2系統に愛称を導入して区別するのが妥当である。線路を現状維持とするならば、次のような案内が理想だろうか。

常磐線:上野~北千住~我孫子~取手~いわき~仙台
我孫子線:上野~北千住~我孫子~成田・取手
(我孫子線は成田線我孫子~成田の愛称として浸透している・・・はず)
千代田線:代々木上原~西日暮里~北千住~我孫子~取手

 ところでJR千代田線という呼び方は公式ではないものの、なかなか的を射ている。車両・行き先・停車駅を区別する上で常磐線以外の名前を使用し、かつ「相互直通」といいながらも先に記した地下鉄千代田線と一体的な運用となっている。この事も手伝って朝・夕の一部や日中の半分を占める「綾瀬行き(綾瀬駅は千代田線系統における地下鉄とJRの境目)」を「この電車は綾瀬止まりです。綾瀬から先は、この後の電車をご利用下さい。」と放送するので、利用者は何も知らされなければ間違いなく「千代田線は代々木上原~取手であり、綾瀬などの途中駅で終点となる列車もある」と認識するし、また「○○駅(緩行線の駅)は常磐線です」という知識を前もって仕入れていても「あとから千代田線という存在を知り、○○駅(緩行線の駅)は千代田線しか止まらない事が分かった」となる利用者もいる。管理団体が違うという弱点は、路線名の手前につく言葉がJRなのか東京メトロなのかで区別がつく(といっても、現状では綾瀬~我孫子でも「東京メトロ千代田線です」という案内を聞く事もあるが・・・)。

 一方中距離列車にも本物の「快速」があって、定期列車としては無くなったものの「臨時快速」は今も走っている。表示は「快速」である。また笠間方面に行く「快速 笠間deおさんぽ号」も上野~土浦の各駅(もちろんJR千代田線用の駅は除外)に止まるものの、土浦以北で通過駅がある臨時快速と言える。

 したがって運転系統上、緩行線が「常磐線各駅停車」を名乗ったり、本線の各駅に止まる列車が「常磐線快速」を名乗ったりするのは不都合である。

 このように常磐緩行線は本来JR千代田線と呼んだ方が合理的な系統なのだが、どうして「常磐線」という名を欲するのだろうか?

 JR千代田線(常磐緩行線)の最大の特徴は、上野駅に行かない事である。これが理由で当時から多くの緩行線利用者が不便を強いられた。当然昔から「上野を経由する路線が欲しい」という声は強い。

 一方で緩行線が上野に来ないことで、本線や我孫子線も打撃を受けている。例えば三河島・南千住といった中距離利用者には縁が無い駅に中距離列車が止まって所要時間がのびるなど、中距離利用者には深刻な打撃となっている。更に北千住以南の不便さが災いして並走路線の混雑が不均等となり、特に千代田線に集中している。また我孫子~取手では日中に千代田線が走らず、常磐線だけでまかなっている。線路があるのに線路を使わないほど勿体無い事は無い。しかし先に述べたように、この地域も例にもれず「常磐線」を欲した。そして「常磐線の利権を勝ち取った」のである。当然その負は取手以北に圧し掛かり、常磐線以外に在来線も計画線も無い区間に不利益となっている。

 もう常磐方面が虐げられる時代は終わりにしなければならない。しかし利用者が声を揃えなければ国やJRどころか、地元の有権者でさえどうすれば良いのか分からなくなる。残念ながら常磐方面の利用者・有権者は、全くと言って良いほど足並みが揃っていない。せいぜい「全列車の東京駅延伸」という「出来ていて当然の事を今更」という程度で、しかもこれはJRの利益追求主義によって失敗しかねない状況である。そこで、ここでは出来るだけ多くの方をサポートするような路線・ダイヤを提案してゆく。少しでも多くの方へ参考になり、ご意見をいただければ幸いである。

 なお、2007年04月27日から「総合案」でご意見を募集とする。

 ところで電車線という言葉と緩行線という言葉を出したが、これらは歴史的にやや敷設の経緯が違うものの、今はどちらも「本線である列車線や快速線が都市間を高速で移動するのに対して、電車線・緩行線は東京地方で多くの駅に止まる役割」の意味は変わらないので、ここでの詳細説明は省く。
最終更新:2008年12月29日 01:36