『ナレーション』
光…闇…炎…氷…
──平穏が訪れることはないというように 二人の男は相反し続けた
問うべきは過程では無い その吸血鬼（おとこ）にとって結果こそが全て
切実な現実 吸血鬼（かれ）には新しい体が必要だった…
沈み続けてゆく一番星 その輝きが消え失せる前に
次の星を輝かせる過程が 人（おとこ）には必要だった…
そして…その夜も運命は彼らを踊らせる……
『ジョナサン』
風を纏うように 海の静寂を探り 瞳と瞳（めとめ）を見つめ合って
夢想的(Romantic)な陽だまりの中 そっと唇重ね 息を潜めた…
『
エリナ』
慌ただしく走り過ぎる あの人を追い続けて 手と手を取り合って
悲劇的(Tragical)な結末に 酔った一つの人生（いのち） 愛に捧げた…
『ジョナサン』
さよなら…
『エリナ』
(邪悪の走狗どもには便利なカード)
『ジョナサン』
さよなら…
『エリナ』
(命を売れば帝王への道は買える)
『ジョナサン』
結果一つの道 譲り合えぬと解っても（しっても） 吸血鬼(お)と人(こ)は惹かれ合った
嗜虐的(Sadistic)な完全主義を 蹴って闇を抜け出す 嗚呼それは喜劇…
運命の遊戯盤(Board)の上で 信ずるもの求めて 善悪は闘い合った
徹底的(Drastic)な人間讃歌 継ぐ事こそ人生 嗚呼むしろ悲劇…
『ジョナサン』
さよなら…
『エリナ』
(力で雇った者が裏切る世の中)
『ジョナサン』
さよなら…
『エリナ』
(帝王ならば不条理と責めるは惨め)
『エリナ』
未来への旅路 幸福への船出 闘争の果てに辿りついた居場所
首だけになった男が目を光らせると 人々の悲鳴が船を包み込んだ…
『ディオ』
「久しぶりの余韻でしたらご心配なく、既に充分すぎるほど残されているからなあ、
『ジョナサン、エリナ、ディオ』
けれども彼は、ここでさよなら」
『ジョナサン』
「幸せに…エリナ…」
『ディオ』
「体さえ手に入るならばそれで良い、妻(おんな)の方など殺(ばら)しても構わんわ」
『エリナ』
一度だけ目を合わせると吸血鬼はそう言った… ガラスが砕かれ欠片が床を叩いた…
『ジョナサン、エリナ』
いつも善(ひと)は何も知らない方が幸福(しあわせ)だろうに
けれど悪(ひと)を求める限り全てを知りたがる
──何故破滅へと歩み出す？
華やかな婚礼 幸せな花嫁 運命の女神はどんな脚本(シナリオ)を好むのか…
鮮血の新婚旅行（ハネムーン） 消える命 破滅の女神はどんな綻びも見逃さない…
『ジョナサン』
嗚呼…燃えるように首筋が熱い 男が伸ばした手の甲を何かが貫いていった
『エリナ』
嗚呼…緋く染まった手を見つめながら 人間の男は緩やかに崩れ落ちてゆく…
『エリナ』
嗚呼…人（おとこ）は残された力で ガラスを掴み吸血鬼（おとこ）へ突き刺した
『ジョナサン』
嗚呼…妻（おんな）は頬を濡らしながら 赤子を抱え走り去ってゆく…
『ジョナサン』
──徐々に薄れゆく意識の水底で 奇妙な友の首を抱きしめる
轟音は響き続ける 耐えなければ もうすぐ もうすぐこの船は──
最終更新：2013年07月03日 00:09
