「……いずれこんな日が来てしまうのではないかとは、思っていましたよ」

俺の隣に腰を掛けた男が、いつもの微笑とは異なる、神妙な面をして、そう呟く。
向かいに座っているのは、長門と、これまでに幾度か目にした、年齢不詳のメイドさん(今は、いつかのようにキャリアウーマン的衣装を纏っている)……女性。

「これからあなたに、すこし長い説明をします。突拍子も無いことに聞こえるかもしれませんが、分かっていただけると嬉しいのですが」

と、古泉一樹が笑う。


キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
第2話『涼宮ハルヒを脅かす輩をスタンドで撃退する団』


「まず。涼宮さんの『能力』について、から話すのが、あなたには一番分かりやすいことと思いますので、その点から話しましょう」

手振りを交えながら、古泉が話し出す。

「彼女の能力。世界を改変する力。それを、僕らはある属性に属すものと考えています。
 僕らが閉鎖空間へ立ち入り、『神人』と戦う能力とは別のものです。それは、あなたと、そこの彼の言葉を借り、『スタンド』と呼びましょう」

スタンド。それはつい先刻、俺が古泉に話した言葉だ。
―――あいつを殴ったのは俺じゃなくて、俺の『スタンド』だ。
それは、俺が殴り倒したあのチンピラが口にしていた言葉の受け売りだ。
……そして、その『スタンド』という言葉を口にしたという、もう一人の人物。
長方形の机の短い辺の部分に腰を掛けた、仏頂面の男。
名前は、『岸辺露伴』とか言ったか。

「涼宮さんの持つ能力は、『スタンド能力』です。そして……その『スタンド能力』は、森さんや、僕。そして、あなたにも備わっています。
 それらは涼宮さんの持つ世界改変の能力とは違う、おのおのによって内容の異なる能力ではありますが……それらは、種別としては同じものです」

……『スタンド』。
まだ今ひとつ理解できん。『スタンド』というのは、俺のもとに現れた、あの『黒いの』を指す言葉ではないということか。

「違うんだ、それが。たとえば、君にはこいつが見えるだろう?」

口を開いたのは、岸辺露伴だった。岸辺は馴れ馴れしい口調で俺にそう言い、空中を指差す。
たずねられるまでも無い。さっきっから、テーブルの上を浮遊する『こいつ』には警戒していた。

「このアニメキャラみたいなのが」

「僕の『スタンド』だ。もっとも、『涼宮ハルヒ』のスタンドのような、超常的能力は持っていない。ただ、人の心を『読める』だけだ」

それだけでも、十分俺にとっては超常能力なのだが。

「つまりね。スタンドっていうのは、超能力の一種。『スタンドというくくりの中での、適応する人物全てに与えられる超常的能力』なの」

続けて口を開いたのは、森さんだ。

「露伴は『心を読み』、私は『車を動かす』。涼宮さんは『世界を変える』。そういう風に、それぞれ違う能力を持っているの。分かる?」

「大体は」

俺のしょぼくれた脳味噌でも、大まかな事象は理解できてきた。
つまり、サイコキネシスだの、テレポーテーションだのを、まとめて『超能力』だと認識していたように。
『人を本にするヘブンズ・ドアー』だの、『車を自由自在に操るヘブンズ・ドライブ』だのを、まとめて『スタンド能力』と認識すればいいわけだ。

「飲み込みが速くて助かります。そして、涼宮さんの『能力』も、そのうちの一つなのです。おそらく、『スタンド』の中でも最も強い力を持っているのでしょう」

そりゃ、この世界を好きなようにいじくれちまう。なんて能力は、トップクラスに違いないだろうな。

「そして、あなたもまた、『スタンド能力』を持つものだった。……先の一件で、いささかタイプが変化したようですが、ね」

俺が、『スタンド使い』。
その事象については、驚かないし、疑いもしない。
事実、俺はさっき、寝ぼけながらも、あの男を『スタンド』と思われるもので殴り倒したのだから。
しかし。変化したというのは一体どういうことだ。

「今まで、あなたの『スタンド』には、『像』がありませんでした。
 あなたの『能力』……それは、身近に居る人間の『スタンド』を引き出す能力だったんです」

微笑みながら、古泉が言う。

「『スタンド』は、全ての人間に適正があるわけではありません。『スタンド』を持つことに適さない人間もいます。
 あなたの『スタンド』とは、そういった適性を持つ人間と接触した際
 その人間に『スタンド』を目覚めさせるという『能力』だった、と推測されます」

……頭の処理が付いていかない。
つまり。俺は、『スタンド使い』を無駄に増やしちまう、とんでもなく厄介な『スタンド使い』だったというのか。

「はい。これは『スタンド』についての見解を得た、機関の推測に過ぎませんが、おそらく間違いないと思います。
 僕が森さんが『スタンド』に目覚めたのも、おそらく、あなたと長らく接したためでしょう。
 ほかにも数名……貴方の周囲にいた人物に、『スタンド』が発生しています。
 はじめは、涼宮さんがその原因かとも思いました。
 しかし、彼女とは接点が少なく、貴方との接点の多い人物にも、『スタンド』が発生していることから……
 機関は、あなたがその原因であると。そして、それはおそらく貴方の『スタンド』の能力なのだと考えています。
 ……おそらく、涼宮さんの『スタンド』を引き出したのも」

ちょっと待て。ハルヒのあの厄介な神様能力の現況が、俺だって言うのか。
しかし、それじゃあ計算が合わないだろう。あいつがあの能力を得た……のは、たしか三年前―――」

「あなたは、三年前に、涼宮ハルヒと接触を行っている」

……長門の言葉と同時に、俺の記憶の底から、あの七夕の日が思い出される。
そうだ。俺はあの日、朝比奈さんと共に時空を超え―――
涼宮ハルヒと、出逢ったのだ。
あの、ほんの数時間のうちに。俺の『スタンド』とやらが、ハルヒの『スタンド』を目覚めさせちまったってのか?

「はい。我々はそう考えています。
……長門さんの言う、『情報爆発』も、朝比奈さんの言う『時元のゆがみ』も、三年前のあの日に結びつきます」

……なら、つまり。
全ての元凶は、俺だと。そう言いたいのか、お前は。

「……少しばかり端的に申し上げれば、そうなりますね。
 無論、涼宮さんに眠っている『スタンド』が、『神』と呼ぶほか無い其れであったのは、涼宮さんの『素質』によるものです。
 おそらく、あなたとの接触が無くとも、彼女はその『能力』を発現していたのではないか。と、我々は考えています。
 しかし、あなたが三年前の彼女と接触した事実がある以上は……」

『神』を目覚めさせたのは、俺だった。
なるほど。つまり、俺はとっくの昔から、『一般人』等ではなかったということか。
……なんという。

「ご理解が早くて助かります」

正直、自分でも、よくこんなぶっ飛んだ話を、すいすいと理解できていると思う。
で、さっき聞いたが、俺の『スタンド』が『変化』したってのは、いったいどういう事なんだ。

「それは、僕が説明しよう」

名乗りを上げたのは、岸辺露伴だ。

「まず。『スタンド』というのは、『成長』をするものなんだ。個々のスタンドによって差はあるがね。
 たとえば、僕の『ヘブンズ・ドアー』は、元々は姿、『像』を持ったスタンドではなかった。
 僕の描いた絵を見た相手が、その絵に『同調』したとき、相手を『本』へと変える能力だった。
 しかし、それが今では、こうして『像』がある。『像』が相手に触れるだけで、相手を『本』に変えられる。
 これは僕が『スタンド使い』として成長した結果だ」

空中に浮かぶ『ヘブンズ・ドアー』とやらを指差しながら、やたらと自慢げに岸辺が話す。
じゃあ、俺のあの黒い『スタンド像』というのも、俺が成長したから発生した。というのか。

「それは少し違うようなんだ。『スタンド能力』が変化する要因として、もう一つ。
 僕もそう詳しいわけではないが……『矢』というものがあるんだ」

『矢』。
その一言が、つい数時間前。俺の身に起きた、あの出来事を思い出させる。
ハルヒを追って路地裏へと向かった俺が見たのは、床に倒れるハルヒと、それを抱き起こしている男(思えば、あいつは『岸辺露伴』だったんだ)
そして……そうだ。
もう一人の『男』。いや、女だか男だかは、見ただけではわからなかった。暗がりの所為か、衣服の関係か、そいつは俺にとって『茶色い人間』にしか見えなかった。
ハルヒと、俺を振り返った岸辺の後ろに、その男が立っていたんだ。そして、そいつは……『弓と矢』を持っていた。
そして、そいつはそれを俺に向かって『射った』んだ。

「……あの傷は、お前が治してくれたのか、長門?」

「そうではない」

まあ、そうだろうな。
俺があのチンピラを『殴った』時、俺の胸に、『矢』に貫かれた形跡など、一つも残っていなかった。
それから、呆然と路地裏に立ち尽くす俺の下に、古泉からの連絡が入り、今に至るわけなのだから。
もしあの傷を長門が治してくれたなら、その時に長門が、あのチンピラ野郎を始末しているはずだ。

「君が『矢』に『射られた』場面は、僕も見ていた。
 あの『矢』は、『射られた』人間の『スタンド能力』を引き出す力を持っている。
 いや、正確には……以前僕は、そういう『矢』の存在を知っていた。その『矢』と、とてもよく似ていたんだ」

射られた人間を『スタンド使い』へと変える『矢』。

「そいつが『スタンド使い』の素質を持たないものなら、傷はそのまま。場合によっては死ぬだろうね。
 そいつに素質があり、『スタンド能力』を得たならば、『矢』の傷は綺麗に消えてしまう」

俺がその『矢』を喰らっちまったってのか。
しかし。古泉の話なら、俺はもうとっくの昔から『スタンド使い』だったんじゃあないのか。

「ああ。それがあの『矢』のもう一つの力。
 『スタンド使い』が『矢』で『射られた』時、『スタンド能力』が『変化する』。
 君のスタンドは、『矢』によって『像』を得たということだろう。そのほかにも、能力に変化がおきている可能性はあるが」

能力に変化、か。
せっかくなら、その『スタンド使い量産能力』みたいなもんが消えちまってくれていると嬉しいんだがな。

「それは……わかりませんね、現段階では。以前の『能力』を持ったまま、『像』を得たという可能性もありますし、
 あるいは、貴方のスタンドはまるで別の、単なる『戦闘用』のスタンドに変化してしまったのかもしれません」

古泉が、難しそうに眉を顰めながら言う。

「何、そんなのは『読め』ばすぐにわかる」

と、あっけらかんと言い放ったのは岸辺だ。
『読む』。ちょ、ちょっと待て。

「俺を『本』にするってのか?」

「僕としては、それにも興味はあるんだが。読むのは『君』でなく、『スタンド』のほうだ」

岸辺の指と、『ヘブンズ・ドアー』とやらの指とが、同時に俺を指差す。
……一挙一動がいやに鼻につく男だ。古泉とはまた違ったタイプのな。

「……そうは言われてもな。『スタンドを出す』ってのがそもそもどういうもんか、俺にはいまいち理解できん」

すると、古泉が微笑み

「そうですね。言葉では説明しにくいのですが……一度つかめば、簡単なものですよ。
 あなたの『スタンド』が、貴方の隣に『立っている』。そう考えればいいのです」

『考える』ねぇ。
言われるままに、俺は記憶に残っている、漆黒の後姿を思い出す。
そして、そいつが俺の隣に『立っている』ことを『想像する』。
すると。

す。と、俺の体が、横に『ずれる』ような感覚があった。
しかし、俺の体はどこにも動いていない。
俺の体の中から、『何かが滑り出た』ような感覚だ。

「なるほど、それが君の『スタンド』か」

俺の周りの四人が、そろって俺の背後を見つめている。
その視線の集う先を振り返ると……そこに、あの『黒いの』が立っていた。
身長は、人間で考えたら異様にでかい。全長2mってところだろうか。
頭部はいやに強固そうな装甲につつまれている癖に、首から下は、体にフィットするスーツのようなものを纏っていて、どこかちぐはぐに見える。
そして、全身が見事なまでに漆黒に染められており、目に該当する部分だけが、ぼんやりとあかく光っていた。

「どれ、失礼しようか」

言うが早いか、岸辺が俺の『スタンド』を指差す。すると、スタンドの腕の一部が、『本』となりめくれあがる。
なるほど、『本』にするというのは、こういうことか。『本』にされた部分に連動して、俺の腕に妙な感覚が走る。が、痛みとは違う。

「スタンド名、『ゴッド・ロック』。……ふむ。どうやら、君たちの言っていた『スタンドを引き出す能力』は、『矢』による変化で消えてしまったようだな。
 実にもったいない。希少な能力だったろうに」

勝手なことを言ってくれるな。むしろ安心したぜ。

「ええ、僕も同感です。さすがに今後の人生、貴方の周りに『スタンド使い』が溢れ返り続けるというのは、いささか大変でしょう」

全くだ。

「ほかに能力は……相手の『スタンド』の像を無理矢理引きずり出す。一定範囲内でのスタンドの『発動』を感知する。
 ……おい、こいつは便利だぞ。キョン君、君の『スタンド』は、『スタンドの気配』を察知できるらしい」

岸辺がいやに楽しそうに、俺の『スタンド』を読み上げる。
それは珍しいことなのだろうか。俺にはいまいち理解出来ないのだが。
と、言うか、この男まで俺を『キョン』と呼ぶか。

「『敵スタンド』の接近を感知できるって事ね。確かに便利な能力だわ」

『敵』という森さんの言葉が、俺の中で引っかかる。
『敵』というのは、おそらく俺が殴り倒したあの男のことだろう。
あいつは『ハルヒを殺す』と言っていた。

「彼の身元は明らかになりました。簡単に割れましたよ、免許証を持っていたのでね。
 名前は『宮森翔』、24歳、トラックの運転手です」

「なぜ24歳のトラック運転手が、ハルヒを殺そうとするんだよ」

「それは、『矢』に『射られた』からだろうな」

古泉に投げた言葉のボールを、岸辺がキャッチする。

「あの『矢』で射られて『スタンド使い』になったものは、最低でも一度、何らかの形で『矢』を『射った』人間の『役に立つ』んだ。
 『そういう風な人間』を選んでくれるのさ。『矢』のほうが、自分からね。
 つまり。『矢』で宮森翔を『射った』やつが、『涼宮ハルヒ』を『殺そうとしている』ってわけだ」

……新勢力の登場、ってワケか。

「今回ばかりは、機関も完全にノーマーク。おそらく、敵は団体じゃない。『個人』、多くても『数人』ね」

「ただし、『弓と矢』を所持しています。兵力は計り知れません。……僕らは全力で『涼宮さんを守らなくては』いけない」

「最終的には、『涼宮ハルヒを殺そうと』しているものを『殲滅』する」

森さん、古泉、長門が、次々と言う。
ああ、そうだ。どこの馬鹿が『ハルヒを殺そうと』しているのかは知らん。そいつが何を考えているかもわからん。
しかし、『涼宮ハルヒは殺させない』。ンな事は、絶対に許せない。
『絶対に』だ。

「今回は、少しばかり荒っぽいことになりますよ。『スタンド』と戦うことができるのは『スタンド』だけ。
 機関や長門さんらの団体では、『スタンド』を攻撃することはできません。
 『本体』は別でしょうが、『スタンド使い』は『スタンド』を使い、あらゆる防御を行います。
 立ち向かえるのは、同じ『スタンド使い』だけ、と考えたほうがいいでしょう。」

何だと。さらっと言ってのけるが、そいつは大問題じゃあないか。

「ええ。我々の戦力となるのは、貴方の『スタンド』が生んだ『スタンド使い』たちです。
 しかし、涼宮さんについての事情を知らない方々に協力を仰ぐのは難しいでしょう。
 現時点で、僕と貴方と森さんの三人のほかに、もう三人。
 この場所に来るように連絡は済ませてあります。おそらく、そろそろ―――」

と、古泉のその言葉を待っていたかのように。
自動ドアが開く音がして、店内に、三人の人物がやってくる。
そのうち、二人はよく知った顔だ。そしてもう一人は、一瞬見知らぬ顔に思えたが、よく見れば、以前に見た顔だ。


「おそくなってごめんねェーッ、いっちゃん、キョン君っ!」

「こ、古泉くん……ついに、『来ちゃった』んですかぁ……?」

「ったく……おい、古泉。つくづく面倒な奴らだよな、テメーらは」


現れた三人は、俺たちの付いた席のすぐ隣に着き、三者三様の第一声を吐き出した。


――――


――――数日前、東京

「いいですかァ? 僕の言っていること、『分かります』よね? 『日本語』ですよ、これは?」

『パープル・ヘイズ』に喉をわしづかみにされた男が、斜視の入った両目で僕を見据え、うー、うーと唸りながら、涙を流している。
今、僕の目の前に居るのは、かつてパッショーネに反旗を翻し、独立したこの『事務所』の社長だ。
まったく、遠く足を運んできた割に、楽な仕事である。『大事は起すな』というジョルノの命令には、少しばかり逆らう羽目になってしまったが。
もっとも、荒事があったのはこのビルの内部でだけだ。まあ、僕とミスタの仕事にしては、事を荒立てずに済んだ方だろう。
大体の『幹部』は片付け、残ったのはこの『社長』のみ。
あとはこいつを『始末』するだけだ。しかし、その前に、いくつか聞きださなければいけないことがある。

「貴方の仲間には、『スタンド使い』が居たはずですよね? 『それは誰ですか?』」

質問と同時に、『パープル・ヘイズ』が、首を締め上げる手を僅かに緩める。

「がっ、ぐゥウっ、俺は、俺じゃ、ない、あれはァグ!?」

「ええ、分かってます。『あなたじゃあない』。僕は、『誰なのか』と聞いているんですよ。今もこの『組織』に居るんですか?」

「い゛っ、ないッッ!! ヤヅ、は、俺を脅して、姿を消しやがっ……」

「……何度も同じ事を言わせないでください。『それは誰ですか?』」

「……言えっ、ない゛……言えば、殺される゛っ……」

「死ぬのが早いか遅いか、だけの違いですよ?」

「ラチが開かねェなァーフーゴよォ。もう、イーんじゃねーか、こいつァ殺っちまってもよ」

わざと語調を荒げたイタリア語で、ミスタがそう言い、男にピストルを向ける。

「ひグぃぃっ!!!」

「ほら、僕の仲間が怒ってますよ。ピストルと、首を絞められるのと、ミートソースになるのはどれがいいです?」

「い、言う、言う゛ゥ゛――!!」

まるで発狂したかのように、男が声を上げる。

「では、これが最後のチャンスですよ。『この事務所に居たスタンド使いとは誰ですか』?」

「奴だ、奴は『オノ』――――ぶぐゥ!!?」

……一瞬、目の前で何が起きたのかが理解できなかった。
『オノ』~。男はその続きを叫ぼうとした、その瞬間。
男の『口』から、『手』が『生えてきた』のだ。

「なっ、なんだこりゃァーッ!? まさか、『スタンド』の罠かァっ!?」

『パープル・ヘイズ』が、男の首から手を離す。男の口から生えた手は、男の顔面をぐしゃぐしゃと握りつぶしてゆく。
それは正確には、『握りつぶしている』わけじゃない。その手が触れた部分の男の顔が、ぐにゃぐにゃと、粘土か何かのように変形してゆくのだ。

「あぎ! ガ!」

「ッ! オイ、フーゴぉ! 俺ァ見覚えがあるぜ! コイツぁまさか―――ッ」

ミスタが声を上げる。僕らが唖然とする間にも、男の顔は変形してゆく。変形は、やがて体にも到達した。
男の太った肉体が、まるで内側から何かにでたらめに押し広げられるかのように凹凸を着せられてゆく。
そして、ほんの少しの時間がたった後。
まるで水風船が割れるかのように、男の体が、どろどろの液体となり、床にぶちまけられた。
そして、破壊された男の体の『中』に、茶色の全身スーツを着た『何か』が居る。

「てめェはァ―――!! 『チョコラータ』の野郎と一緒に居た奴じゃァねえかァ―――!?」

ミスタが叫ぶ。『チョコラータ』と『セッコ』。その姿を僕は見ていないが、以前ジョルノとミスタから、話だけは聞いた。
目の前に突如現れた、この茶色スーツの男が、『セッコ』だというのか。

「バカな、ミスタ! 『セッコ』は『ローマ』で死んだはずだッ!」

そう言う内に、茶色の男……仮に、『オアシス』の男とする。『オアシス』とは、『セッコ』の『スタンド』だ。
『オアシス』の男は何も言わずに、まるで水に沈むかのように、じゅうたんを貫き、床へと沈んでいった。
これも聞いたとおりだ。『オアシス』というスタンドは、あらゆるものを『泥状』に変え、その中を泳ぎ進む能力だ。
沈んだ男の姿が次に現れたのは、高級そうで、悪趣味な飾り台の上だった。
その一角すぐ後ろの壁に、巨大な『油絵』が在る。
『オアシス』はその油絵に手を突っ込み、そこから『何か』を取り出した。

「てめぇ、何だそりゃァ! 『弓と矢』だとォ!?」

目を疑う。とは、こういう場合に言うのか。
『矢』。『スタンド使い』を産み出す悪魔の道具。そのうちの一本が、今、僕らの目の前にある。

「『セックス・ピストルズゥー』!!」

『オアシス』はそのまま体を地面に沈めてゆく。まずい、『弓と矢』を持っていかれるッ!
咄嗟にミスタが銃を撃つ。しかし、間に合わない!
……一瞬の出来事だった。僅か十数秒のうちに、『社長』を殺し、『弓と矢』を持って、『オアシス』の男は、この場から消え去ってしまった。
『弓と矢』。そうか。この組織が『パッショーネ』の傘下から脱出し得たのは、『弓と矢』が在ったからなのかッ!

「『オノ』……フーゴ、『オノ』って何だよォ……」

『オノ』。おそらく、その言葉はそれだけではない。『続きがあった』はずだ。しかし、今となっては其れを聞き出すことは出来ない。
『オノ』の名前を言えば、殺される。『社長』はそう言っていた。
ならば。今の『オアシス』の男が『オノ』だと言うのか?

「……『事務所』を潰す『任務』は……『完了』……しかしッ」

頭の奥がジンジンと痛むのを感じる。僕は力任せに、そこらに転がっていた観葉植物の植木鉢を蹴り飛ばした。

「ブッシャァァァー!!」

それに呼応するように、『パープル・ヘイズ』があたりを蹴り散らす。

「うおォ!? フーゴ、落ち着けってよォ! 『パープル・ヘイズ』は仕舞えっ!!」

「……『弓と矢』の発見と、紛失を、『ボス』に連絡……
 『クソ面倒なことになっちまった』ぜ、畜生がァ―――ッ!」




――――


  • SOS団 - 『スタンド能力者』集結。

  • 涼宮ハルヒ - 目が覚めたら病院に強制入院させられていた。

  • フーゴとミスタ - クソ面倒なことになっちまう。

  • 岸辺露伴 - 『涼宮ハルヒ』に興味津々。光陽院駅前ホテルに長期宿泊を決定。及び、本件を『仗助』伝てに『承太郎』に連絡。



to be contiuend↓
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スタンド名 - 「ゴッド・ロック」
本体 - キョン(16歳)
破壊力 - A スピード - B 射程距離 - D
持続力 - D 精密動作性 - D 成長性 - B

能力 - 全長2m。漆黒に染まった全身、人間型のスタンド。
       やや中性的な体つきの近距離パワー型。
       他のスタンドの『発動』を感知する能力を持つ。
       また、スタンドの手によって、スタンド使いの体に触れる事で
       本体から強制的にスタンドの『像』を引き出せる。
       像が発生する以前には、『矢』のように、かかわりを持った人間から
       スタンド能力を引き出す能力を持っていた。
       自意識があり、時折、本体とは無関係に行動したり、声を発する。


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スタンド名 - 「箱船(ヘブンズ・ドライブ)」
本体 - 森園生(?歳)
破壊力 - E スピード - A 射程距離 - E
持続力 - A 精密動作性 - A 成長性 - D

能力 - 像はなく、『乗り物』に一体化することで発動する。
       本体と接触している乗り物を自らの肉体の一部のように操る。
       能力は車そのもののメカニズムとは無関係に発動するため
       燃料切れ・車体の破損などは問わない。
       操作している乗り物へのダメージは、本体にフィードバックする。


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スタンド名 - 「パニック・ファンシー」
本体 - 宮森翔(24歳)
破壊力 - E スピード - B 射程距離 - A
持続力 - A 精密動作性 - D 成長性 - B

能力 - 羽毛のないカラスのような姿をした、遠距離操縦型五体一組のスタンド。
      一度、ターゲットとして認識した対象を、どこまでも追跡する。
      また、五体ある像のうちの一体が倒された場合
      残りの像が、倒された像を喰らい、パワー・スピード共に成長する。
      最終的には翼竜の如き姿となり、スピード・破壊力ともにAレベルまで成長する。


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最終更新:2014年06月05日 01:04