「『協力者』?」

「はい。昨日の夜、露伴先生が『SPW財団』に連絡を取ったところ
 その繋がりで、ちょうどこの日本を訪れている『スタンド使い』の方がいらっしゃるそうです」

『SPW財団』。昨日、喫茶店で露伴が言っていた言葉を思い出す。

結局のところ何なのかはよくわからなかったが、要するに、『スタンド使い』のオフィシャルスポンサーのようなものらしい。
四年前に『杜王町』とやらで発生したという『事件』の解決に助力したことで、岸辺はそいつらとつながりがあるのだという。

「詳しい話は本人たちに訊かなければわかりませんが、どうやら今、この町にある『矢』について、情報を持っているようです。
 その『矢』の持ち主である『茶色い男』についてもです。彼らと僕らが接触することは、問題の解決に大きく近づくことになると思いますよ」

なるほど。其れは確かに、会っておいたほうが良さそうだ。
それに、単純に戦力として考えてもありがたい。
何しろ、今日から俺たち『涼宮ハルヒを脅かす輩をスタンドで撃退する団』は、いつどこから遣って来るかもわからない
ハルヒの命を狙う『スタンド使い』たちから、ハルヒを守らなければ為らないのだから。
しかも、そのことをハルヒに一切知られないように。……『きつい』だろ。俺もそう思う。

「基本的に、涼宮さんには常に『機関』の監視をつけます。彼女に近づく不審者がいないか、徹底的にチェックします。
 問題は……『スタンド』が単体で『襲ってくる』パターンと、『彼女に接近しても不審ではないスタンド使い』が『襲ってくる』パターンです」

なるほど。つまり、『俺たちの知る人物』が『矢』によって『スタンド使い』にされた場合。
そいつが『ハルヒを殺しに来る』。

「ですから、カギは貴方なんですよ。『スタンド』の発動を『感じ取れる』貴方には、できるだけ涼宮さんの近くに居てもらいます。
 団活中はもちろん、それ以外の時も、それとなく彼女の傍に居て貰いたいんです。
 そして、周囲にスタンドの反応を見つけた場合、僕の携帯に連絡するか、無理そうなら、この『ボタン』で連絡してください。」

そう言いながら、小泉が俺に、携帯電話ほどの薄さに、一つだけ赤い『ボタン』のついた装置を渡してくる。
俺に『ストーカー』になれってのか。
やれやれ。



キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
第3話『ファンク・ザ・ピーナッツ vs ザ・ブルーハーツ』



――――

……古泉の言うとおり。それからというもの、俺は授業をろくに訊かず、一日中『スタンド』の気配に気を巡らせていた。
当然のごとく、次回のテストの点数はやばいことになっちまうだろうんだろうな。と、なかば諦め、なかば開き直ってみる。
『岸辺露伴』がハルヒと会った日曜日から、三日が経った日の、四時限目の途中。
妙に体がだるい。頭が痛い。風邪でも引いたんだろうか。

「~~~えー~~~でー~~ンー~~」

黒板の前で、定年直前の教師が何やらを喋っているが、その口調が妙に間延びをしていて、何がなにやらわからない。
というか、聴いた事を理解するだけのエナジーがない。
……妙だ、と、思い出した頃には、もう手遅れだった。

「なん……だ、こりゃァ……?」

……教室を見回して、はじめてその事実に気づく。
誰もが『机に伏して』いる……『ハルヒ』もだ。黒板の前に立っていたはずの教師は、地面に倒れている。
しまった。『何かされている』ッ!!
おいおい、話が違うぞ、『岸辺露伴』、『古泉一樹』。『スタンドの気配』なんてもんには、ちっとも感づけなかったぞ。

「ハル、ヒ……」

くらくらする頭を無理やり動かし、背後を見る。
ハルヒはほかの生徒と同様に、机に顔を突っ伏し、苦しそうに全身で呼吸をしている。
意識はないようだが、今のところ命に別状はないようだ。
これは『無差別攻撃』ってやつか?

「……古泉……」

立ち上がろうとするが、両足が震えて言うことを訊かない。椅子から体を離したところで、地面に倒れこんでしまった。
意識が消える一瞬前。俺はポケットに手を突っ込み、『ボタン』を押した―――

「授業中の2年生のクラスに、『何の用』だいっ?」

教室のドアに手をかけようとした瞬間。廊下の端から響き渡ったその声を聞き、『藤田昌利』はその手を止めた。
聞き覚えのある、空を飛ぶかのような快活な『声』。
全身を硬直させたまま、ゆっくりと『声』のした方を振り返る。
そこには、藤田と二つ隣のクラスに在籍する、校内でも有名な『お嬢様』の姿があった。

「何でだ? って顔してるね、藤田くん?」

上靴でリノリウムの床を歩き、大股でこちらに近寄ってくる。
おかしい。この学校中の人間は、藤田の『スタンド能力』で、動ける状態にはないはずだ。

「藤田くんさあ。どうせやるなら、『音楽の授業』が無い時を狙えばよかったねっ」

『音楽の授業』。
しまった。

「……『音楽室』の壁はさァ……『防音』だったっけね……忘れてたよ、僕」

「『音楽室』から出て、一発でわかったよ。ああ、この『音』だなって。それで見てみたら、みんながバテちゃってると来たもんだ。
 ありゃ、『低血圧』だね。藤田くん、君の『スタンド』、この『鶴屋さん』には、もう大体わかっちゃってるんだなぁ」

鶴屋はそう言って、この場に似合わぬ微笑みを浮かべながら、指をパチリと弾いた。
『スタンドが』放つ『音波』を聴いたものの『血圧を下げる』。藤田のスタンド能力は、既に鶴屋に見抜かれている。
しかし。と、藤田は笑った。

「僕の『能力』をわかっていながら、ノコノコ出てきたって事だよなァ、アンタ。もうすぐアンタも『フラついてくる』んだぜ……!?」

「おおっと、そうだったそうだった。忘れてたよ」

そう言うと、鶴屋はポケットに手を突っ込み……『音楽プレーヤー』を取り出した。そして、『イヤホン』を両耳に掛ける。

シャカシャカシャカシャカ……

「ん~っ、あっあ~~♪ 聴こえないなァーッ。さて、藤田くん? そのドアを開けたければ、『この鶴屋さんをやっつけてから』だねェ―!」

「……ふざけやがって、この『脳足りん女』がァー!!」

藤田の目当てである『涼宮ハルヒ』は、もう目の前に居る。
此処までやってきて、退いてたまるか。『女一人』を黙らせるぐらい、容易いことだ。
『スタンド使い』である藤田にとっては、特に。
そもそも、あんな『音楽』では、藤田の『スタンド』の音波を防ぐことは出来ない。鶴屋が立っていられるのは、せいぜい五分だ。

「『ザ・ブルーハーツ』!!」

叫ぶと同時に。藤田の背後に、全身に小さな穴の開いた―――そう。『音楽室の壁』のような模様を全身に持った、人型のスタンドが出現する。

「そいつを『ぶっ殺せ』ェーッ!!」

藤田が叫ぶと同時に、『ザ・ブルーハーツ』が、鶴屋に向かって、両手を突き出しながら突進してくる。
にもかかわらず、鶴屋は暢気に、両耳をふさぐイヤホンから流れる音楽に任せて、体を左右に揺らしていた。

「あー、この曲、たしか4分43秒なんだよねーっ。それじゃ、丁度其れぐらいに『終わらせて』あげるさっ」

『スタンド』の拳が、鶴屋の体にたどり着こうとした、瞬間。

「出ておいでっ、『ファンク・ザ・ピ―――ナッツ』!!

鶴屋が叫び、その眼前に現れた、丁度鶴屋と同じほどの背丈の、赤いドレスのような物を着た『スタンド』が現れ、『ザ・ブルーハーツ』の拳を受け止めた。

「O・K、『オジョウサマ』。ワタシニ『メイレイヲシナサイ』」

「そうだね、『ファン・ピーちゃん』っ! じゃあ、目の前のこの『悪い子』たちを、『オシオキ』してくれるかなッ!?」

鶴屋の言葉に、『ファンク・ザ・ピーナッツ』は無言で答え、『ザ・ブルーハーツ』の拳を弾き返した。
『ファンク・ザ・ピーナッツ』は、スタンドとしてはかなり小柄であるが、『力』は『ザ・ブルーハーツ』には劣らないようだ。

「『ブルーハーツ』、叩きのめせェー!!」

「Yeaaaaaaaaaaaaaah!!」

藤田の叫び声と共に、『ザ・ブルーハーツ』が、『ファンク・ザ・ピーナッツ』に向けて、拳の雨を降らせる。
『ファンク・ザ・ピーナッツ』は、腹の底から響き渡るような叫び声と共に、その無数のラッシュをすべて受け止める。

「『パワー』も『スピード』も互角かッ! だがしかし、『それでいい』ッ!
 鶴屋はもうすぐ『フラつきはじめる』! その時こそが、『僕の勝利の時』だッ!!」

『ザ・ブルーハーツ』の全身の穴からは、今も『音波』が発せられ続けている。
音波は確実に、鶴屋の『イヤホン』を潜り抜け、『音楽』と共に鶴屋の神経に作用している。
あと少し時間を引き延ばせば、鶴屋は『負ける』。藤田には『勝つ自信』があった。

「フラつくねぇー。うーん、そういえばちょっと『肩がこって』来たかなぁ? あと、『体がだるい』気もするねっ」

二体の『スタンド』が戦う向こうで、鶴屋が相変わらずリズムを取りながら、パキパキと肩を鳴らしてみせる。

「! そうだ、『其れ』だッ! 既にお前は『低血圧』になってきているんだッ! 意識を失うのももうすぐだ!」

「そうみたいだね。だからさ、藤田くん。鶴屋さんは最初から、『さっさと終わらせる』って言ってるんだよ?」

鶴屋が笑う。

「馬鹿が、もう戦い始めて4分にもなる! 僕の『スタンド』とお前の『スタンド』は互角!
 どうやってお前が『ザ・ブルーハーツ』を、あと一分足らずで『終わらせる』ってんだァ!?」

「もう『4分』にもなったっけ? 思いのほか早いね。でもね、藤田くん。
 その4分は―――君の『スタンドと戦うための4分』じゃないんだなっ」

「何だ? 何を言って……」

「『早く終わらせたい』私が、いちいち『スタンド』と真っ向から戦うと思うかなっ?
 この『4分』はね……『私のスタンドが、本体である君の後ろまでたどり着く為の4分』さっ」

「な……なんだってェ――ッ!?」

藤田がその言葉を聴き、背後を振り向く。
そこに浮かんでいるのは……全長50cmほどの、『ファンク・ザ・ピーナッツ』と同じ色の布切れを纏った、子兎のような生き物。

「『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』は、既に、君の後ろに『たどり着いている』!」

鶴屋が叫ぶと同時に。『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』が、体を回転させて、藤田の顔面を『蹴った』。

「『ハイッ!』」

「ぐゥッ!?」

額に一撃、衝撃が走る。しかし、それはたいしたダメージではない。所詮、見た目程度の威力しかない。……にも、かかわらず。
藤田の体は、まるで猛獣の突進を受けたかのように、真後ろに『吹っ飛び』出したのだ。

「なっ、何だ、これはァー!? 『体が鶴屋のほうへ吸い寄せられてゆくッ』!!?」

「『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』が攻撃した『もの』は、『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』の元へと『引き寄せられる』!」

「うぐゥゥゥ!?」

「『ハイッ!』」

鶴屋の目の前、あの鶴屋と同じほどの背丈の『スタンド』『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』が、手元に飛ばされてきた藤田を『殴る』。
こちらは『1号』の痛みの非ではない。今度は本当に、衝撃に任せて体が『吹っ飛ぶ』。先ほどとは逆方向へ。

「うっ、うわぁぁぁ! 『駄目』だ! 『この方向』はァ―――ッ!!?」

藤田が気づいたときには、もう遅い。
藤田は再び、『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』の元へと吹き飛ばされている。

「『ハイッ!』」

1号の矮小な蹴りが、藤田の体を軽く叩く。それだけで、再び藤田は『2号』のもとへと吹き飛ばされる……

「うわあぁぁぁぁ!!」

「『ファン・ピーちゃん』、トドメだよ!」

「Yeaaaaaaaaah!!」

叫び声と共に、両拳を頭上に振り上げた『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』が、こちらへ無防備に飛んでくる藤田の後頭部に、両拳を『叩き落した』ッ!!
顔面から、藤田の体が床に叩きつけられる。ごつり。と、鈍い音が、イヤホンから流れる音楽をはさんだ向こうから、鶴屋の耳に届いた。
同時に、耳に聞こえ続けていた『音波』が途切れたのがわかる。
そして、丁度その瞬間。4分43秒の曲が終わった。


――――

……『猛暑による集団貧血』だかという名目で、その日の午後の授業は中止となり、強制帰宅命令が出た。

「やはり、『校内』から攻めてきましたか……」

「うん、あたしのよく知ってるやつだったよっ。一年のときから同じ学年に居たしねっ! って、そりゃ当たり前だったねっ」

現れた『スタンド使い』を片付けてくれた功労者である鶴屋さんが、昨日に引き続き、アイスカフェオレを啜りながら、笑顔で話す。
現在、俺たちが屯しているのは、昨日と同じ、駅前のいつもの喫茶店。

「ところで、ハルヒのやつは大丈夫なのか。俺たちがこんなしてて」

「涼宮さんには、長門さんが付き添っていらっしゃいますし、『機関』の護衛もついています。まず問題ないでしょう」

長門か。確かにあいつなら、いざとなれば、俺たちをまとめてハルヒの元にワープさせるぐらいのことはやりそうだ。
基本的にどんな『スタンド使い』より、あいつが最強なんじゃないだろうか。
に、しても、『無差別攻撃』を仕掛けてくるとは。こりゃ、初っ端から幸先が不安になってきたな。
今回も、たまたま鶴屋さんと朝比奈さんが、『音楽室』に居てくれたおかげで、俺たち全滅。とは為らなかったが……
つか、それより。

「俺の『スタンド探知機能』とやらは、どーなったんだ。何も感じられなかったぞ」

「それはおそらくだが、まだ『スタンド能力』の発動に慣れていないからだろうね。
 『像』を出さずに『能力』を発動する。慣れれば自然とできるようになることだよ。こんな風にね」

と、話を聴いて駆けつけてきた岸辺が、モカを片手に俺を指差す。すると、突然俺の右手の甲が、べろりとめくれ上がった。
……やめてくれないか。あんまり気分がいい物じゃないんだ。

「おそらく、『像』を出していればスタンドを感知することはできるのでしょうが……

真後ろにハルヒが居るんだぞ。ハルヒの前で、あんなけったいな物を『出せる』か。

「まあ、難しいですね。とりあえず、しばらくは、一人の時などに『像』を出して、その感覚に慣れるよう、練習してみてください」

『スタンドの練習』か。
早速、経験不足で役に立てなかったことに、自己嫌悪のため息が出てくる。

「ああ、そうだ。今朝話した『協力者』の二人ですが、週明けには学校に来てもらえそうですよ」

「何? 学校って、まさか転入させるつもりかよ?」

「一人はそうしていただくつもりです。と言っても、生徒でなく、養護教諭としてですが。
 もう一方の方は、校外専門で、主に機関と共に、涼宮さんの護衛をしてもらいます」

教師か。なるほど、それならハルヒの興味も引かんだろうし、時間に関係なく動けて、融通が利きそうだな。

「で、そいつらはいつ来るんだ?」

「予定では、今日の午後には到着する手はずです。近々、顔をあわせてもらう事になると思いますよ」

今日の午後、か。
どんなヤツらが来るかは知らんが。なんとなく、『普通』じゃねーのが来るような気がする。
なんとなく。



――――

「……あー、チョット?」

「……あ?」

午後の授業が取り消しとなり、俺は『ミーティング』とやらをするという古泉たちを無視し、さっさと家に帰り、町へ出た。
こんな真昼間から、コンビニの前でタバコを吸っている姿を、知り合いにでも見られたら、それは大変なことになるだろうが……
髪を下ろし、眼鏡を外せば、俺を『北高の生徒会長』だとわかる人間は居ない。
便利な地味顔に生まれてきたもんだと、こういう時ばかりは思う。
そんな俺に話しかけてくるやつなど、一体何者か。

見上げると、そこには……おそらく『日本人』ではない、ラテン系らしき顔つきの男が立っていた。
真夏だというのに、メッシュのニット帽を被り、青に、一面の白い網目模様が描かれた、半そでのパーカーを着ている。
それに、黒のローライズのパンツ。なんというか、あらゆる意味で『目立つ』男だ。
日本語通じるんだろうか。

「何か?」

「アー、ソレ」

大して日本語が分かる訳ではないらしい。そいつは、俺の口元を指差しながら、言った。

「ダメ、ソレ。ワタシ」

……タバコのことを言ってんのか。
知るか。だったらお前が、どっか離れりゃいいだろ。

「アー、ダメ、ミセ、ココ、ハイレナイ」

男は『4・11』と書かれたコンビニの看板を指差し、首を横に振る。訳のわからん外人だ。

「ダメ、ソレ。ワタシ、チガウ、アー、ワタシノトモダチ」

……やっぱ、よくわかんねえ。
もう、無視だ無視。
と、俺が咥えたタバコに手を伸ばしたとき。

『ーー! -!』

『@-!! #$@-!!』

……何か、小さな声が聞こえた。
日本語じゃない、イタリア語かスペイン語か、そのへんの何かだ。甲高く、どこか人間と違ったような響きの声。
どこから聞こえてくるのか。と、指に違和感を感じ、見る。
……そこに、何か『白い小さな生き物』が居た。

「うおっ!?」

思わず叫ぶと、俺の口から煙草が落ちる。
すると、その煙草にも『白い生き物』が群がっているではないか。
何だ、こいつら。

「~~!! ~~~!!」

と、なにやら先ほどの外国人が、日本語ではない言葉で、俺に向かってなにやら騒いでいる。
一本指を刺し、えらくご立腹のご様子だ。何だ、俺に『文句』を言っているのか?

「何だ、てめぇ―――」

立ち上がろうとしたとき。俺の手の中に居た『白い小さな生き物』と、煙草に群がっていたそいつらが、ふわふわと浮き上がり、男の手元に飛んでいった。
……そうか。

「テメェー、『スタンド使い』かッ!?」

そう言いながら。俺は立ち上がり、『スタンド』を出す。こいつが『スタンド使い』なら、これが『見える』はずだ。

現れた、全身をレールでコーディネイトした白い巨人のような俺の『スタンド』を見て、目の前の男の表情が変わる。
やはり、そうだ。こいつが古泉の言っていた、『矢で射られたスタンド使い』か。
とすると、こいつは要するに、『俺の敵』って訳だ。

「! ~~~!?」

俺が、どうしてやろうかと考えていると、コンビニから出てきた男が、俺と男のにらみ合いを見て、なにやら声を上げた。
これもまた、外国語だ。どうやら、二人の男は知り合いらしい。
こっちもまた、くそ熱いってのに紫と黒のストライプのスーツを着込んだ、けったいな服装をしている。
すると、ニット帽の男が、スーツの男を振り返り、なにやら外国語で会話をしている。
スーツの男が俺を見て―――

「待ってください! 貴方は、もしかして『北高』、いや、『機関』の人ではないでしょうかッ!?」

と、叫んだ。



――――



僕が『コンビニ』から出ると、『この店にゃ入れない』と駄々をこねて、外で待っていた『ミスタ』と、見知らぬ青年が睨み合っていた。
おまけに、その青年の背後には『スタンド』が居ると来た物だ。

「何やってんですか、ミスタ!?」

僕が叫ぶと、ミスタは僕を振り返り

「あっ、フーゴ! コイツがよォー! 『セックス・ピストルズ』が嫌がるから、煙草を消してくれっつったらよォー!
 『ピストルズ』を見て、『スタンド』を出しやがったんだ! こいつが例の『矢』に刺された『スタンド使い』なんじゃねぇのかァ!?」

『スタンド使い』。確かに、僕らがこれから向かう町では
なんだかという少女を『殺そうと』する『スタンド使い』が、僕らの目の前で消えたあの『矢』によって『増やされている』という。
その『矢』の持ち主を見つけ出すために、『機関』だかという組織に所属するスタンド使いと合流するのだが―――

「待ってください! 貴方は、もしかして『北高』、いや、『機関』の人ではないでしょうかッ!?」

僕はミスタと青年が事を起すより早く、その言葉を、『日本語』で叫んだ。
すると。青年が、ふと表情を変える。

「あんたら……そうか、古泉が言ってたな。『協力者』だかが来るとかって」

やはりそうだ。

「ミスタ、彼は違います。彼は、これから僕らが合流する『仲間』ですよ」

「『仲間』ァー!? そりゃァちょっと困るぜ! 『No.3』はどうしても日本の『煙草』の匂いが『ダメ』だっつーんだよォー!
 こいつと『仲間』になったら、『No.3』はどーすりゃイイんだよォー!」

……
……へぇ、『煙草』。

「……うるせぇんだよ、『煙草』がダメだから『仲間』になれねェーとか、くだらねェこと言ってんじゃねぇよこのダボがァー!!
 大体今だって、テメェの『ピストルズ』のために『昼メシ』なんか買う手間掛けさせやがってェー!!
 いっぺんその帽子でムレたクセぇ脳ミソ『グチャグチャ』にして、取り替えてやろうかァー!!?」




本体名 - 藤田昌利
スタンド名 - ザ・ブルーハーツ 再起可能?



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スタンド名 - 「ファンク・ザ・ピーナッツ」
本体 - 鶴屋(17歳)
破壊力 - B スピード - B 射程距離 - A
持続力 - E 精密動作性 - D 成長性 - B

能力 - 全長50cmの自動操縦方スタンド、FUN・P1号と
       全長1.7mの人型、近距離パワー型のFUN・P2号から成るスタンド。
       それぞれが自意識を持つ。通称『ファン・ピーちゃん』
       FUN・P1号が殴った人や物は、障害物などは回避しながら
       FUN・P2号の元へと引き寄せられる。
       直線的な起動でなく、曲がり角などはしっかり曲がる。
       引き寄せられる力は、FUN・P2号の像に触れた時点で消滅する。
       また、FUN・P1号は非常に優れた聴覚を持つ。
       1号のダメージは本体の背中へ、2号のダメージは部位相応にフィードバックする。


―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 - 「ザ・ブルーハーツ」
本体 - 藤田昌利(17歳)
破壊力 - B スピード - B 射程距離 - A
持続力 - A 精密動作性 - C 成長性 - D

能力 - 人型、全長1.7mの近距離パワー型。
       全身に小さな穴があり、そこから、聴いた人間の血圧を下げる音波を放つ。
       血圧低下の速度は、血行、聴力や、スタンドとの距離で差異はあるが
       本体・スタンドから数メートルの距離で、平均して五分ほどで効き始める。
       音波は、通常なら人に聴こえない音域の音波だが、鶴屋さんは聴こえた。
       パワー・スピードもそれなりにある。

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最終更新:2014年06月05日 00:57