血なまぐさいサバイバルゲーム大会へと変貌したという、土曜の不思議探索。
その翌日、ハルヒが『振り替え不思議探索』と銘打って街に出た時は、また『スタンド使い』に襲われやしないかと冷や汗ものだったが。
どうやらさすがに連日、という事態には陥らずにすみ、俺としては一安心。だが、まだ油断は出来ない。
何はともあれ。週が明けた月曜日、『フーゴ』が、養護教諭として北高にやってきた。
ハルヒは、『イタリア人』という肩書きに、少し興味を示していた。が、さすがに相手が教師とあって、何か行動を起そうとはしなかった。
ちなみに、この学校には既に一人、養護教諭が居たと思うのだが、彼がどうなったのかは誰にも分からない。
時は六月中旬。『動き』があったのは、『フーゴ』が学校にやってきた翌日。火曜日のことだった。
「おい、お前」
火曜日の放課後。こまごまとした日直の業務を片付けた俺が、部室棟を目指していると。
突如、背後から、威圧感たっぷりな声を掛けられる。
振り返ると、そこには『会長』が立っていた。
ああ、言わずもがな、『涼宮ハルヒを脅かす輩をスタンドで撃退する団』のメンバーでありながら
一向にそれに協力的な言動が見受けられない『北高生徒会長』のことである。
「ほざいてろ。大体、お前の面倒な『スタンド』に『スタンド能力』なんざを引き出されなきゃ、こんな面倒ごとにゃ巻き込まれてなかったんだよ。
大体ろくに面を会わせたことも無いってのに、なんでったってお前は俺を『スタンド使い』なんかにしてくれたってんだ」
そんな事はわからん。大方、岸辺が言っていた『波長』とやらが合ったんじゃないか?
あんまり俺と共通するところが、この男にあるとも思えないが。
で、何の用だよ。
「今日、もしも『スタンド使い』が現れても、俺には声掛けるんじゃねえぞ。『やること』があるんでな」
「やること?」
『スタンド使い』の撃退以上に優先するべきことがあるってのか。そりゃ、察するに『機関』がらみの別件か何かか。
わざわざそれを俺に伝えるとは、意外と真面目なところがあるんだな。
「喜緑とちょっとな。分かるだろ、大体」
前言撤回。
「俺はな、家でだらけている時に『森』に呼び出されても、怒りはしない。言われたとおりにはしないだけだ。
だが、『やることをやっている時』に『ソレを邪魔される』のだけは『大嫌い』なんだ。
だから念のためお前に注意しにきた。いいか、これは『会長命令』だ。『今日は俺に声を掛けるな、生徒会室に入ってくるな』」
そう言って立ち去ろうとしたそいつの頭を、『ゴッド・ロック』の右手でつかむ。
「おいテメェ、こんなところで『スタンド』なんか使ってんじゃねえぞ、面白い遊びを覚えたガキじゃあるまいし!」
面白い遊びを覚えたガキはどっちだ。物事の優先順位ってモンが分からんのか、この男は。
「構いやしねえだろ。あの文芸部室には『古泉』も『朝比奈』も居る、ついでに保健室にはあのイタリア人も居るんだろ?」
ああ、確かに、そいつらで束になったら、どんな『スタンド使い』も楽勝かもな。
でもな、動ける人数ってのは限られているんだよ。特に団活中は、ハルヒと長門だけを残して三人が出払うってのも不自然だろうが。
「俺はな。俺の『行動』や『機転』を他人に『期待』されるのも嫌いなんだよ」
ああ、ぶん殴りてェー。
本気で一発、『スタンド』で制裁をくれてやろうか。『スタンド使い』であるこいつなら死にはしないだろ。
などと、考えていた、その時だった。
……背筋に走る、『感覚』。
「……どうした、クソでも漏れたか」
「なあ、お前は、『やってる途中に邪魔される』のが『嫌い』なんだよな?」
「ああ、そうだ。物覚えがいいじゃないか」
「なら、『やる予定をキャンセルさせられる』のは『オーケー』だな?」
「……あ?」
……いきなり真後ろで『発動』されると、なかなか迫力があるな。
俺の頬を、冷や汗が伝っていく。
「『今、俺の後ろに、誰がいる』?」
そいつが―――『スタンド使い』だ。
「……ちょっと、そこ『どいて』欲しいなァー」
「……3年A組、『榎本美夕紀』君。どこへ行くつもりかね?」
「えー、『部室棟』ですよぉ。私、『軽音楽部』ですよ? 当たり前じゃないですか、変な会長」
振り返ると。そこには、軽音楽部の『榎本先輩』が立っていた。
あの文化祭での一件以来、ハルヒと親しくなった、『ENOZ』のボーカリスト。
その、榎本先輩が。ショッキングピンクの『エレキギター』を抱えて、俺達の前に立っていた。
「そうか、これから部活動だったかね。ならば早く行くといい。君たちの活動場所は『第二音楽室』だったろう?」
「……ちょっと、練習に参加してもらいたい『人』がいるんですよぉ。その『娘』を連れに行くんです」
……どうやら、決まりだ。
『この人は、ハルヒを狙っている』ッ!!
「それは認められないな。部活動は、部員だけで行いたまえ。『新人勧誘』なら、今は時期が違う。勝手な行動は許されん」
「ちょっと、ぐだぐだ言わないでくれません? 私、今すごくテンション高いんで、『邪魔』されたくないんですよ」
「……『会長』の言うことは聞いといた方がイイですよ、『先輩』」
そう言った『俺』を見て、露骨に顔を歪める『榎本先輩』。
「……何、君と会長って『友達』だったんだぁ? ……男友達同士って、見てて気持ち悪いんだよね……なんか『下劣』でさァ……
どうせ話すこととかだって、『女の子』と『やること』の話とかばっかしてんでしょ?」
そもそも俺とこいつは『友達』じゃあ無いが、こいつに関して言うなら先輩の見解で大体合ってます。
「下らん私情を持ち出すな。話を逸らそうとするのもやめろ。……言うことを聴かないと言うなら、『力づく』しかないな」
「うわ、そういうのも野蛮。やっぱマジ男って『最悪』ッ、―――見るのもイヤだなァ―――」
そういうと、先輩は、両手に持った『ギター』……おそらく、それが『スタンド』だ。それを『爪弾いた』。
「デカイ男が二人がかりで女の子をどうこうしようとか……あたしと『涼宮さん』が逢うのを邪魔しようとか……
『ムカツク』んだよォ―――、そういうのォ―――!!」
最初は、静かにギターを奏でていた。しかし、彼女の『言葉』がヒートアップするにつれて、それは強烈な『音の波』へと変わった。
『アンプ』も無いのに、ギターの音色は歪み、熾烈なメロディを『かき鳴らされる』。
まずい、『スタンド攻撃』が始まっている!
「『ネオ・メロ・ドラマティッ―――ク』!!」
「うおォォ!! お、音がっ……『身体の中に入ってくる』ッ!!?」
何だこりゃぁ。『痛み』じゃない。しかし、『ザ・ブルーハーツ』のような『低血圧』だのとも違う。
しかし、『俺の身体に何かが起きている』ことだけは確かだ!
『ギター』の奏でる『メロディ』が、巨大な坂道を駆け上るように、『高揚』していくッ!!
「うおおおおぉぉぉ!!?」
俺の隣で、『会長』が叫ぶ。その叫び声に……何か、違和感を感じる。
なんだ、これは? 本当に『会長』の声か?
その瞬間。『メロディ』が終わり、あたりを埋め尽くしていた『異様な空気』も収まった。
俺達の目の前では、たった今演奏を終えたばかりの榎本先輩が、なにかをやり遂げたような顔で、一筋の汗を流している。
それはもう、こんな場面で言うのもなんだが、すばらしい『演奏』だった。『心を塗り替える』かのような、『スゴ味』があった。
「……はぁ、これでよし。あたしの嫌いな『男』は『いなくなった』ぁ……」
満足げに閉じられていた目を開き、俺達を見た榎本先輩が、一言。そう呟く。
「何だ、何言って……」
……俺の隣で、聞き覚えの無い声がする。
……見ると。そこに、黒髪のロングヘアーに、かわいらしい楕円の眼鏡を装備した、えらい美人が立っている。
俺の隣。そこには、先ほどまであの不良生徒会長が居たはずなんだが。
どうなってんだ。これ。
「……うわっ!? テメ……なんて格好して……いや、つーか」
その少女がこちらを向き、俺の全身を見て、なにやら驚いている。
この汚らしい口調。うん、覚えがあるぞ。
「もしかしてお前、あの『バ会長』かッ!?」
「そういうテメェは、あの『涼宮の犬』なのかよッ!?」
「あーん、やっぱり『可愛い』ィ~~~ッ!! 男が使ったら『ムカツク』言葉づかいでも、『女の子』ならこんなに『可愛い』ッ!」
俺達のやり取りを見て、榎本先輩は身体を震わせ、なにやら『感銘』している様子。つーか誰がハルヒの犬だ。
「それにやっぱり『制服』ッ! あんなダサイ『ブレザー』なんて、この世にいらないでしょ!?」
そう申されましても。アレが無かったら、何着て学校来いってんですか。
「その『セーラー服』に決まってるでしょ!」
先輩の指差す先。俺の身体。
……見下ろすと、なにやら見慣れたセーラー服を着ている、華奢な女子の肉体のようなものが、そこにあった。
「じゃ、そういうわけで、あたしは涼宮さんに逢いに行くから、君たち、新しい『生活』を楽しんでね~♪」
そう言って、スキップ混じりに俺達の間を通り抜けようとする『榎本先輩』。
……とりあえず、言いたいことは一つ。
「「……何と言う―――『下らねェ―――能力ッ』!!」」
初めてバ会長と意見が合致したところで。
「『ゴッド・ロック』ッ!!」
悠々と立ち去ろうとする榎本先輩の頭を、『スタンド』でつかむ。あ、デジャヴュ。
そして、そのまま俺達の前に放り出す。
「きゃあッ!?」
「『くだらねー能力』の解除は後でやってもらうとして……先輩、すいませんが、あなたを『ハルヒ』のとこには『絶対行かせね―』んですッ!」
擬音を付けるなら、ドドドドドドドド。ってトコだな。
俺の隣で、眼鏡美少女と化した会長も偉くご立腹の様子で。
「榎本……テメーよくも俺の『命令』を『無視しようと』してくれたなッ! 『会長命令』を『無視』した奴がど――なるか教えてやろうかァ?
……『ブッ飛ばされる』んだよォ―――!!」
甲高い啖呵と共に。会長の身体(なのか? これ)から、白い人間型の『スタンド』が現れた。
「『ジェットコースタ――・ロマンスッ』!!」
現れた『スタンド』が、目の前に尻餅をついた榎本先輩に、拳を振り下ろす――ッ!!
しかし、それを先輩は『受け止めた』。
「……心まで『女の子』になるには、も――ちょっと時間が掛かるからなぁ……しょーがない」
先輩が、『ジェットコースター・ロマンス』の拳を受け止めた『何か』を振り切り、立ち上がる!
……さっきの『ギター』じゃねえか!
「『ネオ・メロ・ドラマティック』! あたしが君たちを、『調教』してやるッ!」
こいつ、Sだ……ッ!
「ほざいてろ、この低脳女がッ! 『ジェットコースター・ロマンス』!」
もはや完全にチンピラと化した口調で、会長の『スタンド』が『榎本先輩』に襲い掛かる。
榎本先輩は、ギターの『ネック』の端から何かを取り出すと、それを『ジェットコースター・ロマンス』に向かって投げつけた。
咄嗟に回避しようと身をよじらせる『ジェットコースター・ロマンス』。しかし、僅かに遅い。
『ジェットコースター・ロマンス』の右腕が裂け、同時に、会長の右腕にも『傷』ができる。
「クソ、何だっ!?」
会長が、一度『スタンド』を引っ込めながら、白い腕に刻まれた切り傷を抑え、呻く。
軽音楽経験が少しだけある俺には分かる。あれは、『ピック』だ。
「『ピック』と『キッス』はね。投げるために有るんだよッ!」
そりゃ、初耳です!
「そらそらそらァ――ッ!」
すばやい動きで、先輩は次々を『ピック』を投げつけてくる。回避しきれる量じゃない。
「『ゴッド・ロック』! 『やれ』、受け止めろ!」
現れた俺のスタンドが、廊下の中心に仁王立ちとなり、俺と会長はできるだけ身を寄せ合って、その背後に身を隠した。
迫り来る『ピック』の山を、『ゴッド・ロック』が『受け止める』。
「『ヤレヤレヤレヤレヤレヤレ』ぇ!!」
百発百中。俺達の身体に届きそうなピックは、あらかた『ゴッド・ロック』によって弾き飛ばされ、霧散する。
……そこで、気づく。
妙だ。『ゴッド・ロック』が、いつもより『すばやい』ような気がする。
「! 『ゴッド・ロック』が―――縮んでるッ!?」
その後姿を目にして、ようやく気づいた。
俺の知る『ゴッド・ロック』は、身長にすれば2mちかくはある、巨人のような体躯をしていたはずだ。
しかし。今俺の前に居る『スタンド』は、身長はせいぜい俺よりも頭一つ分大きい程度。(俺も縮んでいるんだが)
それに、何と言うか、体つきが違う。なんだかこう……
「じょ―――『女性的』になっているゥ――!!」
「あははっ、『効いてきた』ねッ! 『心』が『女の子』になってくれば、『スタンド』も『女性的』になる!
君たちの今の『スタンド』に、あたしを『ぶっ飛ばせる』ようなパワーが、果たしてあるかなっ?」
そう叫びながら、今度は『ギター』そのものを振り回し、先輩が俺達に襲い掛かってくる。
「『ゴッド・ロック』、受け止めろッ!」
腕を縦一文字に構えた『ゴッド・ロック』が、その腕で、横に薙ぎ払われたギターを『ガード』する。
しかし。
「うぐゥッ!?」
『ギター』が腕に触れた瞬間。これまでに感じたことの無いような『衝撃』が、俺の身体を襲った。
身体が浮き、吹き飛ばされる。俺はそのまま、廊下の壁際に置かれていた陶器の置物を巻き込みながら、壁に叩きつけられた。
やばい……先輩の言っていることはマジだ。『力がなくなっている』ッ!
「はぁぁ……いいよねぇ、この感じ……可愛い女の子が、あたしに屈服させられる……」
俺を壁に叩き付けた張本人は、なにやらうっとりとした目つきで、ギターのボディーを撫で回している。
こいつ、やべぇ。
「で? 『会長ちゃん』は掛かってこないのかな? 今ので『諦めた』? あたしには敵わないって分かっちゃったのッ!?」
「…………」
痛む身体を無理矢理に起し、『会長』を見る。
会長は、スタンドも出さずに直立したまま、イヤに落ち着いた様子で
「……ふう」
あろうことか、セーラー服のポケットから『煙草』などを取り出しはじめた。
「……な、何、本当に『諦めた』わけ?」
「……せっかく『見知らぬ女子高生』になってんだからよ……丁度いいや、今一服したって、『生徒会長』が見咎められることはねェよなァ―――」
一本を口に咥え、火をつける。すう。と深く煙を吸い込んだ後、それを空中に『吐き出す』……
「榎本よぉ……今、そこの犬ッコロは無様に壁に叩きつけられたよなァ――。
じゃあ、『人間が壁にぶつかって、すり抜ける』確率ってどれぐらいか知ってるか?」
「……な、何ソレ?」
「『地球』が生まれたのと同じぐらいの『確率』らしいぜ。でもよォー、『不可能』じゃねェんだな」
そう呟き。『会長』は、壁に煙草を『押し付ける』。そして―――
火を消したその『煙草』を、壁に『放り投げた』。
「っ……う、ウソッ!? 何、何をしたの、今っ!? ……そ、それが君の『スタンド能力』なのっ!?」
……その光景を目にした、榎本先輩が、『うろたえる』と『色めき立つ』の中間のような反応を見せる。
……俺が見たのは。『煙草の吸殻』が、壁に『吸い込まれていく』光景だった。
「『諦めてる』? 違うな、ソレは。『俺のスタンドはとっくの昔に、お前に迫っている』んだよッ!」
会長が叫ぶ。その言葉を聴き、榎本先輩が、しまった。とばかりに周囲の『壁』を見回す。
しかし、そこには何も居ない。
会長が、やけに手馴れた様子で、長い黒髪をばさりと掻き上げる。
次の瞬間。『それ』が現れたのは―――先輩の、『頭の上』。もっと言えば、『天井』だった!
「『ジェットコースタ―――・ロマンス』――ッ!!」
「なっ!?」
『天井』を『すり抜けて』舞い降りた『ジェットコースター・ロマンス』が、素早く『榎本先輩』の手の中の『ギター』に蹴りを入れる。
そして、その足を『捻り』ながら、一息にそれを『蹴り上げた』!
その瞬間。ブツリ。という、なんとなく聞き覚えのある『音』がする。
ああ、そうだ。これは―――ギターの弦が、『切れる』音!!
「きゃああっ!!」
『スタンド』にダメージを受けた『榎本先輩』は、それに連動して、悲鳴を上げる。
『スタンド』の一部が『破壊』されたのだから、かなりのダメージだろう。先輩はあっけなく膝を折り、その場にへたり込んだ。
それと、同時に。『会長』の身体に『変化』が起きる。
まず、みるみるうちに手足が伸びて行き、長く綺麗だった髪の毛が、撒き戻すようにして短くなってゆく。
そして、どういうメカニズムなのかはわからないが、セーラー服が変形し始め、俺にとっても覚えのあるブレザーへと変化してゆく。
最後に、楕円の眼鏡が角ばれば……
―――『北高生徒会長』、復活―――ッッ!! (擬音を入れるなら、バァ―――ンッ だッ!)
「やっぱり『弦』か……それじゃあもう『演奏』できねえなあ、榎本よォ?」
「ひっ……ごっ、ごめんなさ……」
先輩、すっかり意気消沈。そんな先輩の首根っこを、『ジェットコースター・ロマンス』が掴み上げる。
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!! あたし、どうかしてたのォ―――! お願い会長、助けてェ、許してェ!!」
直感的に分かった。おそらく、『矢』の効果が切れたんだろう。
おそらく、彼女はもう、ハルヒに害をなすことはしないはずだ。
しかし―――会長はもう誰に止められそうにない。
擬音を付けるなら、ゴゴゴゴゴゴ。だな。
「榎本。テメェーはよォ、さっき俺の、音楽室へ戻れって『会長命令』を『無視』したよなァー!?
『会長命令』を『無視』した奴は、『どうなる』んだっけなァ?」
「ごめんなさい! もう、もうぜったいしません! 『涼宮さん』を浚って『部室に飾ろう』なんて考えませんからァ――ッ!!」
……『矢』の効き方は、人によってまちまちのようだな。
「榎本。お前、汗かいてるじゃねェーか。汚ぇな。
見ろよ、丁度いいことに、窓の下は『プール』じゃねえか……今日は『水泳部』も使ってねェ――みたいだぜ。
おい、イイ事教えてやるよ。俺の『ジェットコースター・ロマンス』の『能力』はな」
「ひっ……のっ、能力はっ……何なのよォ~~~~ッ!!」
その絶叫を遮るように。
『ジェットコースター・ロマンス』が、『榎本先輩』を、『窓に向かって放り投げた』。
「『ジェットコースター・ロマンス』が『投げたり殴ったりした物』は……『すり抜ける』んだよ」
……その言葉はおそらく、窓の外へ『すり抜けて』行った先輩の耳には、届いていないだろう。
「『ボラーレ・ヴィーア(ブッ飛びな)』!」
……壁を隔てた向こうで、『プール』に何かが『落ちる』音が聞こえた気がした。
「おい、これで文句ねえだろ。俺は喜緑と遊んでくるぜ」
何事も無かったかのように、俺を振り返り、ニヤリと笑うバ会長。
いいや。まだ終わってないね。遣り残したことがある。
「? ……何だ?」
マジで分かっていない。と言う様子で、会長が頭上にハテナマークを浮かべる。
……見て分かれ、ほれ。
「……悪い、気づかなかった。まあ、自分で治してもらってこいよ。じゃ、またなァ――」
この野郎。テメェだけ『戻り』やがって。
俺はすぐさま『これ』を元に戻してもらうため、うざったいポニーテールを揺らしながら、『プール』へと走った。
――――
- キョン - なんとか榎本先輩に治してもらって一安心。でもホルモンバランス崩れて2、3日イラついてた
- 榎本美夕紀 - 『スタンド』は健在なものの、普通の女の子に戻ったみたいです。でもハルヒと女の子はマジで好きみたいです。
- 会長 - この後、生徒会室で、喜緑君と仲良く狩りに出かけました。
本体名 - 榎本美夕紀
スタンド名 - ネオ・メロ・ドラマティック (弦が復活したら)再起可能
―――――――――――――――――――――――――
スタンド名 - 「ネオ・メロ・ドラマティック」
本体 - 榎本美夕紀(17歳)
破壊力 - B スピード - B 射程距離 - B
持続力 - A 精密動作性 - B 成長性 - C
能力 - テレキャスタータイプのエレキギター型のスタンド。
奏でるフレーズを聴いた人間の性別を、異性へと変える。
体つきや服装などは、本体の自由にできる。
ホルモン分泌の関係で、精神的にも変化が発生するため
スタンドのパラメーターにも変化が発生するパターンが多い。
変化させた性別は弦に記憶され、最大六人まで同時に変化させておける。
対応した弦が切れると、その人物の性別が戻る。
戦うときはそのまま殴るか、ピック(無限に出てくる)を飛ばして攻撃。
弦が切れた場合には、復活するまで数日掛かる。
また、本体のギターテクニックを著しく上昇させる付加効果がある。
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スタンド名 - 「ジェットコースター・ロマンス」
本体 - 会長(18歳)
破壊力 - A スピード - A 射程距離 - C
持続力 - D 精密動作性 - C 成長性 - D
能力 - 全長2m、近距離パワー型。全身が白い人型で、全身にレールが走っている。
スタンド自身は自由にものをすり抜けることができる。
また、スタンドが投げた・殴った物は
一定の速度で壁やものに触れた場合、それをすり抜ける。
本体をスタンドが掴み上げ、壁に投げることで、壁抜け移動が可能。
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最終更新:2014年06月05日 01:06