(お兄ちゃん、晶のこと、可愛いよって言ってくれた。お姉ちゃんより可愛いって言ってくれた。それに、おむつのことは気に
しなくていいよって言ってくれた。新しい紙おむつ買ってあげるって言ってくれた。――そうだ、晶、今、お兄ちゃんに買って
もらった紙おむつを着けてるんだ。幼稚園の女の子が着るみたいなエプロンドレスのスカートの中、おむつが取れない小っ
ちゃな女の子が穿くみたいなオーバーパンツの下に、お兄ちゃんが選んでくれた水玉模様の紙おむつを着けてるんだ)
うっとりした表情で目をつむり、徹也のなすがまま唇を重ね合わせながら、晶は胸の中で呟いた。
――試着室で徹也にオーバーパンツを穿かせてもらってから、晶は階下のドラッグストアへ連れて行かれた。そこで自分
の気に入った紙おむつを買いなさいと美也子から命じられたのだが、大勢の買物客がいる中、聞こえよがしに大声でそう命
じられた晶は、弱々しく首を振って顔を伏せるばかりだった。そんな晶を自分の体で買物客たちの目から隠し、陳列棚に目
を走らせてしばらく迷った後、学童サイズの紙おむつのカラフルなパッケージを手に取ったのが徹也だった。徹也はその後、
レジで自分の財布から紙おむつの代金を払い、ドラッグストアから少し距離をとった所で、自分の後ろにつき従ってとぼとぼ
歩く晶の方に振り向いて、優しい声で
「吸水性とか肌触りとかどれがいいのかわからないから、とにかく模様が可愛いのを選んでみたんだけど、どうかな。ピンク
のハート模様も可愛いけど、水玉模様も、これから暖かくなっていく季節に合ってていいと思うんだ。これ、プレゼントするか
ら、お姉さんに取り替えてもらうといいよ。……僕が取り替えてあげるわけにはいかないもんね」
と言って、紙おむつのパッケージを差し出したのだった(レジの係員は徹也の買った紙おむつをビニール袋に入れてくれよう
としたのだが、レジを済ませたという印になるテープだけ貼ってくれればいいですよと言って美也子がビニール袋を断ったも
のだから、恥ずかしい紙おむつのパッケージは裸で剥き出しのままだった。エコに協力するためよと言って美也子は笑った
が、そんなものは口実で、晶の羞恥を煽るためなのは火を見るより明らかだった)。
「どうしたの、晶ちゃん。一人じゃ自分の使う紙おむつも買えない甘えん坊の晶ちゃんの代わりに徹也お兄ちゃんが買ってく
れたのよ。それも、自分のお小遣いで。ちゃんとお礼を言わなきゃ駄目じゃない」
通路の片隅で立ち止まり、けれど、なかなか紙おむつのパッケージを受け取ろうとしない晶のお尻をオーバーパンツの上か
らぽんと叩いて美也子は言った。
それまで首をうなだれていた晶はようやく顔を上げたが、内側がうっすらと黄色に染まった紙おむつを見られ、その紙お
むつの上に優しくオーバーパンツを穿かせてくれた徹也とは、恥ずかしさのあまり、目を合わせることができない。まして、
そんな徹也の手から『学童(女子)用Mサイズ』と大きな文字が印刷された紙おむつのパッケージを受け取るなど、羞恥の
きわみだ。
けれど、「ほら、何をぐずってるの」と再び美也子がオーバーパンツの上からお尻を叩くものだから、おしっこを吸って膨
らんだ紙おむつが下腹部の肌ににぐじゅっとまとわりつく感触に耐えかねて、思わず手を伸ばしてしまう。
その後、紙おむつのパッケージを手に提げた晶を連れて美也子が向かったのは、茜の店だった。ドラッグストアがあるフ
ロアの女子トイレでおむつを取り替えられるのではないかと怯えていた晶は、何も言わずに通路をエスカレーターに向かっ
て歩き出し、上の階に戻って茜の店の方に歩を進める美也子にほっと胸を撫でおろした。けれど、そんな美也子の行動は
晶の胸の内を慮ってのことなどでは決してなく、ショッピングセンターの買物客で混み合う女子トイレの個室でおむつを取り
替えるより、茜の店の試着室でおむつを取り替えてやった方がより強烈な羞恥を晶に味わわせることができると判断しての
結果だった。
ドラッグストアからエスカレーターに向かう長い通路をゆっくり歩いている間中、行き交う買物客たちの視線は一つの例外
もなく晶に集まった。身長から判断すれば小学校の高学年ないしは中学生らしき愛くるしい顔をした少女が、幼稚園にあが
るかあがらないかくらいの年頃の幼女にお似合いのエプロンドレスを着ている姿だけでも人目を惹くに充分なところに持っ
てきて、その少女が手に提げているのが紙おむつの剥き出しのパッケージなのだから尚更だ。ぱっと見た瞬間は幼い妹の
ために紙おむつを買いにきたのかなくらいに思った買物客も、パッケージに大きく印刷された用途とサイズをしめす文字を
見れば、それが誰の使うものかはすぐに判断がつく。その瞬間、買物客の大半は好奇に満ちた表情を浮かべて、晶の様子
を更に注意深く観察し始める。そうして目を凝らせば、否応なしに、飾りレースと股ぐりのフリルが可愛いオーバーパンツが
丈の短いスカートの裾から覗いていることに気がつく。しかも、晶の下腹部を包みこんでいる紙おむつはおしっこを吸って吸
収帯がぷっくり膨れているものだから、その上に重ね穿きしたオーハーパンツもまぁるく膨らんで、殊更に注目を浴びてしま
うのだった。
しかも、その状態は、エスカレーターに乗った後も続いた。いや、エスカレーターの乗った後の方が、晶の下腹部に向け
られる視線はきつく辛かった。通路とは違って、スカートの裾から覗くオーバーパンツを目にしたのは、晶たちの後ろに乗
り合わせた、せいぜい三列目くらいまでの人数だけだった。けれど、人数こそ少ないものの、晶の下腹部を後ろ斜め下か
ら見上げるような格好になるから、丸く膨らんだオーバーパンツを殆ど丸見えに近い状態で覗き込まれることになる。サン
ドレス姿で徹也と並んでエスカレーターに乗った時と比べてスカートの丈が短い上に、パニエを内蔵しているためスカート
全体がふわっと広がっているところに、おしっこを吸って内側から膨らんでいる紙おむつと相まって、とてもではないが雑誌
で隠すのは無理だった。後ろ斜め下からスカートの中に向けられる視線を遮ることのできる物があるとすれば、晶が手に
提げている、紙おむつの四角のパッケージだけだろう。けれど、そのパッケージをお尻の後ろにまわすことはできない。そ
んなことをすれば、オーバーパンが丸く膨らんでいるのは、その下に着けた紙おむつのせいですと自ら告白するようなもの
なのだから。
そんなふうにして数え切れないくらい大勢の痛いほどの視線を浴びてようやく戻ってきた茜の衣料品店。だが、ここにも
更なる羞恥が待ち受けていた。美也子は、さっきまで恥ずかしいファッションショーの舞台として使っていた試着室で晶の
おむつを取り替えると言い出したのだ。茜が経営する衣料品店はショッピングセンターにテナントとして入っている店舗だ
から専用のトイレがあるわけではなく、用を足すには、そのフロアの共用トイレを使うことになる。だから、晶のおむつをトイ
レで取り替えようとすればどうしても買物客で混み合う女子トイレに連れて行かざるを得ないが、それでは晶が恥ずかしが
って可哀想だから、なんとか、人目の少ない店内で取り替えてあげたい、それには試着室が一番便利だからというのが美
也子の説明だった。大勢の目がある共用トイレでのおむつ交換だけはどうしても避けたい晶は、美也子の提案に渋々なが
ら頷くしかなかった。まさか、それが、トイレでおむつを取り替えられるのに比べて尚いっそうの羞恥を味わう結果を招くこと
になるとは露ほども思わずに。
「あらあら、こんなにぐっしょり濡らしちゃって。晶ちゃん、セーラースーツを着てた時、徹也お兄ちゃんにおむつの様子を調
べてもらったよね? その時は大丈夫だったのに、そのすぐ後、エプロンドレスに着替えさせてあげている最中におもらしし
ちゃったのよね。徹也お兄ちゃんが調べてくれている最中におしっこ失敗しちゃってたら、徹也お兄ちゃん、びっくりしちゃっ
たでしょうね」
晶を試着室に連れて入り、入り口のカーテンを閉めた美也子は、オーバーパンツを引きさげ、濡れた紙おむつをずりおろ
すなり、さも驚いたように大声を張り上げた。試着室の中と外とは薄いカーテン一枚で隔てられているだけだから、美也子
の声は徹也の耳にもはっきり届く。
「や、やめてよ、お姉ちゃん。そんな恥ずかしいこと大声で言っちゃやだってば」
美也子の声に続いて、晶の声が微かに聞こえた。わざとのような大声の美也子とは対照的に、羞じらいに満ちて弱々し
い声だ。
「言うだけじゃなにも恥ずかしくなんてないわよ。恥ずかしいのは、小学五年生にもなっておむつを汚しちゃうおもらしそのも
のよ」
嵩にかかって決めつける美也子の声。
そんなふうに、徹也がそれとなく聞き耳を立てていることを承知の上で美也子は次々に恥ずかしい言葉を晶に投げかけ
続けたのだった。おしっこに濡れた紙おむつの内側の様子、おしっこを吸った吸収帯がどんなふうに膨らんでいるのか、下
腹部をお尻拭きで綺麗に拭う時に晶がどんな顔をしているのか、ベビーパウダーをはたかれて晶の下腹部がうっすらと白
化粧を施される様子、そんな恥ずかしいことを微に入り細を穿つように、晶が実は紙おむつの中にいやらしく蠢く肉棒を隠し
持っているという事実以外は細大漏らさず、試着室の外にいる徹也たちに言って聞かせる美也子だった。これがトイレの個
室なら、ドアに阻まれて声の通りは幾らかでもわるくなるだろう。それに、そもそも、美也子の声が届く範囲に徹也がいる筈
もない。薄いカーテンだけで遮られた試着室だからこそ、おむつを取り替えられる晶の羞恥に満ちた様子が事細かに徹也
たちの耳の入ってしまうのだ。その時になってようやく晶は後悔したものの、もう手遅れだ。今さら、自分の痴態を徹也の脳
裡から消し去ることなどできない。
そうしておむつの交換を終えると、美也子は晶を試着室の入り口付近へ連れ出して、さっとカーテンを引き開けた。とても
ではないが、徹也と目を合わせられない。晶は顔を伏せたまま、丈の短いスカートをしきりに引っ張り続けるばかりだった。
だが、美也子は晶の胸の内など知らぬげに、しれっとした顔で
「はい、徹也君が買ってくれた新しいおむつに取り替えてあげたわよ。パッケージの写真だけじゃわかりにくいから、晶ちゃん
に似合うかどうか、しっかり見てあげてね」
と徹也に言って、晶の体を入り口ぎりぎりの所まで押し出してしまう。そう、おむつは取り替えたものの、オーバーパンツは
穿かせずに美也子は晶を徹也の目の前に引きずり出したのだ。
「あ……は、はい」
かすれた声で返事をする徹也。ガールフレンドのおむつ姿を目の当たりにして、うっすら頬を赤く染め、どぎまぎしてしま
うのも仕方ない。しかも、幼いガールフレンドの下腹部を包み込んでいる水玉模様の紙おむつが、ついさっき自分が選ん
で買ってあげた物だから尚更だ。
「やだ、そんなにじっと見ちゃやだ……」
いかにも恥ずかしそうに声を震わせるのは晶の方も同じだ。短いスカートの裾から見える恥ずかしい下着を間近で覗き
込まれていると思うと、顔中が熱くなってくる。けれど、晶の声から感じ取れるのは、羞恥だけではなかった。ドラッグストア
で大勢の買物客がいるのに、臆することなく紙おむつを選んでくれてレジまで待って行き自分の小遣いで支払いを済ませ
てくれた『優しくてとっても頼りになる年長のボーイフレンド』に対する依存心がますます大きくなって、徹也に頼りきってい
るのが明らかな甘ったれた様子がありありと感じ取れる。スカートの裾を押さえる仕種にしても、徹也の保護欲に訴えかけ
んばかりに媚びを売るように身をくねらせながらだ。じろじろ眺めまわされて、いつ紙おむつの中に隠し持っているペニスの
膨らみに気づかれるかもしれないと気が気がではないのだが、そのどきどき感さえ却って被虐感を煽って、晶の胸を切な
くさせていた。
「どうやら、満更でもなさそうね。これからは紙おむつの見立て、徹也君にお願いしようかしら。妹も、私が買ってあげた紙
おむつより、徹也君が選んでくれた紙おむつの方が嬉しそうな顔をしてるし。じゃ、あとはこれを穿かせてあげてね。これも
徹也君に穿かせてもらった方が嬉しいみたいだから」
しばらく二人の様子を窺った後、美也子が徹也に手渡したのは、おむつを取り替える時に脱がせたオーバーパンツだっ
た。ドラッグストアへ行く前に徹也の手でオーバーパンツを穿かされる時に晶の顔に浮かんでいたいかにも恥ずかしそうな
表情。あの表情をもういちどじっくり眺めて楽しむために、美也子は自分の手でオーバーパンツを穿かせず、紙おむつ姿の
晶を徹也の目の前に立たせたのだった。
その後、晶は再び徹也の肩に手を載せてオーバーパンツを穿かせてもらい、茜の運転する車で美也子の家まで送り届
けてもらったのだが、その間中ずっと、徹也と手をつないだままだったのは言うまでもない――。
荒々しく力まかせに唇を重ねるばかりの、いかにも物慣れしていない、ぎこちないキス。
晶は、そんな徹也の口づけに応じてしまう自分が怖かった。このまま気持ちがすっかり小学生の女の子になってしまい
そうで、ひどい不安を覚えてしまう。
(だって、だって、仕方ないんだもん。晶、お兄ちゃんのことが大好きになっちゃったんだもん。お兄ちゃん、晶のおむつを
選んでくれて、優しい手つきでパンツを穿かせてくれて、晶が寂しがらないようにチュッをしてくれて……そんなお兄ちゃん
が大好きになっちゃったんだもん)
晶は自分自身に対して言い訳をするかのように胸の中で呟いた。そんな、口に出して誰かに聞かせる言葉ではない、胸
の中の呟きさえ、今はもうすっかり幼い女の子めいた口調だ。
(お兄ちゃんに買ってもらった紙おむつを着けて、その上にお兄ちゃんにオーバーパンツを穿かせてもらって、こうしてお兄
ちゃんにチュッしてもらってるんだ、晶。ずっとずっとこんなふうにしてられたらどんなにいいだろう)
すっかり女の子らしい仕種でそっと両目を閉じ、徹也の腕にいだかれ、可愛らしく首をかしげて口づけを交わす晶。
けれど、そうしているうちに紙おむつの中でペニスがいやらしく蠢き始める。
(や、やだ。こんな時に――お兄ちゃんにチュッしてもらってる最中に、そんなになるなんて……)
これまでも徹也の胸に顔を埋めたりキスをしたりするたびに、下腹部が切なく疼いてペニスが蠢いた末、精液をとろとろ
溢れ出させて紙おむつの内側をべとべとに汚してしまっていた。それと同じことが今また晶の身に起ころうとしている。
男性を受け容れるための女性の下腹部の疼きとは違う、ペニスから精液を迸らせるための男性そのものとしての下腹の
疼き。その疼きに、晶は、自分はやはり男のなのだと思い知らされる。いくら少女めいて徹也に甘えてみても、下腹部にい
やらしい肉棒を隠し持ち、決して男性を受け容れることのできない存在なのだと。
(抱っこして、お兄ちゃん。晶のこと、もっと強く抱っこしてよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんに抱っこしてもらっている間だけ、晶、
自分が男の子だってこと、本当はお兄ちゃんより年上の高校生の男の子だってことを忘れられるんだから)
それまで徹也のなすがまま、ただ、徹也から唇を重ね合わされるだけだった晶が、自分の方から徹也に体をもたせかけ、
唇を重ね返した。
ジュニアブラのカップのおかげでかろうじて微かに膨らんで見える胸を徹也の胸元に押しつけ、徹也の首筋に絡めた両手
を交叉させてすがりつく様子は、年上のボーイフレンドと過ごす時間を少しでも濃密なものにしたいと願いつつも、まだ自分
の気持ちを上手に表現することのできない幼い女の子そのままだ。おむつの中でいやらしく蠢くペニスの存在を自覚すれば
するほど、それを忘れようとでもするかのように気持ちだけが却ってますます女の子らしくなってゆく晶の瞳は、今にも溢れ
出しそうになっている涙に潤んでいた。
このまま時が止まってしまえばいい。けれど、そう思う晶の願いが叶う筈もない。こつこつと窓を叩く音が聞こえ、その直
後、車のドアが外から引き開けられてしまったのだ。
「別れを惜しむのはもうそろそろいいかな? これでも気を利かせて、荷物を運び入れてからも少し待ってあげたんだよ」
ドアの端に手をかけたたまま、ひょいと車の中を覗き込んで、ひやかすように美也子が言った。
それまで二人きりの時間に浸りきっていた二人が現実に引き戻されて、反射的に体を離す。ダッシュボードの時計にち
らと目をやると、車が止まってから、もう二十分間ほどが過ぎていた。
「いつまでもずっと一緒にいたいのはわかるけど、徹也君もそろそろお家に帰らなきゃね。明日は朝から一緒にいられる
んだし、今日はこのくらいでいいよね?」
美也子は諭すように言って、晶の手をつかんだ。
「ほら、いらっしゃい、晶ちゃん。晶ちゃんのせいで徹也お兄ちゃんが夕飯に遅れて、帰りが遅いってお兄ちゃんのお母さ
んに叱られちゃ可哀想でしょ? それに、そんなことになったら、晶ちゃんがお兄ちゃんのお家に遊びに行っても、お母さ
んがいい顔をしてくれないかもしれないじゃない? 大好きなボーイフレンドのお母さんに嫌われちゃったら、晶ちゃんも
困るものね」
「や! 晶、お兄ちゃんと一緒がいい。ずっとずっとお兄ちゃんと一緒がいいの!」
晶は金切り声をあげて、美也子の手を振り払おうと身をよじった。
それを押しとどめたのは、
「あ、駄目だよ、晶ちゃん。もう暗くなってきたから、お姉さんの言う通り、僕、もうそろそろ帰らなきゃいけないんだ。あまり
遅くなると、もう外出しちゃいけませんって母さんに叱られちゃうかもしれない。そんなことになったら晶ちゃんとデートする
こともできなくなっちゃうから、今日はこのへんで帰るね。その代わり、明日はたっぷり一緒にいようね。公園の場所は教え
てもらったし、絶対に遅刻しないよう注意するよ。晶ちゃんも遅刻しないよう今夜は早めに眠らなきゃいけないから、ほら、
もうお家に入りなさい。僕の夢を見ながらぐっすり眠るんだよ、いいね?」
と優しく言って晶の肩にそっと手を置いた徹也だった。
だが、感情の高ぶりを抑えられない晶は、そんな徹也に対しても、きつい言葉を投げかけてしまう。
「なによ、なによ、なによ。お兄ちゃんたら、晶と一緒にいるより、お母さんと一緒がいいの!? お母さんに叱られるのがそん
なに怖いの!? だったら、いいわよ。さっさとお家に帰ればいいじゃない。お家に帰って、優しいお母さんに甘えてればいい
じゃない。晶、そんなマザコンのお兄ちゃんなんて大っ嫌いなんだから」
「マ、マザコンて……まさか、そんなことを言われるなんて思わなかったな」
少し困ったような顔になった徹也だが、晶を優しく説得するのはやめない。
「違うんだよ、晶ちゃん。僕は、母さんに叱られるのが怖くてそんなことを言ってるんじゃないんだ。そんなじゃなくて、僕の
帰りが遅くなって、それで、その原因が晶ちゃんだって母さんに思われるのが困るんだよ。僕と晶ちゃは今日はじめて知り
合ったわけだから、当たり前だけど、晶ちゃんと母さん、まだ一度も顔を会わせてないよね。まだ会ってもいないうちから、
僕の帰りが遅いことで晶ちゃんと母さんの仲が悪くなっちゃうと、僕だけじゃなく、みんなが困るんだよ。だって……」
それまでは優しい声で話していた徹也だが、ここにきて少し言い淀んだ後、照れ臭そうに顔を赤らめて続けた。
「だって、このまま僕と晶ちゃんがおつきあいを続けて、それで、いつか大人になって、晶ちゃんをお嫁さんにしたいなって
なった時、うちの母さんと晶ちゃんの仲が良くないと、まわりの人たちもいろいろ困るだろ? そりゃ、僕はいつだって晶ちゃ
んの味方だよ。母さんの好き勝手にはさせないよ。でも、やっぱり、嫁姑の問題っていうのは少しでも小さい方がいいわけ
だし……だから、その……」
「お嫁さん……? お兄ちゃん、晶をお嫁さんにしてくれるの!?」
照れて最後の方は口の中でもごもご言う徹也の言葉を途中で遮るようにして、晶がぱっと顔を輝かせて聞き返した。
が、じきに首をうなだれ、肩を落としてしまう。
「でも、駄目だもん。晶、お兄ちゃんのお嫁さんになんてなれないもん。晶、晶はね……」
紙おむつの吸収帯に抑えつけられながらもいやらくし蠢くペニスの存在をありありと感じつつ、晶は物哀しげな声でぽつり
と言った。それまでの金切り声が嘘みたいな、しゅんとしょげ返った声だ。
「え? どうして駄目なんだい? そりゃ、小学生と中学生だから今はまだ無理に決まってるけど、これからずっとおつきあ
いを続けて大人になったら、ちゃんと結婚できるんだよ。その頃には晶ちゃんのおっぱいも大きくなってるだろうし、おむつも
外れてるに決まってるよ。だったら、僕のお嫁さんになるのに何の問題もないじゃないか。あ、もしもおっぱいが大きくなって
なくても、僕、ぺったんこの子も好きだし、おむつ離れできないままだったら、その時は僕がお世話してあげるから。それとも、
僕のこと嫌いになっちゃった?」
晶の反応に少なからずショックを受けたようで、今度は徹也が沈痛な面持ちで問い返した。
「……ごめんなさい。さっきは、マザコンとか、お兄ちゃんなんて大嫌いだなんて言っちゃってごめんなさい。晶、お兄ちゃ
んと別れるのが寂しくて、つい……でも、晶がお兄ちゃんのこと嫌いになるわけなんてないんだから。ずっとずっと一緒に
いたいに決まってるんだから。……でも、お嫁さんにはなれないの。大人になっても絶対に……」
晶はスカートの裾を両手できゅっと握りしめて声を震わせた。
涙の雫が一つ、手の甲に落ちて、小さな無数の雫になって飛び散る。
「晶ちゃん……?」
本当のことを何一つ知らない徹也には、晶の涙がどんな意味を持っているのかを知る術はない。
「ごめんね、徹也君。妹、内気で引っ込み思案なところに持ってきて、ちょっと感情の起伏が激しくなることがあるの。さっ
きみたいに喚きちらしたかと思うと、こんなふうにわけもなく泣きだしちゃうことがあるのよ。でも、一晩ぐっすり眠れば落ち
着くから、明日はたっぷり遊んであげてね。うんと可愛い格好をさせて公園へ連れて行くから楽しみにしてて。あ、そうそう。
お弁当も持って行くから、芝生の上でみんなで食べようね。徹也君、おにぎりとサンドイッチ、どっちが好き?」
取りなすような、わざとらしく明るい美也子の声が割って入った。
「え……ああ、だったら、サンドイッチの方が好きです」
どう対処していいのかわからず、すすり泣く晶の様子をただぼんやりと眺めながら、徹也は気のない返事をした。
「じゃ、とびきり美味しいサンドイッチを用意するわね。――さ、こっちへいらっしゃい、晶ちゃん。泣いてばかりいないで、今
度こそ本当に徹也お兄ちゃんを見送ってあげるのよ」
美也子は改めて晶の手をつかんだ。
もう抵抗する気力も残っていないのか、晶は美也子のなすがまま後部座席の端まで引き寄せられてゆく。
「ほら、抱っこしておろしてあげるから、おとなしくしてるのよ。本当にいつまでも甘えん坊の赤ちゃんなんだから」
美也子は座席の端まで引き寄せた晶の体を軽々と抱き上げて車外に連れ出すと、そっと地面に立たせて、車のドアを閉
めた。
それとほぼ同時に茜が運転席に乗り込んでエンジンをかけた。
ゆっくり動き出した車のリヤウインドウに顔を押しつけるようにして徹也が大きく手を振る。
だが、美也子に抱かれて地面におり立った晶は手を振り返せないでいた。今にも精液を溢れ出させそうにしているペニス
をなだめるのに必死で、手を振るどころか、思わずその場にへたりこんでしまいそうになるのを堪えて両脚を小刻みに震わ
せながら立っているのが精一杯だったのだ。
「ふぅん。今度は、白いおしっこが出ないように我慢してるんだ。これまでは徹也お兄ちゃんに抱っこしてもらったりキスし
てもらったりしたらすぐに白いおしっこを出しちっゃてたのに、ちょっぴりだけど、おもらし癖が治ってきたのかしらね」
その場に立ちすくみ走り去る車を目だけで追いかけるしかできない晶に向かって、くすっと笑いながら美也子が言った。
晶はびくんと体を震わせ、おそるおそる、傍らに立つ美也子の顔を見上げた。
「気がついてないとでも思ってたの? うふふ、可愛い妹のことはなんでも知っているのがお姉ちゃんなのよ。荷物を運び
終わっても晶ちゃんと徹也お兄ちゃんのキスがなかなか終わりそうになかったから、二人が仲良くしてるとこ、茜お姉さん
と一緒にゆっくり見物せさてもらったわよ。その時の晶ちゃんの顔をよく見ていれば、白いおしっこが出ちゃいそうなんだな
ってことはすぐわかったわ。晶ちゃん、これまで何度も白いおしっこをおもらししちゃったでしょ? その時の顔を思い出せ
ば、気がつかない方がどうかしてるわよ。でも、これまでは出ちゃいそうになるとすぐイっちゃってたのに、今度は随分と我
慢してるのね。本当のおしっこもこのくらい我慢できるようになれば、濡れたおむつを二度も徹也お兄ちゃんに見られちゃう
ようなことにならなかったのにね」
紙おむつの中でいやらしいペニスがのたうちまわっていることも、けれどまだ精液を溢れ出させていないことも、全て美
也子にはお見通しだった。おそらく、これまでと違って今回はなぜ晶が簡単に射精してしまわないよう耐えているのか、そ
の理由さえ、美也子は見透かしていることだろう。
徹也の胸元に顔を埋めたり、唇を重ねたりするたび、徹也は自分が完全に女の子として扱われていることを実感し、そ
の倒錯感から下腹部をじんじん疼かせてきた。下腹部の疼きはまたたく間にペニスをいきり勃たせ、精液を溢れ出させた。
高校生の男の子でありながら小学生の女の子として扱われ、中学生の男の子から幼いガールフレンド扱いされることで、
想像もつかないような倒錯感と被虐感が胸の中いっぱいに膨れ上がり、それが奇妙な異形の悦びに姿を変え、歪んだ性
欲となって晶の下腹部を締め上げた結果だった。けれど、徹也に対する依存心がいつしか心の奥底に芽生え、それが成
長するにつれてどんどん気持ちが女の子めいて変わってゆき、とうとう年下の同性である徹也に対する切なく狂おしい恋
心を抱くようになった晶は、最も男らしい性欲の発露の形である射精という行為を忌避するようになっていた。見た目は幼
い女の子で、気持ちも少女めいて変わってきた今、生殖機能を備えた雄であることを最も端的にしめす射精という行為に
対して、限りない嫌悪感を抱くまでになっていたのだ。今や晶の気持ちの中では、その行為は、徹也から愛される資格を自
らの手で捨て去ることと同義になっていた。
いつか堪えきれなくなって、遂には精液で紙おむつの中をべとべとに汚してしまうかもしれない。けれど、せめて今のうち
だけは――徹也を乗せた車が見えている間だけは、白いおしっこで紙おむつを汚してしまうのはどうしても避けたかった。
下腹部を包み込んでいる水玉模様の紙おむつが徹也から貰った初めてのプレゼントだから、尚のこと。
悲痛でさえあるそんな晶の想いに対して、美也子は「ちょっぴりだけど、おもらし癖が治ってきたのかしらね」と、まるでか
らかうように言ってのけたのだ。
「……ひどい。お姉ちゃん、ひどい!」
両脚を小刻みに震わせ、両手の拳をぎゅっと握りしめ、涙で頬を濡らしながら、晶は、傍らに立つ美也子の顔を振り仰ぐ
と、恨みがましい声で言った。
「晶がこんなになっちゃったの、お姉ちゃんのせいなんだよ。お姉ちゃんが晶に女の子の格好をさせて外に連れて行ったり
するから、晶、徹也お兄ちゃんと知り合って、お兄ちゃんのこと大好きになっちゃって……でも、晶、本当は男の子だからお
兄ちゃんのお嫁さんになんてなれなくて。晶、高校生の男の子なのに、中学生のお兄ちゃんのことが大好きになっちゃって、
なのに、大人になってもお嫁さんには絶対なれなくて……晶、これからどうしたらいいのよ!? 晶、これからどうやって生きて
いけばいいのよ!?」
「そう、そんなに辛いんだ、晶ちゃん。気持ちはすっかり女の子で見た目も女の子なのに、身体は男の子のまんまだもん、
辛いよね、晶ちゃん。でも、私がちゃんと責任を取ってあげる。だから、晶ちゃんは何も心配しなくていいのよ。安心して、お
姉ちゃんにまかせておきなさい」
口では『辛いよね』と繰り返しながら、けれど同情するような表情など浮かべる気配もなく、まるで、きゃんきゃん吠える子
犬を見るような目で晶の顔を見おろして、美也子は静かに言った。
「お姉ちゃんが責任を取るって……?」
涙ながらに晶が聞き返した。
「お姉ちゃん、晶ちゃんに何度も言ったよね? お姉ちゃんが晶ちゃんをお嫁さんにしてあげるって何度も言ったよね? もう
うちのパパやママ、晶ちゃんのパパやママのお許しもいただいてるって教えてあげたよね? それがお姉ちゃんなりの責任
の取り方よ。高校を卒業してすぐ結婚式をあげて、私が実業団チームで練習や試合で頑張っている間、晶ちゃんは可愛い
エプロン姿でお料理やお洗濯をして私の帰りを待っていればいいの。でもって、空いた時間は好きなご本をいっぱい読んで
いればいいのよ。晶ちゃん、文芸部でこ本を読むのが大好きだから、そんな生活は夢みたいでしょ? それで、ずっとずっと
私のことだけ考えていればいいのよ。徹也お兄ちゃんのことなんてみんな忘れて、私のことだけを。いつだって、どんな時だ
って、私が晶ちゃんを守ってあげる。だから、晶ちゃんは私のことだけを想っていてちょうだい」
美也子は口ではわざと優しくそう言ったが、腰に右手の甲を押し当てた姿勢はいかにも威圧的だ。
「や、やだ。……晶、お兄ちゃんがいい。晶、徹也お兄ちゃんのお嫁さんになりたいの!」
最初は怯えたような表情でぽつりと言うだけだったが、最後の方は再び感情が高ぶってきたのか、激しく首を振りながら、
金切り声をあげて美也子の言葉を遮る晶。
「あらあら、いつのまにか晶ちゃんたら、すっかりお兄ちゃん子になっちゃって。ちょっと前まではお姉ちゃんにべったりでお
姉ちゃんがパンツを穿かせてあげてたのに、ちょっとお兄ちゃんに優しくしてもらっただけで甘える相手を変えちゃうんだか
ら現金なものね」
美也子はわざと呆れたようにそう言っておおげさに肩をすくめてみせると、意味ありげな笑みを浮かべて、それまで自分
の腰に押し当てていた右手を晶のスカートの中にさっともぐりこませた。
「や! そんなとこ触っちゃ駄目!」
咄嗟に晶は美也子の手を振り払おうとして身をよじる。
けれど、もう限界寸前まで達しているペニスにそれ以上の刺激を与えまいとすると、どうしても体の動きは小さくなってしま
い、余計な力を入れることもできないため、美也子の手を拒むことはかなわない。
「口ではなんとでも言えるけど、身体はどうかしらね。晶ちゃんが本当にお兄ちゃん子になっちゃったのかどうか、調べてみ
ましょうね。本当に徹也お兄ちゃんが大好きだったら、お姉ちゃんがどんなにおちんちんをいじっても、白いおしっこをおもら
ししちゃうなんてことはないわよね? お兄ちゃんの乗った自動車が見えなくなるまであんなに我慢できたお利口さんの晶ち
ゃんだもん、まさかお姉ちゃんの手でイっちゃうだなんてはしたないことはしないわよね?」
スカートの中にもぐりこんでお尻の方にまわりこんだ美也子の手はもぞもぞと蠢き、晶の両脚の間に割って入ると、オー
バーパンツと紙おむつの吸収帯の上からもはっきりそれとわかるいやらしい膨らみに触れた。
「やだ、やだってば、お姉ちゃん。そんなとこ触っちゃやだってば。そんなとこ触られたら……」
いったんは甲高い金切り声をあげた晶だが、美也子の大きな手でオーバーパンツと紙おむつの上からペニスを包み込ま
れると、途端に身をすくめて口をつぐんでしまう。
「そんなとこ触られたらどうなっちゃうのかな? ちゃんと最後までお姉ちゃんに教えてちょうだい。晶ちゃん、パンツじゃなく
ておむつだけど、お口のきけない赤ちゃんじゃないんだから、どうなっちゃうのか教えられるよね?」
美也子は、ペニスの膨らみを包み込んだ掌の腹を晶の下腹部にぐっと押しつけるようにして、甘ったるい声で囁きかけた。
「あん……やだ、駄目だったら。そんなとこ触らないでって言ってるのに……」
今にもへなへなと地面にへたりこみそうになりなるのをかろうじて堪えながら、晶は弱々しい声で訴えかけた。
「だから、触られたらどうなるか教えてごらんって言ってるのよ。きちんと教えるまで、絶対にやめてあげないからね」
美也子は掌の腹を晶の下腹部に押しつけたまま、吸収帯に沿ってゆっくり前後に動かした。
吸収帯を覆う不織布がペニス全体に絡みつき、美也子の掌が前後するたびに、ペニスの付け根から先端へと、刺激を
受ける部位が次第次第に移ってゆく。
「そんな、そんなこと……あ、いやぁ……」
晶の体がぴくんとのけぞって、悲鳴じみた喘ぎ声が口を衝いて出る。
「あら、まだ教えられないの。ふぅん、可愛い顔をしてるくせに意外と強情なんだ、晶ちゃんてば。じゃ、これでどうかな」
美也子は掌全体でペニスを包み込むのをやめ、人差指と中指を揃えて、晶のお尻の穴の付近に這わせた。
普通、いきり勃たったペニスは体の前の方で反り返り、凶々しく鎌首をもたげるものだ。けれど、晶のペニスは美也子の
手で強引に後ろ向きに折り曲げられた状態で紙おむつの中におさめられてしまったものだから、エレクトした今も、吸収
帯に抑えつけられた状態で両脚の付け根の間を通ってお尻の方に向けられたまま窮屈そうにのたうちまわっている。そう
して、その先端が、ちょうど菊座のあたりにあった。
美也子は人差指と中指の先で、晶の肛門近くにあるペニスの先をオーバーパンツと紙おむつの上から挟むようにしてつ
まみ、中指の腹でくりくりと撫でさすった。
「お、お願い……お願いだから、そんなことしないで。お願いだから、お姉ちゃんてば……」
それまで小刻みに震えていた晶の両脚がいつしかがくがく震え出し、いつのまにか、荒々しく肩で呼吸をし始めていた。
「とっても感じやすいのね、晶ちゃんのお尻。ひょっとしたら、これなら徹也お兄ちゃんを悦ばせることもできるかもしれな
いわよ。だったら、徹也お兄ちゃんのお嫁さんにもなれちゃうかな」
美也子はひやかすように言ってくすくす笑った。
美也子が二本の指で責めているのは、もちろん、お尻の穴などではなく、ペニスの先の部分だ。けれど、いきり勃った
ペニスの先端がちょうどお尻の穴の近くにあるため、もしも二人の様子をこっそり覗き見している者がいれば、その者の目
には、美也子が二本の指で晶のお尻の穴をいじっているように見えることだろう。それも、激しい運動の邪魔にならないよ
う髪を少し短めに切り揃え、180センチを超える身長と引き締まった体つきの持ち主である美也子が、160センタあるかな
いかの身長しかない上に華奢な体つきをした、スカート丈の短いピーチピンクのエプロンドレスを着た晶のお尻を責めてい
るのだから、変質的な青年が幼い少女に淫らな悪戯を強要しているようにさえ見えるかもしれない。
身をよじって喘ぎ声を漏らす晶と、晶の手首をねじ上げるようにして自由を奪い、執拗に下腹部を責めたてる美也子。二
人の体は、性別と年齢とを完全に入れ替えた状態で淫靡に絡み合っていた。
「や、やだ……そんな変なこと言っちゃやだ……」
いよいよ自分の足では立っていられなくなってきて、晶はどこかうっとりしたような声で言って美也子にしなだれかかっ
た。
「何が変なことよ。あんなに徹也お兄ちゃんのお嫁さんになりたがっていたから、感じやすいお尻でよかったわねって褒め
てあげたのに。ほら、これはどう?」
美也子は、もたれかかってきた晶の体を引き寄せると、人差指でペニスを責めながら、中指をお尻の穴に突き立てた。
さっきは冗談で言ったただけだが、今度は(お尻が感じすいのねとからかった時に晶が浮かべたどことなく甘えるような表
情にピンとくるものがあって)半ば本気だ。オーバーパンツと紙おむつの上からだから、中指が実際にお尻の穴に入ってし
まう筈はないけれど、まさか美也子がそんなことまでするとは思ってもいなかった晶は不意をつかれ、下半身をびくんと
震わせてしまった。
「んう……」
たまりかねて美也子の胸に顔を埋めた晶の口から、くぐもった喘ぎ声が漏れる。それは、不意をつかれた驚きや、羞恥
だけでなく、明らかに性的な高ぶりの混じった、聞きようによってはひどく甘ったるい喘ぎ声だった。
「やだ、晶ちゃんたら本当に感じやすいんじゃない。晶ちゃん、本当にお尻で感じちゃうんだ。うふふ、いい子ね、晶ちゃん
は。これなら、私のお嫁さんになっても心配いらないわ。たっぷり可愛がってあげるから楽しみにしてなさい」
二本の指で晶のペニスと菊座を同時に責める美也子は、みるからに淫らな笑みを浮かべて囁いた。
女子ばかりの体育会系部活動。合宿ともなれば、男の子たちが想像もできないような淫靡な話題が幾つも飛び交うし、
ほんの悪戯心や好奇心から、レズっぽい行為に走ることも少なくない。もちろん、本気で百合なカップルができてしまう場
合はきわめて希だが、かなりきわどい行為がいとも平然と行われたりもする。そんな中、美也子も、同性を悦ばせるため
の知識を身につけたり、同性から与えられる悦びを身をもって味わったこともある。それで本気になって同性しか愛せない
体になってしまうといったことはなかったけれど、同性を愛するという行為に対する禁忌が随分と薄らいでしまったのも事
実だった。自分が女の子でありながら、男の子である晶を自分の『お嫁さん』にするという発想も、そんな下地から生まれ
出たものだし、実際に一緒に生活し始めれば、自分がタチになり、男の子である晶をネコに仕立てた倒錯の性行為を強い
るつもりでいるのだが、それに対しても、これっぽっちも罪悪感は抱いていなかった。
そんな美也子にとって、お尻でも悦ぶタイプの子であることが明らかになった晶は、まさに、無慈悲な雌蜘蛛の巣にかか
った哀れな蝶々に他ならない。
「どう、気持ちいいでしょう? おちんちんをいじられるのも気持ちいいけど、お尻も気持ちいいでしょう? 私のお嫁さんに
なったら、毎日こんなことをしてもらえるのよ。こんふうに、おちんちんとお尻を同時に可愛がってもらえるのよ。だから、
徹也お兄ちゃんのお嫁さんになりたいだなんて言わないで、私のお嫁さんになりなさい。徹也お兄ちゃんが晶ちゃんを守っ
てくれる何倍も何十倍も私が晶ちゃんを守って可愛がってあげるから」
美也子は晶の耳元に囁きかけながら、ペニスの先端の一番感じやすいところを人差指の腹で撫でこすると同時に、中指
をお尻の穴の周囲を這わせ、時おり、菊座に指先を突きたてていたぶった。
お尻が敏感というわけではない者でも、そんなふうに二つ所を同時に責められては、堕ちてしまうのも時間の問題だ。ペ
ニスをどくどくと脈打たせ、菊座をひくひく震わせる羞ずかしい姿で精液をとろりと溢れ出させてしまうしかない。それが、最
初からペニスは暴発寸前で、感じやすいお尻の持ち主である晶だから尚更のこと、もうどうしようもない状態まであっという
間に追い込まれてしまう。
「たっぷり可愛がってあげる。どんなことがあっても私が守ってあげる。だから、晶ちゃんは私のお嫁さんになるのよ」
美也子はもういちど繰り返し言って、ペニスと菊座をなぶる指の動きを早めた。
晶の耳には、美也子の声に「どんなことがあっても僕が晶ちゃんを守ってあげるから、ずっとずっと一緒にいようね」と言っ
てくれた徹也の声が重なって聞こえた。二人が繰り返し何度も晶に向かって言ったその言葉は、子供の頃、晶が美也子に
向かって繰り返し言ったあの言葉そのものだった。子供の頃はお兄ちゃんぶってそんなふうに繰り返していた晶が、今や、
同級生の女の子と、二つ年下の男の子から、それとまるで同じ言葉を言われる立場に貶められてしまったのだ。
(助けて、お兄ちゃん。このままだったら晶、いけない子になっちゃう。このまま汚れて、お兄ちゃんのお嫁さんになれなくな
っちゃう。だから、助けて。晶のこと助けてよ、お兄ちゃんたらぁ!)
下腹部の疼きがどうしようもなく高まるのを痛いほど感じながら、晶は胸の中で徹也に救いを求めた。
だが、茜の運転する車に乗せられて自分の家に向かった徹也が戻ってくる筈もない。
「晶、いけない子になっちゃうよぉ!」
くぐもった悲鳴をあげながら、晶はますます深く美也子の胸に顔を埋めた。
ペニスがどくんと脈打ったのは、そのすぐ後のことだった。
お尻の穴が自分の精液でぬるぬるに濡れる様子をありありと感じながら、晶は、美也子の豊かな胸に顔を埋めたまま、
上目遣いに美也子の顔をおずおずと見上げた。
「出ちゃったのね、晶ちゃん。強情を張って言葉でちゃんと教えないから、どうなっちゃうのか実際にやってみせることにな
っちゃうのよ」
今にも崩れ落ちそうになる晶の体を力いっぱい抱き寄せて、少し意地悪な口調で美也子は言った。そうして、勝ち誇った
ような笑みを浮かべると、こんなふうに続けるのだった。
「わかってるよね? 徹也お兄ちゃんにキスしてもらっておっきくなったおちんちんだけど、そのおちんちんから白いおしっ
こを出させてあげたのはお姉ちゃんだってこと、わかってるよね?」
美也子が何を言おうとしているのかは晶にもわかった。
わかったけれど、それを認めるのは胸が痛い。
上目遣いに美也子の顔を見上げる晶の瞳が再び涙で潤む。
「徹也お兄ちゃんは、晶ちゃんに恋する女の子の気持ちを知ってもらうための練習台なのよ。晶ちゃんが可愛らしい女の
子になるための仮のパートナーでしかないの。いいわね? 徹也お兄ちゃんとのおつきあいは、私のお嫁さんになるため
の予行演習なのよ。それを忘れたら晶ちゃん自身が辛くなるんだから、気をおつけなさい。今も辛い? そう、辛いよね。
でも、この辛さを乗り越えたら、晶ちゃんはまた一歩、女の子に近づくことができるのよ。そうして、私のお嫁さんになるため
の花嫁修業の最初のステップが終了することになるの。一日でも早くウエディングドレスを着て私にお姫様抱っこしてもら
いたいでしょ? その日を夢見て今日から毎日、可愛らしい女の子になる練習を頑張ることね」
美也子はそう決めつけて、まだとろとろと精液を溢れ出させている晶のペニスをオーバーパンツの上からぽんと叩いた。
* * *
玄関のドアを引き開けた美也子は、身を固くする晶の肩を抱いて強引に家の中へ連れ込んだ。
廊下の端には美也子と茜が運び入れたたくさんの紙袋が所狭しと並んでいて、その内の幾つかを手に提げて廊下の奥
に向かって歩き出しかけていた美也子の母親・京子が、ドアの開く音に気づいて、くるりとこちらに振り返った。
美也子ほどではないにせよ、おそらく身長は170センチ前後あるだろう、その年代の女性としてはかなり恵まれた体格の
持ち主だ。
「あ、やっと入ってきた。最後の紙袋を持ってきた後、茜さんと一緒に出てってからちっとも戻ってこないからどうしたのか
と思っちゃったじゃない。何かあったの?」
振り返った京子は、僅かに首をかしげて美也子に言った。
「うん、ちょっと。晶ちゃんがボーイフレンドとばいばいするのを嫌がって、ぐずっちゃってたのよ。それをなだめすかすのに
手間取っちゃって」
美也子は、自分の背後に身を隠す晶の体を強引に京子の目の前に押しやった。
「あらあら、そうだったの。ふぅん、ボーイフレンドと別れるのを嫌がってぐずっちゃってたの、晶君」
その時になってようやく晶の存在に気がついたとでもいうように京子はわざとおおげさな仕種で晶の顔に視線を移すと、
普段見知っているのとはまるで違う装いに身を包んだ晶の姿にまるで驚く様子もみせず、どこか楽しげな口調で、ひやか
すように言った。
晶の体がぞくりと震えた。
そんな晶の反応を楽しむかのように、京子がくすっと笑って続ける。
「荷物を運びがてら、美也子がおよそのことは教えてくれたわよ。晶君、女の子になったばかりなのに、もうボーイフレンド
ができちゃったそうね。しかも、ファーストキスもすませちゃったんだって? 晶君、自分は高校生の男の子なのに、ボーイ
フレンドになってくれた中学生の男の子を『お兄ちゃん』って呼んで、べったり甘えきってるんだって? やれやれ、困った子
だこと。美也子のお嫁さんになってくれる大事な体だっていうのに、二股かけて別のいい人をつくるだなんて、あまり感心で
きることじゃないわね。でも、ま、いいか。今日から私が晶君のことを貞淑な女の子に躾け直してあげるから。――楽しみに
しているといいわ、晶ちゃん」
最初のうちはいつもと同じようにお隣の男の子である『晶君』と呼んでいたのを最後は『晶ちゃん』と呼び方を変えてそう言
う京子の目が妖しく輝いた。
ほんの短い会話(いや、晶は一言も発していないから、実際には京子の一方的な発言か)で、晶は、美也子が言っていた
のが決して冗談などではなかったことを改めて思い知らされた。晶をお嫁さんにしてあげる。うちのパパもママも賛成してく
れたわよ。そう言った美也子の言葉は、どれも本当だったのだ。今は確認する術はないけれど、おそらく、晶の両親が賛意
をしめしているというのも嘘や冗談ではないのだろう。
晶は、自分がどこにも逃げ場のない篭の中の小鳥になってしまったという事実を、これ以上はないくらい明確な形で目の
前に突きつけられてしまったのだ。
「あらあら、そんなに怖がることはないわよ。躾け直すっていっても、ちっとも怖いことなんてないんだから。晶ちゃんの花
嫁修行は二年間かけてゆっくり進めるから、あまり無理をすることはないのよ。最初の一年間は、花嫁修業っていっても、
お料理とかお裁縫とかのお稽古は全然しなくていいの。その代わり、私や美也子にたっぷり甘えてちょうだい。私のことは
姑じゃなく、本当のお母さんだと思ってほしいの。美也子のことは旦那様じゃなくて実の姉だと思ってちょうだいね。つまり、
最初の一年間、晶ちゃんは、井上家の長男じゃなく、この遠藤家の次女として生活することになるのよ。そうやって、女の
子としての振る舞いや仕種や気持ちを自分のものにしてちょうだい。そんなふうにして最初の一年間ですっかり女の子に
なったら、いよいよ二年目が本格的な花嫁修業ね。この間に、家事一切を晶ちゃんに教えてあげます。特に、我が家のお
味噌汁の味は徹底的に教え込んであげるから、結婚した後は晶ちゃんがご飯をつくるのよ。わかったわね? 要するに、
最初の一年間は女の子修行で、あとの一年間が花嫁修業ってことになるわけなのよ」
怯えと、幼い女の子そのままの自分の姿を幼馴染みの母親に見られる羞恥とをない混ぜにした、なんとも表現しようの
ない表情を浮かべる晶に、京子はわざと優しく言った。そうして、ちらと美也子の顔に視線を走らせると、声を弾ませて、こ
んなふうに続ける。
「美也子はこんなだから、なかなか可愛い格好をさせられないし、お料理を教えてあげるっていっても部活が忙しいからっ
て逃げ回ってばかりで。でも、今日から晶ちゃんがうちに来てくれることになって、本当、娘がもう一人できたみたいで嬉し
いわ。晶ちゃんなら可愛いお洋服を着せてあげてもすごく似合うから可愛がり甲斐があるし、お料理やお裁縫を教えてあげ
ても素直に言うことをきいてくれそうだし。美也子が晶ちゃんをお嫁さんにするって言い出した時はびっくりしたけど、こんな
可愛らしいお嫁さんなら大歓迎だわ。あ、そうそう。私のことは『お母様』だなんて他人行儀な呼び方しないで、『ママ』って呼
んでちょうだいね。晶ちゃんのことは昔から知ってるし、お嫁さんっていうより、実の娘として可愛がってあげたいから。女の
子修行の間だけじゃなく、花嫁修業が始まってからも、実際にお嫁さんになってくれた後も『ママ』って呼ぶのよ」
そう言って京子は、妖しい光を瞳に宿しつつも、おだやかな笑みを浮かべるのだった。
「ところで、パパは? テレビの音も聞こえないみたいだけど、日帰り旅行から帰ってきて、またどこか出かけたの? せっ
かく晶ちゃんが可愛いお洋服を着て帰ってきたからお披露目してあげたかったのに」
京子の言葉が途切れ、晶が何も言えずにいるせいで一瞬だけ静けさが戻ってきた時、ふと気づいたように美也子が言っ
た。そういえば、たしかに、美也子の父親である友康が家の中にいる気配がまるで感じられない。
「ああ、お父さんなら、バスをおりてすぐ、晶ちゃんのお父様と一緒に馴染みの小料理屋さんへ行っちゃったわよ。明日は
会社で早朝会議があるっていうのに、本当は自分が呑みたいくせして、晶ちゃんのお父様を慰めてあげるんだとかなんと
か理由付けちゃって、本当に困った人なんだから」
京子はそう言って、紙袋を持ったまま肩をすくめてみせた。
「え? 晶ちゃんのパパを慰めるって、どういうこと?」
京子の言葉に、美也子はもうひとつ納得できないようで、訝しげな表情を浮かべて重ねて訊いた。
「あら、だって、『我が子を嫁に出す男親』って、昔から寂しいものだって決まってるでしょ? いくら乗り気でも、いざ実際に
その日が来れば寂しくて仕方ないんじゃないかしら。本当だったらうちの人こそ、娘を嫁に出す男親の寂しさをたっぷり味
わう筈だったのに、どういうわけか立場が逆転しちゃった分、晶ちゃんのお父様の気持ちは痛いほどわかりすよってバスの
中でも盛り上がっちゃって。まだご近所には秘密なんだから、まわりの人たちをごまかすのに、晶ちゃんのお母様も私も一
苦労だったわよ。今ごろ、美也子がメールしてくれた晶ちゃんのエプロンドレス姿の画像でも見ながら二人してわいわいやっ
てるんじゃないかしら」
京子はしれっとした顔で説明し、晶の顔をまじまじとみつめて付け加えた。
「でも、たしかに、晶ちゃんのお父様、お寂しいでしょうね。いずれは一人息子のもとにお嫁さんを迎え入れるものだとばかり
思っておられたのに、その一人息子が嫁いじゃうことになっちゃったんですもの。それも、まだ高校へ通っているうちから、女
の子修行と花嫁修業のために嫁ぎ先で生活することになっちゃったんですもの。でも、二年間の修行が終わってきちんと籍
を入れた後は、うちと晶ちゃんのご実家と交互に生活してもらうことになっているからご辛抱していただかないとね」
「あ、そういうことか。そうだよね、晶ちゃんのパパ、寂しいよね。でも、晶ちゃんをお嫁さんにくださいってお願いした時は、私
のこと息子が一人増えるようなもんだからって笑って言ってくれたし、大丈夫よ、きっと。だけど、やっぱり、晶ちゃんのウェデ
ィングドレス姿を見たら泣いちゃうのかな。晶ちゃんと手を組んでバージンロードを歩く時、どんな顔するんだろ。ちょっと意地
悪だけど、今から楽しみになってきちゃった」
京子の重ねての説明に、美也子は納得顔で含み笑いを漏らした。
自分の父親のことをすっかり『花嫁の父』扱いされて、晶は唇を噛みしめるしかなかった。
けれど、晶の恥辱はそれだけでは終わらない。
「荷物は私が片づけておくから、美也子は晶ちゃんをお風呂に入れてあげなさい。晶ちゃん、公園でお姉ちゃんたちにた
っぷり遊んでもらって汗をかいてるでしょうから」
一言も言葉を発することができずにいる晶の様子を面白そうに眺めながら、京子はさりげなく言った。
その言葉に、晶の表情が変わる。
それを見た京子は、横目で晶の様子を窺いながら、なんでもないことのように美也子に言った。
「それに、おしっこのおもらしが二回と、白いおしっこは数えきれなくくらい何度も失敗しちゃったんでしょ、晶ちゃん? 綺
麗に洗ってあげないと、おむつかぶれになっちゃうわよ。美也子の可愛い妹で、将来は貞淑なお嫁さんになってくれる晶
ちゃんのお尻が真っ赤に腫れちゃったら可哀想じゃない」
はっとしたような顔で晶は美也子の顔と京子の顔を見比べた。
「そうよ、私がママに話したの。荷物を運びながらもそうだけど、お出かけ先からも何度もメールでね。もちろん、サンドレ
ス姿の晶ちゃんや新しいお洋服を着た晶ちゃんの可愛らしい写真も添えてね」
美也子がすっと目を細めて頷いた。
「美也子から届いたメールの画像を初めて見た時、本当にびっくりしちゃったわ。晶ちゃんのことだから、女の子の格好を
させてもちっとも変じゃないだろうなとは思ってたけど、まさかと思うくらい可愛らしい女の子になっちゃってたから。晶ちゃ
んのご両親も目を丸くして驚いてらしたわよ。自分たちの高校生の一人息子が、まるで小学生の女の子になりきっちゃっ
たんだもの、それも無理はないけどね」
京子はそう言うと、改めて、廊下の上から晶の体をまるで無遠慮に眺めまわして続けた。
「美也子からのメールで前もって知っていたから晶ちゃんが玄関に入ってきた時もびっくりはしなかったけど、でも、こうし
て実際に見てみると本当に感心しちゃうわね。エプロンドレスがこんなに似合う高校生の男の子なんて、日本中を探しても
絶対いないでしょうね。それに、スカートの裾から見えるオーバーパンツの可愛いこと。美也子から聞いたんだけど、その
オーバーパンツの下、徹也君とかいうボーイフレンドにプレゼントしてもらった紙おむつなんですって? 知り合った日の内
に下着をプレゼントされるなんて、すみに置けないわね、晶ちゃん。このぶんだと、美也子もよっぽど頑張らないと、お嫁さ
んを徹也君に取られちゃうかもしれないじゃない。やれやれ、困ったことだこと」
口では「困ったこと」と言いつつも、まるで困ったような表情もみせず、京子はむしろひやかすように軽くウインクしてみせ
てから、更にこんなふうに付け加えた。
「私としてもいつまでも晶ちゃんのエプロンドレス姿を眺めていたいけど、せっかく女の子になったんだから、汗臭いままだ
と可哀想だものね。それに、おむつかぶれになっちゃったら見るだけで痛々しいし。もっとも、おむつかぶれで赤く腫れちゃ
ったお尻にお薬を塗ってあげるのも育児の楽しみの一つだったりするんだけど。私、子供が大好きで、何人でも子供が欲
しかったの。でも、いろいろ事情があって、美也子しかできなくて。しかも、その美也子がこんなでしょ? せめてもう一人は
可愛らしい娘が欲しくて欲しくてたまらなかったのよ。だから、本当、晶ちゃんがうちに来てくれて大喜びしてるの。育児の楽
しみをもういちど味わえるし、娘のために可愛いお洋服を選んであげる楽しみも味わえるんだもの、なんて幸せなのかしら」
京子は『育児の楽しみ』というところを妙に強調してそう言うと、すっと目を細めた。
そんなふうに目を細くして晶の様子を窺うところなど、いかにも似たもの母娘といったところで、晶は背筋に冷たいものが
走るのを止められないでいた。
「じゃ、荷物の整理はママにまかせて、晶ちゃんはお姉ちゃんがお風呂に入れてあげるわね。さっき白いおしっこをおもらし
しちゃったばかりだから、早くしないと、本当におむつかぶれになっちゃうもんね」
身を固くする晶の胸の内などまるで知らぬげに、美也子がくすっと笑って言った。
それを聞いた途端、京子が顔をぱっと輝かせて言う。
「あら、晶ちゃんたら、またおもらししちっゃてたの? 前もって私が買っておいてあげたハート模様の紙おむつを三枚も汚
しちゃった上に、ボーイフレンドにプレゼントしてもらった紙おむつまで汚しちゃうなんて、まるで赤ちゃんじゃない。でも、い
いのよ。そんな赤ちゃんの晶ちゃんだからこそ、育児の楽しみをもういちどたっぷり味わえるんだものね。ボーイフレンドに
プレゼントしてもらった紙おむつはまだパッケージを開けたところだし、私が買っておいてあげた紙おむつもまだたくさん残
ってるし、それに……」
それにと言いかけて、京子は意味ありげに微笑んで言葉を飲み込んだ。
「あ、あの紙おむつ……ハート模様の紙おむつ、叔母さんが買って……?」
京子が口を閉ざして一瞬の間が空いた直後、こわばった表情で晶が聞き返した。
「そうよ。あの紙おむつを用意したのはママなのよ。女の子修行の間、晶ちゃんを私の妹として育て直すんだったら、おむつ
離れしていない小っちゃな子供の時からやり直させた方がいいんじゃないかしらって。私は晶ちゃんのこと、小学生くらいの
年ごろの女の子として躾け直すつもりだったんだけど、ママが、どうせだったら、もっと小っちゃい年齢の頃の女の子として
の経験もさせた方がいいわよって。今になって思うと、ママの言う通りだったみたいね。だって、パンツでお出かけしてたら、
晶ちゃん、おもらしのたびにスカートまで汚しちゃってたに決まってるもの」
それ以上は何も言おうとしない京子に代わって、横合いから美也子が応えた。
自分を幼い女の子に仕立て上げることに熱心なのが美也子よりもむしろ京子の方だと知って、晶は、果てしない絶望感で
薄い胸をきりきりと締めつけられるような思いを抑えられなかった。
* * *
浴室に隣接する脱衣場。
オーバーパンツを引きおろされ、エプロンドレスを脱がされて、その下に着けていたスリップとジュニアブラも美也子の手に
よって脱がされた晶は、徹也がプレゼントしてくれた水玉模様の紙おむつだけの姿で、壁に填め込みになっている大きな鏡
の前に立ちすくんでいた。
ぽっちゃりした体型の幼児が紙おむつだけを身に着けている姿は見るからに可愛らしいが、華奢な体つきの晶が細っこい
腕を体の前で交叉して胸元を隠し、紙おむつだけの姿で立ちすくんでいる様子は、それを見る者の胸に限りない加虐感を掻
きたててやまないほどになまめかしく見える。
「そうやって恥ずかしそうにおっぱいを手で隠す仕種を覚えちゃうなんて、もうすっかり女の子ね、晶ちゃん。それで、この可
愛らしいぺったんこの胸にはどんなおっぱいが付いてるのかな。ほら、お姉ちゃんに見せてごらんなさい」
晶の体から剥ぎ取った洋服やインナーを脱衣篭にまとめて入れ、晶の目の前に立った美也子は、怯えた様子で身をすくめ
る晶の細い手首をつかむと、両手を強引に体の横におろさせた。
必死の面持ちで抵抗する晶だが、頭一つ背が高く引き締まった体をしている美也子にすれば、それこそ赤ん坊の手をひね
るようなものだ。
「うふふ、きれいなピンク色なんだね、晶ちゃんの乳首。そうよね、まだ小学生なんだもん、黒ずんでたりしちゃおかしいよ
ね。でも、あらあら、こんなにぴんと勃っちゃって。お姉ちゃんにおっぱいを見られて感じちゃってるのかな」
美也子は、晶の両腕を押さえつけ、あらわになった乳首を視線で嘗め回すように目を凝らして、甘ったるい声で言った。
「そ、そんな……」
両手を体の横にぴったり付けた格好で押さえつけられながらも、晶はその場から逃れようと身をよじった。
その力なくもがく弱々しい様子が却って美也子の加虐的な欲情を刺激する。
「姉妹の間でなにをそんなに恥ずかしがってるのかしら、晶ちゃんたら。なかなかおっぱいが大きくならない妹のことが心
配で様子を確かめてあげているんだから、少しの間くらいおとなしくしてなさい」
美也子はなんとも表現しようのない笑みを浮かべてぴしゃりとそう言うと、自分の顔が晶の胸元と高さが同じなるようゆっ
くり腰をかがめて、上下の唇の間から真っ赤な舌を突き出した。
「や、やだ……そんなことしちゃやだってば……」
美也子が何をしようとしているのか理解した晶は、幼児がいやいやをするように激しく首を振って、尚も身をよじった。
「ほら、おとなしくなさいったら。晶ちゃんのピンクの乳首がどれだけ感じやすいのか調べてあげるんだから。それを調べる
ためには指よりもこっちの方が柔らかくて敏感だからいいのよ」
美也子は晶の両腕を自分の肘の内側で押さえつけ、両手の指を晶の背中で組んで引き寄せた。
ぴんと勃ったサーモンピンクの乳首がすぐ目の前に迫る。
美也子の真っ赤な舌が延びて、右の乳首に触れた。
「ひっ!」
晶の口から悲鳴じみた喘ぎ声が漏れて、体中がぶるっと震える。
「うふふ。可愛い声で啼くのね、晶ちゃん。それに、とっても感度が良さそうだこと。さ、その可愛い声をもっとたくさんお姉ち
ゃんに聞かせてちょうだい」
いったん晶の乳首から舌を離した美也子はねっとり絡みつくように言って、今度は左の乳首を舌の上にそっと載せた。
「んぅ……」
何かを我慢するような切なげな喘ぎ声が晶の口を衝いて出る。
「いいわよ、その調子でもっと啼くのよ。ほら、これでどう?」
美也子は、舌の先で左の乳首をころころと転がした。
「はぁ、んふぅ」
晶の口から熱い吐息が吹き出して、体がのけぞった。
体がのけぞったせいで、いやでも乳首が美也子の舌にますます強く押し当てられる。
「あらあら、随分と積極的だこと。そう、晶ちゃんは乳首が感じやすいかどうか調べて欲しいだけじゃなくて、お姉ちゃんに
たっぷり可愛がってもらいたいのね。いいわよ。可愛い妹のおねだりだもの、お姉ちゃんがたっぷり可愛がってあげる。そ
の代わり、晶ちゃんは可愛い声でもっと啼くのよ。いいわね?」
舌の上に晶の乳首を載せているせいで少しくぐもった声になりながらも美也子はにっと笑ってそう言うと、それまで舌の
先で転がしていた乳首を口にふくんで優しく吸った。
「や! やぁぁぁ!」
晶の体がますます大きくのけぞって、まるで言葉にならない喘ぎ声が脱衣場の空気を震わせる。
「私のお嫁さんになるまでの女の子修行と花嫁修行の間に、もっともっと乳首を感じやすくしておこうね。結婚してすぐは無
理だけど私がチームの中で安定したポジションを取れるようになったら、その時は子供も欲しいよね。生むのは私で仕方
ないけど、育てるのは晶ちゃんの役目よ。だって、私が旦那様で晶ちゃんがお嫁さんだから、子供からすれば、私がパパ
で晶ちゃんがママになるんだもの。晶ちゃんのぺったんこの胸じゃお乳は出ないから哺乳壜で粉ミルクってことになるけど、
いつもいつも哺乳壜だけじゃ赤ちゃんが可哀想だもの、お乳が出なくてもいいから、自分のおっぱいを吸わせてあげる習慣
も身に付けておくのよ。いいわね? 赤ちゃんがお腹を空かせて泣き出したら、まずママである晶ちゃんのおっぱいをふくま
せてあげるのよ。その後、哺乳壜で粉ミルクを飲ませてあげるようにするの。母子のスキンシップが一番大事だってこと、晶
ちゃんも知ってるよね? そのために、今からおっぱいを感じやすくしておくのよ。そうすれば、赤ちゃんに吸ってもらった時
とても気持ちいいから、赤ちゃんの口に自分のおっぱいをふくませるのを絶対に忘れなくなるから」
こちらも洋服と下着を全て脱ぎ去ってしまい一糸まとわぬ姿の大柄な美也子が、水玉模様の紙おむつだけを身に着けた
晶の体を抱きすくめ、まるで膨らみのないおっぱいの乳首をちゅうちゅうと音を立てて吸っている姿は、形容のしようがない
ほど悩ましく淫靡で、これ以上はないほど淫らな欲情をかきたてる光景だった。
それからしばらくピンク色の乳首を唇と舌で責めた後、美也子は、晶の背中を抱きすくめていた手をそろりとおろし、右
手の人差指と中指を紙おむつの上からお尻の穴のあたりに這わせた。
吸収帯の上からも、ひくひくといやらしく蠢く膨らみがはっきりわかる。それが、乳首をなぶられて我慢できずにいきり勃
たせてしまったペニスなのは言うまでもない。
美也子は晶の乳首から静かに口を離した。
乳首が美也子の唾液に濡れ、蛍光灯の光をてらてらと反射する。
「乳首だけじゃなくて、おちんちんまでびんびんになっちゃってるじゃない、晶ちゃん。いくら感じやすい方がいいったって、
ちょっとはしたないんじゃないかしら。このぶんだと、赤ちゃんにおっぱいをふくませてる間もおちんちんを大きくしちゃいそ
うね。ほんと、なんて淫乱でなんていやらしいママなのかしら。それに、庭先で白いおしっこを出させてあげたばかりだっ
ていうのに、またこんなに大きくしちゃって、なんて堪え性のない女の子なのかしら」
晶の乳首から口を離した美也子はすっと腰を伸ばし、右手で紙おむつの膨らみを揉みしだいた。
「くぅん……」
晶は、今度は体をのけぞらせるのではなく、美也子に体重を預けるようにもたれかかって、生まれたての仔猫みたいな声
を漏らした。
美也子が押さえつけていた手を緩めると、それまで体の横にぴったり付けていた両腕を伸ばし、美也子の背中に巻き付け
ると、真っ赤に上気した顔を胸元に押しつけ、何度も頬をこすりつける。
「そう、そんなに気持ちいいの。おっぱいをいじってもらった後おちんちんをいじってもらうのがそんなに気持ちいいの。晶ち
ゃん、おちんちんもおっぱいもお尻の穴も、どこもかしこもが感じやすいんだね。いいわよ、お嫁さんになってくれたら全部を
たっぷり可愛がってあげる。夜通し、これでもかってくらい可愛がってあげる」
美也子は晶の耳朶に熱い吐息を吹きかけながらそう言った。
晶が、せがむようにますます強く美也子の胸に頬をこすりつける。
と、美也子が不意に意地悪そうな笑みを浮かべ、晶のペニスを揉みしだく指の動きを止め、右手をさっと紙おむつから離し
てしまった。
「え……?」
急に手が離れたことを知った晶は、豊かな胸に頬を押し当てたまま、上目遣いに美也子の顔を見た。
「あら、どうしたの? 私がおちんちんをいじると、晶ちゃん、やだやだって泣き喚いてたでしょ? 可愛い妹の泣き顔なん
て見たくないからおちんちんをいじるのをやめてあげたんだけど、それがどうかしたかしら?」
晶の瞳に明らかな失望の色が浮かぶのを見て取った美也子は、顔に浮かべた表情そのまま少し意地悪な口調で言っ
た。
「……」
それに対して、晶は返す言葉がない。その代わり、顔いっぱいに失望の色が広がってゆく。
美也子はしばらくの間、口をつぐんでいた。
口をつぐんで待ち、何かを訴えかけようとして晶の唇が微かに動いた瞬間、
「して欲しいんでしょう? 気持ちのいいこと、もっとして欲しいんでしょう? ちゃんと最後までいかせて欲しいんでしょう?」
と、部屋で晶に女児用のショーツを穿かせて初めてペニスをなぶった時に口にした言葉をそのまま再現して言った。
「やめ……ないで。……お願いだから……」
もうこれ以上は目を合わせていることができず、晶は美也子の胸に顔を埋めて、くぐもった声で弱々しく懇願した。
「だーめ。そんなおねだりの仕方じゃ、お願いはきいてあげない。もっと大きな声でお願いしなきゃいけないでしょ?」
美也子は再び部屋で言った言葉を繰り返した。
「……お、お願いだから、あ、晶に気持ちのいいことしてください。……このままだったら晶、変になっちゃうから、だから、ち
ゃんとしてください。お願いだから……お姉ちゃん」
こちらも部屋での懇願そのまま、晶はすがるようにして言う。
「うん、わかった。せっかくの可愛い妹のおねだりだもの、優しいお姉ちゃんとしては放っておけないわよね。じゃ、気持ちの
いいことを続けましょう。ただし、紙おむつの中はもう庭先での白いおしっこのおもらしでべとべとに汚れちゃってる筈だから、
おむつを外して続きをしようね。その方がおちんちんも窮屈じゃなくていいでしょ?」
美也子は妖しく瞳を輝かせてそう言うと、紙おむつに向かって両手をすっと伸ばした。
京子が前もって買っておき美也子の手で晶の下腹部を包み込んだハート模様の紙おむつとは違って、徹也が晶にプレ
ゼントした水玉模様の紙おむつは、パンツタイプではなく、前部をテープで留めるタイプだった。美也子はそのテープを力
まかせに手前に引いた。
テープを剥がす無機質な音が脱衣場に響き渡って、晶は、自分の下腹部が紙おむつに包み込まれていることを改めて
思い知らされる。
前部に合計で四枚付いているテープが外れ、晶が両脚を広げぎみにすると、紙おむつがパサッと音をたてて脱衣場の
床に落ちた。と同時に、それまで紙おむつの中で窮屈そうにしていたペニスがいきり勃ち、晶の股間で鎌首をもたげる。
ペニスの先から、強引にお尻の方へ折り曲げて押さえつけられていたせいで完全には放出されなかった残りの精液が
とろりと溢れ出て、晶の両脚の間に落ちた紙おむつの上につっと滴り落ちた。
それを見た美也子はその場に膝立ちになると、床に落ちた紙おむつを拾い上げ、まだとろとろと精液の雫を滴らせている
ペニスの先にかぶせて何度か前後に動かし、残っている精液を搾り取るようにして綺麗に拭きあげた。
「や……!」
ただでさえぎりぎりのところで踏みとどまっているところにペニスの先を紙おむつで撫でさすられて、晶はなまめかしく喘
いで身をよじってしまう。男性の象徴であるペニスをいたぶられているというのに、その喘ぎ声は女の子めいて、身をよじる
仕種は、秘部をまさぐられて痴態をさらす少女そのままだ。
「まだよ。まだ我慢なさい。お風呂場でもっともっと気持ちのいいことをしてあげるから」
美也子は、自分の胸に顔を埋めて感きわまったように首を振る晶の耳元に、それこそ幼い妹をあやすように囁きかけ、
内側に精液がべっとり付着した紙おむつをようやくペニスから引き離すと、再びすっと立ち上がり、晶の背中を右手で優しく
撫でさすった。
「さ、これでいいわ。じゃ、お風呂場に行きましょうね。気持ちのいいことをしてから、何度もおしっこを失敗しちゃった晶ちゃ
んのここを綺麗に洗ってあげる」
一糸まとわぬ身で、晶が胸元に頬をこすりつけるたびに乳房を刺激され、今や自分も乳首をぴんと勃てて、美也子は紙
おむつをくるくると丸めながら息を弾ませ、左手で晶の股間をさわっと撫でた。
顔だけでなく体中を熱くほてらせて互いに抱き合う美也子と晶の姿は、しっかり者の姉と一人では何もできない幼い妹
以外の何者でもなかった。ただ、幼い妹である筈の晶の股間でいきり勃つ醜悪な肉棒を除いては。
浴室にはバスチェアが二つ並べて置いてあった。
だが、一方のバスチェアにお尻を載せた美也子は、晶にもう一方のバスチェアを使わせることなく、自分の太腿に晶の
お尻を載せさせて横抱きにした。
美也子が膝を上げ、太腿を下げぎみにすると、横抱きにされた晶は自分の体をいやでも美也子の体にもたせかける格
好になってしまう。身長は美也子の方が頭一つ高いのだが、こんな座り方をすると、美也子の太腿にお尻を載せている
ぶん晶の見かけの座高が高くなって、二人の胸元どうしがちょうど同じくらいの高さになった。
「ほら、見てごらん。晶ちゃんとお姉ちゃん、こんなにおっぱいの大きさが違うのよ。でも、仕方ないよね。お姉ちゃんは高
校二年生だけど、晶ちゃんはまだ小学五年生だもの。まだおっぱいがぺたんこで、ジュニアブラがぶかぶかでも仕方な
いよね。だけど、心配することはないのよ。晶ちゃんの乳首、とっても感じやすいもの、すぐにおっぱいも大きくなるわよ」
美也子は、くすくす笑いながら浴室の鏡を指で差し示した。
鏡には、大柄な美也子と、美也子の太腿にお尻をちょこんと載せて座っている小柄な晶、二人の姿が微かに湯気にぼ
やけながらもくっきり映っている。ぴんと張りのある豊かな乳房の持ち主である美也子に対して、僅かな膨らみも見当たら
ない薄い胸板にピンクの乳首をこりこりに固くして勃たせている晶。女性らしく丸みを帯びたシルエットながら引き締まった
体つきの美也子に対して、なで肩で全体に線が細く華奢な体つきの晶。180センチを越える身長の美也子に対して、美也
子の太腿の上に座らされてようやく座高が一緒になるほどに背の低い晶。全てを自分の企み通りに進めてゆく美也子に
対して、美也子のなすがままにされるしかない晶。鏡に映った二人は、性別も年齢も何もかもが逆転してしまった、奇妙で
対照的な存在だった。
美也子に促されて鏡をちらと見た晶だが、自分のあまりにも惨めな姿に、すぐに目を伏せてしまう。
けれど、それもほんの束の間のことだった。
うなだれる晶の耳元に美也子が
「そうだ、おっぱいを大きくするためにマッサージをしてあげようか」
と言って両手で左右の乳首を包み込んだため、びくんと体を震わせ、思わず両目を大きく見開いてしまったのだ。
「年ごろの女の子は放っておいてもおっぱいが大きくなってくるもんだけど、形とかを気にするなら、ちゃんとお手入れをし
なきゃいけないのよ。お肌はつるつるにしとかなきゃいけないし、綺麗な形のおっぱになるようバストアップのマッサージを
しなきゃいけないし。それに、小学生の晶ちゃんにはまだ早いかもしれないけど、もう少し大人になったら乳癌の心配もし
なきゃいけなくなるし。乳癌を早くみつけるためには、毎日自分のおっぱいをマッサージする習慣をつけておくといいのよ。
毎日マッサージをして、変なしこりがないかどうか気をつけるの」
美也子はそう言いながら、掌の腹で晶の乳首の先をこりこりと撫でまわし、五本の指で乳首のまわりを揉みしだいた。
それが決して口で言っている通りのバストアップのマッサージなどでないことは晶にもわかる。ぴんと固く勃った乳首を刺
激して晶の下腹部を更に疼かせるための淫らな行為だということは明白だ。けれど、その手から逃れることはかなわない。
圧倒的な体格の差がある上に、羞じらいの表情を浮かべながらも、どこかうっとりした目つきで、晶自身がその淫らな行為
を受け容れてしまっているのだから。
「でも、本当にいいのは、一緒に住んでいる愛する人に調べてもらうのが一番らしいわ。自分じゃついついおざなりになっち
ゃうかもしれないけど、恋人とか旦那様だったら、心をこめてパートナーのおっぱいをマッサージしてくれるから見落とす心
配が減るんだって。だから、晶ちゃんのおっぱいはこれから毎日、私がマッサージしてあげる。ぺったんこのおっぱいが早
く大きくなるように、それと、大事な晶ちゃんが乳癌にかかってないかどうか調べるために。今日からずっとお風呂は二人一
緒に入るのよ。でもって、お姉ちゃんのお膝の上にお座りしておっぱいをマッサージしてもらうのよ。毎日そうすること、忘れ
ないって約束できるわね?」
晶が体をすり寄せてくる様子を満足げな表情で窺いながら、美也子は有無を言わさぬ口調で言った。
「や、約束する。……約束するから、最後まで……最後までやめないでね。お願いだから、お姉ちゃん。晶のこと、最後まで
イかしてちょうだいね、お姉ちゃん」
際限なく高まってくる下腹部の疼きに我を忘れたかのように、晶は甘えた声でおねだりを繰り返した。
「そう、ちゃんと約束できるの。本当にお利口さんで可愛い妹だわ、晶ちゃんは。御褒美にちゃんと最後までイかせてあげ
るわね。それに、さっさと済ませちゃうんじゃなしに、なるべく長いこと楽しませてあげる。気持ちのいいことは少しでも長い
方がいいもんね?」
美也子は含み笑いを漏らしてそう言うと、言葉とは裏腹に、晶の胸を揉みしだく手をぴたっと止めた。
「お、お姉ちゃん……?」
脱衣場に於いて絶頂を迎える寸前に美也子の手がペニスから離れた時の失望感がありありと甦ってくる。晶は、助けを
求めるような潤んだ瞳で美也子の顔を凝視した。
「大丈夫、ちゃんと最後までしてあげるから、そんな泣きそうな顔はしなくていいわよ。こうやっておっぱいをマッサージする
だけじゃ味わえないようなもっともっと気持ちのいいことをしてあげるから心配しなくていいの」
美也子は幼児をあやすように言うと、鏡の脇に置いてある、シャンプーやリンスの容器が並んだ小物台に手を伸ばして、
一見したところでは帽子みたいにも見える何やら円形の物をつかみ上げた。
「今から体中を綺麗に洗いながら気持ちのいいことをしてあげる。頭も洗ってあげるから、ほら、これをかぶってちょうだい」
美也子は晶の髪を結わえているカラーゴムを二本とも手早く外し、その代わりにとでもいうふうに、小物台から取り上げた
円形の帽子みたいな物を晶の頭にすっぽりかぶせた。
「ほら、こうしておけば頭を洗う時、シャンプーがお目々に入らずにすむでしょ? 小っちゃい子は大人に頭を洗ってもらう
時、こうやってシャンプーハットをかぶせてもらうのよ。晶ちゃんの大きなお目々にシャンプーが入って痛い痛いって泣いち
ゃったら可哀想だもんね」
そう、美也子が晶にかぶらせた物は、幼児が頭を洗ってもらう時にシャンプーやシャワーの湯が目に入るのを防ぐために
頭にかぶるシャンプーハットだった。それも、何重ものプリーツになった幅の広い縁や頭にかぶる中心部分が薄いピンク色
で、可愛らしいアニメキャラをあしらった、小さな女の子用のシャンプーハットだ。
大柄な美也子の脚の上に座って頭にピンクのシャンプーハットをかぶり、どこかきょとんとした顔つきをする晶の姿は、小
学生の少女どころか、まだ幼稚園にあがるかあがらないかといった年ごろの幼い女の子そのままだった。
「は、恥ずかしい。……晶、小っちゃい子じゃないのにシャンプーハットだなんて、とっても恥ずかしいよぉ」
おそるおそる鏡に目を向けた晶は、鏡に映る自分の姿を確認するなり、どこか甘えたような声で言って弱々しく首を振った。
「うふふ、恥ずかしいよね。晶ちゃんは小っちゃい子なんかじゃないよね。もう小学五年生のお姉ちゃんなんだもん、シャ
ンプーハットなんて恥ずかしいよね」
美也子は、「小学五年生のお姉ちゃんどころか、本当は高校二年生のお兄ちゃんなのにね」という意味を言外に匂わて
言い、晶の羞恥をくすぐってうっすらと微笑んだ。
「でも、晶ちゃんはいつまでも私の可愛い妹なのよ。お外では徹也お兄ちゃんとデートする小学五年生のお姉ちゃんだけ
ど、お家の中じゃお姉ちゃんがいないと一人じゃ何もできない甘えん坊の小っちゃな妹のままでいいの。だからお姉ちゃん
が体を洗ってあげるし、頭も綺麗綺麗してあげるの。だったら、シャンプーハットのこと、そんなに恥ずかしがらなくていい
んじゃないかな? それに、私たちに子供ができて、赤ちゃんが大きくなって一人でお座りできるようになったら、今度はマ
マの晶ちゃんが子供の頭を洗ってあげることになるのよ。その時、どんなふうにして洗ってあげれば子供が嫌がらないか、
それを身をもって体験しとくのも必要なことなんじゃないかしら」
そう諭すように言った美也子は、晶の返事を待とうともせずにシャワーのコックを捻った。
「きゃっ!」
不意にシャワーの湯を頭から浴びて、晶は驚きの悲鳴をあげた。今や、咄嗟の悲鳴も女の子そのものだ。
「ほら、シャンプーハットをかぶっていてよかったでしょ? かぶってなかったらお湯がお目々に入って、今ごろ晶ちゃん、
えんえん泣きじゃくってたかもしれないんだから」
美也子は尚も晶の頭の上からシャワーの湯を浴びせかけながら恩きせがましく言い、しばらくそうしておいてから、シャ
ンプーの容器を持ち上げた。けれど、それはいつも美也子が使っているシャンプーではなく、赤ん坊や幼児の敏感な肌に
合わせた成分でできたベビーシャンプーだった。まだ容器が真新しいところをみると、晶のために京子が買っておいた物
に違いない。
「でも、シャンプーハットをかぶっていても絶対に大丈夫ってわけじゃないから、シャンプーの泡が入らないよう、お目々を
ぎゅっとつぶっていてね。お姉ちゃんが綺麗綺麗してあげるから、その間おとなしくしているのよ」
今度も晶の返事を待とうともせず、晶のことをすっかり幼い妹扱いしている態度をありありとしめして、美也子は容器のノ
ズルを押し、掌に受けたシャンプーを晶の髪になじませて、優しく両手を動かし始めた。
美也子が両手を動かすたびに、敏感な肌にも優しいという謳い文句通り、きめの細かい泡が無数に湧きたって、晶の頭
をあっという間に真っ白な泡で包み込んでしまう。
やがて純白の泡はシャンプーハットのツバを越え、その縁からぽたぽたと滴り落ちるまでに増えた。
シャンプーハットから滴り落ちた泡は晶の太腿を濡らし、そのまま両脚の肌を伝い落ちて、美也子の下半身をもうっすら
と白く染めてゆく。
「さ、シャンプーはこのくらいでいいかな」
充分に泡だったシャンプーの様子を見て美也子は独り言めかして呟くと、今度は、ボディソープの容器と柔らかなスポン
ジを持ち上げた。ボディソープも、シャンプーと同様、京子が晶のために買い揃えていたに違いないベビーソープだ。
「シャワーで流すのは後にしてこのまま体も洗っちゃうから、もう少しの間おとなしくしているのよ。あ、でも、このままだと洗
いにくいところがあるから、お姉ちゃんのあんよからおりて自分で立っちしてちょうだいね。いつまでもお姉ちゃんに甘えてい
たいでしょうけど、少しの間だけだから我慢できるよね」
美也子は羞恥を煽るようにわざと幼児言葉でそう言うと、晶を自分のすぐ目の前に立たせて、ベビーソープをスポンジにし
み込ませた。
「まだお目々を開けちゃ駄目よ。今お目々を開けたらシャンプーの泡が入っちゃうから、ぎゅっと閉じたままにしてるのよ。で
も、お目々を閉じたままだと転んじゃうかもしれないから、ほら、お姉ちゃんの体につかまっているといいわ。うん、そうそう。
そうやって、ころんしちゃわないようにしておこうね。そうよ、あんよはお上手よ、晶ちゃん」
美也子は晶の手首をつかんで自分の腰のあたりにつかまらせ、まるで伝い立ちができるようになったばかりの幼い子供を
褒めるように言った。
初めて足を踏み入れる美也子の家の浴室。目を閉じたままでどこに何が置いてあるかもわからず不安で胸がいっぱいに
なる中、まだあんよもおぼつかない幼児のような扱いを受ける屈辱も忘れて、美也子の体にしがみつくしかなかった。
美也子は、自分に頼りきってすがりつく晶の様子に相好を崩し、満足げに頷くと、ベビーソープをしみ込ませたスポンジを晶
の首筋に押し当てた。
首筋から細い肩、華奢な背中から薄い胸板、男の子のわりに腰骨の張ったウエストまわりと、スポンジを持った美也子の手
が動くのに合わせて、晶の体がきめの細かい純白の泡に包まれてゆく。
やがて晶の全身を真っ白な泡まみれにしてしまうと、次に美也子は自分の下半身にスポンジを押し当て、両脚の付け根
から膝のすぐ上までを泡で包み込んでから、ようやく手の動きを止めた。
「さ、もっと体を近づけてごらん。晶ちゃんがお待ちかねだった気持ちのいいことをしてあげるから」
スポンジを小物台に戻した美也子は、晶の背中に両腕をまわして、それまでも自分の体にしがみついている晶の体をぐ
いっと抱き寄せた。
と、美也子が両脚を開きぎみにして立っていたため、いきり勃つ晶のペニスが、美也子の両脚の間に割って入るような格
好になって、そのまま左右の脚に挟みこまれてしまう。これで二人の背の高さが同じくらいだったら性器どうしが触れ合うと
ころだが、実際には頭一つ以上も身長差があるため、美也子の脚の付け根のすぐ下に割って入る結果になったのだった。
「ん……」
もういつ絶頂を迎えてもおかしくないほどにエレクトしているペニスを美也子の両脚の間に挟み込まれて、晶は感きわまっ
たような喘ぎ声を漏らした。
これまで女性の裸体を見たこともない晶にとって、美也子の豊かな乳房を目の当たりにするだけでも下腹部がうずうずし
て仕方ない。それが、一糸まとわぬ姿の美也子がまるで警戒する様子もないどころか、むしろ晶をそそのかすようにして目
の前に立ち、しかも、ベビーソープのきめのこまかい泡にまみれたつるつるの両脚の間にペニスを挟み込んで晶の体を抱き
締めているのだからたまらない。
「どう、気持ちいいでしょ? 私、チームで安定したポジションを獲るまでは絶対に子供をつくりたくないの。だから、晶ちゃん
と結婚しても、普通の男の人と女の人がするようなセックスは当分の間お預けよ。幾ら避妊していても、万が一っとこともあ
るからね。そんなつまらない間違いで妊娠しちゃって、レギュラーの座をつかむ前に現役から外されるなんてことになっちゃ
たまらないもの。だいいち、晶ちゃんがお嫁さんで私が旦那様になるんだから、意識して子供をつくろうって決心を固めた時
以外は普通のセックスなんて変だしね。そうよ、結婚したら晶ちゃんがネコで私がタチ、そういう立場なのよ。でも、晶ちゃん
だって本当は若い男の子。たまにはちゃんと性欲を発散させてあげなきゃいけないわよね。そんな時は、今みたいにしてあ
げる。今みたいに、両脚の間に晶ちゃんのおちんちんを挟んで気持ちよくさせてあげる。部活の中でもエッチなことに一番詳
しい子に教えてもらったんだけど、こういうの、素股って言うそうね。さ、びんびんに大きくなっちゃったおちんちん、初めての
素股で可愛がってあげるわね。私のお嫁さんになったら、こんな気持ちいいこともしてもらえるのよ。今から楽しみでしょう?」
想像したこともなかった快感に思わず体をのけぞらせてしまう晶に向かって真っ赤な舌をちろと突き出してみせてそう言う
美也子の姿は、真っ赤な目を潤ませていやらしく蠢く、どこか白蛇めいた淫らさに満ちていた。
晶の息遣いが一瞬のうちに荒くなる。
けれど、美也子の淫らな行為はそれだけでは終わらなかった。美也子は、体をのけぞらせる晶の背中を左手で抱き寄
せながら、右手を晶の後頭部に移して、こちらも力まかせに引き寄せると
「さっきは私が晶ちゃんのおっぱいを吸ったけど、今度はそのお返しに、お姉ちゃんのおっぱいを吸わせてあげる。晶ちゃ
んが赤ちゃんにおっぱいを吸わせてあげる時、赤ちゃんはどんなふうにママのおっぱいを吸うのか、それも自分で経験し
ておくのが一番だものね。さ、いらっしゃい。晶ちゃんみたいなぺったんこのおっぱいじゃない、ちゃんと膨らんだおっぱい
がどんなものなのか、ゆっくり味わうといいわ」
と笑い声で言い、自分の乳首を晶の唇に押し当てたのだ。
晶は拒んだが、美也子の手から逃れることは到底かなわない。
張りのある乳房の先端にぴんと勃った乳首が晶の唇を強引にこじ開けるようにして口の中に入ってくる。
「んぐ……」
豊かな乳房を顔に押しつけられる息苦しさに、晶はくぐもった喘ぎ声をあげた。
その時の唇と舌の動きが乳首を刺激して、美也子の顔にうっとりしたような表情が浮かぶ。
「んふぅ、おっぱいを吸われるのがこんなに気持ちいいものだなんて今までちっとも気がつかなかったわ。部活の合宿な
んかで冗談半分に女の子どうしおっぱいをいじり合ったりするけど、さすがにこんなのは初めて。すっごく気持ちいいのね、
こういうのって。私が吸ってあげた時、晶ちゃんがいやらしいよがり声をあげちゃったけど、今ならその理由もわかるような
気がするわ。結婚したら、二人でおっぱいの吸い合いっこをしようね。晶ちゃんが私のおっぱいを吸っていい気持ちにくして
くれたら、その御褒美に今度は私が晶ちゃんのおっぱいを吸ってよがり声をあげさせてあげる。これでますます楽しみが
増えて、私のお嫁さんになるのがいよいよ待ち遠しくなってきたでしょ、晶ちゃん? でも、気持ちいいことはこれだけじゃな
いのよ。今日は晶ちゃんが私の妹になってくれた特別の記念日だから、もっともっと気持ちのいいことをしてあげる。今日は
晶ちゃんの女の子修行が始まった大事な日だから、もっともっと気持ちよくさせてあげるわね」
こちらも幾らか息遣いを荒げて美也子は言いながら、晶の背中を支えている左手をそっと下におろした。
強引に咥えさせられた乳首に晶の意識が集まっている隙に、美也子の左手は、純白の泡にまみれたお尻に触れた。美
也子はそのままじわじわと掌をお尻の丸みに沿って這わせ、お尻の穴に指先が触れると、中指の腹で肛門の縁を円を描
くように何度か軽くくすぐってから、人差指を菊座に突き立てた。
「あむ……」
思いがけない美也子の行為に、再び晶の体がびくんとのけぞる。
けれど美也子は晶の後頭部を押さえつける右手に力を入れて、乳首から口を離させない。
「晶ちゃん、お尻も感じやすいんだったよね。紙おむつの上からだとちゃんと可愛がってあげられなかったけど、今なら裸
だから、たっぷりいじってあげられるわよ。それに……」
自分も乳首を吸われて上気した顔にうっとりした表情を浮かべながら、美也子は甘ったるい声で言って、晶の菊座に突き
立てた人差指に力を入れた。
「それに、今はスムースに指が入るものね。ほら、駄目よ、そんなにお尻に力を入れちゃ。緊張しないで、余分な力を抜いて
ごらんなさい」
ベビーソープのきめの細かい柔らかな無数の泡が指のまわりに柔らかな膜をつくって、緊張のあまり肛門を固く閉ざす晶
のお尻の穴にさほど抵抗なく人差指が吸い込まれてゆく。ちょうど、上質のローションをたっぷりつけたようなもので、晶もあ
まり痛みは感じていないだろう。
美也子は、同じ部活で一番の耳年増という噂の同級生からいつか聞かされた「お尻ってさ、何かが入ってくる時よりも、お
尻の穴に入った物が抜けてく時に一番刺激を受けるんだって」という言葉を思い出して、第一関節まで差し入れた人差指を
少し鈎型に曲げてじわっと引き抜いた。
途端に晶の下腹部が震え、膝ががくんとなる。
「やっぱり、晶ちゃん、お尻も感じやすいのね。いいわ。今日は特別な記念の日だから、もっともっと可愛がってあげる。ど
うせだから、気持ちいいことしながら、体の外も中も綺麗にしちゃいましょう。ほら、こうやって指を動かし続ければ、ベビー
ソープの泡がどんどんお尻の穴に入ってくわよ。この真っ白な泡で、お尻の穴の中も綺麗にしちゃおうね。可愛い晶ちゃん
には、体の外も中もどっちも綺麗でいてほしいもの。お姉ちゃんが晶ちゃんのこと綺麗綺麗してあげてる間、晶ちゃんはお
姉ちゃんのおっぱいを吸っていていいからね。ぐずったりむずがったりしないよう、お姉ちゃんのおっぱい、たっぷり吸ってい
いんだからね」
目の下の涙袋をうっすらと赤く染め、あやすように言って、美也子は晶のお尻の穴に突き立てた人差指を何度も差し入れ
たり引き抜いたりを繰り返した。
美也子の指が出たり入ったりするたびに、ベビーソープの純白の泡がお尻の穴に流れ込み、微かに色づいた液体にな
ってじくじく滲み出しては、晶の脚の付け根から膝の裏側を伝って浴室の床に滴り落ちる。
美也子は人差指でお尻の穴を責めながら、自分の両脚の内腿をきゅっきゅっと擦り合わせた。
そのたびに、美也子の両脚の間に挟み込まれた晶のペニスが揉みしだかれる。
「いや……いやぁ!」
想像もつかない下腹部の疼きに、美也子の乳首を口にふくんだまま、晶は甘えるような仕種で首を振った。
その拍子にシャンプーハットのツバから滴り落ちた泡が美也子の首筋を濡らして乳房の表面を伝い流れ、乳首に達した
かと思うと、乳首を咥える唇を伝って晶の口の中に流れ込んだ。
きめの細かい柔らかく真っ白な泡が乳首を伝って口に中に流れ込んだ瞬間、晶は、美也子の乳房から母乳が迸り出た
ような錯覚にとらわれた。もちろん、妊娠などしていないしセックスの経験さえない美也子の乳房から母乳が溢れ出る筈が
ない。それに、シャンプーの苦みの強い味は母乳とはまるで別物だ。けれど、力まかせにむしゃぶりつく乳首から唇を伝っ
て口の中に流れ込んだきめの細かい無数の泡の柔らかでまろやかな感触は、憶えている筈のない、赤ん坊の頃に母親の
乳房を無心に吸ってむさぼり飲んでいた母乳の感触と、晶の頭の中で確かに重なり合ったのだった。
美也子が強引に後頭部を押さえつけるまでもなく、晶は自ら進んで豊かな乳房に顔を押しつけ、もうそれ以外のものは意
識の外に追いやってしまいでもしたかのように、それまでよりもずっと激しく美也子の乳首をちゅうちゅうと音をたてて吸い始
めた。
「そうよ、それでいいのよ。お姉ちゃんのおっぱいをたっぷり吸いなさい。気がすむまで、いつまでもいつまでも吸っていてい
いのよ。うふふ、お姉ちゃんのおっぱいを吸ってくれる晶ちゃん、なんて可愛いのかしら。一人じゃ何もできなくて、いつまで
もおむつ離れできない上にいつまでも乳離れできない小っちゃな赤ちゃんなのよ、晶ちゃんは。お出かけする時は小学五年
生のお姉ちゃんだけど、お家の中じゃ、幼稚園にもあがっていない小っちゃな妹なのよ、晶ちゃんは。赤ちゃんの妹だから、
ずっとずっとお姉ちゃんに甘えていていいのよ。赤ちゃんだから、おむつもお姉ちゃんが取り替えてあげる。赤ちゃんだから、
むずからないよう、お姉ちゃんがおっぱいを吸わせてあげる。いいわね? 晶ちゃんは赤ちゃんに戻って一から女の子に生
まれ変わるのよ。女の子に生まれ変わって、今度はお姉ちゃんの可愛いお嫁さんになるのよ。お嫁さんになって、子供がで
きたら、今度は優しいママになるのよ。その間中、ずっとずっと私が晶ちゃんのことを守ってあげる。だって、私は晶ちゃんの
お姉ちゃんで、晶ちゃんの旦那様だもの。晶ちゃんはずっとお姉ちゃんだけのもの。誰にも渡したりしないんだからね」
美也子はますますうっとりした表情を浮かべて、人差指をさっきよりもずっと深く晶のお尻の穴にずぶっと差し入れ、直腸
の中の様子をさぐるようにくねくねと動かした。
と、腸壁を通して指先に触れるものがあった。
(あ、これかな。これが、エッチなことに詳しい子が言ってた『前立腺』とかいうやつなのかな。これをいじってあげたら男の
子は誰だってすごく気持ちがよくなるそうよって教えてくれた前立腺なのかな。うふふ、小っちゃな妹の晶ちゃんも本当は
私と同級生の男の子だもん、たまには男の子として悦ばせてあげなきゃね)
限りなく高ぶる欲情で胸をいっぱいにしながら、美也子は、前立腺とおぼしき器官の表面を腸壁を通して人差指の腹で
撫でさすった。
途端に、瘧にでもかかったように晶の体がぶるぶる震え、膝から力が抜けて、美也子が体を支えてやらないと倒れてしま
いそうになる。
(あらあら、すごい効き目だこと。これなら、晶ちゃんが聞き分けのよくない悪い子になっちゃった時、言うことをきかせるの
に使えそうね。そうだ、お風呂からあがったら、早速ママにも教えてあげようっと)
予想以上の効果に美也子は満足そうに頷くと、それ以上は前立腺をいじるのをやめ、鈎型に曲げた人差指で晶の菊座を
内側からじわじわ責めながら、淫らな笑みを浮かべて、両脚の内腿をゆっくり擦り合わせた。
「……出ちゃう。白いおしっこ出ちゃうよぉ……」
美也子の乳首にむしゃぶりついたまま呻くように晶がそう言った直後、ペニスの先からとろりとした液体が溢れ出て、美也
子の内腿を伝い落ちた。それは、正確に言うと、精液ではないかもしれない。一日の内に何度も射精を強要され精嚢にはも
う精液が残っていないのに体の内側から前立腺を責められて容赦なしに搾り取られたせいで、殆ど精子が含まれていない
精漿だけみたいな色の薄い液体だった。
粘りけはあるものの見た目は本当におしっこみたいな殆ど無色に近い生温かい液体が内腿の間をとろっと伝い落ちる感触
に、美也子の感情が高ぶる。
「晶ちゃん、これですっかり赤ちゃんになっちゃったね」
熱くほてった顔で、美也子は晶のお尻の穴を責めていた指を静かに抜きながら言った。
「ち、違う。晶、赤ちゃんなんかじゃないもん」
美也子が指を抜いた瞬間もういちどぶるっと下腹部を震わせて、晶は拗ねたような口調で言った。
「あらあら、赤ちゃんじゃないだなんて、無理してお姉ちゃんぶっちゃって。そうね、小っちゃい子はみんな、少しでもお兄ち
ゃんぶったりお姉ちゃんぶったりしたがるものよね。でも、ころんしないように抱っこしてもらって、おっぱいを吸いながらお
もらししちゃうような子が赤ちゃんじゃなくて何なのかしらね」
美也子は晶のお尻を軽くぴしゃんと叩いておかしそうに言った。
そう言われて、晶には返す言葉がない。
シャンプーハットをかぶって美也子の豊かな乳房に顔を押しつけるようにして乳首を咥え、今にも倒れてしまいそうにな
るのをかろうじて支えてもらった状態で、既に力なく萎えようとしているペニスからぽたぽたと生温かい体液を漏らしている
晶の姿は、とてものこと高校生などではなく、もやは小学生でさえなく、自分では何もできない赤ん坊そのままだった。
「晶、赤ちゃんじゃない。晶、赤ちゃんなんかじゃないもん」
今の晶にできるのは、拗ねたように頬を膨らませてそう呟くことだけだった。
* * *
その後、シャワーで体中の泡を洗い流としてもらい、金魚やアヒルのオモチャを浮かべた浴槽で幼児みたいに「ひとつ・
ふたつ……とお」と数を読むことを強要されてから脱衣場に戻った晶は、洗った髪を乾かしてもらって今度はサクランボで
はなくチューリップの飾りの付いたカラーゴムで髪を結わえられて廊下に連れ出され、階段を昇って二階へ連れてゆかれ
た。
「あ、ほらほら、駄目よ。ちゃんとしてあげるから、じっとしてなさい」
階段を昇りきって二階の廊下を二歩ほど進んだところで、美也子はぴたっと足を止めた。手を引いて連れて歩いている晶
の体に巻いたバスタオルがずり落ちそうになっているのに気づいたのだ。
「一階の廊下で一回、階段の途中で一回、これで三回目ね、タオルをちゃんとしてあげるのは。本当に手間のかかる困った
ちゃんだこと。でも、仕方ないよね。晶ちゃん、胸がぺったんこだから、タオルが引っかかるところがなくてすぐにずり落ちちゃ
うんだもの、仕方ないよね」
晶の正面にまわりこんだ美也子は、乳首とおヘソの間くらいのところまでずり落ちてしまったタオルの上端を脇のすぐ下ま
でわざとゆっくり引き上げ、晶の体に巻き付けたタオルの重なり部分をきゅっと締めつけ直しながら、からかうように言った。
たしかに、美也子の言う通りだった。美也子は乳房が豊かだから、体に巻き付けたタオルの端どうしを乳房の上で軽く
重ね合わせておけば、まずタオルがずり落ちることはない。それに対して晶の場合、少しくらい強めにタオルの端どうしを
重ね合わせても、階段を昇ったり歩いたりしているうちに、するっとずり落ちてしまうのだ。しかも、実は晶の羞恥をくすぐる
ために、すぐにずり落ちるよう、タオルの端どうしを重ね合わせる時、美也子がわざと緩めにしているということもあるから
尚更だ。それにしても、まるで膨らみのない胸元から下を大きなタオルで覆った晶の姿は、いかにも、幼い妹が体の発育
のいい姉に憧れ、大人びた仕種を真似ているかのように見えて、微笑ましくさえある。
「さ、できた。いくらぺったんこの胸でも、おっぱいが見えちゃったら恥ずかしいもん、ちゃんとないないしておかないとね」
タオルを直してやった美也子は笑いを含んだ声でそう言うと、改めて晶の手を引いて二階の廊下を歩き出した。
美也子が住んでいる家の二階には部屋が三つ並んでいる。
最も階段に近い位置にあるのが美也子の部屋で、他の二つは空き部屋だった。美也子の両親は揃って子供好きで、最
低でも子供は三人つくるつもりにしていて、二階の部屋は全て子供部屋にあてる予定だったのだが、いろいろ事情があっ
て結局のところ、できたのは美也子一人だけだった。それでも、例えば父親の友康にオーディオに凝るといった趣味でもあ
れば残りの部屋もそれなりに活用されることになったのかもしれないが、あいにく京子も友康も無趣味な部類の人物で、美
也子が使っている部屋以外は二つとも、これまで主のないままの状態が続いていたのだ。
が、空き部屋だったのは昨日までのこと。
「はい、今日からここが晶ちゃんのお部屋よ。晶ちゃんの女の子修行が始まることになってすぐ、パパもママも大張り切り
でお掃除して家具を運び込んでいたから、素敵なお部屋になってるわよ。楽しみでしょう? さ、見てみようね」
美也子は左手で晶と手をつないだまま、美也子の部屋のすぐ隣の部屋のドアを右手で引き開けた。
昨日までは空き部屋だったその部屋が、今まさに、晶という新しい主を迎え入れる瞬間だ。
「……!」
大きくドアが開いて部屋の様子をおずおずと見渡した瞬間、晶は、信じられない物を目にしたような顔つきになって息を飲
んだ。
その部屋は、内装も調度品も、まさしく小学生の女の子が使うにふさわしいしつらえに仕立てられていた。
「じゃ、中に入って、もっとよく見てみようね。何か足りない物があるようならすぐママかパパにおねだりして買ってもらわな
きゃいけないんだから、ちゃんと確かめるのよ」
思わず身を退く晶だが、美也子の鍛えあげた腕で背中を押されては抗しきれない。
渋々ながら足を踏み入れたその部屋は、ぱっと見の印象通り、まさに、小学生くらいの女の子用の子供部屋そのもの
だった。
壁際には本棚と整理タンス、子供用の鏡台やハンガーラックといった家具類が並んでいるのだが、本棚には、いかにも
小学生の女の子が好んで読みふけりそうな少女マンガ雑誌やコミックス、それに、カラフルな表紙のティーンズ向け小説
の単行本といった類の出版物が立てかけてあるし、整理タンスは淡いパステルピンクの木製で、側面にはアニメキャラが
描いてあるといった具合だ。鏡台は整理タンスとお揃いなのか、まるで同じ色合いの木でできていて、使わない時に鏡を覆
う大きな布地には、タンスの側面に描かれているのと同じアニメキャラがプリントしてあった。ハンガーラックにしても、金属
パイプとなんの飾り気もないビニール生地とを組み合わせただけの無愛想な物ではなく、下部がオモチャやちょっとした小
物類を入れておける整理箱になっていて、その上に丸みを帯びた木製のラックを填め込んでハンガー掛けにしてあるとい
った調子で、とにかく何から何まで、家具類は全て、小学生くらいの年代の女の子が好みそうな物が並んでいるのだった。
もちろん、机も例外ではない。日ごろ晶が自宅で使っている質素な机とはまるで対照的な、卓面と脚、引出や本立といった
部材の一つ一つがそれぞれ別の色でカラフルに塗り分けてある上に、少女マンガで人気のあるキャラクターを大きく描いた
デスクマットが卓面には敷いてあるという、どちらかというと今どきでは珍しいくらいゴテゴテした感じの女児向けの学習机だ
った。
しかも、調度品のどれもが新品ではなく、どこかリサイクルショップで買い求めたのだろう、何年間も使い続けてきたのが
明らかな、細かい傷や微かな塗装の色落ち、シールを剥がした跡などが見受けられるような物ばかりだった。たしかに、調
度品が新品ばかりなら不自然な感じは拭いきれないが、使い古した数々の調度品に取り囲まれ、カッターの傷跡が残る机
で教科書を広げる晶の姿を目にすれば、物心ついてから今までの時間をこの部屋で過ごしてきたのだろうと自然に思えてし
まうに違いない。
「いいわね? 新学期が始まったら、晶ちゃんはこの机でお勉強するのよ。いくらお外では小学五年生ってことになってい
ても実際は高校二年生なんだから、学校から帰ってきたら、この机で高校の教科書を広げてお勉強するのよ」
部屋の雰囲気に気圧されて体を固くする晶の様子を面白そうに眺めながら、美也子は、魔法少女のイラストが大きく描
かれたデスクマットを指先でとんと叩いて言った。
それを呆然とした表情でみつめる晶は何も言い返せない。
徹也に対する依存心と美也子に対する屈服感から、いつしか自分のことを本当に小学五年生の女の子と思い込みかけ
ていた晶。だが、美也子の無慈悲な言葉が、そんな晶を容赦なく現実の世界に引き戻す。美也子は晶に対して、あなたは
本当は高校生なのよ。高校生の男の子のくせに小学生の女の子格好をして、中学生の男の子のことを好きになっちゃっ
た変態さんなのよと冷酷に告げたのだ。
唇を噛みしめ、拳を握りしめる晶。だが、チューリップを模した飾りの付いたカラーゴムで髪を結わえ、湯上がりの体に巻
きつけたタオルが今にもずり落ちそうになっている姿では、まるで迫力がない。見た目は、怒りや屈辱に身を震わせている
少年などではなく、何やら姉から注意を受けて拗ねてしまい今にも泣きだしそうにしている幼い女の子でしかないのだから。
「でも、あまりしゃかりきになってお勉強をする必要はないかもね。だって、晶の進路はもう決まってるんだから、大学入試
なんて関係ないものね」
美也子は鈎型に曲げた人差指を晶の顎にかけ、伏せがちの顔を上げさせた。
「晶は高校を卒業すると同時に私と結婚するのよ。結婚して、私の可愛いお嫁さんになるの。だから、定期試験なんて、な
んとか進級できて、ぎりぎり卒業できる程度の点数さえ取っておけばいいのよ。それでいいんだから、ちっとも難しいことじゃ
ないでしょ? そのくらいだったら、ひょっとしたら、予習も復習もしなくてもいいかもしれないわね。授業をきちんと受けてい
れば、そのくらいの点数なら取れそうだもんね。だったら、この本立に高校の教科書を並べる必要もないってことね」
右手の人差指を晶の顎に掛けたまま、美也子は左手の人差指で、学習机の端に造り付けになっている上下二段の本立
を指ししめした。
美也子が冗談などでそう言っているのではないことは、その目を見れば明らかだ。
高校を卒業した後の進路を自分のあずかり知らぬところで決められてしまっているのだという事実を改めて思い知らされ、
晶の表情に絶望の色が浮かぶ。
「あらあら、悲しそうな顔しちゃって。ひょっとして晶、大学に行きたかったの? そっか、部活、文芸部に入るくらいだもん、
どっか文学部にでも行きたかったのかな。でも、我慢してよ。私だって、実業団チームに入ってすぐにレギュラーになれる
とは思ってないんだ。一年ですむのか二年かかるのかわかんないけど、レギュラーになれるまではいろいろ落ち込むこと
も多いと思うんだ。そんな時、家に帰ってきても可愛いお嫁さんがいないんじゃ、余計にもっと落ち込んじゃうに決まってる。
だから、晶には、いつでも私を玄関でお帰りなさいって迎えてくれるよう、ずっと家にいてもらいたいの。大学なんて行った
ら、コンパだとかサークルだとかで、帰ってくるのが遅くなるに決まってるもんね。それに、こんなに可愛い晶のことだもん、
男子学生が放っとく筈ないじゃない。幾ら結婚してるってわかってても、人妻の色香に惑わされてなんてシチュにならない
とも限らないじゃん。だから、おとなしくお家にいてちょうだい。その代わり、空いた時間は好きなだけ本を読んでいていいか
ら。読みたい本があったら幾らでも遠慮しないで買っていいから、お家で旦那様の帰りをじっと待つ貞淑なお嫁さんでいて
ちょうだいね」
美也子はようやく晶の顎から指を離し、こちらを見上げたままの瞳をじっとみつめて言った。
「でも、そんなの、確かに、私の身勝手な言い分だよね。それはわかってる。わかってるから、交換条件も出すわ。私が安
定したレギュラーの座を手に入れて、それで子供ができたら、その後なら大学へ行ってもいいってことにしましょう。ほら、
時々新聞なんかに出てるじゃない。ちょっと遅れて夢を達成みたいな見出しで、若い子たちに混じって大学に通うことになっ
た奥さんの記事とか。あんな感じで頑張ればいいじゃない。それに、大学へ行く時に赤ちゃん連れだったら、さすがに男子
学生も言い寄ってこないでしょうしね」
最後の方は少し悪戯めかした口調でそう言った美也子は、もういちど本立に目をやった。
「あ、そうそう。新学期になったら、附属小学校の教科書も揃えてあげなきゃいけないんだっけ。徹也お兄ちゃんが晶ちゃん
のお部屋に遊びにきて、机の本立に並んでるのが高校の教科書だったらびっくりしちゃうもんね。晶ちゃんの正体がばれな
いよう、附属小学校の五年生用の教科書と副教材とノートを揃えとかないとね。だから、毎日ちゃんと小学校のお勉強もしな
きゃいけないわよ。高校のお勉強は、さっきも言った通り殆どしなくてもなんとかなりそうだけど、小学校のお勉強さぼると困
ったことになるかもよ。だって、お部屋に遊びにきた徹也お兄ちゃん、附属の生徒がどんなお勉強をしてるのか興味津々で
晶ちゃんの教科書やノートを見るに決まってるもの。でもって、ノートが白紙のままで、教科書のページには一本の折り目も
ついてないってわかったら、徹也お兄ちゃん、随分と不思議がるでしょうね。不思議がって、どういうことだいって晶ちゃんに
尋ねて、それで、晶ちゃんの正体がばれちゃうかもしれないのよ。同じ部活の子の妹が附属に行ってて五年生になるそうだか
ら、毎日、授業がどこまで進んでるのか聞いてきてあげる。それに合わせてちゃんと教科書を読んで、大事なところはマーカ
ーをひいて、ちゃんとノートにも書き写さきゃ駄目よ。そうすれば、徹也お兄ちゃん、晶ちゃんが本当に附属小学校の五年生な
んだって信じてくれるから」
本立の方に顔を向けてそう言った美也子だが、再び晶の顔に視線を戻すと、何かを思い出したかのようにおおげさな仕
種でぽんとを手を打ち、
「附属っていえば、あれのサイズ合わせもしとかなきゃいけないんだったわね。お店で試着したお洋服はどれもぴったりだ
ったから、あれも大丈夫だとは思うけど」
と独り言のように呟いて、くるりと体をまわし、晶に背を向けて整理タンスの方に歩き出した。
そのわざとらしい振る舞いに、晶はいやな予感を覚えてならない。
果たして、晶の悪い予感は的中した。
待つほどもなく晶のそばに戻ってきた美也子が両手に捧げ持っているのは、上着とベスト、ブラウスとスカートといった、
一組の洋服類だった。
「これも茜お姉さんに手直ししてもらったのよ。車にたくさん紙袋を積んで運んでもらったでしょう? あの中の一つに入っ
ていたのを、私たちがお風呂に入っている間にママが片づけておいてくれたの。たぶん大丈夫だと思うけど、もっと手直し
が必要なら少しでも早く連絡しておいた方がいいから、明日にでもサイズを合わせてみましょうね」
美也子はそう言いながら、整理タンスの中から持ってきた洋服を丁寧に広げ、一組になった洋服類を一枚ずつハンガー
に吊しては、壁際に置いてあるハンガーラックに掛けていった。
やがて一揃えになってハンガーラックに並んだ洋服類の正体に気づいた晶は思わず息を飲んだ。
それは、晶も通学時のバスや電車の中で何度か見かけたことのある、附属小学校の女子児童が身に着けている制服だ
った。全体的にふんわりしたラインと丸襟が愛くるしい純白のブラウス、細めのプリーツをたっぷりあしらった紺色の吊りス
カート、なにかの木の実を模したボタンが印象的なベスト、丸いパフスリーブが目立つ曲線的なシルエットのジャケット、膝
のすぐ下まで届く長さのシルクのハイソックス。それは、上品さと可愛らしさとを兼ね備えた、附属小学校の女児用の制服
に間違いなかった。しかも、色で学年を区分する胸ポケットのエンブレムは、五年生を示す銀色の糸で縁取りが施してある。
「これで、ますます徹也お兄ちゃんをお部屋に呼ぶ楽しみが増えるわね。附属小学校の制服を着た晶ちゃんが徹也お兄ち
ゃんにお勉強を教えてもらっているところを想像するだけで、もう、可愛くて可愛くてたまんないわ、お姉ちゃんとしちゃ。晶ち
ゃんは何を教えて欲しいのかな。徹也お兄ちゃん、いいとこを見せようとして、どんな科目でも喜んで教えてくれるでしょうね。
算数の分数計算を教えてくれるかな。それとも、漢字の書き取りかな。社会科の地図記号かもしれないわね。もちろん、本
当は高校生なんだから、晶ちゃんの方がなんでもよく知ってるわよね。でも、それに気づかれちゃ駄目よ。わかってることで
もわかんないふりをして徹也お兄ちゃんに甘えないと、晶ちゃんの正体がばれちゃうかもしれないんだから。わざと長いこと
考えて何度も書き直して、それでやっと分数計算を一問だけ解いて、それが正解で徹也お兄ちゃんに頭を撫でてもらったら、
うんと嬉しそうな顔をしなきゃいけないのよ。わかってるわね?」
スカートとジャケットのシワを伸ばしながら、目だけは晶の顔をじっと見据えて美也子は言った。
「それとも、徹也お兄ちゃんと会う時は、学校の制服なんかじゃなくて、可愛いお洋服を着たいかな。だったら、それでもい
いわよ。茜お姉さんのお店で試着させてもらったお洋服だけじゃなくて、他にもたくさん用意しておいてもらったんだから。
いっぱい紙袋があったでしょ? それもみんな、いつでも着られるようママがきちんと整理してタンスの中に入れておいて
くれてるわよ。今日はもう夜だから無理だけど、明日、制服と一緒に、他のお洋服もサイズを確かめておきましょうね。どん
なお洋服があるか、今から楽しみにしておくといいわ。それと、今は春物しか買ってないけど、もう少ししたら、今度は夏物
を揃えないとね。夏物のお洋服は晶ちゃんに選ばせてあげるから、子供向けのファッション雑誌でも見て、どんなのがい
いか考えておくのよ。あ、そうだ。夏物のお洋服を買う時、水着も買っとかなきゃいけないわね。附属小学校の指定のスク
ール水着と、デート用の可愛い水着。でも、晶ちゃんは、水着の下におむつをしなきゃいけないから、茜お姉さんにお願い
して特別につくってもらわないといけないかな。おむつの上からでも窮屈じゃないボトムと、ぺったんこの胸をごまかす上げ
底パッド入りのトップの組み合わせになりそうね。大丈夫、パレオ付きのにしたら、おちんちんの膨らみを隠すのも難しくな
いわよ。でもって、晶ちゃんは殆ど外出なんてしなかった内気で引っ込み思案な女の子っていう設定だから、泳ぎは全然
苦手のカナヅチさんってことにしといた方がいいわね。そしたら、徹也お兄ちゃん、晶ちゃんを浮き輪につかまらせて優しく
泳ぎを教えてくれそうだもんね。それとも、浮き輪じゃなくて、幼児用のフロートに乗せて遊んでくれるかな。ほら、晶ちゃん
も知ってるでしょ? ぱっと見は普通の浮き輪なんだけど、手でつかまれるように輪っかの端に取手がついてて、でもって、
輪っかの中がすっぽり空いてて体を入れるんじゃなくて、ビニールシートが張ってあって、脚だけが通るように穴が二つ空
いてる型の浮き輪。形は丸とか四角とかボートみたいなとかいろいろあるみたいだけど、小っちゃな子供が一人で乗れるよ
うになってる、あれよ。うん、そう、最近じゃ時々、そんな浮き輪に小っちゃな子供を乗せてお風呂で一人で遊ばせているう
ちに転覆して溺れちゃったってニュースにもなってたよね? あれに晶ちゃんを乗せて流れるプールとか波の出るプールと
かで遊んでくれるんじゃないかな。大丈夫、転覆しそうになったら徹也お兄ちゃんにしがみつけばいいんだし、もしも転覆し
て溺れちゃっても、徹也お兄ちゃんだったらきちんと人工呼吸もしてくれそうだから。よかったわね、晶ちゃん。ぺったんこの
おっぱいを隠してるブラを外して心臓マッサージをしてもらって、野次馬がたくさん集まってる目の前で口移しの人工呼吸
をしてもらえるのよ。大勢の目の前でおおっぴらにキスしてもらえる上に、感じやすいおっぱいを揉んでもらえるんだもん、
高校生の男の子のくせに小学生の女の子の格好をして、小っちゃな女の子用のセパレーツの水着の下におむつをつけて
悦んでる変態さんの晶ちゃんにとっちゃ、たまらないシチュだよね?」
これから誰の目を憚ることなく晶を徹底的に女の子扱いして生きた着せ替え人形みたいにできる悦びに、美也子はいつ
になく饒舌だった。
そんな美也子とは対照的に、浴室から連れ出されてからこちら、晶は一言も発せないでいる。ほんの冗談みたいにして
始まったおままごとが、
ごっこ遊びなどではなく、これから先の人生を変えてしまうきっかけになったのかと思うと身震い
が止まらない。
「あ、寒いのかな、晶ちゃん。でも、そうよね。夏でもないのに、お風呂からあがってタオル一枚でずっといるんだもん、体
も冷えちゃうよね。私と違って晶ちゃんは華奢だから尚更だよね。いつまでもこんな格好でいないで、早く着替えさせてあ
げなきゃいけないわね」
ジュニアブラも紙おむつもオーバーパンツも着けずにタオル一枚だけだから、下腹部がすーすーと頼りなく、まだ四月
の宵先とあって、浴槽に肩までつからされて温まった体も、いつのまにか冷えてきていた。けれど、晶がぶるぶると小刻
みに体を震わせているのは、決して寒さのせいなどではない。そんな晶の胸の内に気づいているのかいないのか、美也
子はわざと優しげな口調で言うと、再び晶の手を握り、廊下に向かって歩き出した。
足早に部屋を出ようとする美也子の行動に、晶の顔に訝しげな表情が浮かんだ。
美也子はさっき、茜の店から車で持ち帰った紙袋は全て京子が部屋に運び入れて、中身は残らずタンスに収納したと言
っていた。だったら、タオルの代わりに身に着ける衣類は全てここに揃っている筈だ。なのに、なぜ晶をこの部屋から連れ
出そうとしているのだろう?
「あらあら、きょとんとした顔をしちゃって。でも、不思議がることはないのよ。実は、晶ちゃんのために用意しておいたお部
屋はここだけじゃないの。もう一つ奥の部屋も、晶ちゃんに使ってもらうためにきちんと手入れしてあるのよ。今、ママは、
そっちの部屋で着替えの用意をすませて私たちが行くのを待っているの。あまり待たせちゃいけないから、さ、急ぎましょう」
美也子は晶の顔に浮かんだ表情の意味を瞬時に読み取ってそう応え、開いたままになっていたドアから晶を引き従えて
さっさと廊下に歩み出た。そうして、静かにドアを閉めると、どこに隠し持っていたのか、小さな人形を手にして、人形の背中
から伸びている紐の先端に付いている吸盤をドアの一番上の端に押し当てるのだった。
人形は、フェルトとおぼしき柔らかそうな布でできていて、ベビーピンクのワンピースに純白のエプロンを組み合わせたア
リスタイプのエプロンドレスを着た、まん丸顔の少女の姿を模した仕上げになっていた。
人形が身に着けている純白のエプロンには、ベビーピンクの糸で『あきらのべんきょうべや』という文字が刺繍してあっ
た。『晶の勉強部屋』ということだろう、細い糸を使っているようだが、繰り返し何度も針を通したらしく太い文字で刺繍が施
してあって、少し離れた所からでも、文字ははっきり読み取れる。
それが部屋の主が誰なのかを示す名札の代わりになるものだと瞬時に理解した晶は、人形に向かって慌てて手を伸ば
した。エプロンドレス姿の晶をモデルにしたのが明らかな人形、それもエプロンに晶の名前をくっきり刺繍した人形が晶を
この家から逃さないための封印のように思えて、思わずドアからもぎ取ろうとしたのだ。
けれど、小柄な晶がどんなに背伸びしてみても、ドアの一番上の端までは手が届かない。
身をよじり、ぴょんぴょん飛び跳ねてみても、結果は虚しかった。
「あらあら、駄目よ、晶ちゃん。そんなに暴れるから、ほら、またタオルがずり落ちそうになっちゃってる。それに、この人形
を用意してくれたのはママだから、勝手に外したりしたらママに叱られちゃうわよ。ママ、昔からちょっと少女趣味なところ
があって、こういう可愛い小物でいろいろ飾りたてるのが大好きなんだけど、私はそういうのが大の苦手で、いつもいつも
拒否ってたのよ。そのたびにママ、寂しそうな顔をしてたんだけど、女の子修行と花嫁修業のために晶ちゃんをうちに引
き取ることになったら大張り切りで、いろいろ手作りしたりしてるみたい。だから、晶ちゃんはママの趣味につきあってあげ
てちょうだい。だいいち、今からお姑さんの機嫌を損ねたりしたら、お嫁さんになる晶ちゃんが一番困ることになるのよ。マ
マ、おしとやかそうな顔をしてるけど、怒らせたら怖いわよ。だから、今のうちに御機嫌をとっとかなきゃ」
爪先立ちになる晶の肩を両手で押さえつけながら、お転婆な妹をたしなめる姉そのままの口調で美也子が言った。
尚も諦めきれない目で人形を見上げる晶だが、大柄な美也子の手で体を押さえつけられては、これ以上どうすることも
できない。渋々といった表情で手を伸ばすのをやめ、ずり落ちそうになっているタオルを直す美也子の手元を悔しそうにみ
つめるしかなかった。
二階の廊下に沿って三つ並んだ内の最も奥の部屋。
その部屋のドアの前で、美也子は別の布製の人形を手にした。さっきの人形と同様、童顔の晶をモデルにしたのが明ら
かな、丸い顔の可愛らしい人形だった。先に吸盤の付いた紐が背中から伸びているのも、真ん中の部屋のドアにぶら下
げた人形と同じだ。
けれど、身に着けている衣類はまるで別物だった。
真ん中の部屋の人形はアリスタイプのエプロンドレスという少女らしい格好をしていたが、奥の部屋のドアの前で美也
子が手にした人形は、一見したところベビードールみたいなデザインのパジャマを着ていた。いや、よくよく目を凝らして
見てみれば、ベビードールふうのパジャマなどではなく、胸元と裾にたっぷり飾りレースをあしらったクリーム色のベビー
ドレスだということがわかる。しかも、丈がかなり短く仕立ててあるせいで裾から下着が三分の一ほど見えているのだが、
股ぐりのところにホックが付いた水玉模様のその下着は普通の女児用ショーツではなく、明らかに、赤ん坊のお尻を包
み込んでいるような可愛らしいおむつカバーだった。それに加えて、ベビードレスの胸元を淡いレモン色のよだれ掛けが
覆っているという、少女どころか幼女、それもまだあんよもおぼつかないくらいの年ごろの赤ん坊そのままの装いだ。
はっとした表情で晶は更に目を凝らし、クリーム色のベビードレスにくっきりと刺繍してある文字に視線を走らせた。
真ん中の部屋の人形と同じベビーピンクの糸で刺繍を施した文字は『あきらのいくじしつ』と読み取れた。
一瞬は意味がわからなかった晶だが、京子が玄関で口にした「育児の楽しみをもういちど味わえるし」という言葉を不
意に思い出して顔色を失った。
まさか、そんな……。けれど、人形のベビードレスの『あきらのいくじしつ』という刺繍に当てはまるのは、『晶の育児室』
という文字以外に思い浮かべることができない。
唖然とした表情を浮かべる晶の目の前でわざと大きく人形を振ってみせてから、美也子は、真ん中の部屋でそうしたよ
うに手を伸ばし、赤ん坊の装いに身を包んだ人形を奥の部屋のドアにぶら下げた。もちろん、晶の手が届かないよう、ド
アの一番上の端だ。
「あ、二人ともやっと来たの? こっちはもうすっかり用意が済んでるっていうのに二人がなかなか来ないから待ちくたび
れちゃったわよ。さ、早く入ってらっしゃい」
二人の気配を察したのだろう、部屋の中で晶の着替えの手筈を整えて待っていた京子がドア越しに声をかけてきた。
「ごめんね、ママ。晶ちゃんの体を洗ってあげるのに意外と時間がかかっちゃって。でも、たっぷり時間をかけたおかげで
晶ちゃんの体、すっかり綺麗になったわよ」
美也子は「体の中もすっかり綺麗にね」という意味を言外に匂わせて京子に応え、晶の顔を見おろした。
浴室での痴態をまざまざと思い出した晶は、おずおずと顔を伏せるしかなかった。
「さ、入るわよ。こっちはどんなお部屋になっているか、晶ちゃんも自分のお目々でしっかり確かめておきなさい。なんたっ
て、これからずっと生活する自分のお部屋なんだから」
美也子は左手でドアを引き開けると同時に、右手で晶の背中をとんと突いた。
美也子は軽く押しただけのつもりかもしれないが、小柄な晶にしてみれば思いり突き飛ばされたようなもので、外から内
装を確認する余裕もなく、気がつけば部屋の中に押しやられてしまったといった感じだ。
「いらっしゃい、晶ちゃん。今か今かと待っていたのよ。遅かったから体も冷えちゃってるんじゃないの? 風邪をひくとい
けないから、急いで着替えましょうね。さ、ここにお尻を載せて体をごろんしてちょうだい」
おだやかな口調でそう言う京子の言葉にいざなわれ、晶は首をうなだれたまま、声のする方におそるおそる顔を向けた。
が、京子が「ここにお尻を載せて」と言いながら優しく掌でぽんぽんと叩いている布地の束を見た途端、きゅっと身をすく
めてその場に立ちすくんでしまう。
「ほら、どうしたの。急いでおむつをあてとかないと、晶ちゃん、いつおもらしをしちゃうかわからないでしょ? おしっこでお
部屋の床や廊下に温かい水溜まりができてもママはちっとも困らないけど、おしっこをおもらししちゃうところをママや美也
子お姉ちゃんに見られたら晶ちゃんが恥ずかしいんじゃないの? だから、早くおむつの上にお尻を載せてちょうだい。ほら、
バンビちゃんとかリスさんとか、動物さんがいっぱいの可愛いおむつよ。さ、いつまでもお姉ちゃんに甘えてばかりいないで、
可愛い動物さんのおむつにお尻を載せるのよ」
京子は、身を固くして力なく首を振るばかりの晶の反応を楽しむように、何度も『おむつ』という言葉を繰り返し口にしなが
ら、床に敷いたバスタオルの上に重ねて置いた布地の束をぽんぽんと叩き続けた。
そう、京子がぽんぽんと優しく叩いてみせているのは、動物柄の布おむつの束だった。それも、仕立てたばかりの真新し
い布おむつではなく、美也子が赤ん坊の時にお世話になっていたのを大事に残しておいた、使い古しの布おむつだ。
「ほら、いらっしゃいったら。このおむつ、美也子お姉ちゃんのお下がりなのよ。晶ちゃんの大好きな美也子お姉ちゃんが赤
ちゃんの時に使っていたおむつなの。大好きなお姉ちゃんのお下がりのおむつだもの、晶ちゃん、気に入ってくれるに決ま
ってるわよね? でも、お下がりだと晶ちゃんが拗ねちゃうかもしれないと思って、ちゃんと一枚一枚愛情を込めて晶ちゃん
のお名前を刺繍しておいてあげたのよ。これなら、晶ちゃんが気に入らないわけないわよね?」
美也子は手の動きを止め、布おむつを一枚つかみ上げると、それを晶の目の前に突きつけた。
何度も洗濯を繰り返して使い込んだのだろう、見るからに柔らかそうなドビー織りの動物柄の布おむつ。その端には、ド
アにぶら下げた人形の洋服に刺繍を施したのと同じ色の糸で『えんどうあきら』という文字が刺繍してあった。
「最近いつも夜遅くまで何をしてるんだろうって思ってたけど、そっか、ママ、おむつに晶ちゃんの名前を刺繍してたんだ。
これなら、お洗濯をして干してる時、風に飛ばされてどこかのお家の庭に落ちても、すぐに届けてもらえるわね」
動物柄の布おむつに刺繍された自分の名前(それも、苗字は『井上』ではなく『遠藤』になっていた)を見せつけられては
っと息を飲む晶とは対照的に、美也子はまじまじと刺繍をみつめ、ぱっと顔を輝かせた。
「美也子が生まれる前に生地を買ってきて自分で布おむつを手縫いしたことを思い出して、晶ちゃんにも何かしてあげられ
ないかなって考えて、思いついたのがこの刺繍なのよ。お姉ちゃんの時にはわざわざおむつを手縫いしてあげたのにママ
ったら私の時には何もしてくれないんだからって晶ちゃんが拗ねちゃうといけないし、なにより、ママの手で何かしてあげる
っていうのが一番の愛情表現だものね。ま、赤ちゃんとママとのスキンシップの第一歩ってとこかな」
京子はすっと目を細めて頷いた。
何も事情を知らない者が京子と美也子との会話を耳にしたとしたら、待望の妹ができて大はしゃぎの姉と、生まれたばか
りの二番目の娘にも最初の娘と同様の愛情をたっぷり注ぎ込んで育てようとしている母性愛あふれる母親との微笑ましい
言葉のやり取りにしか聞こえないに違いない。その『待望の妹』や『生まれたばかりの二番目の娘』というのが実は高校生
の男の子だなどとは夢にも思わないだろう。
「私が赤ちゃんの時のおむつを誰かが使うなんてなんだか恥ずかしいけど、晶ちゃんだったらいいわ。可愛い妹にお下がり
のおむつを使ってもらえるなんて、お姉ちゃん冥利に尽きるものね。さ、ママの言いつけ通り、風邪をひかないうちにおむつ
をあててもらおうね。ほら、早くこっちへいらっしゃい」
晶の横に立っておむつの刺繍に目を凝らしていた美也子が、すっと前にまわりこむと、手首を鷲掴みにして晶の体を力ま
かせに引き寄せた。
「や、やだ! 赤ちゃんみたいにおむつだなんて、そんなの、やだ!」
それまでずっと口をつぐんでいた晶だが、そのままでは体に巻き付けたタオルを剥ぎ取られ、ドアにぶら下がっている人形
みたいにおむつをあてられてしまうとわかると、金切り声をあげて足を踏ん張った。
が、却ってそれがいけなかった。
両足を踏ん張り、おむつの所へ連れて行こうとする美也子に抗うものだから、体中に余計な力が入り、ただでさえ緩め
に留めてあったタオルの重なり部分がすっとほどけて、そのままタオルがずり落ちて、晶の華奢な体があらわになってし
まう。
「や! こっちを見ないで!」
美也子の目には何度も裸体をさらしているとはいえ、それに慣れることなど決してない。まして、今は京子の目もあるの
だ。手首を美也子につかまれているため、両手で股間を隠すことはできない。晶は反射的に膝を折り、腰を曲げることに
よって体全体で下腹部を覆い隠そうと身をかがめた。
けれど、そのせいで両足の踏ん張りがおろそかになり、力まかせに手を引く美也子に抗うためにお尻を突き出すような
格好で体重を後ろにかけていたものだから、僅かなことでバランスを崩して、今にも仰向けに倒れそうになってしまう。
「あらあら、まだあんよも上手にできない赤ちゃんだったのね、晶ちゃんは。そんな赤ちゃんの晶ちゃんにはおむつがお似
合いなんだから、いつまでも駄々をこねてないでママにおむつをあててもらおうね。いいわ、お姉ちゃんが抱っこしておむ
つの所まで連れて行ってあげる。本当に手間のかかる赤ちゃんなんだから、晶ちゃんは」
体のバランスを崩した晶の背中とお尻に美也子が咄嗟に手をまわし、もうすっかりお馴染みになってしまったお姫様抱っ
この姿勢で晶の体を抱き上げた。
「ち、違う。赤ちゃんなんかじゃない。晶、赤ちゃんなんかじゃないもん!」
これまで何度も経験してきたお姫様抱っこだが、いざ胸の高さまで抱え上げられると、いつ床に落ちるかもしれないと不
安になって、思わず美也子の首筋にしがみついてしまう。美也子が晶の体を床に落とすようなことをする筈がないと頭で
はわかっていても、いかにも硬そうなフローリングの床を目にすると、ついつい体が動いてしまうのだ。そのために下腹部
が丸見えになってしまっているのだが、そこまで気をまわすゆとりもない。口では「赤ちゃんじゃない」と金切り声をあげつ
つも、無毛の股間を隠そうともせず大柄な美也子の首筋にしがみついてお姫様抱っこの格好で横抱きにされる小柄な晶
の姿は、まだあんよもおぼつかない赤ん坊そのままだった。
「あらあら、まだそんなことを言ってるの、晶ちゃんてば。晶ちゃんは間違いなく赤ちゃんなのよ。考えてもみなさい。公園
でお兄ちゃんたちやお姉ちゃんたちに遊んでもらっている最中に紙おむつを汚しちゃうような子が赤ちゃんじゃなくて何な
の? ショッピングセンターでトイレに間に合わなくて紙おむつを濡らしちゃったのは誰だったかしら。それも、たくさんおも
らししちゃっておしっこが紙おむつから滲み出しちゃってあんよまで濡らしちゃうような子が赤ちゃんじゃないって? 徹也
お兄ちゃんに抱っこしてもらってえんえん泣きじゃくりながら紙おむつを汚しちゃったのも晶ちゃんだったよね。お姉ちゃん
のあんよに座っておしっこをおもらししちゃうような子なのよ、晶ちゃんは。それに、お風呂場でお姉ちゃんのおっぱいを吸
いながらおもらししちゃうし。これでもまだ、自分のこと、赤ちゃんじゃないって駄々をこねるつもりなのかな?」
美也子は、それこそ本当の赤ん坊をあやすように晶の体を軽く揺すぶって、わざと優しい口調で言った。
「で、でも……でも、赤ちゃんみたいに動物柄の布おむつだなんて……」
美也子に言われて自分のこれまでの数々の羞恥に満ちた情景が頭の中に鮮やかによみがえってくる。晶は脳裡に浮
かぶ痴態を振り払おうとして首を振るのだが、その仕種がまた晶を無力な幼児めいて見せるのだった。
「ふぅん、布おむつがいやなんだ、晶ちゃん。じゃ、紙おむつだったらいいのかな。紙おむつの方がいいんだったら早く言
えばいいのに。晶、紙おむつが大好きだから、布おむつじゃなくて紙おむつにしてくださいって。徹也お兄ちゃんがプレゼ
ントしてくれた水玉模様の紙おむつにしてくださいって」
美也子は晶が弱々しく口にした言葉の意味をわざと意地悪く取り違えてみせ、尚も体を優しく揺すぶって言った。
「でも、駄目なのよ。ショッピングセンターでトイレに間に合わなくておもらししちゃった時、おしっこがたくさん出て紙おむつ
から滲み出しちゃったでしょ? それを考えると、学童用サイズの紙おむつだと(小学生にしちゃ)体の大きな晶ちゃんのお
しっこをみんな吸い取るのは難しいのかもしれないの。かといって、病人とかお年寄りとかの介護に使う成人用の紙おむ
つなんて模様も色使いも味気ないから、可愛い晶ちゃんにはちっとも似合わないし。だから、布おむつを使うことにしたの
よ。布おむつだったら枚数を増やせば少しくらいおしっこの量が多くても吸い取ってくれるし、だいいち、おむつもおむつカ
バーも可愛らしいデザインのを選べるもの。おむつはお姉ちゃんが赤ちゃんの時のお下がりだけど、おむつカバーは茜お
姉さんに頼んで可愛い生地を使って新しく作ってもらったのよ。だって、こんなに体の大きな赤ちゃんが使うおむつカバー
なんて、普通のベビー用品のお店には置いてないものね」
京子が準備したおむつのすぐそばまで歩み寄った美也子は、ゆっくり膝を折り、晶の体を静かにおろした。
晶が今日の夕方にショッピングセンターで紙おむつからおしっこを横漏れさせてしまったことが布おむつを使わせること
になった理由だとしたら、茜に依頼して前もって大きなおむつカバーを用意してもらっていたことは説明できないし、京子
が前もって布おむつに晶の名前を刺繍していたこととも矛盾する。そう、京子と美也子は最初から晶に布おむつを使わせ
るつもりだったのだ。紙おむつよりも布おむつを使わせることで晶をより徹底的に赤ん坊扱いすることができ、晶の羞恥を
より強く刺激することができるからなのは言うまでもない。ショッピングセンターでのおもらしは口実に過ぎない。だが、最
早、そんな簡単なことに気づく余裕さえ晶の気持ちからはなくなっていた。
「や、やだ。晶、赤ちゃんじゃない。赤ちゃんじゃないから、おむつなんてやぁ~」
動物柄の布おむつの上にお尻をおろされそうになって、晶は両脚をばたつかせ、両手にこれまで以上に力を入れて美
也子の首筋にしがみつくばかりだ。
その様子を見ている京子が、いかにもおかしそうに言う。
「そんなに力いっぱい美也子の首筋にしがみつくなんて、晶ちゃんたら本当に甘えん坊さんなのね。どうしようもないくら
いお姉ちゃん子で、どうしようもないくらい甘えん坊の赤ちゃんなのね。だから、ほら、大好きな美也子お姉ちゃんのお下
がりのおむつをあてましょうね。お下がりのおむつをあてたら、これからずっと、まんまの時もおねむの時も、お姉ちゃん
の優しさがお尻から伝わってくるわよ」
京子は晶にそう言いながら、美也子に向かって目配せをした。
美也子が軽く頷いて、床から三十センチほどの所に留めていた晶の体を布おむつの束の上にそっとおろす。
「あん……」
不織布の少しばかりごわごわした感じがする紙おむつに比べて、使い込み何度も洗濯を繰り返した布おむつの肌触り
は想像もしていなかったほど柔らかだった。言葉にできないほど柔らかで、ふんわりとお尻を包み込むみたいだ。想像外
のその柔らかな感触が晶の羞恥をこれでもかとくすぐる。
「どう? 美也子お姉ちゃんのお下がりのおむつはとっても柔らかいでしょう? とっても柔らかくて、美也子お姉ちゃんに
お尻をそっと撫でてもらっているみたいに気持ちいいでしょう? よかったわね、晶ちゃん。晶ちゃんはこれからずっと、お
姉ちゃんのお下がりのおむつをあてていられるのよ」
初めて経験する布おむつの感触にうっすらとピンクに染まった晶の頬が、『お姉ちゃんのお下がりのおむつ』と何度も繰
り返し言う京子の言葉にますます赤くなる。
「それじゃ、今から、大好きな美也子お姉ちゃんが赤ちゃんの時に使っていたおむつを晶ちゃんにあててあげるわね。すぐ
にすむから、おとなしてしてるのよ。晶ちゃん、お利口さんだもん、おとなしてしてられるわよね」
美也子がすっと身をかわし、その代わりに京子が床に膝をつくと、晶の左右の足首を左手で一つにまとめてつかみ、そ
のまま高々と差し上げた。晶の体が丸く曲がって、それこそ、赤ん坊がおむつを取り替えてもらう時そのままの姿勢を取
らされることになる。
「や、やだ! 赤ちゃんじゃない。晶、赤ちゃんじゃないから、おむつなんて駄目~!」
美也子ほどではないにせよ年代の割には力強い京子の手で足首を高々と差し上げられてしまったために両脚の自由は
利かないものの、晶は上半身をくねらせて、その場から逃れようとするのをやめない。
「大好きなお姉ちゃんのお下がりのおむつをあててもらえるっていうのに、何をこんなにむずがっちっゃてるのかしら、晶ち
ゃんたら。でも、ま、仕方ないかな。赤ちゃんは裸でいるのが大好きで、窮屈なおむつをあてられるってわかったら逃げよう
とするのが普通だものね。そういえば、美也子だって、お風呂あがりにおむつをあててあげようとしたら、おぼつかない足取
りのよちよち歩きのくせに、壁に伝い立ちをして逃げまわってたっけ。うふふ、あの時とまるで同じ育児の楽しみを味わえる
なんて、晶ちゃんが美也子のお嫁さんになるために花嫁修業と女の子修行に来てくれて本当によかったわ」
京子は、晶のお尻の下に敷き込んだ動物柄のおむつの位置を細かく合わせながらいかにも楽しそうに呟き、すっと目を
細めると、美也子の顔を見上げて言った。
「晶ちゃんがむずがってるから、天井のあれのスイッチを入れてあげてちょうだい。それと、小物入れから、晶ちゃんの喜び
そうな物を持ってきてあげてちょうだいね。赤ちゃんがおむつから逃げまわるのは仕方ないけど、いつまでも裸ん坊のまま
だと本当に風邪をひいちゃうから、これ以上むずからないよう晶ちゃんをあやしてあげてちょうだい」
「うん、わかった。それじゃ、最初に天井のあれのスイッチを入れてあげるね。あれの音を聞いたら、晶ちゃん、少しはおとな
しくしてくれるかしら」
京子に言われて頷いた美也子は、晶の頭があるあたりに移動し、天井から伸びている紐を引いた。
と、かろやかな音楽が流れ出し、星の形を模した飾りや木の実を模した飾りや小さな人形たちが、晶の頭の上で輪になっ
て踊り出した。
床の上に用意してあった布おむつにばかり気を取られて部屋の内装にはまるで意識を払わなかった晶だが、不意に
聞こえてきたかろやかな音楽と頭の上で廻り踊り出した人形や飾りに、それが天井に吊ってあるサークルメリーだとい
うことに気がついて、はっとしたような表情で部屋の様子を見まわした。
晶が今いる部屋は、四方の壁をパステルカラーの壁紙で明るい色調に彩られ、壁際には純白の木製のベビータンス
や、それと同じ色合いの小物入れが据えてあって、その横にはオモチャ箱が置いてあり、床の上には幾つものヌイグル
ミが無雑作に置いてある上、天井にはサークルメリーが吊ってあって、取り替え用のおむつの束を入れた藤製のバスケ
ットがベビータンスの前に置いてあるという、典型的なベビールームだった。
部屋の内装がどんな具合になっているのかを見て取った瞬間、美也子がドアにぶら下げた人形に刺繍してあった『あ
きらのいくじしつ』という文字の意味を改めて思い知らされ、晶の顔がこわばる。
「やっと気がついたみたいね、晶ちゃん。そう、ここは、晶ちゃんを一から女の子として育て直すために晶ちゃんを赤ちゃ
んに戻してあげるためのお部屋なのよ。女の子がどんな生活をしているのか、言葉や文字や図解で説明してもらっても、
本当は男の子の晶ちゃんには表面的なことしかわかってもらえないに決まってる。だから、いったん赤ちゃんに戻って、
これまでの生活を今度は女の子としてやり直すのよ。考えてごらん。男の子の晶ちゃんは、おしっこを立ってするよね。
おちんちんを便器に向けて勢いよく出しちゃえば、それでおしまい。でも、女の子はそういうわけにはいかないのよ。例え
ば男の子みたいに立ったままだとおしっこがどこへ飛んで行くかわかったものじゃないから、きちんと便座に座ってしな
きゃいけないし、した後は、ちゃんと拭かないと雫が残っちゃうの。こういうの、言葉で説明したら表面的にはわかったつも
りになるかもしれないけど、自分の体で体験したわけじゃないから、どうしても実感としてはわからないままなのよね。今
日は私が晶ちゃんのおちんちんをお尻の方に折り曲げて紙おむつで押さえておいてあげたから、おもらしした時、前じゃ
なく後ろの方から濡れてくるんだってことがわかったでしょう? それが、その通りまんまってわけじゃないにしても、女の
子がおもらししちゃった時のパンツの濡れ方に近いのよ。でも、そういうのって、実際に経験してみないと、なかなかわか
らないことなの。私たちが結婚して子供ができたとして、子供が女の子だったら、ママになる晶ちゃんが女の子としての経
験を積んでないと大変なことになっちゃうのよ。自分で女の子としての経験をしてこなかったママだと、女の赤ちゃんにお
むつをあてる時は後ろの方を厚めにしなきゃいけないんだってこともすぐには気がつかないでしょうし、子供が大きくなっ
て一人でトイレへ行くようになったとして、うんちの後お尻を拭く時は紙を前から後ろへ動かすようにしないと雑菌が尿道
に入っちゃうかもしれないのよって注意してあげなきゃいけないんだけど、おしっこをおもらししてパンツやおむつが後ろの
方から濡れるんだっていう経験をしていないママだと、つまり、女の子はお尻の穴とおしっこの穴とが近くにあるんだよっ
てことを身を以てわかってないママだと、そんな注意をしないままトイレトレーニングを進めちゃうかもしれないものね。だ
から、そんなことのないよう、晶ちゃんにはこれからの女の子修行の一年間、女の赤ちゃんとしての経験もたっぷりしても
らうことにしたの。ここはそのためのお部屋で、そのためにママが私のお下がりのおむつに晶ちゃんの名前を刺繍してくれ
たんだし、茜お姉さんにお願いして晶ちゃんにお似合いのおむつカバーをたくさんつくってもらったんだから」
紐を引っ張ってサークルメリーのスイッチを入れた美也子は、こわばった晶の顔を見おろしながらそう言って、壁側に置
いてある小物入れの引出を引き開けた。
想像もしていなかった美也子の説明に、身をよじってその場から逃げ出すことも忘れ、唖然とした表情で天井を見上げ
るばかりの晶。天井に吊ったサークルメリーのくるくる廻り踊る人形たちを目にする者が本当の赤ん坊なら、きゃっきゃと
声をあげて喜ぶことだろう。けれど晶にとっては、羞恥を煽りたてる屈辱の玩具だ。しかも、茜が用意していたたくさんの
紙袋の中には晶の体に合わせて縫い上げた大きなおむつカバーも入っていたのだと聞かされて、とてものこと心穏やか
ではいられない。ショッピングセンターの一角にある衣料品店で顔を会わせた時にはもう茜は晶が布おむつをあてられて
下腹部を赤ん坊そのまま可愛らしいおむつカバーで包み込まれることを知っていたのだ。あの時、美也子の手で女児向
けの衣類を何着も試着させられていた晶のことを茜はどんな顔をして眺めていたのだろう。そう思うと、身をすくめるしか
ない。
「サークルメリーだけじゃご機嫌が直らないみたいね、晶ちゃん。何をそんなにむずがっているのかわからないけど、これ
でどうかな? 赤ちゃんはみんなこれが大好きだから、これを咥えさせてあげるとご機嫌が直ると思うんだけど」
壁際に置いてある小物入れの前から戻ってきた美也子は、晶の頭がある場所のすぐ近くに膝をつくと、引出から取り出
した何やらゴム製の小物を晶の唇に押し当てた。
一瞬は反射的にそれを咥えかけた晶だが、赤ちゃんはみんなこれが大好きだからと言って美也子が唇に押し当てた物
が何なのか気づくと、激しく首を振り、三分の一ほど口の中に入ってきていたそのゴム製の小物を慌てて吐き出してしまっ
た。それは、赤ん坊や、まだ幼稚園にあがる前くらいの幼児が好んで口にふくむ、シリコンゴムでできたオシャブリだった。
「あら、赤ちゃんはオシャブリが大好きな筈なのに、どうして晶ちゃんは嫌がるのかしら?」
晶がゴムのオシャブリを吐き出すのを見て、美也子はわざとおおげさに不思議がってみせ、しばらく何やら考えるふりを
してから、ひとり納得したように続けた。
「あ、ひょっとして、お口の中に腫れ物か何かできちゃってるのかもしれないわね。それが痛くて、本当は大好きなオシャブ
リを咥えられないのかも。大変大変、急いで調べてあげなきゃね」
わざとらしく「大変大変」と繰り返しながらも実はまるで大変そうではなく、むしろ面白そうになんとも表現しようのない笑み
さえ浮かべて、美也子は晶の口に向かって両手を伸ばした。
「あぐ……」
美也子が左手で強引に唇をこじ開け、右手の中指と人差指を口の中に突っ込んだ直後、晶はいかにも苦しそうな呻き声
をあげ、自由にならない体をのけぞらせた。
「でも変ね、それらしい物は一つも見当たらないんだけど。もっと念入りに調べてみないと駄目かな」
晶の口の中に腫れ物などできていないことは最初から承知の上で、美也子は尚もわざとらしく怪訝そうに呟き、二本の
指を揃えて晶の舌をぐいっと更に強く押し下げた。
「ぐ、あぐぅ……」
さきほどにも増していかにも苦しそうな晶の呻き声が京子と美也子の耳に届く。
風邪や扁桃腺炎の診察を受けた経験のある人ならわかるだろう。診察の際、咽喉の奥まで観察する妨げにならないよ
う、医師は、圧舌片という金属製のヘラみたいな器具で患者の舌を抑えつけるのだが、その時の苦痛は筆舌に尽くし難い。
舌を強引に下顎に押しつけられ、嘔吐中枢が刺激されて、空えずきが出たり呼吸ができなくなってしまうのだ。美也子は
今、口の中に腫れ物ができていないかどうか調べるという口実で、自分の指を圧舌片に見立てて晶の舌を強引に押し下
げることによって、激しい苦痛を与えているのだ。
「きちんと調べたつもりだけど、やっぱり腫れ物はみつからないわね。だとしたら、さっき晶ちゃんがオシャブリを吐き出し
ちゃったのは、たまたまだったのかしら。じゃ、もういちど咥えさせてあげて様子をみてみようかな。これでちゃんとオシャ
ブリを口にふくんだらさっきのはたまたまだったってことになるけど、もしもまた吐き出しちゃうようなら、もっともっと念入り
に、それこそ喉のずっと奥の方までを調べ直してみなきゃいけないってことになるわね」
三十秒間ほど晶の舌を下顎に押しつけておいてから、ようやくのこと右手の指を口から抜き、晶の顔のすぐ近くに転がっ
ているオシャブリを拾い上げて、美也子は呟いた。
けれど、それが独り言などではなく、晶に向かって言い聞かせているのは明らかだ。言葉こそ穏やかだが、その裏には、
今度またオシャブリを吐き出したりしたら、容赦なくもっと長いこと舌を下顎に押しつけてたっぷり苦しませてあげるわよと
いう意味が隠されていた。そう、美也子は、口の中を調べるのを口実に、オシャブリを嫌がる晶に対して苦痛に満ちたお仕
置きを与えたのだった。
「さ、晶ちゃんの大好きなオシャブリよ。今度は上手にちゅうちゅうできるかな」
美也子はわざとらしい幼児言葉で言って、晶の唇に再びゴムのオシャブリを押し当てた。
けれど今度は、さっきみたいに力まかせに押し当てたわけではなく、オシャブリの先をそっと唇に触れさせるといった程
度だった。オシャブリを咥えなければどんな目に遭わされるか身をもって思い知らされた晶にはそれで充分だという判断
だ。そして実際、一瞬だけ迷ったものの、待つほどもなくおずおずと唇を開いて、美也子が手にしたオシャブリを口にふく
む晶だった。
「そうそう、お上手よ、晶ちゃん。やっぱり、さっきのは何かの間違いだったみたいね。そうよね、赤ちゃんの晶ちゃんがオ
シャブリを嫌がるわけないわよね。でも、オシャブリだけじゃご機嫌が直らないかもしれないから、これも持ってきてあげ
たわよ。これも赤ちゃんが大好きなオモチャだものね」
美也子はおおげさな仕種でぱちぱちと両手を打ち鳴らしてみせ、オシャブリと一緒に小物入れの引出から取り出した円
筒形の玩具を晶の目の前に差し出した。
それを目にした晶の顔が屈辱に歪む。
美也子が晶の目の前に突きつけたのは、プラスチック製のガラガラだった。
「さ、これをお手々に持って。駄目駄目、ちゃんと握るのよ、ほら」
オシャブリを口にふくまされただけではすまない屈辱に、晶は両手を自分の胸の上に重ね合わせて拳を握りしめ、美也
子が強引に持たせようとするガラガラを拒んだ。美也子が押しつけ、身をよじって晶が拒むたびに、ガラガラが揺れて、か
らころと軽やかな音をたてる。
「あらあら、オシャブリはちゃんと咥えられたのにガラガラは持てないなんて、晶ちゃんはまだお手々が上手に動かせない
小っちゃな赤ちゃんだったのかしら。ママもお姉ちゃんも、晶ちゃんのこと、あんよはちゃんとできるくらいに大きくなった赤
ちゃんだと思ってたんだけど、本当はまだお手々も上手に動かせないような、うんと小っちゃな赤ちゃんだったのね。だった
ら、一人であんよなんて、まだまだ先のことね。だって、お手々も動かせないってことは、壁にお手々をついての伝い立ち
もまだできないってことだもの。それじゃ、お出かけの時はベビーカーに乗せてあげないといけないかしら。あんよのできる
お姉ちゃんだったらエプロンドレスやセーラースーツを着せてあげても自分でちゃんと歩けるからいいけど、あんよのでき
ない小っちゃな赤ちゃんじゃ、おむつだけの裸ん坊さんでベビーカーに乗ってるのがお似合いね。何も着ないでおむつだけ
着けてベビーカーに乗った晶ちゃんを公園に連れて行ってあげたら、美優お姉ちゃんたち、可愛い可愛いってほっぺをこ
ちょこちょしてくれるでしょうね」
美也子は少し呆れたように、けれど決して語気を荒げることなくそう言いい、わざと優しく振る舞って、もういちどガラガラを
晶の右手に押しつけた。
諭すような静かな口調とわざとらしい優しい身のこなしに、却って晶は、美也子が冗談なんかでそんなことを言っているの
ではないと思い知らされる。これ以上ガラガラを拒み続ければ、美也子は本当に晶をおむつだけの姿でベビーカーに乗せ
て外へ連れ出すくらいのことはするに違いない。それも、晶が逃げられないよう体を滑り止めのベルトで固くベビーカーに縛
り付けた上で、美也子自身は誰かの目に留まらぬようまだ人の行き来のない早朝に児童公園に連れて行き、そのまま放置
するくらいのことはやってのけるだろう。これまで受けてきた仕打ちのことを思い起こせば、それは火を見るより明らかだ。
「それとも、やっぱり晶ちゃんはあんよのできる大きな赤ちゃんかな。だったら、ガラガラも持てるよね?」
美也子は、これで最後よとでもいうふうな口調で言って、ガラガラを押しつける手に力を入れた。
晶は一度だけ大きく息を吸ってから、右手に押しつけられたプラスチック製のガラガラをそっと握った。
ガラガラを持った晶の右手に美也子が自分の掌を重ねて大きく動かす。
からころ。
からころ。
天井で廻るサークルメリーと、晶が手にしたガラガラと。両方から流れ出るかろやかな音色が、晶の胸を満たす恥辱
などまるで知らぬげに、優しく育児室に満ちてゆく。
「それでいいのよ。とってもお上手よ、晶ちゃん。じゃ、ちゃんとガラガラを振ることができた御褒美に、気持ちいいことをし
てあげるわね」
しばらくの間からころと鳴るかろやかな音色に耳を傾けいた美也子だが、晶の手の甲に重ねていた自分の手を胸元に
引き戻すと、軽い身のこなしですっと立ち上がり、晶の足首を高々と差し上げたままにしている京子のすぐ隣に膝をつい
た。
「晶ちゃん、お尻が感じやすいだもんね。お尻をいじってもらうと気持ちよくなっちゃうんだもんね」
美也子は笑いを含んだ声でそう言うと、京子が足首を高々と差し上げているせいで丸見えになっている晶のお尻の穴
に中指を突き立て、まるで遠慮するふうもなく、そのままずぶずぶと差し入れてしまった。
「あん……」
突然のことに晶は思わず唇を半開きにして、口にふくんでいるオシャブリを落としてしまいそうになった。
それに気づいた美也子が
「駄目よ。オシャブリを落としたりしたら、もういちどお口の中を調べるわよ。さっきよりずっと時間をかけて丁寧に」
と言って脅す。
晶は慌ててオシャブリを咥え直し、ぎゅっと目を閉じた。
「うふふ。お利口さんね、晶ちゃんは。お姉ちゃんの言いつけをちゃんと守れるなんて、とってもお利口さんの赤ちゃんだ
わ。その御褒美も兼ねて、うんといい気持ちにさせていげるからね」
唇を離れてこぼれ落ちてしまいそうになったオシャブリを晶がかろうじてもういちど口にふくんだことを確認した美也子は、
お尻の穴の周辺を指先でじわじわと責めたてた後、浴室でそうしたように前立腺の感触を求めて中指をそろそろと伸ばし
ていった。
そうして、やがて腸壁を通して前立腺を探りあてた美也子は、その表面を中指の腹で静かに押し始めた。
「ぐ、ぅぐぅ……」
浴室でと同じ、いや、幼馴染の母親の目に痴態をさらしているのだという思いがあるために浴室での時以上に、想像を
絶する快感が体中を駈け巡る。
思わず漏らしてしまいそうになる喘ぎ声を、晶はゴムのオシャブリを噛むことでかろうじて押し殺した。
けれど、美也子の指使いは執拗だ。男性がそれ以上はないくらい感じやすい器官を優しく妖しく撫でさする。
「ぁんんぁ……」
幼馴染の母親にいやらしい喘ぎ声を聞かれるわけにはゆかない。いや、そんな羞じらいよりも、むしろ、はしたない快楽
の声をこの母娘に聞かれたら、それを口実にどんな責め苦を与えられるか知れたものではないという恐怖めいた感情の
ため、晶は唇に更に力を入れてオシャブリをきゅっと噛むしかなかった。
が、それまで味わったことのない妖しい快感は、瞬時もやむことなく容赦なく晶を責めたてる。
からころ。
からころ。
ペニスからとろりと精液を溢れ出させる姿を京子の目にさらすまいとしてとめどない快楽に抗い身をよじる晶の手が無意
識に動いて、ガラガラがかろやかな音色を奏でる。
「とっても可愛いわよ、晶ちゃん。ちゅうちゅう音をたてながらオシャブリを吸って、自分のお手々でガラガラを振ってるとこ
なんて、本当に赤ちゃんみたいでとっても可愛いわ。――あ、いけない。赤ちゃん『みたい』なんて言っちゃった。晶ちゃん
はママの大切な次女で、お姉ちゃんの可愛い妹の赤ちゃんなんだよね。なのに、『みたい』だなんて言っちゃって本当にご
めんね。ごめんなさいの意味も込めてもっともっと気持ちよくしてあげるから、お姉ちゃんを許してちょうだいね」
美也子はらんらんと目を輝かせてそう言い、前立腺の表面ををつんとつついた。
「くぅぅぅん……」
ちゅうちゅうとオシャブリを吸いガラガラを持つ手を振ることでかろうじて喘ぎ声を漏らすのを我慢している晶だが、あまり
の快楽に耐えかねて、思わず、生まれたての子犬みたいに鼻を鳴らしてしまう。
今のところ精液を溢れ出させることだけはなんとか堪えていたが、晶のペニスはもういつ爆発してもおかしくないほどに
いきり勃っている。
「ふぅん、そうやって気持ちよくさせてあげるのが晶ちゃんにとっての御褒美なのね。そうね、小っちゃい子は叱ってばかり
じゃいじけた性格に育っちゃうから、きちんと言いつけを守れた時はちゃんと褒めて御褒美をあげなきゃいけないわね。美
也子ったらいつの間にかすっかりお姉ちゃんらしくなっちゃって、これなら晶ちゃんを女の子として育て直すのもうまくいき
そうだわ。ママも頑張るから、二人で晶ちゃんを可愛らしくておしとやかで貞淑でお上品な、遠藤家の嫁にふさわしい素敵
な女の子に生まれ変わらせてあげましょうね」
晶のお尻の穴に中指を差し入れ直腸の腸壁越しに前立腺を刺激して晶を身悶えさせている美也子の手元を興味深げ
に覗き込みながら、京子は感心したように言った。そうして、何を思いついたのか、くすっと笑うと、
「どうせだから、お姉ちゃんだけじゃなく、ママも晶ちゃんに御褒美をあげようかしらね。二人でしてあげた方が、もっともっ
と気持ちよくなるに決まっているものね」
と誰に言うともなく呟いて、替えのおむつが入っている藤製のバスケットに手を伸ばし、こちらは動物柄の代わりにハロー
キティの絵をプリントした布おむつを一枚つかみ上げた。
「お尻はお姉ちゃんにいじってもらっているから、ママはおちんちんを可愛がってあげるわね。うふふ、女の子りくせに、そ
れもまだおむつ離れできない赤ちゃんの女の子のくせに、こんなにおちんちんをおっきくしちゃったら、晶ちゃんだって恥ず
かしいわよね。だから、恥ずかしくなくなるようにおちんちんが小さくなるお手伝いをしてあげるわね。遠慮しないで出しちゃ
っていいのよ。晶ちゃんの恥ずかしいおちんちんから出てくるいやらしいおしっこは、美也子お姉ちゃんのお下がりのおむ
つで綺麗にしてあげるから。ほら、キティちちゃんがいっぱい描いてある可愛いおむつでしょ。このおむつが、晶ちゃんのい
やらしいおしっこを吸い取ってくれるのよ」
左手で晶の足首を差し上げたまま、京子は、びんびんにいきり勃ったペニスに布おむつをかぶせ、そのまま布おむつの
上から右手の指をペニスに絡ませた。
美也子の指でお尻の穴と前立腺をなぶられ絶頂寸前だった晶はたまらずひゅっと喉を鳴らし、びくんと腰を震わせた。
どこか力まかせなところのある美也子の手の動きとはまるで違う、手慣れた様子の京子の指使い。たまらないほど感じ
やすくなっているペニスの先をふわっと包み込んで優しく撫でさする使い込んだ布おむつの柔らかな感触。もうとっくに絶
頂に達していてもおかしくはない下腹部は痛いほどに疼き、晶はあっという間に昇り詰めてしまった。
ペニスがどくんと脈打つ様子が、柔らかな布おむつを通して、京子の手にはっきり伝わってきた。
同時に、晶の菊座が美也子の中指をきゅっと咥えこむ。
その瞬間、それまで聞こえていたオシャブリをちゅうちゅう吸う音と、ガラガラのからころ鳴る音がぴたっと止まった。聞こ
えてくるのは、天井で廻るサークルメリーの奏でる優しいメロディだけだ。
ペニスの先に覆いかぶさっている布おむつに小さなシミができて、じわじわ広がってゆく。
「出ちゃったのね、晶ちゃん。遠慮なんてしないで、たっぷり出しちゃうといいわ。晶ちゃんがおもらししちゃったいやらしい
おしっこはママがキティちゃんのおむつで綺麗にしてあげるから、何も心配しなくていいのよ」
京子はあやすように言って、とめどなく溢れ出てきてペニスの表面を伝い落ちる殆ど無色の前立腺液の雫を、布おむつ
で拭いてゆく。
いかにも幼い子供に接するようなその優しい口調が却って晶の屈辱と羞恥を煽りたててやまない。
「晶、晶……」
おしゃぶりを咥えているために幾らか呂律のまわらない口調で何か言おうとする晶だが、それ以上は言葉が続かない。
ぎゅっと閉じていた瞼を開けたかと思うと、大きな瞳をみるみる涙で潤ませ、どう行動すればいいのかまるでわからなくな
ってしまったのか、再びちゅうちゅうと音を立ててオシャブリを吸い、右手に持ったガラガラを力なく振り始める。
「もうすっかり赤ちゃんになっちゃったね、晶ちゃん。お風呂場じゃ、お姉ちゃんのおっぱいを吸いながらいやらしいおしっこ
をおもらししちゃったよね。でもって今度は、オシャブリをちゅうちゅう吸って自分でガラガラを振りながら、動物柄のおむつ
の上にねんねしていやらしいおしっこをおもらししちゃったんだよ。それに、おもらししちゃったいやらしいおしっこを、キティ
ちゃんのおむつでママに綺麗綺麗してもらってるんだよ。こんな子が赤ちゃんじゃなくて何かしらね。もう自分でもわかって
るよね、晶ちゃんは赤ちゃんだって。お姉ちゃんの可愛い赤ちゃんの妹だって。まだまだ当分の間おむつ離れできないおも
らし赤ちゃんだって。オシャブリとガラガラが大好きでママやお姉ちゃんがいないと何もできない甘えん坊の赤ちゃんだって」
ひくひくと痙攣する肛門からそっと抜いた指をウェットティッシュで拭きながら、美也子は、涙で頬を濡らす晶の顔をいとお
しそうな眼差しでみつめて言った。
「ち、違うもん。晶、赤ちゃんじゃないもん。晶、小学校のお姉ちゃんだもん、赤ちゃんなんかじゃないんだもん。晶、晶…
…ふ、ふぇ~ん」
それまでも間隔を置いて涙の粒を溢れさせていた晶だが、美也子に決めつけられて、どこか拗ねたような、どこか甘え
たような口調でそう言うと、今度はぼろぼろと涙の雫をとめどなくこぼし始めた。それは、まるで手放しで泣きじゃくる幼児
を見ているかのようだった。
けれど、そんなふうに泣きじゃくりながらもオシャブリを咥えたままなのが美也子の与えたお仕置きのためだけではなさ
そうに思えるのは気のせいだろうか。
その後、動物柄の布おむつをあてられ、水玉模様のおむつカバーで下腹部を包み込まれて、胸元と裾に飾りレースを
たっぷりあしらったクリーム色のベビードレスを着せられた晶は、ドアにぶら下がっている人形とまるで同じ赤ん坊の装い
に身を包まれることになった。丈の短いベビードレスのふんわり広がった裾から水玉模様のおむつカバーを三分の一ほ
ど除かせているところも同じだし、オシャブリを咥えたままだと口の中に唾が溜まりやすくなってそれがよだれになってこ
ぼれるかもしれないといって着けさせられた淡いレモン色のよだれかけも、まるで人形と同じだった。違うところがあると
すれば、美也子と京子どちらかの許可がなければ吐き出すことが許されず咥えたままにしておくよう厳命されたオシャブ
リを口にふくんでいるところと、かろころとかろやかな音を立てるガラガラをずっと持たされているところ、それに、ふんわり
まとめた髪が崩れないよう頭にかぶらされたボネットタイプのベビー帽子といったところだろうか。
「さ、できた。晶ちゃん、自分がどんなに可愛らしい赤ちゃんになれたか、自分のお目々で見てみたいでしょう? ちょっと
だけ待っててね。すぐに美也子お姉ちゃんが鏡を持ってきてくれるから」
ボネットタイプのベビー帽子の紐を顎の下できゅっと結び終えた京子は、部屋の隅に置いてある姿見の鏡を運んでくる
よう美也子に指示をして、髪を結わえたカラーゴムに付いているのと同じチューリップの飾りがくるぶしのあたりに付いた
短めのソックスを晶に履かせてから、ベビードレスの乱れを整えてやった。
「はい、お待たせ。自分がどんな赤ちゃんになったか、ゆっくり確かめるといいわ」
京子が晶にソックスを履かせベビードレスの乱れを整えている間に姿見を押してきた美也子は、晶の正面に鏡を置くと、
キャスターをロックしてから再び部屋の隅に行き、もう一台の姿見を押して戻ってきた。そうして、今度のキャスターは晶
の体の真後ろからほんの僅か横にずれた位置に固定する。
本来、鏡という割れやすい物は怪我の元になるおそれがあるため、子供がいる部屋にはなるべく置かない、あるいは、
置くにしても子供の手が絶対に届かない所に置くというのが原則だ。けれど、『あきらのいくじしつ』と名付けられたこのベ
ビールームには大きな姿見の鏡が二つ置いてあった。それが、晶自身に自分がどれだけ羞恥に満ちた格好をしてるの
か直接確認させるためなのは言うまでもない。大きな鏡が二つ、対角線上の部屋の隅に置いてあれば、晶がどちらを向
いてもたいていは鏡が視界に入り、いやでも自分がどんな姿をしているのかを目にせざるを得なくなる。幼児用の衣類
特有の柔らかな肌触りや通気性が悪くてすぐに蒸れてくるおむつカバーの内側のじめっとした感じで触覚に、ベビーパ
ウダーの甘い匂いで嗅覚に、サークルメリーやガラガラの音で聴覚に、そして、絶えず鏡に映る自分の姿を見せること
で視覚に、つまり晶の五感の内の四つの感覚に対して、自分が今やすっかり赤ん坊になってしまったのだという事実を
常に思い知らせるための道具として京子がベビールームに運び入れたのが、二つの姿見の鏡だった。更に付け加えて
おくなら、五感の内の残り一つである味覚についても、京子が何やら企んでいるのは言うまでもないところだ。
その鏡を今、美也子は晶の体を挟んで前と後ろ、真向かいよりも幾らかずれた位置に相対して置いた。こうすると、完
全に正面から向き合わせた合わせ鏡にするのと違って、晶は簡単に自分の姿を前からも後ろからも少し体を捻れば斜
めからも見ることができるようになる。胸元を覆う大きなよだれかけも、たっぷりあてた布おむつのせいでぷっくり膨らん
だおむつカバーのためにベビードレスのお尻のところが丸く膨らんで裾がたくれ上がる様子も、晶が足を動かすたびに
短めのソックスのくるぶしのあたりに付いたチューリップ形の飾りがゆらゆら揺れる様子も、ボネットタイプのベビー帽子
からはみ出た後れ毛がふわふわ舞うところも、いやでも全て目に入ってくることになるのだ。
「どう、自分のお目々で確かめた感想は? 私はとっても似合ってると思うけど、晶ちゃんも自分でそう思うでしょ?」
二つ目の姿見のキャスターもしっかりロックし終えた美也子が、晶の斜め後ろの位置から声をかけた。
名前を呼ばれて晶が反射的に振り返る拍子にベビードレスの裾が空気をふくんでふわって舞い上り、それまで三分の
一ほど覗いていた水玉模様のおむつカバーが殆ど丸見えになってしまう。
「きゃっ!」
おむつカバーがあらわになる様子が鏡に映り、それを目にした晶は、慌ててベビードレスの裾を両手で押さえた。もちろ
ん、悲鳴をあげたせいでぽろりと落ちてしまいそうになるオシャブリを急いで咥え直すところも、二枚の鏡にくっきり映って
いる。
スカートの裾を押さえるために慌てて両手を動かしたため、ガラガラがそれまでより大きな音をたてて、晶の羞恥を切な
く煽った。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいわよ、晶ちゃん。だって、晶ちゃんは、やっとのことよちよち歩きができるようになった
ばかりの赤ちゃんなのよ。公園でも町中でも、それくらいの頃の赤ちゃんがお母さんに手をつないでもらって歩いていると
ころを見たことがあると思うけど、赤ちゃんは恥ずかしがったりしていないでしょう? そうよ、そんな子たちと同じ、恥ずか
しいっていう気持ちをまだ感じない年ごろの赤ちゃんなのよ、晶ちゃんは。ほら、お姉ちゃんと比べてみるとよくわかる筈よ」
晶の慌てふためく様子を見てくすくす笑いながら、美也子が晶のすぐそばに立った。
まだ着替えていなくて体にタオルを巻き付けただけの美也子だから、体格の良さが一層際立って見える。一見しただけ
で意思の強さを感じさせる顎の形、豊かに張った乳房、太くはないのだが決して華奢というわけでもなく程よく引き締まっ
た筋肉質の脚。それら体の部位の一つ一つがまるで晶とは正反対だった。全体に丸っこい童顔、細いうなじと薄い胸、見
るからに華奢な細っこい腕と脚。お腹がぷっくり出た幼児体型というわけではないものの、見る者全ての保護欲を掻きた
ずにはおかない全体に線の細い体を、おつむのせいでぷっくり膨れたおむつカバーと丈の短いベビードレスに包まれた晶。
鏡に映るそんな対照的な二人の姿は、年の離れた姉妹というよりも、どうにかすると、美也子の言う通り、若い母親と年端
もゆかぬ幼い娘にさえ見える。
「さ、あとはこれを穿かせてあげればおしまいね。晶ちゃん、ほら、可愛いパンツですよ。可愛いパンツを穿いておむつカバ
ーを隠しちゃおうね。美也子お姉ちゃんの言う通り、晶ちゃんは赤ちゃんだからおむつカバーが見えても恥ずかしくない筈
なんだけど、でも、本当は赤ちゃんじゃないから恥ずかしいよね? だから、可愛いパンツで恥ずかしいおむつカバーをな
いないしちゃおうね」
向かい合わせに置いた鏡の間に並んで立つ二人の様子を満足げに眺めながら、京子が、ベビータンスの引出から取り
出したオーバーパンツをひらひらと振ってみせた。
オーバーパンツとは言っても、茜の店の試着室でエプロンドレスの下に穿いたのと同じ物ではなく、ベビードレスと同じク
リーム色の生地でできた、少し股上の深いオーバーパンツだった。
「じゃ、今度はお姉ちゃんが穿かせてあげるね。よかったわね、晶ちゃん。茜お姉さんのお店じゃ徹也お兄ちゃんにパンツ
を穿かせてもらって、お家に帰ったらお姉ちゃんに穿かせてもらえるのよ。それにしても、高校生の男の子が中学生の男
の子や同級生だけど十一ケ月年下の幼馴染の女の子にパンツを穿かせてもらうのって、どんな気持ちなのかしら? で
も、仕方ないよね。パンツを穿かせてもらわないと、恥ずかしいおむつカバーが丸見えになっちゃうんだもんね」
京子の手からオーバーパンツを受け取った美也子は晶の足元のすぐ前に膝をつき、目の前のおむつカバーと晶の顔と
を交互に見比べて言った。
「じゃ、ころんしちゃわないようママが支えてあげるわね。高校生なのにあんよができるようになったばかりの赤ちゃんの晶
ちゃんが尻餅をついて痛いよ痛いよってえんえん泣いちゃわないように」
美也子が床に膝をつくと同時に、京子が晶の背後にまわりこみ、後ろから手を伸ばしてベビードレスの裾をぱっと捲り上
げた。
大柄な二人の手にかかっては、逃れることはかなわない。
美也子と京子のなすがまま、晶は、それこそ自分では何もできない本当の赤ん坊のように、手取り足取り、オーバーパ
ンツを穿かせてもらうしかなかった。ベビードレスもよだれかけもボネットタイプのベビー帽子も、そして、このオーバーパン
ツも、茜が特別に縫い上げた物なのは間違いない。試着室で茜が自分の仕立てた赤ん坊の装いに身を包まれた晶の姿
を胸の中で想像していたのかと思うと、たまらない気持ちだった。
そんな晶の胸の内などまるで知らぬげに、二人はいかにも楽しそうに、まるで着せ替え人形で楽しそうに遊んでいる少女
のような表情さえ浮かべてオーバーパンツを穿かせてゆく。
けれど、二人が晶にオーバーパンツを穿かせるのは、おむつカバーがあらわになる羞恥を少しでも軽減してやるためなど
ではない。むしろ、その逆。晶の羞恥をますます煽り、自分の下腹部が布おむつとおむつカバーで包み込まれているのだ
という恥ずかしい事実をよりいっそう強く思い知らせるためだった。
小さな赤ん坊と違い、本当は高校生である晶のおしっこを吸い取るには、布おむつが十枚くらいは必要になる。それだけ
たくさんの布おむつを覆うおむつカバーはどうしてもぷっくりと膨らんでしまって、いくらおむつカバーの上にオーバーパンツ
を穿いたとしても、膨らみまで覆い隠すことなどできるものではない。柔らかな素材のオーバーパンツが丸く膨らんでベビー
ドレスの裾から覗いていれば、その中におむつをたっぷりあてておむつカバーで包み込んでいるのは一目でわかってしまう
から、羞恥が軽減される筈がない。むしろ、股ぐりのフリルとお尻の飾りレースが愛くるしいオーバーパンツが丸く膨らんで
いる様子は、その中にどんなおむつをあてているのかと見る者の想像を掻きたてて尚更に晶の羞恥を煽る効果を強めるの
だ。
それに加えて、おむつカバーの中のじっとり蒸れた感触。吸収帯以外の不織布の部分は意外に薄くて通気性も考慮さ
れている近ごろの紙おむつとは違い、厚めにあてた布おむつをおむつカバーで覆ってしまうと、通気性はまず期待できな
い。それでも、病院などで使っているような医療用・介護用のおむつカバーなら内側をメッシュにするなど幾らかは通気
性をよくしようという工夫もこらしてあるのだが、晶に使わせるおむつカバーを京子が茜に注文した時、通気性のことは一
切考慮しなくてもいい、むしろ通気を妨げる素材を選ぶよう指示したから尚のことだ。しかも、そんなふうにただでさえ内側
が蒸れやすいおむつカバーの上に、おヘソの上まですっぽり覆ってしまうような股上の深いオーバーパンツを穿かせたら
おむつカバーの内側がどんなことになるかは想像に難くない。夏とは違って夕方や夜になれば気温が下がる清々しい気
候の春とはいえ、おむつカバーの中はあっという間に蒸れ、じっとり湿っぽくなってくるのは防げない。こんな状態でおむつ
の中におもらしを強要し続ければ、二週間もしないうちに晶の下腹部はおむつかぶれで赤く爛れてくることだろう。そうなっ
て痛みや痒みに耐えかねた晶に「おむつかぶれの薬を塗ってください」と懇願させるのも一興だ。或いは、エプロンドレス
の幼女姿で皮膚科の医院に連れて行き、大きな体に似合わぬおむつカバーを医師と看護婦の前で広げ、外見からは股
間にそん物を隠し持っているとは信じられないペニスをさらしておむつかぶれの治療を受けるよう強要するのも面白いだろ
うか。
「さ、できた。これで恥ずかしいおむつカバーはないないしちゃったし、お腹が冷えて風邪をひく心配もないわよ。じゃ、お姉
ちゃんも着替えてくるから、ママと一緒にちょっとの間だけ待っててね。着替えたら下の階まで抱っこして連れて行ってあげ
るから、まんまにしましょう。お姉ちゃん、お腹ぺこぺこ。晶ちゃんも早くまんまにしたいよね?」
京子があれこれと想像を巡らせている間に晶にオーバーパンツを穿かせ終えた美也子は、ベビードレスの裾を何度か引
っ張って乱れを整えてからすっと立ち上がり、ぷっくり膨れたオーバーパンツの上から晶のお尻をぽんぽんと叩いてくるり
と体の向きを変え、ドアに向かって歩き出した。
「それじゃ、お姉ちゃんが着替えの間、晶ちゃんはママと一緒に待ってようね。何をして遊ぼうか。ガラガラをもっと振ってみ
る? それとも、ヌイグルミのクマさんと遊びたいかな?」
ドアを開けて廊下に出て行くタオル姿の美也子を見送りながら、京子は晶の体をぎゅっと抱きすくめた。
が、晶は身をよじり、美也子の後ろ姿に向かって助けを求めるように、かろうじて自由になる左手を伸ばして金切り声をあ
げる。
「や、行っちゃやだ、お姉ちゃん。晶、お姉ちゃんと一緒がいい。お姉ちゃんと一緒がいいの。だから、行っちゃやだってば、
お姉ちゃん」
が、かろうじて自由になっていた左手もすぐに京子が押さえつけてしまう。
「美也子お姉ちゃんは着替えの間、ちょっと自分のお部屋に戻るだけなのに、そんな短い間も待ってられないなんて、本
当に晶ちゃんはお姉ちゃん子なのね。ママ、ちょっぴり妬けちゃうな」
晶の体に腕を絡みつかせ、京子はわざと呆れたように言った。
お姉ちゃん子。そう、確かに、その言葉は間違っていない。羞恥に満ちた姿で外へ連れ出され、想像もできないくらい恥
ずかしい目に遭われるうちに、徹也に対してと同じくらい美也子に対しても奇妙な依存心を抱くようになってしまった晶だ
から、京子が『お姉ちゃん子』と言うのもあながち見当違いではないだろう。
けれど、晶が京子の手から逃れ、すがるように美也子の後ろ姿に向かって手を伸ばしたのは、美也子に対する依存心
のためだけではなかった。美也子に対する依存心というよりも、京子と二人きりで部屋に取り残されることに対する恥辱の
ためだった。恥辱――お隣さんで幼馴染の女の子母親の手で赤ん坊めいた格好をさせられる屈辱と、その姿をまじまじ
と見られる羞恥。
だが、微かに美也子は振り向くこともなくドアを押し開けて部屋を出て行ってしまう。
「晶ちゃん、憶えてる? 晶ちゃんが小さかった頃、私がよく面倒をみてあげたのよ」
自分の部屋に向かって廊下を遠ざかってゆく美也子の足音を掻き消すサークルメリーのかろやかな音色が満ちるベビ
ールーム、床にお尻をおろし、晶のお尻を膝の上に載せて、京子が穏やかな声で話しかけた。
一瞬、羞恥に満ちた自分の姿も忘れて、晶がこくんと頷く。
京子の言う通り、共働きで育児に専念できない晶の母親の代わりに、隣のよしみということもあって、専業主婦の京子が
随分と晶の面倒をみてくれていた。母親が予め冷凍しておいた母乳を哺乳壜で飲ませたり、おしっこが出ていなくても汗
の湿気で肌が荒れないようこまめにおむつを取り替えたり、お昼寝の時間には添い寝をして背中を優しく叩いて寝かしつ
けたりもした。もともと子供好きということもあり、京子にとって晶の面倒をみることは決して負担などではなく、むしろ、うき
うきするような楽しい時間だった。
そうこうしているうちに京子は自分も妊娠していることに気づき、可愛い物が大好きという性格の持ち主な上、お隣の子、
つまり晶が男の子ということもあって、自分の子は女の子がいいなと思いたち、胎児性別検査の結果を教えてもらったと
ころ、果たせるかな待望の女の子と告げられ、親戚や友人たちにいそいそと知らせてまわった結果、予想以上にたくさん
のお祝い品を贈られることになった。身内も友人たちも京子が可愛らしい物が好きだということは充分に知っているから、
お祝いの品も、よくあるような新生児用の肌着の詰め合わせや出来合いのギフトパックといった生まれたての赤ん坊向け
の実用的な衣類は一切なく、少し気が早いものの、子供が一歳とか二歳とか要するに可愛い盛りに着せるようなサイズ
の、しかもいささかオーバーデコレーション気味の洋服の類ばかりになってしまった。早々と贈られた可愛らしい女児用
のベビー服を目の前にして、それを着た自分の娘がどんなに可愛らしくなるのか想像するのも母親ならではの楽しみな
のだが、やがて、想像だけでは飽き足らなくなってくる京子。一日でも早く愛娘に可愛らしい装いをさせたくてうずうずして
いるのだが、肝腎の娘はまだお腹の中だ。職場で気分転換できる共稼ぎならともかく、専業主婦でお腹に子供を宿してか
らこちら殆ど家の中に閉じこもりきりになっている京子だから、一度こうと思うと、そのことばかりをずっと思い抱くようにな
ってしまうのも仕方ない。妊娠十ケ月目を迎えた大きなお腹をさすりながら溜息をつきつつふと傍らに視線を転じれば、晶
が安らかな寝息をたててお昼寝をしているのが目に留まる。もともと赤ん坊の顔というのは男の子も女の子もぱっと見た
だけでは区別がつかないものだが、殊更に晶は女の子と見紛うばかりに可愛らしい顔つきをしていた。
そこで京子の胸の内に悪戯心がむくむくと湧き起こってきたのだった。
京子は晶が着ているパジャマを脱がせると、あれこれ迷った末、一歳児用のスカート付きロンパースを贈答用のカラフ
ルな紙箱から取り出して、それまでのパジャマの代わりに晶に着せてみた。月齢九ケ月の赤ん坊に一歳児用のベビー服
が少しばかり大きいのは否めないものの、洋服の中に体が埋もれてしまうような幾らかだぶっとした感じが却って可愛らし
く、女の子顔の晶にはその女児用のベビー服が想像以上によく似合って、晶自身とベビー服とが互いに可愛らしさを引き
立てあっているようにさえ見えたものだ。それに気をよくした京子は、母親が晶を迎えに来るまで着せ替えごっこに興じ、
生まれてくる我が子のために贈られた女児用のベビー服をあらかた晶に試着させて悦に入っていたものだ。しかも、まる
で悪びれる様子もなく、女児用のベビー服に身を包んだ晶を抱き上げて、迎えに来た母親に手渡したりさえした。もっとも、
それで晶の母親が気を悪くするというようなこともなかった。昔から赤ん坊を褒める時はそれが男の子だとわかっていても
「女の子ですか、とっても可愛いですね」と言うのが相手の気持ちを良くさせるお世辞になるくらいだから、自分の息子が女
の子の格好をしていても眉をひそめたりするわけはないし、むしろ、可愛らくなった愛児の姿に思わず嬌声をほどだ。
その日以後、京子の家に預けられている間は女の子の格好をさせられるのが晶の日常になってしまい、それは、京子
の娘、つまり美也子が一歳になるまで(つまり、贈られた女児用のベビー服を本来の受け取り主である美也子が着られる
ようになるまで)続いたのだった。
まだ二歳になる前までのことだから、それを晶が憶えている筈はない。けれど、お隣さんどうし仲良しで、何かというと互
いの家族を招き合っている井上家と遠藤家、ちょっとしたホームパーティと洒落込むことも多く、そのたびにどちからの父
親か母親が昔のアルバムを開いたりして、古い写真を披露することも珍しくはない。その時に決まってお披露目されるの
が、女児用のベビー服を着た晶の写真だった。スカート付きロンパースの丸いお尻を振って壁に伝い立ちしている姿、丈
の短いベビードレスを着て京子に抱っこしてもらっている姿、レースふりふりのワンピースを着て自分の父親に肩車しても
らっている姿、キャミソールふうのベビー服を着て母親の膝にお座りしている姿、写真に残っている晶は、どれも、まるで
女の子にしか見えない可愛らしい姿ばかりだった。特に、ピンクのリボンを髪に付けてお姫様ふうのベビードレスを着た二
歳前の晶と、それを一回り小さくしたような同じデザインのベビードレスを着た一歳の美也子が並んで写っている写真は、
どこからどう見ても二人が姉妹にしか見えないかった。
記憶にはない。けれど、写真という形ではっきり記録に残っていて、それをことあるごとに見せつけられては、晶もそれが
事実だということを認めるしかない。互いに家族を招き合っての誕生日パーティやクリスマスパーティ、お雛様パーティや
子供の日パーティのたびに女の子の格好をした姿をくっきり収めた写真を見せられて――ひよっとしたら、それが、小さい
頃に晶がしきりとお兄ちゃんぶってみたりヒーローぶってみたりする遠因になっていたのかもしれない。僕は女の子なんか
じゃないんだぞ。僕はお兄ちゃんで、とっても強い正義の味方なんだぞ。興味深げに写真に見入る、自分よりも十一ケ月
遅く生まれた美也子にそう訴えかけるために。
そんなふうにして美也子が一歳になる時には鎮まっていた京子の悪戯心。けれど、長じるにつれ、美也子はどんどん背
が高くなり、女の子らしい可愛い洋服を着せることが次第に難しくなっていった。それに、もともと行動的な美也子だから、
体の動きを妨げるオーバーデコレーションの洋服を避ける傾向が幼い頃からあったものだから、京子はすぐまた欲求不満
になってしまう。その欲求不満を解消するために目をつけたのが、再び晶だった。美也子は自分で晶をお嫁さんにするん
だと決めたつもりなのだろうが、ひょっとすると、それは、そうするように美也子が永年に渡って美也子に対して囁きかけた
きた結果とは考えられないだろうか。
「あの時の晶ちゃん、とっても可愛かった。知り合いに写真を見せても、写っているのが男の子だなんて、誰も気がつかな
かった。私が説明してあげても、みんな、なかなか信じてくれなかった。それくらい可愛い女の赤ちゃんだったのよ、晶ちゃ
んは」
京子は、膝の上に座らせた晶の手に自分の手を添えてガラガラを静かに振りながら言い、ふっと溜息をついて続けた。
「赤ちゃんの時は美也子も可愛かったのよ。サイズは違うけど晶ちゃんとお揃いのベビー服を着せてあげたら、まるで姉妹
みたいで。けど、成長期に入った途端ずんずん背が伸びて、あとは晶ちゃんも知っての通り、可愛いお洋服なんてちっとも
着てくれない、バスケ三昧の、男の子だか女の子だかわからないような子になっちゃって。でも、晶ちゃんは美也子と違っ
て、高校二年生になる今も昔とちっとも変わらない可愛いらしさのまま。本当、晶ちゃんのお母様が羨ましくてたまんない
のよ、私。だから、晶ちゃんには私の娘になってもらうことにしたの。美也子と結婚してくれたら、自然にうちの子になってく
れるものね。それも、美也子のお嫁さんだから、私の可愛い娘に。晶ちゃん、二歳になるすぐ前から昨日までの間は男の
子として育ってきたけど、それは何かの間違いなのよ。そう、神様の手違いに決まってる。だから、今日から私が晶ちゃん
を育て直してあげる。神様の手違いを正して、本当はそうでなきゃいけない女の子として育て直してあげるわね。そのため
に、赤ちゃんの頃からやり直すのよ。女の子修行の一年間で女の子に生まれ変わって、後の一年は花嫁修業に励むのよ。
二年間もこの家で過ごせば、結婚してもすぐ家風に馴染んで、どこに出してもおかしくない遠藤家の若奥さんになれるから
心配することなんてないのよ。美也子がぜんぜん興味を持たないお料理もお裁縫もお洗濯も、家事一切を私が責任をもっ
て仕込んであげるから安心していいのよ。でも、そんなことを習う花嫁修業が始まるまでの一年間、女の子修行の間は、
何も考えずに私や美也子に思いきり甘えていればいいの。だって、晶ちゃんは女の子修行の間中、小っちゃな女の子に戻
って生活するんだもの。一年間かけて、赤ちゃんからちょっとお姉ちゃん、幼稚園児から小学生、それに中学生になって、
最後には女子高生になって、本当の年齢に追いつけばいいの。その時、晶ちゃんは実際の年齢の女の子に生まれ変わっ
て、女の子修行がおしまいになるの。わかったわね?」
わかったわねと言われて、けれど晶が頷く筈がない。
それでも、京子は晶に返事を強要する様子はみせない。もうすっかり晶は自分の手の内だという意識が京子に悠揚迫ら
ぬ態度を取らせているのだろうか。
「じゃ、晶ちゃんが赤ちゃんだった時に一番嬉しそうにしていた遊びをしましょうか。伝い立ちはまだできなかったけど、這
い這いで自由に動き回れるようになったのが嬉しかったんでしょうね、こんなふうにしてあげるとすごく喜んでいたのよ、
あの頃の晶ちゃん」
返事を求めるでもなく穏やかな声でそう言った京子は晶を膝の上から床におろすと、晶が持っていたガラガラを自分が
持ち、正面に置いた姿見の横に移動して、その場に膝をついた。そうして、怪訝な顔で事の成り行きを見守る晶に向かっ
て、おおげさな身振りでガラガラを振ってみせる。
「ほら、ここまでいらっしゃい。ちゃんとここまで這い這いで来ることができたらガラガラを返してあげる。ほぉら、晶ちゃん
の大好きなガラガラよ」
京子が手を振るたびにガラガラからかろやかな音色が流れ出て、静かな波紋になって育児室の中に広がってゆく。
からころ。からころ。
十六年も前の、まだようやく這い這いができるようになったばかりの赤ん坊の頃の記憶など残っているわけがない。残
っているわけがないのに、晶の胸を妙に切ない想いが満たしてゆく。切なくて甘酸っぱくてぼんやりしているくせに妙にき
らきらした、なんとも言いようのない、記憶とは呼びようのない無意識の断片。
「どうしたの、晶ちゃん。あの頃の晶ちゃん、こんなふうにガラガラで呼んであげたら、急いで這い這いして叔母ちゃんの
いる所へ嬉しそうに来ていたでしょ? ほぉら、からころからころ~」
耳で聞くというより、胸に直接しみこんでくるようなガラガラの音色。
憶えている筈がないのに全身を包み込むセピア色の思い出。
それまで床にぺたんとお尻をつけて座っていた晶だが、改めてガラガラの音色に聞き耳を立てると、おずおずした様子
で両手と左右の膝を床についてお尻を上げ、四つん這いの姿勢になった。
「そうよ、それでいいのよ、晶ちゃん。そのままここまでおいで。這い這いで上手にここまで来たら、御褒美をあげるから」
からころ。からころ。
サークルメリーの奏でるメロディに重なって聞こえるガラガラのかろやかな音色が優しく晶をいざない導く。
晶はぎこちない身のこなしで手と足を動かし、おそるおそる這い這いを始めた。
顔を振り仰ぎ、さかんに京子が振り鳴らすガラガラをみつめ、お尻をぴょこんと後ろに突き出した四つん這いの姿勢。
不意に、一枚の写真に写った光景が晶の脳裡をよぎった。晶と美也子が小さいうちは何かというと誰かが引っ張り出し
てきてみんなで眺めた昔のアルバム。けれど、それも、小学校の三年生になる頃には晶が断固として拒むようになった
ものだから、いつしか人目に触れる機会はなくなってしまった。晶の脳裡をかすめたのは、そのアルバムに収められた一
枚の写真に写った自分の姿だった。写真の中で幼い晶は、女の子みたいに髪をカラーゴムで結わえられ、胸元を淡いレ
モン色のよだれかけに覆われた丈の短いクリーム色のベビードレスを着て、大きなお腹をした京子の振るガラガラの音色
にいざなわれるまま、嬉しそうな顔をして這い這いをしていた。そう、まさに今の晶とまるで同じ、おむつで丸く膨らんだオ
ーバーパンツをベビードレスの裾から覗かせた姿で、目の前に座っている京子のもとを目指して。
京子のいる所を目指して進むと、大きな姿見の鏡に自分の姿が映ってしまうのは避けられない。しかも合わせ鏡になっ
ているから、前の鏡の一部には、後ろの鏡に映っているのと同じ光景が映り込んでいる。二枚の鏡は、まるで十六年前に
戻ってしまったかのような晶の姿を様々な角度からくっきり映し出していた。その中を、オシャブリを咥えているせいで絶え
ず口の中に溢れてくる唾がよだれになって唇から流れ落ちないよう意識しながら這い這いを続ける羞恥。けれど、なぜだ
か、京子が振り鳴らすガラガラの音色に導かれるまま這い進むことをやめられない。
羞恥と被虐感に胸を満たしながら、やがて京子のもとにたどりつく晶。
「うふふ。昔と同じ、とっても這い這いがお上手ね、晶ちゃん。それじゃ、約束通り、晶ちゃんの大好きなガラガラを返してあ
げるわね」
それまで膝立ちになっていた京子が、晶が目の前まで近づくと、床にお尻をつけて両脚の膝から先を左右に開いた『ぺっ
たんこ座り』の姿勢になって両手を伸ばし、自分の膝の上に晶を迎え入れ、ふたたびガラガラを握らせた。這い這いをさせ
る前は晶の背中を自分の胸にもたれかけさせていたが、今度は、横抱きの格好で自分の膝の上に晶のお尻を載せて座ら
せる。
そんなふうに晶の体を横抱きにして自分の膝の上に座らせた京子は、掌で晶の頬をそっと包み込むと、顔を胸元に抱き
寄せた。
豊かな乳房が晶の横顔に触れた。豊かだが、固いばかりの美也子の乳房とは違って、張りと柔らかさが同時に感じられ
るような、出産と授乳の経験がありありとわかる、そんな乳房だ。
「晶ちゃん、憶えてる? 晶ちゃんのお母さん、忙しい中、少しの時間も惜しんで自分のお乳を搾っていたのよ。お乳を搾っ
て、小分けにして冷凍庫で保存していたの。叔母ちゃんは、晶ちゃんのお母さんに頼まれて、冷凍してあるお乳を融かして
哺乳壜で晶ちゃんに飲ませてあげていたのよ。晶ちゃんのお母さん、今じゃすっかり落ち着いたけど、その頃はとっても忙
しくて、でも、忙しいのに、ちょっとの時間も惜しんで、晶ちゃんのためにお乳を用意していてくれたのよ。お母さんのお乳っ
て、赤ちゃんが病気にならないようにする免疫成分とかも混じってるし、それになにより、愛情がいっぱい詰まった、赤ちゃ
んにとっては最高の栄養なの。だから、晶ちゃんのお母さん、できるだけ粉ミルクを飲ませないよう頑張ってたのね。でも、
体質なのか、あまりお乳は出ない方だったかな。出にくいお乳を、それでも、晶ちゃんのためだって、泣きそうな顔をして搾
ってるところ、叔母ちゃんも何度か見たことがあるわ。そりゃもう、怖いくらいの顔でね。けど、本当に子供のためを思ったら
お母さんって怖い顔になるんだって、叔母ちゃん、勉強になっちゃって。だけど、そんなふうに頑張っても、晶ちゃんがお腹
いっぱいになるくらいのお乳は出なかったのね。だから、どうしても幾らかは粉ミルクのお世話にならなきゃいけなくて。そ
の時のこと、今でもはっきり思い出せるわ。晶ちゃんたら、お母のお乳だと自分から進んで哺乳壜の乳首を咥えるくせに、
粉ミルクを入れた哺乳壜だと、ちっとも乳首を咥えようとしなかったのよ。お腹が空いて泣いてるのに、いくら叔母ちゃんが哺
乳壜をお口に入れてあげても、すぐに乳首を吐き出しちゃって。大人にしてみたら同じような物にしか思えないけど、赤ちゃ
んにはちゃんとわかるのね、自分のお母さんのお乳と粉ミルクの違いが。それを見て叔母ちゃん、すごく感激しちゃって、自
分の子供は絶対に母乳だけで育てるんだって胸の中で誓ったりしてね。でも、感激するのはいいけど、実際はとても困っち
ゃったんだけどね。だって、もう冷凍のお乳が残ってないって時でも粉ミルクをちっとも飲まないで泣いてばかりだったんだ
もの。それで、叔母ちゃん、ちょっと悪戯心を起こしちゃってね――」
左手で横顔を自分の胸元に押しつけたまま、京子は右手でブラウスのボタンを外し始めた。
はっとして晶が上目遣いに京子の顔を見上げたが、そんなことまるで気に留める様子もない。
京子は手早くボタンを外してしまうと、ブラウスの胸元を大きくはだけた。
「晶ちゃん、憶えてる? 晶ちゃんがなかなか粉ミルクを飲んでくれないから、叔母ちゃん、自分のおっぱいを晶ちゃんに
吸わせてあげたのよ。自分のお母さんのおっぱいとは違うってことが赤ん坊ながらにわかったのか最初は吸ってくれなか
ったけど、ちょっと強引に口にふくませてあげたら、粉ミルクの哺乳壜とは違って、そのまま吐き出きもせず、初めはびっく
りしたような顔で、でも、いつのまにか安心しきった顔で、ちゅうちゅう音をたてて吸ってくれたのよ。でも、まだ美也子を生
んでいなかった叔母ちゃんのおっぱいからお乳が出る筈なんてなくて、でも、晶ちゃん、一生懸命に吸ってくれたのよ。そ
うして頃合いを見計らって粉ミルクの哺乳壜をお口に入れてあげたら、今度はあまり嫌がりもせずに哺乳壜の乳首を吸っ
てくれたの」
京子は昔を懐かしむようにそう話しながらブラのフロントホックを外し、豊かで張りのある乳房を晶の顔に押し当て、生娘
と見紛うばかりのピンクの乳首を口にふくませた。
浴室で口にふくまされた美也子のぴんと勃った乳首とはまた異なる、口の中にまるで違和感なくすっと滑り込んでくるよ
うな舌触り。
「それからも粉ミルクの哺乳壜を咥えさせる前には叔母ちゃんのおっぱいを吸わせてあげていたのよ。それで、晶ちゃんが
ずっとおっぱいを吸ってくれたおかげでしょうね、美也子が生まれた後、お乳がたくさん出て、結局、おっぱい離れするまで
美也子は叔母ちゃんのお乳だけで育てることができたの。晶ちゃんに叔母ちゃんのお乳を飲ませてあげることはできなか
ったけど、最初に吸ってくれてお乳が出やすくしてくれたのは晶ちゃん。それに、贈り物に頂戴した女の子用のベビー服を
殆どみんな最初に着たのも晶ちゃん。自分も赤ちゃんのくせして、生まれたばかりの美也子をあやそうとしてくれたのも晶
ちゃん。その頃の叔母ちゃん、晶ちゃんのことが自分の娘みたいに思えて仕方なかったのよ。晶ちゃんが長女で、美也子
が次女。晶ちゃんがお姉ちゃんで、美也子が妹。叔母ちゃん、そんなふうに思いながら、二人の面倒をみていたの。晶ちゃ
んのお母さんのお仕事が落ち着いて、晶ちゃんをうちで預からなくてもよくなる日まで。ううん、預からなくてもよくなった後
も、晶ちゃんがうちに遊びに来てくれた時や、美也子を連れて叔母ちゃんが晶ちゃんちに遊びに行った時も、ずっとずっと
晶ちゃんは叔母ちゃんの気持ちの中じゃ、いつまでも叔母ちゃんの娘だったのよ。それに、寝ぼけながら叔母ちゃんのおっ
ぱいを吸う時は、晶ちゃん、いつでも自分のお母さんのおっぱいを吸ってるんだって勘違いするのか、叔母ちゃんのことを
『ママ』っと呼びながらおっぱいを吸ってくれたから尚更ね。だから、もういちど叔母ちゃんのことをママって呼んでちょうだ
い。甘えた声でママって呼びながら叔母ちゃんのおっぱいを吸ってちょうだい。さ、どうしたの? 晶ちゃんはママの可愛い
赤ちゃん。美也子のお姉ちゃんだけど、まだおむつが外れない、おっぱい離れもできない甘えん坊の赤ちゃんなのよ。だ
から、ほら」
美也子は、それまで頬を包み込んでいた左手を晶の後頭部にまわし、更に力を入れて抱き寄せた。
晶の唇と舌がおずおずと動いて、初めはびっくりしたような顔で、でも、いつのまにか安心しきった顔で、ちゅうちゅう音を
たてて京子の乳首を吸い始めるようになるまで、さほど時間はかからなかった。
「そうよ、それでいいのよ、晶ちゃん。晶ちゃんは赤ちゃんだもの、思う存分おっぱいを吸いなさい。おっぱいを吸いながら、
叔母ちゃんのことをママって呼ぶのよ」
京子は、ボネットタイプのベビー帽子からはみ出た晶の後れ毛をそっと撫でつけながら、あやすように囁きかけた。
「……マ、ママ……ママぁ、晶のママぁ!」
憶えている筈のない京子の乳首の感触。けれど、口にふくむなり、うっとりしたような表情が晶の顔に浮かんでくる。促さ
れるまま晶は叫ぶように言って、京子の乳房にむしゃぶりついた。
そこへ、ドアが外側に開いて、デニムのハーフパンツにざっくりしたトレーナーというラフな装いに身を包んだ美也子が戻
ってきた。
「ママが晶ちゃんのことをお姉さんで私のことを妹だって思ってた話、私も何度か聞いたことがあるわ。晶ちゃんたら自分も
赤ちゃんのくせして、なんだかお姉ちゃんぶって私にオシャブリを咥えさせたりもしてたって。だけど、晶ちゃんが三歳にな
るかならないかって頃から急に自分のことを男の子だって意識するようになっちゃって、私に対してもお姉ちゃんぶるんじゃ
なくてお兄ちゃんぶるようになっちゃって、随分と寂しい思いをしたってことも何度も何度も繰り返し聞かされたわ」
二人がいる所までゆっくり近づいてきた美也子は、京子の乳首を口にふくまされる時に晶の口から落ちて床に転がったオ
シャブリを拾い上げ、晶の唾に濡れたゴムの乳首を冷たい目で眺めながら言った。
「でも、そんな寂しい思いをするのも昨日までのこと。今、晶ちゃんはママの娘に戻ったのよ。ママが町内会の日帰り旅行
へ出かけている間に、私が晶ちゃんをもういちどママの可愛い赤ちゃんに戻しておいてあげたのよ。だから、もう寂しくない
でしょ、ママ?」
京子に向かって気遣わしげにそう言う美也子だが、その瞳には、どこか哀しげな陰が宿っていた。大きな瞳に陰を宿した
美也子は、ふっと溜息をつくと、こんなふうに続けて言った。
「ママの口から出るのは、いつだって晶ちゃんの名前ばかり。実の娘の私より、いつもいつもずっとずっと晶ちゃんのことを
気にかけて、冬になったら晶ちゃんが風邪をひかないかしら、夏になったら日焼けをして晶ちゃんの綺麗なお肌がシミにな
らないかしら、秋になったら晶ちゃんが寝冷えをしないかしら、春になったら変な人が多くなるから晶ちゃんが女の子に間
違われて痴漢に遭ったりしないかしらって心配して。そんなふうに、いつだって、晶ちゃん晶ちゃんの繰り返し。だから、私
は、実業団チームからの誘いをすぐ受けることにしたのよ。さっさと将来の生活を安定させて、晶ちゃんをお嫁さんにするた
めに。そうすれば晶ちゃんはまたママの娘になるんだもの。それでいいんだよね、ママ? ママは晶ちゃんさえいれば、そ
れでいいんだもんね?」
抑揚のない、聞く者の背筋に冷たい物が走るような口調で京子にそう言った美也子は、京子の乳房に顔を押しつけて乳
首を吸っている晶を見おろし、含み笑いを漏らしながら呟くように付け加えた。
「あらあら、本当にすっかり赤ちゃんになっちゃって。さっきまではお姉ちゃん子だと思っていたのに、あっと言う間にお母さ
ん子になっちゃって、ママにべったりなんだから。でも、ママに甘えきっておっぱいを吸う晶ちゃん、可愛いったらありゃしな
い。ほんと、ついつい苛めちゃいたくなるほど可愛い赤ちゃんだこと」
どこか嘲るような美也子の口調と、京子のことをママと呼び乳首にむしゃぶりついている姿を見られた羞恥に、晶は美也
子と目を合わすことができず、京子の胸にますます深く顔を埋めてしまう。
「駄目じゃない、美也子。美也子の話し方が怖いから、ほら、晶ちゃんが怯えちゃって。――よしよし、そんなに怖がらなく
ても大丈夫よ。美也子お姉ちゃんが可愛い晶ちゃんを苛めるだなんて、そんなことするわけないでしょ。だから怖がらなく
ていいのよ」
京子は、晶の横顔をいとおしげな目でみつめ、軽く体を揺さぶってあやした。
「ほら、今だってそう。ママ、今も晶ちゃんのことばっかり気にかけて。でも、ま、いいわ。私だって晶ちゃんが憎いわけじゃな
い。こんなに可愛い晶ちゃんだもの、ママの愛情を独り占めしちゃうのも無理はないと思う」
美也子は呆れたようにひょいと肩をすくめてみせ、なにやら含むところのありそうな口調で言った。
「それは仕方ないけど、その代わり、私が晶ちゃんを苛めちゃうようなことがあっても、それも仕方ないと思うんだ。男の子っ
て、好きな女の子をついつい苛めちゃうんだってね? 好きな女の子の気をひこうとして、でもどうすればいいかわからなく
て、それで却って苛めちゃうことがあるんだってね? それと同じ。私も晶ちゃんのことが大好きだから。赤ちゃんの頃はお
姉ちゃんぶってて、少し大きくなると今度はお兄ちゃんぶってて、なのに今はお姉ちゃんでもなくお兄ちゃんでもない、可愛
い甘えん坊の赤ちゃんの妹になっちゃった晶ちゃんのことが大好きだから。今日一日だけで、私というお姉ちゃんと徹也君
というお兄ちゃんの妹になっちゃった晶ちゃんのことが大好きだから。美優お姉ちゃんや香奈お姉ちゃんや恵美お姉ちゃん
から年下の妹扱いされる晶ちゃんのことが可愛くてたまんないから」
そう言って美也子はすっと腰をかがめ、京子の胸に顔を埋める晶に向かって両手を伸ばした。
「さ、ママのおっぱいはそろそろおしまいにして、まんまにしましょう。いつまでもママのおっぱいを吸っていてもお乳は出な
いからお腹が空くばかりよ。一階のダイニングまでお姉ちゃんが抱っこして連れて行ってあげから、さ、おいで」
そう言って両手で晶の体を絡め取ろうとする美也子。
「……マ、ママがいい。晶、ママのおっぱいがいいの……」
美也子の指先が体に触れた瞬間、乳首を吸ったままのくぐもった声で晶は言い、京子の首筋に両手でしがみついた。一
瞬、ガラガラがからんと短く鳴る。
「ふぅん、さっき私が部屋を出てく時は、お姉ちゃん言っちゃやだって泣きそうにしてた晶ちゃんなのに、いつの間にかママ
の方がよくなっちゃったんだ。やっぱり晶ちゃんは小っちゃな赤ちゃんだったのね。ママのおっぱいが恋しくて仕方ない、い
つまでもおっぱい離れのできない甘えん坊の赤ちゃん。こんな子がつい最近までお兄ちゃんぶってたなんて思うと、おか
しくてたまんないわ」
美也子は片方の眉をぴくんと吊り上げて、さも呆れたように言った。
「そ、そんな……」
思わず晶は抗弁しかけるものの、返す言葉がみつからなくて、すぐに力なく言い淀んでしまう。
「美也子ったら、またそんな怖い声を出す。いいじゃないの、もう少しこのままで。晶ちゃん、ママのおっぱいなんて久しぶ
りのことなんだから、気のすむまでたっぷり吸わせていげてもいいんじゃないかしら。それとも、ママのおっぱいの感触を
思い出した晶ちゃんが美也子のおっぱいなんて見向きもしなくなりそうなのが悔しくて、少しで早くママのおっぱいから晶ち
ゃんを引き離そうとしているのかな? 美也子、お風呂場で晶ちゃんにおっぱいを吸わせてあげたって言ってたわよね。で
も、ママのおっぱいを吸ったら晶ちゃん、美也子のおっぱいの感触なんてすぐに忘れちゃうかもしれない。それが心配なん
じゃないのかしら?」
乳房に顔を埋めて押し黙ってしまう晶の後れ毛を優しく撫でつけながら、京子が挑発ぎみに言った。
瞬間、美也子と京子との間に、目に見えない火花が散る。
父親と息子との間柄とは違い、母親と或る程度まで成長した娘との間柄は、親子というよりも友達みたいな関係になりや
すいという。仲がいい時はべたべたで、その逆に、些細なことですぐに互いをライバル視するようになるらしい。が、今の美
也子と京子との睨み合いは、そんな母娘関係のせいというよりも、拾ってきた愛くるしい仔猫の面倒をどちらがみるか、二
人の内どちらが飼い主にふさわしいか、その立場の奪い合いの結果と表現した方が正確なのかもしれない。
「晶ちゃんはどっちがいいの? お姉ちゃんに抱っこしてもらってまんまを食べに連れて行ってほしい? それとも、おっぱ
いがいいの? 晶ちゃんが選ぶといいわ」
しばらくの沈黙の後、冷え冷えした空気が流れる中、このままでは埒があかないと直感した美也子が、いったんは伸ばし
た腕を引き戻してぽつりと晶に言った。
「そうね、それなら公平だわ。どっちにするか、晶ちゃん選ばせてあげましょう」
美也子の提案に京子が即座に賛意をしめした。美也子のことを睨みつけつつも同じことを考えていたに違いない。つまる
ところ、互いをライバル視するほどに似たもの母娘というのは間違いなさそうだ。
「……」
どちらと問われて、すぐに答えらる筈もない。晶は、二人の視線を痛いほど感じつつ、京子の乳房に顔を埋めて押し黙る
ばかりだ。
「あらあら、お口もきけない小っちゃな赤ちゃんだったのかな、晶ちゃんは」
乳首を吸うばかりでいつまでも返事をしようとしない晶に、京子と美也子が同時に言った。二人の声が綺麗なユニゾンに
重なって晶を急きたてる。
「……お、お……」
やっとのこと、晶の口から弱々しい声が漏れ出た。
それを耳にした二人は、さっきの息の合ったユニゾンが嘘みたいに、今度は
「お姉ちゃんがいいのね!?」
「おっぱいがいいのね!?」
と口々に言い張って譲らない。
けれど、それから更にしばらく躊躇してから晶が口にしたのは、まるで思いがけない言葉だった。
「……お、おしっこが出ちゃう……おしっこが出ちゃいそうだから、トイレへ行かせて」
いかにも恥ずかしそうに頬を赤く染め、二人と目を合わせないようにしながら晶が言ったのは、お姉ちゃんでもなく、おっ
ぱいでもなく、おしっこという言葉だった。
「え……?」
思ってもいなかった晶の言葉に、美也子と京子は一瞬きょとんとした顔を見合わせ、続いて、どちらからともなく、くすく
す笑い出した。
途端に、それまで二人の間に流れていた冷たい空気がどこかに消えてしまう。
そうして、ひとしきりさも面白そうに笑い合った二人は、再び声を揃えて晶に言った。
「トイレなんて行かなくていいのよ。晶ちゃんは赤ちゃんだもの、おむつの中におもらししちゃっていいんだから」
「だ、だって……」
声を揃えてそう言う二人に、晶は京子の乳首を口にふくんだまま弱々しく首を振った。
茜の店の試着室で美也子に抱かれてのおもらしを強要されてから、まだ二時間も経っていない。いつもの晶なら一度
トイレへ行くと、次のトイレまで三~四時間ほど保つのが普通だ。けれど、日射しのある所はともかくまだ日陰に入ると底
冷えのする季節、下腹部がすうすうする慣れないスカート姿で気の早い冷房の利いたショッピングセンターの中を連れま
わされ、家に戻ってからも風呂上がりにタオルを体に巻き付けただけという湯冷めしやすい格好にされていたため、芯か
ら体が冷えて、いつもになくトイレが近くなってしまったようだ。しかもショッピングセンターの喫茶店でたっぷり飲まされた
オレンジジュースのせいで、いったん感じた尿意は、普段とは比べようもないほど急激に高まってくる。もうすぐにでも我
慢の限界を迎えそうだという思いに耐えかねて恥を忍びつつ口にした懇願に対して二人から返ってきたのが「おむつの中
におもらししちゃえばいい」という容赦ない言葉なのだからたまらない。
「だってじゃないでしょ? 晶ちゃん、本当のおしっこや白いおしっこで、紙おむつを三枚も汚しちゃったのよね? だったら、
今になっておむつの中におしっこを出すのを嫌がるなんて変じゃないかしら」
京子は晶の頬が羞恥と屈辱とに赤く染まる様子に目を凝らしながら、自分の膝の上に座らせて横抱きにした晶の股間を
オーバーパンツの上からぽんぽんと叩いて言った。紙おむつの時と同様ペニスはお尻の方に折り曲げて十枚の布おむつ
で押さえつけているため、前の方から股間に触れても、それらしい膨らみの感触は、それと注意していないと掌に伝わって
こない。
「そうそう、ママの言う通りよ、晶ちゃん。ショッピングセンターでトイレを待つ間に我慢できなくなっておもらししちゃったのは
仕方ないと思うけど、試着室でお姉ちゃんが抱っこしてあげたままおもらししちゃったのは、自分でそうしようと思ってのこと
だったよね? あの時、晶ちゃん、わざと紙おむつの中におもらししちゃったんだよね? だったら、今もおむつの中におも
らししちゃっても、ちっとも変じゃないわよ。あの時はお姉ちゃんが抱っこしていてあげたけど、今度はママに抱っこしてもら
っておむつの中におもらししちゃうといいわ。ママに抱っこしてもらって、ママのおっぱいを吸いながら、おむつを濡らすのよ。
紙おむつより布おむつの方が濡れた感じがわかりやすいから、お尻の方からおむつが濡れてじめっとした肌触りがじわじ
わ前の方に広がってく様子をちゃんと経験しておきなさい。そうやって、女の子がおもらししちっゃた時の濡れ方を体で憶え
るのよ」
美也子は、腰をかがめた姿勢で床に膝をつき、二人と目を合わすまいとして京子の乳房に顔を埋める晶の瞳を真下から
覗き込むようにして言った。
最終更新:2013年11月08日 23:18