夢想彼女
昔から、男女問わず「カッコいい」と言われるのが嫌だった。
幼いのもあって、それがなぜなのかまでは分からなかったが、とにかくその言葉を自分
を対象としてかけられる度に心に引っかかり、澱のように胸の奥底に溜まっていったのだ。
もちろんそんな不満を表に出すことは好ましくないと分かっていたから、いつも自分は
生来の整った顔を崩さない程度のはにかみ笑いを浮かべ、やんわりと否定する。
そうしてずっと嫌われることなく、輪から外れることなくここまできたのだ。
γγγ
花嫁と同じ、白いセーラー服を着ていた。
「ゆうちゃん、可愛い」
共働きの親に代わって、自分の面倒を見てくれたのは主に父方の叔母だった。
祖父母が早くに事故死し、ずっと寂しかった家が母親が来たおかげで明るくなったのだ
と、涙もろい叔母は何度も自分に話してくれた。
母親は自分も高校生の時に父親を亡くしていたのと、兄弟が居なかったせいか、当時ま
だ学生の義妹が不憫な以上に可愛かったのだろう。
時に夫に息子を預けてまで共に居たその可愛がりようと、叔母の懐きようはいわゆる嫁
と小姑ではなく、並んでいれば実の姉妹のように息子の自分からも見受けられるほどだっ
た。
「ゆうちゃんは女の子みたいに可愛いねぇ」
被服系の専門に通っていた叔母は趣味や課題に自分の服をいくつも作ってくれ、時には
兄嫁が許すのを良いことに女児用の服まで自分に着せ替えさせていた。
自分はといえば、人見知りに加え叔母に甘えてばかりだったので、彼女の作ってくれる
白や水色、ピンクのふわふわした服も喜んで着ていた。
実際外を歩けば誰もが褒めてくれるなりほほ笑みを投げかけてくれたし、鏡の前に立て
ば自分は絵本の中のお姫様のような気分になれた。
「可愛い」、「可愛いわね」といった言葉にどっぷり漬かり、現に小学校に上がって髪
を短くしても、女子と間違われてばかりいたのだ。
さすがにランドセルを背負う頃には女児服を着せられることはなかったが、可愛らしい
フードの付いたシャツだの、ポンポンの付いた上着だのを彼女が作る度にはしゃぎ、仮縫
いのまま外に出ようとしてたしなめられていた記憶がある。
γγγ
しかしそんな日々は、叔母の結婚により終わりを告げた。
国際結婚で相手がどこかの国を拠点に起業するらしく、そのそばで自分の夢を叶えるこ
とに希望を抱きつつも、兄である自分の父親よりも母親や自分と別れることに彼女は涙した。
そして「最後に私の服を着て、お祝いしてね」と、自分も結婚の準備で忙しい中、甥へ
最後のプレゼントを作った。
それは、花嫁と同じ真っ白なセーラー服だった。式場でひときわ目を引くようにと、当
時服飾メーカーに勤めていた彼女は同僚や上司のコネを使って、自分の気に入った材料探
しに奔走したという。
もちろん下は半ズボンだったが、水色のリボンでラインの入れたセーラーカラーは、そ
の場でクルリと回ると軽やかになびき、幼い自分は鼻高々だった。新郎よりも叔母のそば
にいる方が多かったかもしれない。
「よく似合ってるわ、とても可愛いわよ」
「これは可愛らしいお子さんだ」
思えば、幼い自分が最後にかけられた女性的な賛辞はこの時だったかもしれない。
叔母が家を出て以来、それまで自分を取り巻いていた世界は変わった。
小学校の中学年にもなれば、身体が変わらずともそれなりに男女を意識し始める。奇し
くもちょうどそんな時期に、無条件に自分の容姿を「可愛い」と称賛してくれる存在も、
自分を飾るものも成長につれなくなった。
もちろん両親は少ないはずの時間をやりくりして息子に愛情をかけてくれたが、自分が
欲しかったものとは何かが違った。息子を女の子として扱うなど、ありえないことだから
無理もない。
「豊クン、カッコいい!」
「須藤はクラスで一番女の子にモテるんだってさ」
ませた子供の発言に大人は苦笑し、自分はその言葉に引っかかりを感じつつも、誰の機
嫌も損ねないよう何も言わずにほほ笑むことにした。
一人っ子なのもありあまり突っ込んだ付き合いをしなかったのも、男女から羨望のまな
ざしと、嫌がらせを受けない程度の嫉妬を集めていたのだと思う。
γγγ
「カッコいい」という言葉に違和感を覚える理由をはっきりと自覚したのは、四年生の
秋だった。
当時クラスの誰も彼もが習い事だの塾だのにいくつも通っていて、自身が空いた時間に
趣味程度のピアノを教えるくらいだった母親も、成績に不安はなかったが息子が孤立しな
いようにと級友が多く行く個人塾に通わせ始めた。
自分はといえば、別に行きたくはなかったが親の言うことに間違いはないので、良いと
も嫌とも言わずに級友の背を追って駅前のそのビルへと入った。
塾の講師はいかにも体育会系だったような、壮年の男性だった。
今思うと、幼女趣味というよりも単に女児への接し方が分からなかったのだろう。泣か
せてしまわないように、悪い噂を流されないようにと女子に対しては慎重すぎるほどに彼
は「優しい先生」として振る舞った。
逆に男子にはそういった気遣いは一切せずに、感情を込めずにただ提出してきた課題を
添削し、必要があれば間違いを指摘して「あとは自分で考えろ」と突き返すだけ。課題を
怠ければ、怒られていない自分まで怯えるような怒鳴り声で叱責した。
それまで出会った教師は厳しくとも甘くとも、自分を含め男女の区別はつけていなかっ
たように感じていたので、対象によって態度が変わるその講師は、ひどく恐ろしい存在と
して自分に刷り込まれた。
「須藤クンはいっぱいマルもらってるね!うらやましいなあ」
「すごいね」や「カッコいい」等と自分に笑いかける相手の方が、何もしなくても講師
に優しくしてもらえる彼女らの方がよっぽどうらやましかった。
「僕も、僕だって可愛がってもらえるはずなのに!」
声に出しはしなかったが、自分の凡ミスを冷ややかに指摘される度に、同じ箇所を何度
も間違える女子が優しく指導されるのを見る度に、問題を解きつつも頭の中はその思いで
いっぱいだった。
表向きには塾にも講師にも問題はなかったが、その学年が終わる頃ついに耐えきれず、
ある日の夕食後に親に頭を下げた。
「家で勉強を頑張るから、もう塾には行きたくない」
めったに物をねだらない息子の涙ながらの訴えに、両親は黙ってうなずき、母親は「ご
めんね」と優しく抱きしめてくれた。
γγγ
中学に進学し、あいかわらず自分の容姿や成績をもてはやしてくれる女子らはいたが、
当然ながら「女の子」として扱ってくれる存在はいなかった。
日々の課題や任された委員会の仕事に忙殺されて、そんなコンプレックスを忘れかけて
いた頃、契機がおとずれた。
その時質問で職員室に入ったのに、課題の未提出者に催促してくれと教師に頼まれ、自
分は顔には出さないがあまり良い気分ではなかった。
「お前が言うと女子の頑張りが違うんだ」と冗談混じりのセリフに少し釈然としない思
いを抱きつつ、教室に戻る。
入った途端、休み時間とはいえうんざりするような喧騒が耳に飛び込んできた。
「うっわすっげうわーっ!」
「もう、あいつらマジ嫌なんだけどー」
部屋の真ん中に固まり何かを見ている男子らと、それを遠巻きにして呆れつつも興味津
々といった表情の女子たち。
次の授業が始まったら、少し時間をもらおうと決め席に戻ろうとした自分を、輪の中央
に居た一人が呼び止めた。
「あ、おーい須藤須藤!」
「田口、お前だけじゃないけど理科Bの課題、先生が出せって」
「あー、ごめんそれはまた今度!それよりさぁ、」
「おい、やめとけよ」
生真面目な自分が眉をひそめ教師に告げ口することを懸念したのか、別のクラスメイト
がたしなめるが、
「大丈夫だよ!須藤良い奴だもん!…でさ、女教師モノ興味ある?」
「教師…?」
うなずきも断りもせず首を傾げる自分に業を煮やしたのか、小学校から同じクラスだっ
た彼は手にしていた雑誌を広げ、中のページを見せてきた。
そこにあったのは、異常にスカート丈の短いスーツ姿の女が、学ランの少年(今思うと
青年だろう)の前にひざまずいている写真だった。
学ランは教室(と思われる)の椅子に座り、女の引き裂けたブラウスの中からこぼれる
豊かな乳房を、靴を履いたままのその足でたわませている。
「なっ…何見てるんだよ!」
「うわ須藤赤くなってるよ」
「かっわいー!」
「やだ、須藤クンにそんなの見せないでよー!」
こんな開かれた場所で、そんなモノを見せられたという羞恥に赤らむ自分の顔を見て彼
らは、そして周囲は笑った。
もちろんそれは嘲笑ではなく、予想通りの反応にからかうといった類のものではあった
が、恥ずかしい思いをしている自分を皆が見ているという状況に、なぜだかひどく興奮し
た。
そして写真を見せられた時、一瞬学ランではなく辱められている女の方に自身を重ねて
しまった自分に戸惑った。
お堅い黒スーツのスカートを足の付け根まで捲り上げ、彼女は設定的に教え子であろう
学ランにかしずいていた。
それだけなら硬質な印象を与えるだろう黒縁の眼鏡の奥から学ランを見上げる、隷属す
る者の瞳に、屈辱を与えられてなおモノ欲しげに薄く開いた唇に、わけもなく嫉妬してい
る自分が居た。
(…嫉妬……?)
「分かったから先生来るまでにちゃんと隠せよ。後みんな課題出せ課題」
反感を買わない程度に呆れた声で場を収めつつも自分の感情に困惑し、同時に小学生の
頃のトラウマが沸き上がるのを必死に抑えながら、不可解な気持ちの正体を探り心を鎮め
るために、あることを計画した。
γγγ
その月は土曜日も両親は仕事で、日中は自分一人が家に残っていた。
普段は宿題の後ぶらぶらと本屋に行ったり、気が向けば中古ゲームを買ってきたりとし
ていたのだが、その日だけは先約があった。
別に休みに自宅にどれだけ居ようと構わないのに、これからやることを思い緊張しなが
らハウスキーパーが掃除を終え出て行くのを見送った。
彼らが忘れ物をしてないか確認してから、入らなくなって久しい部屋へと向かう。
開けた扉は少女趣味なプレートのかかる、人だけが居なくなって何年も変わらない叔母
の部屋のもの。
「別に客間もあるんだから、あの子がいつ帰っても良いようにしときましょう」と、義
妹の実の兄である夫にきっぱりと宣言し、母親が家具もそのままに掃除だけをさせている
のだ。
それでも生活臭のないせいでわずかにほこりっぽい絨毯を、自分の足はそろりと踏みし
めた。
その懐かしさと、今や連絡もろくに取れない叔母への恋しさに涙すら出そうになったが、
そんな感傷に浸るためにこうして入ったのではない。
「お邪魔します」
間抜けなセリフとともに、クローゼットの戸を開く。目当ての物はすぐに見つかった。
それは、叔母が高校生の時着ていたという制服だった。
自分が着たそれより少しだけ色のあせた、白いセーラー服。紺色の襟には三本白いライ
ンが入っていて、赤いスカーフとともにその学年を表すのだと、聞いた覚えがある。
スカートをかけたハンガーから外し、手に取る。久しぶりに間近で見るセーラーカラー
と、クローゼットと防虫剤の匂いに混じってかすかに残る叔母の懐かしい香りに、鼓動が
早まった。
そっと持ち上げ、胸の前に合わせてみる。
若い頃から彼女は背が高かったのだろう、小柄な自分は十分この身を収めることができ
そうだ。
部屋着のポロシャツを脱ぎ、スカーフとファスナーを緩めたセーラー服の上をかぶる。
布や脇腹の皮膚を挟まないよう、クローゼットに付いた鏡を見ながらファスナーを閉め
直し、どこか知らない校章の付いたループにスカーフを留める。
いい年して母親の剃刀で十分処理できる薄いひげや体毛も、合宿先の大浴場ではないこ
の場では、自身の背を押す材料でしかなかった。
着ていたジーパンや靴下を脱ぎ、女学生服に一番違和感がなさそうだと、自室から持っ
て来たハイソックスを穿き、凹凸のないふくらはぎを包んだ。
冬の間防寒のためにズボンの下にあったこれを、今日は見せるために身に着けるのだと
思うと指が震えた。
多数の生徒に着られることを想定しているためかスカートのウエストは緩く、腰骨でど
うにか一番細いところが引っかかる感じだった。細身の叔母もきっと今の自分のように、
ホックを留めても落ちてしまいそうなスカートに手を焼いたのだろうか。
せいぜい上半身しか映せないクローゼットの鏡を見ないようにしてその場を離れ、部屋
の隅に置かれた大きなスタンドミラーの前に立つ。
叔母が高校生になった時、祖父母がプレゼントしてくれたのだというその姿見は、縁や
裏側に凝った彫刻が施されていて、自分も幼い頃叔母の服を着てその前に立つ度に、おと
ぎ話に出てくる鏡みたいだと思ったものだった。
震える両手を叱咤しながら、ほこり除けにかけられていた布を取り去った。
「……ぁ………」
かすれた喘ぎは、紛れもなく歓喜に満ちたものだった。
少し大きな制服に身を包む女生徒が、その中に居た。
かすかに震える膝が触れ、折り目正しいプリーツスカートがひらりと揺れる。それすら
もそれを着ているのだという、自分を喜ばせるもの以外の何物でもなかった。
倒錯した昂揚を、薔薇色に染まった頬は如実に現していた。
苦労しながらほんの少し口角を持ち上げると、まるで着慣れない制服に緊張しながらも
はにかむ新入生のようだ。清潔感のあるショートカットが、やせっぽちの身体や強張る笑
顔を幼いものに見せている。
『ゆうちゃんは可愛いねえ』
『よく頑張ったね』
『おりこうさんだねえ』
少年の自分には向けられなかったかつての講師の言葉が、少女の姿形をした今の自分に
は与えられる価値がある。
自分には可愛がられる、愛される根拠があるんだ!だってほら、セーラー服もスカート
も、赤いスカーフだってこんなに似合っているじゃないか!
両親の帰宅に間に合う時間になるまで飽くことなく自分の姿に見入り、アラームの音に
驚いてようやく自分が長時間姿見の前に立っていたことに気付いた。
未練がましくゆっくり着替えていたら、自分の性器が勃起していた。淫らに熱を持ちヒ
クヒクと脈打つそれに、自分のものながら困惑する。
性欲に乏しいと思っていた自分の、紛れもない悦楽の萌芽を見つけ、ここで初めて、ほ
んの少しだけ罪悪感を覚えた。
γγγ
叔母が結婚した時とは別の意味で、自分の世界は変わった。
学業に支障のない範囲で、自宅で一人の時間さえできればセーラー服をまとい、鏡の中
の自分の姿や立ち居振る舞いの「女性としての」違和感を減らしていく努力をした。
今までたいして気を使わなかった肌の手入れを、「年頃だから、身だしなみに気を使い
だしたのね」と周囲に怪しまれない程度に始めた。その影では、母親や同級生の女子の仕
草やネットで情報収集し、ほんの少しずつ母親の化粧品を使いこなせるよう、容貌に合っ
たメイクを覚えるようにした。
髪を伸ばしだしたのも、周囲には「セットが楽だから」と「真面目な須藤クンの意外な
一面」を垣間見せることで誤魔化し、その影では鏡の中の少女がより女性らしくなってい
くことに酔った。
ジャージや大きなコートを着て校外活動なり街を歩けば、声をかけてくる同年代や年上
の男に苦笑しながら首を振り、愕然とされる度に笑う周囲に覚られないよう満足感に浸っ
ていた。
秋波を投げかける女性では満たされない。頬を染め身を乗り出してくる、自分の見た目
を性愛の対象としてくれる同性の視線が欲しかった。
自分は同性愛者なのかとも思ったが、試しにそういったモノをネットで漁り見てみても
逞しい肉体や精悍な顔を見て食指は動かされなかったし、肛門に性器を突き入れる画像は
最後まで見ることができなかった。
あくまで女の姿をした、魅力的な女性として扱われる自分に興奮するということが分か
り、自身に呆れつつも安心した。
これならばれない限り、他の誰も、自分さえも傷つけることなくこの秘密の遊戯を楽し
むことができるからだ。
うまくやる自信はあった。どういうわけか中身まで要領良く生んでもらったおかげで、
短い人生であの塾時代以外に挫折した経験は一度もない。
「きみ、可愛いね」
「彼氏待ち?もし良かったら…」
「すみません、ちょっと時間ある?」
「えっ!?男なの?」
「須藤…さん、でいいのかな?」
「ちくしょう、だまされた!」
困ったようにはにかみ、周囲にとりなしてもらう。「まいったな」等と言いつつも、胸
の内では達成感にあふれていた。
γγγ
スカートの中、下着の下にまで手を伸ばし、みずからを慰めるようになったのはいつか
らだろう。
雑誌や画面の中の女性でなく、女の格好をした自身に欲情するという自分の悪趣味さに
負い目を感じつつも、その後ろめたさがかえって気分を盛り上げた。
「は……っ…あふ………っ」
大きな鏡の前で下着を下ろし、セーラー服の上下を着たまま屹立した性器を一心に擦る。
セミロングの黒髪を汗で頬に貼り付けて、汚さないようにとスカートの裾を咥え、みず
からの男性器を扱く少女というその異様な姿を、鏡面は偽りなく映し出していた。
「ぁ……あ…ごめんなさい……っ!」
妄想の中で自分はたいてい誰かに罵られ、その相手に許しを乞うていた。
それは学校で自分に頼りつつも気安く笑いかけてきた級友であったり、自分の発言に眼
鏡の奥の目を細めた厳格な教師であったり、果ては自分に憧憬のまなざしを向けた女生徒
であったりした。
『すました顔しているくせに、そうやって女の格好して…気持ち悪い』
『目をかけてやったのに、どうしようもない変態だ』
『うわぁ、幻滅…』
色事に乏しい自分の語彙では、この程度で自身を責めるのが精一杯だ。
「可愛がられたい」という願いがどういうわけか歪み、こうして自分を苛み辱める事を
求める。これはきっと、あの時見せられた写真のせいなのだろう。
「あぁ……そう、そうなの…」
教科書の朗読にはともかく、演説には向かないと評された声で、衣装にふさわしい、女
のような口上を紡ぐ。
「ゆるして…お願い、出ちゃ、う……っ」
居もしない誰かに媚びを売るような色に自分で怖気が走るが、同時に今まで味わったこ
ともないような興奮を覚えた。
当時から目に焼き付いて離れない、辱められてなお教え子を求め、被虐に酔いしれる女
の顔を思い浮かべ、空いた手でセーラー服の上から胸をさする。
うっすら筋肉がのっているだけの、つまらない胸板。写真のように踏みつけられたり、
ネットで見た画像のように乱暴に揉みしだかれてみたらどんな感触だろう?どんな気持ち
になるのだろう?
分かるはずもないが、それでも下着を着けていない素肌に服越しに触れると、自分の手
ではなく誰かに撫でられているようで、ゾクゾクとした。
あれらに出ていた女性ほど大きくはないが、乳房よりはそれに近い乳頭に布地が擦れる
と、ピリッとした甘い痺れが背筋を這い上がる。性器を扱くのとはまた違った刺激を、夢
中になって求めた。
「…ぁ…もうだめ、あ……ぁ…っ!」
甘やかな夢想に耽りながら、今日もまた汚らわしい欲望を放った。
(おしまい)
おまけ
某月某日。
須藤に『無双』で野球拳しようと言ったら、マジ切れでコントローラーぶつけてきた上
に泣きながら出て行ってしまった。
白衣の天使ルックのまま、どこで着替えたんだろう?
「純白の思い出を汚すなぁ!」とか、マジわけ分かんないし。
(ほんとにおしまい)
最終更新:2013年04月27日 14:39