和装彼女

(「偽装彼女」シリーズ・短編)

 俺が右利きなことと、和服の合わせに感謝する。
「…ぁ……っん」
 後ろから抱え込んだ身体を包む、萌葱色だか若草色だかの振袖の合わせ目から、緋色の
襦袢との間に手を潜り込ませる。
 寒空の下ですっかり冷えた白い頬の上で、ヘアピンから零れたいわゆる烏の濡れ羽色な
サラサラストレートヘアが揺れている。エロ美しい日本万々歳だ。
 本人は認めないだろうが期待にツンと尖った乳首を、俺の指先が襦袢の上からかすめる
と、控え目な喘ぎがもれた。
「っ……くすぐったい…」
「え?直接触って欲しいって?本当やらしいなぁ、お前」
 顔をのぞき込んでやると、紅をのせた唇を震わせて瞳を伏せる。
 外では女にまで振り返られた、楚々とした佇まいをしていたこいつが、こうして同級生
の部屋で言葉責めされてる変態野郎だなんて、誰が思うだろう。
「ノーブラだと気になるなんて、すっかり女の子だよなぁ」
 耳の中に吹き込むようにささやきかけてやると、目の端がかあっと赤く染まった。
「……っゃ、あ…!」
 襦袢の下に指を潜り込ませると、両手で俺の手首を掴んできた。
「どしたん?」
「っあの……座らない、の…?」
 動きを中断して聞くと、おそるおそるといった感じで尋ねてくる。
 汚い部屋とはいえ、足の踏み場も腰を下ろす場所もあるのに、足袋や草履に慣れない足
で歩き続けたからだろうか。そういえば学校にいる時はもちろん、こうしている時も必要
以上に触ってこないこいつが、部屋のドアを背に立つ俺にもたれかかるのがいつもより早
かった。
「うん、もー少しこのまま。寄りかかっていいから」
 そう言われて、はいそうですかと体重を預けることがないから良い。
 直に襦袢の下の肌に触れた俺の手のひらの冷たさに身を竦めても、震える膝で健気に立
とうとする彼だからこそ、落とし甲斐ってものがあるのだ。
 ない乳を持ち上げるように、薄い胸板を撫でまわす。
 帯が当たっている隙間まで指先をのばして腹をくすぐると、抱え込んだ身体がびくんと
跳ねた。


「ひゃっ…ぁ、違……っ」
「何?さっきからおねだりしまくりじゃね?」
 新年早々サカってんの?と苛める口は休めずに、胸を責めていない方の手で、服に合わ
せてアップにしていた相手の髪をいじくる。
 ヘアピンを一本ずつ抜きながら、親指の腹で硬くなった乳頭を押しつぶした。
「ぁ……んんっ…」
 ずっと出していた細く白いうなじを這うように、止め癖の付いた黒髪が降りる。
 気付いているのかいないのか、俺の指の動きに合わせて身体をビクビクさせている須藤
の両足は、すっかり支える力を失っていた。
「ふ……っぅ…」
 下着なんか穿かせてないから、奴が寄りかかると俺の腿に押しつけられる尻の割れ目が
はっきりと分かる。
「ひぁっ!?ん……っ」
 片手をその間に滑らせて尻たぶを揉みしだくと、薄い肉付きながらもぷりんとした弾力
が俺の指を押し返した。
「あぁ……っもう、だめ…っ」
 全然ダメっぽくない声色だったが、一応聞いてみる。
「なに?ケツ掴まれただけでイきそう?」
「…っそうじゃなく、て……ふ、服…」
「服ぅ!?」
 尻揉まれて感じてるのは事実のくせに、窮屈な振袖にケチをつけてきた。こいつは和服
のロマンをまるで分かっちゃいない!
「せっかく本読んでビデオ見て頑張って着付けたんだから、もうちょっとさぁ…」
「ぬ…脱ぎたいわけじゃなくて……っ」
 言って俺の腿に密着した尻をもじもじさせる。あー、窮屈って、そっちの方ね。
「チンコ勃ってんの?」
「………うん」
 少しためらった後、蚊のなくような声で肯定した。
「どれどれ?」
 合わせ目から手を抜き、掴んでいた尻も放すと、力の抜けた身体はズルリと床に落ちた。


「足だせよ」
 傍らに立った俺に言われるまま、膝を伸ばして両足を投げだす。
「…どのへんが?」
 襦袢やおはしょりで何重にも覆われてて、勃つモノも勃てないのだろう。本人の申告に
あるような隆起は、服の上から見る限りはなかった。
 まあ振袖着て勃起する奴に配慮してデザインされているわけがないから、しょうがない。
 犬でいったら腹出して降伏状態な須藤に、俺はもったいをつけるように問いかけた。
「チンコ苦しいんだ?」
「……うん」
「乳とケツ揉まれて感じまくったんだ?」
「っ………」
 答えないまま、もぞ、と腰を動かすが、そのくらいで着物がはだけたら時代劇なんて成
人指定だ。
「答えろよ。違うなら何とかしてやる必要ないだろ」
 品の良い薄化粧を施した面は明らかに狼狽している。姉貴のなのに、ギャルメイクとナ
チュラルメイクとの差激しすぎ。
「女の子みたいにおっぱいとお尻揉まれちゃって、おっきしちゃったんですか?」
「…………ぅん…」
 こいつ自身に変なこと言わせたわけでもないのに、俺の顔を見ることもできないようだ。
すっかり上気した奴の頬に、一足早く桜色を見た。
「そっか。じゃあ見てやるよ」
 安堵したように相手が息をつくのを確認してから、俺は彼の無防備なそこに片足を下ろ
した。
「ここか?」
「ひゃうっ!」
 土踏まずに不自然な感触のあるモノが当たる。
 めったに聞けない面白い悲鳴に、俺はわざとそこを爪先で撫でてやった。
「あれー?どこかなあ?わっかんねえなあ」
「ひゃ…ぁ、やめ、やめてっ!」
 足袋を履いたままの奴の爪先が、ぎゅっと縮こまる。再び足裏で、そこを包むように踏
んでみた。
「何を?」
 かなり適当に足を上下させているだけなのに、痛気持ちいいってやつだろうか。足裏に
伝わるペニスの感触は、萎えるどころか硬く俺の足を押し上げてくる。


「ほら、何をどうすることをやめて欲しいんだよ」
 踵や親指で軽く踏みつけてやると、身をくねらせて必死に言葉を紡ごうとする。
「やっあ…っ、グリグリしないでぇっ!」
 生真面目な優等生が呂律まわらなくなるくらい、目隠し足コキは堪らないみたいだ。
 いいかげん泣き入っちゃいそうな振袖乙女の哀れな姿に、俺は焦らすのをやめてやるこ
とにした。
「ほらよ」
 床に膝をつき、奴の着る着物と襦袢の端を一緒に掴んで、帯はそのままに前を割る。
 ずっと押さえつけられていたペニスが、作られた隙間から勢い良く起き上がった。
「うわすっげ」
 振袖の合わせ目から、服や顔にそぐわない立派なペニスがニョッキリ生えてる図は、違
和感があるなんてレベルじゃない。
 すっかり勃起しきっているそれから溢れた我慢汁が、竿を伝って服の隙間からちらりと
覗く太股まで濡らしているのが見える。
「あー、こんなになってるんだったら早く出してやれば良かったなあ。ゴメンな」
 白々しく謝ってみせるが、長いこと焦らされては中途半端にいじくられた相手はそれど
ころではないようだった。
 須藤の顔を覗き込み、聞いてみる。
「…イきたい?」
「いきたい……っ」
 熱に浮かされたように、俺にすがるように彼は訴えた。
「そうか」
 俺はにっこりと笑って、奴の震える両手をとる。そして、
「ほら」
 下半身よりはマシだがはだけた胸元と、汁を垂らし続けるペニスとに持っていった。
「やってみろよ」
 優しくささやきかけてやると、おずおずと自分からそこへ指をのばす。
「見ててやるから、好きにイってみせろよ」
 重ねて言っても、不安げな瞳が俺をうかがうように揺れる。相変わらず信用してもらえ
てないなあ。
「返事は?」
「………は、い…」
 そろりと動かし始めた白い手が、無我夢中で自身を愛撫するようになるまでは、さして
時間はかからなかった。
「…ん……んっ…」
 片手で自分の乳首をいじくりながら、血管の浮いたペニスを扱く。
 御利益あるんだか分からない破魔矢やお札を買うよりも、こっちのがずっと俺の心を満
たしていた。
「ん、ぅ…っ……ぁあ…っ!」
 着崩れた振袖の間から、美少女の顔をした変態野郎は今年最初の精液を噴き上げた。

(おしまい)

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最終更新:2013年04月27日 14:40