肛戯彼女

(「偽装彼女」シリーズ・短編)

 机の引き出しに隠してて、見つかって叱られるモノといえば、やっぱり赤点の答案とかだ。
 ガキだから捨てるに捨てられず、いっぱいになったところでタイミング良く親に引っ張り出されて責められる。
 「何ですかこれは!」「…テスト」「それは見れば分かります!」なんてやりとりを俺もいつか俺の息子だか娘だかとやるんだろうなあ、俺の遺伝子だものなあとは薄々感じてはいたが。
「…何?これは」
 まさか高校生のうちに詰問する側になるとは思わなかった。
 される側は、俺の居た部屋の持ち主。白いフワフワのキャミにデニムのミニスカを合わせた可憐な黒髪乙女。
 風呂上がりでほんのり上気した頬から、ザッと音がしそうなくらい血の気が引いてゆく。
 湯冷めしちゃわないか心配だったけど、部屋に入ってきた奴が手にしたタオルや、肩に垂れる髪はほとんど乾いているみたいなので、安心して俺は机の引き出しに隠されていた「答案」にあたるモノを指差した。
「これは、何ですか?須藤豊くん?」
 姿だけならどこから見ても美少女そのもののイケメン同級生は、その可愛らしい唇をキュッと噛みしめた。

 яяя

 両親不在の奴の家は、その品の良さを表すかのように小洒落た邸宅で、その生真面目な性格を表すかのように整然とした中身だった。
 いろんな意味でもてなしてもらった後、夜俺と入れ違いに奴が風呂に入っている間にお部屋拝見…ていうかエロ本チェック。男子生徒がダチん家行く時のたしなみだ。どうせ否定されるだろうが。
 あんなストイックなふりしてドM女装趣味を持つ彼のことだから、さぞかし刺激的なモノがあるのだろうと思ったら…俺の予想をさらに上回るブツが出てきた。


「…な……なんで…」
「質問に答えなさい」
 本当に赤点の答案だったらまだマシだったろう。しかし彼は塾にも通ってないのに学年首席にして品行方正な優等生。その趣味以外に隠す必要のあるモノなんてないはずだったのだが、
 ポンプ式のローションボトルにコンドームの箱。
 リップや口紅のスティックサイズの、白いコードレスローター二つ。
 不自然な肌色の、グロテスクに勃起した男性器の模型。
 きわめつけは開封済みの、イチ○ク浣腸の小箱。うっかり救急箱に入れるの忘れてて~…って言い訳は、他のブツがあるのでちょっと苦しい。
「何かなぁ、これは?…名前知らないなら、一個ずつ教えてやろうか?」
「……ど………道具、です………」
「へぇ、道具ぅ?」
「うん……」
 奴的に気まずい沈黙。シックなカーペットの上に並べられた「道具」が消えてくれないか祈るように見つめているが、消えるわけがない。
「これで、何やってたの?」
「っ……!」
 ビクリと身を震わせ、椅子に座った俺をうかがう。高さ的には見下されてるはずなのだが、なんだろうこの優位感。
「道具なんだろ?何に、使ってたの?」
「……もう、許して…っ」
 恥ずかしげに目を伏せてしまうのだが、それでは答えになってない。
「お返事できないことに使ったのかな?ユカちゃんは」
「ご…ごめんなさいっ……!」
 椅子から立ち上がると怯えたように後ずさられてしまったので、ちょっと慌てる。あれ?怒ってるとでも思われた?
「大丈夫だよ」
 楽しさがにじみ出ないように気をつけて、優しくむき出しの肩と乾きかけた髪を撫でてやる。びくついていた身体は思いの外柔らかな声音に、ほんの少し警戒を解いた。
「ユカちゃんがエッチな子なのは、よーっく知ってるから…でも、こんなの持ってるくらいエッチだなんて知らなかったなあ」
「………やだ……っい、言わないで……」
 顔を覗き込むと羞じらうように横を向かれてしまうが、両肩に手を置いて無理やり目を合わせる。
「あれで、オナニーしてたの?一人で?」
 至近距離で尋ねられ、聞こえないふりもできない。
「…ひ……ひとり、で…………してた…」
 あれらの淫具を使って自分を慰めていたのだと、どこまでも清らかな美少女の瞳が、可愛らしい唇がそう告白した。


「……よくできました」
 頭を撫でてやると、気でも抜けたのかフラフラしたので支えてやる。
「そっかぁ。あんなの使っちゃうくらいユカちゃん、エッチしたかったんだ?」
 どこまでも、どこまでも「優しい彼氏」の顔をして、そして、
「…じゃあ、やってみな」
 「ご主人様」の声で、俺は命令した。
「ぇ……な、」
「何って、オナニーに決まってんだろ」
 「何を?」ととぼけられるまえに先回り。入手経路も知りたいところだが、それはあとでじっくり聞くとしよう。
「これ全部使って、お前がどんな風にオナニーしてんのか見せてみろ」
 奴の身体から手を離し、床のそれらを示す。
 しばらくすると、意を決したようにタオルを白い手が握りしめた。
「…わかりました……」
 もう少しだだこねるかと思ったら、素直にうなずいてくれちゃった。まあこんなモノ見つかっちゃったら言い逃れもできないしな。
 床に置かれたモノのうち青い箱を拾い上げるのを見て、俺は尋ねる。
「それで準備すんだろ?恥ずかしいなら出てるけど」
 いくら顔や見てくれが良くても、腹の中のモノまで楽しめる自信はない。そのための譲歩だったのだが、
「……もう…………したから…」
 蚊の鳴くような声で答えると、俺の真横まで来て引き出しに戻してしまう。
「……『したから』?」
「………もう、寝るだけだと思ったから……」
 一人っきりでお楽しみのご予定でしたか。準備の良いことで。


「…へえ。じゃあ、俺が寝てる同じ家ん中で、お尻いじくるつもりだったんだ?」
「っ………」
 のぼせたように頬を赤らめてかぶりを振る。
「わざわざ客間開けてくれたのも、もしかしてそのため?」
「違っ…!」
「それにしてもさぁ…昼あんなにアンアン言ってたくせに、俺が泊まる日くらい我慢できないの?」
 奴の返答なんざお構いなしに問いかけると、その場に立ち尽くしたまま黙り込んでしまう。すぐそばにある奴の肌からは、風呂上がり独特のほんのり甘いような眠たくなるような、そんな良い匂いがした。
 こんなきれいな身体が、これから俺の見ている前でオモチャやケツまで使ってオナニーするのだ。それも、こんな好き勝手に罵られてからだというのに。
「まあいいや。早くしろよ。それこそ寝るの遅くなっちゃうし」
 並べた「道具」の前に須藤を戻し、俺は目の前に腰を下ろす。俯いた相手と視線がかち合い、慌てたように目を逸らされてしまった。
「……一個ずつ、どんな風に使うのかレクチャーしてもらおっか?」
「や…やります!今、全部やります!」
 慌ててタオルを床に落とすと、ローターに手を伸ばした俺から遠ざけるようにオモチャを全部自分の方に寄せてしまう。黒髪サラサラ瞳キラキラ唇ぷるるんな美少女がしゃがみこんで淫具を抱え込む図なんて、なかなか拝めない。
「…っ……」
 再び立ち上がった奴は、俺の方を向きながらも極力見ないように目を伏せ、デニムスカートに手をかけた。
 震える指でボタンを外し、ファスナーを下ろす。形の良いへそや引き締まった白い腹、下着の水色をチラチラ覗かせる罪なミニスカを、優等生はストンと足元に落とした。
 リボンとレースのあしらわれた可憐な白いキャミに、水色サテンのフリルショーツというしどけない格好。
 まずそんな変態行為とは対極の位置に居そうなイケメン優等生が、今ここで同級生の俺に披露してくれた姿がそれだった。


「……ぅ…上、は…?」
 脱いだスカートを畳むのすら黙って見られるのに耐えられないのか、キャミを引っ張る
ように両手をショーツの前に重ね尋ねてくる。常に剃毛を命じられているペニスは、萎え
た状態でもそれなりに股布をぱつんぱつんにしていた。
「どうぞ、お好きなように……でもま、今のままのがおっぱいおっきく見えるよ」
 胸の真下でギャザーが寄せてあるので、ブラに入ったパッド分のささやかな膨らみが強
調されている。股間さえ見なければ、どう見ても胸のちっちゃな女の子だ。
「…わかりました……」
 そのままの格好でカーペットに膝をつき、彼はまずローションのボトルに手を伸ばした。
 シャンプーでも出すみたいに、数回ポンプを押して透明な粘液を取る。匂いもラメもな
いスタンダードなそれを手のひらに伸ばし、指に絡めるのだが、関節の出っ張ってない白
い指がニチャニチャとローションを掬うのは、なかなかにエロい光景だ。
 それを何度か繰り返して、奴は乾いた方の手でキャミの胸元を大きく開ける。ショーツ
と同色のブラの下には、誤魔化しようもない真っ平らな胸板が覗いた。
 パッドが入ってもなお余ったカップの中へと、ベタベタの指が滑り込む。自分の手だと
いうのに、一瞬首をすくめブルリと震えてしまう。
「っ……く………」
 肌や乳頭へ塗り込めているのか、服の中で指が動く度に唇をわななかせる。膝立ちにな
っているので、ショーツの中のモノが少しずつ熱を帯びてくる過程が丸見えだ。
「っは…………ぅ…」
 両方の胸をヌルヌルにしてからまたローションを右手に取ると、今度は下半身へ伸ばす。
「……っ…」
 左手でショーツを前に引くと、早くも起き上がってきた先端が顔を覗かせた。それをな
だめるようにローションを塗りつけ、下腹にも滑らせる。


 水色のショーツがローションとそれ以外の液体で透けてきたところで、抜いた手をタオ
ルで拭った。そして、
「スイッチ入れてやろうか?」
 白いコードレスローターを掴むのを見た俺のセリフに、黙って首を横に振った。
 二つとも手のひらに収まるサイズのそれに、両方ともローションをまぶし躊躇するかの
ようにもてあそぶ。
「もう一個別のがあるから、よっく考えてねぇ~」
「っ……うるさい…」
 せめてもの反抗なのだろうが、そんな可愛らしい憎まれ口では腹も立たない。悔しそう
に潤んだ瞳に、ナニは勃ちそうにはなるが。
 コツコツと、小さなローターのぶつかる軽い音だけがしばらく響き、ようやく右手が持
ち上げられた。まずは、左手で大きく広げられたキャミの胸元へ。
「………っん……っ」
 ちゅるん、と奴の手からローターが一つ離れ、水色ブラの右側のカップに滑り込む。元
が平野なので、キャミの上からでもその不自然な盛り上がりは視認できた。
 もう片方は…と思うと、今度はウエストゴムに起き上がった先端を挟まれたペニスへと
手を伸ばす。
 ビチョビチョのショーツを脱ぐのかと思ったら、また前を大きく開いた。ガキみたいに
ツルスベな股間から立派な勃起ペニスが生えている様は、何度見ても異様で、たまらなく
淫猥だ。
「チンコ勃ってんのよく見えるから、コーフンするっしょ?」
 唇を噛んで俺の軽口に耐えながら、もう一つの淫具をショーツの中に落とした。
「っぅ………」
 下腹とショーツの間を滑る感触に、思わず両手を床についてしまう。肌色さえ透かして
しまうほどに湿った布地は、大小二つの膨らみをはっきりと示していた。
「へぇー…たしかに、そうやって入れちゃえば両手が開くもんねぇ」
 さっすが学年首席。こういう方面にも賢さを発揮できる応用力に、もうクラクラしちゃ
う。
 残るは奴と俺の間にある、怒張した男性器をかたどった道具のみ。
「もう使う?ゴム付けたげよっか?」


「……まだ…いらない…」
 身を起こしながらゆるゆると首を振り、須藤はまたボトルに手を伸ばした。
「…ああ。そっちの準備が先か」
 奴が右手を念入りにぬめらせている間に、俺は場所を移動。自分の斜め後ろに回られた
ことに気付きちらりと俺を見上げたが、あきらめたようにショーツの後ろを左手で掴んだ。
 右足の付け根のゴムを掴み、グイッと引く。白く張りのある右の尻たぶが露わになり、
片方だけTバックみたいになった。
 後ろまではローションやら汁やらで染みてはいないため、形の良い尻が半端にむき出し
になった図は痴漢プレイでもしてるような背徳感がある。なんというか、無理やりヤっち
ゃうぜーみたいな。
「脱がないんだ?」
「っ…お前、がっ……そうしろって言ったんだろ…!」
 オモチャ全部使えとは言ったけど、まさかこんな欲張りコースにしてくれるとは思わな
かったので純粋に感動。夏休みの日記に書けるものなら書きたいくらいの素晴らしいナイ
トショーに、相手の憎まれ口なんかどうでも良くなってしまう。
「んー、一生懸命やってくれるユカちゃんは可愛いなぁ……片方だけ見えてるお尻も、超
キュートだよっ!」
 手放しで褒めてやってんのに、右手でショーツと尻の間にローションを塗り込む奴は何
も返してくれない。
「…そんな、コソコソ手前だけクチュクチュしてもしゃーないんじゃない?」
「わ……わかってる…!…だまってろよ……っ…」
 痺れを切らした俺にそう言いつつも、やっぱり自分でも見れないような所をさらすのに
は抵抗があるようだ。
 あんまり急かすのも悪いので、俺は相手のモチベーションを上げてやることにした。
「…あ、それとも何?せっかくだから合わせ鏡でそこをしっかり見たいとか?手伝って欲
しい?」
「っ……!」
 慌てたように両手で自分の尻を掴む須藤。ぷりんぷりんの双丘のうち、右側の生尻には
白いヌルヌルの指が食い込み、左側に添えられたそれはつやつやした水色ショーツにしわ
を作った。
 俺が凝視していることが見なくても分かるのかひどくためらいながら、奴は隠していた
そこを自ら押し拡げる。
 ついに、チンコ付き美少女の局部が露わになった。


「……わーお」
 天は二物を与えずっていうが、ありゃ絶対嘘だ。
 学校では女子を骨抜きに、それ以外では野郎を振り向かせる美貌に優秀な脳味噌。おま
けに育ちも良い完璧女装王子様は、桃尻の谷間まで神に祝福されて生まれたようで、濃い
肌色をした陰部は剃毛されている以上にきれいなものだった。
 もちろん洗ってるとかそういう次元の話ではなくて、張りのある皮膚が覆う薄いが適度
な弾力のある柔肉の間に、測って作りましたかお母さん?と聞きたくなるようなバランス
でキュッと形良く窪んだそこが配置されている。
 野郎の股なんざこいつのしか見たことないし見たくもないが、今までの彼女のを引き合
いに出しても、つくづく男にしとくのがもったいない尻だ。
「ユカちゃんはお尻も、お尻の穴も可愛いですねぇ~」
「っ…やだ……みないで…」
 指を谷間に滑らせつつも俺を気にして膝を床に擦る。逃れようとしているのだろうが、
後ろから見たらケツ振って誘ってるようにしか見えない。
「『見ないで』…って、本末転倒じゃね?なんて言うんですか?」
 笑みを含んだ声で尋ねると、底意を覚ったのかギクリと奴の動きが止まる。
 ああ、なんて楽しいんだ!
「『エッチなゆうかのオナニーを見てください』だろ?」
 当然、奴は無言になる。
「…ほらほら、お手々止まっちゃってるよぅ~?……なんて言うの?」
「………っみ、みて、ぇ……!」
 半ばやけくそで発されたセリフだが、悔しさと切なさと心淫らさが素敵にブレンドされ
てたから合格っ!
「はぁい。観察させていただきまぁ~す」
 軽薄この上ない俺の返事に身震いしつつも、早くことを済ませようと奴の手が動く。
 マッサージでもするようにそこの周りをクニクニ揉んだかと思うと、細長い中指がショ
ーツの前を膨らませた美少女のアヌスに潜り込んだ。同じようにして人差し指も、その小
さな孔にねじ入れてしまう。


「っう…………ん…ん…」
 慣らすためか咥え込んだ指を緩やかに前後させながら、上体を伏せてしまう優等生。朝
礼のクソ長い話もずっと背筋を伸ばして聞いてたくせに、こーゆーのには堪え性がないみ
たいだ。
 内腿をローションが伝うのにビクンとしたので、タオルを足の間に挟んでやる。まめに
手拭ってたとこ見ると、あんまし床汚したくないんだろ。
「可愛いお尻上げちゃって、やらしいなあ~」
「ひぅっ!?…っや、やめて……っ!」
 ショーツ越しの尻たぶをつつくと高い悲鳴があがる。クチュっと湿った音を立てて、指
を咥えたそこがすぼまった。
「うん。やめるから、ちょっと一人で準備しててね」
「…は?…ぁ、あの……?」
 首を傾げ見上げてくる奴に「戻るまでにイっても、萎えてもダメだから」と釘をさして、
俺はいったん部屋を出た。

 яяя

 用を済ませて奴の部屋に戻ると、ドアの向こうから艶っぽい声がもれている。言いつけ
通りにしていたらしい彼は、今は前立腺マッサージの真っ最中みたいだ。
「…ひゃ、あ……あんっ……っ!?」
 ノックなしに開いたドアに、慌てて口をつぐむ須藤。だからもう遅いって。
 脱衣所から失敬したバスタオルを広げながら、俺はニッコリ笑ってみせる。
「…ほら、これの上だったらいくらグッチャグチャにしても良いっしょ?」
「…………はぃ…」
 案の定羞じらいつつもうなずいて、俺が敷いてやったタオルの上に乗った。カーペット
の跡が付いた膝頭を見て、早く気付けば良かったと思う。
「…いっつもそんな可愛い声あげてやってんの?」
 この、すっきりと整頓された部屋で、今みたいに衣装を整えてこいつが一人自慰に耽っ
ているところを想像してみる…なかなか楽しい眺めだ。
「ちが……っそんなこと、ない…っ…!」
 返事は期待してなかったのだが慌てたように否定され、にわかに興味が湧く。
「…へえ?じゃあ、今日だけ?どうして?」


「それ、は………」
 言いよどんでしまったのは、指を動かしているせいだけだろうか?
「『それは』?」
「…み……見られてる、から………その、気になって……」
 自らの尻を犯しているのを見ている相手に、何を恥ずかしがっているのだろうか?黒髪
美少女のショーツを押し上げるモノはいまだに萎えることはないのに、愛らしい耳が真っ
赤になってしまっている。
「……俺に見られてて、余計感じちゃうの?」
 日に焼けてない尻をふるりとさせて、自分を啼かせることにいそしんでいた優等生は黙
り込んでしまった。
「オナニー見られて、萎えるどころかいつもよりビンカンなっちゃうなんて、本当変態じ
ゃね?お前」
「っ……ぅ………」
 下についた白い左手がギュッと握りしめられる。怒りと屈辱とですぐさま否定したくと
も、この状況では何の説得力も持てない。自分が相手の言う通りの人間であることを、女
装アナニーして勃起している自分自身が証明しているからだ。
「…でも、正直に答えたユカちゃんにはサービスしちゃおう」
 言って奴の目の前のコンドームの箱とディルドを取る。
 腰砕けになりながら自分を犯すモノの準備をするところも見てみたい気はするが、意地
悪は度をすぎないのがちょうど良い。
 テカテカした肌色のそれに袋から出したゴムを着せると、なんか笑えない半端リアルな
臨戦態勢チンコができあがった。こんなグロいのを、これからあの可愛い可愛い上向きヒ
ップがハメてしまうのかと思うと、俺がやるわけではないのにドキドキしてくる。
「……はい、どうぞ」 スタンドした状態で奴の前に差し出す。元は上に乗っかって遊ぶのを想定してるのか、
底は結構安定していた。
「ぁ…ありがとう……」
 とは言いつつも、当然笑顔なんて見せてくれない。


 ちゅぷん、と後ろから引き抜いた指が、俺の用意してやった道具を掴んだ。
「……っぅ………」
 また奴の斜め後ろに回り、谷間にゴムをはめた亀頭が近付いていくのを観察。こともあ
ろうにスタンド部分じゃなくて縮み上がった陰嚢を模した所をわし掴みにしていた。持ち
やすいんだろうけど見てて自分のタマが痛くなる。こいつは何とも思わないのか?
 俺の疑問に答えるかのように道具を握り直すと、左手でショーツごと尻たぶを開きぐち
ょぐちょになったそこに先端を押し当てる。
「……く………っふ、んん……っ…!」
 たっぷり擦り込んだローションとコンドームに付いてたゼリーのぬめりを使って、ディ
ルドを入れようとする。手探りのせいかまだ慣れてないのか…俺が見ているせいか、焦ら
すようになぞりながらそれは少しずつねじ込まれていった。
「…はっ……ぅ……っん、ん……っ」
 小刻みに喘ぎをこぼしながら、それでも着実にそれは奴の孔に埋まっていく。カリのと
こまでは左右にひねるようにしていたが、そこを過ぎると手のひらで底を押さえつけ、一
息に突っ込んだ。
「ひぁっ!……っん、ぁ、あ…っ」
 キャミに包まれた背筋がしなり、細い顎を上向かせ悲鳴をあげる須藤。
「どしたん?いきなしイイとこに当たっちゃった?」
 笑みを含んだ声で尋ねると、ちらりと俺の顔をうかがうように振り返る。
「別に良いんだよ?オナニーなんだから気持ち良くなっちゃって…さっきのが、イイとこ
ろなの?」
「………うん…」
 優しく背中を撫でてやると、恥ずかしそうにうなずいてまた下を向いてしまった。汗で
肌に貼りついた白いキャミは、ショーツと揃いのブラの色をはっきりと透かしてしまって
いる。
「……はなして…」
 小声で訴えられ、キャミ越しにフリルをなぞっていた指をどけてやる。
「……動かすの?」
 主語を省いて聞いたのだが、奴はこっくりと首肯した。
 咥え込んだ擬似陰茎はそのままに、両手をそれぞれキャミとショーツの中に差し込む。
 ずっとそのままだったローターに、ついにスイッチが入った。


「はぅっ!?……く、う……っ…」
 ヴヴヴヴ…と、その外観からは意外なほど重いモーター音が奴の服の下から響く。ブラ
とショーツの中で震えるそれは、奴の乳首やペニスを存分に愛撫してくれているのだろう。
「……っん、あ…ひ……っん、ううんっ!…」
 すぐそばで思いっきしオチられてるというのに、四つん這いになって尻を突き上げたま
ま悶える須藤。上下の下着の中という逃げ場のない状況で、ローターの与える刺激は羞恥
を上回るほどのもののようだ。
「…そんなすごい音と声出してちゃ、どっちにしろバレちゃったんじゃね?」
「っは…ぁ、あ……これ、は、つかわな……つもりだ……た、から…っ!」
 中途半端になぶられるような振動に声を震わせながらも、気丈に反論してくる。ヒクつ
く孔に挿さったディルドが、それに合わせてふりふりと揺れた。
「尻尾みたい」
 思わずクスリと笑いながら硬い擬似陰嚢をつつくと、それこそ尻尾掴まれた小動物みた
いにビクンとする。
「ひゃんっ!?…ぁ、あ、いや……やめ、てぇ…っ!」
 高い悲鳴の後に、艶っぽいトーンで懇願してくるが、これはどう考えても口語訳は「い
や、もっとして」だ。
「……どうして?ちょっと触っただけなのに」
「あ…ん、ぅ……っだめ…だから、あ…っ!
 ローションとゼリーとで女みたいにグチョグチョになった孔から引き締まった腿へと、
透明な粘液が幾筋も伝う。内腿にそれを塗り広げてやりながら、俺は尋ねた。
「だから、何がダメなの?言ってくれなきゃ分かんないんだけど」
「…っ……き、きもちよく…なっちゃう……から…っ…」
 計算も何もない、ただ過ぎた快感に身体を抑えられなくからといった、自分の淫らさを
露呈するようなセリフを気付かず吐いてしまっているのは、間違いなく目の前の美少女な
のだ。
 その、好きな女とキスもしたことのないような愛らしい唇が、淫具と尻の穴で気持ち良
くなっていると告白しているのだと意識すると、もう堪らなく興奮してきた。「いや」も
「もっと」もなく、何も考えられなくなるくらいそのおきれいな顔や身体をぐっちゃぐち
ゃにしてやりたくなる。
 ほら、もっと気持ち良いのがあるんだよとか、こんなの知らなかっただろとか、未知の
刺激に我を忘れて泣き叫ぶのを見てみたい。学校では女子たちに黄色い声をあげさせてい
る、その取り澄ました面はさぞかし淫猥に歪んでくれるのだろう。


 恥辱に耐えて耐えて耐えて……罪悪感に苛まれながらも自ら理性を踏みにじって、普段
なら見下してるような同級生の野郎におねだりしちゃうような、後で死にたくなるような
背徳感と…極彩色の悦楽をこのチンコ付き美少女に植えつけてやりたい。
 血沸き胸踊る(ついでに息子も喜ぶ)甘美な妄想に浸りつつも俺は両手を離し、濡れた
方の指をタオルで拭った。こいつの言う通りに…というか、今はあくまでも彼のオナニー
ショーの鑑賞タイムだ。
「……ひ、ぅ……っ……」
 案の定ちょっかいをかける指を引かれると、物欲しげに振り返る。俺と目が合って慌て
て前を向いてしまった相手に、追い討ちをかけるように声をかけた。
「ほらほら、いつまでこんなんしてんの?電池切れちゃうよ?」
 ブラとショーツの中で振動を続けるそれを指し、行為の先をせがむ。
 勃起した右乳首とペニスをなぶられながら、奴は再び自分を貫いたディルドへ手をのば
した。
「…っく、ぁ………ん、んぁっ……」
 粘液に塗れた擬似陰茎を、先っぽのあたりまでズルリと引き抜き、また押し込む。だか
らタマんとこ掴まれると見てて痛いってば。
 俺の心の悲鳴なんぞ聞こえちゃいない奴は、内壁を擦りあげるゴム越しのカリに身を震
わせている。いじらしいほど抑えた嬌声は、俺が居るからなのか元々そういうのがお好み
なのか、ちょっと判別し難い。
 四つん這いになることすら放棄したように上体を伏せ尻を上げていたが、身悶えるあま
りに下に敷いたバスタオルが寄せられ、カーペットに直にキャミの胸元が押し当てられた。
途端に激しくなる振動音。
「うわ、何?」
「っあ、あ、やだぁっ!…っん!」
 奴の胸板と、強まった刺激を求めるように床に近付きかけたが、俺の存在を思い出した
のか慌てて身を起こし、両手をついて息を整える。
「…いいの?すっごい良さそうだったけど」
 奴と同じように手をつき身を乗り出して尋ねると、耳まで真っ赤にして首を振った。
「ちっ……ちがう、から…!今のは、その……と、とにかく違うからっ!」
「………あっそ」
 何が違うのか教えてもらいたいものだが、相手のあまりにも必死な様子に、追及しない
でおいてやる。俺って優しすぎ。


 ちょっとは感謝してもらいたいものだが、最後に恨みがましくねめつけてきた奴のセリ
フは、
「…あっち、向けよ」
 なんて可愛げのない奴だ。俺はクラスの女子ではないので、顔とカラダとエロさ以外に
こいつの魅力が分からない。
 擬似ペニスで自身を慰める優等生をしばらく眺め、ああと思い出す。
 そうだった。まだあるじゃないか。
「…っふ………?」
 さっさとこの見せ物を終わらせた方が良いことに気付いたのか、俺を気にしつつもディ
ルドを動かしていた須藤だったが、背後でクスリと笑う俺を怪訝そうにうかがってきた。
「…いや。お前、見られっと感じんだろ?……すっげぐっちょぐちょになってるの、よく
見えるから」
「っ………!」
「あーあー、手ぇ休めちゃだぁめ。ちゃんと動かしなさい」
 言われた通りにしつつも、俺と顔を合わすまいと前を向いてしまう。そんなニヤニヤし
てるのが声に出ちゃったか?
「ローションもゼリーも透明だからさぁ、もう、女みてーにツユだくんなっちゃってんの
……あぁ、ユカちゃん女の子だから、こんな風にトロトロのヌルヌルんなっちゃうのも、
おかしくはないよね?」
「ぁ……い、言わないで、ぇ……っ…」
 いかんいかん。こいつのオナニー見るはずが、これじゃあ普段とあんま変わらない言葉
責めだ。非常に、まことに楽しいことこの上ないんですが。
 自分が淫らで、どうしようもない変態だということは誰よりも知っているから、だから
こそ俺みたいな第三者に指摘されると余計にそれを自覚してしまう。そしてこいつは真性
のマゾだから、こうして言い聞かせられちゃうと、もうたまらないみたいだ。
 過剰な羞恥心と倒錯した性欲とで板挟みになった挙句の、矛盾した反応。いやだいやだ
と言いつつも身体はさらなる被虐を求めてしまうのだ。はたから見てて、面白いことこの
上ない。


「…ほら、お股さみしいからハメたんでしょ?ちゃんとクチュクチュしなきゃ」
「っう………っ」
 スン、と小さく鼻を鳴らして、いい加減我慢できなくなったのか優等生は荒々しく自分
の尻を犯しはじめた。うん、だからそうやってタマがっつり握られちゃうと、見ててキューっとなるんですが。
「……ひゃ、ぅ………ん、んっ……」
 お気に入りのオモチャを掴む子供のようにローションまみれの指でしっかり握りしめ、
角度を付けて淫具で自らを抉る。
 ローターだかディルドだかが良い所に当たったのか、時折ほっそりした腰を悩ましくく
ねらせるのだが、その度に白いキャミの裾が背中を這い上がり、薄く汗をまとった肌をさ
らしていった。
「…すっごい、ユカちゃんてば、こんな激しいのが好きだったんだ?」
「……ぃや………ぁ」
 無駄な否定をしかけてきたので、畳み掛けるように身を乗り出して実況中継してやるこ
とにする。
「お前があんまり激しくやっちゃってるからさぁ、ローション泡立っちゃってるよ。プク
プクしてる」
「っやだ………い、いわな…で……見ない、でぇ……っ!」
 涙まじりに懇願されたので、グロい凶器の挿さった局部をしばらくじっくり鑑賞してや
った後、俺は膝立ちになり位置を変えた。
「そっか、お尻ばっか見てちゃあ、可愛いユカちゃんに失礼だもんねぇ……可愛いお顔、
はいけ~ん」
 俺としては何気ない行動だったのだが、床を擦る音にしゃくり上げていた奴は咥え込ん
だモノもそのまま逃げようとする。当然それは叶わなかったが。
「なんで?ほら、お顔上げて~」
「ぁ…だ、だめっ!…き……きたない、から…っ!」
 お前がそれ言っちゃ、この世に美形はいなくなるだろなセリフをほざいてくれる。右手
はディルドを掴んでいるので左手で顔を覆おうとしたが、その前にその「汚い」顔とやら
を覗き込んでやった。


「…ほんとだ。せっかく風呂入ったのに、お顔もグチャグチャんなっちゃって」
 相手をからかうように発したセリフ通り、おきれいな面はすっかり汗や涙と涎で濡れて
しまってはいるが、それは桜色に上気した肌をさらに演出するものでしかない。つくづく
元が良い奴って得だ。
 アヘ顔でムラムラさせてくれるなんて、こいつ本当に才能の無駄遣い。これでチンコな
けりゃあカメラの向こう側の野郎どもをいくらでも昇天させられるのに…それとも、だか
らこそ俺が独り占めできるから良かったと思うべきか?
「ぁ…あ……み、みない、で……っ!」
 可愛い自分が大好きな彼としては、自分でもどんなになってるか分からないところは見
られたくなかったのだろう。恥じ入るように目を伏せてしまった奴の頬を撫で、テラつい
た唇の間に入ってしまった髪を取ってやる。
 これだけ恥辱を与える相手になおも弱みを見せたがらない相手に、思わず溜め息がもれ
た。
「ああ、もう……すっげ、エロい顔」
 唾液でぬめるそれは、目の前の美少女のものだと思えば嫌悪感も抱かない。ましてやそ
んなはしたない格好をさらしていたことにようやく気付いて、羞じらうように俯いてしま
うような相手のなら、なおさらだ。
「すっごいグッチュグチュで、えっろくて、すげーイイ顔だよ、ユカちゃん?」
 頭の悪い褒め言葉だが、今のところ奴がすがれるのは俺の発言だけだ。
 おずおずと湿った睫毛を持ち上げる黒髪美少女に、俺は優しい声で命令した。
「…もう一度、ぐーって胸押しつけろよ」
「え?………っ!」
 ワンテンポ遅れて、ギクリと肩を震わせる。やっぱり、何が違ったんだか。
「ブルブルして気持ち良かったんだろ?チンコズポズポしながらおっぱいグリグリしたい
んだろ?」
 「可愛いユカちゃんが、一番気持ち良くなってるとこ、見せてよ」と、甘え声でせがん
でみる。平常なら「気持ち悪い声出すな」と一蹴されるが、今はどうだろう。
 俺の底意を探るようにじっと見つめてきた彼だが、ついと視線を逸らしてしまった。
「………はずかしい……っ…」
 もうほとんど思考なんてできていないだろうに、気持ち良さに傾きかけていた心を、ほ
んのちょっぴり残っていた理性が引き戻す。


 同級生の目の前でアナニーして自分でローター責めしちゃって、挙句アヘ顔まで間近で
見られてしまってるというのに、それでもやっぱりわけ分かんなくなるくらい乱れるのは、
羞恥心の塊のような自分を手放して「女の子」になってしまうのには抵抗があるんだろう。
 …それなら、もっと傾けてやるだけだ。
「だって俺、ユカちゃんのエッチで恥ずかしいところがいっぱい見たいんだもの。見たい
なぁ~、ユカちゃんがハメたままさっきみたいに可愛い声あげてくれるの……ダメ?」
 命令して嫌々従わせるのも楽しいが、調教の醍醐味は拒否したことを自らやってしまう
ほどに陥れてしまうことだ。
 そして、今みたいに前後不覚になった状態でおねだりされると、こいつはもう、それこ
そ駄目になってしまう。
「…っわ……わかり…まし、た………っ」
 ほら、やっぱり。
 可憐なキャミを中のブラが透けるくらい汗やローションでべったり貼りつけた美少女は、
俺に言われた通りの格好で射精することを宣言した。
「…お利口さんだねえ。ユカちゃんは」
 額の汗を拭ってやり、ほんのりシャンプーの匂いのする頭にキスするように鼻っ面を一
瞬押し当ててから、また奴の斜め後ろの特等席へ。
 優しく促された彼は、もう前言撤回なんてできやしない。
「……はっ………ふ…っ…」
 余ったカップからローターがこぼれ出ないように、挿さった男根を床に当てないように、
そろそろと上体を倒していく。
 さらりと垂れた黒髪に隠されていた、羞恥と高揚に淡く上気した肩や首筋が露わになっ
たあたりで、胸を押し当てたカーペット越しに床が共鳴した。
「…っぁ、あ!……ひ、ぅ………んんっ!」
 期待していた分受け取る刺激も大きかったのか、先程よりも反応が良い。無心に床に身
を擦りつけるようにして自らの乳頭を責める女装アナニーっ娘の紅唇は薄く開き、可憐な
ピンク色の舌をチロチロと覗かせていた。


「気持ち良い?なんかすっごいジュプジュプ言ってるけど」
 力加減がうまくいかないのか、動きが粗雑になったディルドを咥えこんだ孔は、むしろ
それを楽しむかのように収縮していた。
「は、ぁ………っきもち……いい、です…あ……気持ちぃ……っ!」
 左手で何も入れてない左胸を、キャミの上からこねまわす須藤。利き手でもないのに、
俺が普段してやってるような卑猥な動きをたどたどしく真似ている。ない乳を下着の上か
ら揉みしだかれるのが、すっかり気に入ったようだ。
 クニクニと布を押しつぶしいじらしく喘ぐのを見て、無防備な脇の下に指の一つも突っ
込んでみたくなるが、ここはじっと我慢の子である。
「ん、ん……ぁ……っは、あ…っ」
 奴自身がとった発情期のメス猫みたいな姿勢と、ローターやデイルドの動きに身悶えて
るうちに肩紐は外れ、するんとした背中の半ばまでキャミの裾が捲れ上がっている。下着
を上下とも身に着けた状態で乱れまくっちゃってる様は、下手に全裸んなるより卑猥だ。
「…お尻やおっぱいばっかいじってるけど、お股は良いんですか~?」
「あ、ん……へ、へいきぃ………っ、んんっ!…」
 うずくまっているので俺からは不自然に盛り上がった股布しか見えないのだが、逃げ場
のない下着の中、陰嚢や根元にグリグリあたるあの可愛らしい淫具は、こいつに凶暴な責
めを与え続けてくれてるんだろう。
 こんなとこにまでそんな形容詞が付くのかよって言いたくなるような美しいアヌスは、
挿入前の小ぢんまりした見た目からは想像もできないほど貪欲に擬似ペニスを呑み込み、
キュプキュプと締まりの良い音をたててゴム越しの感触を堪能している。
「………っひゃ、ぅ………っく、ぁ…………っん、んっ…」
 ガクガクと膝を震わせ、掠れた嬌声をあげる優等生。この状況で、俺に対して何を取り
つくろうっていうのだろう?
「ひぁ、あ、あっ…………っ!」
 「やだ」だか「だめ」だか「いく」だか、声にならなかったので判別はできなかったが、
わななく唇を動かした直後奴の身体がビクビクと痙攣した。最初っから、俺に見られてい
る前でのショーのフィナーレ。


「っ………は、あ…っ……」
 糸の切れた操り人形のように細い両腕が床に落ちる。終わったというのに、下着の中で
動き続けるローターのスイッチを切ることもできないみたいだ。
 尻を突き上げたまま、全身をヒクつかせ絶頂の余韻に浸る少女のショーツの裾からはド
ロッとした粘液が流れ出す。ディルドを入れるために目一杯ショーツを食い込ませた左側
からはジワジワと染み出しているだけだが、隙間のできた右からは濃い白濁が内腿を幾筋
も伝った。
 昼間もさんざん楽しんだのに、この淫乱な「女の子」がアナニーでパンツの中に吐き出
しちゃったのは、どう見ても精子です。本当、うらやましいくらいお盛んなことで。
「…満足した?」
「……んん…」
 俺の問いかけにゆるゆるとうなずきながら、須藤は自分の尻を犯していたモノを掴む。
 しかし、
「ひぁんっ!…ぁ……なんで……?」
 本人は困ったような声をあげるが、咥え込んだ男根を半ばまで引き抜いた奴のペニスは
達したばかりだというのに再び上向いてしまっている。どう好意的に解釈してやっても、
まだ真っ最中のご様子だ。
「…満足したんじゃなかったの?」
「やだ……した、したのに………ったりなくない…たりなくなんか、ない…っ」
 恥ずかしそうに首を横に振るのだが、それに合わせて奴のペニスがまた汁をこぼしてし
まう。
 先程の「見られて余計感じちゃう」というのは、あながち嘘じゃない…というか、かな
り過少申告だったみたいだ。
「……どうにかして欲しい?」
 たっぷり間をおいて尋ねると、その間ずっと浅い所で自分を苛むモノに身悶えていた奴
がぱっと顔を上げた。が、我に返ったのか羞じらうようにまた俯いてしまう。
 貴重なショーを見せてもらった礼も兼ねて、俺は特別優しくささやきかけてやった。
「ユカちゃん、とってもお利口さんだったから、一個だけお願い聞いてあげる」
「…ぁ………」
 しゃがみ込んで乱れた髪を梳いてやると、すがるように黒い瞳が見上げてくる。
 パーツも配置も申し分ないのに、汗と涙と涎とでぐっちゃぐちゃになった、ひどい顔。
夏でも涼しげな顔でワイシャツ着こなしちゃうイケメン優等生の面影はなく、そこにある
のは欲情しきった、可愛い可愛い「女の子」の顔だった。
「ほ……ほんとう、に…?」


「本当に」
 ブラとキャミのストラップを元通りかけてやりながらうなずくと、悪戦苦闘していたそ
れからゆっくりと手を離す。
 ディルドを半ばまで咥えたままで、勃起ペニスを震わせながら少女は尻を高く突き上げ
た。
「ぃ…いっぱい、いっぱいズポズポしてくださぃ……っ!」

 яяя

 そこまで妄想して、俺は肩を落とした。
「マジかよ…」
 机どころか本棚の辞書や美術全集の箱までチェックしたのだが、嫌味なくらい整然とし
た部屋には写真週刊誌すら見つからなかった。ナルならナルで自分プロデュースのオナ写
真の一枚もあって良いと思うのに、俺の探し方が悪いのか?
 ていうか、ここまで徹底してないってのもある意味不健康だ。さすが変態優等生。
 唯一クローゼットの奥に、なんかそれっぽく梱包されてた箱を見つけた時はキターッと
思ったのだが。
「…アルバム」
 表紙に十数年前の日付がで書かれたその中身は、どっからどう見ても思い出のアルバム
というやつだった。
 その中のすべての写真に、ティン○ーベルやメ○ピアノのモデルみたいな…俺はロリで
もペドでもないが、それでも犯罪級に愛らしいのが分かる幼児がニッコリ笑ってるのが写
っている。
 とりあえずパッと開いたページに可愛らしい字で「ゆうちゃん五歳」と上に書かれた、
コサージュ付きのピンクのケープ姿の幼児は非常に心が洗われるような可愛らしさだ。大
きなショートケーキに刺さったロウソクを、一生懸命ふーふーしているのもキュンとくる。
 どれも凝った洋服に身を包んでいるが、こりゃ家族の自作か?ブランドのタグとかロゴ
がさっぱり見当たらない。そして男児服も女児服もごちゃごちゃなので、これだけ見た奴
はよく似た男女の双子とでも思うんじゃなかろうか。
 ようやくコム○のプリントを確認できたのは「ゆうちゃん四歳、初めての海」の麦わら
帽子だった。水色のセーラーはセーラーでも、ちっちゃな水兵さんが太陽の下でピースサ
インを向けている。
 人には見せられないニヤニヤ顔でページをめくっていると、階段を上る足音が聞こえて
きた。
 誤魔化しようもないほどくつろいで広げている状況を取りつくろう気はまったくないの
で、俺はどの写真から奴で遊ぶかを選ぶことにした。

 (おしまい)



肛戯彼女・後戯


 床に座ってアルバムをめくってたら、背後の扉が開いた。クーラーの効いた部屋の中に、
廊下の生温い空気が入り込む。
「…まだ居たのか?漁ってくれても、お前の好きそうなのは何も……」
「ありましたよ?」
 俺が振り返ったあきれ声の主は、白いキャミに合わせたデニムスカートから伸びる長い
足で仁王立つ美少女…の姿をした、イケメン優等生の須藤君。
 奴の部屋ですっかりくつろぎながら、相手に見えるように発掘したアルバムを掲げて見
せた。
「…可愛いですねぇ、ゆーうーちゃんっ?」
 写真の中の天使に負けまいと、可愛く小首を傾げてやる。俺の手にあるモノと、カーペ
ットの上にそれの入ってた箱があるのを見て、奴の顔色が変わった。
「!?……な、何勝手に出してんだよお前!?」
「アルバム」
「見れば分かる!」
 キレの良い突っ込みを入れつつも動揺しまくりうろたえまくりな、学校では「クールで
孤高な王子様」な彼に、俺はアルバムを持った手を下ろしつつニッコリしてみせた。
「もう、そんな怒んないでよ。ゆ・う・ちゃあん?」
「…………っ!」
 かあああーっと、音がしないのが不思議な勢いで奴の顔が真っ赤になる。薔薇色リップ
をパクパクさせて、「あ、あ…」と声にならない吐息をもらす様は、非常に観察し甲斐が
あった。
「…しっかし、すげえなぁ~コレ。お前の親めっちゃ子煩悩なのな」
「親じゃないっ!襟子お姉ちゃ……叔母が撮ったんだっ!」
 一枚一枚に日付とタイトル付きで丁寧にレイアウトされたアルバムを指すと、ようやく
言葉を紡ぐことができたようだ。一人っ子の彼が「お姉ちゃん」と言いかけたのは、セー
ラー服の持ち主だった叔母さんのことか?まあそうやってムキになって訂正してくれても、
俺には些末事なんですが。
「ああそうですか……うわ何だこのピンクのエプロンは!…『ゆうちゃん初めてのお料理
は』、」
「っわーわーわー!黙れ!黙れ見るな忘れろっ忘れてくれ!」
 最後が懇願になっちゃうところが奴クオリティ。
 ピンクのギンガムチェックのふりふりエプロンに、おそろいの三角巾を着けた幼児が小
さな包丁を握ってニッコリしている。こんな天使にサックリやられるならナイスボートっ
てもんだ。


「…あ、ピンクばっかじゃなくってこっちのワンピはかなりシックですねぇ……四歳で、
一人で椅子に届いたんでちゅかぁ?ゆうちゃ~ん?」
 アップライトのピアノに向かいつつもカメラを構える相手にピースサインを向けるのは、
黒サテンとパールの薔薇モチーフを胸に付けたモノトーンワンピの幼児、「ゆうちゃん四
歳」。
「あーっ!あーっ!聞こえないっ!何も聞こえてないから返せ!しまえ!」
「お手々もちっちゃくって、かぁ~わいいなあ~!ねえ?」
「っ…ていうか返せ!俺の部屋のだろ!」
 耳をふさいでらしくもなく喚いていた彼だったが、埒があかないと手を伸ばしてくる。
当然「はいそうですか」と渡すほどお利口さんではないので、ぐーっと身体を傾けてアル
バムを奴から遠ざけた。
「ほらほらぁ、こっちですよ、ゆうちゃあ~ん?次はいくちゅの時のを見よっかなあ?」
 身長と体格差があるとはいえ、れっきとした高二男子の相手も負けていない。甘い思い
出を俺に蹂躙させてなるものかと、果敢に俺に掴みかかる。
 「カッコ良くって優しい須藤クン」のこんな激しいところを知ったら、クラスの女子は
鼻血噴いて昇天するんじゃなかろうか。イケメンは何があっても和姦に持ち込めるから得
だ。
「そんなに幼児が好きなら、こっから歩いて十分のところに幼稚園あるから!そこでじっ
くり見りゃ良いだろ!よこせよ!」
 必死さを差し引いたとしても、ひどい言い草だ。吠えながら俺の手の先を追って腕を伸
ばす。ぐいぐい身体を押しつけられ、人並みにか弱い俺の身体が傾いでしまうが、ここで
折れるわけにはいかない。
「俺はこっちの『ゆうちゃん』のが見たいなぁ…第一、今何時だよ?」
「うっ……と、とにかく返せっ!」
 胡座をかいた俺の肩を、膝立ちになって掴んでいた奴が体重をかけてきた。もはやアル
バムしか見えていないのか容赦ない。
 風呂上がりのしっとりした白い手が、ようやく俺の片手首を確保したが、俺はさすがに
この不安定な格好で野郎二人分の身体を支えることはできなかった。
「あ…あっ、破れるだろっ!」
「え?ちょ………ひゃあっ!?」
 奴の悲鳴とともに世界が半回転。
 美女二人なら萌え萌え泥レスにもなっただろうか、ラブコメよろしくもつれあいながら
カーペットの上に倒れ込んでしまった。


「っうぅー……重っ!」
 胸が苦しいのも、床に縫いつけられたように身じろぎできないのも、相手が俺の上に乗
っかってるからである。鼻腔をつくのは奴の肌の匂い。入った風呂は同じなのに、どうし
て見てくれが良いだけで自分より良い匂いな気がするんだろうか。
 俺の顔の真横に奴のおきれいな面があるのだが、原因が原因なので騎乗位でも二人とも
勃ってないのがせめてもの幸いだった。マジ笑えないし。
「っう………ぅわっ!何だよ!?」
「人のこと押し倒しといて、そりゃないだろ」
 心底嫌そうに身を起こされたので、いつも低い位置で泣かせてる相手の顔を見上げるこ
とになった。やっだぁ新鮮。下から見ても可愛いお顔っ。
「……大胆なことするねえ、ユカちゃ…ゆうちゃん?」
「っぁ、あっ…ごめん!」
 倒れた衝撃にわけが分からないようだったが、俺に跨っていたことに気付き慌てて身体
を離す須藤。起き上がる俺の視線に、腿の付け根まで捲れあがっちゃってたスカートを慌
てて引き下げた。その羞じらいを、俺に掴みかかる前に見せて欲しかった。
 優等生のウブい反応に妙な沈黙が流れるが、アルバムはいまだ俺の手の内なので無問題。
「…こーゆーことしてくるってことは、『まだまだ寝たくないんだもんっ!』ってことで
FA?」
「ノー!断じてノーだから!」
 カーペットに可愛いお尻をぺたんと下ろしたまま、必死に主張する元天使現美少女なイ
ケメン優等生。あらあらら、初めて乗っかったのが彼女の股じゃなくて野郎だったのがそ
んなにショックだったのかな?
「よーし、これ一冊見終わるまで、今夜は寝かさないぞっ☆」
 相手の主張は一切無視というあまりに一方的な実刑判決に、ウィンクする俺を呆然と見
上げる須藤…いや、「ゆうちゃん」。
「そ~んな嬉しそうな顔しちゃって。ますますパパ頑張っちゃうぞぉ~!」
「……っぱ、パパって誰だよパパってぇ!?」
 いじり甲斐のあるオモチャを作ってくれたこいつの叔母さんとやらと、こんな服を着せ
ることを、そしてこんなモノに納めることを許してくれたこいつの両親に深く感謝した。

 (おしまい)

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最終更新:2013年05月11日 10:10