偽妹彼女おまけ

(「偽装彼女」シリーズ・短編)

 もとから俺ん家に上がる時にご機嫌だったためしはないが、あからさまに顔をしかめら
れたのは初めてだ。
 整った眉をひそめ、ぷりんとした赤い唇を曲げてしまう。奴の視線の先にあるのは、高
校男子の部屋に似つかわしくない赤ランドセル。
「…まだ片付けてないのかよ」
「片付けてないんじゃなくて保管してたの!開けてみろよ」
 前回お子様パンツを掴まされた失敗からか、先週より慎重に金具を外し、
「ああっ、ひどい!」
 教室のゴミ箱の中身を捨てるがごとく、勢い良く逆さまにしてしまった。
 バサバサと落ちる紺色の服やら何やら。
「あの……前より小道具が増えてない…?」
「うん。こないだのユカちゃんがあんまり楽しそうだったから、色々準備しちゃった☆」
「しなくて良いし楽しんでもないから!」
 力一杯否定しつつランドセルやその中身と距離を置こうとする奴に、姉貴の部屋から拝
借したスタンドミラーを向ける。この期に及んでなおお行儀良く座った、美少女の全身像
が映った。
「こないだは俺だけが見て楽しんじゃったから、今日は一緒に見られるねぇ~?」
「要らない要らないっ!」
 必死にかぶりを振りつつも逃げ出せない須藤のフリルブラウスに手をかける。下手に抵
抗して鏡で恥ずかしい格好を見せつけられるのが嫌なんだろうが、別にしてもしなくても
やる時はやるので意味ないぞ。言わないけど。
 しばらくは大人しくしていたが、俺の手が真ん中らへんまでブラウスのボタンを外し、
露わになったキャミやその下のブラのストラップごと両腕を抜かせると、俺の背にある鏡
を気にしながら不安げに見上げてきた。
「あ、あの……その、何を…?」
「今日は面白いのを用意したからねえ……ほら!」
 ランドセルから床に転がされていた、丸っこいプラケースを拾いあげる。首をかしげて
凝視していたが、それが二つあったことに気付き可愛らしい顔を強張らせた。
「!?そ…れっ、て……」
「そ!前喜んでた『プリティメロン』ですよぅ~?せっかく買ったんだから、使わなくっ
ちゃもったいないよね!」
 にこやかに言いながら右足で相手の左膝を押さえつける。ケースから出した特殊シリコ
ンの半球を、位置と向きを確認してからブラの下に押し込んでやった。まずは左胸。


「ひゃあっ!?つめた…っ!」
 取説どおりきちんと洗って乾かして保管してたので、平べったい胸板への吸着力は落ち
てないみたいだ。俺の足をどけようとしていた手で慌てて抗ってきたが、爪先でピンクの
プリーツスカートの中ほどをぐりぐりすれば途端に大人しくなる。女用の胸責めオモチャ
とペニスへの刺激で、マゾい女装っ子は早くも俺の支配下におかれた。
「んー、お利口さんはお兄ちゃん大好きですよぅ~?」
 右側にもプルプルの乳房を貼っつけて、用済みのブラのホックを外しキャミの下から引
き抜いてしまう。今日は白地に細い赤リボンの付いた乙女系だ。見てて楽しいのでほとん
どこんなんだけども。
 そんなわけで、今こいつが薄いブラウスの下に着けてるのは、白いレース飾りの付いた
キャミだけ。夏場の女子なんかもっと透け透けだと思うのに、ブラウスから下着が透ける
のをあんまりにも嫌がるので着せてやったものだ。
 正直脱がすのに一手間かかるから気乗りしなかったのだが、キャミの襟ぐりからブラの
上部だけが時折ちらりと覗くのになんとも言えないエロスを先日実感した。嬉しくないパ
ンチラブラチラかましてくれる女子に見習ってもらいたい。
 まあとにかく、それの胸元をぴちぴちにしちゃってるニセ乳を無造作に掴みあげると、
下の胸板を直接こねくられたかのように須藤の身体が跳ねた。
「ひぅっ…!……ひゃ、やめ…っ」
 乳頭のない乳房が俺の手を押し返す。ああ、感動的なまでにリアルなたゆんたゆん感!
 俺の手を掴んで堪える相手を焦らすように、やわやわと揉みながら聞いてみた。
「ボタン留められるかなあ?…ねえ?どう思うよ、このオッパイ」
「ぁ、あ……っや、あ…はなして、ぇっ!」
 空イきするまでもにゅもにゅしたい気もするが、ぐっと堪えてブラウスの前を合わせる。
襟元は問題ないのだが、やっぱりキャミを悩ましく押し上げる巨乳のあたりは、少し布を
引っぱらないとボタンをかけづらかった。当然ブラを着けてない乳は寄せられ、軽く押し
つぶされる。
「ぁう………っん、は……っ…」


 ボタンを一つはめる度に、俺の手首を掴んだ両手が細かく震える。目をぎゅっと閉じて
しまっているのは、俺を見たくないのか、それとも気持ち良いのか、どっちだろう。
「……じゃあ、次はこれ着てね?」
 さっきまで人形めいたお上品さで着こなしていたブラウスを、はち切れんばかりの乳房
で押し上げてしまっている美少女に、俺は再び床から拾い上げたモノを差し出した。
 瞼を持ち上げ、紺色の布を見る須藤。
「………これって…」
 今こいつが穿いてるのと同じような丈のプリーツスカートだが、ウエストにくっついた
二本のベルトといい独特のペラペラ感といい…
「カーディガンとかは高かったから、こんだけしか買えなくってさあ~…どうよこのダサ
可愛いお受験っぽさ!?」
「知るかよ!お前本当頭おかしいって!」
 その相手にニセ乳揉まれてひゃんひゃん喘いでたくせに、ひどい言いようだ。
「……さっきみたく俺がお着替えさしたげても良いんだけど。いろいろと」
 「いろいろ」ってとこであからさまに胸を見れば、慌てて吊りスカートをひったくる。
ありがたいことだ。
「おやおやぁ?やる気満々ですねぇ~?」
「…………っ…」
 屈辱に唇を噛みしめながら紺スカートをいったん置き、カーペットに膝立ちになる。
 着ているスカートのファスナーを下ろしホックを掴んだところで躊躇していたが、目の
前での美乳彼女によるストリップショーに俺が軽く拍手するのに、やけになって手を放し
た。
 ピンクのプリーツスカートが、白い腿を伝ってパサリと床に落ちる。着丈の短いブラウ
スなので、すべすべした下腹から下がすっかり露わになった。
「…………」
「………みないで……」
 無駄と分かっているのか、呟く声に力はない。おかげで下半身はショーツ一枚という、
しどけない姿を存分に楽しむことができた。
 愛らしく整った顔立ちに、清楚なブラウスを押し上げる豊満なバストと華奢な肩という、
上半身は申し分のない美少女。しかしたった今脱ぎ捨てられたスカートの下は「女の子」
のモノにしてはいささか…というか、明らかに異様であった。


 引きしまった腹に無駄な肉も筋肉質な凹凸もないすらりとした足。そしてその間には少
女にあるまじき位置に染みを作る膨らみがある。
 どんなに着飾っても、今みたいに本物そっくりな乳房をあてがっても隠しきれない、こ
いつが須藤豊という男であることを証明する立派な半勃ちペニスが、可憐な白ショーツに
包まれていた。
「……可愛いパンティーですねえ、ユカちゃん?」
 ブラとセットになってるショーツは、たいてい中央にちまちました飾りがあるタイプだ
が、これは足の付け根からそれぞれブラと同じ赤いリボンとレースがウエストに向かって
通り、二か所を可愛い蝶々結びで飾っている。日に焼けてない滑らかな肌に白い下着は、
中で熱くなっているモノがくっきり浮き出ているのにもかかわらず清楚なものだった。
「…は、はい………」
 恥ずかしい姿をさらす下半身を揶揄されると思っていたのか困ったように頬を赤らめ、
そそくさとスカートから足を抜く。
「……その……きる、から…」
 おずおずと切り出されたので二歩ばかり後ろに下がってやる。立ち上がった勃起美少女
はニーソに覆われた爪先を、広げた紺スカートの中に片方ずつ入れていった。
 さっきとは逆にホックをかけてからファスナーを上げ、ねじれないように伸ばしながら
ベルトを両肩にかける。こいつの腰にはゆるゆるのウエストなので紺色のサスペンダーが
頼りなのだが、本来つるぺたを想定しているこの服は、たわみ弾む乳房にはまったく無慈
悲だった。
「…ぁ………ん……ぅんっ!」
 わざとらしい咳払いで誤魔化すのだが、どう見ても不安定な布ベルトにかすめる胸を気
にしている。うまいこと隆起の頂点に通るようにしないと、顔をうずめたくなるような谷
間か脇の方に滑ってしまうんだろう。
 それでもなんとか落ち着く場所を見つけ出した奴の後ろに回り、その背にランドセルを
当てる。大人しく赤いベルトに腕を入れた須藤の真ん前には、今まで俺の身体で隠れてい
たスタンドミラー。
 悩ましい巨乳に小学生の格好といういでたちのイケメン優等生の姿を、鏡面は偽りなく
映していた。


「……どう?」
「どうっ…て……」
 両肩に手をおいて尋ねてやれば、頬を染めて下を向いてしまう。普段は女子たちを虜に
し、週末には誰もが振り返る美貌なのに、いかにもな吊りスカートと一番ベルトが長くな
るよう調節した赤ランドセルが、鏡の中の姿にちぐはぐさを添えていた。
 ブラウスを押し上げるそれを羞じらうかのように背を丸めてるのだが、かえって服越し
しに形の良い乳房が強調されちゃっている。まったくもって困った「小学生」だ。
「良いモノあげっから、ちゃあんと前むいてねぇ~?」
 同じく押し入れから引っぱり出してきた、俺が幼稚園の頃の制帽をのっける。偶然にも
スカートのそれに近い紺色なので、短いつばがクルンと丸まった帽子はうまいことハマっ
た。まんま幼児サイズなため、モデルの頭には見事なまでにハマってないが。
 姿見の中には、ぱっちりした瞳を潤ませた、児童プレイ中の巨乳美少女。俺のすぐそば
で細い肩を震わせているくせに下半身は大絶賛勃起中だろう須藤豊その人だ。
「どうしたの?黙っちゃって……ああ、さてはこれらを揃えた俺の行動力にウットリしち
ゃってんだろ?照れちゃ…」
「あきれて言葉も出ないんだよっ!……っあ」
 反射的に言い返してきたが、身じろぎすれば紺のサスペンダーは柔らかな斜面に留まる
ことができず、乳房を強調するかのようにサイドにずれてしまう。セリフの最後は、それ
に気付いたが胸をいじるわけにもいかないもどかしげな声音。
 ブラウスも脱がしちゃって、直接スカートやランドセルのベルトで擦ったらどうなっち
ゃうんだろうとか、良からぬ考えが頭をよぎった。
「…そんな感じの格好、なんかFFとかに居なかったっけ?おっぱいで脇に行っちゃって
んの。あれかえってエロいよな~」
「っ…こんなんとティ○ァを一緒にするんじゃない!」
 謙虚なのか何なのか、わけの分からないポイントで怒られてしまう。
 さて、こちらのツンデレ美少女はどう攻略するべきか。

 (おしまい)

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最終更新:2013年04月27日 15:03