愛玩彼女

(「偽装彼女」シリーズ・短編)

 ネットで見かけて衝動買いしたブツが届いたので、俺はご機嫌で客人を迎えた。
「いらっしゃい、今日もとっても可愛いよ」
 歯の浮くようなセリフに頬を染め、居心地悪そうに下を向いてしまう相手は、なるほど
たしかにその仕草にも麗句の似合う美少女だった。
 細い顎に向かってきゅっと引き締まった輪郭の中に、特注で作ったような形の良いパー
ツがバランス良く配置されている。濃い睫毛を伏せ、リップで艶めく小ぶりな紅唇を噛ん
でるところが、澄ました表情がデフォみたいな白い面を年相応に子供っぽくしていた。
 「女の子」にしては背の高い痩身が身に着けるのは、暖かくなってきたからとこないだ
買いに行った、春っぽい桃色のカットソーに黒デニムの切替えミニスカ。
 丸い襟ぐりが品良く鎖骨を覗かせて、そこや袖と同じく花びらみたいな波形に処理され
た裾には、濃いピンクやパールのビーズ飾りが施されている。スカートも足の付け根から
プリーツが始まってるので、ぷりっとした尻も襞に浮く太腿も楽しめるという素敵なデザ
インだ。
 春ということで穿き口に花柄レースのあしらわれた黒いニーソックスも、締まりの良い
絶対領域を女相手には可憐に、野郎相手にはエロっちく演出してくれている。
 可愛く装い男女問わず惹きつけるために生まれてきたようなこいつが、数時間前までの
教室ではワイシャツにネクタイ締めた男子高生だったなんて、たぶんこの近所の奴等は信
じないだろう。
 当然ながらカップ余りまくりでほとんど膨らみのない胸部は、それに抱かれることをク
ラスの大半の女子が夢見る胸板で、脂肪の薄いすらりとした足は体育祭で黄色い悲鳴を独
り占めして陸上部に舌打ちされたものだなんて、何の悪い冗談かと思う。
 しかしこいつは紛れもなく俺の同級生にして信望篤い優等生の須藤豊であり、どんな相
手にモーションかけられても涼しい顔してお断りしていたのは、こうして「女の子」の格
好をした自分が大好きだからという困った趣味を持っているからなのだ。
 弱みを握られた俺に変態と罵られて勃起できる女装奴隷は、今日の責め道具を披露され
てやっぱり興奮してくれた。


「………これ、を…どうしろって?」
「今から着てください」
 奴の白い肌に負けない、純白のビスチェドレス上下。黒サテンの細いリボンが胸の真ん
中と両サイドを編み上げている…サイドは裾で蝶結びだから、「編み下げ」って言うべき
か?
「き……?……いやいや、無理!厳しい!」
 ハンガーに掛けたまま差し出されたそれを慌てて押し返してきた。
「厳しいって、何が?」
「だってそれ、その……は、肌出てるから…」
 たしかに肩や胸丸見せのビスチェは下着で誤魔化しがきかないし、パニエは付いてない
がギャザーやフレアでフワッフワなスカートも、ちょっと屈んだら中身が丸見えになるよ
うな短さである。さすがなんちゃって衣装だ。
 とはいえ、以前コートの下にオープンバストのブラにハイレグショーツしか着てなかっ
たり、今現在もミニスカニーソ姿でいる相手が拒否っても説得力はない。
「てかお前の意見なんて聞いてねーよ。着ろっつってんだから着ろ」
 無茶苦茶な言い分だが、そんな俺に「言うことを聞く」とうなずいちゃったのはこいつ
自身だ。録音こそしてはいないが、屈辱に震える声で奴隷宣言してくれたことは俺も、た
ぶん本人も忘れていない。
 深い溜め息をついてからのろのろと手を伸ばした相手に別の下着も押しつけて、とりあ
えず俺は部屋を出た。

 яяя

 用意し忘れたモノを洗面所や姉貴の部屋から取って戻れば、優等生はなかなか面白い反
応を見せてくれた。
「!ぁ………ま、まだ……っ」


 「できるとこまでで良いから」という俺の寛大な言葉通り、床に座り込んだ下半身には
すでに白いフレアスカートを着ているのだが、ビスチェの方は後ろに五つあるホックが留
めきれずに両手で前を押さえている。俺に背を向けているので、悩ましく浮き出た肩甲骨
や唯一引っかけられた腰元のホックを間違えちゃってるのが丸見えだった。
 ブラの着脱時に俺の前に限っては「特訓」させてはいるのだが、その甲斐なく彼の身体
は硬いままだ。今日もどうやってその衣装と格闘するのかと思ったが…やっぱり無理みた
い。
「………笑えばいいだろ……っ!」
 何をいきなりシ○ジ君と思ったが、どうやら俺の口は変な形になってるみたいだ。気を
抜くと「くふっ」とおかしな息がもれる。
 持って来たモノを足元に置き、屈辱にうち震える奴の背に手を伸ばす。きちんと着るこ
とも、もちろん脱ぐこともできなくなったビスチェのホックを一度外し、上から順に留め
直してやった。
「っふ………っ…」
 乳房やウエストのくびれを強調させるために、アンダーから腰にかけてはわりかし強め
の締め付けになっている。こいつの場合腹はスカスカで問題ないのだが、ぺたんこの胸板
がちょっぴり苦しそうだった。膨らみはないけど、そこだけ一個緩めてやる。
「はい」
 前に回ってオプションで付いてきたモノを差し出すと、受け取りつつも首をひねられて
しまった。ドレスと同じ真っ白なレースと黒リボンで飾られた輪っかが大小三つ。
「…何?これ」
「何だと思う?」
 商品名はビスチェメイドだったので両手分のカフスとガーターリングなのだが、学年首
席は俺が答えを教えるまで分からなかった。


 「嫌なら無理やり着けてやるけど」と言ったら、慌てて小さい方を両手にはめる。華奢
な手首にふりふりレースは非常にお似合いだ。
「そっちは片っぽしかないから、好きな方にはめてね~」
「…見れば分かる」
 悔し紛れに返しながら、須藤が左膝をそろりと立てる。膝上何センチと言うより股下の
が正確っぽいミニスカの中身が見えちゃわないように必死だ。
 ガーターとはいってもストッキングを穿いてないので、素足をリングに突っ込む。光沢
のある白い布切れがすべすべしたふくらはぎを上っていく様子は、なんていうか、
「エッロい、パンティーみてぇ」
「見るなよっ!」
 今までも生着替えでしたが。悲しいかな高校生、つい似たような連想をしちゃってたみ
たい。
 ともあれ、半ばやけくそ気味にすんなりした左腿を手首と同じフリルで飾ってくれた相
手に、俺は惜しみない拍手を送った。
「似合ってるよ~、ゆーかーちゃんっ!」
「っ………」
 そのこそばゆさと恥ずかしさで下を向く奴の頭をぽんぽん撫でてから、洗面所から持っ
てきた道具の用意をする。
 姉貴のヘアアイロンのプラグをコンセントにつないだあたりで、今度は何しやがるんだ
と俺の手元をうかがってきた。やっぱり洗面所から拝借した、ピンクのボトルと目の細か
い櫛。
「これでユカちゃんを、もっともっと可愛くしてあげるねっ♪」
「…………」
 着せるだけじゃあ飽き足らない俺の気合いの入りように、端正な顔が「げんなり」のお
手本みたいな表情を浮かべる。何が不満なのか、俺にはさっぱり分からない。


「もー、そんな嬉しそうな顔しちゃって~」
 早く終わらせてくれと全身で訴える純白のエロカワ優等生を無視して、アイロンのコー
ドの長さを測る。ちょっと考えてから俺はベッドに乗っかり、掛け布団を指差した。
「ここ座って」
「え?………は、はい」
 育ちがよろしいのか遠慮がちに端っこに腰かけるのだが、ふわふわのスカートは小さな
尻に巻き込まれずにベッドに丸く広がった。
「痛かったら言ってねえ~」
 黙り込んでしまった相手の、服や肌と対照的な黒い髪を手櫛で整える。肩をちょっと過
ぎるくらいのストレートヘアはもつれも傷みもなく、顔を近付けるとほんのりシャンプー
の匂いがした。どこのか知らないけど、かなり控え目な残り香だ。
 乾いてはいるが毛先までするんするんという、世界が嫉妬する髪の感触をしばらく楽し
んでからヘアミストを吹きかけ櫛に持ち替える。いかにも女臭いフローラルな香料にか、
アイロンのランプがつくまでに二人とも軽くくしゃみが出た。
 ブロッキングとかよく知らないので、とりあえず丁寧に梳いた髪を端っこからカールア
イロンに挟み、ゆっくり回しながら引き抜く。コテの熱で整髪料が蒸発するジューッとい
う音に、それまで大人しくしていた須藤が控え目に俺の膝をつついてきた。
「あの…今、何して……?」
「大丈夫大丈夫…あ、見たいん?」
 後ろ手に伸ばしていた手に100均のスタンドミラーを持たせてやれば、「見たいんじゃ
なくて、たしかめるだけだから!」と断りつつもおそるおそる構える。むき出しの肩越し
に覗いてみると、くるんとカールした部分をつまんだ俺と、慌てて作ったような仏頂面の
「女の子」が映っていた。


「どうよ、可愛くね?」
「っ……ど、どうでも良いっ!返す!」
 まだ一部だけだが、初めてにしては上出来っぽい巻き髪を手にニヤニヤする俺から逃げ
るように鏡を閉じてしまう。律義に両手でベッドの上に突っ返されたが、耳がほんのり赤
らんでるので自分がどんな格好になってるのかはちゃんと見られたようだ。
 それから数分後、首のあたりでちょっと苦戦しつつも、どうにかサラサラストレートヘ
アをクルクルウェーブヘアに変身させることに成功。気分良くパチンとスイッチを切り、
俺はオプションの入ったのとは別の紙袋を開けた。
 取り出したるは、直径二センチくらいの白いポンポンが二つ付いたヘアゴム二組。二が多いな。
 学校帰りに駅ビルの雑貨屋で買ってきたそれを、耳の上でそれぞれ括る。白い肩でホワ
ホワしてる黒髪が両側に一房ずつ、ちょこんと飛び出した。セミロングとツインテールの
両方が味わえる、我ながら素晴らしいアレンジじゃなかろうか。
 仕上がりは後で楽しもうと、いそいそと残りのオプションを引っ張り出す。
 弾むようなカーリーヘアをそっと持ち上げ、カフスやリングと同じようなレースやフリ
ルたっぷりのチョーカーを細い首に巻く。さすがに身じろぎした相手に「苦しかったら言
ってね」と優しく言いながら、指二本分の余裕を持って蝶結びにする。輪を小さめにして、
黒いサテンリボンが左の鎖骨や胸に流れるようにした。
 最後にカチューシャになったヘッドドレスを、ポンポンの邪魔にならないように装着。
清楚さを際立たせるつややかな黒髪に、白レースが甘さをプラスした。
「立ってこっち向いて、ちょっと目ぇ閉じてて」
「…はい」
 言われた通り立ち上がり、ベッドの上で胡座かいた俺に振り返る。見上げる位置にある
奴の顔の横で、巻き髪がフワフワ跳ねた。それにくすぐったそうに眉をひそめて…赤い唇
を動かす。


「…閉じた」
 血の通ったアンティークドールが、六帖の俺の部屋に立っていた。
 いつでも涼やか爽やか理知的な「須藤君」の顔は、その衣装と髪型、俺ん家に来る前の
薄化粧によって思わず溜め息をつきたくなるような美少女のものになっていた。
 愛らしい面の「女の子」が身にまとうのは、挑発的なデザインだけど同時に着こなせる
モデルの限られる純白のドレス。華奢な手首やむき出しの左腿、滑らかな喉元には羽根か
花びらのような揃いの飾りをあしらって、その可憐さを引き立てている。
 何より目の前の人物を「女の子」にしているのは、その張本人の身体だった。
 元から無駄な脂肪どころか筋肉の盛り上がりも少ない身体つきなのだが、いかんせん男
なので服を脱いでしまえば腰から尻にかけては直線的な体格だ。いわゆるボンキュッキュ
がペタストーンってやつ。
 だからこそ着せる服は胸に切り替えや飾りの付いたものにしたり足を見せるような、な
るたけ身体のラインから目を逸らせるようなものを選んできたし、こいつ自身もセーラー
服を着て出かけた時はカーディガンで体型を誤魔化してたんだろう。
 しかし今は、ない胸を支えるワイヤーとほっそりしたウエストを際立たせるビスチェの
締めつけがある。
 極めつけにはふんわりと広がるレースたっぷりのスカート。これらによって相対的に柔
らかな「女の子」の身体のラインが、男であるはずの彼にできあがっていた。
 無言のままでいる俺に居心地が悪くなったのか、奴の顔がわずかに俯く。品良く曲線を
描く黒髪が揺れ、頭に付けた白いレース飾りと一緒にちらちら目を刺激した。
 髪をいじってる時に渡したのではなく、姉貴の部屋から拝借した大きめのスタンドミラ
ーを拾い、それを構えてから俺は口を開いた。
「…こっち見な」
 それこそ人形のように伏せられていた長い睫毛が躊躇するように震え、ゆっくりと持ち
上げられる。
 ぱっちりとした黒瞳が姿見に映る自身の姿を捉え、一瞬見開かれる…が、俺がニヤつい
てるのに気付いたのか、ぷいとそっぽを向いてしまった。


「っ………回りくどいこと、するなよ…」
 一生懸命作りましたーって感じの気のない声は、残念ながら本人が期待するほどの効果
はない。桜色に上気した頬を見せつける、真っ白なビスチェメイドさんを前に俺の気分は
上々だ。
「似合ってるっしょ。自分でもドキドキしちゃった?」
「!…っするわけ…」
「はいはい、こっちお~いで」
 鏡を身体の横に置いて、手招きする。キッと睨みつけてきたが逆らえずに、しかし警戒
心丸出しにして奴が一歩近付いた。素足を動かす度に白いスカートがふわんふわんと揺れ
る。
「何を……ぅわっ!?」
 後ろのホックが留められないのが冗談のような、しなやかな腕を掴んで引っぱれば、強
張る身体はあっさりベッドに倒れ込んだ。ていうか、コケた。
「ちょっ…ぃ、痛い!やめ…っ!」
 両腕を掴んで力任せにぐいぐい引き上げれば、冷静沈着な須藤君にあるまじき悲鳴。十
センチばかし俺の方がでかいとはいえ野郎一人をスマートに抱き上げるなんて、か弱い俺
には無理だ。慣れない衣装に相手がうまく動けないおかげで十数秒の奮闘の後、どうにか
こうにか胡座をかいた俺の足の間に小さな尻を収めることに成功する。
「……ぅ………」
 肩を俺の左手に掴まれ、両膝もやっぱり俺の右手に掬われてるという崩れた横抱き状態
にされ、ドレス姿の優等生は悔しげに唇を噛みしめた。腕の痛みと憎い相手の膝の上とい
う屈辱に、黒い瞳はすでに潤んですらいる。ああ、気分良い!
「…かーわいい。ユカちゃん」
 先程よりも近く、低い位置からねめつけられるが、俺は気にせず頬をつついてやる。こ
の、触ってみると意外にふにふにした滑らかほっぺには、ニキビや肌荒れの方が避けて通
っちゃうんだろうなとか思ってたら、リボンやレースで飾られた両手が俺の手を掴んでき
た。
「なに、馬鹿なこと言って……」


「何って、可愛いなあ~って言ってんだけど。ユカちゃん、かぁわいいなあ~っ」
 ぐぐっと押しのけようとする相手に負けず、顔を近付けて復唱してやる。怖気でも走っ
たかのように俺の手を放した白い手は、暴れた拍子に捲れ上がったスカートの裾をギュッ
と押さえた。左腿のガーターリングが見え隠れして、丸見せよりかえってやらしい。
「…聞こえた?もっと言って欲しいですかぁ?」
「っ……お前変だ、どうかしてる!」
 馬鹿だの変だの、言うに事欠いて好き勝手呼んでくれる。しかし寛大な俺は、「自分は
変態女装っ子のくせに」と言いたいのを堪え鷹揚にうなずいてやった。
「そうだねえ~…たしかに、俺がこんなカッコしたユカちゃんと一緒に居るなんて、みん
な知ったらビックリするんじゃね?」
 「なんなら2ショで記念写真撮ろうか?」とうそぶけば、ほんのり紅潮していた顔から
ザッと血の気が引く。「そんな」とか「卑怯だ」とかそのあたりの恨み言を口走りかける
が、賢い喉はそれを音にはせず、ふるりと唇をわななかせるだけだった。
 ニコニコとご機嫌な俺の顔をしばらく眺めてから、耐えられないと言いたげに須藤が目
を伏せる。マジで失礼な奴だな。
「…本当………わけ、分からない……こんなことして何が楽しいんだよ…っ」
 いまだ震える紅唇が掠れた声を絞り出すが、「そりゃあもう、こんな可愛い子が恥ずか
しがって俺の腕の中で縮こまっちゃってるとこがです」としか言いようがない。
 「こんなこと」…というかこんな格好をすることを、こいつの本心は拒んでいないどこ
ろかむしろ喜んでいるんだろうけど、それを俺に見透かされるのが、こうやってお膳立て
されてるのがたまらなく悔しいのだろう。言ってみればオカズを用意された上にチンコ扱
いてもらってるようなもんか?
 自分にあてはめれば最低なシチュだが、「する」立場なら話は別だ。


「……よし、決めた」
 ちょっとの間の後うなずいた俺を、湿った睫毛の奥の双眸がこわごわと見上げてくる。
 自身の境遇を嘆く瞳にニッコリ笑いかけて、俺は今日のメニューを告げてやった。
「今日はユカちゃんの言うこと、何でも聞いてあげる」
「…は……?どういう、」
「だから、今日はユカちゃんの好きなようにしてあげるって。どうして欲しい?このまま
抱っこしたままシゴいたげる?それとも肩揉んであげよっか?」
「…あぁ………そう」
 一応メイドルックの相手を前におかしなセリフだとは思うが、向こうはまたいつもの俺
の気まぐれだと理解したのだろう。彼は心底あきれたような顔をして…渋々口を開いた。
「…できれば、その……もう帰りた」
「それとも、せっかくだからそのカッコで駅まで行く?」
「かっ、肩!肩揉んで…ください…」
 慌てて一番無難な選択をしたが、ベッドの上に置いたスタンドミラーに身体を向けられ
微妙な顔をする。身を離した俺に背中を預けたことと、真正面にフリフリ着飾った自分の
姿があることが落ち着かないようだ。
「痛かったら言ってね~」
 鼻歌交じりに巻き髪をかき上げ、白い肩を露わにする。ギャザーたっぷりのビスチェの
後ろは、浮き上がった肩甲骨を半ばまで覗かせていた。この格好で羽根が生えても、あん
ま驚けないかもしれない。
 そんなファンタジー妄想をしながら食い込みも吹き出物もないすべすべした肌に親指を
押し当てると、鏡の中の「女の子」は困ったような、くすぐったそうな顔をしてみせた。
「…っぅ………ん」
 流れるようなラインを描く肩を手のひらで覆うようにして、ゆっくり指圧。いつも姿勢
の良い奴らしく、薄く乗った筋肉に腫れはあまりない。
 肩凝りを取るようにというよりは緊張をほぐすように、弱めに中央から外側へと揉んで
いくと、なんとも悩ましい声が前方からもれてきた。


「気持ち良い?」
 腕の付け根の窪みを関節でグリグリしてやると、正座した膝頭に両手を重ね大人しくし
ていた相手が目を細めた。
「あ……うん、気持ち良い」
「そう?上手い?」
「上手だと、思う」
 本当に普通のマッサージをするとは思ってなかったのか、意外そうにうなずいてくる。
無垢な小学生の頃からさんざん俺をこき使ってくれた兄貴や姉貴も、こんくらいでも褒め
てくれれば良かったのに。もしくは親みたく小遣いくれるとかさ。
 珍しく素直に返事してくれた相手だったが、しばらく黙ってた俺がむき出しの二の腕を
掴むと、濃い睫毛を持ち上げ鏡越しに睨んできた。
「…そこ、肩じゃないけど」
 冷たく言って、すんなりした腕にキュッと力を込める。お行儀良く両手を膝に乗せたま
まそんなことするから中身のないドレスの胸元がたわみ、デコルテに流れていたチョーカ
ーのリボンが滑り込んでしまった。
「そりゃ分かってるけど、せっかくだから腕も揉んだげようと思って…なんか問題ある?」
「!…っ……いや……ない、です………ごめん」
 首を傾げて聞き返せば、自分の過剰反応を恥じるように鏡面に映る白い頬がほんのり赤
らむ。今までの俺の所業をかんがみれば仕方ないと思うのだが、純白のドレスにふさわし
く清く正しい須藤君は、自分の手を持ち上げる俺に膝を触られるのも「我慢我慢」と言い
聞かせているのだろう。
 感づかれない程度に脇をくすぐりながら上腕をほぐし、肘へと下ろしていく。脂肪の薄
いそこをすりすりされて、「く」とか「ん」といった吐息混じりの何かをこぼしかけては、
奴は鏡の中の紅唇を引き結んだ。


「次、左腕な」
「……っあ、はい…」
 ポンポンの真下、桜色になった耳に呼びかける。慌てて俺に腕を預けた相手の声はすで
に掠れ気味だ。
 吸い付くような感触を楽しんだら、お次はカフスに飾られた細い手首。レースに巻かれ
たゴムを伸ばして皮膚の薄い裏側を撫でると、俺の胸に密着した背中がビクンと震えた。
「あ、ごめん。痛かった?」
「!ちがっ……く、くすぐったかっただけだからっ!なんでもない!」
 心配そうに顔を覗き込んでやると、慌てて首を振って否定してくる。その度にカールし
た黒髪がホヨンホヨンと俺の顎に当たり、非常にこそばゆい。
「ふぅん…本当に?」
「本当にっ!」
 必死に取り繕うところをみると、もう少し「マッサージ」を装って遊べそうだな。
「んじゃあもう良かったり、痛くなってきたら言ってねぇ~」
「……ぁっ………」
 自分の発言のせいで続行が決定し、ビスチェ姿の「女の子」はオロオロしてしまう。今
すぐ「もうやめて」と言えば明らかにおかしいし、かといって奴的には「普通に肩揉みし
てくれてる」俺に文句をつけるのも気が引けるんだろう。
 しばらく自分の顔を前に考え込んでいた優等生だったが、不意にぱっと顔を上げた。
「あの!…そっちも疲れるだろうから、俺ばっかり悪いよ」
 ほう、気遣いと見せかけて逃げる気か。思わず笑いがこみあげてくるが、俺はどうにか
それを優しげな笑顔に消化して首を振る。
「うん~?大丈夫大丈夫。俺マッサージ得意だから!家族によくやらされてさあ」
「………そうなんだ…」
 肘と手首の間を角度を変えて揉み続けながら眺める須藤の顔は、姿見越しにも落胆を隠
しきれていない。過ぎた羞恥心と必要のない義理立てのせいで、こいつはこうしていくら
でも拒みようのある拷問に耐えるしかなくなってしまった。
 もっとも、堂々とセクハラできることが確定し、俺としては万々歳だが。


 薄い手のひらをツツイーっとなぞったり、指の腹を延々擦ったりしていくうちに、後ろ
から抱き込んだ身体は徐々に俺の方に傾いていった。ヘッドドレスに鼻先をうずめ、チク
チクふわふわの感触を楽しみながら尋ねてみる。
「強すぎない?平気?」
「ぁ……う、んん、平気…っ!」
 反射的に首を振ってから、とろけかけた黒瞳をハッと見開く。後悔したように眉をひそ
める奴の顔は、筋肉をほぐされる気持ち良さと身体を撫でられるくすぐったさ、そしてそ
のエロい身体が敏感に受け取ってしまう刺激がないまぜになって鏡の中で混乱しているよ
うだ。
「……は………っん……っ」
 ビスチェの締めつけだけでは言い訳のきかないくらい浅い喘ぎをもらす相手には気付か
ないふりで、すべすべした手の甲を撫で、指を一本一本反らせた。肩から腕へと段階的に
刺激されてきた身体は、そんな些細な愛撫にも快感を見出だしてしまう。
「あ………っは、ぅ……む、村瀬…!」
 再びカフスの間に指を突っ込んだところで、ついに彼は音をあげた。すでに自分の上体
をまっすぐ支えることもできず、腕を回した俺にもたれかかってしまっている。
 しかし、スタンドミラーにぶつかりそうなほど前にずれてしまった膝は、それでも下着
をさらすまいとぴったりと閉じられていて、その仕草と衣装のギャップが鏡の中の「女の
子」を余計に劣情をかきたてるモノにしてしまっていた。
「うん?」
「……ぁ…あ、あの……も…いいから…っはなし、て…」
 目の縁を赤く染め鏡越しに訴えるが、何が「もういい」なんだか。


「は?どうして?…あ、力入れすぎちゃってた?痛い?」
「そっ……そういうわけじゃ、」
 矢継ぎ早に質問され困惑する相手に、俺はさらに問いかける。
「じゃあ…こんくらいのが良い?」
 すんなりした腕を先っぽから肩にかけて、人差し指で逆撫でしてみる。撫でるというよ
りも軽く滑る感じ。
「……っ!ふ………は……」
 ぶるりとむき出しの肩を震わせ息をつく須藤。白いガーターリングの飾る腿を、フリル
たっぷりのスカートが少しずつさらしていった。
「ちが………もう、もういらな…っ!?」
 必死に言葉を紡ぐ奴が息を呑んだのは、きつめのホックやワイヤーによってまぁるく演
出された胸元を俺の手が覆ったからだ。
「息、苦しい?……ここ、カチカチんなっちゃってる」
 普通の男なら…女でも、前触れなしに胸に触られただけでは「何か当たってる」程度に
しか感じない。ちょっとかすめただけでダメになるほど多感だったら、満員電車は公共の
アダルトな乗り物になってしまう。
 しかし長時間のマッサージによって開かれた奴の身体は、もとから性感帯の乳頭も含む
そこへの刺激を、しっかり快感として認識した。
「……ひ、は…ぁ、あ……まって、待てってば!」
「待てって、何を待つの?どうして?」
「………む、むね、を……やめて…」
「だから、どうして?」
「っう…………」
 編み上げ効果と白いギャザーでふっくらとして見えるそこを、それこそ肩凝りでも取る
かのように揉み上げる。鏡面に映る美少女は、ドレスの上から乳房を掴まれその愛らしい
顔を歪めた。
「あ、ん…………っく、くすぐったい、から……っ!」
 「嘘ばっかり」と耳元でささやき、華奢な肩に顎をのせる。チョーカーから垂れる黒リ
ボンに唇を当て、そのまま薄いデコルテへと滑り下りた。すべすべしたそこは当然ながら
血が通っているので、見た目よりもずっと温かい。


「ひゃ、う………やめっ……」
 ビスチェの胸元に挟まったリボンの端を咥え引っ張り上げる。細いサテンに肌を擦られ、
白い喉がヒクンと震えた。
 鏡に見せつけるように口にしたリボンを引っ張り、蝶結びを解く。するんと首筋を滑る
チョーカーは、今度は品良く浮き出た鎖骨をそのフリフリレースで飾ってくれた。
「…そんなやらしい声出しちゃってー……俺はただ、肩揉んであげてただけなのにねえ?」
 「どうしてかな?」とニヤニヤしながらワイヤーをなぞれば、ようやくバレてたことに
気付いたのか奴の頬がにわかに紅潮した。
「…っさ、最低だ………っ放せよ!はな、ぁ…っ」
「いっやでーす!…ほら、こっちもマッサージしてあげなくっちゃねぇ~?」
 両胸に重ねた俺の手を掴んできたが、服の上から乳輪を探るように円を描いてやればす
ぐに力が抜けてしまう。パッドが入ってないため、布地の襞だけで膨らんでいたそこはす
ぐにぺしゃんこになった。
「ほらほら、クリクリしたらここ、ツンってなってきたよ~?」
「ひぁう…んっ……やだ、く…くすぐったい!」
 鏡に向かって服越しにも主張するほどに勃ち上がった乳首を指してやるのだが、ギュッ
と目を閉じてしまった相手はいやいやと首を振るだけで見てくれない。言われずとも自分
の身体がどうなっているのか、姿見や俺にどんなはしたない格好を見せつけちゃってるの
かをよく理解しているんだろう。
「ええー?ほんとかなぁ~?」
 わざとらしく言いながら、ふわふわの衣装でもそれなりに重い相手を抱えベッドの上を
ずるずる移動。片側を壁にぴったり寄せているので、そこに奴を押しつけた。
「っう………!」
 鏡から解放されたことに瞼を持ち上げるが、真正面でニヤニヤそれを見てる俺に俯いて
しまう。おかげでようやく足の付け根ぎりぎりまでめくれていたスカートに気付いたのか、
慎み深い優等生は慌てて裾を引っ張った。


「ちょっと失礼」
 相手の両脇に手を突っ込み、壁との間に腕を回す。間近で見るお顔も可憐なアンティー
クドールは、俺の息が首筋にかかる度に背中をビクつかせた。
「苦しい?ちょっと楽にしてあげるね~」
「ふは、ぁ………っ?」
 ぷつん、とホックを二つばかり外して、ビスチェの胸元を緩める。一瞬の開放感にホッ
と息を吐く相手だが、フリルとリボンで飾られたそれを引き下げられ身を強張らせてしま
った。
「…っやめ……」
 「見ないで」と唇を震わせる相手に構わず、挑発的な衣装に似合わない平らな胸をさら
してやる。さんざんいじりまわされた挙句に外気にさらされたそこは一目で分かるほどに
その先端を硬く、充血させていた。
「…すっげ、ビンビンじゃん」
「っ………いや、だ…!」
 顔を近付けて息を吹きかければ、スカートを押さえていた手で俺の肩を掴み引きはがそ
うとしてくる。俺から逃げようにも、すでに腰砕け状態だから後ろの壁に自身のむき出し
の肩を擦りつけるくらいしかできないのに、ご苦労なことだ。
「…じゃあ、これはどう?これもくすぐったい?」
 人差し指を突き出し、何をするのかとおびえる相手に見せつけてやってからむき出しの
胸へ。触れるか触れないかというところで、色付いたそこをツィーッとなぞってやった。
「ひっ……ぃ、あ……っ…」
 こいつの大好きな所を避けるように、薄く筋肉ののった胸板をつつき時折脇に滑らせる。
いつもなら指が疲れるまでつねり扱いてやる勃起乳首は、今は爪の先をかすめる程度でお
預けだ。
「どうですかぁ~…ユカちゃあん?」
「……っん…く……くすぐっ、たい…!」
 この期に及んでなお強情な奴だ。放っとけばすぐ上に行ってしまうフレアスカートに包
まれた尻をもじもじとさせ、俺の肩を押しのけようとしていた手は頼りなく袖を掴むだけ
という、紛うことなきおねだりポーズを決めてるくせに。
 形の良い眉根を寄せ小ぶりな唇をわななかせる悩ましい面と、ふんわり甘ロリ衣装とは
対照的な性格にふさわしくツンツンと起き上がった胸先をたっぷり視姦してやってから、
桜色の耳にささやきかける。
「……もっとイイことしてやろっか?」


「……は…?なにを、」
 訝しげに首を傾げる相手を無視して、いじって欲しくてたまらないだろうそこに顔を寄
せる。そして、
「ひぁうっ!?…っは、ん……っぃ、いあっ……!…」
 チロチロと軽く舐めてやれば、何とも愉快な反応を返してくれた。
 白い喉をのけ反らせ、結んだ髪やヘッドドレスが乱れるのも構わずに壁に頭を擦りつけ
る。焦らしまくった挙句の仕打ちにあがった高い悲鳴は、とても普段の落ち着いた模範生
のハスキーボイスと同じものとは思えない。
「…ユカちゃんのおっぱい、プリンってしてるねぇ~」
 ちゅく、と音をたてて唾液を絡めては息継ぎの合間に顔を覗き込んでやる。両乳首をま
んべんなく舐め回されて、レース飾りの付いた腿が落ち着きなく擦り合わされた。
「やっ……ぁ、あ………っへ、変態!そ…なとこ……んんっ!」
 否定はしないけど、ない乳吸われてアンアン喜んじゃってるお方に言われても、なんだ
かなあ。
 尖らせた舌先で乳輪をなぞり、ヌルヌルんなった乳首を甘噛みしてやる。乳房を揉む代
わりに、ビスチェの縁飾りのレースで薄く浮いた肋骨をくすぐったら、胸を俺に押しつけ
るようにして喘いだ。
「っ……んぁ、う……んっ……」
 唇で乳頭全体を包み舌を押し当てれば、俺の肩口を掴んだ手の力が弱くなったり強くな
ったりする。頃合を見計らって、俺はずっとねぶっていたそこから口を離した。


「…っぁ……なんで……っ!」
 フリルで飾られた手で慌てて口をふさぐが、そこからこぼれたセリフはもう聞いてしま
ったから遅い。
 最初は毅然と俺を睨みつけていた黒瞳は、ついさっきはトロトロんなって宙をさまよっ
ていた。そこまで溺れた状態で不意に刺激を止められれば、いくら聖人君子でも「らめぇ」
だろう…模範生の仮面を剥がされた変態女装っ子のこいつなら、なおさらだ。
「うん?どうして欲しいって?」
 白々しく尋ねる俺の指は、覆った奴の手をどかしその下に滑り込む。テラテラしている
乳首はもうノータッチだ。
「ふぁ……」
「………ユカちゃん?」
 ぷりっとした唇の形をなぞるのをやめれば、締めつけはなくなったのに浅い息をつく。
顔の両脇を飾るポンポンをいじりながら優しく尋ねてやれば、おずおずと見上げてきた。
「…ん……さ、さっきみたい、に……」
「さっきって言われても、ねえ…肩揉んで欲しいん?」
 我ながら意地の悪いセリフに、程良い厚みのおねだりリップがきゅっと噛みしめられる。
可哀想にも思えるが、俺にとってそれは情というより興奮につながってしまうから逆効果
だ。
「言ってくれなきゃ分かんない。さっきみたくおっぱいペロペロして欲しいんなら、ちゃ
んと言ってみな」
「っ……」
 俺の唾液に塗れた胸を覆うことも、俺を突き放すこともできず身体の横に下ろされた白
い手が、ギュッと握りしめられた。たっぷりのフレアで膨らんだスカートの中はどうなっ
ているのか、非常に気になるのをぐっと堪えて言葉を継ぐ。


「…ほら、『ユカのおっぱいを舐めてください、チュッチュしてください』って。すっげ
簡単だろ?」
 そんなセリフを羞じらいもなく言えるようなら、目の前で恥辱と欲求不満に悶える相手
は今頃自由の身だろう。理性を手放せないからこそ、それを刺激して気高い心を屈伏させ
るのが、そのおきれいな顔が死にたくなるほどの羞恥に歪むのを見るのが楽しいのだ。
「…ほらほら、どうして欲しいの~?」
 これみよがしに舌を突き出してやると、潤んだ瞳はもの欲しげにそれを追ってくる。そ
ろそろ限界だ。こいつもだけど、ビンビンにおっきしたままの淫乱乳首を見せつけられて
る俺の我慢も。
「……っう…」
「ユカちゃんの言うこと聞いたげっから、言ってごらん?」
 他人の、それも男の口をここまで凝視したのは初めてなんじゃないだろうか。とにかく
俺の舌の動きに釣り込まれるように、優等生はその薔薇色の唇を震わせた。
「ん、ぁ……なっ…………なめて、なめてぇ……っひゃう!…」
 奴が身構えるのを待たずに、お望み通りレロリと下からねぶり、ぷっくり勃った先端を
念入りに吸ってやる。ただの飾りでしかないはずの乳頭は、本人による開発と俺からの刺
激によってすっかり性感帯になっていた。なまじ今まで付き合った女の子たちよりも敏感
かもしれない。
「ほらほら、コレ感じるの?」
「ぁ……ん、んんっ………か、かんじる…」
 俺の機嫌を損ねてまたお預けを食らいたくないんだろう。湿った睫毛を伏せたままコク
コクとうなずき、必死に復唱する。「リピートアフターミー、感じますか~?」「か、感
じますぅっ!」ってやつか。AVでありそうなシチュだな。


「おっぱい好きなの?こうやって乳首ペロペロされるの、大好きなの?」
「っ!ぅ………は……ぃ……」
 羞じらいつつも首肯した相手の顔をじっと覗き込み、俺は小首を傾げてやった。
「おっぱいが好きだなんてユカちゃん、赤ちゃんみたいだねぇ?」
 吸われてる立場だから違う気もするが、恥じ入るように俺から顔をそむける優等生には
そんな余裕はないみたい。皆に頼られ尊敬される須藤君は、こうしてガキ扱いをされる度
にこうしてそっぽを向いてしまう。
 滑らかな額にすっきりと通った鼻梁、ふっくりした唇から細い顎へと絶妙なバランスで
ラインを描く横顔をたっぷり楽しんでから、俺はまた口を開いた。
「…どんなにされるのがいい?」
「………え…?」
 困惑したように見上げてくる相手に、俺はにっこり笑いかけてやる。
「先っぽしゃぶられんの?チューって吸われんの?それとも歯でグリグリやんの?」
 フルコースでやられたばかりの愛撫を列挙され、嬌声をあげてた相手がにわかに落ち着
きをなくす。
「ぁ………そんな……っ」
 ちゅ、と音をたてて乾きかけたそこに吸いつき、つまらない反論を封じ込める。
「『言うこと聞く』っつっただろ?…だから、一番好きなのやってあげる」
 「どれがイイのかなぁ?」と先程挙げた方法で左右の胸を順番にねぶる。ほとんど力が
入らないくせに俺の袖を掴んできたので、両手のひらをくすぐってやればまた所在無げに
掛け布団をこすった。
「あ、ん……っそ、の…ぐ、グリグリするのが………っぁ、あ…」
 直接的に言えないのだろうが、かえって気分を盛り上げてくれてるのにどうして気付か
ないんだろうか、このお利口さんは。
「ふぅ~ん……『グリグリ』って、こんなん?」
 芯を持ったそこを前歯で挟み、強弱をつけて刺激してやる。時折唾液を絡めた舌先で乳
首をつついてやると、酔ったように上気した目元が切なげに細められた。
「ひゃ……ふ………んぁ、あっ!それ、そんなぁっ」
 特別サービスで脇から胸板にかけて、ワイヤーの当たってたあたりを柔らかく指圧して
やれば、やっぱり少しはこそばゆいのか肩を震わせながら悲鳴をあげる。丸く広がったス
カートの下で小さな尻がもじもじと揺れ、正座していた足が少しずつ崩れていった。


「っん、ぅ…………ふわっ!?」
 俺の舌がピリピリするまで乳首を吸ってやってから、ふにゃふにゃに脱力していた身体
を軽く押す。目論みどおり奴があっさりコテンと倒れると、掛け布団の上にカールした髪
がホワホワ跳ねた。
「はぁ~い、もう疲れちゃったっしょ?ちょっとおっぱいはお休みしようねぇ~」
 俺のセリフが届いてるのか否か、ぼんやりしたままむき出しの肩や脇腹に当たる乾いた
感触に身じろぎする身体を横向きにし、ビスチェの上から背中をさすって息を整えさせる。
胸を緩めたとはいえ、ノンストップでアレコレし続けちゃこいつの身体が持たない。うっ
かり酸欠にしちゃってこの格好で救急車呼ぶ羽目になってみろ、いろんな意味でおしまい
だ。
 それに、今と同じくらいかそれ以上に愉快な反応を見せて欲しいのもある。
「……っは…ふ………ぁ……」
 長時間の胸責めに上がった呼吸が徐々に落ち着いてくる。真っ白なドレス姿でベッドに
横たわるのは、その紅唇が震えているのに、その肌がうっすら汗をまとっているのに気付
かなければ本当によくできた人形みたいだ。
 突然行為を中断した俺を訝しげに見上げてくる奴にほほ笑みかけてから、ガーターリン
グの黒いリボンがなまめかしくラインを描く腿の裏を撫で上げる。そのままスルスルとス
カートの中へと潜り込もうとしたが、俺の意図に気付いたのか慌てて手を伸ばしてきた。
「あっ……やだ、やめ…っ!」
「ええ~?…何を、やめて欲しいのかな?」
 首を傾げる俺を心底憎らしげに睨んでくるが、ベッドに寝転がった相手と、それを跨ぐ
ように座った俺とでは勝負にならない。
「……も一度聞いてやろっか、な・に・を、やめて欲しいの?」
 観念したようにギュッと唇を噛みしめてから、優等生は一生懸命「具体的に」おねだり
を試みた。
「っ………それ、を……し…した、やめて……みないで、おねがい…!」


 「お願いだからやめてくれ」って言いたいんだろうが、恥辱に沸騰しそうなんだろう彼
が紡いだのは素晴らしくたどたどしい懇願だった。
 …もっとも、俺に対しての拘束力にはさっぱりならないが。
「『下』ってどこかなぁ~?分からないから却下しまーす!」
「!?そんなっ……ぁ、あ、やだぁっ!」
 フリルをヒラヒラさせながら制止してくる手を避けながら俺はわざと無遠慮に裾を掴み、
かたくなに秘められていたそこを景気良く丸出しにしてやった。
「うっわぁ~……」
 着替えてからずっと隠されていた中身は、やっぱり想像以上のモノだった。さすが学年
首席、いつでも皆の期待を裏切らない。
 ショーツを穿いてるにもかかわらず、ほぼむき出しの状態で、やや薄く小さいが形の良
い双丘がそこにはあった。
 ふるいつきたくなるようなみずみずしい桃尻の谷間に食い込む紐ゴムと、つるすべの股
間を半透けで覆うレースとでできたそれは、目にも鮮やかな真っ赤なTバック。インナー
というよりも、いわゆるナイティーに属するやつだ。
 こいつの羞恥心を煽るために今までも下品な色の下着を着せたことはあったが、今回の
小道具はシミ一つない肌やドレスの白さとのコントラストのおかげで、いやらしさが通常
の三倍(当社比)になってる気がする。こんな、ちょっとロリっぽい髪型にフワフワ衣装の
美少女がそんなエロい勝負下着を着ちゃってるなんて…っていうちぐはぐさが、かえって
興奮を誘っていた。
 スカートを完全にひっくり返されたまま俺に押さえられてるので、恥ずかしいところを
隠すこともできずに縮こまる須藤。それでも最後の抵抗で、引き締まった太腿をキュッと
内股に寄せ、股間にあるモノを隠そうとしていた…が、幸か不幸かクラスん中でもかなり
上位に行くだろうその逸物は隠しきれてない。


 それでも不自然に盛り上がった前面を見ないようにすれば、人形めいたお顔を赤く染め
白いビスチェから色付いた乳頭を覗かせてるという、すんばらしくエロエロな貧乳っ娘が
できあがっていた。小ぶりな上向きヒップに程良く食い込んだ赤い紐ゴムが、「汚してる」
感があってたまらなく煽情的。
「…こんなかーわいい服着てんのに、こ~んなエッチなの穿いちゃってたんだ~?」
「っぉ…お前がっ!き、着せたんじゃないかっ!俺は好きでやってんじゃ……」
 さっさと身に着けたのは自分のくせに、涙目でわめきたくなるほど恥ずかしいらしい。
 ただこうして必死に弁解しても、ちょっとでも気を抜けば重力に関係なく起立しちゃい
そうなのを挟んだ腿をせわしなくもじもじ擦り合わせているので、決まらないことこの上
ない。
「う~ん、とりあえずユカちゃんの、かわいーいお股をよっく見せてねぇ~……えいっ!」
 軽いかけ声とともに無理やり足を開かせれば、無理やり挟み込んでいたモノがピンと起
き上がる。総レース前面の花柄を、中の不自然な隆起が引き伸ばしアピりまくった。
「ぁ…!……っ」
「うわぁ………ひっわーい」
 ナイロンレースなので染みは目立たないのだが、そそり立ったペニスの形がはっきりと
透け見えてしまって、俺の言葉通りになっている。編み目からは黒い毛が飛び出さないど
ころか、下着越しにも白く滑らかな下腹の肌が覗いていた。
 何より特筆すべきはその立派なブツの根元である。Tバックだから当然下…本来ならば
割れ目にくる所は股布が細くなっているため、発育の申し分ない奴の睾丸は両方とも赤い
レースの脇から「こんにちは」しちゃっていた。
 おまけに女にはない屹立のせいで布が引っ張られ、締まりの良い谷間にグリグリ紐が食
い込んじゃってるのだが…張りのある肌を不自然に彩る真っ赤な下着は、なんか緊縛プレ
イでもしているみたいだ。
 愛らしい顔にさらに甘さを添える白ポンポンのツインテールや、ツンとその存在を主張
する勃起乳首と同じくらいかそれ以上に刺激的な光景に、ジャージの中で俺の息子が首を
もたげてくる。清楚なお人形さんは実はエロエロ女装っ子で、こうやって破廉恥な格好を
俺に見せつけて喜ぶド変態だったのだ。


「もしかしてさぁ~…これ、着た時からずっと勃ってたの?」
「…はぁ!?そ……なわけ、ないだろっ…」
 掠れた声で否定してくるが、着崩れたドレス姿で大股広げさせられているというのに、
それまでふんわりしたフレアスカートで隠していた勃起ペニスは元気に上向いたままだ。
張りのある腿やほっそりしたふくらはぎは元から薄い毛の処理も完璧で、とても野郎の持
ち物には似つかわしくない。
「本当かなあ?ほら、チンコビンビンで、お尻やタマがめっちゃ苦しそうだよ~?」
「っぅ………み…見るなぁ…っ!」
 俺に屈辱的な姿態を見せつけるのと同時に下半身全体を苛んでしまっているのは、他な
らぬ自分の…この格好によってさらにいきり立ち汁をこぼすモノに他ならない。それを指
摘されてなお、赤レースに覆われた奴のペニスは萎えるどころかビクンと切なげに震えた。
 イケメン須藤君の筋金入りのMっぷりをたっぷり観賞させていただいてから、俺はよう
やくそこに手をのばす。
「…っ……ひぁ……あ、ん…っや、やめ……」
 クニクニとショーツ越しに窮屈そうな竿を揉み、頂点からにじみ出るモノを指に絡める。
必死に閉じようとする腿は左手で押さえつけ、そのまますべすべした肌を撫で回してやっ
た。ああ、そんなギュってされちゃうと、俺のおててが素股気分なんですが。
「やめてってわりには…ほら、パンティーの上からでもグッチョグチョだよ?」
 高校男子のくせに、いつも清潔な芳香に包まれたこいつの身体から出たとは思えない、
生臭いそれを顔に近付けてやる。自分の我慢汁にまみれた俺の右手を間近に寄せられ、彼
はその端正な顔をしかめて横を向いてしまった。
「舐めろよ。お前の出したスケベ汁だろ」
 自身の認めないプライドを鼻で笑ってやり、さらにみじめな思いを味わわせてやる。指
フェラを命じられた優等生はためらいつつも顔を上げ、俺が教えた通りに唇を寄せた。
「……っん………」
 ちる、と赤い舌先が俺の爪をかすめる。薄く墨を重ねた眉を苦みにひそめはしたが、覚
悟を決めたように彼は口を開き、憎い相手の指を咥え込んだ。


 いつも穏やかな声を、誰からも尊敬され頼りにされるセリフを発する唇が、ねじ入れら
れたモノの形に歪んでいる。指を丁寧にねぶる舌やプヨプヨと弾む下唇の感触を堪能しな
がら、俺はエロメイドの顔を間近に見つめてやった。
「自分の変態オツユの味はどうですか?ユカちゃあん?」
 屈辱に黒瞳がジワリと涙をにじませる。それでも気丈に睨み上げてくる相手の口からち
ゅぽんと音を立てて手を引き抜き、返事を待つ。
「……」
 答えたくないのか続けろって意味だととったのか、奴は顔を傾けて唾液の流れた手のひ
らへ舌を伸ばした。レロンと広く舐めあげられ、おきれいな面に似合わないその仕草と刺
激に下半身が痛恨の一撃を受ける。
「ぅえ、あ、もう良いもう良いっ」
 尖らせた舌先がヌメヌメと指の股に入るのに、慌てて手を引きジャージで拭った。仰臥
したままの相手は俺の息子の状態なんてしらないので、ようやく終わった奉仕作業に溜め
息すらついている。
「…ほら、何か言えよ」
 指フェラさせたばかりの手で再びペニスをいじる。レースの下からにじむ我慢汁とそれ
を垂らす張本人の唾液が混ざって、なんとも言えないグチョグチョ加減。スカートを捲ら
れ自身の男根を可愛がってもらう「女の子」は、ショーツの中でフル勃起しながらも口を
開いた。
「……っぁ、ん……ぉ、おいしくな……ぃ…」
「そうじゃなくて……まあ、コレ続けて欲しいならそうすっけどさ」
 ずっと太腿を撫でまわしていた左手で、ショーツの紐ゴムをぱつんと弾く。電気でも流
されたみたいに奴の身体が跳ね、それに伴い俺に掴まれた竿がレースに擦りあげられた。
「ひゃっ!?ぁ……っ?」
「さっき言ったろ?ユカちゃんのしたい通りにやったげますよ~って」
 だからといって「じゃあパンツ脱がしてこの勃起チンコを扱いてイかせてください」と、
こいつが言えるわけがない。いまだぷくりと色付き構って欲しそうな勃起乳首と、赤いT
バックをぐいぐい食い込ませながら汁をこぼす貪欲ペニスを俺にいじくられてなお、彼は
俺にすべてを委ねることを、理性を手放すのを恐れている。その身体はもう、俺なしの妄
想じゃオナニーもできないんだろうに。


 恥知らずの淫乱は萎えだが、恥ずかしがり屋のマゾっ娘(男だけど)はど真ん中ストラ
イクなので、俺は優しく促してやった。
「エッチなユカちゃんのお願いなら、何でも聞いてあげる」
 大きく脈打つ度にだらしなく涎を垂らす亀頭を包み、ざらざらするだろうレースを窪み
に押しつける。贅肉なんて一生縁なさそうな引き締まった下腹がヒクついて、持ち主の限
界を教えてくれた。
「ほら」
「ぁ………さ、さわって……ください……」
「どこを?」
 彼的にかなり葛藤した結果と思われる「おねだり」に、俺は短く返す。
「……っ…………さっき…触ってたとこ…」
「だから、どこだってば。人にモノ頼む時はちゃんと言わないとって、ママや先生に教わ
ったでしょ~?」
「…………」
 潤んだ黒瞳で射殺すように睨みつけてくるが、赤レース越しに俺の手のひらをグイグイ
押し上げるモノは、またジワリと涎をたらしてきた。
 高潔な精神を削るように、意地悪く焦らされるほどムラムラたまらなくなるらしい。こ
のド変態(褒め言葉)め。
 模範回答を言えない優等生をいじめるのにも飽きたので、わざとウンザリしたように溜
め息をつく。俺の機嫌を損ねたと思ったのか怯えたように身を竦めた相手を、ほんの少し
甘やかしてやることにした。
「………じゃあ、パンティーの外と中、どっちが良い?」
 「中」ってとこで一瞬押し上げられた股布の下に指を差し込むと、待っていたかのよう
に白い腿がヒクンと震えた。
「っ!……な、なか…ぁ、中がっ…いい……!」
 それこそはしたないセリフを言っといて、俺が「仰せのままに」とおどけてみせると後
悔したように口をつぐんでしまう。大人しく「チンコ擦って」って言う方がよっぽど恥ず
かしくないと思うんだけど、頭良い奴の考えって分からない。
「じゃあ、ユカちゃんの『お願い』通り、パンティーの『中』を『触って』あげようねぇ
~?」
 奴の発言を強調しつつショーツの穿き口を引っぱれば、押さえるものがなくなり完全に
上向いたそれが挟まる。手を放したら股布からはタマが、ウエストからは我慢汁をこぼす
立派な露茎ペニスが顔を覗かせるスタイルは、こいつを苛むのにはおあつらえ向きだ。


「えっろいね~…そう思わね?」
 恥じ入るように俯く相手の顔を覗き込み、自分がどんなに情けない、倒錯した姿でいる
かを…同級生のベッドの上で、半脱げドレスの中のショーツに勃起ペニスを挟まれている
ということを思い知らせてやる。
 それでもギュッと目をつぶることでやり過ごそうとしていた須藤だったが、さすがに両
膝を立てさせられたあたりで現実とご対面することにしたみたいだ。
「…っあ、な…何を……?」
「何って、触りやすいように」
「ああ、そう……って、待てよ!」
 当然のように俺に言われて口をつぐみかけたが、慌てて俺の手を押し返してくる。
「は、はなし…っ話がちが……っ…!」
「話ぃ~?なんのことですかぁ~?………っと」
 敢えて振り払わず逆に指を絡め、白いすべすべおててにヌルヌルを擦りつけてやる。関
節の出っ張ってない長い指は、奴自身の我慢汁でまさしく「汚されて」いった。
「あ、あ……ちょ、離し…っ……」
「『違う』も何も、ねぇ?」
 ベトベトになった手を取り、ショーツのウエストに挟まれ辛そうな亀頭に持っていく。
ただでさえレースになぶられゴムに押さえられてと、あまり優しくされてなかったそこに
触れて、むき出しの肩がビクンと跳ねた。
「…これ、シコって欲しいんだろ?だったら我慢しろよ」
「……ぅ……」
 スカートを直すことも、もちろんナニやらナニやらがポロリ状態の前を隠すこともでき
ず、俺の前でM字開脚させられる優等生。シミ一つない肌は桜色に上気し、それを引き立
てるような真っ白なドレスは胸を下ろされ裾を捲られてという乱れ具合だ。
「おりこうさん」
 顔をそむけてしまった相手に構わず、いっぱいいっぱいになったショーツの前面を奴か
ら見て右に大きく引っぱる。細いクロッチと申し訳程度に股間を覆うレースが取り去られ
ば、ゴム紐で押さえられるわけないそこがビンッと立ち上がった。


 白い下腹に、赤レースと痛々しく勃起した汁だくペニス。紅白でめでたいなあと思うん
だが、言ったらさすがに殴られるかな。
「…っん………く」
 放置した挙句ずっと下着越しに弄んでいたそこを掴んでやると、今にもイきそうなのか
悩ましいうめきをもらす。ゆっくりと上下に擦るのに合わせだらしなくこぼされた汁は、
竿や俺の手だけでなく後ろの袋や形の良い谷間を伝って赤いゴム紐の色を濃くしていった。
「おツユこぼしすぎ。そんなシゴかれんの気持ち良い?」
 黙りこくったままなので、根元を強めに締めあげてやる。
「…ほら、答えろよ」
「っぁ………あ、すき…っ好き、ぃ…!」
 気持ち良いか聞いただけなんだが、これはこれで遊び甲斐があるので無問題。
「好きなんだ?…おっぱいもオチンチンも好きなんて、ユカちゃんは本当にエッチな子だ
ねぇ?こんなことされて、お股グチョグチョにしちゃうって…信じらんないねえ」
 耐えきれずに目を伏せてしまったが、気にせず俺は続ける。
「…ココも、可愛くしてあげよっか?」
「………なに、を…?」
 力の抜けた奴の左手からゴム留めのカフスを抜き、両手の親指と人差し指で広げながら
ペニスに通す。
「ひぁうっ!?……っく…」
 ビンビンのそこをチクチクしたレースに擦られ、唾液にテラついた唇がわななく。堪え
るようにギュッと閉じた目からは涙がぽろぽろこぼれ、ショーツの比ではない刺激にかぶ
りを振る度に顔の横で小さなツインテールがほよほよ揺れていた。
 根元まで白いフリルを下ろせば、ドレスアップされた立派な勃起ペニスが完成。汁だく
の睾丸や会陰に黒リボンを垂らしたさまは、エロいとか淫猥とか、そういう言葉じゃおっ
つかない次元のモノだった。
 整った顔を愛らしく歪め、与えられる恥辱にうち震えてなお彼は自分が喜んでることを
認めたくないのか、うわごとのように「いや」だの「だめ」だの口走っている。
「…見ろよほら、ユカちゃんの剥けチンが可愛くなってるよ」
「……い…いや、ぁ…っ!見ないでっ!」
 力の入らない手でそこを覆おうとするのだが、M字開脚の体勢でベタベタの指を股間に
持っていってる様は、まるで自慰でもしてるみたいだ。


 自分でこんなカッコして、チンコに飾りつけか…うわあ、こいつならやりかねんと思い
つつ、悪あがきをする両腕をとる。
「なんで?すっげ似合ってるのに」
 華奢な肘を後ろの壁に押し当て、自身の痴態を隠すこともできなくなった相手に、俺は
にっこり笑いかけた。
「きちんとおねだりもできないくせに、わがまま言わないの」
 ぷりぷりの紅唇が噛みしめられるのを見ながらリボンとレースで飾られた根元を締めつ
け、もう片方の親指で鈴口を塞ぐようにぐりぐりしてやる。
「ひぅ…!っやめ、ぁ………っ」
「お話しもできないのに、こっちは本当だらしねーのな。服ぐちょぐちょじゃん」
 竿やショーツを伝いスカートを汚しているのを指摘し、「ベッド汚れちゃう」とささや
けば、思い出したかのように立てられた膝に力が入るのがキュッと谷間に食い込んだショ
ーツの動きで分かった。
「…っあ、あ………も……むり…っ……」
 切羽詰まった声で訴える通り、黒リボンの垂れる睾丸は縮みあがり今にもイきそうだ。
このまま放っておいても勝手に腰動かして、俺の手とハメられたカフスの感触とで昇天で
きそうな感じ。
「ええ~?ユカちゃんの言った通り『触って』あげてんだけどなぁ?……どうして欲しい
の?」
 ヌルヌルの指で左腿のリングを弾くと、黒い双眸が俺の顔を映す。潤んだ瞳には、この
上なく軽薄そうな笑みをたたえた野郎の面…これに対してこいつが感じているだろう憎し
みを思うとたまらない。
 真面目な優等生は同級生である俺におねだりしない限り、この倒錯しきった変態オナニ
ーを遂げることができないのだ。
「…………っは、ぁ………」
「早く言いなよ…イきたいんだろ?コレから潮噴いて、俺の真ん前でイきまくりたいんだ
ろ?」
 言ってる俺がヤバいと思うのだが、切なげな溜め息をついて熱に浮かされたように俺の
口元を凝視する彼には、それに気付く余裕なんてないみたい。
 何度か唇を動かしては躊躇するように止めるのを繰り返し、ついに奴は言葉を紡いだ。
「ぃ…………いかせ、て………っ!」
 白旗にしてはずいぶんあっさりしてるけど、限界っぽいので及第点にしてやろう。


「………よくできました」
 竿を締めあげていた手をわずかに緩め、根元のレース飾りと亀頭の間を強めに擦ってや
る。よく見えるようにとフレアスカートの前面をくるくる捲り上げると、慌てて裾を押さ
えようとしてきた。
「あ……だ、だめ…本当、で…でる」
 ベッドがグチャグチャになることを気にしたんだろうけど、後始末が面倒だったらそも
そもココでやるかっての。
 しかし俺は奴の片手を掴み首を縦に振った。
「そうだねぇ。こんなトコでセーエキ出しちゃうなんて、ユカちゃん悪い子だね」
「っぁ…だ……だから、」
「だぁめ」
 「おねだり」される前に発言を封じ込め、すっかりほどけてビスチェの胸元にかかって
るだけのチョーカーを咥える。薄いデコルテをリボンの端でくすぐれば、抗えなくなった
奴の腕は俺の手から滑り落ちた。
「…このまま、可愛い可愛いフリフリつけたまま、イってみな」
 白いレースから口を離し、さっきまでねぶり弄んだ乳首を含む。今度は最初から「グリ
グリ」。着飾ったペニスもスパートかけてやる。
「そんな……っひぁ、あ、ぁ………っ!」
 さんざん焦らされた挙句の追い立てに、ためらってたわりに堪え性のない優等生はあっ
さり達した。
 丸出しにされた薄い腹を、ほっそりした腿を痙攣させて、赤いレースを押しのける屹立
から俺の手の中へと溜まりに溜まったモノを吐き出す。ビュクビュクと噴き上がった白濁
はそのほとんどがスカートの裏地にぶっかけられ、睾丸や腿に流れた分も尻の下に敷いた
裾に受け止められた。
「……ぃあ……ぁ、あ……」
「あーあー……すっげーの」
 萎えたペニスから手を離しからかってやるが、壁に頭を預け虚ろに宙を見る相手にそれ
を恥ずかしがったり、ベッドを汚さなかったことに安堵する余裕はないみたいだ。仕方な
いのでとりあえずスカートで拭おうとして…ちょっと考える。
 唾液やらナニやらですっかり汚れた胸と腿は、きっと俺の事後「ご奉仕」では満足して
もらえないだろう。
 どうせシャワーで流すならと、俺はぬとつく手のひらで平らな下腹部や、もはや役目を
なせていないショーツをデコレーションしてやることにした。

 (おしまい)

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最終更新:2013年04月27日 15:08