「二人暮らしⅡ」3

てくてく

律「俺、ごめんな…」
俺「え?何が?」
律「その…私の変わりに主張してくれて、さ」
俺「律のためなら御安い御用さ」
律「はっ、恥ずかしい台詞禁止!」

俺「ぷっ」
律「えっ、なっ、何!?」
俺「いやー、可愛いなぁって」
律「!…う~、だから禁止だって言ったろー!」


てくてく


俺「ま、それより…律の父さんを説得できたかどうかだよな」
律「…」
俺「あ、大丈夫だって!きっと」



律「―やっぱり、私みたいな実力の無い奴が、東京なんて駄目だったのかな…」
律「…なーんてな…あはは」

俺「…」

そう苦笑いする彼女を、月夜が照らし、一段と美しく魅せる。
思わず俺は、彼女に一方的な口付けをしていた。

律「!」
律「ちょ…何して…」

俺「もし、律の親御さんを説得できてなくても…俺に任せてくれ」
律「へ?」
俺「ま、練習くらいしとけよ。…んじゃ俺はこの辺で。またな律」
律「えっ、ちょ…」


律「何を練習しろっつうんだ…?」

律「く、唇奪っときながら…まったく…」

律「…俺の馬鹿」




次の日

俺「あ、律こっちこっち」
律「ゼェゼェ…何だ?桜高に誘ったりなんかして…お前ここの生徒じゃないだろ?」
俺「いいからいいから、もう来てるぜ」
律「…?」
俺「あ、そうそう…律、これ」がさごそ
律「ん?何これ」
俺「開けてみ」

律「!ドラムスティック…」
律「俺、もしかして…」

俺「もちろん」
律「!だっ、駄目だそんなの!」
俺「…何で?」
律「…もういいよ、行くんだろ?」




律「音楽室」



律母「…」(律…あの子…)
聡「…」(なんで僕まで来てんだろ)

律父「…」

バン
律「父ちゃん、母ちゃん、聡…!ごめん、遅くなって」



律「…皆も!」

唯「ううん、いいんだよー」
梓「律先輩のためです」
澪「…ほら、謝ってる場合じゃないだろ。律。」
紬「バンドの良さを伝えるためにも、頑張らなきゃね」

HTTメンバーは、一緒に相槌をうった
唯律澪紬梓「「「「「HTTの本気を、見せ付ける!」」」」」

スゥ
律が大きく息をすう。
そして…

律「曲名は、『私の恋はホッチキス』!」
律「いくよ…1・2・1234!」

ジャジャンジャーン♪
ジャジャンジャンジャンジャジャジャジャーン♪


全員「ララ また明日~♪」
ジャーン

「…」しーん

唯(駄目だったのかな…)ドキドキ
澪(今の演奏、すごく良かったはずなのに…)ドキドキ
梓(皆黙りこくって…)ドキドキ
紬(どうしよう…)ドキドキ

律(父ちゃん、母ちゃん、聡…!!)ドキドキ

律母 ぱちぱち
聡 ぱちぱち
律父「!」
律父「…」
律父 ぱちぱちぱち

ぱちぱちぱちぱち…

律「!」
律「もしかして…許してくれたのか?」
律母「ええ。素晴らしい演奏だったわ。こんなに感動したの…久しぶり。」
律母「ね、お父さん」
律父「…ああ。」
律父「私は今まで、誤解していたよ。音楽というものをな。」
聡「すごいよ姉ちゃん!…皆さん!」

律「…!」
律「よかった…!」ぽろ
律「…っ!涙が…!ふぇ…」
俺「…律、おめでとう。」
律「うわああああああん!」


そうして律は、東京へ行くことを許された。
東京での、俺と律の暮らしが、始まった。
―そして

律「なぁ俺!!」
俺「ん?」
律「見ろよこれ!今日の朝刊!」
俺「…ん?天才少女ドラマー現る…田井中律…?」
俺「これって…」
律「おうよ!!」ぶいっ
俺「!すげえな律!さすが俺の嫁!」
律「なっ…恥ずかしいだろ!」

俺たちの「二人暮らし」は、まだ始まったばかり。
最終更新:2009年10月04日 18:16
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