【What can I do?】 文責:野波 流根子



「………ほい、これで終わり。どう、こんな感じで」

そう言ったお姉ちゃんの声に目を開いて、目の前にある姿見を覗き込む。
そこに映っている僕の顔は、数十分前とは随分と変わったものになっていた。
前髪を大幅に短く、もみあげもざっくりと切って、後ろ髪も全体的に短くした自分の顔は、それまでよりも随分とさっぱりとして明るい印象を与えるようになっていた。

「うん、ありがとうお姉ちゃん。これで大丈夫だよ」

そう言って、髪を切ってもらっていたお姉ちゃんの方を振り向く。
切ってもらうようになったのはお姉ちゃんに時間ができるようになった比較的最近からではあるが、それでもそつなくこなしているのだから妹ながらに本当に凄いと思う。

「まあ、これもこれでアリ、だけど……どうしたの、今回は。夏休み前に切ったからそう日も経ってないのに、今度はここまで短くしたいだなんて」

お姉ちゃんのその問いは、確かに当然のものだった。
僕はあまり大幅なヘアアレンジをすることはなく、季節ごとに長さを調節することこそあれ髪型は大きく変えることなく維持し続けていた。
ある時「クラスメイトの中で弟妹の散髪をしている人がいる」との噂に躍起になったお姉ちゃんが初めて切ってくれた時にこの髪型になったということが一つの原因ではあるが、対外的な人との接触を控えていた自分としてはありがたいものでもあったから。

「──へへ、秘密」

けれど、人見知りは中々治ることがなくても、誰かや何かと接触することは増えるような気がする。
僕自身、この夏休みで色々心境が変わったのもあって──とりあえず形だけでも前向きになってみようかと思った。
ただ、それをお姉ちゃんに伝えるには、説明できないことが多すぎるのもあって。
それに、その心境の変化のうちには、ちょっと説明するのが照れ臭いというのものもあって──

「お姉ちゃん……僕も、これからは頑張るからね。お姉ちゃんが困ってたら、僕が助けてあげられるように」

それだけ言って、ちょっと恥ずかしくなって顔を背け──そのまま自室へと駆け込んだ。
僕の後ろのお姉ちゃんが、その時どんな顔をしていたのか、見ることがないままに。






「……………………………るね」
「……へえ。随分と、仲の良いことね」
「──!いつの、間に」
「ちょっと、あの子と話をさせてもらっても?」
「……何を、話すの?」
「そうね……」

「貴女とあの子の為に、必要なことを、確かめる為」






「……ふう」

自室の椅子に腰掛けて、机の上にある鏡を見つめる。
散髪後のすっきりした表情は、心なしか以前よりも自分自身明らかに
夏休み明けに友達や新聞部と会ったら、何と言われるだろうか。なにせここまで大幅なイメチェンはしたことがないのだ。
まあ、それだけ僕が影響を受ける事件があった、ということでもあるのだが。

「……なんか、大変なことになっちゃったもんなぁ」

改めて思い返しても、本当にとんでもないことになってしまったとしか言いようがない。
ちよりちゃんとオランピア。颯くんとお兄さん。イヴちゃんと光園寺先輩。そして、みゃーこ先生と世界。
更に言うなら、先の沖縄の事件も夏休みだ。このひと月で起こったこととしてはあまりに波乱で──そして、僕にとっても大きな変化をもたらすものだった。
颯くん兄弟が画策している、世界の危機への対処と、その過程で訪れたオランピアの扱いについて。
そしてそこで、あの言葉の先を聞くかどうかを選ばされたこと。

「ひと月前なら、あそこで聞くことなんてなかったろうなあ」

改めて振り返っても、一か月前の自分ならば絶対に選ばなかっただろうと思う。
絡新婦の事件の時は、身に降りかかる火の粉からただ逃げようとしていた。逃げた結果、頑張っている誰かがいたということを理解した。
沖縄の事件の時は、役に立たない自分から脱却しようとして、失敗してしまった。ただ自棄になって頑張るだけでは何もできないとわかった。

「でも、まあ、退けなくなっちゃったもんなあ」

そして、今度の事件。
あの選択を選んだのには、もちろん幾らかの理由はある。
颯くんのお兄さんはああ言ったけれど、それでも、日々を過ごしているうちで──新聞部の皆と接していく以上、きっとこれからも大小問わず危険なことは起こるだろう、というのも一つだ。
ケンさんの事件なんかそうだ。誰かが仕掛けたわけでもない、ただ運が悪かっただけともいえる──それでも、非日常の力を持っているならば巻き込まれかねない危機。
そういうのはきっと、颯くんたちの策略ではないところで、普通に起こる。
それに、実際に話を聞けば、やはりあの世界を救う作戦とやらも、何かがあった場合に蚊帳の外にい続けられる保証のある話でもなかった。
今後、僕にも、新聞部にも、ことによっては夏美たちや、お姉ちゃんにも危機が訪れることがあるかもしれない。
そう思ってあの選択をしたのは、やはり先の二つの事件があったから。
聞かないまま、ただ自分が参加しなかったところで誰かに守り続けてもらうわけにはいかないと思えたのもそう。
何も知らないまま、ただ直面してしまえば、また自棄になって何もできないかもしれないと思えたのもそう。
そして、何より。

「……『死ぬには、早すぎる』、か」

今回の、事件で。
僕の手が、誰かの命を救う一助になったこと。
そして、誰かが死なないようにと叫んだ、ちよりちゃんとみゃーこ先生の姿。

「早く死んでいい人なんて、いない。僕も、みんなも、他の人も……うん」

自分が死なないことだけではなく、誰かを死なせないこと。
それを学ぶ術は、幸い、近くの人が知っていた。
家にあった医学書から、お兄ちゃんセレクトのものを適当に数冊選んでもらったものが、目の前の机に積まれている。
何もできなくて怯えるだけよりは、何かができて、何かをする為に動くというのが、僕にできるかもしれないなら。
少なくとも、「やれるようにしておく」ことに、何か意味はある気がするのだ。

「……何もしないより。何も知らないより。何か知って、できるようにしておいた方がいい。……その、筈だから」

「お姉ちゃんに、何かあったとしても……今度は、僕が守ってあげられたりするように」





「──ああ、そう。よりによって貴女がそんなことを思うようになったなんてね、流根子」

ぞわり。
背筋が粟立つ感覚がして、とっさに椅子から立ち上がり振り向く。
部屋の中に、いつの間にか一人の影が佇んでいた。
知っている顔ではあった。けれど、それがその人間であると気付くには、少し時間がかかった。
普段の制服とは大きく違う黒いスーツに身を包んでいたから、雰囲気は大幅に違っているのもあるけれど、何よりも、纏う雰囲気が違っていた。

「……世玲奈?どうして──」
「こんな時間に何を、って思った?」

そう笑う彼女が向ける感覚に、思わず身震いする。
敵意ではない。害そうとするものではない。
だが、それと相反して、煮詰まったドロドロのマグマのようなじっとりとした感情が、彼女から発せられている。
あの研究所で、操られていた時の伊川さんが──オランピアが感じさせたそれに近いものを感じて、一歩引いてしまう。
本当に、彼女は大神世玲奈なのか。そんな疑問が浮かんでしまう程度には、今の彼女はこちらへの敵意に満ちていて。
これまでならば、無様に尻をついてただ要求を受け入れていただろうが──しかし今の僕は、それで退くことを良しとはしない。

「……どう、したの?」

後ろ手にテーブルの引き出しへと手をかけながら、それを悟られないように身体で隠す。
形状を頭に思い浮かべながらこっそりと開いて手を差し込み、中に出現させたスタンガンの感触を確かめる。ずっと効くような相手と相対してこなかった──それに、自分が無暗にこれを振り回すよりも強い人たちが周りにいた──が、相手がまっとうな人間ならこの程度でも十分に通用するはずだ。
もっと安全なものなら防犯ブザーなどもあるが、そんなもので悠長に退いてくれるものが今更目の前の、こんなところに現われるという幻想は持っていない。
毅然と立ち向かう自分の姿に、しかし世玲奈はより此方への威圧感を強めていく。

「ああ、やっぱり怖がらない、いや、怖がっているけど安易に逃げない。知っていたけれど──本当に、随分と成長したみたい」
「……待って。世玲奈、何?何の用、なの?」

そんな此方の内心を知ってか知らずか、落ち着いた態度を崩さない世玲奈は、相も変わらず敵意なんて発していないかのような無表情だった。
精一杯張った虚勢が今にも崩れそうになるのを必死に隠し、尚も睨みつける自分を前に、少女が鼻で笑うようにつぶやいた。

「本当に──憎らしい程に。する必要のない成長を遂げて、よくもまあ一人前のような顔ができたものね」

その言葉に、僕の身体は一瞬凍り付いて──そしてその直後、言い知れぬ感情が何故か唐突に吹き上がって、血管がかっと熱くなったような気がした。

「必要が……ない?」

震える身体を押さえつけながら、そう答える。
こちらの雰囲気が変わったことを気付いているのかいないのか、ほんの少しだけ崩れた表情のままに世玲奈はこちらを睨みつけた。

「そう。貴女にはそのような精悍な顔をする必要も、その資格もない。……自覚はないだろうけど」

そうはっきりと言い切られ、また同じように体が痺れるように熱くなった。
その正体が、なんとなく分かる。言語化して叩きつけるのは難しくても。
体内に巡る熱を深呼吸で排出してから、きっ、と思い切り目を向ける。

「……何が言いたいのさ。僕の文句言いに来たわけじゃないんでしょ?だったら」

ああ──自分はどうやら、怒っているらしい。
新聞部との付き合いを、そこで教えてもらって、自分なりに決めたことを、しなくてもいいと。
それがたとえ、親友の一人である世玲奈だとしても。

「……僕に、何の用なの?わざわざそんな格好で来て、そういうことを言ったってことは、ことなんだよね?」

睨み返したままの僕に、そこでようやく、向かい合っていた彼女も憎悪を少し収める。
どこか激情に駆られていたような目から冷静さを取り戻したかのように僕の方を見つめ、目を細めて言葉を紡ぐ。

「どうして、ね。まあ、幾らか理由はあるけれど、一番の原因は……あなたがすべてを知る手段があるか、確かめる為」

そこで一度言葉を切り、彼女は正面からこちらに向き直り。
堂々と、僕に向けて言い放った。



「──貴女自身が、私をこの世に生み出したことも、思い出せるのかどうか」
「──な」



その、一言で。
沸騰していた血液が、氷水の中に突っ込まれたかのように急激に冷えていくような感覚に襲われた。

「今日、私がここに来たのは、あなたがそれをできるのか見極める為。今は忘れてるその記憶を、貴女の力が『思い出す』こともできるのかどうかを、確認しにきた」

心臓の音が、やけに響く。全身を駆けまわる血液が、そのくせやけに冷たい。
何かを忘れていること。
思い出そうとすれば、すぐにそれを思い出せること。
それが何故か、彼女の言葉と同時に直感として理解できてしまった。

「心当たりがある……いや、たった今思い当たったっていう顔ね」
「……わかった」

悪寒と恐怖に苛まれる中で、それでも
彼女がここに来た理由。今僕にこうして向き合っている理由。
いいだろう。向き合うと決めた以上、真っ先に向き合うのが自分というのはお誂え向きかもしれない。
目をつむり。
目を見『開い』て。

──そうして。
たったそれだけで、僕は全てを思い出した。

あまりにも当然のようにそこに出現した記憶の濁流が、熱を帯びて脳髄を焦がす。
今にも意識を奪われそうな視界の明滅の中で、辛うじてその一片を垣間見る。

──顕れた少女の瞳。
──取り合った手の小ささと暖かさ。
──ヒステリックに叫ぶ女の姿。
──震えながら開いたドアの木目。
──泣きじゃくる、ぼくときみ。

「まさか」

──『ぼくが、うまれてこなければよかったんだ』。

「まさか、ちがう、いや、そう、そうだ、きみは、きみは──」

存在しなかった筈の記憶が、脳裏を駆け巡っている。
十一年前のあの日のこと。幼少期の、薄れていた朧げな記憶の隙間。それらが目まぐるしく脳内を巡る。

「あの──十一年前の──」
「……やっぱり、思い出せるのね。じゃあこれも、応急処置にすぎないか」

未だに脳が割れそうに熱く燃えて、それでも叫び出そうとした僕の前に、既に彼女は立っていた。
何か言おうとして、抵抗しようとして、それらすべてが形をなす前に、僕の視界は彼女の手によって塞がれる。
──『蓋を、され』る。

「言っとくけど。今更思い出して、背負うなんて言わないで。これは私の──私たちきょうだいの責任なんだから──」

その声を最後に、ありとあらゆる音が自分の前から遠のいていくような感覚に襲われる。
視界に最後に映った、彼女の眼鏡の反射光。
それがどんどん自分から離れていく感覚の後に──僕は、意識を手放した。






「──るねに、何したの」
「何って……同じだよ。十一年前と同じ。私が彼女を守る為。そして、貴女が彼女を守る為に必要なことをしたまで」
「……まさか」
「ああ、前と同じで、ちゃんと残ってるものは残ってるから。貴女のことも、それに、学校のこともね」
「じゃあ……じゃあ、何を消したの?」

「……新聞部、だっけ?」
「えっ……」
「あの部活。はっきり言って、貴女や兄さんが関われる領分じゃない。そこにこの子が足を突っ込んだから、私はそこから綺麗さっぱり脚抜けさせてあげただけ」
「そんな、領分っていったい何が──」
「一応、警告はしておく。これは私の独断だから、この処置だけで今後この子が巻き込まれなくなるっていう保証はできない。それに、彼女自身が思い出してしまう可能性も、やっぱりある」
「……………………」
「だけど、そうなる前に少しでも遠ざけることはできる……この子の為にも、そして何より、貴女の為にも」
「……とお、ざけ……」
「守るんでしょう?貴女の大切な妹を。だったら、せいぜいしっかり守り抜くことね。もし私だけじゃなくて、その子からすらも目を離すなら──私は、貴女を許さない」




「榛名颯の報告じゃあそこまで挙がってなかったみたいだけど、沖縄の事件も何か影響があったのかもしれない。そっちにも気を回していれば……ああくそ、それでもオランピアまで見せればもういい加減に足を洗うと思ったのに」
「あの榛名嵐の言葉が本当なら…今でも有効であってくれるなら、少なくとも私がこうした時点で彼女を巻き込まないという選択肢が生まれる可能性はある。とりあえず、今はそれに賭けるしかない」
「……守るなんて。やれることをやる、なんて。私達をどうすることもできないくせに、今更言い出して」
「今更貴女がこっちに来ないでよ──誰のせいで、何のために、私がこっちにいると思ってるの」






窓のカーテンから差し込む夏の日差しが、瞼の向こうを撫でるような感覚。
のろのろと目を開き、半分覚醒した意識の中で身体をえいやと持ち上げる。
寝坊しないよう毎朝かけておきなさいと言われている目覚ましは鳴らなかっただろうか。それとも鳴っていて気付かず寝ていたのか。

「…………あれ?」

昨日はスマホを何処に置いて寝たのだっけか。いや、そもそも自分は昨晩どうしたのだっけ。よく見てみれば、いつもの猫マークがあしらわれたパジャマも着ていない。

「るね!?」

と。
そうこうしている内に、お姉ちゃんが部屋に飛び込んできた。

「ぁ……おはよぉ、お姉ちゃん。ねえ、僕昨日……」
「起きた!?身体に変なところない!?もう起きても大丈夫!?」

僕が質問するよりも早く、凄い剣幕でお姉ちゃんがこちらを心配してくる。
そんなに昨晩の自分が酷い倒れ方をしたのだろうかと不安になり、つい身体のあちこちを触って確かめてしまう。
だが、目に見えた異常は特にない。むしろ、頭の中は冴え渡っているくらいであった。

「……?うん、大丈夫だけど……僕、何かあったの……?」

そう答えると、張りつめていたお姉ちゃんの顔がふっと緩む。
そのまま倒れこむようにベッドへと手をついたまま俯いて、ぽつりと呟いた。

「…………………るね」
「……なあに、お姉ちゃん?」
「るねは、お姉ちゃんのこと、好き?」

その問いをする時のお姉ちゃんは、何故だか、これまで僕が見たことのない程に弱弱しく見えた。
このまま放っておいてしまえば、砕け散ってしまいそうな──まるで、小さな子供のような姿に。
不意に、兄さんの言葉が頭を過る。

『……僕が言えたことではないけど、姉さんには優しくしてあげな。あの人はるねの為に頑張る覚悟を決めたから、きっとるねがいなくなったら立てない気がするんだ』

あの時答えた気持ちは、数年経つ今でも変わらない。
僕はお姉ちゃんをゆっくり抱きしめながら、あやすように口を開く。

「………好きだよ。当たり前じゃん、なんで今更──」

それ以上言おうとした時、お姉ちゃんのほうも此方を抱きしめ返してきた。
軽く痛みを感じるくらい強く抱きしめてくるお姉ちゃんのぬくもりを、今は全身で感じる。

「るねは、必ず私が守る。守る、から。だから──だからるねも、私から離れないで。ずっと、そばにいて」

か細い、少女のような声。
その言葉に、なんだか言い知れないものを感じてしまって、心臓が一つ跳ねる。
いつだって僕を守ってくれていたお姉ちゃんが、今ここにいないような気がして。
気付けば、僕もお姉ちゃんを抱く手に力が入っていた。

「僕だって、お姉ちゃんがいないと駄目だもん。離れるわけないよ」

そうだ。日々の暮らしをずっと助けてくれているお姉ちゃんがいなければ、僕がここまで育つことができたかどうかも怪しいくらいなのだから。
そして、そんな感謝を抜きにしたとしても、僕は一人の妹として、姉である野波逢瀬のことを愛している。
照れ臭いからそこまでは言わないけれど、その気持ちがしっかり伝わるように、負けじと腕に力を込めた。
果たしてそれが伝わったのか、お姉ちゃんの腕の力が少し薄れ、その代わりに僕の背中の裏で拳が握られるような感触が伝わってきた。

「ん……ごめん。変なこと聞いた。そうね、そう、うん。その為に、私は頑張らなきゃ」

そう呟くお姉ちゃんの声には、確かな決意が満ちていた。
ゆっくりと僕を抱いていた腕を解き、ひとつ背を伸ばしてからこちらを振り向く。
その時にはもう、不安そうな表情はどこにもない、いつもの元気なお姉ちゃんが戻っていた。

「今日、予定は無かったわよね?午後はお姉ちゃんとどこかに遊びに行こっか」
「……!うん!」

夏休みは、そういえば大して出かけることがなかった。どうせ鬼無里から出ることはあんまりないだろうが、少しくらいはいいだろう。
一応予定は確認するね、と言うと、お姉ちゃんは「下に置きっぱなしだったわよ」と言って携帯を差し出してくれた。

「………あれ?」

そこに入っていた、メッセージアプリ。
友人と、お姉ちゃん。それと幾つかの公式アカウント。
ずっと前から変わっていないはずのその並びに、何故か違和感を覚える。

「んー………」



「まあ、いっか」



※野波流根子から新聞部に関する記憶が消失しました。
※夏休み中、新聞部の他のメンバーからの連絡は通じません。

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最終更新:2020年04月25日 20:05