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術伝流操体no.13 - (2010/08/04 (水) 16:44:35) の1つ前との変更点

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------ 術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (2)仰向け膝立てない姿勢から動きの操体 &bold(){&size(24){&color(green){仰向け膝立てない姿勢から}}} &size(9){ } &bold(){&size(24){&color(green){  動きの操体}}} ------ #contents *1.はじめに  先回は、仰向け膝立ての姿勢から動きの操体を説明しました。今回は、 仰向け寝で膝を立てない姿勢からの動きの操体です。 *2. 仰向け膝立てない姿勢から、足をきっかけに  膝を立てない状態の方がラクな姿勢の場合の動きの操体で、まずは、 足をきっかけにするものから。  じつは、実際の臨床の場で、ラクな姿勢を強調するアプローチで操体 をしていく場合には、はじめの姿勢は、横向きかうつ伏せになることが 多く、そういう姿勢から操体をして仰向けになった場合には、膝裏など のシコリは取れてしまっていることが多くなり、仰向けになった場合に 膝立てのほうがラクということは少ないようです。  膝裏にシコリがあるので、そこを縮ませるのがラクだから、膝立てが ラクな姿勢になるのだと思います。  考えてみれば、仰向け膝立てというのは、そんなに自然な姿勢ではな いのかもしれません。  仰向け膝立てから操体をしていくと、横向きにちかい姿勢になったり、 途中でうつ伏せになったりすることがよくあることから考えても、本来 は、横向きやうつ伏せのほうがラクなのかもしれません。 **1.足の曲げ具合と治したい経絡  足を片方だけ伸ばして、片方は立てないけれど曲げた姿勢がラクとい うのは、よく見かけます。  これは、経絡的に見るととても面白い現象で、曲げている足の曲げて いる角度によって、体が、いま治したがっている経絡がほぼ予測できま す。  踵が反対側の足の足首近くのときは足太陰(写真12)、踵が膝近くの ときには足厥陰(写真13)、踵が大腿付け根近くのときには足少陰(写 真14)である可能性が高くなります。 &ref(so13p12h.jpg)写真12 &ref(so13p13h.jpg)写真13 &ref(so13p14h.jpg)写真14  それぞれ、そういう姿勢で伸ばしたがっている部分の経絡を治したがっ ている可能性が高いわけです。  この場合にも、もちろん曲げている足の膝裏にもシコリはあると思い ますが、同じ膝裏ちかくでも足の曲がり具合によって、上に書いた治し たがっている経絡上にツボやシコリが出ている可能性が高くなります。 **2.曲げている足の上側を伸ばす  こういう片足曲げて、片足伸ばしている場合には、曲げているほうの 足の伸ばしたがっているライン(とくに、大腿部)をより伸ばす操体が イイ感じなことが多いです。  膝を床などに近づけたり(写真15)、踵を少し持ち上げたり(写真 16)、踵が持ち上がっていくような足首捻りをしたりです。 &ref(so13p15h.jpg)写真15 &ref(so13p16h.jpg)写真16  そういう強調を少しして、息が深くなったり、イイ感じが増えていく ようなら、もう片方の足や手、首などをイイ感じが深まるようにゆっく り動かしてもらいます。  辛かったりしたら止めます。もう片方の足は伸ばしたり、伸ばすのが ラクになるように足首を捻ると気持ち良さが深くなる可能性が高いです。  両手を胴体の横に置いている場合には、足を曲げている側の手は、小 指が手の平側に回る手首捻転、反対側の手は小指が手甲の側に回る手首 捻転で気持ち良さが深くなる可能性が高いですが、手の場合には、おい ている位置や方向によって変わることがあるので、目で見て窮屈な感じ がないか確かめながら、言葉の通じる方なら会話で確かめながら、気持 ち良さが深まるようにしていくとよいでしょう。  受け手は強調しているところを支えにして動いていきますから、強調 しているところが緩んだり、逆に強過ぎたりしないように、ヤジロベエ 感覚でちょうどよい状態を保つように注意してください。  受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深くはいっていた 息が普通に戻ったり、受け手が大きく姿勢を変えたり休みたくなったり したら終わりにしてよい合図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体に移ります。  また、仰向けに寝て足を両方とも曲げて倒した姿勢がラクな方には、 片足ずつ、大腿部上側を伸ばすことをきっかけにする操体をします。  足の曲げ具合が両方同じで足の裏を合わせるように近づけている人に は、両方同時にやった方が気持ち良いという人が多いようです(写真 17)。 &ref(so13p17h.jpg)写真17  この操体を一人でするときには、曲げている足の踵の下に座布団をた たんだものやクッションを入れて少し持ち上げます(写真18)。 &ref(so13p18h.jpg)写真18  また、尻を少し高くしてから膝に座布団2〜3枚や毛布をたたんだもの などを乗せてもよいと思います。  反対側の足や首や手をイイ感じになるようにゆっくり動かして気持ち 良さが深くなるように工夫します。 **3.足を伸ばしていても  どちらか曲げて、どちらか伸ばしていればすぐにわかりますが、初め は両方とも伸ばしていることのほうが、操体に慣れていない人には多い です。  こういう場合でも前回(no.13の「 2.仰向けから足をきっかけに」 の項目中の「1)足を伸ばすか膝立てか」で書いた方法で、とくに足先 を同じ力で動かしてみて動きやすいところが親指側だったときには、 足はほんとうは曲がりたがっていることになります。  足の親指と第2指の間の水掻きをつまんだり、足の親指裏のシコリを つまんで、少し痛くして逃げてもらうといくらか逃げたところでシコリ の痛みが少なくなります。そのときの曲げ具合が、そのときの体にとっ てラクな姿勢であることが多いです。  その姿勢から、曲げている足の大腿部上側を伸ばす操体をすると、気 持良さを味わってもらえることが多いです。 **4.伸ばしている足を伸ばす  次は、足を伸ばしたがっている場合です。足先を同じ力で動かして小 指側がよく動く足は伸ばしたがっています。  定番の操体では、仰向けで足を伸ばしている姿勢からは、足首のとこ ろで足の長さを比較して、長い方の足の踵を受け手に突き出してもらい、 操者がそれに抵抗するという方法でします。  ラクな寝方を強調する方法では、より伸ばしているように見える足を 操者が引っぱることをきっかけにします。  伸ばし方には、定番と同じように踵を突き出すように伸ばす方法と、 足の親指を足裏側に回す足首捻転をしながら伸ばす方法があります。踵 を突き出す方は足裏を伸ばすことになり、足首捻転をしながらの方は足 の表側(腹側)を伸ばすことになります。  どちらがよいかは、受け手に聞いてみてもよいですが、言葉の通じな い人の場合には、足首を立てている感じのときは踵突き出しがよいこと が多く、足首が寝ている感じのときは足首捻転のほうがよいことが多い です。  また、かるく足を反らしてみた感じとかるく捻ってみた感じをくらべ てみる動診をしてもわかります。かるい力で動くほうがよいことが多い 、つまり、かるい力で動くほうが受け手の体がしたがっているほうです。 **5.足裏を伸ばす  踵を突き出すように足を引っぱる場合には、まず踵の下に手を入れて かるく引っ張りながら少し横に動かして、どの方向が引っ張りやすいか 調べます。  足裏を伸ばす場合には、高さは床にスレスレがよいことが多いので、 おもに、胴体との角度を閉じ気味にするか開き気味にするかで方向を決 めていきます。  足が胴体から抜けてくるような感じのところがよいことが多いです。  言葉の通じる人には2つか3つの方向をいって、一番イイ感じのする方 向を決めてもらうとよいと思います。  方向が決まったら、少し足首を反らす方向で足首を決めてから踵の骨 に手の小指側を引っかけるように当てて、足裏を伸ばします(写真19)。 &ref(so13p19h.jpg)写真19  小指側を反らしたほうがよいときと親指側を反らしたほうがよいとき があります。言葉の通じる人なら両方試して聞いてもよいですが、少な い力で反らせられるほうがよいことが多いです。  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深く入るようなら続けます。辛 かったりしたら止めます。  このときにも注意する点は同じで、反らしている踵の反り具合をヤジ ロベエのように釣り合った状態に保つことです。  長くなっても疲れないように足首に当てている操者の手が床について いるようにします。  反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが深くなるようにゆっくり動 かしてもらいます。赤ちゃんなどには、操者の反対側の手で、反対側の 足や届くほうの手を動きやすいほうに動かしてあげます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図です。  受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の 場では、そのラクな寝方を強調する次の操体にいきます。 **6.足表を伸ばす  足の表側を伸ばす場合には、胴体との角度だけでなく足の床との高さ も関係してきます。  足首を親指が足裏側の回るように軽く捻って固定し、まず、横、左右 に動かして引っ張りやすい方向を決めます。  次に、床スレスレがよいか少し持ち上げたほうがよいか足を引っぱる 高さを決めます。  このときに、大腿の方向の延長線上に体が治したがっているところが あることが多いです。  肩が辛い場合には床スレスレの高さになりますし、腰が辛い場合には、 3〜40cmくらいの高さになります。また、伸ばしている足と同じ側が 辛い場合には閉じ気味になり、反対側が辛い場合には開き気味になりま す。  足首を捻る程度をヤジロベエの釣り合った状態に維持しながら、決め た方向に足を引っ張ります(写真20)。 &ref(so13p20h.jpg)写真20  気持ち良さが感じられたり、腹に息が深くはいるようなら続けます。 辛かったりしたら止めます。反対側の足や両方の手や首を気持ち良さが 深くなるようにゆっくり動かしてもらいます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図で、受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。  以前は、この操体をよくしていたのですが、けっこう長いこと気持ち 良さが続き操者がくたびれてしまうので、このごろは大人にはあまりし ません。これと同じ効果のある皮膚の操体をすることのほうが多いです。 皮膚の操体のところで説明します。 *3.仰向けから、首をきっかけに  さて次は、仰向けから首を動かすことをきっかけにする操体です。 **1)動かしやすいほうに動かす  まず、首がほんの少しでも横に傾いていないか捻れていないか観察し ます。言葉の通じる人なら首をあちこち動かして動かしやすい方向を決 めてもらってもよいです。  受け手の頭のほうに座り、操者の両手を受け手の首の下にいれて手の ひらで後頭部をつつむようにしてから、ゆっくり決めた方向にほんの少 し余分に動かしていき、軽い力では動かなくなったところで止めます (写真21)。 &ref(so13p21h.jpg)写真21  その状態をヤジロベエの釣り合った状態に保ちながら、両手両足をイ イ感じのするほうに動かしてもらい、気持ち良さが深くなる姿勢を探し てもらいます。辛かったりしたら止めます。続けたい気持がしたり、腹 の息が深くなったら続けます。  気持ち良さを感じられなくなったり、腹の息が普通に戻ったり、大き く姿勢を変えたくなったり休みたくなったりしたら終わりにして、受け 手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。 **2)首のシコリに指を当てながら  首にシコリがある場合には、基本的にそのシコリのあるところがもっ とも縮むような方向が効果が出やすい方向になります。首を触って、シ コリがわかれば自然に方向は決まってきます。  逆に、方向が決まったら、そのとき首の姿勢でもっとも縮むラインの もっとも縮もうとしているところを探ると、奥のほうにシコリが見つか ると思います。  そのシコリにかるく温めるような感じで指の腹を当てながら、首を動 かしてもらうと、いくらか動かしたところで急にシコリがフッと消えま す。膝裏のときと同じで、緊張してくる筋肉のなかに埋没するように消 えていきます。  そのときがちょうどよい動かし具合のところで、そのままタワメの間 に入っていきます。ですから、シコリに指が当てられると確実に効果が 出せるようになります。  シコリの探し方を身に付けましょう。  首のシコリは、まず、鎖骨の首側のくぼみに肩のほうから中指を入れ て、首の根元に押しつけるように押して痛いところを探します。そして、 そこから顎のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんだ感じのところを 押してみて痛くて、奥が硬くなっているところを見つけます。  首の後ろ側は、後頭骨下縁の首側を探って、ヘコんで奥が硬いところ を見つけ、そこから背中のほうに筋肉の溝をたどっていき、ヘコんで奥 が硬く押して痛いところを見つけます。  いくつか痛いシコリが見つかったら、その中でいちばん痛かったり、 イヤな感じのするシコリを選びます。  同じくらいのシコリが二つあったら、表面がズブズブしているシコリ をまず選びます。ズブズブしているシコリの方が古い可能性が高く、古 いシコリをゆるめたほうが少ない時間で効果が上がる可能性が高いから です。  選んだシコリに指を当てながら首の操体をしていると、膝裏の場合と 同じように、そのまわりが温かくなったり、脈を打つようにドキドキし てくることがよくあります。シコリやそのまわりの筋肉の血の流れがよ くなったためで、しばらくするとシコリがゆるんでいきます。  シコリがいくつかあったときには、次にイヤな感じのするシコリを選 んで、シコリに指を当てて、その部分が縮むような動きをきっかけにす る操体をしていきます。 **3)首の操体は首から上の症状に効く  橋本敬三先生が書かれているように、首の操体は首から上の症状に効 果があります。首から上の症状があったら、試しにやってみるとよいと 思います。症状の出ている患部を触らないでも、意外な症状にも効きま す。  先日も、顎関節症の人にかるく足もみ足ゆらしをしたあと、首の操体 をしたら、それだけで、顎関節症がなくなっていました。  ただし、下半身の歪みがひどいと消えにくいし戻りやすいので、下半 身の歪みを取ってから、とくに、膝裏のシコリを取ってからするとよい と思います。  でも、ラクな寝方を強調するアプローチの場合には、言葉の通じる人 なら、首のシコリに指を当てて首をすこし曲げたり捻ったりした状態か ら、声をかけて、膝たおしや足首そらし、踵つきだしなどの中からイイ 感じのする動きを選んで、その操体をしてもらうこともできます。  そうすると、首のシコリに関係する下半身の歪みは消えやすいので、 それだけで、効果が出ることが多くなります。  とくに、操体に慣れている人で辛い症状が首から上の場合には、仰向 けに寝てもらってすぐに、首のシコリに指を当てて首の操体をしながら 足の操体をしてもらうと、それだけで、辛い症状が消えることがよくあ ります。  これは、首のシコリに指を当てていると、下半身の動きの操体がうま く決まりやすいためだと思います。  そんなわけで、言葉で書くと簡単だし、練習もそんなに大変ではなく、 簡単に感じるかも知れませんが、シコリの見つけ方や曲げ具合、捻り具 合、ヤジロベエ感覚、声のかけ方などをしっかり身に付けて、また工夫 していきましょう。そうすれば、思いがけないほど効果が上げられます。 *4.おわりに  前回の前編と今回の後編の2回にわたって、仰向けからの動きの操体 をラクな寝方を強調するという視点から解説しました。  次回は、仰向けがラクな寝方の場合の皮膚の操体と重さの操体です。 皮膚の操体では、今回の動きの操体とほぼ同じ効果の皮膚の操体を取り 上げていきます。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.17]] ------ *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  症例を少しずつ増やして、ゆくゆくは深谷先生の「お灸で病気を治し た話」の写真入り版のような感じにしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
------ 術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (2)仰向け膝立た姿勢から動きの操体 &bold(){&size(24){&color(green){仰向け膝立てた姿勢から}}} &size(9){ } &bold(){&size(24){&color(green){  動きの操体}}} ------ #contents *1.はじめに*1.はじめに [#k4379202]  前回は「ラクな寝方を少し強調」する操体をおおまかに説明しました。今回から は、寝方別にくわしく説明していきます。まずは、仰向け寝での動きの操体です。 定番は、足をきっかけにするものでは、膝を立てた姿勢からのつま先上げ、踵ふみ こみ、膝たおしと、足を伸ばした姿勢からの踵つきだし。あとは、頭の方から首の 捻転と側屈です。 *2.仰向けから足をきっかけに [#b9ef8f76]  まずは下半身から。言葉が通じる人だったら「操体は無理なことはしません。辛 い格好で操体を受けたら辛いと思いますから、ラクな格好で寝てみてください。ラ クな姿勢に寝てもらうと、歪みがわかりやすいのでツボが見つけやすくなりますし、 効果の出やすい操体も見つけやすいです。体は自然と歪みの現れやすい格好をしま すから。それにラクな姿勢で寝ていた方が操体をしているときに気持ち良さが味わ いやすいと思います。仰向け、うつ伏せ、横向きで寝てみて、どれがラクか試して ください。横向きはどっちを上にするとラクか両方試してください」とか声をかけ ます。言葉が通じない人が相手なら、寝ている姿勢をよく観察します そして、そ の結果が仰向けだった場合の動きの操体を解説していきます。 **1)足を伸ばすか膝立てか [#w0b3149d]  足を伸ばしたがっているか、曲げたがっているかがわかれば、膝立てか足伸ばし か、どちらの姿勢で操体を始めるかわかりますが、「ラクに寝てください」といっ ても普通は足を伸ばしたまま寝ていることが多く、よほど操体慣れしている人でな いと、膝立ての姿勢がラクだといって、膝立ての姿勢で寝ていることはありません。 言葉の通じる人なら「ためしに膝を立ててみてください。足をまっすぐ伸ばしてい るのと、膝を立てているとどっちがラクですか」と声をかけてラクな姿勢から始め ます。  ただ、あまり声をかけてほしくなさそうなら、声をかけずに体が足を伸ばしたがっ ているか曲げたがっているかを判断する必要があります。それには、伸ばしている 両足の踵から先を見ます。とくに小指側が倒れた感じで床や畳に近づいているとき には足を曲げたがっていることが多く、小指側が床に対して立っているような感じ のときには足を伸ばしたがっていることが多くなります(写真1)。 &ref(so13p01h.jpg,nolink);写真1 とくに、親指側が床に近づいているときには足を伸ばしたがっていることが多いです。  動診も可能です。親指側と小指側、左右全部で4カ所を指で軽く動かしてみます。 同じ力で動かしてみて、もっとも動きの大きいところを見つけます。それが、親指 側なら足を曲げたがっているし、小指側なら足を伸ばしたがっている可能性が高い です。足首を捻る動きを大きくしていくと、足を曲げる動きや伸ばす動きになるか らです。もちろん左右で違うことも多いです。動きの大きい側の足を選び、その足 の親指側だったら、その足を膝立ての状態にした姿勢を選び、小指側なら足を伸ば した姿勢を選びます。  また、足を反らせる動き(背屈)と反対の動き(底屈)を比べる動診もできます。 これも軽く動かしてみて比べ、反らす動きが大きそうなときには足を曲げたがって います。そちらの膝を立てた姿勢が楽なことが多いです。  膝立てがよさそうなときには、言葉の通じる人には「膝立てがよさそうなので膝 立てから始めさせてください」と頼んでみてもよいです。  また、たくさん言葉をかけてほしそうな人なら「足の指裏は経絡の末端で、体の 歪みがよく出るところですから、ちょっと調べさせてください」と声をかけてから 足の指揉みをしてみて、シコリが見つかったら、「ここ痛そうですね。ここに関連 する歪みはここを少し痛くして逃げた姿勢だととれやすいので、ちょっと痛くしま すから逃げてみてください」といってから、痛くして逃げてもらうと、足を曲げて 逃げるので、止まったところで「ここまで足を曲げると、指裏を押してもあまり痛 くないでしょう」と聞いて確認をとり、「それで、こういう姿勢から操体した方が、 この指裏に関係する経絡が整いやすいので、体の歪みが取れやすいんですよ」と説 明してから踵をおろすと、膝立ての姿勢になります。「反対側の足は伸ばしたまま のほうがラクですか? 反対側も曲げた方がラクなら反対側も曲げてください」と 声をかけて曲げてもらいます。  言葉が通じない人でも、足の指裏を揉めば、痛いときには曲げて逃げようとする ので、それで、どの姿勢からの操体をするか決めていくことはできますが、あまり 痛くすると操体をすること自体を拒否されてしまうので、軽く触って、どこにシコ リが出ているかわかるようになってください。 **2)仰向け膝立ての姿勢から [#kafb6203]  さて、そういう感じで、もし、仰向け膝立ての姿勢がラクそうな寝方になったと きには、定番の操体は、膝たおし、つま先そらし、踵ふみこみの3つです。まず、つ ま先そらしですが、古い定番のやり方だと、受け手に声をかけて、つま先を反らし てもらい、それに対し操者が足の甲に手をかけて抵抗する形を取りますが、私は、 現在では、そういうやり方はあまりしていません。よほど操体慣れしている人でな いとうまく全身に連動できないので、気持ち良さを味わいにくいからです。 ***1.膝裏のシコリの痛みから逃げる [#za1a1304]  私が現在やっている方法は、立てた膝の膝裏を探ってコリを見つけたら、それを 少し痛くして「ここ痛いですね」とコリを確認すると、少し逃げるように足を動か そうとするので、その動きにのるような感じで足を動かしてついていきます。コリ を押さえていない方の手で、その足の足首から先を持っていると追いやすいです。 フワーッと軽い力で膝が曲がって動いていくほうに、足首を反らしながら追ってい きます。ある程度逃げたところ、いいかえれば、ある程度膝が曲がったところで、 急にコリが消えます(写真2)。 &ref(so13p02h.jpg,nolink);写真2 緊張してきた脹ら脛の筋肉の中に埋まっていくような感じで消えていきます。言葉 が通じる人には「この姿勢になると膝裏のシコリが痛くなくなったでしょう。しば らくこの姿勢を続けているとシコリが消えやすいんですよ。もし、この姿勢が辛かっ たり、イヤな感じがしたら止めますので言ってください」と声をかけるとよいと思 います。言葉の通じない人ならイヤそうな表情をしたり、押し返そうとしてきたり したら止めます。そして、その姿勢を維持してあげると、息が深くなり、気持ち良 さも出てきて、しばらくして戻すとコリが消えているか、少なくとも押したときの 痛みが少なくなっています。  確認するときにどうせ少し痛くするので、そのまま、こういう形で痛みから逃げ る操体にもっていけば、初めての人でも、すんなりとタワメの間になれるので、こ ういう方法をとっています。 +膝裏のシコリの見つけ方 --前にも書いたと思いますが、膝裏のシコリは真裏よりも脹ら脛よりに出ているこ とが多く、膝裏のHの字型のくぼみの端の四隅の方が真ん中あたりよりも可能性が 高いです。一番出やすいのはHの字のくぼみの小指側で脹ら脛よりの端、二番目が 親指側で脹ら脛よりの端、三番目が真ん中で脹ら脛よりになります。練習のときに は、うつ伏せで膝裏を出してもらい、Hの字の形のくぼみを確認し、その端を押し てツボが出ている(写真3)ことを確かめてから、仰向け膝立ての姿勢からツボを取 ると見つけやすいです。 &ref(so13p03h.jpg,nolink);写真3 両方の中指を上向きにして膝裏のHの真ん中あたりに入れ、まず指を曲げてHの縦 線まで滑らせてきてから、中指を操者自身の方に向けて、つまり、少し脹ら脛より に指をズラしてから押すと、だいたいHの脹ら脛よりの端になります。 +膝裏シコリ操体のコツ --膝裏のシコリの痛みから逃げてもらう操体のコツは、シコリが足の外側 (小指・外踝側)にあったときには足の甲の小指側を反らす(写真4)ように、 &ref(so13p04h.jpg,nolink);写真4 シコリが足の内側(親指・内踝側)にあったときには足の甲の親指側を反らせる (写真5)ようにすることです。 &ref(so13p05h.jpg,nolink);写真5 --もう一つのコツは、前回説明したように、受け手に操者が手を触れていないところ、 反対側の足や両手、首などを少しずつ動かして、もっとイイ感じが味わえる格好が ないか探しながら動いてもらうことです。そうすると、全身に連動していく気持ち 良さを味わってもらいやすいです。 --膝裏のしシコリから逃げてもらう操体では、操者はすでに両手を使っていますか ら、言葉の通じる人には声をかけて動いてもらいます。前回説明したように、初め ての人や言葉かけが少ない方がよさそうな人なら、手を左右交互に頭の方に上げて もらい、どっちがイイ感じか聞いて、イイ感じのする方の手をしばらく上げたまま にしておいてもらいます。言葉をたくさんかけてほしそうな人だったら、上げた手 や下げた手の手首を捻ってもらったり、首や伸ばした足の足首をどちらかを捻って もらったりを順に言葉をかけて誘導していきます。 ---あまり自分で動きたくなさそうだったら、首を左右に捻ってもらうくらいの方が よいかもしれません。慣れてきたら、受け手をよく観察して、窮屈そうなところや わずかに動かしたところを見つけて、そこを動かすように言葉かけをすると、あま り自分で動きたくなさそうな人でも動いてくれる可能性が高くなります。動いて姿 勢を変えると気持ち良さが深くなる感覚を一度味わってもらえると、次からは積極 的に言葉かけをして動いてもらっても不満を口にされることは少なくなります。 +不自然なところを見つける --前回も少し書きましたが、私は実際に臨床の場で初めての人に操体をするときに は、タワメの場での受け手の様子を観察して、受け手の体が不自然に、窮屈そうに 見えるところを見つけ、はじめにそこを動かしてもらうように言葉かけをすること が多いです。「そこの手はそのままの方がイイ感じですか? 手を下ろしたままよ りも頭の方に上げた方が気持ちよさそうなんですが。ためしに上げてみてください。 もし、上げた方がイイ感じなら、しばらく上げたままにしておいた方が、気持ち良 さが深くなると思いますし、効果も出やすいです」みたいな感じで。そういうとこ ろは受け手の体も窮屈に感じている場合が多いので、初めての人でも、動いて格好 を少し変えると気持ち良さが深まっていく感覚を味わってもらいやすいからです。 気持ち良さが深まっていく感覚をいちど味わってもらえれば、次からは少し多めに 言葉かけをしても、動きたくなさそうにしていた人や言葉をあまりかけてほしくな さそうにしていた人でも、イヤがらずに動いてもらえるようになります。そのため、 臨床の場で操体を使いこなしていくには、不自然に見える、窮屈そうに見えるとい う勘を養っていくことが大切です。 --さて、膝裏のシコリから逃げる操体の場合に、体にほかの大きな歪みがないとど ういう格好が自然でしょうか? 右足の膝裏にシコリがあったときには、右手は体 の横に置き、左手を頭の方に上げた状態(写真6)がよいようです、 &ref(so13p06h.jpg,nolink);写真6 ---そして、右手は小指側が手の平側に回る手首捻転、左手は小指側が手の甲側に回る 手首捻転を、それぞれほんの少し付け加えると気持良さが深くなっていくと思いま す。左足は右足よりも少なめに曲がり、踵で床などを押し込むようにし、右肩が少 し腰に近づくように側屈し、首や上半身は少し右に捻りながら反るような格好のタ ワメの間になっていく可能性が高いように思います。今やって確かめてみたのです が、私自身の体の別の大きな歪みに関係している可能性もあります。実際に動いて 確かめてみることをお勧めします。また、人によって歪み方が違うと連動が違う可 能性もあるので、目の前の受け手の格好から感じられる不自然さが少なくなるよう に誘導してあげてください。 +タワメの間の最中のコツ --きっかけにする右足膝裏のほかの手足や首・胴などの動かし具合が決まったら、 たぶんタワメの間に入っていくと思います。タワメの間では、まず、受け手の息が 腹に深く入った状態が続いているかに注意を払うようにしてください。そして、タ ワメの間の最中でも受け手の体は、気持ち良さを求めて動いていくこともあるので、 シコリ側の足首の反らし具合が緩まないようにしながら追っていきます。受け手は 足首が決められていることを支えにして動いているので、足首が緩んでしまうと気 持ち良さが少なくなったり消えてしまったりします。また、あまり強く決めすぎて 痛く感じても気持ち良さは消えてしまいます。ヤジロベエのようにちょうどよく釣 り合った感じを保つようにしてください。 --また、タワメの間の最中では、膝裏に当てた手に注意を向けていれば、膝裏が温 かくなったり、脈がとれたりというようなことが観察できるかもしれません。どち らも膝裏の血の流れがよくなったためで、しばらくそういう状態が続いていると、 元に戻したときに、シコリが消えているか、あっても痛みが少なくなっている可能 性が高いです。 +終わり方 --受け手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深く入っていた息が普通に戻っ たり、受け手が仰向けや横向きの形になって休みたくなったりしたら終わりにして よい合図だと思います。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいま す。臨床の場では、膝裏のシコリの痛みから逃げる操体が終わって休んでいる姿勢、 そのときのラクな姿勢を観察して、その姿勢を強調する操体を次の操体に選んで施 術を続けていきます。 +一人で膝裏シコリから逃げる  この操体を一人でする場合には、両手の親指で膝裏の小指側と親指側のシコリを 押しながら足首を反らし、膝を胸に近づける(写真7)ことをきっかけにして、気持 ち良さが深くなる姿勢を探してゆっくり動いていきます。 &ref(so13p07h.jpg,nolink);写真7 ***2.膝たおし [#m8e5dd19]  次は仰向け膝立てがラクなときのもう一つの定番、膝たおしです。定番のやり方 は、左右両側に倒してみてラクな方、気持ちの良い方を見つけて、受け手にそっち に倒してもらい、それに対して術者が倒れてくる膝の横に手を当てて抵抗するとい う形でした。ラクな寝方を強調するアプローチでは、まず、膝を立てている格好を よく観察します。すると、たいていどっちかに傾いていますから、傾いている方に 倒していきます。言葉の通じる人なら「ちょっとこっちの方に傾いていますね。そ うすると、こっちにもう少し倒した方がラクじゃないですか? もし、辛かったり 痛かったり、イヤな感じが出てきたりしたら止めますので、言ってください」とい いながら、軽い力で倒れるぐらいまで倒していきます(写真8)。 &ref(so13p08h.jpg,nolink);写真8 言葉の通じない人ならイヤそうな表情をしたり、押し返そうとしてきたりしたら止 めます。腹に息が深く入ってくるのを待ちます。  それから先は、膝裏シコリの操体と同じで、手を上げてもらったり、手首や首を 捻ってもらったりして、気持ち良さが深くなる格好を探してゆっくり動いてもらい ます。このときにも、不自然そう窮屈そうに見えるところから動いてもらうように すると、案外すんなりと気持ち良さを深くしていく愉しさをわかってもらえます。  タワメの間では、膝が浮いてこないように、また、逆に膝を押しすぎないように、 ヤジロベエがちょうどよく釣り合うような感じにすることに注意を払います。受け 手が気持ち良さを感じられなくなったり、腹へ深く入っていた息が普通に戻ったり、 受け手が仰向けや横向きの形になって休みたくなったりしたら終わりにしてよい合 図です。受け手にそのとき感じられるラクな寝方で休んでもらいます。臨床の場で は、そのラクな寝方を強調する次の操体に入っていくのも、つま先上げのときと同 じです。 +膝たおしのポイント --この膝たおしのときの体のほかの部分の動きは、基本的に胴を捻りたい人と丸め たい人に分かれます。捻りたい人の場合には、倒れていくのと反対側の手の上腕を、 上になっている足の大腿部と平行にするか直行させる姿勢がイイ感じなことが多い です(写真8、写真9)。 &ref(so13p09h.jpg,nolink);写真9 平行というのは頭の方に手を伸ばして、上腕が大腿と平行になる姿勢で、直交とい うのは体の脇に手を近づけて上腕の延長と大腿の延長が直角に交わる姿勢です。そ して、直行する姿勢の場合には、その手の小指側が手の平側に回る手首捻転を付け 加えると気持ち良さが深まりやすいです。平行な場合も小指側を手の平側に少し回 してから腕を伸ばすとより気持ちよいことが多いです。丸めたい人は、上になって いる肩も膝と同じ方に倒していきたい人が多く、手も胸の中に巻き込んでいくよう な姿勢がよい人もかなりいます(写真10)。 &ref(so13p10h.jpg,nolink);写真10 --また、膝たおしの場合には、片手で膝が浮いてこないようにできますから、言葉 が通じない人や、自分で動きたくなさそうな人の場合には、もう片方の手で気持ち 良さが深まりそうな動きを作ってあげてもよいと思います。軽く動かしてみてもっ とも少ない力で動いていく方向が良い場合が多いです。また、この場合には、二つ の手の平に感じる感覚がヤジロベエの釣り合う感じにできるとうまくいくことが多 いです。 +一人で膝たおし --この操体を受け手に一人でやってもらうときには、倒した大腿部の上に座布団2、 3枚やたたんだ毛布などをのせて膝が浮いてこないようにして、手や首をあちこち動 かしてイイ感じのする方向を決め、気持ち良さが深くなるように動いてもらうよう にします(写真11)。 &ref(so13p11h.jpg,nolink);写真11 ---両手を使っているので、首を捻ったり、背中を曲げたり捻ったりという動作で気 持ち良さが増えていかないか試して、増えるようなことを付け加えます。座位で膝 立ての姿勢からもできます。 ***3.踵(かかと)ふみこみ  [#r10787f9]  仰向け膝立ての3つめは、踵ふみこみですが、これをした方がよいかどうかを寝た 姿勢の観察だけから決めるのは少し難しいです。それは実は、この操体が動きの操 体というよりも実際は、重さの操体、仰向け膝立ての姿勢から肩の方に体重を移し ていく方に意味がある操体だからです。ためしに、仰向け膝立てで肩の方に体重を 移さないで、踵ふみこみをしてみてください。とても窮屈で気持ち良さが出てこな いと思います。それで、この操体については、重さの操体のところで説明すること にします。    つぎへ>>>[[術伝流操体no.17]] ------ *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  症例を少しずつ増やして、ゆくゆくは深谷先生の「お灸で病気を治し た話」の写真入り版のような感じにしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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