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累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.27 (術伝流・養生の一本鍼・基本編(1))} &bold(){&size(24){&color(green){術伝流は、腹診中心}}} ------ #contents *(1)はじめに  いままで「先急の一本鍼」という形で、運動器系や内科系の応急処置 を書いてきました。一本の鍼を使い、症状と関係のあるツボに、手順に したがって、刺鍼していくことを基本にしていました。  今回から、「養生の一本鍼」という題で、応急処置を終えたあとの慢 性期の処置を書いていきます。術伝流では、慢性期の養生も、応急処置 と同じように、一本の鍼を、出ているツボに、順番に刺鍼していくこと を基本にしています。  経絡的に関係する「手足に引く」(写真1、2)ことと、横輪切りの 背中側など「陽に引く」(写真3)ことの2つを、おもな手段としてい るのも、応急処置の場合と同じです。 &ref(DSCF2990.JPG)写真1 &ref(DSCF3002.JPG)写真2 &ref(DSCF3005.JPG)写真3 (2)養生では、邪毒と歪みをへらす  違うのは、関係のあるツボの選び方です。  応急処置では、 先急後緩の原則にしたがい、まず、とりあえずは、日常生活にさしさわりがないくらいに症状を軽くすることをめざしました。そのため、おもに症状を中心にして、症状と関係のあるツボを使いました。そして、症状の出ているところで蠢(うごめ)いている邪気を、手足に引き、陽に引き、体の外に出すことが、基本でした(図1)。 「鍼は万病一邪とこころえべし」(鍼道発秘) 「けだし鍼は邪気をしりぞくるものなり」(鍼灸重宝記) 図1:naikakei-joushou.jpg  それに対し、慢性期の養生では、それだけでなく、その症状を引き起こしている体のなかの邪毒や歪みにも注目します。応急処置で症状が消えてしまった場合でも、その消えた症状の原因となった邪毒や歪みは残っています。いわゆる未病の状態ですね。  そういう未病の状態の邪毒や歪みに関係しているツボ、その中でも、とくに古い虚したツボを使い、体の邪毒や歪みをへらし、症状が再発しにくい、邪気が発生しにくい、病気になりにくい体にしていきます。(図2) 図2:tubo-no-katachi.jpg  慢性期の養生では、体のなかの邪毒では、おもに水毒と瘀血をみます。水毒は、体液の悪化したもの、瘀血は、血液の悪化したものです。ともに、代謝できなかった老廃物や化学物質をはじめとして、体に不要なものがふくまれたり、ウイルスや細菌が増殖したりしています。  体の歪みとしては、筋肉のシコリや虚を中心に、上実下虚など上下バランス、左右・前後などのバランスも見ていきます。  水毒や瘀血は、邪気の発生源と言われています。 また、虚があれば虚火上逆、歪みがあれば客気上逆などにより、邪気が発生しやすくなると言われています。ですから、水毒や瘀血、歪みや虚を減らすと、症状の原因である邪気の発生を減らせるわけです。  そんなわけで、慢性期の養生の目的は、邪毒や歪みの少ない、邪気の発生しにくい、まるごと調和のとれた体になっていただくことです。体というのは、症状が出ていない慢性期の未病の状態と、症状が出ている急性期の発作の状態を繰り返しています(図3)。慢性期の養生は、症状の出る原因となる邪毒や歪みをへらすことをめざします。 図3:mibyou&hossa-f3.jpg (3)術伝流は、腹診が中心  術伝流の養生のもう一つの特徴は、腹診を中心としていることです。術伝流では、慢性期の養生を邪毒や歪みを減らすことで実現していきますが、その邪毒で、とくに水毒と瘀血が腹に多いことから、腹診を重視しています。(写真4) 写真4:DSCF2983.JPG  望診、聞診、問診、切診は、一通りしますし、脈や舌もみますが、とくに腹診を重視して、おもに腹診の結果から、出ているツボの予測をしたり、手順を決めたりしています。  腹診は、中国などにはない、日本独特の診方だと聞きました。吉益東洞の「 腹は生あるの本なり、故に百病は此に根ざす、是を以て病を診するには必ず其腹を候ふ」という有名な言葉もありますね。術伝は、「和方養生技術伝承塾」で、とくに江戸時代に発達した和方鍼灸の伝統を現代に活かすことを、鍼灸の分野では、めざしています。腹診を重視するのは、そのあたりも関係しています。  古いなと思われるかも知れませんが、食べ物や飲み物で変化しやすい脈や舌にくらべて変わりにくいので、かえって現代的ではないか思いますし、慢性的な状態を観るには適しているとも思います。  現代の食べ物や飲み物には、色が付いていたり、添加物として化学合成物がいろいろ入っていたり、お茶のなかには、漢方薬にも使われる材料が使われていたりするものもあるし、化学合成薬を常用している方も多いので、脈や舌の状態は、そういうものに影響されて変化していることが多くなります。  そういう点で、腹診のほうが、脈や舌にくらべて、より古い慢性的な邪毒や歪みが見えやすいように思います。  また、脈診や舌診にくらべて身に付けやすいのも良い点ですし、ツボの出ている場所を予測しやすく、刺鍼手順が導きやすいのも良い点だと思います。 (4)邪毒を筋肉でしのいでいる  ヒトは、筋肉を伸び縮みさせて動いています。筋肉は、それだけではなく、邪毒があっても動けるように、硬くなって、内臓などをかばっているようにも思います。  お腹が痛いときには、痛い部分のお腹を縮め、反対側の背中を伸ばす姿勢をしますが、その姿勢で、いちばん縮んだところと、いちばん伸びたところに、お腹の痛みを改善するツボが出ていることが多いです。  痛みとして自覚できないときでも、同じように、お腹の水毒や瘀血などから体をかばっているようで、邪毒のあるところに近い筋肉にツボが出ていることが多いです。邪毒のある部分と立ち姿勢で同じくらいの高さの腹側筋肉と、その背中側の筋肉です。  そういうところの筋肉には、過緊張したり過弛緩したりして、いわゆるツボが出た状態になっている部分があります。  寝た姿勢では、邪毒のある部分の重さを受けるところにツボが出やすいとイメージできると、ツボが見つけやすくなります。仰向け寝では背中側の筋肉で、うつぶせ寝では腹側の筋肉で、重力を受けていますね。 (5)手足の筋肉で胴体の負荷を分担  ヒトは、寝ているとき以外の生活は、座位や立位という背骨を立てた状態でしています。また、邪毒のあるところとほぼ同じ高さの筋肉は、邪毒をかばって過緊張過弛緩していることが多いです。そういう部分があると、動きもすこし不自然になるので、他の筋肉も過緊張過弛緩した部分ができていきます。  立位では、重力は、縦方向、つまり背骨に平行な方向にかかっています。操体の橋本先生は、正経十二経と任脈督脈のいわゆる十四経が背骨に平行に走っているのは、ヒトが重力に対し垂直に立っているからだと、1938(昭和13)年発表の「力学的医学の構想」に書いていました。なるほどなと思いました。  柳谷素霊先生など多くの先生方が、「まずは、腎経、肝経、そして脾経」というように、足の陰経を重視しているのも、重力に逆らって立っている姿勢で腹の邪毒の影響をまともに受け止めるところだからかなとも思いました(図4)。 図4:doutaikeiraku-f4.jpg  また、橋本敬三先生は、体の連動性ということも書いています。つまり、体は一部分だけで動いているのではなく、ある部分を動かすときには、かならず一緒に動いているところがあるということです。そして、あるところにツボが出ていると、動くときに一緒に動くところにも負荷がかかりやすいので、筋肉が余分に疲れやすく、そういうことが続くと、過緊張過弛緩しやすくなります。  そういうこともふくめて考えると、巨刺や対角刺なども理解しやすくなると思います。つまり、一緒に動かすところは、関連するツボが出やすいということです。 (6)ふだんの生活で負荷のかかりやすいところ  慢性期の養生では、そういう点もふまえて、患者さんが、ふだんの生活で、どういう仕事をしているか、もっと言えば、どういう姿勢で、どういう体の動かし方をしているかなども、ツボ探しのヒントになると思います。  つまり、ふだんの生活で負荷のかかりやすい部分の筋肉に古いツボが出やすいということも考えていくと、ツボが探しやすくなります。  とくに、腹診して見つけた腹のツボの負荷と、ふだんの生活における筋肉の使い方を組み合わせて考え、負荷がかかりやすいところにツボが出ていないか観ていくということを、筆者はしています。 (7)40年前とは、ツボの出方が違っている  このごろの患者さんを見ていて、40年くらい前の文献で使われているツボと比較してみると、ツボの出方が違っている場合が多いです。  たとえば、瘀血のときの腹側のツボの出方も、いまは、ヘソの斜め下か、腰骨の腹側五枢・維道あたりに多く、下腹左右中央付近に出ていることは少ないです(写真5)。 写真5:DSCF2816.JPG  背中側も、昔は、1行線の兪穴が使われることが多かったようですが、いまは、兪穴よりも華佗経や痞根・腰徹腹に出ていることが多いです。 写真6:DSCF2851.JPG  足のツボでも、婦人科疾患では、昔婦人科疾患でよく出るので「女三里」とよばれた三陰交よりも、その横の蠡溝に出ていることのほうが多いです。  どうも、横にずれてきているように思います。中央よりと体の端より。はじめは、筋肉の太い部分で支えようとするのだけれど、だんだんそこだけでは支えきれなくなって、横に出るようになるのかなと考えています。たとえば、1行線は、背中側でいちばん筋肉が太いラインですから。  40年くらい前までは、カゼや腹痛や頭痛でも、すぐ病院にいくことは少なかったように思います。しばらく寝ていて治るのを待つことが今よりも多かったように思います。それにくらべると、現代では、すぐ薬を飲んだり病院にいったりしています。症状は消えますが、体の歪みやツボは残ったままなのかなと思います。40年前とくらべてツボが横にずれている原因は、そのあたりにありそうな気がしています。   (8)昔と今の違いもふまえて  そういうこともあり、江戸時代や、40年くらい前の達人たちの文献もふまえながらも、いまの時代の患者さんをみた経験もつけくわえ、いまの時代にあった鍼灸による養生について、書いていきたいと思っています。  よろしくお願いします。    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.27]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.26]]    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----- 術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」 ----- ----- *お知らせとお願い **術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集  術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役 をしてくださる方を募集しています。  くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。  よろしくお願いします。 **感想など  感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。  また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、 養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。  よろしくお願いします。 **間違いなど  間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。  よろしくお願いします。 **「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集  「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])の 参加者を募集しています。  よろしくお願いします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ----    >>>術伝HPトップへ ・・・・[[トップページ]] ----
累積:&counter()___ 昨日:&counter(yesterday) ___今日:&counter(today) ------ &color(green){術伝流一本鍼no.27 (術伝流・養生の一本鍼・基本編(1))} &bold(){&size(24){&color(green){術伝流は、腹診中心}}} ------ #contents *(1)はじめに  今まで「先急の一本鍼」という形で、運動器系や内科系 の応急処置を書いてきました。一本の鍼を使い、症状と関 係のあるツボに、手順に従って、刺鍼していくことを基本 にしていました。  今回から、「養生の一本鍼」という題で、応急処置を終 えた後の慢性期の処置を書いていきます。術伝流では、慢 性期の養生も、応急処置と同じように、一本の鍼を、出て いるツボに、順番に刺鍼していくことを基本にしています。  経絡的に関係する「手足に引く」(写真1、2)ことと、 横輪切りの背中側など「陽に引く」(写真3)ことの2つ を、主な手段としているのも、応急処置の場合と同じです。 &ref(DSCF2990.jpg)写真1 &ref(DSCF3002.jpg)写真2 &ref(DSCF3005.jpg)写真3 *(2)養生では、邪毒と歪みを減らす  違うのは、関係のあるツボの選び方です。  応急処置では、先急後緩の原則に従い、先ず、取り敢え ずは、日常生活に差し障りが無い位に症状を軽くすること を目指しました。  そのため、主に症状を中心にして、症状と関係のあるツ ボを使いました。そして、症状の出ている所で蠢(うごめ) いている邪気を、手足に引き、陽に引き、体の外に出すこ とが、基本でした(図1)。 >「鍼は万病一邪とこころえべし」(鍼道発秘) >「けだし鍼は邪気をしりぞくるものなり」(鍼灸重宝記) &ref(naikakei-joushou.jpg)図1  それに対し、慢性期の養生では、それだけでなく、その 症状を引き起こしている体の中の邪毒や歪みにも注目しま す。応急処置で症状が消えてしまった場合でも、その消え た症状の原因となった邪毒や歪みは残っています。いわゆ る未病の状態ですね。  そういう未病の状態の邪毒や歪みに関係しているツボ、 その中でも、特に古い虚したツボを使い、体の邪毒や歪み を減らし、症状が再発しにくい、邪気が発生しにくい、病 気になりにくい体にしていきます。(図2) &ref(tubo-no-katachi.jpg)図2  慢性期の養生では、体の中の邪毒では、主に水毒と瘀血 を観ます。水毒は「体液の悪化したもの」、瘀血は「血液 の悪化したもの」です。  共に、代謝できなかった老廃物や化学物質を始めとして、 体に不要なものが含まれたり、ウイルスや細菌が増殖した りしています。そのため、代謝排泄という流れに乗りにく く、体の特定の場所に停滞していることが多いですね。  体の歪みとしては、筋肉の痼りや虚を中心に、上実下虚 など上下バランス、左右・前後などのバランスも見ていき ます。  水毒や瘀血は、邪気の発生源と言われています。 また、 虚が有れば「虚火上逆」、歪みが有れば「客気上逆」など により、邪気が発生しやすくなると言われています。です から、水毒や瘀血、歪みや虚を減らすと、症状の原因であ る邪気の発生を減らせるわけです。  そんな理由で、慢性期の養生の目的は、邪毒や歪みの少 ない、邪気の発生しにくい、まるごと調和の取れた体になっ ていただくことです。  体というのは、症状が出ていない慢性期の未病の状態と、 症状が出ている急性期の発作の状態を繰り返しています (図3)。慢性期の養生は、症状の出る原因となる邪毒や 歪みを減らすことを目指します。 &ref(mibyou&hossa-f3.jpg)図3 *(3)術伝流は、腹診が中心  術伝流の養生のもう一つの特徴は、腹診を中心としてい ることです。術伝流では、慢性期の養生を邪毒や歪みを減 らすことで実現していきます。が、その邪毒で、特に水毒 と瘀血が腹で診断できることが多いので、腹診を重視して います。(写真4) &ref(DSCF2983.jpg)写真4  望診、聞診、問診、切診は、一通りしますし、脈や舌も 診ますが、特に腹診を重視して、主に腹診の結果から、出 ているツボの予測をしたり、手順を決めたりしています。  腹診は、中国では余り発展せず、日本で独特の発展をし た診方だと聞きました。 >「腹は生あるの本なり、故に百病は此に根ざす、 > 是を以て病を診するには必ず其腹を候ふ」(吉益東洞) という有名な言葉もありますね。  術伝は、「和方養生技術伝承塾」で、特に江戸時代に発 達した和方鍼灸の伝統を現代に活かすことを、鍼灸の分野 では、目指しています。腹診を重視するのは、その辺りも 関係しています。  古いなと思われるかも知れませんが、食物や飲物で変化 しやすい脈や舌に比べて変わりにくいので、かえって現代 的ではないか思いますし、慢性的な状態を観るには適して いるとも思います。  現代の食物や飲物には、色が付いていたり、添加物とし て化学合成物が色々沢山入っていたりします。お茶の中に は、漢方薬にも使われる材料が使われていたりするものも あります。また、化学合成薬を常用している人も多いです。  それで、脈や舌の状態は、そういうものに影響されて変 化していることが多くなります。  そういう点で、腹診の方が、脈や舌に比べて、より古い 慢性的な邪毒や歪みが見えやすいように思います。  また、脈診や舌診に比べて身に付けやすいのも良い点で すし、ツボの出ている場所を予測しやすく、刺鍼手順が導 きやすいのも良い点だと思います。 追記2016.7.17ーーーーー >病の頭にあるも腹に刺し、病脚にあるも亦腹に刺す >                 『鍼灸重宝記』 *(4)邪毒を筋肉を緊張させて耐えている  ヒトは、筋肉を伸び縮みさせて動いています。筋肉は、 それだけではなく、邪毒があっても動けるように、硬く緊 張して、内臓などを庇(かば)っているようにも思います。  腹が痛いときには、痛い部分の腹を縮め、反対側の背中 を伸ばす姿勢をします。その姿勢で、一番縮んだ所と、一 番伸びた所に、腹の痛みを改善するツボが出ていることが 多いです。  痛みとして自覚できないときでも、同じように、腹の水 毒や瘀血などから体を庇っているようで、邪毒のある所に 近い筋肉にツボが出ていることが多いです。邪毒のある部 分と立ち姿勢で同じ位の高さの腹側筋肉と、その背中側の 筋肉です。  そういう所の筋肉には、過緊張したり過弛緩したりして、 いわゆるツボが出た状態になっている部分があります。  寝た姿勢では、邪毒のある部分の重さを受ける所にツボ が出やすいとイメージできると、ツボが見付けやすくなり ます。仰向け寝では背中側の筋肉で、うつ伏せ寝では腹側 の筋肉で、重力を受けていますね。 *(5)手足の筋肉で胴体の負荷を分担  ヒトは、寝ているとき以外は、座位や立位という背骨を 立てた状態で生活しています。また、邪毒のある所とほぼ 同じ高さの筋肉は、邪毒を庇って過緊張過弛緩しているこ とが多いです。  そういう部分があると、動きも少し不自然になるので、 他の筋肉にも過緊張過弛緩した部分ができていきます。  立位では、重力は、縦方向、つまり背骨に平行な方向に 掛かっています。操体の橋本敬三先生は、正経十二経が背 骨に平行に走っているのは、ヒトが重力に対し垂直に立っ ているからだと、1938(昭和13)年発表の「力学的医学 の構想」に書いていました。  なるほどなと思いました。  柳谷素霊先生など多くの先生が、「先ずは、腎経、肝経、 そして、脾経」というように、足の陰経を重視しているの も、重力に逆らって立っている姿勢で腹の邪毒の影響をま ともに受け止める所だからかなとも思いました(図4)。 &ref(doutaikeiraku-f4.jpg)図4  また、橋本敬三先生は、体の連動性ということも書いて います。つまり、体は一部分だけで動いているのではなく、 ある部分を動かすときには、必ず一緒に動いている所が有 るということです。  そして、ある所にツボが出ていると、一緒に動く所にも 負荷が掛かりやすいので、筋肉が余分に疲れやすく、そう いうことが続くと、過緊張過弛緩しやすくなります。  そういうことも含めて考えると、巨刺や対角刺なども理 解しやすくなると思います。つまり、一緒に動かす所は、 関連するツボが出やすいということです。 *(6)普段の生活で負荷の掛かりやすい所  慢性期の養生では、そういう点も踏まえて、患者さんが、 普段の生活で、どういう仕事をしているか、もっと言えば、 どういう姿勢で、どういう体の動かし方をしているかなど も、ツボ探しのヒントになると思います。  つまり、普段の生活で負荷の掛かりやすい部分の筋肉に 古いツボが出やすいということも考えていくと、ツボが探 しやすくなります。  特に、腹診して見付けた腹のツボの負荷と、普段の生活 での筋肉の使い方を組み合わせて考え、負荷が掛かりやす い所にツボが出ていないか観ていくということを、筆者は しています。 *(7)40年前とは、ツボの出方が違っている  この頃の患者さんを見ていて、40年位前の文献で使われ ているツボと比較してみると、ツボの出方が違っている場 合が多いです。  例えば、瘀血のときの腹側のツボの出方も、今は、臍の 斜め下か、腰骨の腹側五枢〜維道の辺りに多く、下腹左右 中央付近に出ていることは少ないです(写真5)。 &ref(DSCF2816.jpg)写真5  背中側も、昔は、1行線の兪穴が使われることが多かっ たようです。が、今は、兪穴よりも華佗経や痞根や腰徹腹 に出ていることが多いです。 &ref(DSCF2851.jpg)写真6  足のツボでも、似た現象があります。昔は、婦人科疾患 では、「女三里」と呼ばれた三陰交に出ていることが多かっ たようです。今は、その横の蠡溝に出ていることの方が多 いです。  どうも、横にズレてきているように思います。中央寄り と体の端寄り。  始めは、筋肉の太い部分で支えようとするのだけれど、 だんだん、そこだけでは支えきれなくなって、横に出るよ うになるのかなと考えています。例えば、1行線は、背中 側で、一番、筋肉が太いラインですから。  40年位前までは、カゼや腹痛や頭痛でも、直ぐ病院に行 くことは少なかったように思います。しばらく寝ていて治 るのを待つことが、今よりも多かったように思います。  それに比べると、現代では、直ぐ薬を飲んだり病院に行っ たりしています。症状は消えますが、体の歪みやツボは残っ たままなのかなと思います。  40年前と比べてツボが横にズレている原因は、その辺り にありそうな気がしています。 ーーー 追記:2021.05.17 ーーー  この辺りは、『和漢診療学』で寺澤捷年先生も書いてい ます。 [[『和漢診療学』の読書メモ>https://kuhuusa-raiden.hatenablog.com/entry/20160713/1468373982]] ーーー 追記終了 ーーー   *(8)昔と今の違いも踏まえて  そういうこともあり、江戸時代や、40年位前の達人の文 献も踏まえながらも、今の時代の患者さんを診た経験も付 け加え、今の時代に合った鍼灸による養生について書いて いきたいと思っています。  よろしくおねがいします。    つぎへ>>>[[術伝流一本鍼no.28]] -----    >>>目次へ・・・・・・・・・[[術伝流一本鍼(あ)]]    >>>このページのトップヘ・・[[術伝流一本鍼no.27]]    >>>術伝HPトップへ 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