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シコりとそのまわりの筋肉
操体もくもく・操体の自然則 (10) シコりとそのまわりの筋肉
1.はじめに
今回は、シコりから操体を予測するの2回目で、
「動きの操体の切っ掛けとなる動きは
痼りのある筋肉を緊張させる動きが基本」
という内容です。
達人の先生方から
「痼りが在る筋肉を縮ませる動きを切っ掛けにすると良い」
という話を聞いた事がある方もいらっしゃるでしょう。
痼りの周りの筋肉を緊張させるのが、動きの操体の基本 [#ie65ef13]
筋肉は働く時には緊張する [#q1d97f14]
筋肉が働く時には、筋肉には力が入り、
緊張して硬く太くなり、
筋肉を縮めようとする力が働きます。
他に力が働かない時には、筋肉は縮んでいきます。
腕を伸ばしたまま、重い物をぶら下げている時にも
筋肉は働いていますので、
力が入り緊張して硬く太くなり、
筋肉を縮ませようとする力は働いていますが、
筋肉は縮んではいません。
筋肉の長さが変わらない働き方をしているようです。
筋肉は緊張が緩んで柔らかく細くなり、
縮んでいた場合には伸びます。
緊張したまま緩まなくなったのが痼り [#wa084d73]
筋肉はその動きに従って働き緊張します。
人間を始め脊椎動物は
筋肉を働かせ緊張させて動いているわけです。
長時間同じ姿勢を続けたりすると、
同じ筋肉を緊張させ続ける事になるので、
その筋肉は疲れてきます。
次の日までに無くなっているうちは良いのですが、
疲れが累積して溜まっていくと、
緊張している必要が無い状態なのに、そう、
その時に行っている動作や取っている姿勢では
その筋肉は緊張していないほうが自然なのに、
硬く太く緊張したままになっている部分が
疲れた筋肉の中に出来ます。
縮んだままだから伸ばそうとすると痛いし、歪んで見える [#m4b207de]
本来は必要に応じて緊張し働く筋肉の一部分が
使いすぎによって疲れきって
緊張したまま硬く太くなって緩まなくなってしまったのが
痼りです。
無理して伸ばそうとすると、つまり、
その筋肉が緩まないと出来ない動作をすると、
痛みが出て、
それ以上は伸びないよと文句を言うというか、
メッセージを出すわけです。
緩んでいるほうが自然なのに
硬く緊張している部分が出来るわけですから、
他の力が働かない状態では
その筋肉の長さは縮んでいる事が多くなり、
体全体を眺めてみると歪んで見える
事になります。
左右差が目に付く事になります。
伸ばそうとすると痛いので、縮めてみる [#ge87a394]
操体では無理をしませんから、基本的には、
そういう痼りに対しては
痛い動きと反対の動きで対処します。
緊張させてみるわけです。
縮ませてみる事が多くなります。
- 痼りの在る筋肉を縮ませていくと、
その筋肉の中の痼りになっていなかった部分も
だんだん緊張して縮み硬くなっていきます。
- 痼りの周りも痼りと同じくらいに緊張した時には、
痼りは目立たなくなります。
「タワメの間では痼りは消える」
という現象が起こるのではないかと思います。
動きの操体では、
痼りの周りの筋肉をその痼りと同じくらいか、
それよりももう少し緊張させた時に
タワメの間という状態になるようです。
腕と胸の間の水掻きで試す [#u70b0196]
実際に試してみましょう。
脇の下や、その前後の
腕と背中との間や腕と胸との間の水掻き状の所にも
痼りが出来ます。
胸と腕の間の水掻きがやりやすいでしょう。
- その部分を反対側の親指と他の4指で挟んで
痼りを探します。
- 痼りが見つかったら、
その痼りを挟んだまま、
腕をあちこちに動かしてみます。
痼りの周りの筋肉が緩むせいか、
その痼りが目立つようになるし
痛みも出てくるでしょう。
痼りが挟んだ指から外れ、
外れる時に痛みが出るようです。
指先を反対側の上腕に近づける時に
比較的痼りが目立たなくなるようです。
- その状態から手首を捻転してみます。
痼りは再び目立つようになります。
痼りはますます目立たなくなり、つまり、
痼りの周りの筋肉全体が硬く膨らんできて、
痼りを摘んだ時に感じた痛みも消えます。
- その手首捻転を切っ掛けにして、
その動きがし易いように首や背中にも動きを伝え、
そういう動きがやりやすいように体重も移して、
体全体に動きを伝え、体全部丸ごと連動させていきます。
首は目標の痼りのほうに近づき、
背中全体も側屈して
体重が目標の痼りのある側に掛かっていく
と思います。
- すると、
ほんのりとした気持ち良さも出てきて、
お腹の息も深くなり、
タワメの間になった事がわかると思います。
- 水掻き部分の中での痼りのある場所によって、つまり、
その中での痼りの選び方によって、
少しづつ腕の位置や曲げ具合は違ってきますが、
小指を手の平側に回す手首捻転をすると、
この辺りの筋肉は硬く膨らんでくるようです。
この胸と腕の間の水掻き状の部分の痼りは
挟んで摘んだ状態で脇の下のほうに移動すると
痼りが目立たなくなるようです。
実際に集まって二人組で練習する時や臨床の場では、
この部分の痼りを見付けたら、
その痼りを先ず目立たないほうに動かしてから、
手首を
その痼りの筋肉が目立たなくなるようなほうに捻る
事にしています。
背中と腕の間の水掻きでも同じ [#v99cad9b]
後ろ側の腕と背中の間の水掻きの中に在る痼りも、
その痼りを先ず目立たないほうに動かしてから、
手首をその痼りの筋肉が目立たなくなるようなほうに捻る
事を切っ掛けにすると
タワメの間が見付けやすくなります。
手の甲を反らした状態から
中指が小指側に回るような手首捻転をすると、
目立たなくなるようです。
似た操体操法が載っています。
パッストン系の脱力で書かれていますが、
現在では、
戻したくなるまでジックリタワメの間を味わい、
フッくにゃぁ系の脱力をしたほうが気持ちよい
と言う方が多いです。
爪先挙げでも脹ら脛の筋肉は緊張している [#hf3c3ad5]
痼りを見付けて、
その痼りを目標に行う操体では、
その痼りの周りの筋肉を働かせるほうに動かしている
事が多いようです。
「仰向け膝立て爪先挙げ」の操体でも、
その動きをすると
脹ら脛が硬く膨らみ緊張してきます。
この爪先上げ操体で緊張してくるのは
足の甲側の下腿の筋肉(前脛骨筋など)で、
脹ら脛の筋肉は緩んでくると思ってしまいますが、
実際に触りながら操体操法してみると、
下腿前側の筋だけが緊張するのではなく、
下腿裏側の脹ら脛の筋も緊張するようで、
触っている所が硬く膨らんでくるのが解ります。
膝裏よりも少し下から脹ら脛の真ん中付近が良い
と思います。
膝裏の痼りが目立たなくなるのを
観察できると思います。
脹ら脛の筋肉は
長さが変わらないほうの働き方をしているのでしょう。
どちらかというと脹ら脛よりにある場合が多いので、
こういう動きの操体が生まれたのかなと思います。
足の甲を反らさないで膝を曲げる時は緩んでいますが、
その状態から足の甲を反らせていくと緊張してくるのも
確かめられると思います。
たいてい最初に膝裏を確かめてから行うなど、
他の操体とは違った面も沢山あって面白いし、また、
橋本敬三・翁先生が晩年一番良くやった操体だそうですので、
前から気になっていたのですが、
実際筋肉に触りながら操体操法して確かめてみると、
動きの操体の切っ掛けの原則に当てはまっている事が解りました。
『万病を治せる妙療法 操体法』のp69には、
爪先上げを
「農作業や山登りでヒフク筋が緊張して痛む時に」に用いる
として紹介しているので、
橋本敬三・翁先生も多分ご存じだったと思います。
犬など4足のほ乳類も同じなのかは、
まだ確かめていません。
詳しい方がいたら、教えて下さい。
この脹ら脛の筋肉が縮む形で緊張し働く時には、
膝が曲がってくるようです。
足先を伸ばしたまま膝を曲げる時には働かずに、
足の甲を反らした状態から膝を曲げる時に働いているようです。
「仰向け膝立て爪先上げ」と同じ効果のある、
足首を反らした状態で膝を曲げていくという操体操法を紹介し、
そのやり方のほうが
膝裏の痼りが消える様子が確認し易いとも書きました。
脹ら脛の筋肉は
縮んでいくほうの働き方をしている事になります。
いろいろ野次馬してみてください。 [#j92c0e4a]
「痼りを目標にする時には、
その痼りの在る筋肉を働かせ緊張させる動きや
そういう動きに繋がる動きを
操体操法の切っ掛けにする」
という自然則を、
痼りを目標にするいろいろな定番の操体で試して
野次馬してみてください。
この痼りが取りたいなと思ったら、
その痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させるような動きや
そういう動きを生み出すような連動を切っ掛けにする
操体を試してみると良いと思います。
この筋肉に痼りがありそうだなと思ったら、
その筋肉を働かせ緊張させるような動きや
そういう動きを生み出すような連動を切っ掛けにする
操体を試してみてください。
その筋肉を縮ませる動きを試すと良いと思います。
例外になりそうなものを見付けたらお知らせ下さい。
色々な例外と、その理由 [#a3280f0f]
先回と同じ様に必ずそうとは言えない場合もあります。
働かせ緊張させる動きを切っ掛けにする操体で
必ず気持ち良さが出てくるとは限りません。
多くは反対側にある拮抗筋を
働かせ緊張させる動きが気持ちよい場合もあります。
心が痛いと思う痼りと体が治したい痼りが違うと [#aa5af27e]
体が治したい痼りと
心が「ここら辺が痛いな」と想う痼りが
異なっている場合もあるからです。
膝の痛みは、
お皿側に在ると想う事が多いですが、
原因となる痼りは、
膝裏側に在る事のほうが多いです。
肩の痛みは、
肩関節の外側に在ると想う事が多いですが、
慢性の場合には、
原因となる痼りは
脇の下やその前後の水掻きに在る事のほうが多いです。
腰や背中が痛いなと想った時に、
その痛みをもたらす痼りが
お腹側に在る事もあります。
痛いなと想ったり違和感を訴えたりする側にも
痼りはありますが、
動きの操体をしてみると、
その周りの筋肉が緩んでいく動きが
気持ちよいと言われる場合が多くなります。
陰の側の痛みは、感じにくい、心に思いにくい [#pdd04b54]
「陰」の側の痛みは感じ難いというか、
心に想い難いようで、
その表裏反対側の「陽」の側に痛みが在ると
想い易いようです。
摘まれて始めて痛みを感じるみたいで、
同じ強さで押したり摘んだりして
痛さを比べてみて初めて、
圧倒的に裏側のほうが痛いという事が解る
という場合が多いです。
受け手の方が表側の痛みを
「なんとなくその辺り全体が痛い」とか、
「もっとずっと奥のほうが痛い」とか、
「鈍い感じの痛み」とか
表現をされる場合には、
原因は裏側に在る事が多くなるようです。
猫背の方で反らすのが気持ちよい時には [#x7210291]
一見猫背に見える方が
反らしたほうが気持ちよい場合もあります。
首の付け根から肩甲間部に痼りが出来て硬くなる
事が多いですが、こういう方で
一見猫背に見える方がいます。
後ろ側に反っているのが自然ですが、
こういう方の場合には、
その部分の背骨の上にある筋肉が凝って硬くなったため、
その部分の背骨が引っ張られて、
その反りが少し少なくなっています。
少なくなった反りを補うために、
その上下の背骨、
首の下のほうの背骨と肩胛骨の下の背骨が
余分に後ろに曲がっているために、
頭から腰まで全体としてみると
猫背に見えるようです。
一番硬く凝っているのは肩甲間部なので、
首の付け根から肩甲間部にかけてを反らしながら
上腕も後ろに引くような姿勢が
気持ちよい事が多くなります。
体が治したい痼りが別の場所にある時も例外 [#ec602629]
体が治したい痼りが全然違う場所にある場合にも、
とりあえず目標にした痼りの
周りの筋肉を働かせ緊張させる操体をしても
気持ち良さが出てこなかったり
息が深くならなかったりします。
受け手の方の息の深さに注意しながら、
気持ちの良さが深くなる操体操法に誘導していってください。
先ず試してから、より気持よい操体を見付けていく [#p00ec0e6]
目標の痼りがある時には、
その痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させる動き、
中でも縮ませる動き先ず試してみると
気持ちよいと言われる可能性が高い
という事は覚えて置くと役に立つと思います。
- そういう事を先ず切っ掛けにして操体操法を始めて、
気持ち良さを探しながらゆっくり動いていってもらう
とよいと思います。
- そして、
気持ち良さが出てきて
息が深くなるタワメの間が見つかったら、
そのタワメの間の姿勢から、
その時に体が治したがっている痼りを見付けて、
そこに手や指を当てて、
その痼りに対してカワの操体をしながら、
その痼りが変化していく様子を観察する
と面白いと思います。
次回は、痼りとカワの操体の関係 [#z13f26c5]
痼りの周りの筋肉を働かせ緊張させる事を
切っ掛けにする動きの操体について書きました。
痼りとカワの操体の関係について書いていきます。
6.おわりに
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