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術伝流一本鍼no.47 - (2014/02/27 (木) 12:09:47) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.47 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(6))

中焦の病

1.基本的に

 中焦の病は、体の内側の横隔膜より下で臍より上に、主症状やツボが
出る病です。消化器系とも言えます。水毒が溜まっていることが多いで
す。足の陰経や、横輪切りの背中の兪穴などに引きやすく、症状が出て
いるあたりの大腹にもツボが出ます。

 2000年以降、中焦の水毒から発生した邪気が上焦〜表位の病の原因
となる例が非常に多いです。肩腕指にピリピリビリビリするシビレ感や
痛み辛さをうったえる人が多かったです。が、慢性的な頭痛や眩暈など
も見かけました。

 狭心症を検査したが正常という人が、左大腹の水毒を減らす治療で症
状が消えたこともありました。また、線維筋痛症の人の発症時の様子と
似ている例も多かったです。

 中焦に水毒が溜まっている場合には、中焦である大腹にもシコリが出
ます。それは、肋骨下部を押してもパンパンに張っていて弾力がないこ
とでも分かります。胸脇苦満と呼ばれる腹症です。左右差がある場合が
多いです。

 中焦が水毒により硬くなっていると、下焦の瘀血や中焦の水毒より発
生した邪気が上昇できずに溜まってしまいます。溜まった邪気が限界を
越え鉄砲水のように上衝すると、卒中と呼ばれる事態をまねきます。心
下と呼ばれる横隔膜の腹側が硬かったり(心下痞)、脇腹の左右差が目立
つときは、そうなりやすいので注意が必要です。

 消化器系の病で器官の変性を伴わないときには、左中焦のガス停滞を
なくすと改善することが多いです。

 また、中焦以外の水毒が色々な病に関係することもあります。肩首の
筋肉の水毒は、コリ。内耳の水毒は、耳鳴り、眩暈。上焦の水毒は、咳、
痰。それぞれ、主症状に関係する治療のほかに、中焦の水毒をへらす治
療を加えたほうが効果が上がりやすいです。

 下半身の浮腫は、小腹(下焦)や足厥陰経〜少陰経との関連が深く、下
半身の冷えや発汗不足などの原因で、中焦の水毒が酷くなくても発生す
ることもあります。

2.ツボが出やすいところや狙い目


2.1. 足の陰経

 足の陰経のなかでは、とくに太陰経に出やすいです。

 慢性期には、膝ちかくの陰陵泉や大腿部に出ます。

 急性期には、足首より先、商丘、公孫に出ていることが多いです。接
触鍼の場合は、陰白も使えます。灸なら、節紋、裏内庭、第2指裏横紋
など、拇指や第2指のちかくのツボを使います。

 地機、漏谷は、急性慢性どちらにも使います。

 少しずつ、上下左右にズレることもあり、他の足の陰経にも出ること
もあります。

2.2 足の陽経

 腹の表面のシコリは、足陽明経から少陽経に引けます。下腿、足甲
を使うことが多いです。灸なら足指のツボも使います。慢性期には、
伏兎〜梁丘、風市など、大腿部にもツボが出ます。

 腹のツボが上肓兪など正中線ちかくのときには、脛骨のすぐ脇に出
ることが多いです。腹のツボが章門など横腹ちかくのときには、豊隆
のラインや足少陽経に出ていることが多くなります。

 下半身の冷えが関係するときは、足甲3~4間にツボが出ていることが
多く、補の灸でじっくり温めます。患者さん自身で温灸をしてもらうの
もよいでしょう。

2.3. 陽位(背)

 まず、胸椎7~9~11番の1~2行線、督脈、華佗経が候補です。昔から
「胃の六灸」と呼ばれているあたりです。

 慢性期には、そのなかでも、華佗経、つまり、背骨のすぐ脇に出てい
ることが多いです。また、少し下で外よりの胸椎12〜腰椎2のラインで
脊柱起立筋の一番外側、つまり、痞根にツボが出ていることが多くなり
ます。

 精神的な要因があるときには、少し上の首肩、肩甲間の督脈・華佗経
にツボが出ていることがあります。

2.4. 腹部

 肋骨下の不容、章門、任脈の中脘、臍まわりやその横の天枢ちかくに
出ていることが多いです。

 慢性期には、横腹の章門、臍まわりの上肓兪に出ていることが多くな
ります。

2.5. その他

 手の陰経、その中でも、厥陰経に出やすいです。慢性期には上曲沢、
急性期には内関が多いです。

3.手順

3.1.  慢性期

 ツボを考慮して慢性期の型の順で、刺鍼します。初めに刺鍼する手
の陰経のツボは、上曲沢に出ていることが多いです。冷えて虚してい
るところや華佗経などにある古いツボがあれば、灸や灸頭鍼をし、
手の指端の灸で仕上げます。

 灸や灸頭鍼と置鍼を組み合わせてもよいです。座位、うつ伏せ、あ
お向けの順で、ツボを選び、施術し、手指の骨空などの灸で仕上げま
す。灸頭鍼は、古いツボに効果的です。

 腹への灸は、腹の邪毒の状態で可否を判断します。邪毒実すること
が顕著で、炎症性の熱感が強いときは、避けたほうが無難です。

3.2. 応急処置

 基本は、手甲に引き内関に引き、背の順で引き、頭に散鍼し、手甲
で終えます。

 初めや途中で表位に症状が出ていれば、そのつど、手甲など手の陽
経に引き、背に引いたあとで肩首に症状が出たら、肩首に刺鍼します。

 体を前に曲げて耐えているときは、背中側の一番出っ張ったあたり
に出ているツボが狙い目です。

 症状が軽いときは、慢性期の手順で灸をしてもよく、子供の腹痛な
どに向きます。

 急性期は慎重にします。処置後数時間以内に痛みが復活するときは、
器官破壊などを疑い、救急医療と連携してください。症状が激しい場
合には、手を出さずに救急医療と連携します。

 詳しくは、「先急の一本鍼」で書きました。

4.写真付き症例

 右利きなのに慢性的な左五十肩で、上腹部の水毒の影響があるので
はないかという人。

 先ずは、診察。脈診(写真1)、舌診(写真2)、腹診の順で診察し
ていきました。腹診では、上腹部の水毒をみるため、肋骨下部の弾力
もみました(写真3)。上腹部に水毒があると、この部分が張ってい
て弾力がないことが多いからです。

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写真1

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写真2

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写真3

 横腹の左右差も診察し(写真4)、総合的に、腹診としては左側の
ほうが悪いと判断しました。

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写真4

 鍉鍼や打診でやってみることにしました。先ずは左上腕から、陰経
の上曲沢あたりに出ていたツボ(写真5)、陽経に出ていたツボ(写真6)。

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写真5

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写真6

 鍉鍼は、先ずは、当てる角度と当てる強さが重要です。どちらも、
邪気が動きやすいものを選択します。その上で、横ゆらし、旋捻など
の動かし方の中から、やはり邪気が動きやすいものを使います。そし
て、患者さんの体の反応に合わせて、動かし方も変えていきます。

 次は腹、横腹、下腹、上腹の順。横腹は鍉鍼(写真7)、下腹、上
腹は打診で施術しました(写真8,9)。

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写真7

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写真8

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写真9

 打鍼は、手の拇指ぐらいの太さ長さの石と、打鍵器の組み合わせで
しました。

 腹の打鍼は、うまく響かせると気持ち良いものです。逆に言えば、
気持ちよい響きを感じてもらえるようなリズム、強さで叩きます。

 それから、足の陰経、陽経。腹に出ていたツボに関係ありそうな足
のツボをさがし、陰経〜陽経の順で鍉鍼をしました(写真10、11)。

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写真10

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写真11

 あお向けでの施術を終え、うつ伏せになってもらいました。うつ伏
せでは、先ずは、水毒の影響が出やすい胸椎7〜11番の華佗経を丁寧
に探し、患者さんにも確認をとって、ツボを選び(写真12)、鍉鍼で
施術しました(写真13)。

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写真12

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写真13

 それから、同じく、水毒の影響が出やすい痞根あたりに出ていたツ
ボも鍉鍼で施術しました(写真14)。

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写真14

 左下腿の飛揚〜外丘あたりに出ていたツボに鍉鍼し(写真15)、う
つ伏せでの施術を終えました。

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写真15

 座位になってもらい、楊枝を輪ゴムで束ねたもので、頭の散鍼をし
(写真16)、手の甲に出ていたツボに鍉鍼し(写真17)、終了しま
した。

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写真16

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写真17

5.術伝流打鍼術のコツ


 普通の鍼と同じように、出ているツボを見付けることが、先ずは大
切です。特に打鍼では、ツボの奥のシコリの方向、形状、硬さをしっ
かり把握します。

 次は、鍉鍼と同じように、打鍼を当てる角度、当てる強さが重要で
す。鍉鍼よりも深め、ツボの底の硬いシコリに押し付けるように、 しっ
かり、 当てます。

 そして、打鍵器の持ち方。しっかり握らないで(写真18)、打鍵器
のゴムの部分が自由に動くように拇指と示指ではさむように持ち(写
真19)、当たった次の瞬間に跳ね返るようにします。そのほうが受け
たときに気持ち良い響きが生まれやすいからです。

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写真18

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写真19

 叩き方、一定時間に叩く回数、強弱の混ぜ方、リズムなども、患者
さんの体が感じる気持ちよさが深くなるものを選びます。

 終える時期は、音で判断します。筋肉が硬くシコリになっている間
は、高い音がします。シコリが弛むと、音が低くなります。音が低く
なったときに終わります。

 自分の体で練習し、響きの気持ちよさや、終え方を身につけていっ
てください。

 私も、初めは、直径2mmほどの金属棒を木槌で叩く打鍼をしていま
した。が、今では、金属、石、硬い木などの素材で、直径6〜20mm、
長さ50〜70mmの打鍼を、打鍵器で叩いています。自分や患者さんの
体の感じる気持ちよさ、シコリの弛みやすさを探求した結果です。


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